(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/023 20060101AFI20241016BHJP
F01N 3/18 20060101ALI20241016BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
F01N3/023 A ZAB
F01N3/18 Z
F02D45/00 360Z
(21)【出願番号】P 2021168798
(22)【出願日】2021-10-14
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 勇喜
(72)【発明者】
【氏名】池田 悠人
(72)【発明者】
【氏名】高間 康之
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-196394(JP,A)
【文献】特開2013-160221(JP,A)
【文献】特開2013-141860(JP,A)
【文献】特開2012-233430(JP,A)
【文献】特開2014-046754(JP,A)
【文献】特開2018-105195(JP,A)
【文献】特開2010-077854(JP,A)
【文献】特開2005-016345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/023
F01N 3/18
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、内燃機関を収容する収容室の開口部を開閉する開閉体の開閉状態を検知するセンサと、を備えた車両に適用され、
前記内燃機関は、排気を浄化する排気浄化装置を備え、
前記センサの検知結果を取得する開閉情報取得処理と、
前記車両の走行停止時に、前記排気浄化装置の温度を上昇させる昇温処理と、
前記開閉体が開状態である場合と比較して閉状態である場合には、前記昇温処理によって前記内燃機関で単位時間あたりに発生する熱量を小さい側に制限する制限処理と、を実行
し、
前記昇温処理は、前記内燃機関の排気系に供給する熱エネルギ量を間欠的に増量する処理であり、
前記制限処理は、前記開閉体が開状態である場合と比較して閉状態である場合には、前記排気系に供給する熱エネルギ量を増量する処理の1度の実行時間を短い値に制限する処理を含む車両の制御装置。
【請求項2】
前記制限処理は、前記開閉体が開状態である場合と比較して閉状態である場合には、前記排気浄化装置の温度を低い値に制限する処理を含む請求項1記載の車両の制御装置。
【請求項3】
外気温を取得する外気温取得処理を実行し、
前記制限処理は、前記外気温が高い場合の前記排気浄化装置の温度が、前記外気温が低い場合の前記排気浄化装置の温度以下となるようにしつつ、前記外気温に応じて前記排気浄化装置の温度を低い値に制限する処理を含む請求項2記載の車両の制御装置。
【請求項4】
外気温を取得する外気温取得処理を実行し、
前記制限処理は、前記外気温が高い場合の前記実行時間が、前記外気温が低い場合の前記実行時間以下となるようにしつつ、前記外気温に応じて前記実行時間を短い値に制限する処理を含む請求項
1~3のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば下記特許文献1には、排気通路に排気中の粒子状物質を捕集する排気浄化装置を備えた内燃機関が記載されている。同文献では、同内燃機関を搭載した車両の停車時に、排気浄化装置の温度を上昇させることによって、粒子状物質を除去する再生処理を実行することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、停車時には、車両の走行時と比較して、排気浄化装置を加熱する際に生じた熱の放熱量が小さくなる。そのため、排気浄化装置そのものや、排気浄化装置に接続される排気系の部品等の温度が許容範囲を超えることが懸念される。これに対し、内燃機関を収容する収容室の上方開口部を開閉する開閉体を開状態としつつ再生処理を実行することが考えられる。これにより、開閉体を閉状態としつつ再生処理を実行する場合と比較すると、放熱量を大きくすることができる。したがって、排気浄化装置そのものや、排気浄化装置に接続される排気系の部品等の温度が過度に高くなることを抑制できる。ただし、雨天であるなどの要因により、再生処理時に開閉体が確実に開状態とされる保証がない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。
1.内燃機関と、内燃機関を収容する収容室の開口部を開閉する開閉体の開閉状態を検知するセンサと、を備えた車両に適用され、前記内燃機関は、排気を浄化する排気浄化装置を備え、前記センサの検知結果を取得する開閉情報取得処理と、前記車両の走行停止時に、前記排気浄化装置の温度を上昇させる昇温処理と、前記開閉体が開状態である場合と比較して閉状態である場合には、前記昇温処理によって前記内燃機関で単位時間あたりに発生する熱量を小さい側に制限する制限処理と、を実行する車両の制御装置である。
【0006】
上記構成では、開閉体が開状態である場合と比較して閉状態である場合には、内燃機関で単位時間あたりに発生する熱量を小さい側に制限する。そのため、開閉状態にかかわらず同一の熱量を供給する場合と比較すると、開閉体が閉状態である場合において、排気系の部品等の温度が過度に高くなることを抑制できる。
【0007】
2.前記制限処理は、前記開閉体が開状態である場合と比較して閉状態である場合には、前記排気浄化装置の温度を低い値に制限する処理を含む上記1記載の車両の制御装置である。
【0008】
上記構成では、開閉体が開状態である場合と比較して閉状態である場合には排気浄化装置の温度が低い値に制限される。そのため、開閉体が閉状態であることに起因して内燃機関の放熱量が小さくなる場合であっても、排気系の部品等の温度が過度に高くなることを抑制できる。
【0009】
3.外気温を取得する外気温取得処理を実行し、前記制限処理は、前記外気温が高い場合の前記排気浄化装置の温度が、前記外気温が低い場合の前記排気浄化装置の温度以下となるようにしつつ、前記外気温に応じて前記排気浄化装置の温度を低い値に制限する処理を含む上記2記載の車両の制御装置である。
【0010】
外気温が高い場合には低い場合よりも内燃機関の放熱量が小さくなる。そこで上記構成では、外気温に応じて排気浄化装置の温度を低い値に制限する。特に、この制限には、外気温が高い場合には低い場合よりも排気浄化装置の温度を低い値に制限する処理が含まれる。そのため、外気温が高い場合であっても、排気系の部品等の温度が過度に高くなることを抑制できる。
【0011】
4.前記昇温処理は、前記内燃機関の排気系に供給する熱エネルギ量を間欠的に増量する処理であり、前記制限処理は、前記開閉体が開状態である場合と比較して閉状態である場合には、前記排気系に供給する熱エネルギ量を増量する処理の1度の実行時間を短い値に制限する処理を含む上記1~3のいずれか1つに記載の車両の制御装置である。
【0012】
熱エネルギ量を増量すると、排気系の部品等の温度が漸増する傾向がある。そのため、排気系の部品等の温度を許容範囲内とすべく、許容範囲を超える前に再生処理を一時停止することが考えられる。ここで、開閉体が閉状態である場合には開状態である場合と比較して内燃機関の放熱量が小さいことから、許容範囲を超える再生処理の実行時間がより短くなる。そこで上記構成では、開閉体が開状態である場合と比較して閉状態である場合には、1度の実行時間を短い値に制限する。これにより、開閉体が閉状態であることに起因して内燃機関の放熱量が小さくなる場合であっても、排気系の部品等の温度が過度に高くなることを抑制できる。
【0013】
5.外気温を取得する外気温取得処理を実行し、前記制限処理は、前記外気温が高い場合の前記実行時間が、前記外気温が低い場合の前記実行時間以下となるようにしつつ、前記外気温に応じて前記実行時間を短い値に制限する処理を含む上記4記載の車両の制御装置である。
【0014】
外気温が高い場合には低い場合よりも内燃機関の放熱量が小さくなる。そこで上記構成では、外気温に応じて実行時間を短い値に制限する。特にこの制限には、外気温が高い場合には低い場合よりも実行時間を短い値に制限する処理が含まれる。そのため、外気温が高い場合であっても、排気系の部品等の温度が過度に高くなることを抑制できる。
【0015】
6.内燃機関と、内燃機関を収容する収容室の開口部を開閉する開閉体の開閉状態を検知するセンサと、を備えた車両に適用され、前記内燃機関は、排気を浄化する排気浄化装置を備え、前記センサの検知結果を取得する開閉情報取得処理と、前記車両の走行停止時に、前記排気浄化装置の温度を上昇させる昇温処理と、前記開閉体が開状態である場合と比較して閉状態である場合には、前記昇温処理によって前記内燃機関の排気系に供給する熱エネルギ量を増量する1度の時間を短い側に制限する制限処理と、を実行する車両の制御装置である。
【0016】
熱エネルギ量を増量すると、排気系の部品等の温度が漸増する傾向がある。そのため、排気系の部品等の温度を許容範囲内とすべく、許容範囲を超える前に再生処理を一時停止することが考えられる。ここで、開閉体が閉状態である場合には開状態である場合と比較して内燃機関の放熱量が小さいことから、許容範囲を超える再生処理の実行時間がより短くなる。そこで上記構成では、開閉体が開状態である場合と比較して閉状態である場合には、排気系に供給する熱エネルギ量を増量する1度の時間を短い値に制限する。これにより、開閉体が閉状態であることに起因して内燃機関の放熱量が小さくなる場合であっても、排気系の部品等の温度が過度に高くなることを抑制できる。
【0017】
7.前記排気浄化装置は、前記内燃機関の排気系に排出された排気中の粒子状物質を捕集するものであり、前記昇温処理は、前記排気浄化装置が捕集した粒子状物質を除去するための再生処理に含まれ、前記昇温処理の実行時において前記粒子状物質の量を算出する物質量算出処理と、前記昇温処理の実行時に、前記算出された粒子状物質の量に関する情報を通知すべく、所定のハードウェアを操作する量情報通知処理と、を実行する上記1~6のいずれか1つに記載の車両の制御装置である。
【0018】
上記構成では、昇温処理の実行時に粒子状物質の量に関する情報を通知する。これにより、人が再生処理の進捗状況を把握できる。
8.前記排気浄化装置は、前記内燃機関の排気系に排出された排気中の粒子状物質を捕集するものであり、前記昇温処理は、前記排気浄化装置が捕集した粒子状物質を除去するための再生処理に含まれ、前記昇温処理において用いる前記排気浄化装置の温度を調整するための変数の値と、前記粒子状物質の量と、に基づき、前記再生処理の完了までの所要時間を算出する所要時間算出処理と、前記再生処理の実行時に、前記算出された所要時間に関する情報を通知すべく、所定のハードウェアを操作する時間情報通知処理と、を実行する上記1~7のいずれか1つに記載の車両の制御装置である。
【0019】
上記構成では、再生処理の完了までの所要時間に関する情報を通知する。これにより、人が再生処理の進捗状況を把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施形態にかかる車両の駆動系および制御装置と、ディーラ端末との構成を示す図である。
【
図2】同実施形態にかかる制御装置が実行する処理の手順を示す流れ図である。
【
図3】同実施形態にかかる制御装置が実行する処理の手順を示す流れ図である。
【
図4】同実施形態にかかる制御装置が実行する処理の手順を示す流れ図である。
【
図5】同実施形態にかかるGPFの上限温度と外気温との関係を示す図である。
【
図6】第2の実施形態にかかる制御装置が実行する処理の手順を示す流れ図である。
【
図7】同実施形態にかかる制御装置が実行する処理の手順を示す流れ図である。
【
図8】第3の実施形態にかかる制御装置が実行する処理の手順を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に示す車両VCの収容室2は、その上方開口部が開閉体4によって開閉可能となっている。収容室2には、内燃機関10が収容されている。
【0022】
内燃機関10の吸気通路12には、スロットルバルブ14が設けられている。吸気通路12から吸入された空気は、燃焼室16に流入する。燃焼室16には、燃料噴射弁18によって燃料が噴射される。燃焼室16において燃料と空気の混合気は、点火装置20の火花放電によって燃焼に供される。このときに生成される燃焼エネルギは、クランク軸22のエネルギに変換される。燃焼に供された混合気は、排気として排気通路30に排出される。排気通路30には、酸素吸蔵能力を有した三元触媒32と、ガソリンパティキュレートフィルタ(GPF34)とが設けられている。なお、GPF34は、PMを捕集するフィルタに三元触媒が担持されたものである。
【0023】
クランク軸22は、動力分割装置を構成する遊星歯車機構40のキャリアCに機械的に連結されている。遊星歯車機構40のサンギアSには、第1モータジェネレータ42の回転軸42aが機械的に連結されている。また、遊星歯車機構40のリングギアRには、第2モータジェネレータ44の回転軸44aと駆動輪50とが機械的に連結されている。第1モータジェネレータ42の端子には、第1インバータ46によって交流電圧が印加される。また、第2モータジェネレータ44の端子には、第2インバータ48によって交流電圧が印加される。
【0024】
制御装置60は、制御対象としての内燃機関10の制御量である、トルクや排気成分比率等を制御するために、スロットルバルブ14、燃料噴射弁18、および点火装置20等の内燃機関10の操作部を操作する。また、制御装置60は、制御対象としての第1モータジェネレータ42の制御量であるトルクを制御すべく、第1インバータ46を操作する。また、制御装置60は、制御対象としての第2モータジェネレータ44の制御量であるトルクを制御すべく第2インバータ48を操作する。
図1には、スロットルバルブ14、燃料噴射弁18、点火装置20、第1インバータ46および第2インバータ48のそれぞれの操作信号MS1~MS5を記載している。制御装置60は、内燃機関10の制御量を制御するために、エアフローメータ70によって検出される吸入空気量Ga、およびクランク角センサ72の出力信号Scrを参照する。また制御装置60は、水温センサ74によって検出される水温THW、および温度センサ76によって検出されるGPF34の温度Tgpfを参照する。また、制御装置60は、第1モータジェネレータ42の制御量を制御するために、第1モータジェネレータ42の回転角を検知する第1回転角センサ80の出力信号Sm1を参照する。また、制御装置60は、第2モータジェネレータ44の制御量を制御するために、第2モータジェネレータ44の回転角を検知する第2回転角センサ82の出力信号Sm2を参照する。また、制御装置60は、開閉体4の開閉状態を検知する開閉センサ84の出力信号Sbと、外気温センサ86によって検出される外気温Taとを参照する。また、制御装置60は、車速センサ88によって検出される車速SPDを参照する。
【0025】
制御装置60は、CPU62、ROM64、および周辺回路66を備えており、それらが通信線68によって通信可能とされている。ここで、周辺回路66は、内部の動作を規定するクロック信号を生成する回路、電源回路、およびリセット回路等を含む。制御装置60は、ROM64に記憶されたプログラムをCPU62が実行することにより制御量を制御する。
【0026】
以下では、制御装置60が実行する処理のうち、GPF34の再生要求の有無に関する処理、GPF34の強制再生に関する処理、および強制再生処理の制御変数の設定に関する処理について説明する。
【0027】
「GPF34の再生要求の有無に関する処理」
図2に、GPF34の再生要求の有無に関する処理の手順を示す。
図2に示す処理は、ROM64に記憶されたプログラムをCPU62がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。なお、以下では、先頭に「S」が付与された数字によって、各処理のステップ番号を表現する。
【0028】
図2に示す一連の処理において、CPU62は、まず、回転速度NE、充填効率η、水温THW、温度Tgpf、吸入空気量Ga、および増量係数Kを取得する(S10)。回転速度NEは、クランク軸22の回転速度である。回転速度NEは、CPU62により、出力信号Scrに基づき算出される。また、充填効率ηは、CPU62により、回転速度NEおよび吸入空気量Gaに基づき算出される。増量係数Kは、GPF34の再生処理時に「1」よりも大きい値となる一方、再生処理を実行していないときには「1」となる。
【0029】
次にCPU62は、S10の処理によって取得した変数の値に基づき、堆積量DPMを算出する(S12)。ここで、堆積量DPMは、GPF34に捕集されているPMの量である。詳しくは、CPU62は、回転速度NE、充填効率ηおよび水温THWに基づき排気通路30に排出される排気中のPMの量を算出する。また、CPU62は、排気中のPMの量とGPF34の温度Tgpfとに基づき堆積量DPMの更新量ΔDPMを算出する。なお、後述のS36の処理の実行時には、増量係数Kおよび吸入空気量Gaに基づき、更新量ΔDPMを算出すればよい。そして、CPU62は、堆積量DPMに更新量ΔDPMを加算することによって、堆積量DPMを更新する。
【0030】
次にCPU62は、堆積量DPMが強制再生要求値DPMH1以上であるか否かを判定する(S14)。強制再生要求値DPMH1は、GPF34が捕集したPM量が過度に多くなっており、修理工場において強制的にPMを除去することが望まれる値に設定されている。CPU62は、強制再生要求値DPMH1未満であると判定する場合(S14:NO)、堆積量DPMが通常再生要求値DPMH2以上であるか否かを判定する(S16)。通常再生要求値DPMH2は、GPF34が捕集したPM量が多くなっており、車両VCの走行時に再生要求を満たす場合に再生処理を実行することが望まれる値に設定されている。なお、通常再生要求値DPMH2は、強制再生要求値DPMH1よりも小さい。
【0031】
CPU62は、通常再生実行値DPMH2以上であると判定する場合(S16:YES)、通常時再生要求を生じさせる(S18)。
一方、CPU62は、強制再生要求値DPMH1以上であると判定する場合(S14:YES)、
図1に示した表示器90を操作することによって、報知処理を実行する(S20)。表示器90には、堆積量DPMが過剰に多い旨の視覚情報とともに、修理工場に車両VCを持っていくように促す情報が表示される。
【0032】
なお、CPU62は、S18,S20の処理を完了する場合と、S16の処理において否定判定する場合と、には、
図2に示す一連の処理を一旦終了する。
「GPF34の強制再生に関する処理」
図3に、GPF34の強制再生に関する処理の手順を示す。
図3に示す一連の処理は、ROM64に記憶されたプログラムをCPU62がたとえば所定周期でくり返し実行することにより実現される。
【0033】
図3に示す一連の処理において、CPU62は、まず実行フラグF1が「1」であるか否かを判定する(S30)。実行フラグF1は、「1」である場合に再生処理を実行している旨を示す一方、「0」である場合にそうではないことを示す。CPU62は、実行フラグF1が「0」であると判定する場合(S30:NO)、以下の条件(ア)および条件(イ)の論理積が真であるか否かを判定する(S32)。
【0034】
条件(ア):工場側端末100を介してGPF34の再生指令が入力された旨の条件である。これは、
図2のS20の処理に応じてユーザが修理工場に車両VCを持ってくることで、
図1に示したように制御装置60に工場側端末100が接続されることで可能となる条件である。
【0035】
なお、
図1に示すように、工場側端末100は、CPU102、ROM104、周辺回路106、および通信線108を備えている。CPU102、ROM104、および周辺回路106は、通信線108によって互いに通信可能とされている。
【0036】
条件(イ):車速SPDがゼロである旨の条件である。
CPU62は、論理積が真であると判定する場合(S32:YES)、実行フラグF1に「1」を代入する(S34)。そして、CPU62は、再生処理を実行する(S36)。すなわち、CPU62は、気筒#1~#4のうちのいずれか1つの燃料噴射弁18からの燃料の噴射を停止する。また、CPU62は、残りの気筒の燃焼室16内の混合気の空燃比を理論空燃比よりもリッチとする。この処理は、排気通路30に酸素と未燃燃料とを排出し、GPF34の温度を上昇させてGPF34が捕集したPMを燃焼除去するための処理である。すなわち、排気通路30に酸素と未燃燃料を排出することにより、三元触媒32等において未燃燃料を燃焼させ排気の温度を上昇させる。これにより、GPFの温度を上昇させることができる。また、GPF34に酸素を供給することによって、GPF34が捕集したPMを燃焼除去することができる。
【0037】
CPU62は、燃料の噴射を停止する気筒を、周期的に切り替える。切り替えの周期は、たとえば、1燃焼サイクルの所定数倍とする。ここで、所定数は、たとえば、100以上の数であってよい。
【0038】
CPU62は、残りの気筒の燃焼室16内の混合気の空燃比を理論空燃比よりもリッチとすべく、それら気筒の要求噴射量Qdを、ベース噴射量Qbに増量係数Kを乗算した値とする。ベース噴射量Qbは、混合気の空燃比を理論空燃比とする上で必要な噴射量である。CPU62は、増量係数Kを、後述する増量ベース値Kbに、フィードバック補正量FBを加算した値とする。フィードバック補正量FBは、温度Tgpfが過度に高くならないようにするための値に設定されている。CPU62は、外気温Ta、出力信号Sbおよび温度Tgpfに基づき、フィードバック補正量FBを算出する。なお、外気温Ta、および出力信号Sbを入力とする理由については後述する。
【0039】
なお、CPU62は、再生処理時には、第1モータジェネレータ42の回転軸42aの回転速度を制御することによって、クランク軸22の回転速度NEを目標回転速度NE*にフィードバック制御する。ちなみに、再生処理中において内燃機関10に要求されるトルクは、車両VC内の様々な要求によって決定される。したがって、内燃機関10に要求されるトルクは再生処理中においても一時的に定まらない。したがって、内燃機関10の充填効率ηは、再生処理中であっても変動する。
【0040】
次にCPU62は、GPF34の温度Tgpf、吸入空気量Ga、増量係数Kおよび堆積量DPMに基づき再生処理の終了所要時間Teを算出する(S38)。CPU62は、温度Tgpfが大きい場合に小さい場合よりも終了所要時間Teを短い値に算出する。これは、温度Tgpfが高いほど、PMの燃焼速度が大きくなることに鑑みたものである。またCPU62は、堆積量DPMが大きい場合には小さい場合よりも終了所要時間Teを大きい値に算出する。また、CPU62は、吸入空気量Gaが大きい場合に小さい場合よりも終了所要時間Teを小さい値に算出する。
【0041】
次にCPU62は、
図1に示した表示器90を操作して堆積量DPMおよび終了所要時間Teを示す情報を表示する(S40)。
一方、CPU62は、実行フラグF1が「1」であると判定する場合(S30:YES)、以下の条件(ウ)および条件(エ)の論理和が真であるか否かを判定する(S42)。
【0042】
条件(ウ):堆積量DPMが終了判定値DPML以下である旨の条件である。終了判定値DPMLは、GPF34の再生処理が十分になされた際の堆積量DPMに応じて設定されている。なお、終了判定値DPMLは、通常再生要求値DPMH2よりも小さい。
【0043】
条件(エ):工場側端末100から停止指令が入力される旨の条件である。これは、ユーザの都合等により、再生処理を途中で中断することを想定した条件である。
CPU62は、論理和が偽であると判定する場合(S42:NO)、S36の処理に移行する。一方、CPU62は、論理和が真であると判定する場合(S42:YES)、実行フラグF1に「0」を代入することによって、再生処理を終了する(S44)。なお、CPU62は、S40,S44の処理を完了する場合と、S32の処理において否定判定する場合と、には、
図3に示した一連の処理を一旦終了する。
【0044】
「強制再生処理の制御変数の設定に関する処理」
図4に、強制再生処理の制御変数の設定に関する処理の手順を示す。
図4に示す処理は、ROM64に記憶されたプログラムをCPU62がたとえば所定周期でくり返し実行することにより実現される。
【0045】
図4に示す一連の処理において、CPU62は、まず実行フラグF1が「1」であるか否かを判定する(S50)。CPU62は、実行フラグF1が「1」であると判定する場合(S50:YES)、充填効率η、外気温Taおよび出力信号Sbを取得する(S52)。そして、CPU62は、増量ベース値Kbを算出する(S54)。CPU62は、開閉体4が開状態である場合に閉状態である場合よりも増量ベース値Kbを大きい値に算出する。これは、開閉体4が開状態である場合には、閉状態である場合と比較して、内燃機関10からの放熱量が大きくなることに鑑みたものである。
【0046】
すなわち、再生処理時には、GPF34の温度を上昇させることによってPMを酸化除去する。GPF34自体は、このときの温度に耐えられるように設計されている。ただし、排気系の部品には、GPF34よりも許容温度が低いものが存在する。そのため、排気系の部品がそれぞれの許容温度範囲内となるように、GPF34の温度の上限を設ける必要がある。ただし、GPF34の温度TgpfがPMの酸化反応が生じる温度であっても、温度Tgpfが小さい場合には大きい場合よりも再生処理に要する時間が長くなる。そのため、再生処理を早期に完了するうえでは、GPF34の温度をより高くすることが望ましい。
【0047】
ここで、開閉体4が開状態である場合には閉状態である場合よりも内燃機関10の放熱量が大きくなる。そのため、開閉体4が開状態である場合には閉状態である場合よりもGPF34の温度Tgpfが大きいわりに排気系のそのほかの部品の温度が低くなる。そのため、再生処理の早期の完了と排気系部品の温度上昇の抑制との好適な折衷を図るべく、開閉体4が開状態である場合に閉状態である場合よりも増量ベース値Kbを大きい値とする。
【0048】
また、CPU62は、外気温Taが低い場合に高い場合よりも増量ベース値Kbを大きい値に算出する。これは、外気温Taが低い場合には高い場合よりも、内燃機関10からの放熱量が大きくなることに鑑みたものである。
【0049】
図5に、排気系部品が許容温度範囲内となるGPF34の温度Tgpfの上限値TgpfLを示す。
図5において、曲線cu1は、開閉体4が開状態であるときの上限値TgpfLを示す。また、曲線cu2は、開閉体4が閉状態であるときの上限値TgpfLを示す。
図5に示すように、開閉体4が開状態であるときの上限値TgpfLは、開閉体4が閉状態であるときの上限値TgpfLよりも大きい値となっている。また、外気温Taが小さい場合には大きい場合よりも上限値TgpfLが大きい値となっている。
【0050】
本実施形態では、
図5に示す曲線cu1,cu2よりもわずかに小さい値を、それぞれ、開閉体4が開状態であるときと閉状態であるときとの、GPF34の目標温度とする。ただし、本実施形態では、目標温度をCPU62が再生処理において扱う演算パラメータには含めない。代わりに、目標温度とするうえでの開ループ操作量として増量ベース値Kbを適合する。本実施形態にかかる目標温度は、開閉体4の開閉状態、および外気温Taに応じて可変とされるものである。したがって、CPU62は、目標温度を過度に上回ることが無いようにするフィードバック補正量FBを、温度Tgpfのみならず、出力信号Sbおよび外気温Taを入力として算出する。ここで、出力信号Sbおよび外気温Taは、目標温度を把握するための変数となっている。
【0051】
図4に示すS54の処理は、ROM64に記憶されたマップデータに基づきCPU62がマップ演算をする処理となる。ここで、マップデータは、開閉体4が開状態であるとき専用のデータと、開閉体4が閉状態であるとき専用のデータと、を含む。それらマップデータは、いずれも外気温Taおよび充填効率ηを入力変数とし増量ベース値Kbを出力変数とするデータである。
図4には、外気温Taが同じ場合、開閉体4が開状態であるときの出力変数biが、開閉体4が閉状態であるときの出力変数ciよりも大きいことを記載している。ここで、「i=1,2,3,…」である。また、「ai」は、入力変数としての外気温Taの値を示す。また、「bi」および「ci」は、出力変数としての増量ベース値Kbの値を示す。なお、
図4においては、外気温Taの値を小さい順に「a1,a2,a3,…,an」と記載している。そして、それらに対応する増量ベース値Kbの値である「bi」および「ci」には、「b1>b2>…>bn」および「c1>c2>…>cn」の関係がある旨が記載されている。
【0052】
なお、マップデータとは、入力変数の離散的な値と、入力変数の値のそれぞれに対応する出力変数の値と、の組データである。また、マップ演算は、入力変数の値がマップデータの入力変数の値のいずれかに一致する場合、対応するマップデータの出力変数の値を演算結果とする処理とすればよい。また、マップ演算は、入力変数の値がマップデータの入力変数の値のいずれにも一致しない場合、マップデータに含まれる複数の出力変数の値の補間によって得られる値を演算結果とする処理とすればよい。
【0053】
CPU62は、S54の処理を完了する場合と、S50の処理において否定判定する場合と、には、
図4に示す一連の処理を一旦終了する。
ちなみに、S18の処理によって通常時再生要求が生じる場合には、車両VCの走行時にS36の処理と同様の処理を実行する。ただし、その場合には、目標回転速度NE*が、車両VCの走行状態に応じて可変設定される。また、増量ベース値Kbは、開閉体4が開状態であるときにS54の処理において設定される値よりも大きい。
【0054】
ここで、本実施形態の作用および効果について説明する。
CPU62は、GPF34におけるPMの堆積量DPMを逐次算出する。CPU62は、堆積量DPMが通常再生要求値DPMH2以上となる場合、通常再生要求を発生させる。これにより、車両VCの走行時に所定の条件を満たすことを条件に、再生処理が実行される。CPU62は、堆積量DPMが通常再生要求値DPMH2よりも大きい強制再生要求値DPMH1以上であると判定する場合、その旨をユーザに報知する。これにより、ユーザは、車両VCを修理工場に持ち込む。
【0055】
CPU62は、車両VCの停止状態において工場側端末100から再生指令が入力されると、GPF34の再生処理を実行する。ここでの再生処理においては、GPF34の温度を、走行時の値よりも低い値に制御する。さらに、CPU62は、開閉体4が閉状態である場合には、開状態である場合と比較して、増量ベース値Kbを小さい値に設定する。これにより、CPU62は、開閉体4が閉状態である場合には、開状態である場合と比較して、GPF34の温度が低くなるように制御する。これにより、内燃機関10の放熱量が小さく、排気系の部品が許容温度を超えて上昇しやすい場合に排気系の温度が過度に高くなることを抑制できる。
【0056】
以上説明した本実施形態によれば、さらに以下に記載する作用および効果が得られる。
(1)CPU62は、外気温Taが小さい場合に大きい場合よりも増量ベース値Kbを大きい値に設定した。外気温Taが小さい場合には大きい場合と比較して内燃機関10の放熱量が大きくなる。そのため、GPF34の温度を上昇させた割に排気系の部品の温度の上昇が小さくなる。したがって、外気温Taにかかわらず増量ベース値Kbを一定とする場合と比較して、排気系の部品の温度を許容範囲内に収めつつもGPF34の再生処理に要する時間を極力短くすることができる。
【0057】
(2)CPU62は、充填効率ηに応じて増量ベース値Kbを算出した。排気系の温度は、増量係数Kのみならず、内燃機関10の動作点に応じて定まる。ここで動作点は、回転速度NEおよび負荷に応じて定まる。そのため、負荷を示す変数としての充填効率ηに基づき増量ベース値Kbを算出することにより、増量ベース値Kbを、GPF34の温度を狙いの温度とする上で精度の良い開ループ操作量とすることができる。
【0058】
(3)CPU62は、再生処理の実行中に、堆積量DPMに関する情報を表示器90に表示した。これにより、人が再生処理の進捗状況を把握することができる。
(4)CPU62は、再生処理の終了所要時間Teを表示器90に表示した。これにより、人が再生処理の終了までに要する時間を把握することができる。これにより、たとえばユーザが自分の予定に応じて再生処理を中断するか否かの判断をしやすくなる。
【0059】
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0060】
本実施形態では、再生処理を間欠的に実行することにより、排気系の温度上昇を抑制する。
図6に、GPF34の再生に関する処理の手順を示す。
図6に示す一連の処理は、ROM64に記憶されたプログラムをCPU62がたとえば所定周期でくり返し実行することにより実現される。なお、
図6において、
図3に示した処理に対応する処理については、便宜上、同一のステップ番号を付与している。
【0061】
図6に示す一連の処理において、CPU62は、S36の処理を実行する場合、実行期間カウンタCrをインクリメントする(S60)。実行期間カウンタCrは、間欠的に実行する一度の再生処理の実行期間を計時するためのカウンタである。CPU62は、S60の処理を完了する場合、S38の処理に移行する。
【0062】
一方、CPU62は、S42の処理において否定判定する場合、停止フラグF2が「1」であるか否かを判定する(S62)。停止フラグF2は、「1」である場合に、再生処理を一時的に停止している旨を示す一方、「0」である場合に、そうではないことを示す。なお、S34の処理が実行された時点では、停止フラグF2を「0」とする。
【0063】
CPU62は、停止フラグF2が「0」であると判定する場合(S62:NO)、実行期間カウンタCrが実行継続時間Crthに一致するか否かを判定する(S64)。CPU62は、実行期間カウンタCrが実行継続時間Crthよりも小さいと判定する場合(S64:NO)、S36の処理に移行する。一方、CPU62は、一致すると判定する場合(S64:YES)、停止フラグF2に「1」を代入するとともに、実行期間カウンタCrを初期化する(S66)。
【0064】
一方、CPU62は、停止フラグF2が「1」であると判定する場合(S62:YES)、停止期間カウンタCsが停止継続時間Csthに一致するか否かを判定する(S68)。停止期間カウンタCsは、実行フラグF1が「1」となっているときにおいて再生処理を一時的に停止している状態の継続時間を計時するカウンタである。停止継続時間Csthは、実行フラグF1が「1」となっているときにおいて再生処理を一時的に停止させる時間に設定されている。
【0065】
CPU62は、停止期間カウンタCsが停止継続時間Csthよりも小さいと判定する場合(S68:NO)、停止期間カウンタCsをインクリメントする(S70)。一方、CPU62は、一致すると判定する場合(S68:YES)、停止フラグF2に「0」を代入するとともに、停止期間カウンタCsを初期化する(S72)。
【0066】
なお、CPU62は、S66,S70,S72の処理を完了する場合、
図6に示す一連の処理を一旦終了する。
図7に、強制再生処理の制御変数の設定に関する処理の手順を示す。
図7に示す処理は、ROM64に記憶されたプログラムをCPU62がたとえば所定周期でくり返し実行することにより実現される。なお、
図7において、
図4に示した処理に対応する処理については、便宜上同一のステップ番号を付与する。
【0067】
図7に示す一連の処理において、CPU62は、S52の処理を完了する場合、開閉体4の開閉状態、外気温Taおよび充填効率ηを入力として、実行継続時間Crthおよび停止継続時間Csthを算出する(S54a)。ここでCPU62は、開閉体4が開状態である場合の実行継続時間Crthを、開閉体4が閉状態である場合の実行継続時間Crthよりも大きい値に算出する。これは、開閉体4が開状態である場合には閉状態である場合よりも内燃機関10の放熱量が大きいために、排気系の温度が過度に高くなるおそれがある再生処理の連続実行時間が長くなるためである。また、CPU62は、外気温Taが小さい場合の実行継続時間Crthを、外気温Taが大きい場合の実行継続時間Crthよりも大きい値に算出する。これは、外気温Taが小さい場合には大きい場合よりも内燃機関10の放熱量が大きいために、排気系の温度が過度に高くなるおそれがある再生処理の連続実行時間が長くなるためである。
【0068】
詳しくは、S54aの処理は、ROM64に記憶されたマップデータを用いてCPU62により実行継続時間Crthおよび停止継続時間Csthをマップ演算する処理である。ここでのマップデータは、4つのデータからなる。それらのうちの2つは、外気温Taおよび充填効率ηを入力変数とし、実行継続時間Crthを出力変数とするデータである。それら2つのデータのうちの1つは、開閉体4が開状態であるとき専用のデータであり、もう1つは、開閉体4が閉状態であるとき専用のデータである。残りの2つは、外気温Taおよび充填効率ηを入力変数とし、停止継続時間Csthを出力変数とするデータである。それら2つのデータのうちの1つは、開閉体4が開状態であるとき専用のデータであり、もう1つは、開閉体4が閉状態であるとき専用のデータである。
【0069】
図7には、開閉体4が開状態であるときの実行継続時間Crthの値を示す出力変数diと、開閉体4が閉状態であるときの実行継続時間Crthの値を示す出力変数eiとの関係を記載した。そして、
図4には、外気温Taの値aiに応じて、実行継続時間Crthの値を示す出力変数di,eiのそれぞれに、「d1>d2>…>dn」,「e1>e2>…>en」の関係があることを記載した。また、
図4には、開閉体4が開状態であるときの停止継続時間Csthの値を示す出力変数fiと、開閉体4が閉状態であるときの停止継続時間Csthの値を示す出力変数giとを記載した。
【0070】
なお、CPU62は、S54aの処理を完了する場合、
図7に示す一連の処理を一旦終了する。ちなみに、本実施形態では、増量ベース値Kbは、開閉体4が開状態である場合と閉状態である場合とで同一の値に設定される。すなわち、開閉体4が開状態である場合と閉状態である場合とで再生処理中のGPF34の目標温度を同一の温度に制御することを想定する。
【0071】
このように、本実施形態では、開閉体4の開閉状態に応じて、実行継続時間Crthおよび停止継続時間Csthを設定した。特にCPU62は、開閉体4が開状態である場合の実行継続時間Crthを、開閉体4が閉状態である場合の実行継続時間Crthよりも大きい値に算出する。これにより、排気系の部品の温度が許容範囲を超えることを抑制できる。
【0072】
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0073】
図8に、強制再生処理の制御変数の設定に関する処理の手順を示す。
図8に示す処理は、ROM64に記憶されたプログラムをCPU62がたとえば所定周期でくり返し実行することにより実現される。なお、
図8において、
図7に示した処理に対応する処理については、便宜上同一のステップ番号を付与する。
【0074】
図8に示す一連の処理において、CPU62は、S52の処理を完了する場合、開閉体4の開閉状態、外気温Taおよび充填効率ηを入力として、増量ベース値Kb、実行継続時間Crthおよび停止継続時間Csthを算出する(S54b)。この処理は、S54の処理とS54aの処理との双方からなる。ただし、本実施形態では、開閉体4が開状態である場合のGPF34の目標温度と、閉状態である場合の目標温度とが一致しない。そのため、開閉体4が開状態である場合の実行継続時間Crthを、開閉体4が閉状態である場合の実行継続時間Crthよりも長くすることは必須ではない。なお、CPU62は、S54bの処理を完了する場合、
図8に示す一連の処理を一旦終了する。
【0075】
<対応関係>
上記実施形態における事項と、上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項との対応関係は、次の通りである。以下では、「課題を解決するための手段」の欄に記載した解決手段の番号毎に、対応関係を示している。[1]排気浄化装置は、GPF34に対応する。開閉情報取得処理は、S52の処理に対応する。昇温処理は、S36の処理に対応する。制限処理は、S54,S54a,S54bの処理に対応する。熱量を小さい側に制限する処理は、増量ベース値Kbが小さい値に制限されていることに対応する。[2]温度を低い値に制限する処理は、増量ベース値Kbが小さい値に制限されていることに対応する。これは、増量ベース値Kbが、GPF34の温度を目標温度とするうえで必要と想定される開ループ操作量であることを根拠とする。[3]外気温取得処理は、S52の処理に対応する。[4]実行継続時間Crthの長さを有する期間だけ再生処理を実行した後、停止継続時間Csthの長さを有する期間にわたって再生処理を停止することに対応する。[5]外気温Taに応じて実行継続時間Crthを定めることに対応する。[7]物質量算出処理は、S12の処理に対応する。量情報通知処理は、S40の処理に対応する。[8]所要時間算出処理は、S38の処理に対応する。時間情報通知処理は、S40の処理に対応する。
【0076】
<その他の実施形態>
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0077】
「制限処理について」
(a)間欠的な増量処理について
・
図7には、マップデータとして、出力変数が「d1>d2>…>dn」となるものを例示したが、これに限らない。たとえば、「d2」と「d3」との関係に限って「d2=d3」とするなど、一部の出力変数については同一となってもよい。
【0078】
・
図7には、マップデータとして、出力変数が「e1>e2>…>en」となるものを例示したが、これに限らない。たとえば、「e2」と「e3」との関係に限って「e2=e3」とするなど、一部の出力変数については同一となってもよい。
【0079】
・
図7の処理では、開閉体4が開状態であるか閉状態であるかに応じて、実行継続時間Crthと停止継続時間Csthとの双方を可変設定した。そして、開閉体4が開状態である場合には閉状態である場合よりも実行継続時間Crthを大きい値とした。しかし、これに代えて、たとえば、開閉体4が閉状態である場合に開状態である場合よりも停止継続時間Csthを大きい値に設定してもよい。これにより、開閉体4が閉状態である場合には開状態である場合よりも再生処理の停止に伴う放熱期間を長くすることができる。
【0080】
・開閉体4が開状態であるか閉状態であるかに応じて、実行継続時間Crthと停止継続時間Csthとの双方を可変設定することは必須ではない。たとえば、開閉体4が開状態であるか閉状態であるかに応じて、実行継続時間Crthのみを可変設定してもよい。またたとえば、開閉体4が開状態であるか閉状態であるかに応じて、停止継続時間Csthのみを可変設定してもよい。
【0081】
・実行継続時間Crthを算出する入力変数としては、開閉状態を示す変数、外気温Taおよび負荷を示す変数としての充填効率ηに限らない。たとえば、負荷を示す変数としてベース噴射量Qbを用いてもよい。またたとえば、再生処理時の目標回転速度NE*として複数の値を取りうるのであれば、回転速度を入力変数に含めてもよい。
【0082】
・実行継続時間Crthを算出する入力変数に、開閉状態を示す変数、外気温Taおよび負荷を示す変数の3つが含まれることは必須ではない。たとえば、同入力変数に開閉状態を示す変数のみを含めてもよい。
【0083】
・停止継続時間Csthを算出する入力変数としては、開閉状態を示す変数、外気温Taおよび負荷を示す変数としての充填効率ηに限らない。たとえば、負荷を示す変数としてベース噴射量Qbを用いてもよい。またたとえば、再生処理時の目標回転速度NE*として複数の値を取りうるのであれば、回転速度を入力変数に含めてもよい。
【0084】
・停止継続時間Csthを算出する入力変数に、開閉状態を示す変数、外気温Taおよび負荷を示す変数の3つが含まれることは必須ではない。たとえば、同入力変数に開閉状態を示す変数のみを含めてもよい。
【0085】
(b)増量ベース値Kbについて
・
図4には、マップデータとして、出力変数が「b1>b2>…>bn」となるものを例示したが、これに限らない。たとえば、「b2」と「b3」との関係に限って「b2=b3」とするなど、一部の出力変数については同一となってもよい。
【0086】
・
図4には、マップデータとして、出力変数が「c1>c2>…>cn」となるものを例示したが、これに限らない。たとえば、「c2」と「c3」との関係に限って「c2=c3」とするなど、一部の出力変数については同一となってもよい。
【0087】
・上記実施形態では、増量ベース値Kbを出力変数とするマップデータとして、開閉体4が開状態であるものと閉状態であるものとの2つのデータを備えたが、これに限らない。たとえば、開閉体4が閉状態であるときの増量ベース値Kbを算出するマップデータと、同増量ベース値Kbを増加補正する補正量をマップ演算するマップデータとを備えてもよい。なお、増量補正は、開閉体4が開状態の場合に実行する。
【0088】
・増量ベース値Kbを算出する入力変数としては、開閉状態を示す変数、外気温Taおよび負荷を示す変数としての充填効率ηに限らない。たとえば、負荷を示す変数としてベース噴射量Qbを用いてもよい。またたとえば、再生処理時の目標回転速度NE*として複数の値を取りうるのであれば、回転速度を入力変数に含めてもよい。
【0089】
・増量ベース値Kbを算出する入力変数に、開閉状態を示す変数、外気温Taおよび負荷を示す変数の3つが含まれることは必須ではない。たとえば、同入力変数に開閉状態を示す変数のみを含めてもよい。
【0090】
・増量ベース値Kbの算出処理としては、開閉状態を示す変数、負荷を示す変数、および回転速度NEを入力とする処理に限らない。たとえば、GPF34の目標温度を入力変数に含めてもよい。ここで目標温度を、開閉体4が開状態の場合に閉状態の場合よりも大きい値に設定すればよい。また、目標温度を、外気温Taが低い場合に高い場合よりも大きい値に設定してもよい。
【0091】
「外気温Taについて」
・上記実施形態では、外気温センサ86を収容室2内に設けたがこれに限らない。また、たとえば外気温を検出するセンサを、内燃機関10の吸気温を検出するセンサによって代用してもよい。
【0092】
「量情報通知処理について」
・上記実施形態では、堆積量DPMに関する視覚情報を車両に搭載された表示器90に表示したがこれに限らない。たとえば修理工場に備えられた表示装置に表示してもよい。またたとえば、作業員の携帯端末またはユーザの携帯端末に表示してもよい。それらの場合、制御装置60に通信機を設けておくとともに、CPU62によって実行される量情報通知処理が、通信機を操作して視覚情報を出力する処理となる。
【0093】
・上記実施形態では、堆積量DPMを逐次算出して表示器90に表示したが、これに限らない。たとえばリクエストがあった場合にのみ表示してもよい。
・上記実施形態では、堆積量DPMを視覚情報として通知したが、これに限らない。たとえば聴覚情報として通知してもよい。
【0094】
「時間情報算出処理について」
・終了所要時間Teの算出に用いる変数としては、上記実施形態において例示したものに限らない。たとえば、上記実施形態のように回転速度NEが予め定められた値に制御される場合には、吸入空気量Gaに代えて、充填効率ηを用いてもよい。またたとえば、増量係数に代えて、GPF34の上流側に設けられた空燃比センサの検出値を用いてもよい。
【0095】
「時間情報通知処理について」
・上記実施形態では、終了所要時間Teに関する視覚情報を車両に搭載された表示器90に表示したがこれに限らない。たとえば修理工場兼販売店側に備えられた表示装置に表示してもよい。またたとえば、作業員の携帯端末またはユーザの携帯端末に表示してもよい。それらの場合、制御装置60に通信機を設けておくとともに、CPU62によって実行される時間情報通知処理が、通信機を操作して視覚情報を出力する処理となる。
【0096】
・上記実施形態では、終了所要時間Teを逐次算出して表示器90に表示したが、これに限らない。たとえばリクエストがあった場合にのみ表示してもよい。
・上記実施形態では、終了所要時間Teを視覚情報として通知したが、これに限らない。たとえば聴覚情報として通知してもよい。
【0097】
「昇温処理の実行条件について」
・昇温処理の実行条件である、再生指令の入力としては、工場側端末100を制御装置60に接続した状態で工場側端末100から入力されるものに限らない。たとえば、車両VC内においてユーザが操作する部材の所定の操作の組み合わせを再生指令の入力としてもよい。ただし、その場合、組み合わせは、通常の運転時には生じない組み合わせとする。
【0098】
・昇温処理の実行条件に、車速がゼロである旨の条件を含める代わりに、シフトポジションがパーキングである旨の条件を含めてもよい。もっとも、車速がゼロである旨の条件、およびシフトポジションがパーキングである旨の条件の双方の条件を含めてもよい。
【0099】
「昇温処理について」
・燃料の供給を停止する気筒を周期的に変更することは必須ではない。
・燃料の供給を停止する気筒の数を1つとすることは必須ではない。たとえば2つの気筒であってもよい。なお、内燃機関の気筒数が8個等、多い場合には、燃料の供給を停止する気筒の数を3個以上としてもよい。
【0100】
・GPF34の温度を上昇する手法としては、一部の気筒の燃料の供給を停止するとともに、残りの気筒の混合気の空燃比を理論空燃比よりもリッチとする処理に限らない。たとえば、点火時期を遅角させるなどして燃焼効率を低下させることによって排気温度を上昇させる制御であってもよい。またたとえば、一部の気筒における混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーンとして且つ残りの気筒の混合気の空燃比を理論空燃比よりもリッチとするディザ制御処理であってもよい。
【0101】
「制御装置について」
・制御装置としては、CPU62とROM64とを備えて、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。たとえば、上記実施形態においてソフトウェア処理されたものの少なくとも一部を、ハードウェア処理するたとえばASIC等の専用のハードウェア回路を備えてもよい。すなわち、制御装置は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)上記処理の全てを、プログラムに従って実行する処理装置と、プログラムを記憶するROM等のプログラム格納装置とを備える。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置およびプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える。ここで、処理装置およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア実行装置や、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。
【符号の説明】
【0102】
2…収容室
4…開閉体
10…内燃機関
16…燃焼室
22…クランク軸
30…排気通路
32…三元触媒
34…GPF
40…遊星歯車機構
50…駆動輪
60…制御装置
100…工場側端末