(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】生体音検出装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20241016BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61B5/02 350
A61B5/08
(21)【出願番号】P 2021128458
(22)【出願日】2021-08-04
【審査請求日】2023-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】程 帆
(72)【発明者】
【氏名】安野 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】土屋 義規
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05853005(US,A)
【文献】特開昭61-154648(JP,A)
【文献】特開平04-325146(JP,A)
【文献】特開昭58-165833(JP,A)
【文献】特開2011-217351(JP,A)
【文献】特開2004-141428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02 - 5/03
A61B 5/06 - 5/22
A61B 7/00 - 7/04
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(20)と、
空気よりも水に近い音響インピーダンスを有する媒質(40)と、
前記筐体内に配置され、前記媒質を介して伝わる生体音を電気信号に変換するトランスデューサ部(50)と、
前記筐体とともに前記媒質を収容する収容領域を提供し、前記生体音を検出して前記媒質に伝達し、生体の荷重に応じて前記トランスデューサ部に近づく方向に変形可能に構成された検出部(30)と、
前記検出部の変形にともなう前記媒質の圧力上昇を抑制するように、前記媒質の圧力を調整する圧力調整部(60、61、62)と、
を備え
、
前記圧力調整部は、前記筐体および前記検出部とともに前記収容領域を提供し、
前記圧力調整部は、前記収容領域を拡張することで前記媒質の圧力上昇を抑制し、
前記圧力調整部は、前記筐体内において前記媒質に隣接して設けられた空気層(611)を含み、前記空気層の体積を縮小することで前記収容領域を拡張し、
前記筐体は、前記収容領域を局所的に狭くするように、前記空気層と前記トランスデューサ部との間に設けられた仕切り壁(23)を有し、
前記媒質の端面(40a)は、前記仕切り壁よりも前記空気層側に位置している、生体音検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体音検出装置であって、
前記媒質の圧力に相関する物理量を検出するセンサ(70)をさらに備える、生体音検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の生体音検出装置であって、
前記生体は、移動体の乗員であり、
前記生体音検出装置は、前記乗員が着座するシート(100)の背もたれ部(102)、着座部(101)、およびシートベルト(105)の少なくともひとつに配置される、生体音検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、生体音検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、電子心音センサ、つまり生体音検出装置を開示している。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】H.Li et al., ”Design of a high SNR electronic heart sound sensor based on a MEMS bionic hydrophone”,[online],AIP Advances 9, 015005 (2019),<URL:https://doi.org/10.1063/1.5062619>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1では、筐体内に媒質として医療用カップリング剤を充填することで、SN比、つまり生体音の検出感度を高めている。しかしながら、生体から受ける外力(荷重)によっては、生体音を高感度で検出することができない。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、生体音検出装置にはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示されるひとつの目的は、生体の荷重によらず、生体音を高感度で検出できる生体音検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された生体音検出装置は、
筐体(20)と、
空気よりも水に近い音響インピーダンスを有する媒質(40)と、
筐体内に配置され、媒質を介して伝わる生体音を電気信号に変換するトランスデューサ部(50)と、
筐体とともに媒質を収容する収容領域を提供し、生体音を検出して媒質に伝達し、生体の荷重に応じてトランスデューサ部に近づく方向に変形可能に構成された検出部(30)と、
検出部の変形にともなう媒質の圧力上昇を抑制するように、媒質の圧力を調整する圧力調整部(60、61、62)と、
を備え、
圧力調整部は、筐体および検出部とともに収容領域を提供し、
圧力調整部は、収容領域を拡張することで媒質の圧力上昇を抑制し、
圧力調整部は、筐体内において媒質に隣接して設けられた空気層(611)を含み、空気層の体積を縮小することで収容領域を拡張し、
筐体は、収容領域を局所的に狭くするように、空気層とトランスデューサ部との間に設けられた仕切り壁(23)を有し、
媒質の端面(40a)は、仕切り壁よりも空気層側に位置している。
【0007】
開示された生体音検出装置によれば、水に近い音響インピーダンスを有する媒質が収容領域に配置されている。生体音は、検出部から媒質を介してトランスデューサ部に伝わる。これにより、生体からトランスデューサ部までの伝搬経路、特に検出部からトランスデューサ部の伝搬経路において、反射ロスを低減することができる。
【0008】
また、圧力調整部により、検出部の変形にともなう媒質の圧力上昇を抑制することができる。これにより、荷重による媒質の密度の変化、ひいては媒質の音響インピーダンスの変化を抑制することができる。この結果、生体の荷重によらず、生体音を高感度で検出できる生体音検出装置を提供することができる。
【0009】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る生体音検出装置の配置を示す図である。
【
図3】乗員の荷重が印加されない状態を示す図である。
【
図4】乗員の荷重が印加された状態を示す図である。
【
図5】媒質の圧力と信号強度との関係を示す図である。
【
図7】第2実施形態に係る生体音検出装置を示す断面図である。
【
図8】乗員の荷重が印加された状態を示す図である。
【
図10】第3実施形態に係る生体音検出装置を示す断面図である。
【
図11】第4実施形態に係る生体音検出装置を示す断面図である。
【
図12】第5実施形態に係る生体音検出装置の配置を示す図である。
【
図13】第6実施形態に係る生体音検出装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて複数の実施形態を説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0012】
(第1実施形態)
先ず、
図1に基づき、本実施形態に係る生体音検出装置の配置について説明する。
図1は、部分断面図である。
【0013】
<生体音検出装置の配置>
生体音検出装置は、一例として移動体のシートに配置される。移動体は、車両、飛行体、船舶、建機などである。
【0014】
図1に示すように、移動体のシート100は、着座部101と、背もたれ部102を備える。着座部101は、着座者である乗員110の臀部および太腿部等を支持する。背もたれ部102は、乗員110の背中を支持する。
【0015】
背もたれ部102は、表皮部材103と、シートパッド104を有する。表皮部材103は、シートパッド104を覆い、背もたれ部102における背もたれ面を形成する。背もたれ面は、シート100において着座した乗員の背中が接触し得る面である。表皮部材103は、たとえば革やファブリック等を用いることができる。
【0016】
シートパッド104は、弾性変形可能な材料、たとえばウレタンによって構成される。シートパッド104は、乗員110を支持するクッション部材である。着座部101も、背もたれ部102同様、図示しない表皮部材とシートパッドを有する。
【0017】
本実施形態の生体音検出装置10は、たとえば背もたれ部102の内部に配置される。生体音検出装置10の全体もしくは一部は、シートパッド104に覆われる。生体音検出装置10は、乗員110の生体音を検出する。乗員110が、生体に相当する。生体音は、生体の各部分から生じる音響信号である。生体音検出装置10が検出する生体音は、心音、心臓以外の臓器の音(たとえば肺音)、呼吸音、血流音(たとえば動脈の血流である心弾道)などの生体音全般のうちの少なくともひとつである。生体音検出装置10は、たとえば乗員110の心音を、シート100を構成する部材を介して検出する。
【0018】
<生体音検出装置の構造>
次に、
図2に基づき、生体音検出装置の構造について説明する。
図2は、生体音検出装置を示す断面図である。
図2は、乗員110の荷重が印加されていない状態を示している。
【0019】
図2に示すように、生体音検出装置10は、筐体20と、検出部30と、媒質40と、トランスデューサ部50と、圧力調整部60を備えている。
【0020】
筐体20は、トランスデューサ部50を収容している。筐体20は、トランスデューサ部50を保護している。筐体20の構成材料は特に限定されない。筐体20は、たとえば金属、セラミック、ガラス、樹脂などを材料として形成されている。本実施形態の筐体20は、ケース21と、カバー22を有している。ケース21は、一面が開口する箱状をなしている。カバー22は、ケース21の開口の一部を閉塞するように設けられている。カバー22は、蓋部と称されることがある。
【0021】
検出部30は、筐体20とともに媒質40を収容する収容領域(収容スペース)を提供する。収容領域は、媒質40が配置される配置領域と称されることがある。検出部30および筐体20は、収容領域を規定する壁部材である。検出部30は、筐体20に設けられている。検出部30は、筐体20に固定されている。本実施形態の検出部30は、カバー22に設けられている。検出部30は、カバー22の開口を閉塞するように設けられている。
【0022】
検出部30および筐体20が提供する収容領域は、上記した構成に限定されない。たとえば筐体20がケース21のみを有し、検出部30がケース21の開口を閉塞する構成としてもよい。つまり、カバー22を排除した構成としてもよい。筐体20と検出部30との固定構造は、特に限定されない。媒質40を保持するために、必要に応じてシーリング等を施してもよい。なお、ケース21とカバー22との固定構造も、特に限定されない。必要に応じてシーリング等を施してもよい。
【0023】
検出部30は、筐体20の構成材料よりも水に近い音響インピーダンスを有する固体材料を用いて形成されている。検出部30は、水にほぼ一致する音響インピーダンスを有する材料を用いるとよい。具体的には、水に対する音響インピーダンスの比が0.5~5の範囲内となる材料を用いるとよい。より好ましくは、水に対する音響インピーダンスの比が0.8~2の範囲内となる材料を用いるとよい。これにより、検出部30の界面における反射ロスを低減することができる。
【0024】
本実施形態の検出部30は、シリコーンゴムを用いて形成されている。シリコーンゴムの音響インピーダンスは、1.44×106kg/(s・m2)である。水の音響インピーダンスは、1.53×106kg/(s・m2)である。筐体20がたとえば金属製の場合、その音響インピーダンスは水の10倍以上である。これにより、生体音は検出部30にて検出され、筐体20にて反射される。生体音は、検出部30を通じて収容領域の媒質40に伝わる。このように、検出部30は、生体音を検出して媒質40に伝達する。
【0025】
検出部30は、乗員110(生体)の荷重に応じてトランスデューサ部50に近づく方向に変形可能に構成されている。本実施形態の検出部30は、X方向においてトランスデューサ部50と並ぶように配置されている。X方向の平面視において、検出部30は、トランスデューサ部50の少なくとも一部と重なるように配置されている。検出部30は、荷重を受けてX方向に撓み可能、つまり弾性変形可能に構成されている。検出部30は、荷重が大きいほどトランスデューサ部50に近づく。
【0026】
検出部30は、乗員110の荷重が印加されない状態で、平板状のカバー22に対して収容領域の外側に突出している。検出部30は、X方向においてカバー22からトランスデューサ部50とは反対側に突出している。これにより、乗員110がシート100に着座した際、乗員110の荷重が筐体20ではなく検出部30に印加されやすい。つまり、乗員110の生体音を、検出部30にて検出しやすい構造を有している。検出部30の内側は、凹状をなしている。検出部30の凹にも媒質40が配置される。
【0027】
媒質40は、収容領域に配置されている。媒質40は、トランスデューサ部50を覆っている。媒質40は、筐体20の内面および検出部30の内面に接触している。媒質40は、検出部30とトランスデューサ部50との伝搬経路に配置されている。媒質40は、検出部30を介して入力する生体音を、トランスデューサ部50に伝達する。本実施形態では、媒質40が、筐体20の内部のほぼ全域に充填されている。
【0028】
媒質40は、空気よりも水に近い音響インピーダンスを有している。媒質40は、空気よりも大きく、筐体20を構成する材料よりも小さい音響インピーダンスを有している。媒質40は、水にほぼ一致する音響インピーダンスを有するとよい。具体的には、水に対する音響インピーダンスの比が0.5~5の範囲内となる材料を用いるとよい。より好ましくは、水に対する音響インピーダンスの比が0.8~2の範囲内となる材料を用いるとよい。これにより、検出部30と媒質40との界面における反射ロス、つまり検出部30からトランスデューサ部50までの生体音(音響信号)の伝搬経路における反射ロスを低減することができる。
【0029】
媒質40として、たとえば水やシリコーンオイルなどの液体材料、超音波ゲルやシリコーンゴムなどの固体材料を用いることができる。シリコーンオイルの音響インピーダンスは、1.41×106kg/(s・m2)である。超音波ゲルの音響インピーダンスは、1.41×106kg/(s・m2)である。水とシリコーンゴムの音響インピーダンスは、上記したとおりである。本実施形態では、媒質40として水を採用している。なお、空気の音響インピーダンスは、4.39×102kg/(s・m2)である。
【0030】
トランスデューサ部50は、生体音を電気信号に変換する。本実施形態のトランスデューサ部50は、媒質40を介して伝わる生体音を電気信号に変換する。トランスデューサ部50は、媒質40によって覆われている。トランスデューサ部50は、たとえば液体材料の媒質40に埋設されている。
【0031】
トランスデューサ部50は、生体音を電気信号に変換する素子を有している。素子は、特に限定されない。抵抗変化型の素子でもよいし、静電容量変化型の素子でもよい。起電力を生じる圧電型の素子でもよい。素子は、MEMS技術を用いて形成されている。MEMSとは、Micro Electro Mechanical Systemsの略称である。MEMS技術を用いることで、小型のトランスデューサ部50を形成することができる。素子は、所定周波数の信号、たとえば心音を好適に検出するように設計されている。
【0032】
トランスデューサ部50は、支持台51を介して筐体20のカバー22に固定されている。支持台51は、たとえば基部511と、基部511とトランスデューサ部50との間に介在する絶縁層512を有している。たとえば、基部511はシリコン、絶縁層512は酸化シリコンを材料とする。支持台51は、基部511および絶縁層512をX方向に貫通する貫通孔513を有している。トランスデューサ部50は、ギャップ50Gにより区画され、支持台51に片持ち支持されている。トランスデューサ部50は、貫通孔513においてトランスデューサ部50側の開口を覆っている。X方向からの平面視において、支持台51は環状をなしている。X方向からの平面視において、貫通孔513は、検出部30を内包している。
【0033】
圧力調整部60は、検出部30の変形にともなう媒質40の圧力上昇を抑制するように、媒質40の圧力を調整する。圧力調整部60の詳細については、後述する。
【0034】
<圧力調整部>
次に、
図2、
図3、および
図4に基づき、圧力調整部60について説明する。
【0035】
生体音検出装置10が圧力調整部60を備えない場合、乗員110の荷重(外力)を受けて検出部30がトランスデューサ部50側に近づくことで、媒質40の収容領域の体積が縮小する。これにより、媒質40の圧力が上昇する。圧力上昇により、媒質40の密度が高くなる。このように、媒質40の密度は、荷重に応じて変化する。つまり、乗員110の体重、座る位置、姿勢などにより、媒質40の密度、ひいては音響インピーダンスが変化し得る。
【0036】
これに対し、本実施形態の生体音検出装置10は、圧力調整部60を備えている。
図2に示すように、圧力調整部60は、筐体20および検出部30とともに媒質40の収容領域を提供する。筐体20、検出部30、および圧力調整部60により規定される領域に、媒質40が配置(収容)される。圧力調整部60は、収容領域を拡張することで、媒質40の圧力を調整する。
【0037】
圧力調整部60は、筐体20のケース21に設けられている。圧力調整部60は、たとえば筐体20に対して変形可能に設けられたダイアフラム(薄肉部)や、ケース21の開口を閉塞するように設けられたメンブレン(薄膜)である。圧力調整部60は、変形によって収容領域を拡張する。たとえば圧力調整部60は、乗員110の荷重によらず、つまり検出部30の変形の度合いによらず、媒質40の圧力がほぼ一定となるように変形可能に構成されている。
【0038】
図3は、乗員110の荷重が印加されない状態を示している。一例として、本実施形態の生体音検出装置10は、検出部30の突出先端が背もたれ面側の表皮部材103の内面に接触するように配置される。
【0039】
乗員110がシート100に着座する前の状態では、乗員110の荷重が検出部30に印加されない。このため、検出部30は、トランスデューサ部50に近づく方向に変形しておらず、初期位置に保持されている。検出部30が変形していないため、変形にともなう媒質40の圧力上昇は生じない。ゆえに、圧力調整部60も変形せず、初期位置に保持されている。圧力調整部60は、たとえば略平坦である。
【0040】
図4は、乗員110の荷重が印加された状態を示している。
図4では、荷重、つまり乗員110から受ける外力を白抜き矢印で示している。
図4に示すように、乗員110の荷重は、乗員110の服111、およびシート100の表皮部材103を介して検出部30に作用する。
【0041】
検出部30は、乗員110の荷重に応じてトランスデューサ部50に近づく方向に変形する。検出部30は、荷重を受けて撓むことで、X方向においてトランスデューサ部50に近づく。検出部30は、
図3に示した荷重印加前の初期状態に対して、媒質40の収容領域の体積を縮小させる方向に変形する。一方、圧力調整部60は、検出部30の変形にともなう媒質40の圧力上昇を抑制するように変形する。圧力調整部60は、変形により媒質40の収容領域を拡張し、これにより媒質40の圧力上昇を抑制する。
【0042】
本実施形態の圧力調整部60は、乗員110の荷重によらず、つまり検出部30の変形の度合いによらず、媒質40の圧力がほぼ一定となるように、荷重に応じて変形する。圧力調整部60は、荷重に応じて拡張する領域が増大するように変形する。以上により、媒質40の密度、ひいては音響インピーダンスの変化が抑制される。
【0043】
乗員110、つまり人体の音響インピーダンスは、水にほぼ等しい。人体の音響インピーダンスは、1.99×106kg/(s・m2)である。服111、たとえばナイロンの音響インピーダンスは、2.91×106kg/(s・m2)である。シート100の表皮部材103、たとえば牛革の音響インピーダンスは、1.41×106~1.71×106kg/(s・m2)である。
【0044】
このように、服111や表皮部材103の音響インピーダンスは、人体、ひいては水の音響インピーダンスに近い。乗員110、服111、表皮部材103、検出部30、および媒質40それぞれの音響インピーダンスは、水に対する音響インピーダンスの比が0.8~2の範囲内である。したがって、乗員110からトランスデューサ部50までの生体音、たとえば心音の伝搬経路において、音響インピーダンスの相違による反射ロスを低減することができる。
【0045】
なお、乗員110がシート100から離れる、つまり荷重が解放されると、検出部30は変形状態から回復し、初期位置に復帰する。これにともない、圧力調整部60も初期位置に復帰する。
【0046】
<媒質40の圧力と信号強度>
次に、
図5に基づき、媒質40の圧力と信号強度との関係について説明する。
図5に示す加圧なしは、媒質40である水を加圧しない状態の信号強度を示している。加圧ありは、水を加圧した状態の信号強度を示している。加圧ありは、加圧なしよりも水の圧力が高い。
【0047】
図5に示すように、加圧あり、つまり媒質40の圧力が高い場合、加圧なしに対して、30~70Hzの信号強度が低下する。これは、加圧によって媒質40(水)の音響インピーダンスが増大し、高音域(30Hz以上)の伝達特性が低音域に対して弱くなったためである。媒質40の圧力が高くなると、生体音の検出感度が低下する。
【0048】
<第1実施形態のまとめ>
本実施形態の生体音検出装置10によれば、水に近い音響インピーダンスを有する媒質40が収容領域に配置されている。生体音は、検出部30から媒質40を介してトランスデューサ部50に伝わる。これにより、生体からトランスデューサ部50までの伝搬経路において反射ロスを低減することができる。特に、検出部30からトランスデューサ部50までの伝搬経路における界面での反射ロスを低減することができる。これにより、トランスデューサ部50が検出する生体音(音響信号)の強度を高め、走行ノイズなど移動体のノイズ環境下においても生体音を検出することができる。
【0049】
また、圧力調整部60により、検出部30の変形にともなう媒質40の圧力上昇を抑制することができる。これにより、荷重による媒質40の密度の変化、ひいては媒質40の音響インピーダンスの変化を抑制することができる。この結果、乗員110(生体)の荷重によらず、生体音を高感度で検出することができる。
【0050】
本実施形態の圧力調整部60は、筐体20および検出部30とともに、媒質40の収容領域を提供する。圧力調整部60は、媒質40の圧力が上昇するのを抑制するように、変形によって媒質40の収容領域を拡張する。よって、乗員110の荷重によらず、生体音を高感度で検出することができる。
【0051】
特に本実施形態では、圧力調整部60が、乗員110の荷重によらず、つまり検出部30の変形の度合いによらず、媒質40の圧力がほぼ一定となるように、荷重に応じて変形する。圧力調整部60により媒質40の圧力がほぼ一定に保たれるため、生体音の検出感度をより高めることができる。
【0052】
<変形例>
生体音検出装置10が、シート100の背もたれ部102に配置される例を示したが、これに限定されない。たとえば
図6に示すように、シートベルト105に生体音検出装置10を設けてもよい。図示を省略するが、シート100の着座部101に生体音検出装置10を設けてもよい。
図6は、変形例を示す図である。
図6は、
図1に対応している。
【0053】
圧力調整部60が、荷重によらず、媒質40の圧力をほぼ一定に保つように変形する例を示したが、これに限定されない。たとえば、検出部30の変形にともなって媒質40の圧力が上昇し、圧力が所定の閾値を超えると、圧力調整部60が変形して収容領域を拡張してもよい。収容領域の拡張により、媒質40の圧力上昇を抑制することができる。圧力調整部60は、少なくとも荷重の印加時に収容領域を拡張すべく変形すればよい。
【0054】
検出部30の突出先端が表皮部材103の内面に接触するように、生体音検出装置10を配置する例を示したが、これに限定されない。検出部30の先端が背もたれ面側のシートパッド104に接触するように、生体音検出装置10を配置してもよい。つまり、表皮部材103およびシートパッド104を介して生体音を検出するようにしてもよい。シートパッド104を構成するウレタンの音響インピーダンスは、たとえば1.23×105kg/(s・m2)である。この場合、シートパッド104の界面での反射ロスは、数dB程度である。シートパッド104の界面での反射ロスを低減するには、上記したように検出部30が表皮部材103に接触する配置のほうが好ましい。
【0055】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。
【0056】
図7は、本実施形態の生体音検出装置10を示している。
図7は、
図2に対応する断面図である。つまり、乗員110の荷重が印加されていない状態を示している。生体音検出装置10は、圧力調整部60に代えて、空気層611を有する圧力調整部61を備えている。空気層611は、筐体20内において媒質40に隣接して設けられている。空気層611、つまり圧力調整部61は、筐体20および検出部30とともに、媒質40の収容領域を提供する。空気層611は、媒質40の収容領域を規定する。空気層611は、X方向に直交するY方向において、筐体20の端部に設けられている。
【0057】
圧力調整部61は、通気孔612をさらに有している。通気孔612は、筐体20のケース21を貫通している。通気孔612は、空気層611と筐体20の外部雰囲気とを連通している。圧力調整部61は、通気孔612の周辺に、通気を可能としつつ、媒質40の移動を妨げるフィルタなどを有してもよい。その他の構成については、先行実施形態に記載の生体音検出装置10と同様である。
【0058】
図8は、乗員110の荷重が印加された状態を示している。
図8では、便宜上、乗員110やシート100を構成する部材を省略し、荷重を白抜き矢印で示している。先行実施形態同様、検出部30は、乗員110の荷重に応じてトランスデューサ部50に近づく方向に変形する。検出部30は、荷重を受けて撓むことで、X方向においてトランスデューサ部50に近づく。検出部30は、媒質40の収容領域の体積を縮小させる方向に変形する。
【0059】
一方、圧力調整部61は、媒質40の収容領域を拡張することで媒質の圧力が上昇するのを抑制する。圧力調整部61は、空気層611の体積を縮小することで、収容領域を拡張する。空気層611は、媒質40の端面40aの上昇にともなって、その体積を縮小する。
図8に示す一点鎖線は、荷重印加前の端面40aの位置を示している。空気層611は、乗員110の荷重によらず、つまり検出部30の変形の度合いによらず、媒質40の圧力がほぼ一定となるように、荷重に応じて縮小する。以上により、媒質40の密度、ひいては音響インピーダンスの変化が抑制される。
【0060】
なお、荷重が解放されると、検出部30が変形状態から初期位置に復帰するのにともない、空気層611の体積も初期状態に戻る。
【0061】
<第2実施形態のまとめ>
本実施形態の生体音検出装置10も、先行実施形態に記載の構成と同等の効果を奏することができる。つまり、生体音が、検出部30から媒質40を介してトランスデューサ部50に伝わる構成としたため、検出部30からトランスデューサ部50までの伝搬経路における反射ロスを低減することができる。また、圧力調整部61は、空気層611の体積を縮小することで収容領域を拡張する。これにより、検出部30の変形にともなう媒質40の圧力上昇を抑制することができる。よって、乗員110(生体)の荷重によらず、生体音を高感度で検出することができる。
【0062】
また、空気層611は、乗員110の荷重によらず、つまり検出部30の変形の度合いによらず、媒質40の圧力がほぼ一定となるように、荷重に応じて縮小する。圧力調整部61により媒質40の圧力がほぼ一定に保たれるため、生体音の検出感度をより高めることができる。
【0063】
本実施形態では、簡素な構造により、上記した効果を奏することができる。
【0064】
<変形例>
図9に示すように、筐体20に仕切り壁23を設けてもよい。仕切り壁23は、Y方向において空気層611とトランスデューサ部50との間に設けられている。媒質40の端面40aは、一点鎖線で示す荷重印加前の時点で仕切り壁23よりも空気層611側に位置している。仕切り壁23は、媒質40の収容領域を局所的に狭くしている。
図9では、仕切り壁23をケース21に設けているが、カバー22に設けてもよい。ケース21とカバー22の両方に設けてもよい。
【0065】
仕切り壁23を設けることで、仕切り壁23を有さない構成に較べて、媒質40の体積が同じでも端面40aがトランスデューサ部50から遠さかる。これにより、移動体の振動により媒質40である液体の端面40a、つまり液面が揺れても、トランスデューサ部50が媒質40から露出し難い。よって、生体音を高感度で検出することができる。
【0066】
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。
【0067】
図10は、本実施形態に係る生体音検出装置10を示している。
図10では、乗員110の荷重が印加された状態を示している。
図10では、便宜上、乗員110やシート100を省略し、荷重を白抜き矢印で示している。
【0068】
生体音検出装置10は、圧力調整部60、61に代えて、区画板621と弾性部材622を有する圧力調整部62を備えている。区画板621は、筐体20内において媒質40に隣接して設けられている。区画板621、つまり圧力調整部61は、筐体20および検出部30とともに、媒質40の収容領域を提供する。区画板621は、媒質40の収容領域を規定する。区画板621は、X方向において、媒質40と並んで配置されている。区画板621は、媒質40の端面40bに接触している。
【0069】
区画板621は、筐体20内のスペースを、媒質40が配置される領域と、媒質40が配置されない領域とに区分する。区画板621は、X方向にスライド可能に、筐体20のケース21に取り付けられている。
【0070】
弾性部材622は、区画板621とケース21の底壁211との間に設けられている。底壁211は、X方向においてカバー22と対向している。弾性部材622は、外力の印加により弾性変形可能に構成されている。弾性部材622は、弾性変形の反力により区画板621をX方向の所定値に保持する。本実施形態では、弾性部材622としてばねを採用している。弾性部材622であるばねの一端が区画板621に固定され、他端が底壁211に固定されている。ばねとして、たとえば板ばね、コイルばねなどを採用することができる。ばねに代えて、弾性体であるゴムなどを採用してもよい。その他の構成については、先行実施形態に記載の生体音検出装置10と同様である。
【0071】
図10に示すように、乗員110の荷重が作用すると、検出部30は、乗員110の荷重に応じてトランスデューサ部50に近づく方向に変形する。検出部30は、荷重を受けて撓むことで、X方向においてトランスデューサ部50に近づく。検出部30は、媒質40の収容領域の体積を縮小させる方向に変形する。
【0072】
一方、圧力調整部62は、媒質40の収容領域を拡張することで媒質の圧力が上昇するのを抑制する。圧力調整部62は、媒質40の圧力の高まりを逃がすように区画板621をスライドさせることで、収容領域を拡張する。
図10に示す一点鎖線は、荷重印加前の端面40bの位置を示している。区画板621は、乗員110の荷重によらず、つまり検出部30の変形の度合いによらず、媒質40の圧力がほぼ一定となるように、荷重に応じてX方向に変位する。以上により、媒質40の密度、ひいては音響インピーダンスの変化が抑制される。
【0073】
なお、荷重が解放されると、検出部30が変形状態から初期位置に復帰するのにともない、弾性部材622は弾性変形のエネルギーを開放する。これにより、区画板621が初期位置に戻る。
【0074】
<第3実施形態のまとめ>
本実施形態の生体音検出装置10も、先行実施形態に記載の構成と同等の効果を奏することができる。つまり、生体音が、検出部30から媒質40を介してトランスデューサ部50に伝わる構成としたため、検出部30からトランスデューサ部50までの伝搬経路における反射ロスを低減することができる。また、圧力調整部62により、検出部30の変形にともなう媒質40の圧力上昇を抑制することができる。よって、乗員110(生体)の荷重によらず、生体音を高感度で検出することができる。
【0075】
また、区画板621は、乗員110の荷重によらず、つまり検出部30の変形の度合いによらず、媒質40の圧力がほぼ一定となるように、荷重に応じて変位する。圧力調整部62により媒質40の圧力がほぼ一定に保たれるため、生体音の検出感度をより高めることができる。
【0076】
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。
【0077】
図11は、本実施形態に係る生体音検出装置10を示している。
図11では、乗員110の荷重が印加された状態を示している。
図11では、便宜上、乗員110やシート100を省略し、荷重を白抜き矢印で示している。
【0078】
図11に示す生体音検出装置10は、センサ70をさらに備えている。その他の構成については、第1実施形態に記載の生体音検出装置10と同様である。センサ70は、筐体20に配置されている。センサ70は、媒質40の収容領域に配置されている。センサ70は、媒質40の圧力に相関する物理量を検出する。本実施形態のセンサ70は、媒質40の圧力を検出する圧力センサである。センサ70は、たとえば筐体20のケース21に固定されている。温度は圧力と相関する物理量であるため、圧力センサに代えて、温度センサを用いてもよい。
【0079】
<第4実施形態のまとめ>
媒質40の圧力が変化すると、媒質40以外の要素の周波数特性、つまり生体音検出装置10のハード全体の周波数特性が変化する。本実施形態の生体音検出装置10は、媒質40の圧力に相関する物理量を検出するセンサ70を備えている。これにより、後段の信号処理回路において、媒質40の圧力に応じた周波数特性の補正を行うことができる。たとえば、フィルタのカットオフ周波数を補正してもよい。たとえば、周波数変換、逆周波数変換の周波数帯域幅を補正してもよい。これにより、生体音の検出感度をさらに高めることができる。
【0080】
また、センサ70により、乗員110がシート100に着座しているか否かを検出することができる。つまり、センサ70を、着座センサとして用いることもできる。
【0081】
センサ70を備える構成は、第1実施形態との組み合わせに限定されない。第2実施形態、第3実施形態、変形例のいずれとも組み合わせが可能である。
【0082】
(第5実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。
【0083】
先行実施形態に示した構成の生体音検出装置10を、移動体に複数配置(搭載)してもよい。複数の生体音検出装置10は、移動体のシート100の着座部101、背もたれ部102、およびシートベルト105の少なくともひとつに配置される。たとえば、すべての生体音検出装置10が背もたれ部102に配置されてもよい。生体音検出装置10のひとつが背もたれ部102に配置され、他のひとつがシートベルト105に配置されてもよい。
【0084】
図12は、生体音検出装置10の配置の一例を示している。
図12では、背もたれ部102に2つの生体音検出装置10が配置され、シートベルト105にひとつの生体音検出装置10が配置されている。
【0085】
<第5実施形態のまとめ>
上記したように、複数の生体音検出装置10を配置することで、乗員110の着座姿勢についても検出することができる。また、独立成分分析などの信号源推定処理を実行することができる。これにより、検出対象(たとえば心音)以外のノイズ(たとえば呼吸音)が大きい場合でも、検出対象を正確に検出することができる。
【0086】
(第6実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。
【0087】
図13は、本実施形態に係る生体音検出装置10を示している。
図13では、乗員110の荷重が印加されていない状態を示している。生体音検出装置10は、信号処理回路80をさらに備えている。信号処理回路80は、トランスデューサ部50の出力信号を処理する回路、たとえばフィルタ回路などを含む。信号処理回路80は、たとえばICチップとして提供されてもよいし、複数の電子部品により提供されてもよい。信号処理回路80は、ボンディングワイヤなどの配線部材81を介して、トランスデューサ部50のパッドに電気的に接続されている。信号処理回路80は、封止材82により封止されてもよい。その他の構成については、第1実施形態に記載の生体音検出装置10と同様である。
【0088】
<第6実施形態のまとめ>
上記したように、生体音検出装置10は、信号処理回路80を一体的に備えてもよい。信号処理回路80を備える構成は、第1実施形態との組み合わせに限定されない。第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態、第5実施形態、変形例のいずれとも組み合わせが可能である。
【0089】
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0090】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0091】
ある要素または層が「上にある」、「連結されている」、「接続されている」または「結合されている」と言及されている場合、それは、他の要素、または他の層に対して、直接的に上に、連結され、接続され、または結合されていることがあり、さらに、介在要素または介在層が存在していることがある。対照的に、ある要素が別の要素または層に「直接的に上に」、「直接的に連結されている」、「直接的に接続されている」または「直接的に結合されている」と言及されている場合、介在要素または介在層は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉は、同様のやり方で(例えば、「間に」対「直接的に間に」、「隣接する」対「直接的に隣接する」など)解釈されるべきである。この明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙されたひとつまたは複数の項目に関する任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせを含む。
【0092】
空間的に相対的な用語「内」、「外」、「裏」、「下」、「低」、「上」、「高」などは、図示されているような、ひとつの要素または特徴の他の要素または特徴に対する関係を説明する記載を容易にするためにここでは利用されている。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている向きに加えて、使用または操作中の装置の異なる向きを包含することを意図することができる。例えば、図中の装置をひっくり返すと、他の要素または特徴の「下」または「真下」として説明されている要素は、他の要素または特徴の「上」に向けられる。したがって、用語「下」は、上と下の両方の向きを包含することができる。この装置は、他の方向に向いていてもよく(90度または他の向きに回転されてもよい)、この明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
【0093】
生体音検出装置10の適用は、移動体の乗員110の生体音検出に限定されるものではない。たとえば、電子聴診器などに用いてもよい。
【0094】
圧力調整部60、61、62が、筐体20および検出部30とともに、媒質40の収容領域を提供する例を示したが、これに限定されない。たとえば筐体20に貫通孔を設け、検出部30の変形にともなう媒質40の圧力上昇を抑制するために、貫通孔を通じて媒質40の一部を筐体20の外に逃がすようにしてもよい。
【符号の説明】
【0095】
10…生体音検出装置、20…筐体、21…ケース、211…底壁、22…カバー、23…仕切り壁、30…検出部、40…媒質、40a、40b…端面、50…トランスデューサ部、50G…ギャップ、51…支持台、511…基部、512…絶縁層、513…貫通孔、60、61、62…圧力調整部、611…空気層、612…通気孔、621…区画板、622…弾性部材、70…センサ、80…信号処理回路、81…配線部材、82…封止材、100…シート、101…着座部、102…背もたれ部、103…表皮部材、104…シートパッド、105…シートベルト、110…乗員