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特許7571716物体判定装置、物体判定用コンピュータプログラム及び物体判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】物体判定装置、物体判定用コンピュータプログラム及び物体判定方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021198577
(22)【出願日】2021-12-07
(65)【公開番号】P2023084412
(43)【公開日】2023-06-19
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100135976
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 鈴華
(72)【発明者】
【氏名】北川 栄来
(72)【発明者】
【氏名】藤井 祥太
(72)【発明者】
【氏名】岡田 悠
(72)【発明者】
【氏名】吉野 聡一
(72)【発明者】
【氏名】金子 拓央
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-301400(JP,A)
【文献】特開2014-238297(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125335(WO,A1)
【文献】特開2014-16888(JP,A)
【文献】特開2009-187413(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0242443(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 1/16
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
B60R 21/00 - 21/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に配置されるセンサから出力される物体検出情報に基づいて、前記車両から所定の範囲内に物体が存在するか否かを判定する物体判定装置であって、
所定の周期を有する判定処理における前々回の物体判定時刻の後から前回の物体判定時刻までの第1の検出時に検出された第1の物体検出情報、及び、前記第1の検出時よりも後の、前回の物体判定時刻の後から今回の物体判定時刻までの第2の検出時に検出された第2の物体検出情報が、同じ物体を検出しているか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部によって同じ物体が検出されていないと判定され、且つ、前記第1の検出時に検出された物体が前記第2の検出時に検出されない場合に、前記第2の検出時における前記車両の位置を含む所定の領域が、前記第1の検出時に検出された物体が前記第2の検出時における前記所定の範囲外へ移動可能な車線若しくは道路を含まないかを判定し、及び、
前記第1判定部によって同じ物体が検出されていないと判定され、且つ、前記第1の検出時に検出されていない物体が前記第2の検出時に検出された場合に、前記第2の検出時における前記車両の位置を含む前記所定の領域が、前記車両が走行する走行道路から分岐する分岐道路を含まないか否かを判定する、第2判定部と、
前記第1判定部によって同じ物体が検出されたと判定された場合、又は、
前記第2判定部によって、前記第2の検出時における前記車両の位置を含む前記所定の領域が、前記第1の検出時に検出された物体が前記第2の検出時における前記所定の範囲外へ移動可能な車線若しくは道路を含まないか、又は、前記第2の検出時における前記車両の位置を含む前記所定の領域が、前記車両が走行する走行道路から分岐する分岐道路を含まないと判定された場合、前記車両から所定の範囲内に物体が存在すると判定する第3判定部と、
前記第3判定部による判定結果を通知する通知部と、
を有する、ことを特徴とする物体判定装置。
【請求項2】
前記第1判定部によって同じ物体が検出されていないと判定され、且つ、前記第1の検出時に検出された物体が前記第2の検出時に検出されていない場合、前記第2の検出時に前記所定の範囲よりも狭い第2の範囲内に、前記第1の検出時に検出された物体とは異なる第2の物体が検出されたか否かを判定する第4判定部と、
前記第2の物体が検出された場合、前記第1の物体検出情報、及び、前記第2の物体検出情報が、同じ物体を検出していると判定する第5判定部と、
を有する請求項1に記載の物体判定装置。
【請求項4】
車両に配置されるセンサから出力される物体検出情報に基づいて、前記車両から所定の範囲内に物体が存在するか否かを判定する判定方法であって、
所定の周期を有する判定処理における前々回の物体判定時刻の後から前回の物体判定時刻までの第1の検出時に検出された第1の物体検出情報、及び、前記第1の検出時よりも後の、前回の物体判定時刻の後から今回の物体判定時刻までの第2の検出時に検出された第2の物体検出情報が、同じ物体を検出しているか否かを判定し、
同じ物体が検出されていないと判定され、且つ、前記第1の検出時に検出された物体が前記第2の検出時に検出されない場合に、前記第2の検出時における前記車両の位置を含む所定の領域が、前記第1の検出時に検出された物体が前記第2の検出時における前記所定の範囲外へ移動可能な車線若しくは道路を含まないかを判定し、及び、同じ物体が検出されていないと判定され、且つ、前記第1の検出時に検出されていない物体が前記第2の検出時に検出された場合に、前記第2の検出時における前記車両の位置を含む前記所定の領域が、前記車両が走行する走行道路から分岐する分岐道路を含まないか否かを判定し、
同じ物体が検出されたと判定された場合、又は、
前記第2の検出時における前記車両の位置を含む前記所定の領域が、前記第1の検出時に検出された物体が前記第2の検出時における前記所定の範囲外へ移動可能な車線若しくは道路を含まないか、又は、前記第2の検出時における前記車両の位置を含む前記所定の領域が、前記車両が走行する走行道路から分岐する分岐道路を含まないと判定された場合、前記車両から所定の範囲内に物体が存在すると判定し、
判定結果を通知する、
ことを物体判定装置が実行する、ことを特徴とする物体判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体判定装置、物体判定用コンピュータプログラム及び物体判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される自動制御システムは、車両の現在位置と、車両の目的位置と、地図情報とに基づいて、車両の走行ルートを生成し、車両をこの走行ルートに沿って走行するように制御する。
【0003】
自動制御システムは、車両と周囲の他の車両との間に所定の距離以上の間隔を維持するように車両を制御する。自動制御システムは、車両が走行している走行車線から隣接車線へ移動する時には、車両と、走行車線を走行している他の車両及び隣接車線を走行している他の車両との間に、所定の距離以上の間隔を保てるように車両を制御する。
【0004】
自動制御システムは、所定のタイミングごとに、車両に配置されるカメラ等のセンサから出力される物体検出情報を用いて、車両の周囲の他の車両を検出している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-161968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動制御システムは、車両が車線間を移動しようとした時に、センサを用いた他の車両の検出において、前回の検出時に検出されていた他の車両を、今回の検出時には見失うことが起こり得る。このような場合、自動制御システムが車線間の移動を続けると、他の車両と自車両とが接近し過ぎてしまうおそれがある。
【0007】
他の車両を見失う理由として、センサを用いた他の車両の検出に原因があることと、他の車両がセンサの検出可能な範囲外へ移動したこととが考えられる。
【0008】
そこで、本開示は、第1の検出時と、第2の検出時とに同じ物体が検出されていない場合、第2の検出時の地形的条件に基づいて同じ物体が存在するか否かを判定する物体判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一の実施形態によれば、物体判定装置が提供される。この物体判定装置は、車両に配置されるセンサから出力される物体検出情報に基づいて、車両から所定の範囲内に物体が存在するか否かを判定する物体判定装置であって、第1の検出時に検出された第1の物体検出情報、及び、第1の検出時よりも後の第2の検出時に検出された第2の物体検出情報が、同じ物体を検出しているか否かを判定する第1判定部と、第1判定部によって同じ物体が検出されていないと判定された場合に、第2の検出時における車両の位置を含む所定の領域が所定の地形的条件を満たすか否かを判定する第2判定部と、第1判定部によって同じ物体が検出されたと判定された場合、又は、第2判定部によって車両の位置を含む所定の領域が所定の地形的条件を満たすと判定された場合、車両から所定の範囲内に物体が存在すると判定する第3判定部と、第3判定部による判定結果を通知する通知部と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、この物体判定装置において、第1の検出時に検出された物体が第2の検出時に検出されない場合と、第1の検出時に検出されていない物体が第2の検出時に検出された場合とでは、所定の地形的条件は異なることが好ましい。
【0011】
また、この物体判定装置において、第1の検出時に検出された物体が第2の検出時に検出されていない場合、第2判定部は、第2の検出時における車両の位置を含む所定の領域が、第1の検出時に検出された物体が第2の検出時における所定の範囲外へ移動可能な車線又は道路を含まない場合、第2の検出時における車両の位置を含む所定の領域が所定の地形的条件を満たすと判定することが好ましい。
【0012】
また、この物体判定装置において、第1の検出時に検出されていない物体が第2の検出時に検出された場合、第2判定部は、第2の検出時における車両の位置を含む所定の領域が、車両が走行する走行道路から分岐する分岐道路を含まない場合、第2の検出時における車両の位置を含む所定の領域が所定の地形的条件を満たすと判定することが好ましい。
【0013】
また、この物体判定装置において、第1判定部によって同じ物体が検出されていないと判定され、且つ、第1の検出時に検出された物体が第2の検出時に検出されていない場合、第2の検出時に所定の範囲よりも狭い第2の範囲内に、第1の検出時に検出された物体とは異なる第2の物体が検出されたか否かを判定する第3判定部と、第2の物体が検出された場合、第1の物体検出情報、及び、第2の物体検出情報が、同じ物体を検出していると判定する第4判定部と、を有することが好ましい。
【0014】
他の実施形態によれば、物体判定用コンピュータプログラムが提供される。この物体判定用コンピュータプログラムは、車両に配置されるセンサから出力される物体検出情報に基づいて、車両から所定の範囲内に物体が存在するか否かを判定する物体判定用コンピュータプログラムであって、第1の検出時に検出された第1の物体検出情報、及び、第1の検出時よりも後の第2の検出時に検出された第2の物体検出情報が、同じ物体を検出しているか否かを判定し、同じ物体が検出されていないと判定された場合に、第2の検出時における車両の位置を含む所定の領域が所定の地形的条件を満たすか否かを判定し、同じ物体が検出されたと判定された場合、又は、車両の位置を含む所定の領域が所定の地形的条件を満たすと判定された場合、車両から所定の範囲内に物体が存在すると判定し、判定結果を通知する、ことをプロセッサに実行させることを特徴とする。
【0015】
また、他の実施形態によれば、物体判定方法が提供される。この物体判定方法では、車両に配置されるセンサから出力される物体検出情報に基づいて、車両から所定の範囲内に物体が存在するか否かを判定する物体判定方法であって、第1の検出時に検出された第1の物体検出情報、及び、第1の検出時よりも後の第2の検出時に検出された第2の物体検出情報が、同じ物体を検出しているか否かを判定し、同じ物体が検出されていないと判定された場合に、第2の検出時における車両の位置を含む所定の領域が所定の地形的条件を満たすか否かを判定し、同じ物体が検出されたと判定された場合、又は、車両の位置を含む所定の領域が所定の地形的条件を満たすと判定された場合、車両から所定の範囲内に物体が存在すると判定し、判定結果を通知する、ことを物体判定装置が実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本開示に係る物体判定装置は、第1の検出時と、第2の検出時とに同じ物体が検出されていない場合、第2の検出時の地形的条件に基づいて同じ物体が存在するか否かを判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の物体判定装置を含む車両制御システムの動作の概要を説明する図である。
図2】本実施形態の物体判定装置が実装される車両の概略構成図である。
図3】本実施形態の物体判定装置の物体判定処理に関する動作フローチャートの一例である。
図4】物体判定装置の物体判定処理の動作例を説明する図(その1)である。
図5】物体判定装置の物体判定処理の動作例を説明する図(その2)である。
図6】物体判定装置の物体判定処理の動作例を説明する図(その3)である。
図7】物体判定装置の物体判定処理の動作例を説明する図(その4)である。
図8】物体判定装置の物体判定処理の動作例を説明する図(その5)である。
図9】物体判定装置の物体判定処理の動作例を説明する図(その6)である。
図10】本実施形態の物体判定装置の変型例の物体判定処理に関する動作フローチャートの一例である。
図11】物体判定装置の変型例の物体判定処理の動作例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本実施形態の物体判定装置13を含む車両制御システム1の動作の概要を説明する図である。以下、図1を参照しながら、本明細書に開示する物体判定装置13の物体判定処理に関する動作の概要を説明する。
【0019】
車両10は、道路50を走行している。道路50は、3つの車線51、52、53を有し、車線51と車線52とは車線区画線54により区画され、車線52と車線53とは車線区画線55により区画される。車両10は車線52上を走行している。
【0020】
物体判定装置13は、所定のタイミングごとに、車両10に配置されるカメラ2等のセンサから出力されるセンサ情報(物体検出情報の一例である)に基づいて、車両10から検出範囲L内の他の物体を検出する。図1に示す例では、物体判定装置13は、車両10から検出範囲L内に車両30が存在すると判定する。物体判定装置13は、検出された車両30の位置及び走行車線等を示す物体判定情報を、車両10の走行車線計画を生成する走行車線計画装置14へ通知する。物体判定装置13は、他の物体を識別する物体識別情報(物体識別ID)を用いて、車両30を追跡する。
【0021】
物体判定装置13は、前回の検出時に検出されたセンサ情報、及び、今回の検出時に検出されたセンサ情報が、同じ車両30を検出しているか否かを判定する。物体判定装置13は、前回の検出時に検出された車両30(所定の識別IDにより識別される)が、今回の検出時に検出されなかった場合、同じ物体が検出されていないと判定する。
【0022】
図1に示す例では、前回の検出時に検出された車両30が今回の検出時には検出されていない。物体判定装置13は、同じ物体が検出されていないので、今回の検出時における車両10の位置を含む領域Mが所定の地形的条件を満たすか否かを判定する。領域Mは、例えば検出範囲Lを含むことが好ましい。
【0023】
図1に示す例では、今回の検出時における車両10の位置を含む領域Mは、前回の検出時に検出された車両30が今回の検出時における検出範囲Lの外へ移動可能な車線又は道路を含まないので、車両30が今回の検出時に検出されなかった理由として、車両30がセンサ2等の検出範囲Lの外へ移動した可能性は低い。物体判定装置13は、車両10の位置を含む領域Mが所定の地形的条件を満たすと判定する。
【0024】
車両10の位置を含む領域Mが所定の地形的条件を満たすので、物体判定装置13は、車両10から検出範囲L内に車両10が存在すると判定する。
【0025】
物体判定装置13は、車両30が車両10から検出範囲L内に存在することを示す物体判定情報を、走行車線計画装置14へ通知する。ただし、この物体判定情報は、車両30の位置及び走行車線等を示す情報を含んではいない。
【0026】
車両10から検出範囲L内に存在することのみを示す物体判定情報が通知された走行車線計画装置14は、例えば、現在の走行車線計画が車両10の車線52から車線53への移動を含んでいた場合、車線変更の動作の開始を、所定の時間遅らせるように車両10の新たな走行車線計画を生成する。車両10が車線間の移動をすぐに実行した場合、車両10と車両30とが接近し過ぎてしまうおそれがあるからでる。
【0027】
また、物体判定装置13は、前回の検出時に検出された車両30が今回の検出時にも検出された場合には、検出された車両30の位置及び走行車線等を示す物体判定情報を、走行車線計画装置14へ通知する。
【0028】
一方、車両10の位置を含む領域Mが所定の地形的条件を満たさない場合、車両30は、センサ2等の検出可能な範囲外へ移動したため、今回の検出時に検出されなかったと考えられる。
【0029】
物体判定装置13は、前回の検出時と今回の検出時とに同じ物体が検出されていない場合、今回の検出時の地形的条件に基づいて同じ物体が存在するか否かを判定できるので、正確な物体の検出結果を車両の制御に反映できる。
【0030】
図2は、車両制御システム1が実装される車両10の概略構成図である。車両制御システム1は、カメラ2a、2bと、LiDARセンサ3a~3dと、測位情報受信機4と、ナビゲーション装置5と、ユーザインターフェース(UI)6と、地図情報記憶装置11と、位置推定装置12と、物体判定装置13と、走行車線計画装置14と、運転計画装置15と、車両制御装置16等とを有する。更に、車両制御システム1は、レーダセンサといった、車両10の周囲の物体までの距離等を測定するための他の測距センサ(図示せず)を有してもよい。
【0031】
カメラ2a、2bと、LiDARセンサ3a~3dと、測位情報受信機4と、ナビゲーション装置5と、UI6と、地図情報記憶装置11と、位置推定装置12と、物体判定装置13と、走行車線計画装置14と、運転計画装置15と、車両制御装置16とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワーク18を介して通信可能に接続される。
【0032】
カメラ2a、2bは、車両10に設けられる撮像部の一例である。カメラ2aは、車両10の前方を向くように、車両10に取り付けられる。カメラ2bは、車両10の後方を向くように、車両10に取り付けられる。カメラ2a、2bのそれぞれは、例えば所定の周期を有するカメラ画像撮影時刻に、車両10の前方又は後方の所定の領域の環境が表されたカメラ画像を撮影する。カメラ画像は、物体検出情報の一例であるカメラ画像には、車両10の前方又は後方の所定の領域内に含まれる道路と、その路面上の車線区画線等の道路特徴物が表わされ得る。カメラ2aにより撮影されるカメラ画像には、車両10の左前方、前方及び右前方に位置する他の車両が表され得る。カメラ2bにより撮影されるカメラ画像には、車両10の左後方、後方及び右後方に位置する他の車両が表され得る。カメラ2a、2bは、CCDあるいはC-MOS等、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する撮像光学系を有する。
【0033】
カメラ2a、2bは、カメラ画像を撮影する度に、カメラ画像及びカメラ画像が撮影されたカメラ画像撮影時刻を、車内ネットワーク18を介して、位置推定装置12及び物体判定装置13等へ出力する。カメラ画像は、位置推定装置12において、車両10の位置を推定する処理に使用される。また、カメラ画像は、物体判定装置13において、車両10の周囲の他の物体を検出する処理に使用される。
【0034】
LiDARセンサ3a、3b、3c、3dのそれぞれは、車両10の前方、後方、左側方、右側方を向くように、例えば、車両10の外面に取り付けられる。LiDARセンサ3a~3dのそれぞれは、所定の周期で設定される反射波情報取得時刻において、車両10の前方、後方、左側方、右側方に向けてパルス状のレーザを同期して発射して、反射物により反射された反射波を受信する。反射波が戻ってくるのに要する時間は、レーザが照射された方向に位置する他の物体等と車両10との間の距離情報を有する。LiDARセンサ3a、3bのそれぞれは、レーザの照射方向及び反射波が戻ってくるのに要する時間を含む反射波情報を、レーザを発射した反射波情報取得時刻と共に、車内ネットワーク18を介して物体判定装置13へ出力する。反射波情報は、物体検出情報の一例である。反射波情報は、物体判定装置13において、車両10の周囲の他の物体を検出する処理に使用される。反射波情報取得時刻は、例えば、カメラ撮影時刻と一致させることが好ましい。
【0035】
測位情報受信機4は、車両10の現在位置を表す測位情報を出力する。例えば、測位情報受信機4は、GNSS受信機とすることができる。測位情報受信機4は、所定の受信周期で測位情報を取得する度に、測位情報及び測位情報を取得した測位情報取得時刻を、ナビゲーション装置5及び地図情報記憶装置11等へ出力する。
【0036】
ナビゲーション装置5は、ナビゲーション用地図情報と、UI6から入力された車両10の目的位置と、測位情報受信機4から入力された車両10の現在位置を表す測位情報とに基づいて、車両10の現在位置から目的位置までのナビルートを生成する。ナビゲーション装置5は、目的位置が新しく設定された場合、又は、車両10の現在位置がナビルートから外れた場合等に、車両10のナビルートを新たに生成する。ナビゲーション装置5は、ナビルートを生成する度に、そのナビルートを、車内ネットワーク18を介して、位置推定装置12及び走行車線計画装置14等へ出力する。
【0037】
UI6は、通知部の一例である。UI6は、ナビゲーション装置5等に制御されて、車両10の走行情報等をドライバへ通知する。また、UI6は、ドライバから車両10に対する操作に応じた操作信号を生成する。車両10の走行情報は、車両の現在位置、ナビルート等の車両の現在及び将来の経路に関する情報等を含む。UI6は、走行情報等を表示するために、液晶ディスプレイ又はタッチパネル等の表示装置6aを有する。また、UI6は、走行情報等をドライバへ通知するための音響出力装置(図示せず)を有していてもよい。また、UI6は、ドライバから車両10への操作情報を入力する入力装置として、例えば、タッチパネル又は操作ボタンを有する。操作情報として、例えば、目的位置、経由地、車両速度及び車両10のその他の制御情報等が挙げられる。UI6は、入力された操作情報を、車内ネットワーク18を介してナビゲーション装置5及び車両制御装置16等へ出力する。
【0038】
地図情報記憶装置11は、車両10の現在位置を含む相対的に広い範囲(例えば10~30km四方の範囲)の広域の地図情報を記憶する。この地図情報は、路面の3次元情報と、道路上の車線区画線等の道路特徴物、構造物の種類及び位置を表す情報と、道路の法定速度等を含む高精度地図情報を有する。地図情報記憶装置11は、車両10の現在位置に応じて、車両10に搭載される無線通信装置(図示せず)を介した無線通信により、基地局を介して外部のサーバから広域の地図情報を受信して記憶装置に記憶する。地図情報記憶装置11は、測位情報受信機4から測位情報を入力する度に、記憶している広域の地図情報を参照して、測位情報により表される現在位置を含む相対的に狭い領域(例えば、100m~10km四方の範囲)の地図情報を、車内ネットワーク18を介して、位置推定装置12、物体判定装置13、走行車線計画装置14、運転計画装置15及び車両制御装置16等へ出力する。
【0039】
位置推定装置12は、カメラ2aが撮影したカメラ画像内に表された車両10の周囲の道路特徴物に基づいて、カメラ画像撮影時刻における車両10の位置を推定する。例えば、位置推定装置12は、カメラ画像内に識別した車線区画線と、地図情報記憶装置11から入力された地図情報に表された車線区画線とを対比して、カメラ画像撮影時刻における車両10の推定位置及び推定方位角を求める。また、位置推定装置12は、地図情報に表された車線区画線と、車両10の推定位置及び推定方位角とに基づいて、車両10が位置する道路上の走行車線を推定する。位置推定装置12は、カメラ画像撮影時刻における車両10の推定位置、推定方位角及び走行車線を求める度に、これらの情報を、物体判定装置13、走行車線計画装置14、運転計画装置15及び車両制御装置16等へ出力する。なお、位置推定装置12は、カメラ2a及びカメラ2bが撮影した2つのカメラ画像に基づいて、車両10の位置を推定してもよい。
【0040】
物体判定装置13は、物体検出処理と、判定処理と、通知処理とを実行する。そのために、物体判定装置13は、通信インターフェース(IF)21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。通信インターフェース21と、メモリ22と、プロセッサ23とは、信号線24を介して接続されている。通信インターフェース21は、物体判定装置13を車内ネットワーク18に接続するためのインターフェース回路を有する。
【0041】
物体判定装置13が有する機能の全て又は一部は、例えば、プロセッサ23上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。プロセッサ23は、物体検出部230と、判定部231と、通知部232とを有する。又は、プロセッサ23が有する機能モジュールは、プロセッサ23に設けられる、専用の演算回路であってもよい。プロセッサ23は、1個又は複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ23は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路を更に有していてもよい。メモリ22は、記憶部の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ22は、プロセッサ23により実行される情報処理において使用されるアプリケーションのコンピュータプログラム及び各種のデータを記憶する。
【0042】
物体検出部230は、所定の周期を有する物体検出時刻に、車両10の周囲の他の物体を検出する物体検出処理を実行する。物体検出時刻の周期は、カメラ撮影時刻及び反射波情報取得時刻の周期に基づいて決定される。物体検出部230は、カメラ2aが撮影したカメラ画像に基づいて、車両10の左前方、前方及び右前方の他の物体及びその種類を検出する。また、物体検出部230は、カメラ2bが撮影したカメラ画像に基づいて、車両10の左後方、後方及び右後方の他の物体及びその種類を検出する。他の物体には、車両10の周囲を走行する他の車両が含まれる。物体検出部230は、例えば、カメラ画像を入力することで画像に表された物体を検出する識別器を有する。識別器として、例えば、入力された画像から、その画像に表された物体を検出するように予め学習されたディープニューラルネットワーク(DNN)を用いることができる。物体検出部230は、DNN以外の識別器を用いてもよい。例えば、物体検出部230は、識別器として、カメラ画像上に設定されるウィンドウから算出される特徴量(例えば、Histograms of Oriented Gradients, HOG)を入力として、そのウィンドウに検出対象となる物体が表される確信度を出力するように予め学習されたサポートベクトルマシン(SVM)を用いてもよい。あるいはまた、物体検出部230は、検出対象となる物体が表されたテンプレートと画像との間でテンプレートマッチングを行うことで、物体領域を検出してもよい。
【0043】
また、物体検出部230は、LiDARセンサ3aが出力する反射波情報に基づいて、車両10の左前方、前方及び右前方の他の物体を検出し、LiDARセンサ3bが出力する反射波情報に基づいて、車両10の左後方、後方及び右後方の他の物体を検出する。また、物体検出部230は、LiDARセンサ3cが出力する反射波情報に基づいて、車両10の左側方の他の物体を検出し、LiDARセンサ3dが出力する反射波情報に基づいて、車両10の右側方の他の物体を検出する。
【0044】
物体検出部230は、カメラ画像内の他の物体の位置に基づいて、車両10に対する他の物体の方位を求め、この方位と、LiDARセンサ3a~3dが出力する反射波情報とに基づいて、この他の物体と車両10との間の距離を求める。物体検出部230は、車両10の現在位置と、車両10に対する他の物体までの距離及び方位に基づいて、例えば世界座標系で表された、他の物体の位置を推定する。また、物体検出部230は、オプティカルフローに基づく追跡処理に従って、最新のカメラ画像から検出された他の物体を過去の画像から検出された物体と対応付けることで、最新の画像から検出された他の物体を追跡する。そして、物体検出部230は、過去の画像から最新の画像における物体の世界座標系で表された位置に基づいて、追跡中の他の物体の軌跡を求める。物体検出部230は、時間経過に伴う他の物体の位置の変化に基づいて、車両10に対するその物体の速度を推定する。また、物体検出部230は、時間経過に伴う他の物体の速度の変化に基づいて、他の物体の加速度を推定できる。更に、物体検出部230は、地図情報に表された車線区画線と、他の物体の位置とに基づいて、他の物体が走行している走行車線を特定する。例えば、物体検出部230は、他の物体の水平方向の中心位置を挟むように位置する互いに隣接する二つの車線区画線で特定される車線を他の物体が走行していると判定する。
【0045】
物体検出部230は、他の車両等を含む移動物体を、他の物体として検出した場合、他の物体を識別する物体識別情報を付して、この他の物体を追跡する。物体検出部230は、物体識別情報が付された他の物体を所定の期間検出しない場合、この他の物体を見失ったと判定する。一方、物体検出部230は、ガードレール又は側壁等の構造物を、他の物体として検出した場合、追跡を行わない。
【0046】
物体検出部230は、検出された他の物体の種類を示す情報と、その物体識別情報と、その位置を示す情報、速度、加速度及び走行車線を示す情報を含む物体判定情報を、判定部231及び通知部232へ通知する。物体検出部230は、追跡しない他の物体については、物体識別情報を含まない物体判定情報を、走行車線計画装置14、運転計画装置15及び車両制御装置16等へ出力する。物体検出部230が他の物体を検出可能な検出範囲(例えば、図1の検出範囲L)は、カメラ2a、2b及びLiDARセンサ3a~3dの設置条件及び分解能等に基づいて決定される。物体判定装置13における他の動作の詳細については、後述する。
【0047】
走行車線計画装置14は、所定の周期で設定される走行車線計画生成時刻において、ナビルートから選択された直近の運転区間(例えば、10km)において、地図情報と、ナビルート及び周辺環境情報と、車両10の現在位置とに基づいて、車両10が走行する道路内の車線を選択して、車両10が走行する予定走行車線を表す走行車線計画を生成する。走行車線計画装置14は、例えば、車両10が追い越し車線以外の車線を走行するように、走行車線計画を生成する。走行車線計画装置14は、走行車線計画を生成する度に、この走行車線計画を運転計画装置15へ出力する。
【0048】
また、走行車線計画装置14は、ナビルートから選択された直近の運転区間において、走行車線計画と、地図情報と、ナビルートと、車両10の現在位置とに基づいて、車線変更の要否を判定し、判定結果に応じて車線変更計画を生成する。車線変更計画は、車両10が走行する車線上において隣接する車線へ移動することを予定する車線変更予定区間を含む。具体的には、走行車線計画装置14は、ナビルートと車両10の現在位置とに基づいて、車両10の目的位置へ向かう車線へ移動するために、車線変更の要否を判定する。走行車線計画装置14は、車両10が現在走行している走行道路から合流先の他の道路へ進入すること(合流)、及び、車両10が走行道路から分岐先の他の道路へ退出すること(分岐)の有無を判定する。合流及び分岐では、車両が走行道路の車線から他の道路の車線へ移動するので、車線変更が行われる。走行車線計画装置14は、車線変更の要否の判定に、周辺環境情報又は車両状態情報を更に利用してもよい。周辺環境情報は、車両の10の周囲を走行する他の車両の位置及び速度等を含む。車両状態情報は、車両10の現在位置、車両速度、加速度及び進行方向等を含む。また、走行車線計画装置14は、ドライバの要求に応じて、車線変更計画を生成する。車両10の車両速度及び加速度を表す情報は、車両10に搭載されるセンサ(図示せず)を用いて取得される。
【0049】
運転計画装置15は、所定の周期で設定される運転計画生成時刻において、走行車線計画と、地図情報と、車両10の現在位置と、周辺環境情報と、車両状態情報とに基づいて、所定の時間(例えば、5秒)先までの車両10の予定走行軌跡を表す運転計画を生成する運転計画処理を実行する。運転計画は、現時刻から所定時間先までの各時刻における、車両10の目標位置及びこの目標位置における目標車両速度の集合として表される。運転計画が生成される周期は、走行車線計画が生成される周期よりも短いことが好ましい。運転計画装置15は、車両10と他の車両との間に所定の距離以上の間隔を維持するように運転計画を生成する。運転計画装置15は、運転計画を生成する度に、その運転計画を車両制御装置16へ出力する。
【0050】
車両制御装置16は、車両10の現在位置と、車両速度及びヨーレートと、運転計画装置15によって生成された運転計画とに基づいて、車両10の各部を制御する。例えば、車両制御装置16は、運転計画、車両10の車両速度及びヨーレートに従って、車両10の操舵角、加速度及び角加速度を求め、その操舵角、加速度及び角加速度となるように、操舵量、アクセル開度又はブレーキ量を設定する。そして車両制御装置16は、設定された操舵量に応じた制御信号を、車両10の操舵輪を制御するアクチュエータ(図示せず)へ車内ネットワーク18を介して出力する。また、車両制御装置16は、設定されたアクセル開度に従って燃料噴射量を求め、その燃料噴射量に応じた制御信号を車両10のエンジン等の駆動装置(図示せず)へ車内ネットワーク18を介して出力する。あるいは、車両制御装置16は、設定されたブレーキ量に応じた制御信号を車両10のブレーキ(図示せず)へ車内ネットワーク18を介して出力する。
【0051】
図2では、地図情報記憶装置11と、位置推定装置12と、物体判定装置13と、走行車線計画装置14と、運転計画装置15と、車両制御装置16とは、別々の装置(例えば、ECU)として説明されているが、これらの装置の全て又は一部は、一つの装置として構成されていてもよい。
【0052】
図3は、本実施形態の物体判定装置13の物体判定処理に関する動作フローチャートの一例である。以下、図3を参照しながら、物体判定装置13の物体判定処理について説明する。物体判定装置13は、所定の周期を有する物体判定時刻に、図3に示される動作フローチャートに従って物体判定処理を実行する。物体判定時刻の周期は、物体検出時刻の周期と同じか、又は、物体検出時刻の周期よりも長いことが好ましい。前回の物体判定時刻は、第1の検出時の一例であり、今回の物体判定時刻は、第2の検出時の一例である。
【0053】
まず、判定部231は、前回の検出時に検出された物体検出情報、及び、今回の検出時に検出された物体検出情報が、同じ物体を検出しているか否かを判定する(ステップS101)。判定部231は、前回の物体判定時刻から後で今回の物体判定時刻の時点までに、物体判定装置13から入力された物体判定情報を、他の物体の今回の検出時の検出結果とする。また、判定部231は、前々回の物体判定時刻から後で前回の物体判定時刻の時点までに物体判定装置13から入力された物体判定情報を、他の物体の前回の検出時の検出結果とする。
【0054】
前回の検出結果に含まれる物体識別情報が今回の検出結果に含まれている場合、判定部231は、前回の検出時に検出された物体検出情報、及び、今回の検出時に検出された物体検出情報が、同じ物体を検出していると判定する(ステップS101-Yes)。
【0055】
一方、前回の検出結果に含まれる物体識別情報が今回の検出結果には含まれていないか、又は、前回の検出結果に含まれていない物体識別情報が今回の検出結果に含まれている場合、判定部231は、同じ物体を検出していないと判定する(ステップS101-No)。
【0056】
同じ物体が検出されていないと判定された場合(ステップS101-No)、判定部231は、地図情報に基づいて、今回の検出時における車両10の位置を含む所定の領域が所定の地形的条件を満たすか否かを判定する(ステップS102)。この所定の地形的条件は、前回の検出時に検出された物体が今回の検出時に検出されない場合と、前回の検出時に検出されていない物体が今回の検出時に検出された場合とでは異なる。
【0057】
前回の検出結果に含まれる物体識別情報が今回の検出結果には含まれていない理由として、今回の検出時に検出された物体検出情報に原因があることと、他の物体がセンサの検出可能な範囲外へ移動したことが考えられる。他の物体がセンサの検出可能な範囲外へ移動したことにより、他の物体が今回の検出時に検出されない場合、検出結果は妥当である。一方、今回の検出時に検出された物体検出情報に起因して、他の物体が今回の検出時に検出されない場合、検出結果は不正である。
【0058】
また、前回の検出結果に含まれていない物体識別情報が今回の検出結果に含まれている理由として、追跡すべき新たな他の物体が物体検出部230の検出範囲(例えば、図1の検出範囲L)に現れたことと、物体識別情報を付して追跡するべきではない他の物体(ガードレール又は側壁等の構造物)が誤って、追跡すべき他の物体として検出されたこととが考えられる。追跡すべき新たな他の物体が物体判定装置13の検出範囲に現れたことにより、他の物体が今回の検出時に検出された場合、検出結果は妥当である。一方、物体識別情報を付して追跡するべきではない他の物体(ガードレール又は側壁等の構造物)が誤って、追跡すべき他の物体として検出された場合、検出結果は不正である。この場合、今回の検出時に検出された物体検出情報に原因があるともいえる。
【0059】
そこで、所定の領域は、検出結果が妥当であるか又は不正であるかを判定できるように決定されることが好ましい。例えば、所定の領域(例えば、図1の領域M)は、物体検出部230が他の物体を検出可能な検出範囲(例えば、図1の検出範囲L)を含むことが好ましい。
【0060】
なお、判定部231は、地図情報と共に、又は、地図情報に変えて、物体検出部230により検出された道路上の車線区画線等の道路特徴物又はガードレール又は側壁等の構造物に基づいて、今回の検出時における車両10の位置を含む所定の領域が所定の地形的条件を満たすか否かを判定してもよい。
【0061】
所定の領域が所定の地形的条件を満たす場合(ステップS102-Yes)、判定部231は、車両10から所定の範囲内に他の物体が存在すると判定する(ステップS103)。
【0062】
通知部232は、判定部231による判定結果を、走行車線計画装置14へ通知(ステップS104)して、一連の処理は終了する。前回の検出時に検出された物体が今回の検出時に検出されない場合、通知部232は、前回の検出時に検出された他の物体が車両10から検出範囲L内に存在することを示す物体判定情報を、走行車線計画装置14、運転計画装置15及び車両制御装置16等へ出力(通知)する。ただし、この物体判定情報は、他の物体の位置及び走行車線等を示す情報を含んではいない。
【0063】
また、前回の検出時に検出されていない物体が今回の検出時に検出された場合にも、通知部232は、今回の検出時に検出された他の物体が車両10から所定の範囲L内に存在することを示す物体判定情報を、走行車線計画装置14、運転計画装置15及び車両制御装置16等へ出力(通知)する。この物体判定情報は、検出された他の物体の種類を示す情報と、その物体識別情報と、その位置を示す情報、速度、加速度及び走行車線を示す情報を含む。
【0064】
更に、前回の検出時に検出された物体検出情報、及び、今回の検出時に検出された物体検出情報が、同じ物体を検出している場合(ステップS101-Yes)にも、通知部232は、今回の検出時に検出された他の物体が車両10から所定の範囲L内に存在することを示す物体判定情報を、走行車線計画装置14、運転計画装置15及び車両制御装置16等へ出力(通知)する。この物体判定情報は、検出された他の物体の種類を示す情報と、その物体識別情報と、その位置を示す情報、速度、加速度及び走行車線を示す情報を含む。
【0065】
一方、所定の領域が所定の地形的条件を満たさない場合(ステップS102-No)、判定部231は、他の物体は存在しないと判定して(ステップS105)、一連の処理は終了する。
【0066】
以下、物体判定装置13の物体判定処理の第1の動作例を、図4図6を参照しながら以下に説明する。
【0067】
図4に示す第1の動作例では、図1と同様に、車両10は、道路50の車線52上を走行している。前回の検出時の検出結果では、検出範囲L内において、車線53上を走行する車両30が検出されている。車両30は、所定の物体識別情報により識別される。
【0068】
図5に示すように、今回の検出時の検出結果では、検出範囲L内において、所定の物体識別情報により識別される車両30は検出されなかった。物体判定装置13は、前回の検出時に検出された物体検出情報、及び、今回の検出時に検出された物体検出情報が、同じ物体を検出していないと判定する。
【0069】
図5に示す例では、今回の検出時における車両10の位置を含む領域Mは、前回の検出時に検出された車両30が今回の検出時における検出範囲L外へ移動可能な車線又は道路を含まない。そのため、前回の物体判定情報に含まれる物体識別情報が今回の物体判定情報には含まれていない理由として、センサを用いた他の物体の検出に原因があると考えられる。前回の検出時に検出された車両30が今回の検出時に検出されない場合、検出結果は不正であるので、前回の検出時に検出された車両30が車両10から検出範囲L内に存在すると考えられる。
【0070】
物体判定装置13は、今回の検出時における車両10の位置を含む領域Mが所定の地形的条件を満たすと判定して、前回の検出時に検出された車両30が車両10から検出範囲L内に存在することを示す物体判定情報を、走行車線計画装置14、運転計画装置15及び車両制御装置16等へ出力(通知)する。ただし、この物体判定情報は、他の物体の位置及び走行車線等を示す情報を含んではいない。
【0071】
走行車線計画装置14は、走行車線計画が車両10の車線間の移動を含む場合、車線変更の動作の開始を、所定の時間遅らせるように車両10の走行車線計画を生成する。所定の時間は、物体検出時刻の周期の数倍(例えば、2~5倍)であることが好ましい。これにより、次回の検出時には、車両30が再び検出されれば、検出された車両30に対応するように、走行車線計画を生成できる。
【0072】
なお、走行車線計画装置14は、車両10が車線52から車線51へ車線を移動することを計画しており、前回の物体判定情報に含まれる物体識別情報により識別される車両30が、車両10の移動先ではない車線53を走行していた時には、車線変更の動作の開始を変更しないようにしてもよい。
【0073】
一方、図6に示す例では、今回の検出時における車両10の位置を含む領域Mは、前回の検出時に検出された車両30が今回の検出時における検出範囲L外へ移動可能な車線61及び道路60を含む。道路60は、分岐位置61において道路50から分岐する。そのため、前回の検出時に検出された車両30が今回の検出時に検出されない理由として、車両30がセンサの検出範囲L外へ移動したことが考えられる。
【0074】
物体判定装置13は、今回の検出時における車両10の位置を含む領域Mが所定の地形的条件を満たさないと判定する。前回の検出時に検出された車両30が今回の検出時に検出されない検出結果は妥当であるので、今回の検出時には、車両10から所定の範囲L内に車両30は存在しないと考えられる。
【0075】
以下、物体判定装置13の物体判定処理の第2の動作例を、図7図9を参照しながら以下に説明する。
【0076】
図7に示す第2の動作例では、車両10は、道路50の車線51上を走行している。前回の検出時の検出結果では、検出範囲L内において、物体識別情報により識別される他の物体は検出されていない。
【0077】
図8に示すように、今回の検出時の検出結果では、検出範囲L内において、所定の物体識別情報により識別される他の物体31が検出される。物体判定装置13は、前回の検出時に検出された物体検出情報、及び、今回の検出時に検出された物体検出情報が、同じ物体を検出していないと判定する。
【0078】
図8に示す例では、今回の検出時における車両10の位置を含む領域Mは、車両10が走行する道路50から分岐する分岐道路70を含む。分岐道路70は、分岐位置71において道路50から分岐する。そのため、前回の物体判定情報に含まれていない物体識別情報が今回の物体判定情報に含まれている理由として、物体識別情報を付して追跡するべきではない他の物体31(ガードレール又は側壁等の構造物)が誤って、追跡すべき他の物体31として検出されたこととが考えられる。例えば、車両10が、分岐位置71において、道路50から分岐道路70へ退出しようとしている場合、分岐道路70の側壁と、車両10の進行方向とが平行ではなくなるため、分岐道路70の側壁が車両10に対して相対速度を有する移動物体として検出される場合がある。
【0079】
物体判定装置13は、今回の検出時における車両10の位置を含む領域Mが所定の地形的条件を満たさないと判定する。前回の検出時に検出されていない他の物体31が今回の検出時に検出された検出結果は不正であるので、今回の検出時には、車両10から所定の範囲L内に存在する他の物体は存在しないと考えられる。
【0080】
走行車線計画装置14は、走行車線計画が車両10の道路50の車線51から分岐道路70の車線72への移動を含む場合、道路50から道路70への退出を含む車両10の走行車線計画を生成する。
【0081】
一方、図9に示す例では、今回の検出時の検出結果では、検出範囲L内において、所定の物体識別情報により識別される車両32が走行車線52上に検出される。
【0082】
今回の検出時における車両10の位置を含む領域Mは、車両10が走行する道路50から分岐する分岐道路70を含まない。今回の検出時には、追跡すべき新たな車両32が物体検出部230の検出範囲Lに現れている。前回の検出時に検出されていない車両32が今回の検出時に検出された検出結果は妥当であるので、追跡すべき新たな車両32が物体検出部230の検出範囲L内に現れたと考えられる。
【0083】
物体判定装置13は、今回の検出時における車両10の位置を含む領域Mが所定の地形的条件を満たすと判定する。物体判定装置13は、今回の検出時に検出された車両32が車両10から所定の範囲L内に存在することを示す物体判定情報を、走行車線計画装置14、運転計画装置15及び車両制御装置16等へ出力(通知)する。この物体判定情報は、検出された車両32の種類を示す情報と、その物体識別情報と、その位置を示す情報、速度、加速度及び走行車線を示す情報を含む。
【0084】
上述した本実施形態の物体判定装置によれば、第1の検出時と、第2の検出時とに同じ物体が検出されていない場合、第2の検出時の地形的条件に基づいて同じ物体が存在するか否かを判定できるので、正確な物体の検出結果を車両の制御に反映できる。
【0085】
次に、上述した本実施形態の物体判定装置の変型例を、図10及び図11を参照しながら、以下に説明する。
【0086】
図10は、本実施形態の物体判定装置の変型例の物体判定処理に関する動作フローチャートの一例である。物体判定装置13は、所定の周期を有する物体判定時刻に、図10に示される動作フローチャートに従って物体判定処理を実行する。物体判定時刻の周期は、物体検出時刻の周期よりも長いことが好ましい。
【0087】
図10におけるステップS201の処理は、上述した図3におけるステップS101と同じである。
【0088】
前回の検出時に検出された物体検出情報、及び、今回の検出時に検出された物体検出情報が、同じ物体を検出していない場合(ステップS201-No)、判定部231は、前回の検出時に検出されていない他の物体が今回の検出時に検出されたか否かを判定する(ステップS202)。この判定は、判定部231は、前回の検出時に検出された他の物体が今回の検出時に検出されているか否かを判定することに対応する。
【0089】
前回の検出時に検出されていない他の物体が今回の検出時にも検出されていない場合(ステップS202-No)、判定部231は、今回の検出時に検出範囲Lよりも狭い第2の検出範囲N(図11参照)内に、前回の検出時に検出された所定の物体識別情報により識別される他の物体とは異なる他の物体が検出されたか否かを判定する(ステップS203)。なお、(ステップS202-No)は、前回の検出時に検出された他の物体が今回の検出時に検出されたことに対応する。
【0090】
第2の検出範囲に他の物体が検出された場合(ステップS203-Yes)、判定部231は、前回の検出時の検出結果と、前回の検出時に検出された物体検出情報、及び、今回の検出時に検出された物体検出情報が、同じ物体を検出していると判定して(ステップS204)、処理はステップS207へ進む。
【0091】
一方、第2の検出範囲に他の物体が検出されていない場合(ステップS203-No)又は、前回の検出時に検出されない他の物体が今回の検出時に検出された場合(前回の検出時に検出された他の物体が今回の検出時に検出されていない場合)(ステップS202-Yes)、処理はステップS205へ進む。図10におけるステップS205~ステップS208の処理は、上述した図3におけるステップS102~ステップS105と同じである。
【0092】
以下、物体判定装置13の変型例の物体判定処理の動作例を、図4及び図11を参照しながら以下に説明する。
【0093】
図4に示すように、前回の検出時の検出結果では、検出範囲L内において、車線53上を走行する車両30が検出されている。車両30は、所定の物体識別情報により識別される。
【0094】
図11に示すように、今回の検出時の検出結果では、検出範囲L内において、所定の物体識別情報により識別される車両30は検出されなかったが、第2の検出範囲N内に、前回の検出時に検出された車両30とは異なる車両33が検出される。車両33は、車両30とは異なる物体識別情報により識別される。
【0095】
第2の検出範囲Nは、車両10の位置と、地図情報との関係から、LiDARセンサ3a~3dのような反射波に基づいて他の物体を検出するセンサが、他の物体の誤って検出したり、見失ったりし易い領域であることが好ましい。例えば、車両10の側方の領域では、ガードレール又は壁等の構造物に反射された反射波が多いので、他の物体を誤って検出し易い領域である。従って、車両10の側方は、第2の検出範囲Nとなり得る。一方、車両の前方及び後方は、他の車両がいなければ反射波は生じないので、他の物体を誤って検出し難い領域である。
【0096】
図11に示す例では、第2の検出範囲Nは、車両10の右側方に設定される。第2の検出範囲Nの大きさは、例えば、一台の他の車両(普通自動車)を含む程度に決定することができる。なお、第2の検出範囲は、車両10の左側方にも設定されてもよい。第2の検出範囲Nは、検出範囲Lに含まれる。
【0097】
車両30は失われたが、車両33は、車両30と同じ車両であると可能性が高い。そこで、物体判定装置13は、前回の検出時に検出された物体検出情報、及び、今回の検出時に検出された物体検出情報が、同じ物体を検出していると判定する。
【0098】
物体判定装置13は、車両33に対して、車両30の物体識別情報を付す。今回の検出時に検出された車両30(車両33)が車両10から所定の範囲L内に存在することを示す物体判定情報を、走行車線計画装置14、運転計画装置15及び車両制御装置16等へ出力(通知)する。この物体判定情報は、検出された車両30(車両33)の種類を示す情報と、その物体識別情報と、その位置を示す情報、速度、加速度及び走行車線を示す情報を含む。
【0099】
本開示では、上述した実施形態の物体判定装置、物体判定用コンピュータプログラム及び物体判定方法は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。また、本開示の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0100】
例えば、第1の検出時は前回の検出時であり、第2の検出時は今回の検出時であったが、第1の検出時及び第2の検出時は、過去から現在までの時点を含む所定のタイミングであればよい。
【0101】
また、上述した実施形態では、カメラ及びLiDARセンサにより出力される物体検出情報を用いて、他の物体が検出されていたが、他の物体は、カメラ又はLiDARセンサのうちの一つのセンサにより出力される物体検出情報を用いて検出されてもよい。
【0102】
また、上述した実施形態では、物体検出部と、判定部と、通知部とが、一つの装置に組み込まれていたが、物体検出部と、判定部及び通知部とは、異なる装置に組み込まれていてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 車両制御システム
2a、2b カメラ
3a~3d LiDARセンサ
4 測位情報受信機
5 ナビゲーション装置
6 ユーザインターフェース
6a 表示装置
10 車両
11 地図情報記憶装置
12 位置推定装置
13 物体判定装置
14 走行車線計画装置
15 運転計画装置
16 車両制御装置
18 車内ネットワーク
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
230 物体検出部
231 判定部
232 通知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11