(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】収容排出機構、光源装置、及び収容排出方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20241016BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G03F7/20 503
H05G2/00 K
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2021131189
(22)【出願日】2021-08-11
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山谷 大樹
(72)【発明者】
【氏名】長野 晃尚
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 芙貴
(72)【発明者】
【氏名】宮川 展明
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-131483(JP,A)
【文献】特表2016-512381(JP,A)
【文献】国際公開第2017/042915(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/086902(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H05G 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ原料である金属を含む収容物を液相状態となる温度で収容する収容容器と、
前記収容容器の内部に連通し前記収容物が流入する流入口と前記収容物を排出する排出口とを有する排出管と、前記排出管の温度を調整する温調素子とを有する排出部と、
前記排出管内の前記収容物が液相状態又は固相状態のいずれか一方の状態となるように、前記温調素子を制御して前記排出管の温度を切り替える温度制御部と
、
前記排出管の前記排出口から排出される前記収容物を回収する回収容器と、
前記排出部側に設けられた第1のフランジ部と、前記回収容器側に設けられ前記第1のフランジ部と着脱可能な第2のフランジ部とを有し、前記第1のフランジ部及び前記第2のフランジ部を介して前記排出部と前記回収容器とを着脱可能に構成された着脱機構と
を具備する収容排出機構。
【請求項2】
請求項1に記載の収容排出機構であって、
前記排出部は、前記排出管の流路上に配置され、前記排出管の流路よりも断面積が小さい絞り流路を構成するアパーチャー部を有する
収容排出機構。
【請求項3】
プラズマ原料である金属を含む収容物を液相状態となる温度で収容する収容容器と、
前記収容容器の内部に連通し前記収容物が流入する流入口と前記収容物を排出する排出口とを有する排出管と、前記排出管の温度を調整する温調素子と、前記排出管の流路上に配置され前記排出管の流路よりも断面積が小さい絞り流路を構成するアパーチャー部とを有する排出部と、
前記排出管内の前記収容物が液相状態又は固相状態のいずれか一方の状態となるように、前記温調素子を制御して前記排出管の温度を切り替える温度制御部と
を具備する収容排出機構。
【請求項4】
請求項2
又は3に記載の収容排出機構であって、
前記排出管は、前記排出管の流路内面の下端の少なくとも一部が前記流入口の上端よりも高い位置となるように、前記排出管を屈曲させた屈曲部を有する
収容排出機構。
【請求項5】
請求項
4に記載の収容排出機構であって、
前記アパーチャー部は、前記流入口と前記屈曲部との間に配置される
収容排出機構。
【請求項6】
請求項1から
5のうちいずれか1項に記載の収容排出機構であって、
前記排出管は、前記流入口の下端が前記収容容器の内部の底面から所定距離だけ高い位置となるように前記収容容器に接続される
収容排出機構。
【請求項7】
請求項1から
6のうちいずれか1項に記載の収容排出機構であって、
前記温度制御部は、前記収容物を排出する排出動作を行う場合、前記収容物が液相状態となるように前記排出管の温度を制御し、前記収容物を排出せずに前記収容物を貯留する貯留動作を行う場合、前記収容物が固相状態となるように前記排出管の温度を制御する
収容排出機構。
【請求項8】
請求項1から
7のうちいずれか1項に記載の収容排出機構であって、さらに、
前記収容容器内の前記収容物の収容量を検出する収容量センサを具備し、
前記温度制御部は、前記収容量センサの検出結果に基づいて、前記温調素子を制御する
収容排出機構。
【請求項9】
請求項1から
8のうちいずれか1項に記載の収容排出機構であって、
前記
収容物を排出する排出動作は、前記排出口側の圧力が前記収容容器の内部の圧力に略一致する状態、又は前記排出口側の圧力が前記収容容器の内部の圧力よりも小さい状態で実行される
収容排出機構。
【請求項10】
請求項
9に記載の収容排出機構であって、
前記排出口側の圧力及び前記収容容器の内部の圧力は、大気圧以下である
収容排出機構。
【請求項11】
請求項
3に記載の収容排出機構であって、さらに、
前記排出管の前記排出口から排出される前記収容物を回収する回収容器を具備する
収容排出機構。
【請求項12】
請求項
1又は11に記載の収容排出機構であって、
前記回収容器は、断熱容器として構成される
収容排出機構。
【請求項13】
請求項
1又は11に記載の収容排出機構であって、
前記回収容器は、容器内部を減圧する排気部に接続される
収容排出機構。
【請求項14】
請求項
1又は11に記載の収容排出機構であって、
前記排出部は、前記排出管と前記回収容器とを接続する回収管を有し、
前記温調素子は、前記回収管の温度を調整する
収容排出機構。
【請求項15】
金属を含むプラズマ原料から極端紫外光を放射するプラズマを発生させる光源部と、
前記プラズマから放散される金属を含むデブリを収容物として、前記収容物を液相状態となる温度で収容する収容容器と、
前記収容容器の内部に連通し前記収容物が流入する流入口と前記収容物を排出する排出口とを有する排出管と、前記排出管の温度を調整する温調素子とを有する排出部と、
前記排出管内の前記収容物が液相状態又は固相状態のいずれか一方の状態となるように、前記温調素子を制御して前記排出管の温度を切り替える温度制御部と
、
前記排出管の前記排出口から排出される前記収容物を回収する回収容器と、
前記排出部側に設けられた第1のフランジ部と、前記回収容器側に設けられ前記第1のフランジ部と着脱可能な第2のフランジ部とを有し、前記第1のフランジ部及び前記第2のフランジ部を介して前記排出部と前記回収容器とを着脱可能に構成された着脱機構と
を具備する光源装置。
【請求項16】
プラズマ原料である金属を含む収容物が液相状態となるように収容容器の温度を調整し、
前記収容容器の内部に連通する排出管内の前記収容物が、液相状態又は固相状態のいずれか一方の状態となるように、前記排出管に設けられた温調素子を制御して前記排出管の温度を切り替え
、
前記排出部側に設けられた第1のフランジ部と着脱可能な第2のフランジ部が設けられた回収容器により前記収容物を回収する
収容排出方法。
【請求項17】
金属を含むプラズマ原料から極端紫外光を放射するプラズマを発生させる光源部と、
前記プラズマから放散される金属を含むデブリを収容物として、前記収容物を液相状態となる温度で収容する収容容器と、
前記収容容器の内部に連通し前記収容物が流入する流入口と前記収容物を排出する排出口とを有する排出管と、前記排出管の温度を調整する温調素子と、前記排出管の流路上に配置され前記排出管の流路よりも断面積が小さい絞り流路を構成するアパーチャー部とを有する排出部と、
前記排出管内の前記収容物が液相状態又は固相状態のいずれか一方の状態となるように、前記温調素子を制御して前記排出管の温度を切り替える温度制御部と
を具備する光源装置。
【請求項18】
プラズマ原料である金属を含む収容物が液相状態となるように収容容器の温度を調整し、
前記収容容器の内部に連通し自身の流路上に当該流路よりも断面積が小さい絞り流路を構成するアパーチャー部が配置された排出管内の前記収容物が、液相状態又は固相状態のいずれか一方の状態となるように、前記排出管に設けられた温調素子を制御して前記排出管の温度を切り替える
収容排出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容容器に収容されたプラズマ原料となる金属を含む収容物を回収するための収容排出機構、光源装置、及び収容排出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の微細化および高集積化につれて、露光用光源の短波長化が進められている。次世代の半導体露光用光源としては、特に波長13.5nmの極端紫外光(以下、EUV(Extreme Ultra Violet)光とも言う)を放射する極端紫外光光源装置(以下、EUV光源装置とも言う)の開発が進められている。
【0003】
EUV光源装置において、EUV光(EUV放射)を発生させる方法はいくつか知られている。それらの方法のうちの一つに、極端紫外光放射種(以下、EUV放射種とも言う)を加熱して励起することによりプラズマを発生させ、そのプラズマからEUV光を取り出す方法がある。
このような方法を採用するEUV光源装置は、プラズマの生成方式により、LPP(Laser Produced Plasma:レーザ生成プラズマ)方式と、DPP(Discharge Produced Plasma:放電生成プラズマ)方式とに分けられる。
【0004】
DPP方式のEUV光源装置は、EUV放射種(気相のプラズマ原料)を含む放電ガスが供給された電極間の間隙に高電圧を印加して、放電により高密度プラズマを生成し、そこから放射される極端紫外光を利用する。
DPP方式としては、例えば、特許文献1に記載されているように、放電を発生させる電極表面に液体状のプラズマ原料(例えば、スズ(Sn)またはリチウム(Li))を供給し、当該原料に対してレーザビーム等のエネルギービームを照射して当該原料を気化し、その後、放電によってプラズマを生成する方法が提案されている。このような方式は、LDP(Laser Assisted Discharge Produced Plasma)方式と呼ばれることもある。
一方、LPP方式のEUV光源装置は、レーザ光をターゲット材料に照射し、当該ターゲット材料を励起させてプラズマを生成する。
【0005】
EUV光源装置は、半導体デバイス製造におけるリソグラフィ装置の光源装置として使用される。あるいは、EUV光源装置は、リソグラフィに使用されるマスクの検査装置の光源装置として使用される。すなわち、EUV光源装置は、EUV光を利用する他の光学系装置(利用装置)の光源装置として使用される。
なおEUV光は大気中では著しく減衰するので、光源装置が発生したプラズマから利用装置までのEUV光が通過する空間領域は、EUV光の減衰を抑制するために減圧雰囲気、つまり真空環境におかれている。
【0006】
このようにプラズマを発生させる装置では、プラズマからデブリが高速で放散される。デブリは、プラズマ原料の粒子(プラズマ原料がスズの場合は、スズ粒子)を含む。また、DPP方式またはLDP方式でプラズマが生成される場合、デブリは、プラズマの発生に伴いスパッタリングされる放電電極の材料粒子を含むことがある。
プラズマから発生したデブリが、利用装置に到達すると、利用装置内の光学素子の反射膜を損傷または汚染させ、その性能を低下させることがある。
【0007】
そのため、例えば特許文献1には、デブリが利用装置に侵入しないように、放散されたデブリを捕捉するためのデブリ低減装置(DMT(Debris Mitigation Tool)とも言う)が提案されている。
デブリ低減装置により捕捉されたデブリの少なくとも一部は、ヒータの熱やプラズマからの放射熱で加熱され液相状態となる。このように溶融したデブリは、重力により装置の下方に集められ、廃原料として所定の収容容器に貯められる。
【0008】
また、デブリ低減装置とプラズマの間には、遮熱板が配置される。遮熱板はプラズマの放射熱により加熱されており、遮蔽板に堆積したデブリは、ある程度の量に達すると液滴となって装置の下方に集められ、収容容器に貯められる。
また、放電部(放電電極等)に供給されるプラズマ原料(スズ)の一部が漏出することがある。このような漏出原料は、プラズマ発生に寄与しないため、装置の下方を通ってデブリと同様に収容容器に溜められる。
なお、収容容器はプラズマ原料の融点以上に加熱される。このため、収容容器内のプラズマ原料は、直ちに溶融され、液化した状態で収容容器に溜められることになる。
【0009】
このように、収容容器には、溶融金属が徐々に溜まるため、その回収のタイミングを知る上でも、収容量をモニタリングする必要がある。
溶融金属が収容された容器の収容量をモニタリングする方法としては、例えば容器内の廃原料の液面レベルを検出する方法がある。例えば特許文献2には、容器内に設置した金属棒と、容器に貯められた溶融金属との間の通電を検出することで、液面レベルを検出するセンサについて記載されている。
この他にも、温度変化によってスズの液面レベルを検出する温度センサや、レーザ光の反射によってスズの液面レベルを検出するレーザ変位計を用いた方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2017-219698号公報
【文献】特許第6241407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
プラズマ原料の金属等が収容される収容容器からその収容物を回収するには、例えば光源装置本体から収容容器を取り外す必要があった。この場合、発光動作及び収容容器の加熱を停止し、収容容器の収容物を固化した上で、大気開放された装置本体から収容容器が取り外される。その後、空の収容容器と交換するか、取り外した収容容器から収容物を除去して再度装置に取り付けるといった作業が必要となる。
【0012】
また、上記したような金属棒を用いたレベルセンサ等を利用している場合には、収容物に金属棒が浸った状態で、収容物が固化される。このため、光源装置から収容容器を取り外す際に、センシング用の金属棒も光源装置から取り外す必要が生じる、同様に、収容容器を取り付ける際には、金属棒も再度取り付ける必要があり、作業時間が延びる可能性があった。
【0013】
このように、プラズマ原料の金属等が含まれる収容容器の中身を回収する際に、収容容器を装置本体から取り外す方法では、装置の再起動に時間がかかり、ダウンタイムが長くなる可能性がある。このため、収容容器を取り外すことなくその収容物の回収を可能にする技術が求められている。
【0014】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、収容容器を取り外すことなくプラズマ原料である金属を含む収容物を回収することが可能な収容排出機構、光源装置、及び収容排出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る収容排出機構は、収容容器と、排出部と、温度制御部とを具備する。
前記収容容器は、プラズマ原料である金属を含む収容物を液相状態となる温度で収容する。
前記排出部は、前記収容容器の内部に連通し前記収容物が流入する流入口と前記収容物を排出する排出口とを有する排出管と、前記排出管の温度を調整する温調素子とを有する。
前記温度制御部は、前記排出管内の前記収容物が液相状態又は固相状態のいずれか一方の状態となるように、前記温調素子を制御して前記排出管の温度を切り替える。
【0016】
この収容排出機構では、プラズマ原料である金属を含む収容物を液相状態で収容する収容容器に連通して排出管が設けられる。排出管には温調素子が設けられ、排出管内の収容物が液相状態又は固相状態となるように排出管の温度が切り替えられる。これにより、収容容器を取り外すことなくプラズマ原料である金属を含む収容物を回収することが可能となる。
【0017】
前記排出部は、前記排出管の流路上に配置され、前記排出管の流路よりも断面積が小さい絞り流路を構成するアパーチャー部を有してもよい。
【0018】
前記排出管は、前記排出管の流路内面の下端の少なくとも一部が前記流入口の上端よりも高い位置となるように、前記排出管を屈曲させた屈曲部を有してもよい。
【0019】
前記アパーチャー部は、前記流入口と前記屈曲部との間に配置されてもよい。
【0020】
前記排出管は、前記流入口の下端が前記収容容器の内部の底面から所定距離だけ高い位置となるように前記収容容器に接続されてもよい。
【0021】
前記温度制御部は、前記収容物を排出する排出動作を行う場合、前記収容物が液相状態となるように前記排出管の温度を制御し、前記収容物を排出せずに前記収容物を貯留する貯留動作を行う場合、前記収容物が固相状態となるように前記排出管の温度を制御してもよい。
【0022】
前記収容排出機構は、さらに、前記収容容器内の前記収容物の収容量を検出する収容量センサを具備してもよい。この場合、前記温度制御部は、前記収容量センサの検出結果に基づいて、前記温調素子を制御してもよい。
【0023】
前記排出動作は、前記排出口側の圧力が前記収容容器の内部の圧力に略一致する状態、又は前記排出口側の圧力が前記収容容器の内部の圧力よりも小さい状態で実行されてもよい。
【0024】
前記排出口側の圧力及び前記収容容器の内部の圧力は、大気圧以下であってもよい。
【0025】
前記収容排出機構は、さらに、前記排出管の前記排出口から排出される前記収容物を回収する回収容器を具備してもよい。
【0026】
前記回収容器は、断熱容器として構成されてもよい。
【0027】
前記回収容器は、容器内部を減圧する排気部に接続されてもよい。
【0028】
前記排出部は、前記排出管と前記回収容器とを接続する回収管を有してもよい。この場合、前記温調素子は、前記回収管の温度を調整してもよい。
【0029】
前記回収管は、前記回収容器に着脱可能に接続されるフランジ部と、前記フランジ部から前記回収容器の内部に突出するノズル部とを有してもよい。
【0030】
本発明の一形態に係る光源装置は、光源部と、収容容器と、排出部と、温度制御部 とを有する。
前記光源部は、金属を含むプラズマ原料から極端紫外光を放射するプラズマを発生させる。
前記収容容器は、前記プラズマから放散される金属を含むデブリを収容物として、前記収容物を液相状態となる温度で収容する。
前記排出物は、前記収容容器の内部に連通し前記収容物が流入する流入口と前記収容物を排出する排出口とを有する排出管と、前記排出管の温度を調整する温調素子とを有する。
前記温度制御部は、前記排出管内の前記収容物が液相状態又は固相状態のいずれか一方の状態となるように、前記温調素子を制御して前記排出管の温度を切り替える。
【0031】
本発明の一形態に係る収容排出方法は、プラズマ原料である金属を含む収容物が液相状態となるように収容容器の温度を調整することを含む。
前記収容容器の内部に連通する排出管内の前記収容物が、液相状態又は固相状態のいずれか一方の状態となるように、前記排出管に設けられた温調素子を制御して前記排出管の温度が切り替えられる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、収容容器を取り外すことなくプラズマ原料である金属を含む収容物を回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態に係るホイルトラップを備えたEUV光源装置の構成を示す概略断面図である。
【
図3】デブリ収容排出部の構成例を示す模式的な断面図である。
【
図5】排出管の役割について説明するための模式図である。
【
図6】アパーチャー部の役割について説明するための模式図である。
【
図7】比較例として挙げる排出管の構成例を示す模式図である。
【
図8】デブリ収容排出部の基本的な動作例を示すフローチャートである。
【
図9】デブリ収容排出部の基本的な動作の流れを示す模式図である。
【
図10】デブリ収容排出部の基本的な動作の流れを示す模式図である。
【
図11】デブリ収容排出部の基本的な動作の流れを示す模式図である。
【
図12】デブリ収容排出部の基本的な動作の流れを示す模式図である。
【
図13】デブリ収容排出部の基本的な動作の流れを示す模式図である。
【
図14】デブリ回収容器を含むデブリ収容排出部の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態に係るホイルトラップを備えたEUV光源装置1の構成を示す概略断面図である。本実施形態では、EUV光源装置1として、検査装置用のLDP方式の極端紫外光光源装置(EUV光源装置)を例に挙げて説明する。
【0036】
なお図においてX軸、Y軸およびZ軸は相互に直交する3軸方向を示しており、Z軸は鉛直方向(重力方向)に相当する。したがって、
図1は、EUV光源装置1を水平方向に切断したときの断面図である。
【0037】
(全体構成)
図1において、EUV光源装置1は、極端紫外光(EUV光)を放出する。この極端紫外光の波長は、例えば、13.5nmである。
具体的には、EUV光源装置1は、放電を発生させる一対の放電電極EA,EBの表面にそれぞれ供給された液相のプラズマ原料SA,SBにレーザビームLB等のエネルギービームを照射して当該プラズマ原料SA,SBを気化させる。その後、放電電極EA,EB間の放電領域Dの放電によってプラズマPを発生させる。プラズマPからはEUV光が放出される。
【0038】
EUV光源装置1は、例えば、リソグラフィに使用されるマスクの検査装置の光源装置として使用可能である。この場合、プラズマPから放出されるEUV光の一部が窓部27(光取出し部)から取り出され、マスク検査装置に導光される。マスク検査装置は、EUV光源装置1の窓部27から放出されるEUV光を検査光として、マスクのブランクス検査またはパターン検査を行う。ここで、EUV光を用いることにより、5nm~7nmプロセスに対応することができる。
【0039】
EUV光源装置1は、光源部2と、デブリ捕捉部3と、デブリ収容排出部4(
図2参照)とを有する。
図2は、デブリ捕捉部3の詳細を示す側断面図である。光源部2は、LDP方式に基づいてEUV光を発生させる。デブリ捕捉部3は、光源部2から放射されるEUV光とともに飛散するデブリを捕捉するデブリ低減装置である。デブリ収容排出部4は、光源部2で発生したデブリおよびデブリ捕捉部3で捕捉されたデブリなどを収容する。
【0040】
(光源部の構成)
光源部2は、内部で生成されるプラズマPを外部と隔離するチャンバ11を備える。チャンバ11は、プラズマPを生成する光源部2を収容するプラズマ生成室を形成する。チャンバ11は、剛体、例えば、金属製の真空筐体であり、その内部は、プラズマ原料SA,SBを加熱励起するための放電を良好に発生させ、EUV光の減衰を抑制するために、図示しない真空ポンプにより所定圧力以下の減圧雰囲気に維持される。
【0041】
光源部2は、一対の放電電極EA,EBを備える。放電電極EA,EBは、同形同大の円板状部材であり、例えば、放電電極EAがカソードとして使用され、放電電極EBがアノードとして使用される。放電電極EA,EBは、例えば、モリブデン(Mo)、タングステン(W)またはタンタル(Ta)などの高融点金属から形成される。放電電極EA,EBは、互いに離隔した位置に配置され、放電電極EA,EBの周縁部が近接している。このとき、プラズマPが生成される放電領域Dは、放電電極EA,EBの周縁部が互いに最も接近した放電電極EA,EB間の間隙に位置する。
【0042】
チャンバ11の内部には、液相のプラズマ原料SAが貯留されるコンテナCAと、液相のプラズマ原料SBが貯留されるコンテナCBとが配置される。各コンテナCA,CBには、加熱された液相のプラズマ原料SA,SBが供給される。液相のプラズマ原料SA,SBは、例えば、スズ(Sn)であるが、リチウム(Li)であってもよい。
【0043】
コンテナCAは、放電電極EAの下部が液相のプラズマ原料SAに浸されるようにプラズマ原料SAを収容する。コンテナCBは、放電電極EBの下部が液相のプラズマ原料SBに浸されるようにプラズマ原料SBを収容する。従って、放電電極EA,EBの下部には、液相のプラズマ原料SA,SBが付着する。放電電極EA,EBの下部に付着した液相のプラズマ原料SA,SBは、放電電極EA,EBの回転に伴って、プラズマPが生成される放電領域Dに輸送される。
【0044】
放電電極EAは、モータMAの回転軸JAに連結され、放電電極EAの軸線周りに回転する。放電電極EBは、モータMBの回転軸JBに連結され、放電電極EBの軸線周りに回転する。モータMA,MBは、チャンバ11の外部に配置され、各モータMA,MBの回転軸JA,JBは、チャンバ11の外部から内部に延びる。回転軸JAとチャンバ11の壁の間の隙間は、シール部材PAで封止され、回転軸JBとチャンバ11の壁の間の隙間は、シール部材PBで封止される。シール部材PA,PBは、例えば、メカニカルシールである。各シール部材PA,PBは、チャンバ11内の減圧雰囲気を維持しつつ、回転軸JA,JBを回転自在に支持する。
【0045】
EUV光源装置1は、制御部12と、パルス電力供給部13と、レーザ源(エネルギービーム照射装置)14と、可動ミラー16をさらに備える。制御部12、パルス電力供給部13、レーザ源14および可動ミラー16は、チャンバ11の外部に設置される。制御部12は、後述するように、EUV光源装置1の各部の動作を制御する。例えば、制御部12は、モータMA,MBの回転駆動を制御し、放電電極EA,EBを所定の回転数で回転させる。また、制御部12は、パルス電力供給部13の動作、レーザ源14からのレーザビームLBの照射タイミングなどを制御する。
【0046】
パルス電力供給部13から延びる2つの給電線QA,QBは、フィードスルーFA,FBを通過して、チャンバ11の内部に配置されたコンテナCA,CBにそれぞれ接続される。フィードスルーFA,FBは、チャンバ11の壁に埋設されてチャンバ11内の減圧雰囲気を維持するシール部材である。コンテナCA,CBは、導電性材料から形成され、各コンテナCA,CBの内部に収容されるプラズマ原料SA,SBもスズなどの導電性材料である。各コンテナCA,CBの内部に収容されているプラズマ原料SA,SBには、放電電極EA,EBの下部がそれぞれ浸されている。従って、パルス電力供給部13からパルス電力がコンテナCA,CBに供給されると、そのパルス電力は、プラズマ原料SA,SBをそれぞれ介して放電電極EA,EBに供給される。
【0047】
パルス電力供給部13は、放電電極EA,EBへパルス電力を供給することにより、放電領域Dで放電を発生させる。そして、各放電電極EA,EBの回転に基づいて放電領域Dに輸送されたプラズマ原料SA,SBが放電時に放電電極EA,EB間に流れる電流により加熱励起されることで、EUV光を放出するプラズマPが生成される。
【0048】
レーザ源14は、放電領域Dに輸送された放電電極EAに付着したプラズマ原料SAにエネルギービームを照射して、当該プラズマ原料SAを気化させる。レーザ源14は、例えば、Nd:YVO4(Neodymium-doped Yttrium Orthovanadate)レーザ装置である。このとき、レーザ源14は、波長1064nmの赤外領域のレーザビームLBを発する。ただし、エネルギービーム照射装置は、プラズマ原料SAの気化が可能であれば、レーザビームLB以外のエネルギービームを発する装置であってもよい。
【0049】
レーザ源14から放出されたレーザビームLBは、例えば、集光レンズ15を含む集光手段を介して可動ミラー16に導かれる。集光手段は、放電電極EAのレーザビーム照射位置におけるレーザビームLBのスポット径を調整する。集光レンズ15および可動ミラー16は、チャンバ11の外部に配置される。
【0050】
集光レンズ15で集光されたレーザビームLBは、可動ミラー16により反射され、チャンバ11の側壁11aに設けられた透明窓20を通過して、放電領域D付近の放電電極EAの周縁部に照射される。可動ミラー16の姿勢を調整することにより、放電電極EAにおけるレーザビームLBの照射位置が調整される。なお、可動ミラー16の姿勢の調整は、作業員が手動で実施してもよいし、後述する監視装置36からのEUV光の強度情報に基づき、制御部12が可動ミラー16の姿勢制御を行ってもよい。この場合、可動ミラー16は、図示を省略した可動ミラー駆動部により駆動される。
【0051】
放電領域D付近の放電電極EAの周縁部にレーザビームLBを照射するのを容易にするため、放電電極EA,EBの軸線は平行ではない。回転軸JA,JBの間隔は、モータMA,MB側が狭く、放電電極EA,EB側が広くなっている。これにより、放電電極EA,EBの対向面側を接近させつつ、放電電極EA,EBの対向面側とは反対側をレーザビームLBの照射経路から退避させることができ、放電領域D付近の放電電極EAの周縁部にレーザビームLBを照射するのを容易にすることができる。
【0052】
放電電極EBは、放電電極EAと可動ミラー16との間に配置される。可動ミラー16で反射されたレーザビームLBは、放電電極EBの外周面付近を通過した後、放電電極EAの外周面に到達する。このとき、レーザビームLBが放電電極EBで遮光されないように、放電電極EBは、放電電極EAよりも、モータMB側の方向(
図1の左側)に退避される。放電領域D付近の放電電極EAの外周面に付着された液相のプラズマ原料SAは、レーザビームLBの照射により気化され、気相のプラズマ原料SAとして放電領域Dに供給される。
【0053】
放電領域DでプラズマPを発生させるため(気相のプラズマ原料SAをプラズマ化するため)、パルス電力供給部13は、放電電極EA,EBに電力を供給する。そして、レーザビームLBの照射により放電領域Dに気相のプラズマ原料SAが供給されると、放電領域Dにおける放電電極EA,EB間で放電が生じる。放電電極EA、EB間で放電が発生すると、放電領域Dにおける気相のプラズマ材料SAが電流により加熱励起されて、プラズマPが発生する。生成されたプラズマPから放射されるEUV光は、チャンバ11の側壁11bに設けられた貫通孔である第1窓部17を通ってデブリ捕捉部3へ入射する。
【0054】
(デブリ捕捉部)
デブリ捕捉部3は、チャンバ11の側壁11bに配置された接続チャンバ21を有する。接続チャンバ21は、剛体、例えば、金属製の真空筐体であり、その内部は、チャンバ11と同様、EUV光の減衰を抑制するために所定圧力以下の減圧雰囲気に維持される。接続チャンバ21は、チャンバ11と利用装置35(
図2参照)との間に接続される。
【0055】
接続チャンバ21の内部空間は、第1窓部17を介してチャンバ11と連通する。接続チャンバ21は、第1窓部17から入射したEUV光を利用装置35(例えばマスク検査装置)へ導入する光取出し部としての第2窓部27を有する。第2窓部27は、接続チャンバ21の側壁21aに形成された所定形状の貫通孔である。
【0056】
一方、プラズマPからはEUV光とともにデブリDB(
図2参照)が高速で様々な方向に放散される。デブリDBは、プラズマ原料SA、SBであるスズ粒子およびプラズマPの発生に伴いスパッタリングされる放電電極EA、EBの材料粒子を含む。これらのデブリDBは、プラズマPの収縮および膨張過程を経て、大きな運動エネルギーを得る。すなわち、プラズマPから発生するデブリDBは、高速で移動するイオン、中性粒子および電子を含む。このようなデブリDBは、利用装置35に到達すると、利用装置35内の光学素子の反射膜を損傷または汚染させ、性能を低下させることがある。
【0057】
そこで、デブリ捕捉部3は、デブリDBが利用装置35に侵入しないようにするため、回転式ホイルトラップ22(本実施形態のホイルトラップに相当)と、固定式ホイルトラップ24とを有する。回転式ホイルトラップ22および固定式ホイルトラップ24は、接続チャンバ21の内部に配置される。固定式ホイルトラップ24は、接続チャンバ21から利用装置35へと進行するEUV光の光路上において、回転式ホイルトラップ22と利用装置35との間に設けられる。なお、一つのデブリ捕捉部3においては、回転式ホイルトラップ22と固定式ホイルトラップ24の双方を設けてもよいし、いずれか一方を設けてもよい。
【0058】
回転式ホイルトラップ22は、ホイルを回転させてデブリに衝突させることでデブリを捕集するトラップである。回転式ホイルトラップ22は、例えば接続チャンバ21の外部に設けられモータMCにより駆動される。
固定式ホイルトラップ24は、複数のホイルを固定して配置し、ホイルの周りにヘリウムやアルゴン等のガスを局在化させて圧力が比較的高い部分を形成する。この領域にデブリが侵入することで、速度が低下し進行方向が変わったデブリが捕集される。
各トラップで捕集されたデブリは、後述するデブリ収容容器40に収容される。
【0059】
(デブリ収容排出部)
デブリ収容排出部4は、デブリDBを一時的に収容するデブリ収容容器40、およびデブリ収容容器40に収容されるデブリを外部に排出するデブリ排出部41を備える。デブリ収容容器40は、接続チャンバ21の外部に配置され、接続チャンバ21に取り付けられる。デブリ収容容器40は、デブリDBおよび廃原料を含む収容物SUを貯蔵する。
【0060】
接続チャンバ21の底壁には、デブリ収容容器40の内部空間と接続チャンバ21の内部空間を連通させる貫通孔30が形成されている。デブリ収容容器40は、上部にフランジ部31を備える。フランジ部31で囲まれたデブリ収容容器40の開口部は、接続チャンバ21の貫通孔30に重ねられる。そして、フランジ部31が接続チャンバ21の底壁に、例えば、ネジで固定されることで、デブリ収容容器40が接続チャンバ21に取り付けられる。フランジ部31と接続チャンバ21の底壁の間の間隙は、ガスケット32により封止される。遮熱板23は、直立した状態で貫通孔30の上方に配置される。排出孔26の排出口は、貫通孔30の上方に配置される。このとき、遮熱板23および排出孔26からのデブリDBの落下位置にデブリ収容容器40が配置される。
【0061】
排出孔26を介してカバー部材25の外に排出された廃原料は、重力方向に落下し、接続チャンバ21の下方(
図2の下側)に配置されているデブリ収容容器40に溜められる。一方、プラズマPから様々な方向に放散されるデブリDBの一部は、チャンバ11の窓部17を通じて接続チャンバ21に侵入すると、遮熱板23の窓部17と対面する面に堆積する。遮熱板23に堆積したデブリDBは、プラズマPからの放射により溶融し、ある程度の量に達すると、液滴となって重力により遮熱板23の下方に移動する。そして、遮熱板23の下方に移動したデブリDBが遮熱板23から離脱し、接続チャンバ21の下方へ落下することで、デブリ収容容器40に収容される。
【0062】
このように遮熱板23は、プラズマPから回転式ホイルトラップ22へのEUV放射を制限して回転式ホイルトラップ22の過熱を防止したり、開口部KAによりプラズマPから放出されるEUV光の一部を取り出し可能とするのみならず、回転式ホイルトラップ22に向けて進行するデブリDBをできるだけ少なくし、回転式ホイルトラップ22の負荷を減少させる。
【0063】
また、LDP方式のEUV光源装置1においては、放電部(放電電極EA、EBなど)に供給されるプラズマ原料(スズ)SA、SBの一部が漏出することがある。例えば、プラズマ原料SA、SBの一部は、コンテナCA、CBから漏出する場合がある。漏出したプラズマ原料SA、SBは、プラズマPの発生に寄与しないため、廃原料となる。上記した放電部から漏出したプラズマ原料SA、SBは、図示を省略した包囲部材により捕集される。
【0064】
包囲部材により廃原料として捕集されたプラズマ原料SA、SBをデブリ収容容器40に導くために、接続チャンバ21内には受け板部材(shovel)18が設置される。受け板部材18は、窓部17から貫通孔30にかけて掛け渡されるように傾斜姿勢で支持される。受け板部材18は、廃原料として捕集されたプラズマ原料SA、SBが受け板部材18上で融点以上に維持されるように、図示を省略した加熱手段(ヒータ)で加熱される。そして、包囲部材により廃原料として捕集されたプラズマ原料SA、SBおよび接続チャンバ21に侵入したデブリDBの一部は、受け板部材18に導かれてデブリ収容容器40に落下する。
【0065】
ここで、デブリDBの大部分はスズであり、廃材料もスズであるので、デブリ収容容器40は、スズ回収容器(Tin Dump)と呼ぶこともできる。またデブリ収容容器40の周囲には、デブリ収容容器40を加熱する収容容器ヒータ45が設けられている。加熱手段は、デブリ収容容器40本体に埋設されていてもよい。
EUV光源装置1の稼働中では、収容容器ヒータ45に給電することによって、デブリ収容容器の内部は、スズの融点以上に加熱され、デブリ収容容器40内部に蓄積されたスズは液相にされる。
【0066】
デブリ収容容器40の内部のスズを液相とする理由は、デブリ収容容器40の内部に蓄積されるデブリDBが固化すると、デブリDBが落下しやすい地点での蓄積物が、あたかも鍾乳洞の石筍のように成長するからである。
デブリDBの蓄積物が石筍状に成長すると、例えば、カバー部材25の排出孔26がデブリDBにより封鎖されてカバー部材25内にデブリDBが蓄積される。このとき、カバー部材25内に蓄積されたデブリDBの少なくとも一部が回転式ホイルトラップ22に接触し、回転式ホイルトラップ22の回転を妨げたり、回転式ホイルトラップ22を損傷したりすることがある。
あるいは、カバー部材25に設けられている出射側開口部KOA、KOBの一部がカバー部材25内に蓄積されたデブリDBにより封鎖されて、出射側開口部KOA、KOBを通過するEUV光の一部が遮られることもある。
よって、デブリ収容容器40の内部の収容物であるスズを液相にすることで、デブリ収容容器40内でスズを平坦化し、石筍のような成長を回避しながらデブリ収容容器40内にスズを貯蔵することが可能となる。
【0067】
接続チャンバ21の外部には、EUV光を監視する監視装置36が配置される。監視装置36は、EUV光を検出する検出器またはEUV光の強度を測定する測定器である。接続チャンバ21の壁には、EUV光が通過する貫通孔であるEUV光案内孔28が形成され、EUV光案内孔28と監視装置36と間には、EUV光が接続チャンバ21の外に漏れずに通過する案内管29が設けられている。
【0068】
遮熱板23には、開口部KAとは別の位置に、プラズマPから放出されるEUV光の一部を取り出すための任意の形状(例えば、円形)の開口部KBが設けられる。
プラズマPと開口部KBの中心部を結ぶ直線の延長線上には、監視装置36、EUV光案内孔28および案内管29が配置されている。従って、プラズマPから放出されるEUV光の一部は、チャンバ11の窓部17、遮熱板23の開口部KB、カバー部材25の入射側開口部KI、回転式ホイルトラップ22の複数のホイルの隙間、カバー部材25の出射側開口部KOB、接続チャンバ21の壁のEUV光案内孔28および案内管29の内腔を順次通過して、監視装置36に到達する。このようにして、EUV光を監視装置36によって監視することができる。
【0069】
(デブリ収容排出部の構成)
図3は、デブリ収容排出部の構成例を示す模式的な断面図である。デブリ収容排出部 は、デブリや廃材料等を一時的に収容するとともに、その収容物SUをEUV光源装置1の外部に排出する機構である。本実施形態では、デブリ収容排出部は、収容排出機構に相当する。デブリ収容排出部4は、デブリ収容容器40と、デブリ排出部41と、レベルセンサ42と、温度制御系43とを有する。
【0070】
デブリ収容容器40は、EUV光源装置1の稼働中にデブリ等を含む収容物SUを貯留するための容器である。デブリ収容排出部4には、さらに、収容容器ヒータ45と、収容容器温度センサ46とが設けられる。本実施形態では、収容容器ヒータ45及び収容容器温度センサ46を用いて、後述する温度制御系43により、デブリ収容容器40の温度が適宜制御される。
【0071】
デブリ収容容器40は、収容物SUを液相状態となる温度で収容する。本実施形態では、デブリ収容容器40は、収容容器に相当する。
デブリ収容容器40に収容される収容物SU(デブリおよび廃材料)は、少なくともEUV光源装置1が稼働中は液相状態に維持される。収容物の大部分はスズであるので、デブリ収容容器40は、内部に収容する収容物SUの温度がスズの融点(約232℃)以上となるように加熱される。このように収容物SUには、プラズマ原料である金属が含まれ、液体金属として貯留される。
デブリ収容容器40は、収容物SUを液相状態となる温度で保持することが可能な材料で構成される。デブリ収容容器40の材料としては、典型的にはステンレス鋼が用いられるが、これに限定されるわけではない。
【0072】
本実施形態では、デブリ収容容器40は、凹状の容器であり、上記したフランジ部31と、上側開口部47と、接続開口部48とを有する。上側開口部47は、デブリ収容容器40の上側に設けられた開口である。フランジ部31は、上側開口部47を囲うように配置され、デブリ収容容器40の側面から外側に突出する。接続開口部48は、デブリ収容容器40の側面に設けられ、後述する排出管50が接続される貫通孔である。
【0073】
デブリ収容容器40は、上側開口部47が接続チャンバ21の底面部に設けられた貫通孔30に重なるように位置決めされた状態で、例えば、ねじを用いてフランジ部31を接続チャンバ21の底壁に固定されることにより取り付けられる。
この時、フランジ部31と接続チャンバ21との間には、真空状態を維持するためのシール部材(ガスケット32)が設けられる。これにより、デブリ収容容器40の内部は、接続チャンバ21と同じ圧力となる。
【0074】
デブリ収容容器40は、例えば四角柱型の容器として構成される。この場合、
図3に示すように、デブリ収容容器40の壁部(ここでは側壁)には、収容容器ヒータ45や収容容器温度センサ46を埋設して取り付けるための孔状の取付部49が設けられる。このように、収容容器ヒータ45や収容容器温度センサ46を容器の壁部に埋設することで、デブリ収容容器40の温調制御を精度よく、効率的に行うことが可能となる。
この他、デブリ収容容器40の形状や、取付部49の構成等は限定されない。例えば円筒型の容器が用いられてもよい。この場合、容器の外周を囲むように収容容器ヒータ45が設けられてもよい。
【0075】
収容容器ヒータ45は、デブリ収容容器40を加熱する素子であり、収容容器の加熱手段として機能する。上記したように、収容容器ヒータ45は、収容物SUが収容される容器内部を取り囲む壁部の一部に埋設される。
収容容器ヒータ45としては、例えば、発熱体をシース(金属パイプ)で覆ったカートリッジヒータが使用される。カートリッジヒータのシースは、先端が封止された状態で取付部49に挿入されデブリ収容容器40に保持される。カートリッジヒータの発熱体としては、例えば、ニクロム線が用いられる。この場合、ニクロム線に電流を給電することによりデブリ収容容器40を加熱することが可能となる。
【0076】
収容容器温度センサ46は、デブリ収容容器40の温度を測定するセンサである。
収容容器温度センサ46としては、例えば、測温抵抗体(RTD:Resistance Temperature Detector)が用いられる。測温抵抗体は、金属または金属酸化物が温度変化によって電気抵抗値が変化する特性を利用し、その電気抵抗値を測定することで温度を測定する。測温抵抗体に使用される金属は種々存在するが、例えば、特性が安定し入手が容易な白金(Pt100)が用いられる。
なお、収容容器温度センサ46としては、測温抵抗体以外のセンサも使用可能であるが、測温抵抗体は、高精度な測定が可能であり、安定性および再現性に優れている。また、測温抵抗体は、電気的ノイズの影響も比較的受けにくいので、電気的ノイズを発生する放電部分を備えるEUV光源装置1の使用に好適である。
【0077】
本実施形態では、デブリ収容容器40の壁部に収容容器温度センサ46が埋設される。
収容容器温度センサ46の埋設を容易化するために、例えば、シース型の測温抵抗体センサを使用することができる。シース型の測温抵抗体センサは、抵抗素子とそれに接続されている導線がシース(金属パイプ)に挿入されるとともに、シース内部に絶縁物(酸化マグネシウム)が充填され、これらが一体形成される。シース型の測温抵抗体センサは、シースの先端が封止された状態で、収容容器温度センサ46用の取付部49に挿入されデブリ収容容器40に保持される。
この他、収容容器温度センサ46の具体的な構成は限定されず、例えば収容物SUが固相状態から液相状態となる温度範囲や、液相状態を維持する温度範囲で温度測定が可能な収容容器温度センサ46が適宜用いられてよい。
【0078】
デブリ排出部41は、デブリ等を含む収容物SUを排出するブロックであり、排出管50と、アパーチャー部51と、排出管ヒータ52とを有する。デブリ排出部41では、排出管ヒータ52を用いて、後述する温度制御系43により、排出管50の温度が適宜制御される。
【0079】
排出管50は、デブリ収容容器40の内部に連通する配管状の構造体であり、デブリ収容容器40内の収容物SUを排出する。排出管50は、収容物SUが流入する流入口53と、収容物SUを排出する排出口54とを有する。また流入口53から排出口54までの管状の空間が収容物SUが排出される流路となる。
排出管50は、デブリ収容容器40と同様に、収容物SUを液相状態となる温度で保持することが可能な材料で構成される。排出管50の材料としては、典型的にはステンレス鋼が用いられるが、これに限定されるわけではない。
【0080】
図3に示す例では、排出管50は、全体としてデブリ収容容器40の側方に突出して設けられる。具体的には、デブリ収容容器40の側面に設けられた接続開口部48に、排出管50の流入口53が接続される。
このように、排出管50の流路は、デブリ収容容器40の内部と空間的に接続される。このため、液相状態に維持されてデブリ収容容器40に一時的に収容されている収容物SU(デブリおよび廃材料)は、流入口53から排出管50に侵入する。この流入口53から侵入する収容物SUを液相状態のまま排出口54に導くことで、排出物SWを外部に排出することが可能となる。
なお、排出管50はデブリ収容容器40内に流入口53が突出するように設けられてもよい。
【0081】
排出管50には、排出管50本体を屈曲させた屈曲部55が設けられる。具体的には、屈曲部55は、排出管50の流路内面の下端の少なくとも一部が流入口53の上端よりも高い位置となるように、排出管50を屈曲させた部分である。
ここで、流路内面の下端とは、排出管50の内側に構成される流路上の各位置において最も低くなる部分である。排出管50を液体が流れる場合には、その流量に関わらず、液体は流路内面の下端を通って流れることになる。また、流入口53の上端は、流入口53において最も高い部分である。なお、流入口53において最も低い部分は、流入口53の下端となる。以下では流入口53の上端及び下端をそれぞれP1及びP2と記載する。
【0082】
図3では、排出管50を直角に曲げる2つの屈曲部55a及び55bが設けられる。デブリ収容容器40から水平方向に突出した排出管50は、屈曲部55aで垂直方向上向きに屈曲され、屈曲部55bで水平方向に屈曲される。この場合、流入口53から見て屈曲部55bを超えた位置にある流路内面の下端P3が、流入口53の上端P1よりも高くなる。この結果、流入口53から屈曲部55aを通って屈曲部55bの下端P3までの流路は、常に収容物SUで満たされた状態となる。
【0083】
また
図3に示すように、排出管50は、流入口53の下端P2がデブリ収容容器40の内部の底面33から所定距離だけ高い位置となるようにデブリ収容容器40に接続される。本実施形態では、流入口53の位置は、デブリ収容容器40の側面に設けられた接続開口部48の位置と同じ位置に設けられる。この場合、接続開口部48は、デブリ収容容器40の底面33から所定距離だけ高い位置に設けられるともいえる。これにより、排出管50には、デブリ収容容器40の底面33よりも一定の距離だけ上側から収容物SUが流入することになる。
【0084】
アパーチャー部51は、排出管50の流路上に配置され、排出管50の流路よりも断面積が小さい絞り流路56を構成する。すなわち、アパーチャー部51は、排出管50が構成する流路に絞り流路56を導入して、流路の断面積を小さくする素子である。
アパーチャー部51としては、例えば排出管50の流路よりも断面積の小さい貫通孔を備える素子が用いられる。この貫通孔が、絞り流路56となる。貫通孔の位置は、典型的には、排出管50の流路の断面の中央に設定される。
またアパーチャー部51は、排出管50の流入口53と屈曲部55との間に配置される。従って、アパーチャー部51の絞り流路は、常に収容物SUで満たされた状態となる。アパーチャー部51の機能については、
図6等を参照して、後に詳しく説明する。
【0085】
排出管ヒータ52は、排出管50を加熱して排出管50の温度を変化させる。
例えば排出管ヒータ52を動作させると、例えば排出管50の温度が室温よりも高くなる。また排出管ヒータ52の出力を制御することで、排出管50の温度を調整することが可能である。また排出管ヒータ52の動作を停止すると、排出管50の温度が下がり室温に戻る。このように、排出管ヒータ52は、排出管50の温度を調整する温調素子として機能する。
【0086】
例えば、デブリ収容容器40内の収容物SUを、排出管50の流路を介して外部に排出するためには、排出管50の流路を流れる収容物SUの温度を、収容物SUが液相状態となる温度(スズの融点以上の温度)まで上昇させる必要がある。そこで、本実施形態では、排出管ヒータ52を用いて、排出管50が加熱される。
【0087】
排出管ヒータ52としては、例えば、細管ヒータが用いられる。細管ヒータは、発熱体である電熱線(典型的にはニクロム線)を曲げ可能に構成された外皮膜で包んだ細線状の素子である。細管ヒータは、例えば排出管50の全体にわたって巻き回される。
この他、排出管ヒータ52の具体的な構成は限定されず、排出管50を適正に加熱可能な任意のヒータ素子が用いられてよい。
また排出管50の温度を測定するために、排出管温度センサ等が設けられてもよい。
【0088】
レベルセンサ42は、デブリ収容容器40の内部に設けられ、デブリ収容容器40に一時的に収容され液相状態で貯留される収容物SUの液面レベルを検出する液面レベルセンサである。収容物SUの液面レベルは、収容物SUがどのくらい容器内に溜まっているかを示す指標であり、デブリ収容容器40における収容物SUの収容量を表す。従ってレベルセンサ42は、デブリ収容容器40内の収容物SUの収容量を検出する収容量センサであるとも言える。
【0089】
レベルセンサ42としては、例えば多点式熱電対が用いられる。
図3には、上下方向に沿って複数の測定点34が設けられた熱電対型のレベルセンサが模式的に図示されている。各測定点での温度の変化を測定することが可能である。従って、例えば測定点34が液面に浸かった場合には、温度が上昇し、液面から出た場合には、温度が減少する。従って、温度が変化した測定点34の位置が液面レベルとして検出される。
【0090】
レベルセンサ42の具体的な構成は限定されない。例えば液体金属である収容物SUとの通電を検出することで表面位置を検出するセンサ等が用いられてもよい。またレーザ光等を用いた測距センサが用いられてもよい。この他、収容物SUの収容量を測定することが可能なセンサ等が用いられてもよい。
【0091】
図4は、温度制御系43の一例を示すブロック図である。
温度制御系43は、デブリ収容排出部4の各部の温度を制御する制御系である。温度制御系43は、収容容器加熱用給電部60と、排出管加熱用給電部61と、温度検出部62と、レベル検出部63と、制御部64とを有する。
【0092】
収容容器加熱用給電部60は、デブリ収容容器40に設けられた複数の収容容器ヒータ45(カートリッジヒータ)の各々に、加熱用の電力を個別に供給する電力源である。収容容器加熱用給電部60は、電力配線のペアを介して各収容容器ヒータ45に接続される。
排出管加熱用給電部61は、排出管50に設けられた排出管ヒータ52に、加熱用の電力を供給する電力源である。排出管加熱用給電部61から延びる1対の電力配線が、排出管50に巻き付けられた細管ヒータである排出管ヒータ52の両端にそれぞれ接続される。
【0093】
温度検出部62は、収容容器温度センサ46(測温抵抗体)に給電し、当該センサから温度情報を検出(電気抵抗値の検出)する。また。温度検出部62は、収容容器温度センサ46からの温度情報を制御部64に送信する。
レベル検出部63は、レベルセンサ42(多点式熱電対)に給電し、当該センサから収容物SUの液面レベル(測定点34の位置)を検出する。また。レベル検出部63は、レベルセンサ42からの液面レベルの情報を制御部64に送信する。
温度検出部62及びレベル検出部63は、例えば制御部64との通信を行う通信ユニットとして構成される。あるいは、各センサを駆動するための専用の装置として構成されてもよい。
【0094】
制御部64は、収容容器ヒータ45を動作させてデブリ収容容器40の温度を制御し、排出管ヒータ52を動作させて排出管50の温度を制御する。制御部64は、例えばCPUやメモリ(RAM、ROM)等のコンピュータに必要なハードウェア構成を有する演算装置である。CPUが所定の制御プログラムをRAMにロードして実行することにより、収容物の排出や貯留を切り替える処理等が実行される。
【0095】
まず、デブリ収容容器40の温度制御について説明する。
制御部64は、収容容器加熱用給電部60を制御することにより、収容容器ヒータ45への給電量や、給電のON/OFFを制御する。上記したように、例えばEUV光源装置1の稼働中は、収容容器ヒータ45がONに設定され、デブリ収容容器40内の収容物SUが液相状態となるように容器が加熱される。この時、収容容器温度センサ46の測定した温度情報に基づいて、収容物SUが液相状態となる温度を維持するように、収容容器ヒータへの給電量が制御される。これにより、収容物SUを液相状態のまま安定して貯留することが可能となる。
【0096】
次に、排出管50の温度制御について説明する。
制御部64は、排出管加熱用給電部61を制御することにより、排出管ヒータ52(細管ヒータ)への給電量や、給電のON/OFFを制御する。具体的には、制御部64は、排出管50内の収容物SUが液相状態又は固相状態のいずれか一方の状態となるように、排出管ヒータ52を制御して排出管50の温度を切り替える。このように温度を切り替える処理は、例えばEUV光源装置1の稼働中に適宜実行される。
本実施形態では、制御部64及び排出管加熱用給電部61が共働することで、温度制御部が実現される。
【0097】
例えば、収容物SUが液相状態となる温度では、収容物SUが流路内を流動するため、収容物SUを排出する排出動作が可能となる。従って、制御部64は、排出動作を行う場合、収容物SUが液相状態となるように排出管50の温度を制御する。
逆に、収容物SUが固相状態となる温度では、収容物SUが流路内で固化するため、収容物SUを排出せずに収容物SUを貯留する貯留動作が可能となる。従って、制御部64は、貯留動作を行う場合、収容物SUが固相状態となるように排出管50の温度を制御する
【0098】
本実施形態では、制御部64は、レベルセンサ42の検出結果に基づいて、排出管ヒータ52を制御する。すなわち、デブリ収容容器40内に溜まった収容物SUのレベルに応じて、排出動作及び貯留動作が切り替えて実行される。これにより、例えば収容物SUが一定のレベルに達した場合に収容物SUを排出して、デブリ収容容器40が溢れないようにするといった制御が可能となる。制御部64の具体的な動作については、後で詳しく説明する。
【0099】
(排出管及びアパーチャー部の役割)
図5は、排出管50の役割について説明するための模式図である。ここでは、収容物SUを排出する排出動作における排出管50の役割について説明する。
図5Aは、排出動作時のデブリ収容容器40及び排出管50の状態を示す模式図であり、
図5Bは、
図5Aに示す状態の後で収容物の排出が停止した状態を示す模式図である。
また
図5以降の図では、収容容器ヒータ45、収容容器温度センサ46、収容容器加熱用給電部60、及び温度制御系43(制御部64等)の図示を適宜省略する。
【0100】
図5Aでは、デブリ収容容器40の内部で収容物SUは液体状態であり、その液面レベルは比較的高いレベルである。また排出管50は加熱されており、排出管50の流路上の収容物SUも液体状態となっている。従ってデブリ収容排出部4は、収容物SUを排出する排出動作が可能な状態となっている。
【0101】
排出動作は、例えば排出口54側の圧力がデブリ収容容器40の内部の圧力よりも小さい状態で実行される。この場合、液体状態の収容物SUは排出口54側に吸い出されるようにして排出される。例えば、排出口54に接続されるデブリ回収容器70(
図14参照)の圧力を減圧することで、排出口54側の圧力を下げることが可能である。これにより、収容物SUを確実に排出させることが可能となる。
また、排出動作は、例えば排出口54側の圧力がデブリ収容容器40の内部の圧力に略一致する状態で実行されてもよい。この場合、液体状態の収容物SUは、自重によって排出口54から排出される。
なお、排出口54側の圧力は、収容物SUが排出される圧力レベルに設定されればよい。
例えば収容物SUが排出可能な圧力であれば、排出口54側の圧力が、デブリ収容容器40の内部の圧力より高く設定されてもよい。
【0102】
排出動作が開始されると、デブリ収容容器40の液面レベルは徐々に低下する。
上記したように、排出管50に屈曲部55a及び55bを設けることで、排出管50の流路には段差が発生する。収容物SUの液面レベルが低下を続けると、
図5Bに示すように、ある時点で、液面レベルと排出口54の下端(ここではP3)との高さ位置が一致するが、この状態では屈曲部55bと排出口54との間の収容物SUが略排出される。なお流入口53と屈曲部55aとの間の収容物SUは、流路上の段差を超えられないため、排出口54からの収容物SUの排出は自動的に停止する。また流入口53と屈曲部55aとの間には収容物SUが充填された状態となっているため、真空がやぶれることはない。
このように、排出管50に屈曲部55を設けることで、収容物SUの排出動作を安全に停止することが可能となる。
【0103】
なおデブリ収容容器40が収容する収容物SU(デブリおよび廃材料)には、主たる成分であるプラズマ原料(スズ)の他に、不純物SVが含まれる。
図5では、収容物SUに含まれる不純物SVが黒色の領域により模式的に図示されている。
不純物SVとしては、例えば物放電電極EAが放電の際にスパッタされて生じるモリブデン(Mo)、タングステン(W)またはタンタル(Ta)の微粒子が考えられる。また例えば、デブリおよび廃材料を構成する主たる成分であるスズとデブリ収容容器40を形成するステンレスとが反応してなる反応生成物等が不純物として混入することも考えられる。これらの不純物SVは、
図5に示すように、デブリ収容容器40の底部に沈殿している。あるいは、貯留された収容物SUの液面に不純物が浮いていることも考えられる。
このような不純物が排出管50に進入すると、排出管50の流路(特にアパーチャー部51の絞り流路56)が閉塞し、収容物SUを外部に排出することが困難になる可能性がある。
【0104】
一方で、排出管50の屈曲部55は、流路内面の下端(例えばP3)が、流入口53の上端P1よりも高く設定される。従って、収容物SUの液面レベルは、最も低くなる場合であっても流入口53の上端P1よりも高い位置で維持される。
これにより、収容物SUの液面に浮遊する不純物SVが、流入口53に侵入するといった事態を回避することが可能となる。
【0105】
また、流入口53の下端P2は、デブリ収容容器40の内部の底面33から所定距離だけ高い位置に設定される。このとき、所定距離は、排出管50から収容物SUが排出される際に、デブリ収容容器40の底面33に沈殿する不純物SVが排出管50に到達しない距離に設定される。
これにより、収容物SUの底面に沈殿する不純物SVが、流入口53に侵入するといった事態を回避することが可能となる。
このように、本実施形態では、不純物SVを巻き込まないように、排出管50が構成される。これにより、排出管50の流路が閉塞する事態を回避し、排出動作を安定して実行することが可能となる。
【0106】
図6は、アパーチャー部の役割について説明するための模式図である。
図6Aは、例えば
図5Aのように、収容物SUの排出が止まった後で、排出管50の加熱を停止して収容物SUが凝固(固化)した状態を示す模式図である。この場合、流入口53と屈曲部55aとの間に残った収容物SUが固相状態となる。以下では、固相状態となった収容物SUが、液相状態の収容物SUよりも濃いグレーの領域として模式的に図示されている。
【0107】
デブリや廃原料からなる収容物SUは、その主成分が液体金属(スズ)である。このような収容物SUが、液相状態から固相状態に相変化すると、体積が減少する。この結果、
図6Aのように、凝固した収容物SUが存在する排出管50の流路内には、実際には収容物SUの体積の減少に伴う空間(隙間)が生じる。このように、収容物SUが固相状態となった場合に生じる隙間は、EUV光源装置1側(デブリ収容容器40側)の減圧雰囲気を悪化させる原因となる場合があり得る。
【0108】
そこで、排出管50の流路上には、流路の断面積を小さくするアパーチャー部51が設けられている。アパーチャー部51は、上記したように流入口53と屈曲部55aとの間に設けられる。このため、収容物SUが液相状態の場合には、アパーチャー部51は収容物SUに完全に浸かった状態となり、アパーチャー部51が空隙に触れることはない。
このような状態で、収容物SUが固相状態になったとする。収容物SUには自重がかかるため排出管50の内側では、主に流路内面の上端側に空隙ができると考えられる。これに対し、アパーチャー部51の絞り流路は固相状態の収容物SUでふさがれているため、真空シールバルブとして機能する。すなわちアパーチャー部51は、液相状態ではバルブが開いた状態とり、固相状態ではバルブが閉じた状態となる。
【0109】
更にアパーチャー部51が構成する絞り流路56の断面積を適宜調整することで、排出管50の流路内に残留する収容物SUが凝固状態となったときの排出管50からの真空リーク量を低減させることができる。
本発明者らの実験によれば、アパーチャー部51の流路の断面積を適宜調整してヘリウムリークチェックによるリーク量を調査したこところ、EUV光源装置1の内部の圧力をEUV光源装置1の稼働に影響を及ぼさない程度の減圧雰囲気に維持することが可能であることが分かった。
【0110】
図6Bは、排出口54を下側に拡張した排出管50での排出動作を示す模式図である。
例えば収容物SUを所定の回収容器(
図14参照)に回収する場合を考える。
デブリ収容容器40は、EUV光源装置1の接続チャンバ21(
図2参照)に取り付けられるので、排出管50から排出される収容物SUを回収するデブリ回収容器(
図14等参照)は、デブリ収容容器40の下方に配置される。この場合、
図6A等に示すように、排出口54が横向きのままだと、収容物SUの回収に不具合を生じる場合がある。このため、排出口54を下側に向ける回収管80が継手65を介して設けられることがある。この回収管80は、排出口54と図示しないデブリ回収容器とをつなぐ配管となる。
【0111】
図7は、比較例として挙げる排出管50の構成例を示す模式図である。
図7に示す排出管Xは、
図6に示す排出管50からアパーチャー部51を取り除いた構成となっている。このようにアパーチャー部51が設けられていない場合に、下向きに設置された回収管80を介して収容物SUを排出することを考える。
図7に示すように、回収管80の出口が、排出管50の流入口53よりも下側に位置している場合、デブリ収容容器40に収容されている収容物SUは、その液面レベルが排出口の下端のレベルに到達した後も、サイフォンの原理により排出され続ける。この結果、収容物SUの液面レベルが下がり、液面に浮いている不純物SVが排出管50に侵入するといった可能性が生じる。
【0112】
これに対し、本実施形態では
図6bに示すように、排出管50の流路の内部にアパーチャー部51が設けられている。これにより、排出管50を流れる収容物SUの流量を絞ることが可能となり、サイフォン現象により液体が引っ張られる場合であって、排出口54から排出される収容物SUの量を抑えることが可能となる。
【0113】
またアパーチャー部51の絞り流路56の断面積を適宜調整したところ、上記したようなサイフォンの原理に基づく収容物の過剰排出を抑制することが可能となった。例えば
図6Aを参照して説明したように、排出物SWが固相状態となったときの排出管50からの真空リーク量を低減可能なように、絞り流路56の断面積を調整したところ、収容物SUの過剰排出を十分に抑制することが可能となった。
【0114】
このように、排出管50の流路の内部にアパーチャー部51を設け、アパーチャー部51の流路の断面積を適宜調整することで、収容物SUが排出管50内で凝固状態となったときの排出口54からの真空リーク量を低減することが可能となる。さらに、排出管50の排出口54から収容物SUを外部に放出する場合に、サイフォンの原理に伴う収容物の過剰排出を抑制することが可能となる。これにより、排出管50の流路が閉塞する事態を回避し、排出動作を安定して実行することが可能となる。
【0115】
図8は、デブリ収容排出部4の基本的な動作例を示すフローチャートである。
図8に示す処理は、デブリ収容排出部4に排出動作及び貯留動作を切り替えて実行させる処理である。この処理は、基本的には、排出管50の温度を制御する処理となっている。
【0116】
なお、
図8に示す処理のバックグラウンドでは、デブリ収容容器40内の収容物SUが液相状態となるように、デブリ収容容器40の温度制御が常時実行されているものとする。
具体的には、収容容器温度センサ46が測定した温度データに基づいて、収容容器加熱用給電部60から収容容器ヒータ45への給電量が制御され、デブリ収容容器40の温度が収容物SUが液相状態となる温度(例えば270℃)に維持される。これにより、収容物SUの排出動作をいつでも実行することが可能となる。
【0117】
まず、レベルセンサ42を用いてデブリ収容容器40内の収容物SUの液面レベルが検出される(ステップ101)。検出されたデータは、一時的に保存され、以降の閾値判定に用いられる。
次に、排出管50を加熱中であるか否かが判定される(ステップ102)。排出管50を加熱している場合とは、排出動作を実行している場合である。また排出管50を加熱していない場合とは、貯留動作を実行している場合である。すなわち、ステップ102では、排出動作及び貯留動作のどちらを実行しているかが判定されるとも言える。
【0118】
排出管50が加熱中でなく貯留動作中である場合(ステップ102のNo)、収容物SUの液面レベルLが、上限レベルLmax以上であるか否かが判定される(ステップ103)。ここで上限レベルLmaxは、例えば通常動作時にデブリ収容容器40に収容される収容物SUの最大の液面レベルLであり、排出動作を開始する液面レベルである。本実施形態では、上限レベルLmaxは、第1のレベルに相当する。
【0119】
液面レベルLが上限レベルLmax以上である場合(ステップ103のYes)、排出管ヒータ52の加熱がONに切り替わり排出動作が開始される(ステップ104)。この場合、排出管50は、収容物SUが液相状態となる所定温度になるまで加熱され、加熱がOFFに切り替えられるまでその温度を維持する。このように、貯留動作中にレベルセンサ42の検出結果が上限レベルLmaxに達した場合、排出動作が開始される。これにより、収容物SUの液面レベルが必要以上に高くなる前に、収容物SUを排出することができる。
【0120】
また液面レベルLが上限レベルLmax未満である場合(ステップ103のNo)、液面レベルLは、まだ低いとして排出管ヒータ52の加熱がOFFの状態が維持され(ステップ106)、貯留動作が継続される。
【0121】
またステップ102に戻り、排出管50が加熱中であり排出動作中である場合(ステップ102のYes)、収容物SUの液面レベルLが、下限レベルLmin以上であるか否かが判定される(ステップ105)。ここで下限レベルLminは、例えば通常動作時にデブリ収容容器40に収容される収容物SUの最小の液面レベルLであり、排出動作を停止して貯留動作を開始する液面レベルである。本実施形態では、下限レベルLminは、第2のレベルに相当する。
【0122】
液面レベルLが下限レベルLmin以下である場合(ステップ105のYes)、排出管ヒータ52の加熱がOFFに切り替わり排出動作が停止されて貯留動作が開始される(ステップ106)。このように、排出動作中にレベルセンサ42の検出結果が上限レベルLmaxよりも低い下限レベルLminに達した場合、貯留動作が開始される。これにより、収容物SUの液面レベルが必要以上に低くなる前に、収容物SUの排出を停止することができる。
【0123】
また液面レベルLが下限レベルLminより大きい場合(ステップ105のNo)、液面レベルLは、まだ高いとして排出管ヒータ52の加熱がONの状態が維持され(ステップ104)、排出動作が継続される。
【0124】
ステップ104及びステップ106で、排出管ヒータ52の加熱のON及びOFFが制御された後、デブリ収容排出部4の温度制御を終了するか否かが判定される(ステップ107)。温度制御を終了せずに継続する場合(ステップ107のNo)、ステップ101以降の処理が再度実行され、温度制御を終了する場合(ステップ107のYes)、
図8に示すループ処理が終了する。
以下、各ステップの動作について、より詳しく説明する。
【0125】
図9~
図13は、デブリ収容排出部4の基本的な動作の流れを示す模式図である。以下、
図9~
図13を参照して、
図8に示すデブリ収容排出部4の基本的な動作について説明する。
【0126】
ここでは、収容物SUの排出動作は、大気圧以下の圧力環境で行われる。すなわち、排出動作を実行する時の、排出口54側の圧力及びデブリ収容容器40の内部の圧力は、大気圧以下に設定される。
具体的には、デブリ収容容器40の内部の圧力は、EUV光源装置1の動作時の圧力レベルに設定される。また排出口54側の圧力は、例えばEUV光源装置1の動作時の圧力レベルと同程度かそれよりも低い圧力に設定される。
【0127】
これにより、収容物SUを発生させるEUV光源装置1の動作中に、排出動作を実行することが可能となる。すなわち、EUV光が発生させたまま収容物SUを回収することが可能となる。この結果、例えば収容物SUの回収に伴うEUV光源装置1のダウンタイムがなくなり、装置の稼働効率を大幅に向上することが可能となる。
以下では、
図8に示す処理がEUV光源装置1の動作中に実行されるものとする。
なお、
図8に示す処理は、EUV光源装置1のメンテナンス時等に、チャンバが大気開放された状態で実行することも可能である。
【0128】
まず
図9に示すように、デブリ収容容器40には、各種の経路をたどったデブリDBや廃材料が収容物SUとして一時的に収容される。
上記したように、収容物SUには、
図2に示すカバー部材25の下部に設けられた排出孔26から排出されるデブリDB・廃材料や、遮熱板23を自重により下方に移動して遮熱板23から落下したデブリ・廃材料や、放電電極EA及びEB等の放電部を包囲する包囲部材により捕集され受け板部材18を介して収容されたデブリDB・廃材料等が含まれる。
【0129】
以下では、デブリ収容容器40から排出された収容物SU(デブリDBや廃材料)のことを、排出物SWと記載する場合がある。例えば排出管50の中にある収容物SUは、排出物SWとなる、また排出管50の排出口54から排出される収容物SUも、排出物SWとなる。
【0130】
例えば
図9に示す状態では、収容物SUの液面レベルLは上限レベルL
maxには到達していない。また制御部64は、排出管加熱用給電部61より排出管50を加熱する排出管ヒータ52への給電を停止している(ステップ102のNo)従って、排出管50内の排出物SWの液相状態は維持されず凝固状態(固相状態)となっている。よって、デブリ収容容器40に収容される収容物SUは、排出管50からは排出されない。
一方、デブリDBや廃材料は常時発生するため、収容物SUの液面は徐々に増加する。
【0131】
次に
図10に示すように、デブリ収容容器40に収容される液相状態の収容物SUが増加し、収容物SUの液面レベルLが上限レベルL
maxに到達したとする。この場合、制御部64は、レベルセンサ42からの上限レベル到達信号を受信した時点で、液面レベルLが上限レベルL
max以上であると判定する(ステップ103のYes)。そして排出管加熱用給電部61を制御して排出管ヒータ52への給電を開始する(ステップ104)。
これにより、排出管50の流路内の排出物SWは液相状態となり、デブリ収容容器40内の収容物SUは、流入口53から排出管50に侵入し、排出管50の流路を介して排出口54から外部に排出される。
【0132】
なお、デブリ収容容器40に収容される収容物SUが、
図2に示す接続チャンバ21の内部に溢れ出すと接続チャンバ21内部が収容物SUにより汚染されてしまい、好ましくない。
このため、本実施形態では、収容物SUの液面レベルが接続チャンバ21の底面を越えない位置に警告レベルL
warningが設定される。上記した上限レベルL
maxは、この警告レベルL
warningより低いレベルに設定される。すなわち、デブリ収容容器40の底面からの高さが上限レベルL
maxの方が警告レベルL
warningよりも低く設定される。
【0133】
従って、収容物SUの液面レベルLが警告レベルLwarningに到達した場合、液面レベルLは上限レベルLmaxを超えたことになる。すなわち、収容物SUの液面レベルが上限レベルLmaxに到達した際、何等かのエラー(例えば、排出管ヒータ52が作動しないエラー)が発生し、収容物SUが排出管50の排出口から外部へ排出されなかったことになる。
【0134】
制御部64は、レベルセンサ42により液面レベルLが警告レベルLwarningに到達したことを検知した信号(警告レベル到達信号)を受信した場合、上記した何等かのエラーが発生したと判断し、エラー信号を外部に送出する。なお、制御部64は、警告レベル到達信号を受信した場合、EUV光源装置1の稼働を停止するようにしてもよい。
【0135】
なお
図8では、警告レベルL
warningに関する判定処理が省略されている。警告レベルL
warningが検出される場合、例えば液面レベルLは少なくとも上限レベルL
maxを超えている。このため、警告レベルL
warningに関する判定処理は、例えば液面レベルLが上限レベルL
maxを超えていると判定されたあと(ステップ103のYes)、ステップ104で排出管ヒータ52がONに設定される前に実行される。
【0136】
続いて
図11に示すように、デブリ収容容器40の液面レベルが所定のレベル(下限レベルL
min)に到達するまで、排出管加熱用給電部61より排出管ヒータ52への給電が維持される。すなわち、排出管50の流路内を流れる排出物SWの液相状態は維持され、上記排出管50からは排出物SWが継続して排出される。
【0137】
また排出管50には、屈曲部55が設けられている。上記したように、排出管50には、アパーチャー部51と排出口54との間で重力方向と反対側に屈曲した屈曲部55aと、更に重力方向と反対側に延びる排出管50がデブリ収容容器から離れる方向に屈曲した屈曲部55bとが設けられる。
従って排出管50は、デブリ収容容器40から離れる方向に延びた構造となり、排出管50の排出口54の高さが流入口53の上端(デブリ収容容器40との接続部分である接続開口部の上端)より高くなっている。この結果、
図12に示すように、デブリ収容容器40の収容物SUの液面レベルLが排出口54の下端のレベルと釣り合った時点で、排出口54からの排出物SWの排出が停止する(
図5参照)。
【0138】
図13では、
図12に示すように、液面レベルLが排出口54の下端のレベルと釣り合った状態で、排出管ヒータ52による加熱がOFFに切り替えられる。
ここでは、制御部64は、排出口54からの排出物SWの停止を検知した時点で、排出管加熱用給電部61から排出管ヒータ52への給電が停止される。
【0139】
排出口54からの排出物SWの停止を検知する方法としては、図示を省略したカメラ等の画像取得手段を用いた方法が挙げられる。この場合、排出口54や、排出管50内を撮影した画像について画像認識処理を実行し、排出物SWの排出が止まっているか否かが判定される。
また例えば、
図8に示すように、排出口54の下端レベルを排出物SWの排出停止レベル(下限レベルL
min)として、レベルセンサ42の検出結果を用いて判定してもよい。制御部64はこのようなセンサ(カメラやレベルセンサ42)からの検知情報により、排出口54からの排出物SWの停止を検知する。
【0140】
排出管ヒータ52への給電が停止されると、排出管50の中で、流入口53から屈曲部55aを通り排出口54の下端レベルに存在する排出物SWは、液相状態から固相状態(凝固状態)へと切り替わる。すなわち、デブリ収容容器40に収容される収容物SU(排出物SW)は、排出管50からは排出されなくなる。
【0141】
例えば、EUV光源装置1の稼働中は、接続チャンバ21と空間的に接続されるデブリ収容容器40側は、減圧雰囲気(真空状態)である。一方で、排出管50の流路に存在する収容物SUが凝固状態になった時点で、排出口54側ではデブリ回収容器70(
図14参照)が取り外され、排出口54側が大気雰囲気となる場合がある。そのため、排出管50は、収容物SUの排出と排出停止を調整するためのバルブ機能のみならず、EUV光源装置1側(デブリ収容容器40側)の減圧雰囲気を維持する真空シール用バルブとしても機能しなければならない。
【0142】
このため、排出管50には、排出口54の下端が、アパーチャー部51が位置する排出管50の流路の上端(流入口53の上端)より高くなるように屈曲部55が設定される。これにより、排出管50におけるアパーチャー部51が位置する流路部分は常に収容物SU(デブリ、廃原料)によって満たされた状態となり、アパーチャー部51が空隙と接触することがなくなる。この結果、排出管50は、真空シールバルブとして機能する(
図6参照)。
【0143】
このように、デブリ収容排出部4では、排出管ヒータ52の給電のON/OFFを切り替えて排出管50の温度を調整して、排出管50の流路内の収容物SU(デブリ、廃材料)の状態を液相状態又は固相状態に切り替えられる。これにより、排出管50自体を、デブリ収容容器40に一時的に収容される収容物SUの流れを制御するバルブとして機能させることが可能となる。
【0144】
(デブリ回収容器)
図14は、デブリ回収容器70を含むデブリ収容排出部4の構成例を示す模式図である。
図14に示すデブリ収容排出部4は、
図3を参照して説明した構成に加え、デブリ回収容器70と、回収管80とを有する。
【0145】
デブリ回収容器70は、排出管50の排出口54から排出される収容物SU(排出物SW)を回収する容器である。本実施形態では、デブリ回収容器70は、回収容器に相当する。
デブリ回収容器70は、容器本体71と、蓋部72と、内部容器73を有する。
容器本体71は、デブリ回収容器70の外壁部分を構成する凹型の容器である。容器本体71の上側には、開口部分を囲むようにフランジ部74が形成される。フランジ部74には、例えば、ねじを用いて蓋部72が取り付けられる。
【0146】
蓋部72は、容器本体71の開口部分を塞ぐことが可能なようにフランジ部74の形状に合わせて構成される。蓋部72には、回収口75と、排気口76とが設けられる。
回収口75は、排出管50から排出された排出物SW(収容物SU)を回収するための貫通孔であり、後述する回収管80が接続される。また、回収口75の上端には回収管80を接続するためのフランジ部77が設けられる(
図15参照)。
排気口76は、デブリ回収容器70内を排気するための貫通孔である。排気口76には、図示しない真空ポンプ等の排気部に接続された排気管78が接続される。このように、デブリ回収容器70は、容器内部を減圧する排気部に接続される。
また排気管78には、デブリ回収容器70内の圧力を測定する圧力計79が設けられる。
【0147】
容器本体71及び蓋部72は、例えばステンレス鋼を用いて形成される。また容器本体71のフランジ部74と蓋部72との間は、ガスケットにより封止される。この状態で、排気部に接続された排気口76から、デブリ回収容器70内の空間が排気される。この結果、デブリ回収容器70内は、減圧雰囲気となる。
【0148】
内部容器73は、容器本体71内に設けられ、回収管80を介して排出される排出物SW(収容物SU)を回収する容器である。内部容器73は、容器本体71に対して熱的に独立するように構成される。すなわち容器本体71との熱的な接触が最小限となるように、内部容器73が構成される。また、デブリ回収容器70は、減圧されているため、内部容器73は、真空断熱される。このようにデブリ回収容器70は、断熱容器として構成される。
【0149】
回収管80は、排出管50とデブリ回収容器70とを接続する配管であり、流入口81と排出口82とを有する。回収管80の流入口81は、継手65を介して排出管50に接続される。また、回収管80の排出口82は、デブリ回収容器70の内部に挿入される。
また、回収管80には、回収管ヒータ83が設けられる。回収管ヒータ83は、回収管80の温度を調整する素子である。回収管ヒータ83は、例えば細管ヒータであり、回収管80全体にまきつけて用いられる。なお、回収管ヒータ83は、排出管ヒータ52とは別に設けられてもよいし、排出管ヒータ52を延長して回収管ヒータ83として用いてもよい。
【0150】
図15は、回収管の構成例を示す模式図である。
図15には、排出管50とデブリ回収容器70とをつなぐ回収管80の断面構成の一例が模式的に図示されている。なお
図15では、排出管50の排出口54よりも上流側の構成と、細管型の回収管ヒータ83の図示を省略している。またデブリ回収容器70の構成が簡略化されている。回収管80は、十字型の継手部84と、接続管86と、フランジ部87と、先端部88とを有する。
【0151】
継手部84には水平方向の接続口85a及び85bと、上下方向の接続口85c及び85dが設けられる。このうち、接続口85aには、排出管50の排出口54が接続される。接続口85bには、例えば回収管80の温度を測定する回収管温度センサ(図示省略)が接続される。この場合、シース型の測温抵抗体センサ等が、接続口85に沿って挿入される。
また、下側の接続口85cには、デブリ回収容器70に挿入される接続管86が接続される。また上側の接続口85dには、回収管80を加熱する回収管ヒータ83として、カートリッジヒータ(図示省略)が挿入される。カートリッジヒータは、例えば接続管86や先端部88が構成する流路内に挿入され、内部から回収管80全体を加熱する。
【0152】
接続管86は、所定の内径を持った直線状の配管である。先端部88は、接続管86の先端に設けられ、接続管86の内径よりも細い内径を持った配管である。接続管86と先端部88とは、例えば径の異なる配管をつなげる継手等を介して接続される。あるいは、ろう付けや溶接等により接続されてもよい。
【0153】
フランジ部87は、接続管86の途中に設けられ、デブリ回収容器70に着脱可能に接続される。フランジ部87は、デブリ回収容器70の回収口75に設けられたフランジ部77と着脱可能なように接続される。フランジ部77及び87としては、着脱が容易なクイックカップリング等の真空継手が用いられる。この場合、フランジ部77及び87の間には、シール剤となるOリングが設けられる。
このように、回収管80では、接続管86の一部と、その先端に設けられた先端部88とにより、フランジ部87からデブリ回収容器70の内部に突出するノズル部が構成される。
【0154】
以下では、排出物SW(収容物SU)をデブリ回収容器70に回収する回収処理を実行する際の、各部の動作について説明する。この回収処理は、排出動作と連動して実行される。またここでは、EUV光源装置1の動作中に、回収処理が実行されるものとする。
【0155】
上記したように、EUV光源装置1の稼働中は、光源部2(
図1)、接続チャンバ21(
図2)の内部は、上記したように真空環境(減圧環境)にある。そのため、EUV光源装置1の稼働中に排出管50から排出物SWを排出しようとする場合は、デブリ収容容器40側は真空(減圧)状態である。
【0156】
ここで、本発明者は、デブリ収容容器40側を真空(減圧)状態とし、排出管50の排出口54側を大気圧雰囲気として、排出動作が適正に行われるかを確認する実験を行った。その結果、排気管78の排出口54からは排出物SWが排出されなかった。これは、デブリ収容容器40側と排出管50の排出口54側との気圧差のためであると考えられる。
一方、デブリ収容容器40側を真空(減圧)状態とし、排出口54側も真空(減圧)状態としたときは、排出管50内の収容物SUが液化した状態(
図10や
図11と同様の状態)では、排出口54から排出物SWが排出された。よって、EUV光源装置1の稼働中に排出管50から排出物SWを排出しようとする場合は、排出管50の排出口54側も真空(減圧)雰囲気とすることが好ましい。
【0157】
このような知見に基づき、本発明者は、EUV光源装置1の稼働中にデブリ収容排出部4から排出物SW(デブリ、廃材料)を排出してデブリ回収容器70に回収する場合に、デブリ回収容器70内を真空(減圧)状態とする方法を見出した。
このような回収方法を実現するため、
図14に示すデブリ回収容器70の蓋部72には、デブリ回収容器の内部の空気を排気して、真空(減圧)状態にするための排気口76と排気管78とが設けられている。なお、デブリ回収容器70内部の圧力は、排気管に設けた圧力計により測定される。
これにより、EUV光源装置1が稼働中であっても、簡単に排出物SWを回収することが可能となる。
【0158】
デブリ回収容器70内では、先端部88から滴下した排出物SWが、内部容器73に蓄えられる。この時、内部容器73は、液相状態である排出物SWの熱で温められる。また内部容器73は真空断熱容器としても機能する。このため、内部容器73に滴下した排出物SWは、液相状態のまま貯留されることになる。この結果、内部容器73内で凝固した排出物SWが局所的に成長するといった事態を回避することが可能となる。
【0159】
排出管50から排出物が排出されなくなると、デブリ回収容器70による回収が完了する。この場合、排出管ヒータ52がOFFに切り替えられ、排出管50内の排出物SWが固化状態となる(
図13参照)。この状態で、デブリ回収容器70が、回収管80からとり外される。この時、デブリ回収容器70の真空状態は大気開放される。従って、排出管50の排出口54側も回収管80を介して大気圧となる。このような場合であっても、排出管50及びアパーチャー部51による真空シールが機能しているため、EUV光源装置1(デブリ収容容器40)側の真空が劣化することはない。これにより、EUV光源装置1が稼働中であっても、排出物SWの回収作業を滞りなく進めることが可能となる。
【0160】
次に回収管80の各部の役割について説明する。
例えばフランジ部87に対して接続管86を貫通しないように設ける構成が考えられる。この場合、デブリ回収容器70側に突出するノズル部は構成されない。このように、フランジ部87の容器側がフラットとなる構成では、排出物SWの熱がフランジ部87に逃げてしまい、排出物SWが滴下するまえに凝固してしまうといった場合がある。また、フランジ部87を加熱することで、排出物SWを溶融させる方法も考えられるが、加熱に時間がかかる。また真空継手に用いられるバイトンOリングの耐熱温度を超えてしまう可能性がある。また、排出物SWが溶融したとしても、フランジ部87に沿って流れてしまい、意図しない位置で凝固する可能性がある。
【0161】
これに対し、本実施形態では、接続管86及び先端部88をフランジ部87から容器内部に突出させたノズル状の構造が用いられる。この構造では、フランジ部87に熱量を奪われることなく、排出物SWを滴下位置まで導くことが可能である。また、フランジ部87に排出物SWが回り込むおそれもないため、排出物SWを内部容器73の中に確実に滴下させることが可能となる。さらに、十字型の継手部84からカートリッジヒータを導入することで、回収管内部を効率的に温めることが可能となる。またカートリッジヒータは温度センサで制御することで、空焚き等を防止が可能である。
【0162】
また本実施形態では、接続管86の先端に、流路を補足する先端部88が設けられる。
例えば、先端部88を設けずに、内径の太い接続管86(例えば1/4インチ管)をそのまま使用したとする。この場合、大気中ではスムーズに滴下したものの、真空中では排出物SWが配管の淵に回り込んで凝固する場合があった。これは、真空中では、排出物SWに関する圧力、粘性、表面張力、濡れ性、熱伝導等の各種の挙動が大気中の挙動に対して変化するためであると考えられる。
そこで、本発明者は、内径の太い接続管86に対して、内径の細い先端部88(例えば1/8インチ管)を取り付けて真空中での滴下の状態を観察した。この結果、先端の直径をすぼめることで、排出物SWの回り込みをなくすことが可能となった。これにより、排出物SWが不用意に詰まるといった事態が回避され、安定した回収処理を実現することが可能となる。
【0163】
以上、本実施形態に係るデブリ収容排出部4では、プラズマ原料である金属を含む収容物SUを液相状態で収容するデブリ収容容器40に連通して排出管50が設けられる。排出管50には排出管ヒータ52が設けられ、排出管50内の収容物SUが液相状態又は固相状態となるように排出管50の温度が切り替えられる。これにより、デブリ収容容器40を取り外すことなくプラズマ原料である金属を含む収容物SUを回収することが可能となる。
【0164】
<その他の実施形態>
本発明は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0165】
上記では、プラズマ原料となる液体金属を利用する装置の一実施形態として、EUV光源装置を例に挙げた。そして、本発明に係るデブリ収容排出部がEUV光源装置内に構成される場合を説明した。
本発明の適用は、EUV光源装置に限定されない。例えば、液体金属を用いてプラズマを発生させる任意の装置に本発明を適用することが可能である。またプラズマ原料となる金属を供給する装置に本技術が適用されてもよい。この場合、リザーバ等に収容された液体金属を適宜排出する方法として、本発明が用いられる。
【0166】
この他、液体金属を利用する任意の装置に本発明を適用してもよい。例えば、高性能回路、核反応炉、又はX線範囲の放射源の冷却などの様々な用途において、液体金属を冷媒として使用する様々な冷却システムに、本発明を適用することが可能である。
例えば、ナトリウム冷却高速炉等の高速増殖炉に対して、本発明を適用することも可能である。
また冷却システムとは異なる用途のシステムにおいても、液体金属を利用して動作する種々の装置に対して、本発明に係る収容排出機構を適用することが可能である。
【0167】
各図面を参照して説明したEUV光源装置、収容容器、排出管等の各構成はあくまで一実施形態であり、本技術の趣旨を逸脱しない範囲で、任意に変形可能である。すなわち本技術を実施するための他の任意の構成が採用されてよい。
【0168】
本開示において、説明の理解を容易とするために、「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言が適宜使用されている。一方で、これら「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言を使用する場合と使用しない場合とで、明確な差異が規定されるわけではない。
すなわち、本開示において、「中心」「中央」「均一」「等しい」「同じ」「直交」「平行」「対称」「延在」「軸方向」「円柱形状」「円筒形状」「リング形状」「円環形状」等の、形状、サイズ、位置関係、状態等を規定する概念は、「実質的に中心」「実質的に中央」「実質的に均一」「実質的に等しい」「実質的に同じ」「実質的に直交」「実質的に平行」「実質的に対称」「実質的に延在」「実質的に軸方向」「実質的に円柱形状」「実質的に円筒形状」「実質的にリング形状」「実質的に円環形状」等を含む概念とする。
例えば「完全に中心」「完全に中央」「完全に均一」「完全に等しい」「完全に同じ」「完全に直交」「完全に平行」「完全に対称」「完全に延在」「完全に軸方向」「完全に円柱形状」「完全に円筒形状」「完全にリング形状」「完全に円環形状」等を基準とした所定の範囲(例えば±10%の範囲)に含まれる状態も含まれる。
従って、「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言が付加されていない場合でも、いわゆる「略」「ほぼ」「おおよそ」等を付加して表現され得る概念が含まれ得る。反対に、「略」「ほぼ」「おおよそ」等を付加して表現された状態について、完全な状態が必ず排除されるというわけではない。
【0169】
本開示において、「Aより大きい」「Aより小さい」といった「より」を使った表現は、Aと同等である場合を含む概念と、Aと同等である場合を含なまい概念の両方を包括的に含む表現である。例えば「Aより大きい」は、Aと同等は含まない場合に限定されず、「A以上」も含む。また「Aより小さい」は、「A未満」に限定されず、「A以下」も含む。
本技術を実施する際には、上記で説明した効果が発揮されるように、「Aより大きい」及び「Aより小さい」に含まれる概念から、具体的な設定等を適宜採用すればよい。
【0170】
以上説明した本技術に係る特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。すなわち各実施形態で説明した種々の特徴部分は、各実施形態の区別なく、任意に組み合わされてもよい。また上記で記載した種々の効果は、あくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果が発揮されてもよい。
【符号の説明】
【0171】
DB…デブリ
SU…収容物
1V光源装置
2…光源部
3…デブリ捕捉部
4…デブリ収容排出部
40…デブリ収容容器
41…デブリ排出部
42…レベルセンサ
50…排出管
51…アパーチャー部
52…排出管ヒータ
53…流入口
54…排出口
55、55a、55b…屈曲部
61…排出管加熱用給電部
64…制御部
70…デブリ回収容器
80…回収管
87…フランジ部
88…先端部