(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】車両用ステップ構造
(51)【国際特許分類】
B60R 3/00 20060101AFI20241016BHJP
B62D 25/22 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B60R3/00
B62D25/22
(21)【出願番号】P 2021171470
(22)【出願日】2021-10-20
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬井 信夫
(72)【発明者】
【氏名】梅村 将成
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-039542(JP,A)
【文献】特開2020-050013(JP,A)
【文献】特開2002-370594(JP,A)
【文献】特開平10-016822(JP,A)
【文献】実開平05-076882(JP,U)
【文献】実開平01-172941(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/00 - 3/04
B62D 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステップ部材が車両ボディに位置固定されて取付けられている車両用ステップ構造において、
前記ステップ部材は、前記車両ボディに配設された取付け部に対して車外に突出するように取付けられて、車両前後方向又は車幅方向に延びるように配置されており、
衝撃荷重が加えられて車両ボディ側に押される前記ステップ部材を、前記取付け部を基点に車両の高さ方向に傾動させる傾動機構を備
え、
前記車両ボディに設けられている前記傾動機構に、前記ステップ部材の車両ボディ側の端部を車両の高さ方向に誘導する傾動誘導部が設けられている車両用ステップ構造。
【請求項2】
車両ボディ側に向かうにつれて次第に車両の高さ方向に傾斜する前記傾動誘導部としての傾斜面が、前記ステップ部材の車両ボディ側の端部に当てられる位置に設けられている請求項1に記載の車両用ステップ構造。
【請求項3】
前記取付け部には、その他の取付け部部分よりも変形し易い前記傾動誘導部としての脆弱部が形成されており、
前記脆弱部は、傾動する前記ステップ部材を受けられる位置に配置されている請求項1又は請求項2に記載の車両用ステップ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステップ部材が車両ボディに位置固定されて取付けられている車両用ステップ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する構造が特許文献1に記載されている。この車両用ステップの支持構造では、車体(車両ボディ)の後部開口の位置にリヤステップ(ステップ部材)が位置固定されて取付けられている。このリヤステップは、車体の後端側に配設されたステップステーに取付けられている。そしてリヤステップは、ステップステーの後端から概ね水平な姿勢で車外に突出して、車両後側に延びるように配置されている。またステップステーは、車両前後方向に延びるように形成されており、その前部が、車体の後部フロア下面に固定されたフロアクロスメンバと、このフロアクロスメンバの下側に配設されたフレームクロスメンバとに固定されている。そしてフロアクロスメンバとフレームクロスメンバとは、車体の骨格部分を構成するように車幅方向に延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上記したリヤステップ(ステップ部材)は、概ね水平な姿勢で車体(車両ボディ)の後端側から車外に突出している。このため、車両後突時の衝突荷重が最初にリヤステップに加わり、この衝突荷重の加えられたリヤステップが車体側に押されるようになる。しかし、衝撃吸収性の確保の観点から、リヤステップが位置固定時の水平な姿勢のまま車体の骨格部分に当てられることは極力回避すべきである。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車外に突出するステップ部材を、衝撃吸収性を確保しつつ車両ボディに位置固定して取付けておくことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両用ステップ構造では、ステップ部材が車両ボディに位置固定されて取付けられている。そしてステップ部材は、車両ボディに配設された取付け部に対して車外に突出するように取付けられて、車両前後方向又は車幅方向に延びるように配置されている。この種の構成では、車外に突出するステップ部材を、衝撃吸収性を確保しつつ車両ボディに位置固定して取付けておくことが望ましい。そこで本発明の車両用ステップ構造は、衝撃荷重が加えられて車両ボディ側に押されるステップ部材を、取付け部を基点に車両の高さ方向に傾動させる傾動機構を備えている。本発明では、傾動機構の働きにより、衝撃荷重の加えられたステップ部材を車両ボディ側の取付け部に対して傾動させることができる。これにより、ステップ部材が位置固定時の姿勢で車両ボディに当たることを極力回避できると共に、ステップ部材を傾動させることで衝撃荷重を吸収できるようになる。
【0006】
また第1発明の車両用ステップ構造は、車両ボディに設けられている傾動機構に、ステップ部材の車両ボディ側の端部を車両の高さ方向に誘導する傾動誘導部が設けられている。本発明の傾動機構によれば、車両ボディに設けられた傾動誘導部の働きにより、ステップ部材の車両ボディ側の端部を車両の高さ方向に導くことで、ステップ部材をより適切に傾動させられるようになる。
【0007】
第2発明の車両用ステップ構造は、第1発明の車両用ステップ構造において、車両ボディ側に向かうにつれて次第に車両の高さ方向に傾斜する傾動誘導部としての傾斜面が、ステップ部材の車両ボディ側の端部に当てられる位置に設けられている。本発明では、傾動誘導部としての傾斜面の働きで、ステップ部材の車両ボディ側の端部を車両の高さ方向により確実に導けるようになる。
【0008】
第3発明の車両用ステップ構造は、第1発明又は第2発明の車両用ステップ構造において、取付け部には、その他の取付け部部分よりも変形し易い傾動誘導部としての脆弱部が形成されている。そして脆弱部は、傾動するステップ部材を受けられる位置に配置されている。本発明では、傾動誘導部としての脆弱部が、傾動時のステップ部材を受けられるように取付け部に形成されている。これにより、ステップ部材を、傾動誘導部としての脆弱部を変形させながら、取付け部を基点に更に確実に傾動させられるようになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る第1発明によれば、車外に突出するステップ部材を、衝撃吸収性を確保しつつ車両ボディに位置固定して取付けておくことができる。また第1発明によれば、衝撃吸収性をより適切に確保することができる。また第2発明によれば、衝撃吸収性をより確実に確保することができる。そして第3発明によれば、衝撃吸収性を更に確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】車両ボディと車両用ステップ構造の斜視図である。
【
図3】
図1のIII-III線断面に相当する縦断面図である。
【
図4】車両ボディと車両用ステップ構造を示す拡大斜視図である。
【
図7】衝撃荷重の加えられた車両用ステップ構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1~
図7を参照して説明する。各図には、車両の前後方向と左右方向と上下方向(車両の高さ方向)を示す矢線を適宜図示する。また
図3及び
図7では、車両用ステップ構造以外の車両構成を簡略化して図示すると共に、衝撃荷重の入力方向を示す矢線Fを図示する。
【0012】
[車両の後部構造]
車両用ステップ構造8について説明する前に、先ず、
図1に示す車両2の後部構造を説明する。車両2の後部には、その車両ボディ3で構成された後面に、バックドア4により開閉可能に構成されたリヤドア開口部5が形成されている。またバックドア4の下側には、車幅方向(左右方向)に延びるリヤバンパカバー6がリヤドア開口部5の下辺に沿って取付けられている。そしてリヤバンパカバー6の車幅方向の中央には開口部7が形成され、この開口部7から踏台となるステップ部材10(詳細後述)が車外に突出している。
【0013】
また車両ボディ3の下部には、
図1及び
図2に示すように、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ11,12と、車幅方向に延びる前後のクロスメンバ13,14とが配設されている。前側のクロスメンバ13と後側のクロスメンバ14とは、
図2に示すように左右一対のサイドメンバ11,12間に渡されていると共に、前後のクロスメンバ13,14間にはスペアタイヤTが保持されている。そして、上記した左右のサイドメンバ11,12と前後のクロスメンバ13,14とによって、車両ボディ3の下部骨格が構成されている。また
図3を参照して、後側のクロスメンバ14は、その後部側が上記したリヤバンパカバー6で覆われている。また後側のクロスメンバ14の上側には、後部フロア15の下面後端で車幅方向に延びるフロアクロスメンバ16が配設されている。
【0014】
[車両用ステップ構造]
車両用ステップ構造8は、
図4及び
図5に示すように、上記したステップ部材10を後側のクロスメンバ14(車両ボディ3)に位置固定して取付けるための構造である。即ち、後側のクロスメンバ14の後面には、車幅方向に延びるステップリインフォース20が配設される。そして、ステップリインフォース20に配設された左右の取付け部30,30aに、概ね水平な姿勢のステップ部材10が車外に突出するように取付けられる。これにより、車両2の後面には、概ね水平な姿勢のステップ部材10が車両後側に延びるように配置される。
【0015】
上記した車両用ステップ構造8では、
図3に示すように、車両後突時の衝突荷重が最初にステップ部材10に加わるようになる(
図3中、衝撃荷重の入力方向を示す矢線Fを参照)。そして、衝撃荷重の加えられたステップ部材10が車両前側に押されるのであるが、このときステップ部材10が位置固定時の概ね水平な姿勢で後側のクロスメンバ14に当たらないように配慮すべきである。このため本実施例では、後述する傾動機構50によって、車外に突出するステップ部材10を、衝撃吸収性を確保しつつ後側のクロスメンバ14(車両ボディ3)に位置固定して取付けておくこととした。ここで車両用ステップ構造8は、その基本的な構成として、車両ボディ3側に配設されたステップリインフォース20及び左右の取付け部30,30aと、ステップ部材10とを備えている。そこで車両用ステップ構造8の基本的な構成を説明した上で、その傾動機構50について詳述する。
【0016】
[ステップリインフォース]
後側のクロスメンバ14には、
図4及び
図5に示すように、上記した車幅方向に延びるステップリインフォース20が取付けられている。このステップリインフォース20は、その右端部と左端部とに、板状に形成された締結部21,22がそれぞれ設けられている。そしてステップリインフォース20は、左右の締結部21,22によって後側のクロスメンバ14の後面に配設されている。即ち、左側の締結部21は、板厚方向を左右方向に向けた状態でステップリインフォース20から車両前側に張り出している。そして左側の締結部21は、その車両前側が車両外側(各図の左側)に略直角に曲げられており、この曲げられた締結部部分が、後側のクロスメンバ14後面にボルト締結されている。また右側の締結部22も、その車両前側が車両外側(各図の右側)に曲げられており、この曲げられた締結部部分が、後側のクロスメンバ14後面にボルト締結されている。ここでステップリインフォース20は、
図3に示すように、車両前側が解放された縦断面U字形をなしており、そのステップリインフォース20の後面側が車両後方を臨むように配置されている。また
図4及び
図5に示すステップリインフォース20の後面の左端部と右端部とには、概ね垂直方向に延びる平板状の取付け座23,24がそれぞれ設けられている。そして、左右の取付け座23,24に、後述する取付け部30,30aが配設されている。
【0017】
[取付け部]
また
図4に示す左右の取付け部30,30aは、ステップリインフォース20に対して後述するステップ部材10を取付けるための部材である。ここで左右の取付け部30,30aは、概ね同一の基本構成を有して左右対称となるように配設されている。例えば左側の取付け部30は、板厚方向を左右方向に向けた縦板状に形成されている。この左側の取付け部30は、
図6に示す側面視において底辺部31を下側に向けた概ね直角台形をなし、底辺部31から概ね直角に上側に延びる前辺部32と、底辺部31の後端から前側且つ上側に傾斜する傾斜辺部33とを有している。そして底辺部31の下端は、右側に略直角に曲げられており、後述するステップ部材10を下から支えられるようになっている。
【0018】
また
図4及び
図5に示す左側の取付け部30には、その前辺部32の先端に、車両外側(各図の左側)に略直角に曲げられた左フランジ部34が形成されている。この曲げられた左フランジ部34が、ステップリインフォース20の左側の取付け座23に取付けられている。また同様に、右側の取付け部30aにも、車両外側(各図の右側)に略直角に曲げられた右フランジ部34aが形成され、この曲げられた右フランジ部34aが、ステップリインフォース20の右側の取付け座24に取付けられている。ここでステップリインフォース20に対する左右の取付け部30,30aの取付け手法は特に限定しない。例えば取付け手法として、後述する部品交換を考慮してボルト締結等の機械的接合法を用いることができ、剛性確保の観点から溶接等の冶金的接合法を用いることもできる。
【0019】
[ステップ部材]
そして
図4及び
図5に示すステップ部材10は、上方から見た平面視で左右に長い角形に形成されている。ここでステップ部材10の前縁側は、
図5に示すように、上方視で台形状に形成されており、中央の前端部100に比して左右の前縁部分101,102が車両後側に凹んでいる。このステップ部材10の前端部100は、最も車両前側に配置される箇所であり、本発明のステップ部材の車両ボディ側の端部に相当する。そしてステップ部材10は、
図4及び
図5に示すように、左右の取付け部30,30a間に位置固定されて取付けられる。これにより、ステップ部材10は、後側のクロスメンバ14に配設された左右の取付け部30、30aに対して車外に突出するように取付けられて、車両後側(車両前後方向)に延びるように配置される。そして位置固定時のステップ部材10は、
図6に示すように概ね水平な姿勢とされて、その前端部100(車両ボディ側の端部)が左右の取付け部30等の底辺部31に下支えされている。
【0020】
また
図3及び
図4を参照して、位置固定時のステップ部材10は、その前端部100がステップリインフォース20から車両後側に離間した状態で、左右の取付け部30,30aに取付けられている。これにより、
図3に示すステップ部材10とステップリインフォース20間には車幅方向に延びる隙間40が設けられ、この隙間40が車両の高さ方向上下に開口している。このようにステップ部材10とステップリインフォース20間に隙間40を設けることで、ステップ部材10上の水wが隙間40を通じて流れ落ちるようになり、とりわけ車両姿勢が前下がりの場合の水抜き性(排水性)に資する構成となる。即ち、車両姿勢が前下がりとなることで、ステップ部材10はその車両前側が相対的に低くなる。このような場合にも、ステップ部材10とステップリインフォース20間に隙間40を設けることで、ステップ部材10の前端部100側に水wが溜まり難くなる。
【0021】
[傾動機構]
つづいて
図4及び
図5に示す車両用ステップ構造8の傾動機構50について説明する。この傾動機構50は、衝撃荷重が加えられて後側のクロスメンバ14(車両ボディ3)側に押されるステップ部材10を、左右の取付け部30,30aを基点に車両の高さ方向に傾動させる機構である。そして傾動機構50は、後側のクロスメンバ14(車両ボディ3)側に設けられていると共に、ステップ部材10の前端部100を車両の高さ方向下側に誘導する傾動誘導部51,52を有している。即ち、傾動機構50は、ステップリインフォース20に設けられた第一の傾動誘導部51と、左右の取付け部30,30aに設けられた第二の傾動誘導部52とを有している。
【0022】
[第一の傾動誘導部(傾斜面)]
第一の傾動誘導部51は、
図4及び
図5に示すステップリインフォース20の後面に設けられた傾斜面である。この第一の傾動誘導部51としての傾斜面は、左右の取付け座23,24間に車幅方向に延びるように形成されており、ステップ部材10の前端部100を臨むように配置されている。そして、第一の傾動誘導部51(傾斜面)は、
図3に示すように、車両前側(車両ボディ側)に向かうにつれて次第に車両の高さ方向下側に向けて傾斜している。即ち、第一の傾動誘導部51(傾斜面)は、ステップリインフォース20の下端から垂直に延びる仮想線L1に対して角度θで車両前側且つ車両の高さ方向下側に傾斜している。
【0023】
[第二の傾動誘導部(脆弱部)]
また第二の傾動誘導部52は、
図4及び
図5に示す左右の取付け部30,30aに設けられた脆弱部であり、その他の取付け部部分に比して変形し易い箇所である(各図では、便宜上、左右の第二の傾動誘導部に共通の符号52を付す)。この第二の傾動誘導部52(脆弱部)は、例えば
図6に示す左側の取付け部30を、その厚み方向に貫通する複数の貫通孔Hで脆弱化することにより形成されている(各図では、便宜上、複数の貫通孔に共通の符号Hを付す)。そして第二の傾動誘導部52(脆弱部)は、位置固定時のステップ部材10を基準とした場合、その前端部100の車両の高さ方向上側の位置に形成されている。これにより、第二の傾動誘導部52(脆弱部)は、後述するステップ部材10が傾動時に尻上がりの傾斜姿勢となることで、この傾動時のステップ部材10を受けられるようになっている。
【0024】
[傾動機構の働き]
図3及び
図4を参照して、ステップ部材10は、上記したように、車両2の後面から概ね水平な姿勢で車外に突出している。このような構成では、車両後突時の衝突荷重が最初にステップ部材10に加わるようになるが、このときステップ部材10が位置固定時の姿勢で後側のクロスメンバ14側に当たらないように配慮すべきである。そこで本実施例の車両用ステップ構造8は、
図4に示すように、衝撃荷重が加えられて車両ボディ3側に押されるステップ部材10を、左右の取付け部30,30aを基点に車両の高さ方向に傾動させる傾動機構50を備えている。そして傾動機構50では、車両ボディ3側に設けられた各傾動誘導部51,52の働きで、ステップ部材10の前端部100が車両の高さ方向下側に導かれるようになる。
【0025】
上記構成によると、
図3及び
図7を参照して、衝突荷重の加えられたステップ部材10は、まずステップリインフォース20との間の隙間40をなくすように車両前側に移動する。これにより、ステップ部材10の前端部100は、ステップリインフォース20に設けられた第一の傾動誘導部51に押し当てられるようになる。そして第一の傾動誘導部51は、上記したように、車両前側(車両ボディ側)に向かうにつれて次第に車両の高さ方向下側に傾斜する傾斜面である。このため、ステップ部材10の前端部100は、第一の傾動誘導部51(傾斜面)の働きで、車両前側に押されるに従って次第に車両の高さ方向下側に導かれていく。こうしてステップ部材10は、
図6に示す取付け部30等を基点として、前端部100に対して後端部103が上向きとなるように傾動し、次第に尻上がりの傾斜姿勢となっていく。
【0026】
そして左右の取付け部30等には、
図6に示すように第二の傾動誘導部52(脆弱部)が、傾動時の尻上がり姿勢のステップ部材10を受けられるように配置されている。これにより、傾動時のステップ部材10を、第二の傾動誘導部52(脆弱部)を潰すように変形させながら、より確実に傾動させられるようになる。こうして
図4に示す車両用ステップ構造8では、車両後突時の衝撃を、左右の取付け部30,30aを変形させながらステップ部材10を傾動させることで吸収できる。そして傾動機構50の働きで、
図7に示すようにステップ部材10を車両の高さ方向に傾かせて折り畳むことにより、このステップ部材10が位置固定時の水平な姿勢で後側のクロスメンバ14に当たることを極力回避できるようになる。
【0027】
また上記構成では、
図3に示すように、水抜き性の確保のためにステップ部材10とステップリインフォース20との間に隙間40を設けている。これにより、軽衝突の際などに比較的小さい荷重の加えられたステップ部材10を、ステップリインフォース20に当たる前に停止させられるようになる。そしてステップ部材10が途中で停止した場合には、後側のクロスメンバ14に衝撃荷重が加えられ難くなる。このため、最小限の部品交換(ステップ部材10及び取付け部30,30aの交換、また必要ならばステップリインフォース20の交換)にて、車両2の後部構造を修復することができるようになる。こうして本実施例では、水抜きのための隙間40を利用して、後側のクロスメンバ14を保護できるようになり、修復作業の簡略化やコストアップ抑制に資する構成となる。
【0028】
以上説明した通り、本実施例では、傾動機構50の働きにより、衝撃荷重の加えられたステップ部材10を車両ボディ3側の取付け部30,30aに対して傾動させることができる。これにより、ステップ部材10が位置固定時の姿勢で車両ボディ3(後側のクロスメンバ14)に当たることを極力回避できると共に、ステップ部材10を傾動させることで衝撃荷重を吸収できるようになる。特に本実施例の傾動機構50によれば、車両ボディ3に設けられた傾動誘導部51,52の働きにより、ステップ部材10の車両ボディ側の端部(前端部100)を車両の高さ方向に導くことで、ステップ部材10をより適切に傾動させられるようになる。即ち、第一の傾動誘導部51としての傾斜面の働きで、ステップ部材10の車両ボディ側の端部を車両の高さ方向により確実に導けるようになる。また本実施例では、第二の傾動誘導部52としての脆弱部が、傾動時のステップ部材10を受けられるように取付け部30,30aに形成されている。これにより、ステップ部材10を、第二の傾動誘導部52としての脆弱部を変形させながら、取付け部30,30aを基点に更に確実に傾動させられるようになる。このため本実施例によれば、車外に突出するステップ部材10を、衝撃吸収性を確保しつつ車両ボディ3に位置固定して取付けておくことができる。
【0029】
本実施形態の車両用ステップ構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、ステップ部材をリヤドア開口部の位置に取付ける例を説明したが、ステップ部材は、踏み台が必要となる車両ボディの適宜の位置に取付けておくことができる。例えばステップ部材を、車両の側面に形成されたサイドドア開口部の位置に配設された取付け部に取付けて、車幅方向に延びるように配置することができる。またステップ部材を、車両の前端(エンジンルーム)の位置に配設された取付け部に取付けて、車両前側(車両前後方向)に延びるように配置することができる。またステップ部材は、必ずしも平板状に形成される必要はなく、踏台としての機能を有する各種の形状に形成することができる。なお衝撃吸収性の確保の観点から、ステップ部材の車両ボディ側の端部を、第一の傾動誘導部(傾斜面等)に接した状態で位置固定することもできる。この場合には、排水性の確保の観点からステップ部材に、貫通孔や切欠き等で形成された排水部を設けることができる。
【0030】
また本実施形態の傾動機構は、上記した構成に限定されず、各種の構成を取り得る。例えば傾動機構は、ステップ部材の車両ボディ側の端部を、車両の高さ方向上側又は下側のいずれかに導くように構成することができる。そしてステップ部材の車両ボディ側の端部を車両の高さ方向上側に導く場合、例えば
図3に示す第一の傾動誘導部(傾斜面)を、上下逆にして、車両前側且つ車両の高さ方向上側に傾斜させる。また
図6に示す取付け部を上下逆にしてステップリインフォースに配設し、第二の傾動誘導部(脆弱部)を下側に配置させておくこともできる。また傾動誘導部は、上記した構成に限定されず、各種の構成を取り得る。例えば第一の傾動誘導部として、傾斜面の代わりにローラを設置し、このローラの回転によりステップ部材の車両ボディ側の端部を車両の高さ方向に導くことができる。また第二の傾動誘導部(脆弱部)の形成手法も特に限定されず、複数又は単数の貫通孔のほか、切欠きや薄肉部やビード部によって脆弱部を形成することができる。
【0031】
また傾動機構は、ステップ部材に設けることができ、例えば第一の傾動誘導部として、ステップ部材の車両ボディ側の端部に傾斜面を設けることができる。例えば
図3に示すステップ部材の前端部を車両上側又は下側に曲げ返し、この曲げられた部分に傾斜面を設けることができる。またステップ部材を、緩い尻上がり姿勢(又は緩い尻下がり姿勢)で取付け部に取付けておくこともできる。この場合にはステップ部材自体が傾動誘導部を構成する。そして傾動機構は、車両ボディ側の部材(ステップリインフォース及び取付け部)に設けられた傾動誘導部と、ステップ部材に設けられた傾動誘導部とを適宜組み合わせて構成することができる。
【符号の説明】
【0032】
2 車両
3 車両ボディ
4 バックドア
5 リヤドア開口部
6 リヤバンパカバー
7 開口部
8 車両用ステップ構造
10 ステップ部材
11,12 サイドメンバ
13 前側のクロスメンバ
14 後側のクロスメンバ
15 後部フロア
16 フロアクロスメンバ
20 ステップリインフォース
21 左側の締結部
22 右側の締結部
23 左側の取付け座
24 右側の取付け座
30 左側の取付け部
30a 右側の取付け部
31 底辺部
32 前辺部
33 傾斜辺部
34 左フランジ部
34a 右フランジ部
40 隙間
50 傾動機構
51 第一の傾動誘導部(傾斜面)
52 第二の傾動誘導部(脆弱部)
100 ステップ部材の前端部
103 ステップ部材の後端部
H 貫通孔
L1 仮想線
T スペアタイヤ
w 水