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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】電動車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 9/18 20060101AFI20241016BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B60L9/18 J
H02M3/155 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021180202
(22)【出願日】2021-11-04
(65)【公開番号】P2023068833
(43)【公開日】2023-05-18
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山川 隼史
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-112163(JP,A)
【文献】特開2007-166874(JP,A)
【文献】特開2015-171312(JP,A)
【文献】特開2010-200534(JP,A)
【文献】特開2003-309997(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0158910(US,A1)
【文献】特開2019-071766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
H02M 3/00- 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を駆動するモータジェネレータがDC-DCコンバータを介してバッテリに接続された電動車両の制御装置であって、
前記制御装置は、
前記DC-DCコンバータの出力電圧の目標値を取得する処理と、
前記DC-DCコンバータの前記出力電圧の計測値を取得する処理と、
前記DC-DCコンバータのリアクトルに流れるリアクトル電流の方向を取得する処理と、
前記出力電圧の前記目標値に対する前記計測値の偏差に応じて、前記DC-DCコンバータの動作のフィードバック制御を実行する処理と、
を実行可能であり、
前記フィードバック制御を実行する処理は、前記リアクトル電流の方向に応じて、異なるフィードバックゲインを決定する処理を含
前記リアクトルには、前記バッテリから前記モータジェネレータへ電力が供給されるときに第1の方向に前記リアクトル電流が流れ、前記モータジェネレータから前記バッテリへ電力が供給されるときに前記第1の方向とは異なる第2の方向に前記リアクトル電流が流れ、
前記フィードバックゲインを決定する処理では、
前記リアクトル電流が第1の大きさで前記第1の方向へ流れるときに、前記フィードバックゲインが第1の値に決定され、
前記リアクトル電流が前記第1の大きさで前記第2の方向へ流れるときは、前記フィードバックゲインが前記第1の値よりも大きな第2の値に決定される、
制御装置。
【請求項2】
前記リアクトル電流の計測値を取得する処理をさらに実行可能であり、
前記フィードバックゲインを決定する処理では、さらに前記リアクトル電流の大きさに応じて、前記フィードバックゲインが決定される、請求項に記載の制御装置。
【請求項3】
前記フィードバックゲインを決定する処理では、前記リアクトル電流の大きさが所定の範囲内であって、前記リアクトル電流が前記第2の方向へ流れるときに、前記リアクトル電流の大きさが大きくなるほど、前記フィードバックゲインが大きな値に決定される、請求項に記載の制御装置。
【請求項4】
前記フィードバックゲインを決定する処理では、前記リアクトル電流の大きさが前記所定の範囲内であって、前記リアクトル電流が前記第1の方向へ流れるときに、前記リアクトル電流の大きさにかかわらず、前記フィードバックゲインが同じ値に決定される、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記フィードバックゲインを決定する処理では、前記リアクトル電流が前記第2の方向へ流れるときに、前記出力電圧の前記目標値または前記計測値が小さいときほど、同じ大きさの前記リアクトル電流に対して、前記フィードバックゲインが大きな値に決定される、請求項からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記リアクトル電流の方向及び大きさと、前記フィードバックゲインとの関係を記述するマップ又は関係式を記憶するメモリを有する、請求項1からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記リアクトル電流の目標値を取得する処理をさらに実行可能であり、
前記フィードバック制御を実行する処理では、さらに、前記リアクトル電流の前記目標値に対する前記計測値の偏差に応じて、前記DC-DCコンバータの動作がフィードバック制御される、請求項1からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
車輪を駆動するモータジェネレータがDC-DCコンバータを介してバッテリに接続された電動車両の制御装置であって、
前記制御装置は、
前記DC-DCコンバータの出力電圧の目標値を取得する処理と、
前記DC-DCコンバータの前記出力電圧の計測値を取得する処理と、
前記DC-DCコンバータのリアクトルに流れるリアクトル電流の方向を取得する処理と、
前記出力電圧の前記目標値に対する前記計測値の偏差に応じて、前記DC-DCコンバータの動作のフィードバック制御を実行する処理と、
を実行可能であり、
前記フィードバック制御を実行する処理は、前記リアクトル電流の方向に応じて、異なるフィードバックゲインを決定する処理を含み、
前記制御装置は、前記リアクトル電流の目標値を取得する処理をさらに実行可能であり、
前記フィードバック制御を実行する処理では、さらに、前記リアクトル電流の前記目標値に対する前記計測値の偏差に応じて、前記DC-DCコンバータの動作がフィードバック制御される、
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、電動車両の制御装置に関する。特に、車輪を駆動するモータジェネレータがDC―DCコンバータを介してバッテリに接続された電動車両において、DC-DCコンバータを制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の制御装置は、DC―DCコンバータのリアクトルに流れるリアクトル電流の目標値を取得する。さらに、制御装置は、リアクトル電流の計測値を取得する。制御装置は、取得したリアクトル電流の目標値に対する計測値の偏差に応じて、フィードバック制御を実行する。
【0003】
制御装置は、フィードバック制御を実行する際、さらに、電動車両のモータジェネレータの電力変動の周波数が、DC―DCコンバータの回路に共振が生じる共振周波数内に含まれるか否かを判断する。制御装置は、電力変動の周波数が共振周波数内に含まれるか否かに応じて、フィードバックゲインを変更する。制御装置は、電力変動の周波数が共振周波数内に含まれる場合に、フィードバックゲインを変更することによって、電力変動の周波数を、共振周波数外の周波数に変更する。これにより、DC―DCコンバータの回路に共振が生じることを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-051065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DC-DCコンバータのリアクトルには、DC-DCコンバータの出力方向に応じて、異なる方向にリアクトル電流が流れる。特許文献1の制御装置では、リアクトル電流の方向を区別することなく、フィードバックゲインが同様に決定される。しかしながら、本発明者らは、リアクトル電流の方向によって、フィードバック制御における有害な外乱特性が変化することを発見した。本明細書では、リアクトル電流の方向によって変化する外乱特性に対応することによって、DC-DCコンバータの動作を精度よく制御することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する制御装置は、車輪を駆動するモータジェネレータがDC-DCコンバータを介してバッテリに接続された電動車両において具現化される。前記制御装置は、前記DC-DCコンバータの出力電圧の目標値を取得する処理と、前記DC-DCコンバータの前記出力電圧の計測値を取得する処理と、前記DC-DCコンバータのリアクトルに流れるリアクトル電流の方向を取得する処理と、前記出力電圧の前記目標値に対する前記計測値の偏差に応じて、前記DC-DCコンバータの動作のフィードバック制御を実行する処理と、を実行可能である。制御装置は、前記フィードバック制御を実行する処理は、前記リアクトル電流の方向に応じて、異なるフィードバックゲインを決定する処理を含んでもよい。
【0007】
上述した構成によると、制御装置は、リアクトル電流の方向に応じて、異なるフィードバックゲインを決定する。これにより、リアクトル電流の方向によって変化する外乱特性に対応して、DC-DCコンバータの動作を精度よく制御することができる。
【0008】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例の制御装置20を備える電動車両100の回路図を簡易的に示す。
図2】制御装置20が実行する処理のフロー図を示す。
図3】制御装置20がフィードバックゲインGVの値を決定するために用いるゲインマップM1を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本技術の一実施形態では、前記リアクトルには、前記バッテリから前記モータジェネレータへ電力が供給されるときに第1の方向に前記リアクトル電流が流れ、前記モータジェネレータから前記バッテリへ電力が供給されるときに前記第1の方向とは異なる第2の方向に前記リアクトル電流が流れてもよい。その場合、前記フィードバックゲインを決定する処理では、前記リアクトル電流が第1の大きさで前記第1の方向へ流れるときに、前記フィードバックゲインが第1の値に決定され、前記リアクトル電流が前記第1の大きさで前記第2の方向へ流れるときは、前記フィードバックゲインが前記第1の値よりも大きな第2の値に決定されてもよい。バッテリからモータジェネレータへ電力が供給される場合、すなわち、リアクトル電流が第1の方向に流れる場合には、バッテリの電力をDC-DCコンバータによって昇圧することにより、モータジェネレータを駆動させる力行が実行される。モータジェネレータからバッテリへ電力が供給される場合、すなわち、リアクトル電流が第2の方向に流れる場合には、モータジェネレータが発生した電力をDC-DCコンバータによって降圧することにより、バッテリを充電する回生が実行される。本発明者らは、回生が実行される場合、力行の実行時よりも大きなフィードバックゲインを用いることによって、回生時の外乱による影響を抑制することができることを発見した。このような構成によると、第2の値を有するフィードバックゲインを利用して、回生時の外乱による影響を抑制することができる。
【0011】
本技術の一実施形態では、制御装置は、前記リアクトル電流の計測値を取得する処理をさらに実行可能であってもよい。その場合、前記フィードバックゲインを決定する処理では、前記リアクトル電流の大きさが所定の範囲内であって、前記リアクトル電流が前記第2の方向へ流れるときに、前記リアクトル電流の大きさが大きくなるほど、前記フィードバックゲインが大きな値に決定されてもよい。但し、別の実施形態では、フィードバックゲインは、段階的に変化するように決定されてもよい。
【0012】
本技術の一実施形態では、前記フィードバックゲインを決定する処理では、前記リアクトル電流の大きさが前記所定の範囲内であって、前記リアクトル電流が前記第1の方向へ流れるときに、前記リアクトル電流の大きさにかかわらず、前記フィードバックゲインが同じ値に決定されてもよい。但し、別の実施形態では、フィードバックゲインは、リアクトル電流が第1の方向へ流れるときに、リアクトル電流の大きさが大きくなるほど、小さな値に決定されてもよい。
【0013】
本技術の一実施形態では、前記フィードバックゲインを決定する処理では、前記リアクトル電流が前記第2の方向へ流れるときに、前記目標値または前記計測値が小さいときほど、同じ大きさの前記リアクトル電流に対して、前記フィードバックゲインが大きな値に決定されてもよい。本発明者らは、特に、目標値または計測値が比較的小さい領域において、外乱が変化しやすいことを発見した。このような構成によると、制御装置は、目標値または計測値が比較的低い領域において発生する外乱による影響を抑制することができる。
【0014】
本技術の一実施形態では、制御装置は、前記リアクトル電流の方向及び大きさと、前記フィードバックゲインとの関係を記述するマップ又は関係式を記憶するメモリを有してもよい。このような構成によると、例えば、リアクトル電流の大きさが所定の閾値を超えた場合にフィードバックゲインを所定の値に決定する構成に比して、フィードバックゲインを細かく決定することができる。
【0015】
本技術の一実施形態では、制御装置は、前記リアクトル電流の目標値を取得する処理をさらに実行可能であってもよい。その場合、前記フィードバック制御を実行する処理では、さらに、前記リアクトル電流の前記目標値に対する前記計測値の偏差に応じて、前記DC-DCコンバータの動作がフィードバック制御されてもよい。このような構成によると、電圧の偏差のみに基づいてDC-DCコンバータのフィードバック制御を実行する構成に比して、フィードバック制御の応答性を高めることができる。
【0016】
(実施例)
図面を参照して実施例の制御装置について説明する。初めに、図1を参照して、実施例の制御装置20が搭載される電動車両100について説明する。図1は、主に、電動車両100の駆動系に関する回路を示す。電動車両100は、モータジェネレータ2と、インバータ4と、高圧側コンデンサ6と、高圧側電圧センサ8と、DC-DCコンバータ10と、低圧側コンデンサ36と、低圧側電圧センサ38と、システムメインリレー34と、バッテリ32と、制御装置20と、を備える。電動車両100は、バッテリ32に蓄えられた電力をモータジェネレータ2に供給することで走行する。すなわち、モータジェネレータ2は、電動車両100の車輪(図示省略)を駆動する。また、モータジェネレータ2は、制動時のトルクによって発電する発電機としても機能する。モータジェネレータ2が発生させた電力は、バッテリ32に充電される。モータジェネレータ2は、DC-DCコンバータ10を介してバッテリ32に接続される。
【0017】
各コンデンサ6,36は、いわゆる平滑コンデンサであり、回路の電圧を安定させるために設けられる。高圧側電圧センサ8は、高圧側正極42pと高圧側負極42nとの間の電圧を計測する。低圧側電圧センサ38は、低圧側正極43pと低圧側負極43nとの間の電圧を計測する。
【0018】
DC-DCコンバータ10は、2つのスイッチング素子14、16と、電流センサ18と、リアクトル19と、を備える。DC-DCコンバータ10は、2つのスイッチング素子14、16をオンオフすることによって、電圧を変化させる。DC-DCコンバータ10が電圧を変化させる技術については、既知であるためここでは説明を省略する。
【0019】
制御装置20は、メモリ22を備えるコンピュータである。制御装置20は、図示は省略したが、電動車両100のアクセル開度情報、ブレーキ踏込情報、車両速度情報等、電動車両100の走行に関する走行情報を取得する。制御装置20は、取得した走行情報に基づいて、DC-DCコンバータ10を制御する。電動車両100の運転者によってアクセルが踏み込まれ、モータジェネレータ2をより高速に駆動させる場合、制御装置20は、バッテリ32からモータジェネレータ2に電力を供給する。この場合、制御装置20は、いわゆる力行制御を実行する。これにより、DC-DCコンバータ10、バッテリ32の出力電力を高圧な電力に変換して、モータジェネレータ2に供給する。一方、電動車両100の運転者によってブレーキが踏み込まれ、モータジェネレータ2のトルクによって回生を実行する場合、制御装置20は、モータジェネレータ2からバッテリ32に電力を供給する。この場合、制御装置20は、いわゆる回生制御を実行する。これにより、DC-DCコンバータ10は、モータジェネレータ2の発電した電力を低圧な電力に変換して、バッテリ32に供給する。
【0020】
制御装置20は、DC-DCコンバータ10の電流センサ18の計測値を取得する。これにより、制御装置20は、電流センサ18から、リアクトル19に流れる電流(以下、リアクトル電流ILと称することがある)を取得する。図1に示されるように、制御装置20が力行制御を実行する場合、リアクトル電流ILは、第1の方向D1に流れる。制御装置20が回生制御を実行する場合、リアクトル電流ILは、第2の方向D2に流れる。
【0021】
図2を参照して、制御装置20がDC-DCコンバータ10を制御するために実行する処理について説明する。制御装置20は、電動車両100の走行中、常に図2の処理を実行している。ここでは、制御装置20が、力行制御時に実行する処理について説明する。制御装置20は、走行情報から、DC-DCコンバータ10の出力電圧の目標値Vtを算出することによって、目標値Vtを取得する(S2)。制御装置20は、高圧側電圧センサ8(図1参照)から、DC-DCコンバータ10の出力電圧の計測値Vmを取得する(S4)。次いで、制御装置20は、電流センサ18(図1参照)から、リアクトル電流ILの計測値ILmを取得する(S6)。そして、制御装置20は、DC-DCコンバータ10の出力電圧が目標値Vtと等しくなるように、DC-DCコンバータ10の動作をフィードバック制御する。特に限定されないが、本実施例におけるフィードバック制御には、比例積分制御が採用されており、目標値Vtに対する計測値Vmの偏差の瞬時値と、当該偏差を積算した積算値とに応じて、DC-DCコンバータ10の動作が制御される。なお、DC-DCコンバータ10のフィードバック制御では、いわゆる比例制御のように、偏差の瞬時値のみに基づいて行われてもよい。以下では、説明の明瞭化を目的として、比例積分制御のうち、主に比例項(偏差の瞬時値に基づくフィードバック制御)について説明する。
【0022】
制御装置20は、S6の処理で取得したリアクトル電流ILの計測値ILmに基づいて、フィードバックゲインGVを決定する(S8)。制御装置20がフィードバックゲインGVを決定する詳細については、図3を参照して後述する。
【0023】
制御装置20は、S2の処理で取得した目標値Vt及びS4の処理で取得した計測値Vmの偏差と、S8の処理で決定したフィードバックゲインGVとを乗じることで、DC-DCコンバータ10に対する第1の操作量(Vt-Vm)×GVを決定する(S10)。
【0024】
さらに、制御装置20は、出力電圧の目標値Vtから、リアクトル電流ILの目標値ILtを算出することによって、目標値ILtを取得する(S12)。次いで、制御装置20は、S6の処理で取得したリアクトル電流ILの計測値ILmに基づいて、フィードバックゲインGIを決定する(S14)。図示は省略したが、制御装置20は、メモリ22(図1参照)に、目標値ILt及び計測値ILmと関連付けられるフィードバックゲインGIのテーブルを記憶している。制御装置20は、メモリ22内のテーブルから、フィードバックゲインGIの値を決定する。
【0025】
制御装置20は、S12の処理で取得した目標値ILt及びS6の処理で取得した計測値ILmの偏差と、S14の処理で決定したフィードバックゲインGIと、を乗じることで、DC-DCコンバータ10に対する第2の操作量(ILt-ILm)×GIを決定する(S16)。
【0026】
制御装置20は、S10で算出した第1の操作量(Vt-Vm)×GVと、S16で算出した第2の操作量(ILt-ILm)×GIと、を利用して、DC-DCコンバータ10の各スイッチング素子14、16(図1参照)をオンオフするデューティ比を決定する(S20)。このように、制御装置20は、DC-DCコンバータ10の動作のフィードバック制御を実行する。
【0027】
また、回生制御を実行する場合、制御装置20は、S4の処理において、低圧側電圧センサ38から計測値Vmを取得して、上述したDC-DCコンバータ10の動作のフィードバック制御を実行する。
【0028】
図3を参照して、図2のS8の処理において、制御装置20がフィードバックゲインGVを決定する処理について説明する。図3は、制御装置20のメモリ22に記憶されているゲインマップM1を示す。ゲインマップM1は、電動車両100において、DC-DCコンバータ10のフィードバック制御を実行する際に発生する共振等の外乱を計測し、その外乱を抑制するために必要となるフィードバックゲインGVの値を記述するマップである。
【0029】
図3に示されるように、ゲインマップM1は、図2のS4で取得した出力電圧の計測値Vmごとに、リアクトル電流ILの計測値ILmと、フィードバックゲインGVとの関係を記述する。このため、図3では、計測値Vmごとにグラフの線種を変更して記載している。なお、変形例では、ゲインマップM1は、図2のS2で取得した出力電圧の目標値Vtごとに、リアクトル電流ILの計測値ILmと、フィードバックゲインGVとの関係を記述してもよい。
【0030】
電流センサ18では、リアクトル電流ILが第1の方向D1に流れる場合、計測値ILmは、正の値で計測される。電流センサ18では、リアクトル電流ILが第2の方向D2に流れる場合、計測値ILmは、負の値で計測される。すなわち、制御装置20が力行制御を実行する場合、計測値ILmが正の値となり、制御装置20が回生制御を実行する場合、計測値ILmが負の値となる。このように、制御装置20は、電流センサ18からリアクトル電流ILの計測値ILmを取得し、その正負を判定することによって、リアクトル電流ILの方向を取得することができる。
【0031】
制御装置20は、図2のS6の処理で計測値ILmを取得すると、取得した計測値ILmを、計測値Vmのグラフに当てはめる。例えば、図2のS4で取得した計測値Vmが細かな破線によって示される300Vであり、リアクトル電流ILが第1の方向D1に流れ、その計測値ILmが100Aである場合、制御装置20は、ゲインマップM1から、フィードバックゲインGVの値を第1の値GV1に決定する。一方、計測値Vmが300Vであり、リアクトル電流ILが第2の方向D2に流れ、その計測値ILmが-100Aである場合、制御装置20は、ゲインマップM1から、フィードバックゲインGVの値を第2の値GV2に決定する。
【0032】
図3から理解されるように、第2の値GV2は、第1の値GV1よりも大きい。リアクトル電流ILの値が100Aであっても、リアクトル電流ILが第2の方向D2に流れるときに決定される第2の値GV2は、リアクトル電流ILが第1の方向D1に流れるときに決定される第1の値GV1と異なる。従来の技術では、フィードバックゲインGVの値は、リアクトル電流ILの方向を区別することなく、例えば、リアクトル電流ILの値によって、同様に決定されていた。しかしながら、図1に示されるように、DC-DCコンバータ10が配置される回路は、モータジェネレータ2側とバッテリ32側とにおいて、非対称となる構造を有している。本発明者らは、リアクトル電流ILの方向によって、フィードバック制御における有害な外乱特性が変化し得ることを発見した。本明細書の制御装置20は、図2及び図3に示されるように、フィードバックゲインGVを決定する前に、リアクトル電流ILの方向を取得し、その方向に応じて、異なるフィードバックゲインGVを決定する。これにより、リアクトル電流ILの方向によって変化する外乱特性に対応して、DC-DCコンバータ10の動作を精度よく制御することができる。
【0033】
図3に示されるように、ゲインマップM1の第1の範囲A1内の領域では、計測値Vmが300VのフィードバックゲインGVは、第2の方向D2に流れるリアクトル電流ILの計測値ILmの大きさが大きくなるほど(すなわち、図3の紙面左側ほど)、大きくなる。その結果、例えば、計測値Vmが300V、計測値ILmの値が-150Aであるときに決定される第3の値GV3は、第2の値GV2よりも大きくなる。
【0034】
一方、ゲインマップM1の第2の範囲A2内の領域では、第1の方向D1に流れるリアクトル電流ILの計測値ILmの大きさに関わらず、フィードバックゲインGVの値は第1の値GV1に保持される。また、第2の範囲A2内の領域では、計測値Vmが200~600Vの場合の各グラフが、重ねて表示されている。すなわち、第2の範囲A2内の領域では、計測値Vmの大きさに関わらず、フィードバックゲインGVの値は第1の値GV1に決定される。
【0035】
ゲインマップM1の第1の範囲A1内の領域では、リアクトル電流ILの計測値ILmが-100Aである状態において、出力電圧の計測値Vmが300Vの場合、フィードバックゲインGVは第2の値GV2に決定される。しかしながら、リアクトル電流ILの計測値ILmが同じ-100Aである状態において、出力電圧の計測値Vmが200Vのとき、フィードバックゲインGVは、第4の値GV4に決定される。図3に示されるように、第4の値GV4は、第2の値GV2よりも大きい。同様に、同じリアクトル電流ILの計測値ILmが-150Aである状態では、出力電圧の計測値Vmが200Vのときに決定される第5の値GV5は、出力電圧の計測値Vmが300Vのときに決定される第4の値GV4よりも大きい。すなわち、制御装置20は、リアクトル電流ILが第2の方向D2に流れる場合、同じ大きさのリアクトル電流ILに対して、出力電圧の計測値Vmが小さいときほど、フィードバックゲインGVを大きな値に決定する。本発明者らは、特に、出力電圧の計測値Vmが小さい領域において、回生制御時の外乱が、力行制御時の外乱と変わる傾向があることを発見した。制御装置20は、出力電圧の計測値Vmが小さいときほど、フィードバックゲインGVを大きな値に決定することによって、出力電圧の計測値Vmが小さい領域において、回生制御時の外乱によるフィードバック制御への影響を抑制することができる。
【0036】
制御装置20は、出力電圧の偏差によるDC-DCコンバータ10の動作のフィードバック制御に加え、図2のS12~S16に示されるように、リアクトル電流ILの偏差によるDC-DCコンバータ10の動作のフィードバック制御も実行する。これにより、出力電圧の偏差のみによるフィードバック制御を実行する構成に比して、より迅速にDC-DCコンバータ10の動作をフィードバック制御することができる。すなわち、このような構成により、フィードバック制御の応答性を向上させることができる。その結果、例えば、各コンデンサ6,36の容量を小さくすることができる。
【0037】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。上記の実施例の変形例を以下に列挙する。
【0038】
(変形例1)上述した実施例では、制御装置20は、出力電圧の目標値Vtに対する計測値Vmの偏差の瞬時値に対応するゲインマップM1を利用して、フィードバックゲインGVの値を決定した。変形例では、制御装置20は、出力電圧の目標値Vtに対する計測値Vmの偏差を積算した積算値に対する別のゲインマップをメモリ22内に記憶し、ゲインマップM1に加えて当該別のゲインマップも利用して、フィードバックゲインGVの値を決定してもよい。すなわち、本変形例では、比例積分制御のうち、積分項(偏差の積算値に基づくフィードバック制御)において、ゲインマップを利用してフィードバックゲインGVの値を決定してもよい。
【0039】
(変形例2)制御装置20がフィードバックゲインGVを決定するために利用するゲインマップは、ゲインマップM1に限定されない。制御装置20は、ゲインマップM1に代えて、電動車両100の駆動系の構成による共振周波数に基づいて算出された別のゲインマップを利用してフィードバックゲインGVを決定してもよい。その場合、例えば、当該別のゲインマップでは、リアクトル電流ILの計測値ILmが同じ100Aである状態において、リアクトル電流ILが第2の方向D2に流れる(すなわち、回生制御が実行される)ときに、第1の値GV1が決定されてもよい。その場合、リアクトル電流ILが第1の方向D1に流れる(すなわち、力行制御が実行される)ときに、第1の値GV1よりも大きい第2の値GV2が決定されてもよい。さらなる変形例では、制御装置20は、ゲインマップM1に代えて、リアクトル電流ILの方向及び大きさと、フィードバックゲインGVとの関係を記述する関係式をメモリ22内に記憶してもよい。
【0040】
(変形例3)制御装置20は、リアクトル電流ILの方向が第1の方向D1であるときに、フィードバックゲインGVが一定の所定値に決定し、リアクトル電流ILの方向が第2の方向D2であるときに、フィードバックゲインGVが別の所定値に決定してもよい。すなわち、制御装置20は、リアクトル電流ILの大きさの変化に関わらず、フィードバックゲインGVを決定してもよい。
【0041】
(変形例4)ゲインマップM1では、第1の範囲A1において、フィードバックゲインGVは、図3のグラフに示されるように、連続的に変化していなくてもよい。例えば、フィードバックゲインGVは、段階的に変化してもよい。
【0042】
(変形例5)制御装置20は、第1の範囲A1において、出力電圧の計測値Vmに関わらず、リアクトル電流ILの計測値ILmが同じ場合に、同じフィードバックゲインGVの値を決定してもよい。
【0043】
(変形例6)制御装置20は、リアクトル電流ILの目標値ILtに対する計測値ILmの偏差に応じて、DC-DCコンバータ10の動作をフィードバック制御しなくてもよい。本変形例では、図2のS12~S16の処理は省略可能である。
【0044】
(変形例7)制御装置20は、電流センサ18から取得したリアクトル電流ILの計測値ILmに代えて、例えば、モータジェネレータ2の出力トルクによって、リアクトル電流ILの方向を取得してもよい。その場合、DC-DCコンバータ10は、電流センサ18を備えなくてもよい。さらに別の変形例では、電流センサ18は、DC-DCコンバータ10とシステムメインリレー34との間に配置されてもよい。
【0045】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0046】
2 :モータジェネレータ
4 :インバータ
6 :高圧側コンデンサ
8 :高圧側電圧センサ
10 :DC-DCコンバータ
14、16:スイッチング素子
18 :電流センサ
19 :リアクトル
20 :制御装置
22 :メモリ
32 :バッテリ
34 :システムメインリレー
36 :低圧側コンデンサ
38 :低圧側電圧センサ
100 :電動車両
A1 :第1の範囲
A2 :第2の範囲
D1 :第1の方向
D2 :第2の方向
M1 :ゲインマップ
図1
図2
図3