(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】はんだ付け装置
(51)【国際特許分類】
B23K 3/00 20060101AFI20241016BHJP
B23K 3/04 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B23K3/00 310J
B23K3/04 Y
(21)【出願番号】P 2021133389
(22)【出願日】2021-08-18
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2020143360
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021027939
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 晃平
(72)【発明者】
【氏名】大崎 信幸
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-077193(JP,A)
【文献】特開2011-088165(JP,A)
【文献】特開2013-012541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 3/00
B23K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合物(3)の上面にはんだ(2)を塗布し、そのはんだの上方からワーク(1)を下降して被接合物に対しはんだを介してワークを接合するはんだ付け装置であって、
ワークの上面をエアで吸引し、ワークを浮かせる第1吸引手段(25、26、27)と、
前記第1吸引手段及び、ワーク
の温度調節
のためにワークの温度を検出可能な温度センサ(13、14)を有し、ワークの上面に当接するまで昇降可能な加熱ヘッド本体(20)と、
前記加熱ヘッド本体を上下に昇降可能に駆動する第1駆動部(28、29)と、
前記第1吸引手段から独立して作動可能であって、ワークの上面をエアで吸引し、ワークを浮かせる第2吸引手段(35、36)と、
前記第2吸引手段及び、ワークを冷却可能な冷却装置(32)を有し、前記加熱ヘッド本体から独立して作動可能であってワークの上面に当接するまで昇降可能な冷却ヘッド本体(30)と、
前記冷却ヘッド本体を上下に昇降可能に駆動する第2駆動部(38、39)と、
前記加熱ヘッド本体に設けられ、前記加熱ヘッド本体を加熱するヒータ(15、16、17、18、19)と、を備えるはんだ付け装置。
【請求項2】
前記加熱ヘッド本体が有する前記温度センサは、ワークの温度を検出する第1温度センサ(13、14)であり、この第1温度センサに基づいてワーク温度を制御する請求項1に記載のはんだ付け装置。
【請求項3】
前記加熱ヘッド本体は、前記加熱ヘッド本体の温度を検出する第2温度センサ(21、22)を備えた請求項2に記載のはんだ付け装置。
【請求項4】
前記第1吸引手段及び前記第2吸引手段は、前記ワークに当接可能な面に前記ワークの上面の所定領域を吸引する機構を有する請求項1~3のいずれか一項に記載のはんだ付け装置。
【請求項5】
前記加熱ヘッド本体は、2個のワークを同時に吸引可能な一対の脚部(41、42)を有し、一方の脚部(41)に第1の前記ヒータ(15、16)を有し、他方の脚部(42)に第2の前記ヒータ(18、19)を有する請求項1~4のいずれか一項に記載のはんだ付け装置。
【請求項6】
前記ワークに対し下方側で前記被接合物を加熱するヒータ(50)を備えた請求項1~5のいずれか一項に記載のはんだ付け装置。
【請求項7】
加熱ヘッドにより保持するワークをはんだ溶融温度以上に予め加熱する工程と、
上面にはんだを塗布した被接合物に対し、前記ワークを下降し、はんだを介してワークを接合する工程と、
前記ワークを保持する手段を加熱ヘッドから冷却ヘッドに切替える工程と、
前記冷却ヘッドがワークから熱を奪う工程と、を含む、はんだ付け方法。
【請求項8】
被接合物の下面をエアで吸引し、被接合物を固定する第3吸引手段(75)と、
前記第3吸引手段及び、被接合物を加熱及び冷却可能な加熱及び冷却装置(72、73)を有し、被接合物の下部で被接合物を支持可能な冷却ブロック本体(70)と、
前記第3吸引手段から独立して作動可能であって、被接合物の下面を吸引し、被接合物を固定可能な第4吸引手段(65)を有し、被接合物に当接して支持及び加熱可能な加熱ブロック本体(60)と、
前記加熱ブロック本体を上下に昇降可能に駆動する第3駆動部(88)と、
被接合物
の温度調節
のために被接合物の温度を検出可能な第3温度センサ(83)と、を備えた請求項1記載のはんだ付け装置。
【請求項9】
前記加熱ブロック本体の温度を検出する第4温度センサ(62)を備えた請求項8記載のはんだ付け装置。
【請求項10】
前記冷却ブロック本体の温度を検出する第5温度センサ(72、73)を備えた請求項8記載のはんだ付け装置。
【請求項11】
請求項7に記載の工程に加えて、
ワークと被接合物との接合前に被接合物を下面側から加熱ブロックにより加熱する工程と、
被接合物を支持する手段を前記加熱ブロックから冷却ブロックに切替える工程と、
前記加熱ブロックから前記冷却ブロックへの切替え後に前記冷却ブロックが被接合物から熱を奪う工程と、を含む請求項7に記載のはんだ付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱機構を有するヘッドによりワークを加熱し被接合物にはんだ付けする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品をワークに対し押圧しながら加熱することにより電子部品をワークに熱圧着する装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このものでは、電子部品と基板とを押圧する動作とともにセラミックヒータに通電し発熱させて熱圧着ツールを介して電子部品を加熱する。これにより電子部品と基板の電極の接合部を加熱パターンに従って昇温し、接合部が所定温度に到達することにより、はんだバンプが溶融して熱圧着によるはんだ接合が行われる。冷却工程においては、セラミックヒータの上面にエアを当ててセラミックヒータを冷却する。
【0005】
したがって、昇温工程と冷却工程での加熱と冷却の工程において、昇温時と降温時の温度応答の遅れが生じていた。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、はんだ付け作業を行うに際に、ワークを加熱し、はんだ付けし、冷却する工程における昇温と降温を高効率に行うはんだ付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のはんだ付け装置は、被接合物(3)の上面にはんだ(2)を塗布し、そのはんだの上方からワーク(1)を下降して被接合物に対しはんだを介してワークを接合するはんだ付け装置であって、ワークの上面をエアで吸引し、ワークを浮かせる第1吸引手段(25、26、27)と、前記第1吸引手段及び、ワークの温度調節のためにワークの温度を検出可能な温度センサ(13、14)を有し、ワークの上面に当接するまで昇降可能な加熱ヘッド本体(20)と、前記加熱ヘッド本体を上下に昇降可能に駆動する第1駆動部(28、29)と、前記第1吸引手段から独立して作動可能であって、ワークの上面をエアで吸引し、ワークを浮かせる第2吸引手段(35、36)と、前記第2吸引手段及び、ワークを冷却可能な冷却装置(32)を有し、前記加熱ヘッド本体から独立して作動可能であってワークの上面に当接するまで昇降可能な冷却ヘッド本体(30)と、前記冷却ヘッド本体を上下に昇降可能に駆動する第2駆動部(38、39)と、前記加熱ヘッド本体に設けられ、前記加熱ヘッド本体を加熱するヒータ(15、16、17、18、19)と、を備える。
【0008】
このはんだ付け装置によれば、冷却ヘッド本体は、加熱ヘッド本体の動作から独立して、加熱ヘッドの熱影響を受けることなしに、ワークを冷却し降温する動作を行う。このため、ワーク加熱からワーク冷却への切替速度を短時間で行える。ワークの温度を昇降するにあたり熱効率が良い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一実施形態によるはんだ付装置の構成を示す正面図である。
【
図9】第一実施形態に用いるワークを示す図で、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【
図10】第一実施形態のはんだ付け装置の作動を説明する図で、(A)は第1工程を示す模式的断面図、(B)は第1工程のワークの状態を示す正面図である。
【
図11】第一実施形態のはんだ付け装置の作動を説明する図で、(A)は第2工程を示す模式的断面図、(B)は第2工程のワークの状態を示す正面図である。
【
図12】第一実施形態のはんだ付け装置の作動を説明する図で、(A)は第3工程を示す模式的断面図、(B)は第3工程のワークの状態を示す正面図である。
【
図13】第一実施形態のはんだ付け装置の作動を説明する図で、(A)は第4工程を示す模式的断面図、(B)は第4工程のワークの状態を示す正面図である。
【
図14】第一実施形態のはんだ付け装置の作動を説明する図で、(A)は第5工程を示す模式的断面図、(B)は第5工程のワークの状態を示す正面図である。
【
図15】第一実施形態のはんだ付け装置の作動を説明する図で、(A)は第6工程を示す模式的断面図、(B)は第6工程のワークの状態を示す正面図である。
【
図16】第二実施形態のはんだ付け装置の温度制御の一例を示す特性図である。
【
図17】第三実施形態によるはんだ付装置の下部の構成を示す斜視図である。
【
図18】第三実施形態によるはんだ付装置の構成を示す、
図1に対応する正面図である。
【
図19】第三実施形態によるはんだ付装置の構成を示す平面図である。
【
図22】第三実施形態のはんだ付け装置の作動を説明する模式的断面図である。
【
図23】第三実施形態のはんだ付け装置の作動を説明する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のはんだ付け装置の第一実施形態を図面に基づいて説明する。以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第一実施形態)
【0011】
本発明の第一実施形態のはんだ付け装置は、
図9に示すエミッタとしてのワーク1をコレクタ5側に接合する例について説明する。この場合、コレクタ5の上面に半導体素子4、被接合物としてのスペーサ3の順に層構造になっており、スペーサ3にワーク1をはんだ接合する。
【0012】
【0013】
はんだ付け装置について、
図1から
図8に基づいて説明する。はんだ付け装置10は、ワーク1を加熱する加熱ヘッド11と、ワーク1を冷却する冷却ヘッド31とを備えている。本実施形態ではコレクタ5側の接合物ははんだ2を加熱するためのヒータ50の上面に載せられている。
【0014】
加熱ヘッド11は、加熱側第1ローダー28及びこれに直交する加熱側第2ローダー29からなる可動装置24により加熱ヘッド本体20が鉛直方向および水平方向に位置制御される。加熱側第1ローダー28及び加熱側第2ローダー29は特許請求の範囲に記載の第1駆動部に相当する。
【0015】
加熱ヘッド11は、ワーク1をエア圧力により吸着および離脱可能な第1吸引手段としての吸着管25、26、27、加熱ヘッド本体20を加熱する加熱装置としてのセラミックヒータ15、16、17、18、19、加熱ヘッド本体20の温度を調節するヘッド温度センサとしてのシース型熱電対21、22及びワーク1に接触して温度を調節する接触式温度センサとしての接触式熱電対13、14 を有している。接触式熱電対13、14は特許請求の範囲に記載の第1温度センサに相当する。
【0016】
この加熱ヘッド11は、吸着管25、26、27のオフによりワーク1を不保持のとき、セラミックヒータ15、16、17、18、19のオンにより、予熱することができる。また、吸着管25、26、27のオンによりワーク1を保持するとき、シース型熱電対21、22をオフにし、接触式熱電対13、14をオンにし、接触式熱電対13、14をワーク1に接触させ、ワーク1の高精度な温度管理を行うことができる。シース型熱電対21、22は、特許請求の範囲に記載の第2温度センサに相当する。
【0017】
冷却ヘッド31は、冷却側第1ローダー38及びこれに直交する冷却側第2ローダー39からなる可動装置34により冷却ヘッド本体30が鉛直方向および水平方向に位置制御される。冷却側第1ローダー38及び冷却側第2ローダー39は特許請求の範囲に記載の第2駆動部に相当する。
【0018】
冷却ヘッド31は、ワーク1をエア圧力により吸着および離脱可能な第2吸引手段としての吸着管35、36、冷却水管32からなる冷却装置を有している。冷却ヘッド31は、冷却側第1ローダー38及び冷却側第2ローダー39からなる可動装置34により、ワーク1の吸着管35、36により、ワーク1をリフトするために吸着する動作及び離脱する動作を加熱ヘッド11の同様の動作から独立して行う。
【0019】
また冷却ヘッド31は、冷却ヘッド本体30およびワーク1の冷却について、加熱ヘッド11から分離した熱の影響を受けない構造になっており、セラミックヒータ15、16、17、18、19及びシース型熱電対21、22の影響を受けない構造になっている。冷却ヘッド31は、ワーク1を加熱し昇温する加熱ヘッド11の動作から独立して、ワーク1を冷却し降温する動作を行う。このため、ワーク加熱からワーク冷却への切替速度(昇降温最速)を短時間で行える。ワーク1の温度を昇降するにあたり熱効率が良い。また構成は、
図9に示すように、コレクタ5側に対し2個のワーク1を同時にはんだ接合できるから、精度が高い。
【0020】
次に、
図10から
図15に基づいて、はんだ付け準備からはんだ付け完了までのはんだ付け動作の工程について、順に説明する。
【0021】
<第1工程>
図10に示すように、ワーク1をコレクタ5側に接合する例について説明する。コレクタ5の上面に半導体素子4、スペーサ3の順に層構造になっており、スペーサ3にワーク1をはんだ接合する。ワーク1がはんだ付け装置10に搬入される。ワーク1の下方にはコレクタ5側のスペーサ3上のはんだ2の上方にワーク1が搬送される。
【0022】
はんだ付け装置10は、ワーク1を加熱する加熱ヘッド11と、ワーク1を冷却する冷却ヘッド31とを備えている。加熱ヘッド本体20は、冷却ヘッド本体30よりも下降した位置にある。そして、加熱ヘッド本体20と冷却ヘッド本体30の下方で、ヒータ50上に被接合物としてのコレクタ5側が載置される。
【0023】
<第2工程>
図10に示すはんだ2の上方で別置きされたワーク1に対し、加熱ヘッド本体20が下降し、
図11に示すように、ワーク1に接触したとき、吸着管25、26、27のオンにより矢印7方向に吸引されるワーク1は加熱ヘッド本体20の下面に吸着される。
【0024】
<第3工程>
次いで、
図12に示すように、加熱ヘッド本体20がワーク1を吸着した状態で、加熱ヘッド11から矢印8方向への熱伝導によりワーク1を加熱するとともに下降しはんだ2を溶融し、はんだ接合する。
【0025】
<第4工程>
次いで、
図13に示すように、冷却ヘッド31を下降し、冷却ヘッド本体30の下面をワーク1に接触するとともに吸着管35、36をオンにし、矢印9方向にエアを吸引し、ワーク1を加熱ヘッド11の吸引と冷却ヘッド31による吸引の同時吸引に切り替える。
【0026】
<第5工程>
次いで、
図14に示すように、矢印41方向に熱を奪い、冷却を促進し、はんだ接合速度を速める。加熱ヘッド11の吸着管25、26、27をオフにし、ワーク1から加熱ヘッド11をリフトする。すると冷却ヘッド31による吸引に切り替わり、同時に冷却ヘッド31の冷却水管32をオンにし、ワーク1およびこれに接合するはんだ2の冷却を促進する。
【0027】
<第6工程>
はんだ接合が完了したら、
図15に示すように、冷却ヘッド31の吸着管35、36をオフにし、ワーク1の吸引を停止し、ワーク1から冷却ヘッド31を離間し、装置の動作を停止する。以上をもって、はんだ接合を終了する。
【0028】
本実施形態によると、加熱ヘッド11と冷却ヘッド31が互いに別異の駆動装置によって駆動され、ワーク1の吸引及び加熱動作と、ワーク1の吸引及び冷却動作とが独立してされるので、切替動作の制御により高速に加熱動作と冷却動作を切替えることができる。したがって、高速にかつ高効率にワーク1の加熱、はんだ付け、冷却を行うことができ、熱効率を向上することができ、はんだ2によるワーク1と被接合物としてのスペーサ3とを高速接合することができる。
【0029】
上述した実施形態では、加熱ヘッド11の吸着管25、26、27をオンからオフに切り替える前に冷却ヘッド31の吸着管35、36をオンにしワーク1の受取りを加熱ヘッド11から冷却ヘッド31に切り替えるから、同時に2個のワーク1のはんだ付け接合位置の精度を向上することができる。
【0030】
本実施形態では、加熱ヘッド11の吸着管25、26、27による吸着でワーク1の位置を特定した後、その上で、連続してリフト中に、同時に冷却ヘッド31の吸着管35、36によるワーク1の吸着を行うから位置精度が向上する。
【0031】
本実施形態のはんだ付け装置によれば、加熱と冷却が互いに独立しているため、加熱ヘッド11及び冷却ヘッド31のそれぞれの温度変化が少なく、サイクル性が良い。また、ワーク1を接触式熱電対13、14により直接温度検出して加熱しているため、不良が出にくい。はんだ2を急冷するため、ボイドが生じにくいし、はんだ品質が良好になるという効果がある。
【0032】
さらに、炉レス構造のため省スペース、省エネ、省設備コストに貢献するし、はんだ付け装置の体格を小型設備にできるので、メンテナンス性が良いという利点もある。
【0033】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態のはんだ付け装置は、
図1~
図8に示す第一実施形態の装置を使用し、その動作は
図10から
図15に示すとおりである。
コレクタの上面に半導体素子、被接合物としてのスペーサが、この順に層構造に形成され、スペーサの上方に搬送されるエミッタが下降し、スペーサの上面でエミッタがはんだ接合される。
このはんだ接合される工程において、はんだ溶融温度229℃に対し、加熱ヘッド、エミッタ、コレクタ及び冷却ヘッドの各要素を、例えば
図16に示すように、温度制御する。
【0034】
ここで、加熱ヘッド目標温度T1、エミッタを予熱する予熱目標温度T2、溶融保持上限温度T3、コレクタを予熱する予熱目標温度T4、冷却ヘッド温度T5とする。
【0035】
はんだ付け装置は、
図1から
図8に示すように、ワーク1としてのエミッタを加熱する加熱ヘッド11と、エミッタを冷却する冷却ヘッド31とを備えている。本実施形態ではコレクタ5側の接合物ははんだ2を加熱するためのヒータ50の上面に載せられている。
次に温度制御の具体的な実施形態について例示して説明する。
【0036】
(1)予熱工程:
予熱工程では、エミッタとコレクタの温度を次のように調節する。
エミッタを第2予熱ヒータ52により加熱する。
被接合部としてのコレクタをヒータとしての第1予熱ヒータ50により加熱する。コレクタは、予熱目標温度T4例えば220℃以下に調節される。
【0037】
(2)ワークリフト工程:
加熱ヘッドにより吸引したエミッタを保持しリフトする工程では、加熱ヘッドを加熱ヘッド目標温度T1例えば310℃に設定する。このとき、加熱ヘッドにより加熱されるエミッタは、はんだ溶融温度229℃以上の予熱目標温度T2例えば290℃に調節される。
コレクタは、予熱目標温度T4例えば220℃以下に調節される。
【0038】
(3)昇温工程(はんだ溶融工程):
はんだを溶融する工程では、コレクタ側の上空で加熱ヘッドを下降する。すると、エミッタの熱は奪われ、他方、コレクタ側のスペーサ上面のはんだは加熱される。これにより、はんだが溶融し、エミッタとスペーサとが接合される。
溶融時、エミッタを溶融保持温度例えば250~270℃の範囲にする。コレクタ側の温度は溶融時、瞬時に温度上昇する。
【0039】
はんだの溶融後、はんだの温度を降下させ、はんだを凝固するとともに、エミッタ、スペーサ、半導体素子及びコレクタの温度を降下させる。
その後、はんだをはんだ溶融温度229℃以下の予熱目標温度T4例えば220℃に保持する。
これにより、コレクタ側のスペーサに対しはんだを介してエミッタを接合する。
凝固したときコレクタに対するエミッタの目標の高さを出すために加熱ヘッドの設定温度310℃、コレクタの設定温度220℃でエミッタの接合を完了し、かつエミッタ接合はんだを引き上げるために溶融保持温度を260℃に設定する。
【0040】
(4)受け渡し工程:
次いで、冷却ヘッドは、下降し、エミッタを保持する。次いで、エミッタを保持する手段を加熱ヘッドから冷却ヘッドに切替える。冷却ヘッドはエミッタから熱を奪う。
加熱ヘッドは、エミッタの保持を解除する。これにより、エミッタを保持する手段は加熱ヘッドから冷却ヘッドに切り替わる。はんだに対し熱を与える工程から熱を奪う工程に切り替わる。
【0041】
(5)降温工程:
次に、はんだを凝固する工程では、冷却ヘッドがエミッタを保持するとともにエミッタを通してはんだから熱を奪い、はんだを急速に凝固させる。
加熱ヘッドは、次の工程に備え加熱される。
上記のとおり、予熱工程から降温工程までのサイクルが繰り返される。
【0042】
上述したように、はんだ溶融する時ははんだに熱を上から与え、はんだを溶融する。次いで、はんだを凝固する時は、はんだから熱を上から奪い、はんだを凝固する。
本実施形態では、加熱ヘッドに温調用温度センサが2個仕込ませてあり、センサの切替、温調温度設定切替、ヒータ出力強制切りを実施する。
【0043】
(i)エミッタ吸着前:ヘッド温度センサ310℃に温調する。
(ii)エミッタ吸着時:センサを切替えエミッタ温度センサ290℃に温調する。
(iii)はんだにエミッタ接触時:260℃に温調する。
(iv)エミッタに冷却ヘッド接触時:加熱ヘッドヒータ出力を0%にする。
(v)エミッタ開放:センサ切替えヘッド温度センサを310℃に温調する。
【0044】
このように、エミッタに強制的に熱を与え、その後エミッタから強制的に熱を奪う操作を加える。
【0045】
(第三実施形態)
本発明の第三実施形態のはんだ付け装置は、ワーク上部のヘッド側の構成は
図1~
図7に示す第一実施形態の装置を使用し、その動作は
図10から
図15に示すとおりである。
この第三実施形態は、ヘッド側の構成とブロック側の構成を併せて、ワークの昇温及び降温の高速化及び高サイクル性を図ったものである。
【0046】
この第三実施形態のはんだ付け装置は、
図17から
図21に示すように、ワーク下部のブロック側の構成について、加熱及び冷却の機能を分離している。
【0047】
第三実施形態のはんだ付け装置の構成の模式図は
図22の(A)に示すとおりである。このはんだ付け装置の動作は、
図22(A)、(B)、(C)、(D)、
図23(E)、(F)、(G)の順序に作動する。
【0048】
被接合物に相当するコレクタ5の上面に被接合物に相当する半導体素子4、被接合物に相当するスペーサ3が、この順に層構造に形成され、スペーサ3の上方に搬送されるワークに相当するエミッタ1が下降し、スペーサ3の上面ではんだ2を介してエミッタ1がはんだ接合される。
【0049】
はんだ付け装置は、ワーク上部の構成は、基本的に、第一実施形態の構成と同様であり、ワーク1としてのエミッタを加熱する加熱ヘッド11と、エミッタを冷却する冷却ヘッド31とを備えている。
図17は、ワーク下部の構成を示し、ワーク上部の構成を省略している。
【0050】
図17から
図21に示すように、第三実施形態のはんだ付け装置80は、第一実施形態のヒータ50に代えて、加熱ブロック本体60及び冷却ブロック本体70を備えている。
はんだ付け装置80は、基本的に、コレクタ5を加熱する加熱ブロック本体60と、コレクタ5を冷却する冷却ブロック本体70とを備えている。冷却ブロック本体70は、
図22及び
図23に示すように、コレクタ5の下面を支持可能な水準Lが固定水準である。これに対し、加熱ブロック本体60が可動装置88(第3駆動部)によって冷却ブロック本体70に対し上下に往復動可能になっている。
【0051】
加熱ブロック本体60は、可動装置88により鉛直方向に位置制御される。可動装置88は特許請求の範囲に記載の第3駆動部に相当する。
【0052】
加熱ブロック本体60は、コレクタ5をエア圧力により吸着および離脱可能な第4吸引手段としての吸着管65、加熱ブロック本体60を加熱する加熱装置としてのセラミックヒータ62、加熱ブロック本体60の温度を調節するヘッド温度センサとしてのシース型熱電対63及びコレクタ5に接触して温度を調節する接触式温度センサとしての接触式熱電対83を有している。接触式熱電対83は特許請求の範囲に記載の第3温度センサに相当する。
【0053】
この加熱ブロック本体60は、吸着管65のオフによりコレクタ5を不保持のとき、セラミックヒータ62のオンにより、予熱することができる。また、吸着管65のオンによりコレクタ5を保持するとき、シース型熱電対63をオフにし、接触式熱電対83をオンにし、接触式熱電対83をコレクタ5に接触させ、コレクタ5の高精度な温度管理を行うことができる。シース型熱電対63は、特許請求の範囲に記載の第4温度センサに相当する。
【0054】
冷却ブロック本体70は、位置水準Lが固定である。
【0055】
冷却ブロック本体70は、コレクタ5をエア圧力により吸着および離脱可能な第3吸引手段としての吸着管75、冷却水管77、78からなる冷却装置を有している。冷却ブロック本体70は、吸着管75により、コレクタ5を吸着する動作及び離脱する動作を加熱ブロック本体60の同様の動作から独立して行う。
【0056】
また冷却ブロック本体70は、第5温度センサに相当する昇温および降温可能な加熱冷却装置72、73を有している。加熱冷却装置72、73は、カートリッジヒータ(冷却側加熱機構)とシース型熱電対(冷却側ブロック温調センサ)からなる。
【0057】
冷却ブロック本体70およびコレクタ5の冷却について、加熱ブロック本体60から分離した熱の影響を受けない構造になっており、セラミックヒータ62及びシース型熱電対63の影響を受けない構造になっている。冷却ブロック本体70は、コレクタ5を加熱し昇温する加熱ブロック本体60の動作から独立して、コレクタ5を冷却し降温する動作を行う。このため、コレクタ加熱からコレクタ冷却への切替速度(昇降温最速)を短時間で行える。コレクタ5の温度を昇降するにあたり熱効率が良い。
【0058】
冷却ブロック本体70又は加熱ブロック本体60は、コレクタ5を支持可能である。
<第1工程>
【0059】
図22(A)に示すように、ワーク1をコレクタ5側に接合する例について説明する。コレクタ5の上面に半導体素子4、スペーサ3の順に層構造になっており、スペーサ3にワーク1をはんだ接合する。ワーク1がはんだ付け装置10に搬入される。ワーク1の下方にはコレクタ5側のスペーサ3上のはんだ2の上方にワーク1が搬送される。
【0060】
はんだ付け装置10は、ワーク上部側に、ワーク1を加熱する加熱ヘッド11と、ワーク1を冷却する冷却ヘッド31とを備え、ワーク下部側に、コレクタ5を加熱する加熱ブロック本体60と、コレクタ5を冷却する冷却ブロック本体70とを備えている。
【0061】
加熱ヘッド本体20は、冷却ヘッド本体30よりも下降した位置にある。そして、加熱ヘッド本体20と冷却ヘッド本体30の下方で、加熱ブロック本体60上に被接合物としてのコレクタ5側が載置される。コレクタ5は、加熱ブロック本体60により吸着管65で矢印90方向に吸引される。加熱ブロック本体60は、冷却ブロック本体70よりも上昇した位置にある。
<第2工程>
【0062】
はんだ2の上方で別置きされたワーク1に対し、加熱ヘッド本体20が下降し、
図22(B)に示すように、ワーク1に接触したとき、吸着管25、26、27のオンにより矢印7方向に吸引されるワーク1は加熱ヘッド本体20の下面に吸着される。
<第3工程>
【0063】
次いで、
図22(C)に示すように、加熱ヘッド本体20がワーク1を吸着した状態で、加熱ヘッド11から矢印8方向への熱伝導によりワーク1を加熱するとともに下降しはんだ2を溶融し、はんだ接合する。
<第4工程>
【0064】
次いで、
図22(D)に示すように、加熱ブロック本体60を下降し、冷却ブロック本体70の上面をコレクタ5に接触するとともに吸着管75をオンにし、矢印91方向にエアを吸引し、コレクタ5を加熱ブロック本体60の吸引から冷却ブロック本体70による吸引に切り替える。
<第5工程>
【0065】
次いで、
図23(E)に示すように、冷却ヘッド31を下降し、冷却ヘッド本体30の下面をワーク1に接触するとともに吸着管35、36をオンにし、矢印9方向にエアを吸引し、ワーク1を加熱ヘッド11の吸引と冷却ヘッド31による吸引の同時吸引に切り替える。
冷却ブロック本体70は、コレクタ5を支持するとともに吸着管75によりコレクタ5を吸引する。
<第6工程>
【0066】
次いで、
図23(F)に示すように、矢印41方向に熱を奪い、冷却を促進し、はんだ接合速度を速める。加熱ヘッド11の吸着管25、26、27をオフにし、ワーク1から加熱ヘッド11をリフトする。すると冷却ヘッド31による吸引に切り替わり、同時に冷却ヘッド31の冷却水管32をオンにし、ワーク1およびこれに接合するはんだ2の冷却を促進する。
<第7工程>
【0067】
はんだ接合が完了したら、
図23(G)に示すように、冷却ヘッド31の吸着管35、36をオフにし、ワーク1の吸引を停止し、ワーク1から冷却ヘッド31を離間し、装置の動作を停止する。以上をもって、はんだ接合を終了する。
(他の実施形態)
【0068】
第一実施形態では、コレクタの下面にヒータを設置したが、本発明では、このヒータを設置しない実施形態も可能である。
【0069】
発明の第一実施形態のはんだ接合装置は、エミッタをコレクタ側に接合するワークの例について説明したが、本発明では、接合物と被接合物はこの例に限られない。
また第二実施形態の説明中、
図16において、T1、T2、ほか、冷却温度220℃などの具体的な制御温度表示をしたが、本発明では、これらの具体的な温度表示に限定されない。
【0070】
本発明は、ワーク下部についてのみ加熱及び冷却を機能分離し、ワークの昇温及び降温の高速化及び高サイクル性を図る実施形態も含まれる。
【0071】
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0072】
1: エミッタ(ワーク)、
2: はんだ、
5: コレクタ(被接合物)、
10: はんだ付け装置、
11: 加熱ヘッド、
13、14:接触式熱電対(温度センサ)、
15、16、17、18、19:セラミックヒータ(ヒータ)、
20: 加熱ヘッド本体、
21、22:シース型熱電対(温度センサ)、
25、26、27:吸着管(第1吸引手段)、
28: 加熱側第1ローダー(第1駆動部)、
29: 加熱側第2ローダー(第1駆動部)、
30: 冷却ヘッド本体、
31: 冷却ヘッド、
32: 冷却水管(冷却装置)、
35、36:吸着管(第2吸引手段)、
38: 冷却側第1ローダー(第2駆動部)、
39: 冷却側第2ローダー(第2駆動部)、
50: ヒータ(加熱装置、第1ヒータ)、
52: 第2予熱ヒータ、
60: 加熱ブロック本体、
62: セラミックヒータ(第4温度センサ)、
63: シース型熱電対(第4温度センサ)、
65: 吸着管(第4吸引手段)、
70: 冷却ブロック本体、
72、73:加熱冷却装置(第5温度センサ)、
75: 吸着管(第3吸引手段)、
83: 接触式熱電対(第3温度センサ)、
88: 第3駆動部。