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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ケースおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/06 20060101AFI20241016BHJP
   F16J 15/14 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H05K5/06 D
F16J15/14 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021133548
(22)【出願日】2021-08-18
(65)【公開番号】P2023028074
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2023-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】吉冨 健太
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-094136(JP,A)
【文献】実開昭56-046944(JP,U)
【文献】特開2018-074677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00-5/06
F16J 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品(500)の収納されるケース(100)であって、
前記電子部品の搭載される底部(210)と、前記電子部品と前記底部の並ぶ高さ方向で前記底部から突出し、前記高さ方向に直交する径方向で前記電子部品と並ぶ突出部(220)と、を備える筐体(200)と、
前記高さ方向で前記底部に対向する主部(310)と、前記高さ方向で前記突出部に対向する突出対向部(320)と、を備えるカバー(300)と、
前記突出部と前記突出対向部の間の空隙(700)に設けられるシール部材(600)と、を有し、
前記突出部が、前記径方向の内側の前記底部と、外側の前記底部である前記底部の周縁の底部周縁(215)に連結され、
前記突出部は、前記シール部材の接着する表面(200a)と、前記径方向に並ぶ内面(220b)と外面(220c)とを有し、
前記内面は、前記径方向の内側の前記底部に連結され、前記外面は、前記径方向の外側の前記底部である前記底部周縁に連結され、
前記突出部の前記表面を第1シール面(220a)とするとともに、前記突出対向部において、前記突出部の前記表面に対向する対向表面(300a)を第2シール面(331a)とし、
前記径方向に沿うとともに前記底部の中心から前記底部周縁に向かう方向に、前記空隙(700)の前記高さ方向の幅が広がるように、前記突出部の前記第1シール面と、前記突出対向部の前記第2シール面との傾きが異なっているケース。
【請求項2】
前記径方向に沿うとともに前記底部の中心から前記底部周縁に向かう方向で前記底部に近付くように、前記第1シール面と前記第2シール面それぞれが傾斜している請求項に記載のケース。
【請求項3】
前記筐体は前記突出部の周縁の突出部周縁(225)に連結される周縁部(230)を有し、
前記カバーは前記突出対向部の周縁の突出対向部周縁(325)に連結されるとともに、前記周縁部に前記高さ方向で締結される周縁対向部(340)を有する請求項1又は2に記載のケース。
【請求項4】
前記突出対向部は前記突出部と前記高さ方向で対向し前記主部に連結される第1突出対向部(331)と、前記突出部と前記径方向で対向し前記周縁部に連結される第2突出対向部(332)と、を有し、
前記シール部材が通過できる程度に前記突出部と前記第2突出対向部とが離間している請求項に記載のケース。
【請求項5】
前記突出対向部は前記第2突出対向部と前記周縁対向部とを連結する第3突出対向部(333)を有し、
前記第3突出対向部と前記周縁部との間に前記シール部材の溜まる溜まり部(710)が形成されている請求項に記載のケース。
【請求項6】
電子部品(500)と、
前記電子部品の搭載される底部(210)および前記電子部品と前記底部の並ぶ高さ方向で前記底部から突出し、前記高さ方向に直交する径方向で前記電子部品と並ぶ突出部(220)を備える筐体(200)と、前記高さ方向で前記底部に対向する主部(310)および前記高さ方向で前記突出部に対向する突出対向部(320)を備えるカバー(300)と、前記突出部と前記突出対向部の間の空隙(700)に設けられるシール部材(600)と、を備えるケース(100)と、を有し、
前記突出部が、前記径方向の内側の前記底部と、外側の前記底部である前記底部の周縁の底部周縁(215)に連結され、
前記突出部は、前記シール部材の接着する表面(200a)と、前記径方向に並ぶ内面(220b)と外面(220c)とを有し、
前記内面は、前記径方向の内側の前記底部に連結され、前記外面は、前記径方向の外側の前記底部である前記底部周縁に連結され、
前記突出部の前記表面を第1シール面(220a)とするとともに、前記突出対向部において、前記突出部の前記表面に対向する対向表面(300a)を第2シール面(331a)とし、
前記径方向に沿うとともに前記底部の中心から前記底部周縁に向かう方向に、前記空隙(700)の前記高さ方向の幅が広がるように、前記突出部の前記第1シール面と、前記突出対向部の前記第2シール面との傾きが異なっている電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の開示は、電子部品の収納されるケース、および、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ケースとコネクタの取り付け構造が記載されている。ケースの内面には傾斜壁が備えられている。コネクタは傾斜フランジを有している。傾斜壁と傾斜フランジとが対向する態様でケースとコネクタが取り付けられる。傾斜壁と傾斜フランジとの間にケースとコネクタをシールするシール部材が挟まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-266997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
傾斜壁と傾斜フランジの傾斜角度が等しいと、傾斜壁および傾斜フランジとシール部材との接着面積が減少する虞があった。
【0005】
そこで本開示の目的は、突出部および突出対向部とシール部材との接着面積が減少することの抑制されたケース、および、電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によるケースは、
電子部品(500)の収納されるケース(100)であって、
電子部品の搭載される底部(210)と、電子部品と底部の並ぶ高さ方向で底部から突出し、高さ方向に直交する径方向で電子部品と並ぶ突出部(220)と、を備える筐体(200)と、
高さ方向で底部に対向する主部(310)と、高さ方向で突出部に対向する突出対向部(320)と、を備えるカバー(300)と、
突出部と突出対向部の間の空隙(700)に設けられるシール部材(600)と、を有し、
突出部が、径方向の内側の底部と、外側の底部である底部の周縁の底部周縁(215)に連結され、
突出部は、シール部材の接着する表面(200a)と、径方向に並ぶ内面(220b)と外面(220c)とを有し、
内面は、径方向の内側の底部に連結され、外面は、径方向の外側の底部である底部周縁に連結され、
突出部の表面を第1シール面(220a)とするとともに、突出対向部において、突出部の表面に対向する対向表面(300a)を第2シール面(331a)とし、
径方向に沿うとともに底部の中心から底部周縁に向かう方向に、空隙(700)の高さ方向の幅が広がるように、突出部の第1シール面と、突出対向部の第2シール面との傾きが異なっている。
【0007】
また本開示の一態様による電子機器は、
電子部品(500)と、
電子部品の搭載される底部(210)および電子部品と底部の並ぶ高さ方向で底部から突出し、高さ方向に直交する径方向で電子部品と並ぶ突出部(220)を備える筐体(200)と、高さ方向で底部に対向する主部(310)および高さ方向で突出部に対向する突出対向部(320)を備えるカバー(300)と、突出部と突出対向部の間の空隙(700)に設けられるシール部材(600)と、を備えるケース(100)と、を有し、
突出部が、径方向の内側の底部と、外側の底部である底部の周縁の底部周縁(215)に連結され、
突出部は、シール部材の接着する表面(200a)と、径方向に並ぶ内面(220b)と外面(220c)とを有し、
内面は、径方向の内側の底部に連結され、外面は、径方向の外側の底部である底部周縁に連結され、
突出部の表面を第1シール面(220a)とするとともに、突出対向部において、突出部の表面に対向する対向表面(300a)を第2シール面(331a)とし、
径方向に沿うとともに底部の中心から底部周縁に向かう方向に、空隙(700)の高さ方向の幅が広がるように、突出部の第1シール面と、突出対向部の第2シール面との傾きが異なっている。
【0008】
これによれば突出部(220)と突出対向部(320)によってシール部材(600)を空隙(700)の狭い箇所から空隙(700)の広い箇所へと押し出すことができるようになっている。
【0009】
空隙(700)の広い箇所でシール部材(600)が突出部(220)および突出対向部(320)と接着しやすくなっている。突出部(220)および突出対向部(320)とシール部材(600)との接着面積が減少することが抑制されやすくなっている。
【0010】
なお、上記の括弧内の参照番号は、後述の実施形態に記載の構成との対応関係を示すものに過ぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電子部品の上面図である。
図2図1に示すII-II線に沿う電子部品の断面図である。
図3】筐体およびカバーとシール材との関係を説明するための断面図である。
図4】筐体およびカバーとシール材との関係を説明するための断面図である。
図5】第1シール面と第2シール面の傾斜角度が等しい場合における、筐体およびカバーとシール材との関係を説明する断面図である。
図6】第1シール面と第2シール面の傾斜角度が等しい場合における、筐体およびカバーとシール材との関係を説明する断面図である。
図7】溜まり部を説明するための断面図である。
図8】変形例を説明する断面図である。
図9】変形例を説明する断面図である。
図10】変形例を説明する断面図である。
図11】変形例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0013】
また、各実施形態で組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士、実施形態と変形例、および、変形例同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0014】
(第1実施形態)
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は電子部品の収納されるケース100と、電子部品およびケース100を含む電子機器10に関するものである。電子部品としては例えば基板500などが挙げられる。なお電子部品は基板500に限定されない。
【0015】
以下に本実施形態における電子機器10の機械的構成を説明する。それに当たって、以下においては互いに直交の関係にある3方向をx方向、y方向、および、zさ方向とする。図面においては「方向」の記載を省略している。なお、z方向は重力方向に沿う方向に相当している。高さ方向はz方向に相当している。径方向はz方向に直交する方向に相当している。径方向はx方向とy方向の少なくとも一方に沿う方向に相当している。
【0016】
図1および図2に示すように、電子機器10はケース100と基板500を有する。ケース100は筐体200とカバー300とシール部材600と複数の締結部材800を有している。筐体200の備える後述する突出部220とカバー300の備える後述する第1突出対向部331との間の空隙700にシール部材600が設けられている。筐体200とカバー300とが締結部材800を介して締結されている。
【0017】
<筐体>
筐体200は金属部材がプレス加工されることによって製造されている。図2に示すように、筐体200は底部210と突出部220と周縁部230を有している。これらはz方向に直交する径方向で底部210、突出部220、周縁部230の順に並んでいる。底部210と突出部220と周縁部230の連結形態については後で詳説する。
【0018】
なお図面においてはそれぞれの境界を破線で示している。また筐体200はプレス加工で製造されていなくてもよい。筐体200は例えば鋳造によって製造されていてもよい。
【0019】
図2に示すように底部210、突出部220、および、周縁部230それぞれはz方向に並ぶ表面200aと裏面200bを有している。
【0020】
底部210の表面200aには基板500が搭載されている。図2に示すように底部210のz方向周りの底部周縁215に突出部220が一体的に連結されている。突出部220は裏面200bから表面200aに向かってz方向に延びている。突出部220における表面200aのz方向の高さは、底部210における表面200aのz方向の高さよりも高くなっている。
【0021】
周縁部230は突出部220のz方向周りの突出部周縁225に一体的に連結されている。周縁部230には表面200aから裏面200bに向かって締結部材800の軸部820の挿入される第1締結孔231が形成されている。
【0022】
第1締結孔231には軸部820を固定するための図示しない溝が形成されている。第1締結孔231の溝に軸部820が固定されることで筐体200とカバー300とがz方向で締結されるようになっている。
【0023】
また突出部220はz方向に並ぶ表面200aと裏面200bの他に、径方向に並ぶ内面220bと外面220cを有している。
【0024】
内面220bは底部210の表面200aと一体的に連結されている。外面220cは周縁部230の表面200aと一体的に連結されている。なお、外面220cは例えば筐体200にカバー300を取り付ける際のガイドとして用いられる。
【0025】
上記した突出部220の表面200aはシール部材600の接着する面である。以下、説明を簡便とするために、突出部220の表面200aを第1シール面220aと示す。
【0026】
第1シール面220aは径方向に沿うとともに底部210の中心から底部周縁215に向かう方向で周縁部230に近付くようにz方向に傾斜している。言い換えれば第1シール面220aは径方向で中心から外側に向かうにつれて重力方向下方に向かって傾斜している。なお径方向の中心とは底部210の中心に相当する。径方向の外側とは底部210の中心よりも径方向で周縁部230側の位置に相当する。
【0027】
<カバー>
カバー300は金属部材がプレス加工されることによって製造されている。図1および図2に示すようにカバー300は主部310と突出対向部320と周縁対向部340を有している。これらはz方向に直交する径方向で主部310、突出対向部320、周縁対向部340の順に並んでいる。
【0028】
径方向の中心から外側に向かって主部310、突出対向部320、周縁対向部340が順に並んでいる。図面においてはそれぞれの境界を破線で示している。
【0029】
図2に示すように主部310、突出対向部320、周縁対向部340それぞれはz方向に並ぶ対向表面300aと対向裏面300bを有している。対向表面300aが表面200aとz方向で対向している。
【0030】
主部310は底部210に搭載された基板500とz方向で対向している。突出対向部320は突出部220とz方向と径方向それぞれで対向している。周縁対向部340は周縁部230とz方向で対向している。
【0031】
突出対向部320は主部310のz方向周りの主部周縁315に一体的に連結されている。周縁対向部340は突出対向部320のz方向周りの突出対向部周縁325に一体的に連結されている。なお図面においてはそれぞれの境界を破線で示している。
【0032】
周縁対向部340にはz方向に開口する第2締結孔341が形成されている。第2締結孔341が上記した第1締結孔231とz方向で連通している。第1締結孔231と第2締結孔341とが連通する連通孔に締結部材800の軸部820が通されている。
【0033】
また突出対向部320は突出部220とz方向で対向する第1突出対向部331と、突出部220と径方向で対向する第2突出対向部332を有している。第1突出対向部331の径方向外側の端に第2突出対向部332が一体的に連結されている。なお、第1突出対向部331と第2突出対向部332との境界を一点鎖線で示している。
【0034】
第1突出対向部331の対向表面300aはシール部材600の接着する面である。以下、説明を簡便とするために、第1突出対向部331の対向表面300aを第2シール面331aと示す。第2シール面331aがシール部材600を介して第1シール面220aとz方向で対向している。
【0035】
第2シール面331aは径方向に沿うとともに底部210から底部周縁215に向かう方向で周縁部230に近付くようにz方向に傾斜している。言い換えれば第2シール面331aは径方向で中心から外側に向かうにつれて重力方向下方に向かって傾斜している。
【0036】
第2突出対向部332は径方向に並ぶ第1対向内面332aと第1対向外面332bを有している。第1対向内面332aが第1シール面220aの一部および外面220cと径方向で対向している。第1対向内面332aと外面220cとがシール部材600が通過できる程度に径方向に離間している。
【0037】
<締結部材>
締結部材800は筐体200とカバー300とをz方向で締結する機能を有する。締結部材800は例えばボルトである。締結部材800は頭部810と軸部820を有する。軸部820が第1締結孔231と第2締結孔341の連通する連通孔に通され、第1締結孔231の溝に固定されることでカバー300と筐体200とがz方向で締結されるようになっている。
【0038】
なお、締結部材800はボルトに限定されない。筐体200とカバー300とが締結されていれば締結部材800はどんなものであってもよい。さらに言えば、締結部材800を有さずに、筐体200とカバー300とが例えばスナップフィット固定されていてもよい。
【0039】
<シール部材>
シール部材600は例えばシリコーン等の液状材料又は弾性材料で構成されている。シール部材600は空隙700に設けられている。シール部材600が第1シール面220aと第2シール面331aそれぞれに接触している。シール部材600は外部からの水分の侵入を防ぐとともに筐体200とカバー300とを接着する機能を有している。
【0040】
外部からの水分の侵入に関してさらに言えば、ケース100の内部に水分が侵入すると、基板500に意図しない通電経路が形成される虞がある。これを防ぐために、空隙700にシール部材600が設けられている。
【0041】
<第1シール面と第2シール面>
上記したように第1シール面220aと第2シール面331aは径方向で中心から外側に向かうにつれて重力方向下方に向かって傾斜している。図2に示すように第1シール面220aの第1傾斜角度αは第2シール面331aの第2傾斜角度βと異なっている。
【0042】
第1傾斜角度αとはz方向に沿う仮想平面Pと第1シール面220aとが成す角度のことである。第2傾斜角度βとはz方向に沿う仮想平面Pと第2シール面331aとが成す角度のことである。
【0043】
そのために空隙700における径方向中心側のz方向の幅が、空隙700における径方向外側のz方向の幅よりも狭くなっている。言い換えれば、空隙700における径方向外側のz方向の幅が、空隙700における径方向中心側のz方向の幅よりも広くなっている。空隙700のz方向の幅が径方向で中心から外側に向かって徐々に広くなっている。以下空隙700のz方向の幅を単に空隙700の幅と示す。
【0044】
<電子機器およびケースの製造方法>
これまでに説明したように筐体200とカバー300はプレス加工によって製造されている。以下に電子機器10およびケース100の製造方法を説明する。
【0045】
まず筐体200およびカバー300の元となる板状の金属部材をそれぞれ用意する。次にそれぞれの板状の金属部材に金型を押し当てる。次にそれぞれの板状の金属部材に圧力をかけ各々の構成を形成する。
【0046】
筐体200およびカバー300それぞれの形状が完成したら、底部210に基板500を搭載する。そして第1シール面220aにシール部材600を塗布する。
【0047】
次に第2シール面331aが第1シール面220aにz方向で対向するように筐体200をカバー300に設置する。そして締結部材800を用いて筐体200とカバー300を締結する。このようにして電子機器10およびケース100が製造されている。
【0048】
なお、筐体200は基板500の搭載や締結部材800などとの兼ね合いからカバー300よりも設計の自由度が低くなっている。そのために本実施形態においてはカバー300に積極的に加工を施すことで第1傾斜角度αと第2傾斜角度βを異ならせている。
【0049】
<筐体とカバーとの密閉性>
上記したように第1突出対向部331と突出部220との間の空隙700にシール部材600が設けられ、周縁対向部340と周縁部230とが締結部材800によって固定されている。これによって筐体200とカバー300との密閉性が保たれている。なお、これには筐体200に呼吸孔などが形成されていた場合も含む。
【0050】
<製造誤差>
ケース100を構成する構成要素は製造時において製造誤差が生じることがある。例えばカバー300と筐体200の少なくとも一方に製造誤差が生じると、空隙700の幅が変動することがある。
【0051】
カバー300に製造誤差が生じている場合は筐体200との取り付け基準である周縁部230の表面200aと第2シール面331aの間の距離が設計上の狙いの距離から外れることがある。筐体200に製造誤差が生じている場合は周縁部230の表面200aと第1シール面220aの間の距離が設計上の狙いの距離から外れることがある。そのために空隙700の幅が変動することがある。
【0052】
<空隙の幅が一定である構成の課題>
本実施形態とは異なり図5に示す空隙700の幅が一定となる構成で、製造誤差によって空隙700の幅が設計上の狙いの幅よりも広がると、突出部220および突出対向部320とシール部材600との接着面積が小さくなりやすくなる。
【0053】
なお、シール部材600の接着面積とは第1シール面220aにおけるシール部材600と接着している領域の面積と第2シール面331aにおけるシール部材600と接着している領域の面積とを併せた面積のことである。
【0054】
図5のようにして突出部220および突出対向部320とシール部材600との接着面積が小さくなると、筐体200とカバー300とのz方向に沿う接着力と径方向に沿う接着力それぞれが弱まりやすくなる。そのために筐体200とカバー300との相対的な位置ずれが起こる虞がある。
【0055】
特にシール部材600のz方向の厚みが厚くなると径方向に沿う圧力がシール部材600にかかりやすくなる虞がある。
【0056】
本実施形態と異なり図6に示す空隙700の幅が一定となる構成で、製造誤差によって空隙700の幅が設計上の狙いの幅よりも狭くなると、突出部220および突出対向部320とシール部材600との接着面積が小さくなりやすくなる。
【0057】
図6のようにして突出部220および突出対向部320とシール部材600との接着面積が小さくなると、空隙700から基板500や外部に向かってシール部材600が漏れ出しやすくなる。また空隙700が形成されないほどに近付くと、シール部材600が第1シール面220aと第2シール面331aに接着されなくなりシール機能を果たさなくなる虞がある。
【0058】
<作用効果>
本実施形態では第1傾斜角度αと第2傾斜角度βの角度が異なっている。これによれば突出部220と突出対向部320によってシール部材600を空隙700の幅の狭い方から空隙700の幅の広い方へと押し出すことができるようになっている。
【0059】
そのために空隙700の幅の広い方でシール部材600が突出部220および突出対向部320それぞれと接着しやすくなっている。したがって突出部220および突出対向部320とシール部材600との接着面積が減少することが抑制されやすくなっている。
【0060】
製造誤差などによって図3のように空隙700の幅が設計上の狙いの幅よりも広がっていたとしても、突出部220および突出対向部320によって空隙700の幅が狭い方から広い方へシール部材600が押し出されやすくなっている。シール部材600が空隙700の幅の広い方で第1シール面220aと第2シール面331aに接触しやすくなっている。
【0061】
製造誤差などによって図4に示すように空隙700の幅が設計上の狙いの幅よりも狭くなっていたとしても、突出部220および突出対向部320によって空隙700の幅が狭い方から広い方へシール部材600が押し出されやすくなっている。
【0062】
そしてシール部材600が空隙700の幅の広い方で空隙700内に留まりやすくなっている。シール部材600が空隙700の幅の広い方で第1シール面220aと第2シール面331aに接触しやすくなっている。
【0063】
このように空隙700の幅が変動したとしても、突出部220および突出対向部320とシール部材600との接着面積が減少することが抑制されやすくなっている。
【0064】
これまでに説明したように空隙700における径方向中心側のz方向の幅が、空隙700における径方向外側のz方向の幅よりも狭くなっている。
【0065】
シール部材600が底部210側に漏れ出しにくくなっている。底部210に搭載された基板500などの電子部品に接触することが抑制されやすくなっている。またシール部材600が筐体200とカバー300との間の隙間を流れて外部に漏れ出すことが抑制されやすくなっている。外観不良が抑制されやすくなっている。
【0066】
これまでに説明したように第1シール面220aと第2シール面331aそれぞれが径方向で中心から外側に向かうにつれて重力方向下方に向かって傾斜している。第1シール面220aと第2シール面331aの傾斜方向が異なる場合と比べて、シール部材600が空隙700の幅の広い方で第1シール面220aと第2シール面331aに接触しやすくなっている。
【0067】
これまでに説明したように筐体200とカバー300がシール部材600と複数の締結部材800によって密閉されている。ケース100には、筐体200とカバー300によって区画される収納空間内部の圧力と外部の圧力との差によって生じる圧力がかかる。
【0068】
圧力とは例えば、z方向に沿って内部から外部にかかる力と、径方向に沿って内部から外部にかかる力のことである。内部とは筐体200とカバー300によって区画される収納空間のことである。外部とはカバー300の対向裏面300b側の空間のことである。
【0069】
以下説明を簡便とするためにケース100にかかるz方向に沿って内部から外部にかかる圧力を第1圧力とする。ケース100にかかる径方向に沿って内部から外部にかかる圧力を第2圧力とする。
【0070】
上記したように筐体200とカバー300とがz方向で締結部材800によって締結されている。そのためにケース100に第1圧力がかかったとしても筐体200とカバー300とのz方向の相対位置がずれることが抑制されやすくなっている。
【0071】
また上記したように空隙700の幅が径方向の外側よりも径方向の中心側で狭くなっている。そのためにシール部材600に第2圧力がかかりにくくなっている。これによって筐体200とカバー300との径方向の相対位置がずれることが抑制されやすくなっている。
【0072】
これまでに説明したように筐体200は基板500の搭載や締結部材800などとの兼ね合いからカバー300よりも設計の自由度が低くなっている。そのためにカバー300に積極的に加工を施すことで第1傾斜角度αと第2傾斜角度βの角度を異ならせている。これによって第1傾斜角度αと第2傾斜角度βの角度を簡易に異ならせることができるようになっている。
【0073】
(第2実施形態)
第1実施形態では突出対向部320が第1突出対向部331と第2突出対向部332を有する構成について説明したが、図7に示すように突出対向部320が第1突出対向部331と第2突出対向部332の他に第3突出対向部333を有していても良い。
【0074】
図7に示すように第2突出対向部332と周縁対向部340の間に第3突出対向部333が介在されている。第3突出対向部333は径方向で突出部220に対向するとともにz方向で周縁部230に対向している。第3突出対向部333は外面220cの一部と周縁部230の表面200aの一部に対向する第2対向内面333aとその裏側の第2対向外面333bを有する。
【0075】
上記したように第2シール面331aが第1シール面220aとz方向で対向し、第1対向内面332aが第1シール面220aの一部および外面220cと径方向で対向している。図7に示すように第2対向内面333aは外面220cの一部と径方向で対向するとともに周縁部230の表面200aの一部とz方向で対向している。
【0076】
また図7に示すように周縁部230と第3突出対向部333の間に空隙700とは異なる別の空間が形成される。以下この空間を溜まり部710と示す。溜まり部710にはシール部材600が溜まることが想定されている。
【0077】
また外面220cと第1対向内面332aはシール部材600の通過できる程度に径方向で離間している。言い換えれば外面220cと第1対向内面332aの間にシール部材600の通過できる隙間が介在されている。
【0078】
そのために空隙700の幅が設計上の狙いの幅よりも狭くなりシール部材600が径方向で外側に押し出されたとしても、シール部材600がこの隙間を通り溜まり部710に溜まりやすくなっている。これによればシール部材600が外部に漏れることが抑制される。外観不良が抑制されやすくなっている。
【0079】
また溜まり部710の分、筐体200およびカバー300とシール部材600との接着面積が減少することが抑制されやすくなっている。
【0080】
(第1変形例)
これまでに説明した実施形態では第1シール面220aおよび第2シール面331aが径方向で中心から外側に向かうにつれて重力方向下方に向かって傾斜している形態について説明した。しかしながら図8に示すように第1シール面220aが径方向で中心から外側に向かうにつれて重力方向上方に向かって傾斜し、第2シール面331aが径方向で中心から外側に向かうにつれて重力方向下方に向かって傾斜していてもよい。
【0081】
また図示しないが、第1シール面220aが径方向で中心から外側に向かうにつれて重力方向下方に向かって傾斜し、第2シール面331aが径方向で中心から外側に向かうにつれて重力方向上方に向かって傾斜していてもよい。
【0082】
他にも、第1シール面220aおよび第2シール面331aが径方向で中心から外側に向かうにつれて重力方向上方に向かって傾斜していてもよい。また第1シール面220aと第2シール面331aの一方が径方向に沿っていてもよい。第1傾斜角度αと第2傾斜角度βの角度が異なっていれば第1シール面220aと第2シール面331aの傾斜方向は限定されない。
【0083】
(第2変形例)
図9に示すように第1シール面220aと第2シール面331aは曲面であってもよい。その場合、第1シール面220aと第2シール面331aとの曲率が異なっていれば良い。
【0084】
(第3変形例)
また他にも図10に示すように突出部220にシール部材600の移動を堰き止めるための複数の凸部221が形成されていてもよい。複数の凸部221が第1シール面220aから遠ざかる態様で延びていてもよい。また図示しないが第1突出対向部331にシール部材600の移動を堰き止めるための複数の凸部221が形成されていてもよい。
【0085】
複数の凸部221が突出部220の底部210側の部位と突出部220の周縁部230側の部位それぞれに設けられていてもよい。これによれば複数の凸部221によってシール部材600が底部210と周縁部230それぞれに向かって漏れにくくなっている。これによれば基板500にシール部材600が接触することが抑制される。外部にシール部材600が漏れることが抑制される。
【0086】
(第4変形例)
他にも突出部220がz方向で多段になっていてもよい。例えば図11に示すように突出部220がz方向で2段になっていてもよい。その場合、突出部220は2つの第1シール面220aと2つの外面220cを有する。それに伴って突出対向部320も2つの第2シール面331aと2つの第1対向内面332aを有する。
【0087】
この場合においても2つの第1シール面220aのうちの1つの第1傾斜角度αと、この第1シール面220aに対向する、2つの第2シール面331aのうちの1つの第2傾斜角度βとが異なっていれば良い。2つの第1シール面220aのうちの残りの1つの第3傾斜角度γと、この第1シール面220aに対向する、2つの第2シール面331aのうちの残りの1つの第4傾斜角度δとが異なっていればよい。
【0088】
(その他の変形例)
これまでに説明した実施形態では、外面220cが例えば筐体200にカバー300を取り付ける際のガイドとして用いられる形態について説明したが、外面220cが例えば筐体200にカバー300を取り付ける際のガイドになっていなくてもよい。さらに外面220cと外面220cに径方向で対向する第1対向内面332aとの傾斜角度が異なっていてもよい。
【0089】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範ちゅうや思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0090】
100…ケース、200…筐体、210…底部、215…底部周縁、220…突出部、220a…第1シール面、225…突出部周縁、230…周縁部、300…カバー、310…主部、320…突出対向部、325…突出対向部周縁、331…第1突出対向部、331a…第2シール面、332…第2突出対向部、333…第3突出対向部、340…周縁対向部、500…基板、600…シール部材、700…空隙、710…溜まり部、800…締結部材
図1
図2
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