IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用照明装置 図1
  • 特許-車両用照明装置 図2
  • 特許-車両用照明装置 図3
  • 特許-車両用照明装置 図4
  • 特許-車両用照明装置 図5
  • 特許-車両用照明装置 図6
  • 特許-車両用照明装置 図7
  • 特許-車両用照明装置 図8
  • 特許-車両用照明装置 図9
  • 特許-車両用照明装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】車両用照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 43/20 20180101AFI20241016BHJP
   F21V 11/00 20150101ALI20241016BHJP
   F21S 43/27 20180101ALI20241016BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20241016BHJP
   F21S 43/50 20180101ALI20241016BHJP
   F21W 103/60 20180101ALN20241016BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241016BHJP
   F21Y 101/00 20160101ALN20241016BHJP
【FI】
F21S43/20
F21V11/00
F21S43/27
F21S43/14
F21S43/50
F21W103:60
F21Y115:10
F21Y101:00 100
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021154917
(22)【出願日】2021-09-22
(65)【公開番号】P2023046167
(43)【公開日】2023-04-03
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧 弘昭
(72)【発明者】
【氏名】堀部 人嗣
(72)【発明者】
【氏名】市川 忠沖
(72)【発明者】
【氏名】森 翔哉
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-034803(JP,A)
【文献】実開昭61-153920(JP,U)
【文献】実開昭61-099903(JP,U)
【文献】特開2019-085076(JP,A)
【文献】特開2019-173508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
F21V 11/00-11/18
F21W 103/60
F21Y 115/10
F21Y 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光を発する第1光源と、
第2光を発する第2光源と、
前記第1光及び前記第2光の光路先側にあるインナーレンズと、
前記インナーレンズよりも前記第1光及び前記第2光の光路先側にあるアウターレンズと、
前記インナーレンズと前記アウターレンズとの間において前記第1光の光路と前記第2光の光路とを隔てる遮光壁と、を具備し、
前記インナーレンズ及び前記アウターレンズは、遮光性の筐体の内部に配置され、
前記アウターレンズのうち、前記第1光が透過するアウター第1領域以外かつ前記第2光が透過するアウター第2領域以外の領域は、前記筐体によって前記光路先側から被覆され、
前記遮光壁は前記筐体に一体化されている、車両用照明装置。
【請求項2】
前記第1光源、前記インナーレンズ及び前記アウターレンズからなる第1ランプユニットと、
前記第2光源、前記インナーレンズ及び前記アウターレンズからなり、前記第1ランプユニットに一体化されている第2ランプユニットと、を具備し、
前記第1ランプユニットは、車両用のキックセンサのセンシング位置を路面に表示し、
前記第2ランプユニットは、前記センシング位置を車体に表示する、請求項1に記載の車両用照明装置。
【請求項3】
第1光を発する第1光源と、
第2光を発する第2光源と、
前記第1光及び前記第2光の光路先側にあるインナーレンズと、
前記インナーレンズよりも前記第1光及び前記第2光の光路先側にあるアウターレンズと、
前記インナーレンズと前記アウターレンズとの間において前記第1光の光路と前記第2光の光路とを隔てる遮光壁と、を具備し、
前記第1光源、前記インナーレンズ及び前記アウターレンズからなる第1ランプユニットと、
前記第2光源、前記インナーレンズ及び前記アウターレンズからなり、前記第1ランプユニットに一体化されている第2ランプユニットと、を具備し、
前記第1ランプユニットは、車両用のキックセンサのセンシング位置を路面に表示し、
前記第2ランプユニットは、前記センシング位置を車体に表示する、車両用照明装置。
【請求項4】
前記インナーレンズ及び前記アウターレンズは、遮光性の筐体の内部に配置され、
前記アウターレンズのうち、前記第1光が透過するアウター第1領域以外かつ前記第2光が透過するアウター第2領域以外の領域は、前記筐体によって前記光路先側から被覆されている、請求項3に記載の車両用照明装置。
【請求項5】
前記遮光壁は前記アウターレンズ側から前記インナーレンズ側に向けて突出し、
前記インナーレンズは、前記アウターレンズ側から前記第1光源および前記第2光源側に向けて陥没する凹部を有し、
前記遮光壁の突出端部は前記凹部に入り込む、請求項1~請求項4の何れか一項に記載の車両用照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光源とレンズとを具備し車両に搭載される車両用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には従来から各種の照明装置が配設されている。例えば、特許文献1には、複数の光源を用いて、路面や壁面等の対象物に着色画像を重ねて描画する照明装置が紹介されている。当該照明装置は、光源、並びに、当該光源の光路上流側から下流側に配列する第1レンズ、シェード及び第2レンズを含むランプユニットを、少なくとも2つ備えるものである。光源は可視光を発生し、当該可視光は第1レンズを透過する。シェードは、例えば遮光プレートを所要形状に切り抜くことで形成された透光部であり、第1レンズを透過した光の一部を透過させ、残部を遮ることで、所要形状の画像を形成する。第2レンズは、シェードが形成した画像を前方へ投射する。
【0003】
特許文献1には、上記の照明装置は、シェードによって形成された異なる色の画像をランプ前方の同じ位置に重ね合わせるように構成されているので、安価な光学部品を用いて、対象物に複雑な形状の着色画像を鮮明かつ簡易に描画できる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-85076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、特許文献1に紹介されている照明装置によると、異なる光源が発した光を重ねることにより、様々な色を表示することが可能である。
【0006】
ここで、車両用の照明装置には、隣り合う光源が発した光によって各々異なる意匠を表示することが要求される場合がある。
【0007】
例えば車両後部には、車体や路面に光を照射し、車体や路面を照らしたり、車体や路面に各種のサインや画像を表示したりするための各種の照明装置が搭載される。
車両に搭載される車両搭載機器には小型化や軽量化することが求められ、上記した各種の照明装置についてもその複数を一体化することを要求されている。複数の照明装置が一体化されてなる照明装置は、光源とレンズとの組み合せからなるランプユニットを複数有する、ともいい得る。
【0008】
このようにランプユニットを複数有する照明装置においては、個々のランプユニットが光を照射する対象は各々異なる。このため隣り合うランプユニットの光源が発する光の焦点や色、光により表示されるサインや画像等は、ランプユニット毎に各々異なる場合がある。
このような場合には、隣り合うランプユニットの光源が発する光が混ざり合うと、各々のランプユニットが表示する意匠が不鮮明になったり、当該意匠の意匠性が損なわれたりする等の不具合が生じる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ランプユニットを複数有する照明装置であって、各々のランプユニットにより独立した鮮明な意匠を表示できるものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の車両用照明装置は、
第1光を発する第1光源と、
第2光を発する第2光源と、
前記第1光及び前記第2光の光路先側にあるインナーレンズと、
前記インナーレンズよりも前記第1光及び前記第2光の光路先側にあるアウターレンズと、
前記インナーレンズと前記アウターレンズとの間において前記第1光の光路と前記第2光の光路とを隔てる遮光壁と、を具備するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両用照明装置は、光源とレンズとの組み合せからなるランプユニットを複数有する照明装置であって、各々のランプユニットにより独立した鮮明な意匠を表示することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の車両用照明装置の全体を模式的に表す説明図である。
図2】実施例1の車両用照明装置の全体を模式的に表す説明図である。
図3】実施例1の車両用照明装置を分解した様子を模式的に表す説明図である。
図4】実施例1の車両用照明装置を切断した断面を模式的に表す説明図である。
図5】実施例1の車両用照明装置を切断した断面を模式的に表す説明図である。
図6】実施例2の車両用照明装置の全体を模式的に表す説明図である。
図7】実施例2の車両用照明装置の全体を模式的に表す説明図である。
図8】実施例2の車両用照明装置を分解した様子を模式的に表す説明図である。
図9】実施例2の車両用照明装置を切断した断面を模式的に表す説明図である。
図10】実施例2の車両用照明装置を切断した断面を模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の車両用照明装置は、第1光を発する第1光源、第2光を発する第2光源、前記第1光及び前記第2光の光路先側にあるインナーレンズ、前記インナーレンズよりも前記第1光及び前記第2光の光路先側にあるアウターレンズ、及び、前記インナーレンズと前記アウターレンズとの間において前記第1光の光路と前記第2光の光路とを隔てる遮光壁を具備する。
【0014】
インナーレンズは、第1光源が発する第1光及び第2光源が発する第2光の光路先側にある。また、アウターレンズは、インナーレンズよりも第1光及び第2光の光路先側にある。したがって本発明の車両用照明装置は、第1光源、インナーレンズ及びアウターレンズからなるランプユニットと、第2光源、インナーレンズ及びアウターレンズからなるランプユニットと、の2つのランプユニットを具備するといい得る。
換言すると、本発明の車両用照明装置における2つのランプユニットは、インナーレンズ及びアウターレンズを共用する、といい得る。
【0015】
以下、必要に応じて、第1光源、インナーレンズ及びアウターレンズからなるランプユニットを第1ランプユニットと称し、第2光源、インナーレンズ及びアウターレンズからなるランプユニットを第2ランプユニットと称する。
【0016】
本発明の車両用照明装置は、上記した第1ランプユニット及び第2ランプユニットに加えて、インナーレンズとアウターレンズとの間において第1光源が発する第1光の光路と第2光源が発する第2光の光路とを隔てる遮光壁を具備する。
アウターレンズは、インナーレンズよりも光路先側にあり、本発明の車両用照明装置における光路の先側領域を構成する。換言すると、アウターレンズは本発明の車両用照明装置が具備するレンズのうち、外側に配置されるレンズである。
【0017】
本発明の車両用照明装置では、上記のアウターレンズとインナーレンズとの間において第1光の光路と第2光の光路とを隔てることにより、当該第1光と第2光とが混ざり合う不具合を抑制できる。これにより、本発明の車両用照明装置によると、第1ランプユニットが表示する意匠と第2ランプユニットが表示する意匠との各々を独立して鮮明に表示することが可能である。
【0018】
以下、本発明の車両用照明装置をその構成要素毎に説明する。
【0019】
本発明の車両用照明装置は、第1光源及び第2光源を有する。本発明の車両用照明装置における光源の数は、2以上であれば良く、特に限定されない。
【0020】
光源の種類もまた特に限定されず、第1光源と第2光源とは同じ機構で光を発するものであっても良いし、異なる機構で光を発するものであっても良い。第1光源及び第2光源としては、具体的には、LEDランプ、ハロゲンランプ等を例示できる。
【0021】
第1光源は第1光を発し、第2光源は第2光を発する。第1光と第2光とは同じ色や明るさの光であっても良いし、異なる色や明るさの光であっても良い。第1光及び第2光の波長は特に限定されないが、810nm~380nmの範囲の可視光であるのが好適である。
【0022】
本発明の車両用照明装置は、既述したように、第1光と第2光とが混ざり合う不具合を抑制することで、第1ランプユニットが表示する意匠と第2ランプユニットが表示する意匠との各々を独立して鮮明に表示するものである。このような本発明の趣旨からは、第1光源及び第2光源として、互いに異なる色の光を発するものを選択するのが好適であるといい得る。例えば、L*a*b*色空間による第1光と第2光との差は、明度L*において30以上、色度a*において30以上、又は、色度b*において30以上、の3つの項目のうち任意の2以上を満たすのが好ましい。
参考までに、第1光と第2光との一方が白色(L*=100、a*=0、b*=0)であり、他方が緑色(L*=50、a*=-60、b*=0)である場合、第1光と第2光との差は、明度L*において50、色度a*において60、及び、色度b*において0であり、上記の3つの項目のうち2つを満たす。
【0023】
また、第1光と第2光との明るさを変えることも有効である。すなわち、第1光と第2光とのうち明度の高い方の光を暗く、明度の低い方の光を暗くすることにより、第1光と第2光とが互いに独立しているように、ユーザーに見せることが可能である。
より具体的には、第1光と第2光とのうち明度の高い方の光により照らされる対象物の照度を、明度の低い方の光により照らされる対象部との照度の、1/50~1/5000範囲内、1/100~1/2500の範囲内、又は、1/250~1/1000の範囲内とするのが好ましい。
例えば、第1光が白色であり第2光が緑色である場合には、明度の高い白色の第1光による照度を30ルクス程度にし、明度の低い緑色の第2光による照度を15000ルクス等と明るくするのが好適である。
【0024】
インナーレンズは、第1光及び第2光の光路先側にある。換言すると、第1光源及び第2光源は、単一のインナーレンズによって、光路先側から覆われている。
【0025】
インナーレンズは、第1光及び第2光を各々屈折させて発散または収束させる光学素子であれば良い。なお、本発明の車両用照明装置は、既述したように、各々のランプユニットによって独立した鮮明な意匠を表示することを課題とするものである。このため、第1ランプユニットに由来する第1光と、第2ランプユニットに由来する第2光とが混ざり合うことを避ける意味で、インナーレンズは第1光及び第2光を各々屈折させて収束させるものであるのが好適である。
【0026】
また、第1光及び第2光の色が異なる場合には、インナーレンズは無色透明であるのが好ましい。第1光及び第2光の光路先側にある単一のインナーレンズによって第1光及び第2光の色調が被る影響を、排除又は低減するためである。
ここでいう無色透明とは、無色すなわち無彩色であり、かつ、透明であることを意味する。
【0027】
なお、本明細書において、無彩色とは彩度が3以下であることを意味する。好ましくは、当該彩度は2以下、1以下、又は0.5以下である。当然乍ら、インナーレンズの彩度は0であるのが特に好ましい。
さらに、本明細書において、透明とは810nm~380nmの範囲の可視光線透過率が70%以上であることを意味する。好ましくは、当該可視光線透過率は80%以上、85%以上、又は90%以上である。インナーレンズの可視光線透過率は95%以上であるのが特に好ましい。
【0028】
インナーレンズは、第1光源により発せられた第1光が透過する領域と、第2光源により発せられた第2光が透過する領域とを有する。以下、必要に応じて、インナーレンズのうち第1光が透過する領域をインナー第1レンズ領域と称し、第2光が透過する領域をインナー第2レンズ領域と称する。
【0029】
アウターレンズは、インナーレンズよりも第1光及び第2光の光路先側にある。アウターレンズもまた、第1光及び第2光を各々屈折させて発散または収束させる光学素子であれば良く、第1光及び第2光を各々屈折させて収束させるものであるのが好適である。
【0030】
アウターレンズもまた、第1光源により発せられた第1光が透過する領域と、第2光源により発せられた第2光が透過する領域とを有する。以下、必要に応じて、アウターレンズのうち第1光が透過する領域をアウター第1レンズ領域と称し、第2光が透過する領域をアウター第2レンズ領域と称する。
【0031】
本発明の車両用照明装置における、上記の第1光源、インナーレンズ及びアウターレンズは第1ランプユニットを構成する。また、上記の第2光源、インナーレンズ及びアウターレンズは第2ランプユニットを構成する。第1光の光路は第1ランプユニットの光路ともいうことができ、第2光の光路は第2ランプユニットの光路ともいうことができる。
【0032】
本発明の車両用照明装置は、上記した第1ランプユニット及び第2ランプユニットに加えて、遮光壁を有する。当該遮光壁は、インナーレンズとアウターレンズとの間において第1光の光路と第2光の光路とを隔てる。
【0033】
遮光壁は、文字通り光を遮る機能を有すれば良い。このような遮光壁における可視光の透過率は、10%以下、5%以下、または1%以下であるのが好ましい。当然乍ら、遮光壁における可視光の透過率は0%であるのが特に好ましい。したがって、遮光壁における可視光の透過率の最小値としては、0%を例示できる。
【0034】
遮光壁は、第1光の光路と第2光の光路とを隔てる都合上、インナーレンズとアウターレンズの少なくとも一方に一体化されているのが好ましい。インナーレンズおよびアウターレンズは光を透過する必要があり遮光壁は光を遮る必要があるために、インナーレンズ及びアウターレンズと遮光壁とは異なる材料を選択する必要がある。
【0035】
このような遮光壁をインナーレンズまたはアウターレンズに一体化する方法としては、例えば、インナーレンズまたはアウターレンズと、これらとは別体で形成した遮光壁と、を溶着や接着等の方法で一体化する方法を選択することができる。
または、予め形成しておいたインナーレンズまたはアウターレンズをインサートとし遮光壁を成形するインサート成形法により、遮光壁をインナーレンズまたはアウターレンズに一体化する方法を選択することもできる。
または、予め形成しておいた遮光壁をインサートとしインナーレンズまたはアウターレンズを成形するインサート成形法により、遮光壁をインナーレンズまたはアウターレンズに一体化する方法を選択することもできる。
さらには、遮光壁と、インナーレンズまたはアウターレンズとの一方を先に成形しその後他方を成形する二色成形法により、遮光壁をインナーレンズまたはアウターレンズに一体化する方法を選択することもできる。
【0036】
何れの場合にも、遮光壁は、インナーレンズとアウターレンズとの間の空間において、第1光の光路と第2光の光路とを、その光路方向の少なくとも一部で区画すれば良い。こうすることにより、遮光壁は、インナーレンズとアウターレンズとの間において第1光の光路と第2光の光路とを隔てることができ、第1光と第2光とが混ざり合う不具合を抑制でき、ひいては、第1ランプユニットが表示する意匠と第2ランプユニットが表示する意匠との各々を独立して鮮明に表示することが可能である。
【0037】
遮光壁は、インナーレンズとアウターレンズとの間の空間において、第1光の光路と第2光の光路とを、その光路方向における全長で区画するのが特に好ましい。しかし、設計の都合等によりそれが叶わない場合には、遮光壁は、インナーレンズとアウターレンズとの間の空間において、第1光の光路と第2光の光路とを、その光路方向における50%以上の長さ、または80%以上の長さで区画するのが好ましい。参考までに、当該光路方向における100%となる長さは、当該光路方向におけるインナーレンズとアウターレンズとの距離である。
当該光路方向における遮光壁の長さは、100%であるのが特に好ましい。したがって、当該長さの最大値としては、100%を例示できる。
【0038】
本発明の車両用照明装置において、遮光壁はアウターレンズ側からインナーレンズ側に向けて突出し、インナーレンズはアウターレンズ側から第1光源および第2光源側に向けて、換言すると、第1光及び第2光の光路の先側から後側に向けて陥没する凹部を有し、さらに、遮光壁の突出端部はインナーレンズの凹部に入り込むのが好ましい。この場合、インナーレンズとアウターレンズとの間の空間において、第1光の光路と第2光の光路とを、その光路方向における全長で遮光壁によって区画する車両用照明装置を、シンプルな構造で実現することが可能である。
【0039】
なお、遮光壁はインナーレンズに一体化されていても良い。この場合には、遮光壁はインナーレンズ側からアウターレンズ側に向けて突出し、アウターレンズは第1光および第2光の光路の後側から先側に向けて陥没する凹部を有し、さらに、遮光壁の突出端部はアウターレンズの凹部に入り込むのが好ましい。この場合にも、インナーレンズとアウターレンズとの間の空間において、第1光の光路と第2光の光路とを、その光路方向における全長で遮光壁によって区画する車両用照明装置を、シンプルな構造で実現することが可能である。
【0040】
また、本発明の車両用照明装置において、インナーレンズ、アウターレンズ及び遮光壁は、筐体の内部に配置することが好ましい。こうすることで、インナーレンズ、アウターレンズ及び遮光壁の位置関係を適切にかつ安定的に維持することができ、本発明の車両用照明装置に優れたハンドリング性能を付与することが可能である。第1光源及び第2光源をインナーレンズ、アウターレンズ及び遮光壁とともに当該筐体の内部に配置するのも好ましい。
【0041】
筐体は遮光性であるのが好ましい。第1光の光路および第2光の光路を筐体の内部において適切にコントロールするためである。
【0042】
ここで、既述したように、アウターレンズは、インナーレンズよりも光路先側にあり、本発明の車両用照明装置における光路の先側領域を構成する。つまりアウターレンズを透過した第1光及び第2光は、車両用照明装置の外側に出射される。このようなアウターレンズのうち、アウター第1レンズ領域及び/又はアウター第2レンズ領域以外の部分を、遮光性の部材によって光路の先側から被覆することで、車両用照明装置の外部において第1光と第2光とが混ざり合う不具合をより信頼性高く抑制できる。より好ましくは、アウターレンズのうち、アウター第1レンズ領域及びアウター第2レンズ領域以外の部分を、遮光性の部材によって、光路の先側から被覆するのが良い。
【0043】
さらに、アウターレンズは、インナーレンズよりも光路先側にあり、本発明の車両用照明装置における光路の先側領域を構成する。このため当該アウターレンズを遮光性の筐体内部に配置する場合には、当該筐体の一部、より具体的には筐体における光路先側の端部によって、アウターレンズのうち、アウター第1レンズ領域及び/又はアウター第2レンズ領域以外の部分を光路の先側から被覆するのが合理的であり、アウター第1レンズ領域及びアウター第2レンズ領域以外の部分を光路の先側から被覆するのがより好適である。
【0044】
なお、本発明の車両用照明装置においては、第1光および第2光の光路最先側にはアウターレンズが配置されるのが好ましいが、アウターレンズの外側に更にカバーを配置しても良い。
【0045】
本発明の車両用照明装置は、3以上のレンズを備えることも可能である。この場合、第1光及び第2光の光路最先側に位置するレンズがアウターレンズに相当する。そして、当該アウターレンズよりも第1光及び第2光の光路後側に隣接する他のレンズがインナーレンズに相当する。
【0046】
この場合にも、インナーレンズとアウターレンズとの間において遮光壁が第1光の光路と第2光の光路とを隔てることにより、第1光と第2光とが混ざり合う不具合が抑制される。なお、本発明の車両用照明装置が3以上のレンズを備える場合、遮光壁は、インナーレンズと、当該インナーレンズよりも更に第1光及び第2光の光路後側に位置するレンズと、の間に存在しなくても良いが、これらのレンズの間においても遮光壁が第1光の光路と第2光の光路とを隔てるのが望ましい。
【0047】
以下、具体例を挙げて本発明の車両用照明装置を説明する。
【0048】
(実施例1)
実施例1の車両用照明装置は、車両用のキックセンサのセンシング位置を路面に表示するための第1ランプユニットと、当該センシング位置を車体に表示するための第2ランプユニットと、が一体化されたものである。
図1及び図2は、実施例1の車両用照明装置の全体を模式的に表す説明図である。図3は実施例1の車両用照明装置を分解した様子を模式的に表す説明図である。図4及び図5は実施例1の車両用照明装置を切断した断面を模式的に表す説明図である。
以下、上、下、左、右、前、後とは、各図に示す上、下、左、右、前、後を指すものとする。なお、上下方向は鉛直方向と一致し、前後方向は車両進行方向と一致し、左右方向は車幅方向と一致する。
【0049】
実施例1の車両用照明装置1は、車両(図略)の後部に配置され、車両の後部車体(図略)及び車両の後方にある路面を照らす。
【0050】
図3に示すように、実施例1の車両用照明装置1は、第1光源21、第2光源22、インナーレンズ3、アウターレンズ4、遮光壁5、筐体6、クッション70及び固定部材71を具備する。
【0051】
筐体6は、可視光の透過率がほぼ0%であり遮光性を有する部材であり、蓋部65と本体部60とを有する。このうち本体部60は、前上側及び下側に開口を向ける略筒状の部材である。本体部60における下側の端部は、2つの開口を有し、それ以外の部分においては閉じられている。したがって本体部60は有底筒状をなすといい得る。
当該開口の一方を第1開口61と称し、他方を第2開口62と称する。第1開口61は左側に位置し第2開口62は右側に位置する。
本体部60における下側の端部のうち閉じられた部分、すなわち第1開口61及び第2開口62以外の部分を、下端壁63と称する。
蓋部65は、略板状をなし、本体部60の前上側を向く開口を前上側から閉じる。
【0052】
第1光源21及び第2光源22は、図略の回路が形成されているプリント基板20に実装され、当該プリント基板20とともに筐体6の内部に収容されている。当該プリント基板20には、更に、図略のリード線が実装されている。当該リード線及び回路は、第1光源21及び第2光源22と図略の車両用電源とを電気的に接続する。
【0053】
第1光源21はLEDランプであり、プリント基板20の左側部分に配置され、後下方に向けて緑色の光を照射する。第2光源22はLEDランプであり、プリント基板20の左側部分に配置され、後下方に向けて白色の光を照射する。
【0054】
第1光源21および第2光源22は、図略のフットセンサ装置の構成要素である。具体的には、図略のフットセンサの位置をユーザーに知らせるために、第1光源21は車両の後部車体を照らし、第2光源22は車両後方の路面を照らす。
【0055】
インナーレンズ3は、左右に配列した2つの領域であるインナー第1レンズ領域31及びインナー第2レンズ領域32と、当該インナー第1レンズ領域31及びインナーレンズ3第2領域と一体に形成されているインナー一般領域33とを具備し、全体として、略板状をなす。インナーレンズは無色透明である。
【0056】
インナー第1レンズ領域31は左側に配置され、第1光源21が発した光を透過する。また、インナー第2レンズ領域32は、右側に配置され、第2光源22が発した光を透過する。
【0057】
アウターレンズ4は、左右に配列した2つの領域であるアウター第1レンズ領域41及びアウター第2レンズ領域42と、当該アウター第1レンズ領域41及びアウター第2レンズ領域42と一体に形成されているアウター一般領域43とを具備し、全体として、略板状をなす。アウターレンズ4は、インナーレンズ3よりも下側に配置され、筐体6の内部に収容されるとともに筐体6の本体部60に一体化されている。
【0058】
アウター第1レンズ領域41は、左側に配置され、第1光源21が発しインナー第1レンズ領域31を透過した光を透過する。また、アウター第2レンズ領域42は、右側に配置され、第2光源22が発しインナー第2レンズ領域32を透過した光を透過する。
【0059】
アウターレンズ4は筐体6における下側の端部よりもやや上側に位置する。アウター第1レンズ領域41は、筐体6のうち本体部60における第1開口61に嵌め込まれる。アウター第2レンズ領域42は、筐体6のうち本体部60における第2開口62に嵌め込まれる。
アウターレンズ4におけるアウター一般領域43の全体は、本体部60のうち下端壁63によって、下側から被覆されている。
【0060】
図3図4及び図5に示すように、遮光壁5は筐体6に一体化されている。詳しくは、遮光壁5は、略板状をなし、筐体6の本体部60における下端壁63から上方に突出している。遮光壁5は筐体6の本体部60と一体に成形され、当該本体部60と同様に遮光性を有する。
【0061】
アウターレンズ4のアウター一般領域43には、アウター第1レンズ領域41とアウター第2レンズ領域42との間の位置に、上下に貫通するスリット45が設けられている。遮光壁5は、当該スリット45を通じてアウターレンズ4の上側に延び、インナーレンズ3の下側から、インナー第1レンズ領域31とインナー第2レンズ領域32との間の位置において、インナー一般領域33に対面する。
【0062】
実施例1の車両用照明装置1における遮光壁5は、インナーレンズ3とアウターレンズ4との間の空間S1において、第1光の光路と第2光の光路とを、その光路方向における90%以上の長さ、より具体的には95%程度の長さで区画する。第1光の光路及び第2光の光路については追って説明する。
【0063】
クッション70は、図3に示すように弾性体からなる環状の部材であり、図2図4及び図5に示すように本体部60の上前側に固着されている。クッション70は、実施例1の車両用照明装置1を図略の車両に取り付けた時に車両用照明装置1と車両の車体との間に介在し、衝撃吸収材として機能する。
【0064】
固定部材71は、筐体6の蓋部65、プリント基板20、インナーレンズ3を貫通し筐体6の本体部60に留められるネジである。上記の各部材は、当該固定部材71によって互いに安定的に固定される。
【0065】
実施例1の車両用照明装置1における第1光源21は、緑色の第1光を発する。
筐体6内部にある第1光源21が発した第1光は、インナーレンズ3のインナー第1レンズ領域31、アウターレンズ4のアウター第1レンズ領域41の順に透過する。そして、当該第1光は、筐体6における下端壁63の第1開口61を経て、筐体6の外部に出射し、車両の後部車体(図略)を照らす。当該第1光の透過経路が第1光の光路である。
【0066】
実施例1の車両用照明装置1における第2光源22は、白色の第2光を発する。
第1光源21とともに筐体6内部にある第2光源22が発した第2光は、インナーレンズ3のインナー第2レンズ領域32、アウターレンズ4のアウター第2レンズ領域42の順に透過する。そして、当該第2光は、筐体6における下端壁63の第2開口62を経て、筐体6の外部に出射し、車両後方の路面(図略)を照らす。当該第2光の透過経路が第2光の光路である。
【0067】
実施例1の車両用照明装置1は、第1光源21、インナー第1レンズ領域31及びアウター第1レンズ領域41を具備し上記した第1光の光路を形成する第1ランプユニットと、第2光源22、インナー第2レンズ領域32及びアウター第2レンズ領域42を具備し上記した第2光の光路を形成する第2ランプユニットと、が一体化されたものと捉えることができる。
【0068】
上記した第1光の光路及び第2光の光路は、各々独立した光路であり、その進行方向は互いに異なる。
ここで、第1光と第2光とは異なる色の光であり、第1光の光路及び第2光の光路が重なって第1光と第2光とが混ざり合うと、第1ランプユニットが表示する意匠と第2ランプユニットが表示する意匠との両方が不鮮明となり、当該意匠の意匠性が損なわれる。
【0069】
実施例1の車両用照明装置1では、筐体6の内部に配置されたインナーレンズ3とアウターレンズ4との間に、遮光壁5が配置されている。当該遮光壁5により、インナーレンズ3とアウターレンズ4との間において第1光の光路と第2光の光路とが隔てられる。これにより、第1光と第2光とは混ざり合い難く、第1ランプユニット及び第2ランプユニットにより各々独立した鮮明な意匠を表示することが可能である。
【0070】
また、実施例1の車両用照明装置1において、アウターレンズ4のアウター一般領域43、すなわち、アウターレンズ4のうちアウター第1レンズ領域41及びアウター第2レンズ領域42以外の領域は、筐体6の一部であり遮光性を有する下端壁63によって、下側すなわち光路の先側から被覆されている。
これにより、実施例1の車両用照明装置1では、筐体6の外部、すなわち車両用照明装置1の外部においても、第1光と第2光とを隔てることができ、これらが混ざり合う不具合をより信頼性高く抑制できる。
【0071】
(実施例2)
実施例2の車両用照明装置は、筐体の形状、遮光壁の形状及びインナーレンズの形状において実施例1の車両用照明装置と大きく相違し、その余においては実施例1の車両用照明装置と概略同じである。したがって、以下、上記した実施例1の車両用照明装置との相違点を中心に、実施例2の車両用照明装置を説明する。
図6及び図7は、実施例2の車両用照明装置の全体を模式的に表す説明図である。図8は実施例2の車両用照明装置を分解した様子を模式的に表す説明図である。図9及び図10は実施例2の車両用照明装置を切断した断面を模式的に表す説明図である。
【0072】
図6図7及び図8に示すように、実施例2の車両用照明装置1における本体部60は、実施例1の車両用照明装置1における本体部60に比べて小さく、実施例2の車両用照明装置1は、実施例1の車両用照明装置1に比べて小型化されている。
クッション70は本体部60ではなく蓋部65の上前側に固着されている。
【0073】
本体部60が小型であることから、実施例2の車両用照明装置1では、本体部60と蓋部65との間に、前後方向の隙間S2がある。この隙間S2は比較的大きく、一般にこのような大きな隙間S2が2つの部材間にある場合には、例えば車両が悪路を走行する際等に、2つの部材が互いに相対的に位置変化して両者がガタつき、異音等の不具合が生じる虞がある。
【0074】
当該不具合を低減すべく、実施例2の車両用照明装置1では、蓋部65に緩衝構造75を一体に設けている。当該緩衝構造75はリブであり、蓋部65の前面から後方に突出し、本体部60と蓋部65との隙間S2を埋める。これにより、本体部60と蓋部65との相対的な位置変化が抑制され、両者がガタつくことによる異音等の不具合を抑制する事が可能である。
【0075】
なお、実施例2の車両用照明装置1では緩衝構造75としてリブを用いたが、例えば、弾性体や発泡体等のクッション70を緩衝構造75として用いるのも好ましい。また、実施例2の車両用照明装置1では緩衝構造75を蓋部65に一体に設けたが、当該緩衝構造75を本体部60に一体に設ける場合にも同様の効果が奏される。
【0076】
図8図9及び図10に示すように、実施例2の車両用照明装置1におけるプリント基板20には、マスク72が固定されている。当該マスク72は第1光源21の下側つまり第1光源21よりも光路の先側に配置され、第1光源21が発する第1光を所定のパターンで遮蔽することで、路面に照射される第1光に所定の意匠を付与する。
【0077】
図10に示すように、実施例2の車両用照明装置1において、インナーレンズ3は、光路の先側から後側すなわち下側から上側に向けて陥没する凹部35を有する。
遮光壁5は、実施例1の車両用照明装置1における遮光壁5と同様に、筐体6の下端壁63に一体化されている。そして、当該遮光壁5はアウターレンズ4側からインナーレンズ3側に向けて突出し、遮光壁5の突出端部50は上記したインナーレンズ3の凹部35に入り込む。
【0078】
実施例2の車両用照明装置1では、遮光壁5とインナーレンズ3とを上記の構造にしたことで、インナーレンズ3とアウターレンズ4との間の空間S1において、第1光の光路と第2光の光路とを、その光路方向における全長で遮光壁5によって区画した。これにより、インナーレンズ3とアウターレンズ4との間において第1光の光路と第2光の光路とを完全に隔て、第1光と第2光とが混ざり合う不具合をより低減し、第1ランプユニット及び第2ランプユニットによってより鮮明かつ独立した意匠を表示することが可能である。
【0079】
また、実施例2の車両用照明装置1は、遮光壁5とインナーレンズ3とを上記の構造にしたことで、インナーレンズ3とアウターレンズ4との間において第1光の光路と第2光の光路とを完全に隔てることができるにも拘わらず、構造的にも非常にシンプルである。
【0080】
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【符号の説明】
【0081】
1:車両用照明装置
21:第1光源
22:第2光源
3:インナーレンズ
31:インナー第1レンズ領域
32:インナー第2レンズ領域
35:凹部
4:アウターレンズ
41:アウター第1レンズ領域
42:アウター第2レンズ領域
5:遮光壁
50:突出端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10