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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】通信制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/40 20160101AFI20241016BHJP
   B60L 53/126 20190101ALI20241016BHJP
   B60L 53/66 20190101ALI20241016BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20241016BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20241016BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H02J50/40
B60L53/126
B60L53/66
B60M7/00 X
H02J50/10
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022013200
(22)【出願日】2022-01-31
(65)【公開番号】P2023111369
(43)【公開日】2023-08-10
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】坂柳 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】杉山 緑
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-117456(JP,A)
【文献】特開2015-082964(JP,A)
【文献】特開2013-033423(JP,A)
【文献】特表2016-535577(JP,A)
【文献】特表2016-538792(JP,A)
【文献】特表2014-518607(JP,A)
【文献】特開2015-198562(JP,A)
【文献】特開2016-111778(JP,A)
【文献】特開2020-048250(JP,A)
【文献】特開2011-223657(JP,A)
【文献】特開2019-203265(JP,A)
【文献】特開2015-159693(JP,A)
【文献】特開2014-017747(JP,A)
【文献】特開2016-032397(JP,A)
【文献】国際公開第2017/213128(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/020960(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/40
B60L 53/126
B60L 53/66
B60M 7/00
H02J 50/10
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の非接触給電装置の各々の第1通信部から出力される同じ大きさの電波強度を有する信号が互いに電波干渉しないように各前記第1通信部の信号出力処理の起動パターンを切り換えながら、当該信号出力処理順次起動させる起動制御部と、
車両の第2通信部で受信した各前記第1通信部から出力される信号のうち最も強い電波強度の信号に対応する第1通信部を有する前記非接触給電装置と、前記車両とをペアリングするペアリング制御部と、
前記起動パターンの切換え周期と一致した受信周期で各前記第1通信部から前記第2通信部が受信した前記信号の信号強度を、前記起動パターンの切換え周期の下で当該信号を出力した前記第1通信部を有する前記非接触給電装置の識別情報に対応付けて記憶する、前記車両内に設けられた記憶部と、
を備え
前記起動制御部は、互いに電波干渉しない位置に設けられた前記第1通信部のグループ内で同時に実行される信号出力処理を、異なる前記グループ間では起動タイミングが時間的に重ならないように順次起動させ、
前記起動制御部は、各前記第1通信部のうち既にペアリング済みの非接触給電装置が有する第1通信部の信号出力処理については起動せず、
前記ペアリング制御部は、前記記憶部に記憶されている電波強度の中から探し出された最も強い電波強度に対応付けられた識別情報に基づき、当該最も強い電波強度の信号に対応する第1通信部を有する前記非接触給電装置と、前記車両とをペアリングする、通信制御装置。
【請求項2】
前記起動制御部は、前記複数の非接触給電装置を有する充電ステーションに設けられる、請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記起動制御部は、前記車両に設けられる、請求項1に記載の通信制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁界結合(電磁誘導)、電界結合、磁界共振結合(磁界共鳴)及び電界共振結合(電界共鳴)のような伝送方式を用いて、地面に設置された非接触給電装置から、駐車中の車両へ電力を非接触で給電する非接触給電システムが知られている。このような非接触給電システムにおいては、複数設置された非接触給電装置のうちの1つと車両とを無線通信を用いてペアリングし、ペアリングされた非接触給電装置と車両との間で非接触給電が行われる。例えば、車両側から不特定多数の非接触給電装置へ問合せ信号を送信し、当該送信出力を徐々に小さくして1つの非接触給電装置からのみ応答信号を受信したときに、当該1つの非接触給電装置と車両との間でペアリングを行う車載通信装置及び通信方法が公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-017747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車載通信装置からの問合せにより複数の非接触給電装置が車両と同時に通信することで電波干渉が発生してしまい、その結果、車両は、最も近い位置にある非接触給電装置ではなく離れた位置にある非接触給電装置と誤ペアリングしてしまうおそれがある。また、車載通信装置において指向性を変えて問合せ信号を送信する機能が必要であり、コストが増加する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の要旨は以下の通りである。
【0006】
(1)複数の非接触給電装置の各々の第1通信部から出力される信号が互いに電波干渉しないように各前記第1通信部の信号出力処理を起動させる起動制御部と、
車両の第2通信部で受信した各前記第1通信部から出力される信号のうち、最も強い電波強度の信号に対応する第1通信部を有する前記非接触給電装置と、前記車両とをペアリングするペアリング制御部と、
を備える、通信制御装置。
(2)前記起動制御部は、各前記第1通信部の信号出力処理を、起動タイミングが重ならないように順次起動させる、上記(1)に記載の通信制御装置。
(3)前記起動制御部は、互いに電波干渉しない位置に設けられた前記第1通信部のグループごとの信号出力処理を、各前記グループ間で起動タイミングが重ならないように順次起動させる、上記(1)に記載の通信制御装置。
(4)前記起動制御部は、同じ大きさの電波強度の信号を出力するように各前記第1通信部の信号出力処理を起動させる、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の通信制御装置。
(5)前記起動制御部は、各前記第1通信部のうち既にペアリング済みの非接触給電装置が有する第1通信部の信号出力処理については起動しない、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の通信制御装置。
(6)前記起動制御部は、前記複数の非接触給電装置を有する充電ステーションに設けられる、上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の通信制御装置。
(7)前記起動制御部は、前記車両に設けられる、上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の通信制御装置。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数の非接触給電装置の各々から出力される信号が互いに電波干渉しないように各非接触給電装置の信号出力処理を起動させ、最も強い電波強度の信号を出力した非接触給電装置と車両とをペアリングすることにより、誤ペアリングの可能性を下げることができる。また、指向性を持たせた通信を行う必要がないので、コストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態による通信制御装置を有する非接触給電システムの構成を概略的に示す図である。
図2図1に示す非接触給電システム内の非接触給電装置の構成を概略的に示す図である。
図3図1に示す非接触給電システム内の車両の構成を概略的に示す図である。
図4】本開示の一実施形態による通信制御装置の動作フローを示すフローチャートである。
図5】非接触給電装置による車両の非接触給電に関する動作フローを示すフローチャートである。
図6】起動制御部が実行する第1の形態による起動パターンを例示する図である。
図7】起動制御部が実行する第2の形態による起動パターンを例示する図(その1)である。
図8】起動制御部が実行する第2の形態による起動パターンを例示する図(その2)である。
図9】起動制御部が実行する第2の形態による起動パターンを例示する図(その3)である。
図10】本開示のさらなる一実施形態による通信制御装置を有する非接触給電システムの構成を概略的に示す図である。
図11図10に示す非接触給電システム内の車両の構成を概略的に示す図である。
図12】本開示のさらなる実施形態による通信制御装置の動作フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照して、通信制御装置について説明する。各図面において、同様の部材には同様の参照符号が付けられている。また、理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。図示される形態は実施をするための1つの例であり、これらの形態に限定されるものではない。
【0010】
<非接触給電システムの全体構成>
図1は、本開示の一実施形態による通信制御装置を有する非接触給電システムの構成を概略的に示す図である。
【0011】
非接触給電システムにおいて、非接触給電装置30-1~30-n(ただし、nは2以上の自然数。以下同様。)の各々は、充電ステーション3における車両の各駐車区画に対応して設置される。非接触給電装置30-1~30-nの各々は、第1通信部と、送電回路とを備える。図示の例では、非接触給電装置の参照番号における枝番号に対応して、第1通信部及び送電回路の参照番号における枝番号が付されている。例えば、非接触給電装置30-1は第1通信部31-1及び送電回路32-1を備え、非接触給電装置30-2は第1通信部31-2及び送電回路32-2を備える。同様に、非接触給電装置30-nは第1通信部31-n及び送電回路32-nを備える。なお、以下の説明では、非接触給電装置30-1~30-nのいずれか1つを示す場合は、非接触給電装置30と称する。同様に、第1通信部31-1~31-nのいずれか1つを示す場合は、第1通信部31と称する。同様に、送電回路32-1~32-nのいずれか1つを示す場合は、送電回路32と称する。
【0012】
第1通信部31-1~31-nの各々が出力する信号を「問合せ信号」と称する。各問合せ信号は、第1通信部31-1~31-nの各々から同じ大きさの電波強度にて出力される。送電回路32-1~32-nの各々は、ペアリングした車両2に非接触で送電するように構成される。送電回路32-1~32-nの各々は、例えば、対応する駐車区画の地面内(地中)に埋め込まれる。
【0013】
車両2は、第2通信部21と、受電回路22と、後述するペアリング制御部12とを備える。第2通信部21は、第1通信部31-1~31-nの各々が出力する信号を受信するように構成される。受電回路22は、ペアリングした非接触給電装置30から非接触で受電するように構成される。
【0014】
第1通信部31-1~31-nの各々と第2通信部21との間の通信として、例えば狭域無線通信が用いられる。狭域無線通信とは、広域無線通信に比べて通信距離が短い通信を示しており、具体的には通信距離が例えば10メートル未満である通信を示している。狭域無線通信としては、通信距離が短い種々の近距離無線通信を用いることができ、例えば、IEEE、ISO、IEC等によって策定された任意の通信規格(例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)等)に準拠した通信が用いられる。また、狭域無線通信を行うための技術としては、例えば、DSRC(dedicated Short Range Communication)、RFID(Radio Frequency Identification)等が用いられる。
【0015】
<通信制御装置の構成>
本開示の一実施形態による通信制御装置1により、充電ステーション3に複数設置された非接触給電装置30-1~30-nのうちの1つと車両2とをペアリングする。ペアリングされた非接触給電装置と車両2との間で非接触給電が行われる。通信制御装置1は、起動制御部11とペアリング制御部12とを備える。
【0016】
起動制御部11は、複数の非接触給電装置30-1~30-nの各々の第1通信部31-1~31-nから出力される信号が互いに電波干渉しないように各第1通信部31-1~31-nの信号出力処理を起動させる。起動制御部11により信号出力処理が起動されている第1通信部31(すなわちONしている第1通信部31)は所定の大きさの電波強度を有する問合せ信号を出力するが、起動制御部11により信号出力処理が起動されていない第1通信部31(すなわちOFFしている第1通信部31)は問合せ信号を出力しない。起動制御部11は、図1に示す実施形態では充電ステーション3内に設けられるが、後述するように車両2に設けられてもよい。
【0017】
各第1通信部31-1~31-nから互いに電波干渉しないように出力された各問合せ信号は、車両2の第2通信部21で受信される。第1通信部31-1~31-nの各々からは同じ大きさの電波強度にて問合せ信号が出力されるが、第2通信部21が受信する問合せ信号の電波強度は、第2通信部21と第1通信部31との間の距離が近いほど、強くなる。ペアリング制御部12は、車両2の第2通信部21で受信した最も強い電波強度の問合せ信号を出力していた第1通信部31を有する非接触給電装置30と、車両2とをペアリングする。ペアリング方法としては、相互認証することができるものであれば任意の方法を用いることができ、例えば3ウェイハンドシェイクなどを用いてもよい。
【0018】
<非接触給電装置の構成>
図2は、図1に示す非接触給電システム内の非接触給電装置の構成を概略的に示す図である。
【0019】
非接触給電装置30は、第1通信部31及び送電回路32に加えて、コントローラ33及び電源34を備える。コントローラ33及び電源34は、対応する駐車区画の地面内(地中)に埋め込まれてもよいし、当該駐車区画の近傍の地上に配置されてもよい。
【0020】
電源34は、送電回路32に電力を供給する。電源34は、例えば、単相交流電力を供給する商用交流電源である。なお、電源34は、三相交流電力を供給する他の交流電源であってもよいし、燃料電池や太陽光発電装置などのような直流電源であってもよい。また、電源34は、非接触給電装置30-1~30-nの各々に個別に設けられてもよいし、非接触給電装置30-1~30-nで共用されてもよい。
【0021】
送電回路32は、電源34から供給された電力を車両2へ送る。送電回路32は、整流回路321、インバータ322及び送電側共振回路323を有する。送電回路32では、電源34から供給される交流電力が整流回路321において整流されて直流電流に変換され、この直流電流がインバータ322において交流電力に変換され、この交流電力が送電側共振回路323に供給される。
【0022】
整流回路321は、電源34及びインバータ322に電気的に接続される。整流回路321は、電源34から供給される交流電力を整流して直流電力に変換し、直流電力をインバータ322に供給する。整流回路321は例えばAC/DCコンバータである。なお、電源34が直流電源である場合には、整流回路321は省略されてもよい。
【0023】
インバータ322は整流回路321及び送電側共振回路323に電気的に接続される。インバータ322は、整流回路321から供給された直流電力を、電源34の交流電力よりも高い周波数の交流電力(高周波電力)に変換し、高周波電力を送電側共振回路323に供給する。
【0024】
送電側共振回路323は、コイル41及びコンデンサ42から構成される共振器を有する。コイル41及びコンデンサ42の各種パラメータ(コイル41の外径及び内径、コイル41の巻数、コンデンサ42の静電容量等)は、送電側共振回路323の共振周波数が所定の設定値になるように定められる。所定の設定値は、例えば10kHz~100GHzであり、好ましくは、非接触電力伝送用の周波数帯域としてSAE TIR J2954規格によって定められた85kHzである。インバータ322から供給された高周波電力が送電側共振回路323に印加されると、送電側共振回路323は、送電するための交流磁界を発生させる。
【0025】
コントローラ33は、例えば汎用コンピュータであり、非接触給電装置30の各種制御を行う。例えば、コントローラ33は、送電回路32のインバータ322に電気的に接続され、送電回路32による電力送信を制御すべくインバータ322を制御する。さらに、コントローラ33は、起動制御部11の制御を受けて第1通信部31を制御する。
【0026】
コントローラ33は、通信インターフェース331、メモリ332及びプロセッサ333を備える。通信インターフェース331、メモリ332及びプロセッサ333はバスを介して互いに電気的に接続されている。
【0027】
通信インターフェース331は、非接触給電装置30を構成する各種機器(例えば、インバータ322、第1通信部31及び起動制御部11など)にコントローラ33を電気的に接続するためのインターフェース回路を有する。コントローラ33は、通信インターフェース331を介して他の機器と通信する。
【0028】
メモリ332は、例えば、揮発性の半導体メモリ(例えば、RAM)、不揮発性の半導体メモリ(例えば、ROM)等を有する。メモリ332は、プロセッサ333において各種処理を実行するためのコンピュータプログラムや、プロセッサ333によって各種処理が実行されるときに使用される各種データ等を記憶する。
【0029】
プロセッサ333は、1つまたは複数のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ333は、論理演算ユニットまたは数値演算ユニットのような演算回路を更に有していてもよい。プロセッサ333は、メモリ332に記憶されたコンピュータプログラムに基づいて、各種処理を実行する。
【0030】
<車両の構成>
図3は、図1に示す非接触給電システム内の車両の構成を概略的に示す図である。
【0031】
車両2は、第2通信部21、受電回路22及びペアリング制御部12に加えて、電子制御ユニット(ECU)23、バッテリ24、パワーコントロールユニット(PCU)25及びモータ26を有する。本実施形態では、車両2は、モータ26が車両2を駆動する電気自動車(BEV)である。しかしながら、車両2は、モータ26に加えて内燃機関が車両2を駆動するハイブリッド車(HEV)またはプラグインハイブリッド車(PHEV)であってもよい。
【0032】
バッテリ24は、充電可能な二次電池であり、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等から構成される。バッテリ24は車両2の走行に必要な電力(例えばモータ26の駆動電力)を蓄える。送電回路32から受電回路22が受電した電力が供給されると、バッテリ24が充電される。また、モータ26によって発電された回生電力がバッテリ24に供給されると、バッテリ24が充電される。バッテリ24が充電されると、バッテリ24の充電率(SOC:State Of Charge)が回復する。なお、バッテリ24は、車両2に設けられた充電ポートを介して非接触給電装置30以外の外部電源によっても充電可能であってもよい。
【0033】
モータ26は、例えば交流同期モータであり、電動機及び発電機として機能する。モータ26は、電動機として機能するとき、バッテリ24に蓄えられた電力を動力源として駆動される。モータ26の出力は減速機及び車軸を介して車両2の車輪に伝達される。一方、車両2の減速時には車輪の回転によってモータ26が駆動され、モータ26は発電機として機能して回生電力を発電する。
【0034】
PCU25はバッテリ24及びモータ26に電気的に接続される。PCU25は、インバータ、昇圧コンバータ及びDC/DCコンバータを有する。インバータは、バッテリ24から供給された直流電力を交流電力に変換し、交流電力をモータ26に供給する。一方、インバータは、モータ26によって発電された交流電力(回生電力)を直流電力に変換し、直流電力をバッテリ24に供給する。昇圧コンバータは、バッテリ24に蓄えられた電力がモータ26に供給されるときに、必要に応じてバッテリ24の電圧を昇圧する。DC/DCコンバータは、バッテリ24に蓄えられた電力がヘッドライト等の電子機器に供給されるときに、バッテリ24の電圧を降圧する。
【0035】
受電回路22は、ペアリングした非接触給電装置30の送電回路32から受電し、受電した電力をバッテリ24に供給する。受電回路22は、整流回路221、充電回路222及び受電側共振回路223を有する。
【0036】
受電側共振回路223は、地面との距離が小さくなるように車両2の底部に配置される。受電側共振回路223は、送電側共振回路323と同様の構成を有し、コイル51及びコンデンサ52から構成される共振器を有する。コイル51及びコンデンサ52の各種パラメータ(コイル51の外径及び内径、コイル51の巻数、コンデンサ52の静電容量等)は、受電側共振回路223の共振周波数が送電側共振回路323の共振周波数と一致するように定められる。なお、受電側共振回路223の共振周波数と送電側共振回路323の共振周波数とのずれ量が小さければ、例えば受電側共振回路223の共振周波数が送電側共振回路323の共振周波数の±20%の範囲内であれば、受電側共振回路223の共振周波数は送電側共振回路323の共振周波数と必ずしも一致している必要はない。
【0037】
受電側共振回路223が送電側共振回路323と対向しているときに、送電側共振回路323によって交流磁界が生成されると、交流磁界の振動が、送電側共振回路323と同一の共振周波数で共鳴する受電側共振回路223に伝達される。この結果、電磁誘導によって受電側共振回路223に誘導電流が流れ、誘導電流によって受電側共振回路223において誘導起電力が発生する。すなわち、送電側共振回路323は受電側共振回路223へ送電し、受電側共振回路223は送電側共振回路323から受電する。
【0038】
整流回路221は充電回路222及び受電側共振回路223に電気的に接続される。整流回路221は、受電側共振回路223から供給される交流電力を整流して直流電力に変換し、直流電力を充電回路222に供給する。整流回路221は例えばAC/DCコンバータである。
【0039】
充電回路222は整流回路221及びバッテリ24に電気的に接続される。充電回路222は、整流回路221から供給された直流電力をバッテリ24の電圧レベルに変換してバッテリ24に供給する。送電回路32から送電された電力が受電回路22によってバッテリ24に供給されると、バッテリ24が充電される。充電回路222は例えばDC/DCコンバータである。
【0040】
ECU23は車両2の各種制御を行う。例えば、ECU23は、受電回路22の充電回路222に電気的に接続され、送電回路32から送信された電力によるバッテリ24の充電を制御すべく充電回路222を制御する。また、ECU23は、PCU25に電気的に接続され、バッテリ24とモータ26との間の電力の授受を制御すべくPCU25を制御する。さらに、ECU23は、第2通信部21及びペアリング制御部12を制御する。
【0041】
ECU23は、通信インターフェース231、メモリ232及びプロセッサ233を有する。通信インターフェース231、メモリ232及びプロセッサ233は信号線を介して互いに接続されている。
【0042】
通信インターフェース231は、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内ネットワークにECU23を接続するためのインターフェース回路を有する。ECU23は、通信インターフェース231を介して他の機器と通信する。
【0043】
メモリ232は、例えば、揮発性の半導体メモリ(例えば、RAM)及び不揮発性の半導体メモリ(例えばROM)を有する。メモリ232は、プロセッサ233において各種処理を実行するためのコンピュータプログラムや、プロセッサ233によって各種処理が実行されるときに使用される各種データ等を記憶する。
【0044】
プロセッサ233は、1つまたは複数のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ233は、論理演算ユニットまたは数値演算ユニットのような演算回路を更に有していてもよい。プロセッサ233は、メモリ232に記憶されたコンピュータプログラムに基づいて、各種処理を実行する。
【0045】
<通信制御装置の動作>
図4は、本開示の一実施形態による通信制御装置の動作フローを示すフローチャートである。
【0046】
まず、ユーザ(運転手)は、充電ステーション3に設けられた複数の駐車区画のうちの1つの駐車区画に車両2を駐車させる。そして、車両2に乗車しているユーザ(運転手または同乗者)は、例えば車両2内に設けられた所定の操作ボタンを操作することによって通信制御装置1に対して動作の開始を指示すると、車両2に設けられた第2通信部21または他の通信部を介して、充電ステーション3内の起動制御部11へ開始信号が送信される。開始信号を受信した起動制御部11は、ステップS101において、複数の非接触給電装置30-1~30-nの各々の第1通信部31-1~31-nから出力される信号が互いに電波干渉しないように、特定の起動パターンで、各第1通信部31-1~31-nの信号出力処理を起動させる。特定の起動パターンとは、ある時点において信号出力処理が起動される第1通信部31と信号出力処理が起動されない第1通信部31との組み合わせを指す。
【0047】
この代替例として、起動制御部11は、ステップS101において特定の起動パターンで各第1通信部31-1~31-nの信号出力処理を既に起動させている状態において、車両2に乗車しているユーザ(運転手または同乗者)は、車両2内に設けられた所定の操作ボタンを操作することによってステップS201の処理(問合せ信号の受信及び記憶)を開始するようしてもよい。
【0048】
ステップS101において、起動制御部11により信号出力処理が起動されている第1通信部31(すなわちONしている第1通信部31)は問合せ信号を出力するが、起動制御部11により信号出力処理が起動されていない第1通信部31(すなわちOFFしている第1通信部31)は問合せ信号を出力しない。各問合せ信号は、第1通信部31-1~31-nの各々から同じ大きさの電波強度にて出力される。
【0049】
なお、既にペアリング済みの非接触給電装置30については、別の車両2の非接触給電のために既に用いられている。したがって、ステップS101において、起動制御部11は、各第1通信部31-1~31-nのうち既にペアリング済みの非接触給電装置30が有する第1通信部31の信号出力処理については起動しない。起動制御部11は、各第1通信部31-1~31-nのうち未だペアリングされていない非接触給電装置30が有する第1通信部31の全てについて、少なくとも1回は信号出力処理を起動するようにする。
【0050】
ここで、起動制御部11による各第1通信部31-1~31-nの起動パターンの形態について、いくつか列記する。
【0051】
第1の形態による起動パターンでは、起動制御部11は、各第1通信部31-1~31-nの信号出力処理を、起動タイミングが重ならないように順次起動させる。各第1通信部31-1~31-nの信号出力処理の起動タイミングが重ならないようにすることで、各々の第1通信部31-1~31-nから出力される問合せ信号が互いに電波干渉することを回避することができる。
【0052】
図6は、起動制御部が実行する第1の形態による起動パターンを例示する図である。なお、図6では、送電及び受電に関する構成については図示を省略している。図6では、一例として、充電ステーション3において一列に並んだ4つの駐車区画A~Dのうち、駐車区画Cに車両2が駐車している。駐車区画Aには第1通信部31-1を有する非接触給電装置30-1が設けられ、駐車区画Bには第1通信部31-2を有する非接触給電装置30-2が設けられ、駐車区画Cには第1通信部31-3を有する非接触給電装置30-3が設けられ、駐車区画Dには第1通信部31-4を有する非接触給電装置30-4が設けられている。
【0053】
図6に示すように、起動制御部11は例えばパターン1~4の順に、第1通信部31を起動していく。パターン1~4の各々は、少なくとも1回は実行されるが、互いに時間的に重なり合って実行されることはない。パターン1では、起動制御部11は駐車区画Aにある第1通信部31-1を起動(ON)し、第1通信部31-2、31-3及び31-4は起動しない。パターン2では、起動制御部11は駐車区画Bにある第1通信部31-2を起動(ON)し、第1通信部31-1、31-3及び31-4は起動しない。パターン3では、起動制御部11は駐車区画Cにある第1通信部31-3を起動(ON)し、第1通信部31-1、31-2及び31-4は起動しない。パターン4では、起動制御部11は駐車区画Dにある第1通信部31-4を起動(ON)し、第1通信部31-1、31-2及び31-3は起動しない。このように、第1通信部31-1~31-4の全てについて、既にペアリング済みの非接触給電装置30が有する第1通信部31を除き、少なくとも1回は信号出力処理が起動される。なお、図6に示したパターン1~4の実行順はあくまでも一例であって、必ずしもこの順で実行されなくてもよい。例えば、まずパターン3を実行し、次いでパターン1を実行し、次いでパターン4を実行し、次いでパターン2を実行してもよい。また例えば、まずパターン4を実行し、次いでパターン3を実行し、次いでパターン2を実行し、次いでパターン1を実行してもよい。あるいは、上述した以外の順でパターン1~4を実行してもよい。
【0054】
第2の形態による起動パターンは、互いに電波干渉しない位置に設けられた第1通信部31のうちのいくつかを同時に起動するというものである。すなわち、第2の形態による起動パターンでは、起動制御部11は、互いに電波干渉しない位置に設けられた第1通信部31のグループごとの信号出力処理を、各グループ間で起動タイミングが重ならないように順次起動させる。同じグループ内では第1通信部31は電波干渉することはなく、また、異なるグループ間では信号出力処理の起動タイミングが重ならないようにすることで、各々の第1通信部31-1~31-nから出力される問合せ信号が互いに電波干渉することを回避することができる。また、第2の形態による起動パターンは、同時に複数の第1通信部31の信号出力処理が起動されるので、全ての第1通信部31の信号出力処理の起動をし終える時間を、第1の形態による起動パターンに比べて短縮することができる。よって、第2の形態による起動パターンは、第1通信部31の数が多いほど(すなわち非接触給電装置30の数が多いほど)、処理時間短縮に効果を発揮する。
【0055】
図7は、起動制御部が実行する第2の形態による起動パターンを例示する図(その1)である。なお、図7では、送電及び受電に関する構成については図示を省略している。図7では、一例として、充電ステーション3において十字状に並んだ4つの駐車区画A~Dのうち、駐車区画Cに車両2が駐車している。駐車区画Aには第1通信部31-1を有する非接触給電装置30-1が設けられ、駐車区画Bには第1通信部31-2を有する非接触給電装置30-2が設けられ、駐車区画Cには第1通信部31-3を有する非接触給電装置30-3が設けられ、駐車区画Dには第1通信部31-4を有する非接触給電装置30-4が設けられている。また、第1通信部31-1と第1通信部31-3とは、各々が出力する問合せ信号が互いに電波干渉しない位置に設けられている。第1通信部31-2と第1通信部31-4とは、各々が出力する問合せ信号が互いに電波干渉しない位置に設けられている。一方で、第1通信部31-1と第1通信部31-2との間、第1通信部31-2と第1通信部31-3との間、第1通信部31-3と第1通信部31-4との間、及び第1通信部31-4と第1通信部31-1との間では電波干渉が発生する。
【0056】
図7に示すように、起動制御部11は例えばパターン1からパターン2の順に、第1通信部31を起動していく。パターン1及び2の各々は、少なくとも1回は実行されるが、互いに時間的に重なり合って実行されることはない。パターン1では、起動制御部11は互いに電波干渉しない位置にある第1通信部31-2及び31-3のグループを起動(ON)するが、第1通信部31-1及び31-4のグループは起動しない。パターン2では、起動制御部11は互いに電波干渉しない位置にある第1通信部31-1及び31-4のグループを起動(ON)するが、第1通信部31-2及び31-3のグループは起動しない。このように、第1通信部31-2及び31-4からなるグループ(パターン1)、第1通信部31-2及び31-4からなるグループ(パターン2)が、互いに時間的に重なり合うことなく順次起動される。各第1通信部31-1~31-4はいずれかのグループに属しているので、第1通信部31-1~31-4の全てについて、既にペアリング済みの非接触給電装置30が有する第1通信部31を除き、少なくとも1回は信号出力処理が起動される。なお、図7に示したパターン1からパターン2への実行順はあくまでも一例であって、例えば、まずパターン2を実行し、次いでパターン1を実行してもよい。
【0057】
図8は、起動制御部が実行する第2の形態による起動パターンを例示する図(その2)である。なお、図8では、送電及び受電に関する構成並びに駐車区画については図示を省略している。図8では、一例として、充電ステーション3において一列に並んだ4つの駐車区画の各々に、第1通信部31-1、31-2、31-3、及び31-4が設けられている。また、第1通信部31-1と第1通信部31-3とは、各々が出力する問合せ信号が互いに電波干渉しない位置に設けられている。第1通信部31-2と第1通信部31-4とは、各々が出力する問合せ信号が互いに電波干渉しない位置に設けられている。一方で、第1通信部31-1と第1通信部31-2との間、第1通信部31-2と第1通信部31-3との間、及び第1通信部31-3と第1通信部31-4との間では電波干渉が発生する。
【0058】
図8に示すように、起動制御部11は例えばパターン1からパターン2の順に、第1通信部31を起動していく。パターン1及び2の各々は、少なくとも1回は実行されるが、互いに時間的に重なり合って実行されることはない。パターン1では、起動制御部11は互いに電波干渉しない位置にある第1通信部31-1及び31-3のグループを起動(ON)するが、第1通信部31-2及び31-4は起動しない。パターン2では、起動制御部11は互いに電波干渉しない位置にある第1通信部31-2及び31-4のグループを起動(ON)するが、第1通信部31-1及び31-3は起動しない。このように、第1通信部31-1及び31-3からなるグループ(パターン1)、第1通信部31-2及び31-4からなるグループ(パターン2)が、互いに時間的に重なり合うことなく順次起動される。各第1通信部31-1~31-4はいずれかのグループに属しているので、第1通信部31-1~31-4の全てについて、既にペアリング済みの非接触給電装置30が有する第1通信部31を除き、少なくとも1回は信号出力処理が起動される。なお、図8に示したパターン1からパターン2への実行順はあくまでも一例であって、例えば、まずパターン2を実行し、次いでパターン1を実行してもよい。
【0059】
図9は、起動制御部が実行する第2の形態による起動パターンを例示する図(その3)である。なお、図9では、送電及び受電に関する構成並びに駐車区画については図示を省略している。図9では、一例として、充電ステーション3において3行5列の行列状に並んだ15の駐車区画の各々に、第1通信部31-1~31-15が設けられている。また、第1通信部31-1~31-15の各々は、当該第1通信部と縦横斜め方向に隣接する位置にある複数の第1通信部31との間で電波干渉が発生する位置に設けられている。例えば、第1通信部31-8は、第1通信部31-2~31-4、31-7、31-9、及び31-12~31-14との間で電波干渉が発生する。一方、第1通信部31-8は、これと隣接しない第1通信部31-1、31-5、31-6、31-10、31-11、及び31-15との間では電波干渉が発生しない。
【0060】
図9に示すように、起動制御部11は例えばパターン1~4の順に、第1通信部31を起動していく。パターン1~4の各々は、少なくとも1回は実行されるが、互いに時間的に重なり合って実行されることはない。パターン1では、起動制御部11は互いに電波干渉しない位置にある第1通信部31-1、31-3、31-5、31-11、31-13、及び31-15のグループを起動(ON)するが、第1通信部31-2、31-4、31-6~31-10、31-12、及び31-14は起動しない。パターン2では、起動制御部11は互いに電波干渉しない位置にある第1通信部31-2、31-4、31-12、及び31-14のグループを起動(ON)するが、第1通信部31-1、31-3、31-5、31-6~31-11、31-13、及び31-15は起動しない。パターン3では、起動制御部11は互いに電波干渉しない位置にある第1通信部31-7及び31-9のグループを起動(ON)するが、第1通信部31-1~31-6、31-8、及び31-10~31-15は起動しない。パターン4では、起動制御部11は互いに電波干渉しない位置にある第1通信部31-6、31-8、及び31-10のグループを起動(ON)するが、第1通信部31-1~31-5、31-7、31-9、及び31-11~31-15は起動しない。このように、第1通信部31-1、31-3、31-5、31-11、31-13、及び31-15からなるグループ(パターン1)、第1通信部31-2、31-4、31-12、及び31-14からなるグループ(パターン2)、第1通信部31-7及び31-9からなるグループ(パターン3)、第1通信部31-6、31-8、及び31-10からなるグループ(パターン4)が、互いに時間的に重なり合うことなく順次起動される。各第1通信部31-1~31-15はいずれかのグループに属しているので、第1通信部31-1~31-15の全てについて、既にペアリング済みの非接触給電装置30が有する第1通信部31を除き、少なくとも1回は信号出力処理が起動される。なお、図9に示したパターン1~4の実行順はあくまでも一例であって、必ずしもこの順で実行されなくてもよい。例えば、まずパターン3を実行し、次いでパターン1を実行し、次いでパターン4を実行し、次いでパターン2を実行してもよい。また例えば、まずパターン4を実行し、次いでパターン3を実行し、次いでパターン2を実行し、次いでパターン1を実行してもよい。あるいは、上述した以外の順でパターン1~4を実行してもよい。また、図9に示したパターン1~4の各々パターンにおいて示した第1通信部31-1~31-15の各々の起動の有無の組み合わせはあくまで一例であって、各パターンにおいて必ずしも図示したような起動の有無の組み合わせでなくてもよい。
【0061】
なお、図7図9に示した充電ステーション3における第1通信部31の配置(駐車区画の配置)はあくまでも一例であって、その他の配置例であっても第2の形態による起動パターンを適用することができる。
【0062】
このように、第1の形態または第2の形態による起動パターンにて第1通信部31-1~31-nの各々の信号出力処理を起動するので、各々の第1通信部31-1~31-nから出力される問合せ信号が互いに電波干渉することを回避することができる。よって、車両2に対して最も近い位置にある非接触給電装置30ではなく車両2から離れた位置にある非接触給電装置30と当該車両2とが誤ペアリングすることを回避することができる。
【0063】
説明を図4に戻すと、図4のステップS101では起動パターンが切り替わるごとに問合せ信号を出力する第1通信部31が切り替わるが、ステップS201において、車両2の第2通信部21は、起動パターンが切り替わるごとに問合せ信号を受信し、受信した問合せ信号の電波強度を車両2内の記憶部(例えば図3のメモリ232)に記憶する。問合せ信号の電波強度は、当該問合せ信号を出力した第1通信部31を有する非接触給電装置30の識別情報に対応付けて記憶部に記憶する。
【0064】
ここで、問合せ信号を出力した第1通信部31を有する非接触給電装置30の識別方法について、いくつか列記する。
【0065】
第1の識別方法は、第1通信部31から出力する問合せ信号に、当該問合せ信号を出力した第1通信部31を有する非接触給電装置30についての識別情報に関するデータを含ませるというものである。この場合、車両2内のECU23は、第2通信部21にて受信した問合せ信号に含まれる識別情報に関するデータを抽出し、当該識別情報と対応付けて問合せ信号の電波強度を記憶部に記憶する。
【0066】
第2の識別方法は、第1通信部31から問合せ信号を出力する際に、当該問合せ信号とは別の経路の無線通信(例えば広域無線通信)を用いて、当該問合せ信号を出力した第1通信部31を有する非接触給電装置30についての識別情報に関するデータを送信するというものである。この場合、非接触給電装置30には、第1通信部31とは別の広域無線通信用の通信部を設ける。同様に、車両2には、第2通信部21とは別の広域無線通信用の通信部を設ける。車両2内のECU23は、広域無線通信経由で受信したデータに含まれる識別情報を抽出し、当該識別情報と対応付けて問合せ信号の電波強度を記憶部に記憶する。広域無線通信は、狭域無線通信に比べて通信距離が長い通信であり、具体的には例えば通信距離が10メートルから10キロメートルの通信である。広域無線通信としては、通信距離が長い種々の無線通信を用いることができ、例えば、3GPP、IEEEによって策定された4G、LTE、5G、WiMAX等の任意の通信規格に準拠した通信が用いられる。
【0067】
第3の識別方法は、第1通信部31-1~31-nの起動パターン及びその実行順を車両2内のECU23側で予め把握しておき、起動パターンの切換え周期と車両2内のECU23による第2通信部21による受信周期(サンプリング周期)とを一致させることで識別情報を把握するものである。起動パターンの切換え周期と第2通信部21による受信周期とが一致しており、なおかつECU23は第1通信部31-1~31-nの起動パターン及びその実行順を把握しているので、ECU23は、受信した問合せ信号の電波強度を、当該問合せ信号を出力した第1通信部31の識別情報とともに記憶部に記憶することができる。
【0068】
図4のステップS201では、上述した第1~第3の識別方法のいずれかに従って、第1通信部31の起動パターンが切り替わるごとに、受信した問合せ信号の電波強度と当該問合せ信号を出力した第1通信部31を有する非接触給電装置30の識別情報とを対応付けて記憶する。なお、第1の形態による起動パターンに従って各第1通信部31-1~31-nを順次起動する場合は、その起動パターンごとに、受信した問合せ信号の電波強度と当該問合せ信号を出力した第1通信部31を有する非接触給電装置30の識別情報とを対応付けて記憶する。また、第2の形態による起動パターンに従って第1通信部31のグループを順次起動する場合は、ある起動パターンにおいては複数の第1通信部31から問合せ信号が出力されるので、その起動パターンごとに、受信した複数の問合せ信号の電波強度と当該問合せ信号を出力した第1通信部31を有する非接触給電装置30の各々の識別情報とを対応付けて記憶する。
【0069】
ステップS202において、車両2内のECU23は、第1通信部31の起動パターンが一巡目であるか否かを判定する。起動パターンが一巡目であるか否かは、受信した問合せ信号に係る識別情報と一致する識別情報が記憶部に既に記憶されているか否かに基づいて判定することができる。受信した問合せ信号に係る識別情報が、記憶部に記憶されている識別情報の中にまだ含まれていない場合は、起動パターンはまだ一巡目であるので、ステップS201へ戻る。受信した問合せ信号に係る識別情報が、記憶部に記憶されている識別情報の中に既に含まれていた場合は、起動パターンは二巡目であるので、ステップS203へ進む。起動パターンの一巡目が完了することで、第1通信部31-1~31-nの全てについて、既にペアリング済みの非接触給電装置30が有する第1通信部31を除き、少なくとも1回は信号出力処理が起動されたことになる。
【0070】
ステップS203において、車両2内のECU23は、記憶部に記憶されている電波強度の中から最も強い電波強度を探し出し、当該最も強い電波強度に対応付けられて記憶された識別情報に基づき、最も強い電波強度の問合せ信号を出力した第1通信部31を有する非接触給電装置30を特定する。第1通信部31-1~31-nの各々からは同じ大きさの電波強度にて問合せ信号が出力されるが、第2通信部21が受信する問合せ信号の電波強度は、第2通信部21と第1通信部31との間の距離が近いほど、強くなる。ステップS203において、最も強い電波強度の問合せ信号を出力した第1通信部31を有する非接触給電装置30を特定できた場合は、ステップS204へ進む。ステップS203において、最も強い電波強度の問合せ信号を出力した第1通信部31を有する非接触給電装置30を特定できなかった場合は、図5のステップS407へ進む。あるいは、最も強い電波強度の問合せ信号を出力した第1通信部31を有する非接触給電装置30を特定できなかった場合は、ステップS101、S201及びS202を再度実行するようにしてもよい。
【0071】
ステップS204において、車両2内のペアリング制御部12は、ステップS203で特定した非接触給電装置30と車両2とをペアリングする。ペアリング後、図5に示す充電処理が開始される。このように、ペアリング制御部12は、車両2の第2通信部21で受信した各第1通信部31-1~31-nから出力される信号のうち最も強い電波強度の問合せ信号に対応する第1通信部31を有する非接触給電装置30と、車両2とをペアリングする。したがって、非接触給電装置30内の第1通信部31と車両2内の第2通信部21との間で指向性を持たせた問合せ信号の通信を行う必要がないので、通信制御装置1のコストを抑制することができる。
【0072】
ここで、図6及び図6に示した具体例に基づき、非接触給電装置30と車両2とのペアリング処理について説明する。
【0073】
図6では、起動制御部11は、例えばパターン1~4の順に、第1通信部31を起動していく(ステップS101)。パターン1~4の各々ごとに、問合せ信号受と当該問合せ信号を出力した第1通信部31を有する非接触給電装置30の識別情報とが対応付けて記憶される(ステップS201)。パターン4の実行後、再びパターン1が実行されたときに第2通信部21が受信した問合せ信号に係る識別情報は、記憶部に既に記憶されていた第1通信部31-1に係る識別情報と一致するので、起動パターンは二巡目であると判定される(ステップS202)。車両2は駐車区画Cに駐車しているので、パターン1において第1通信部31-1から出力される問合せ信号の電波強度α1が最も弱く、次いでパターン2において第1通信部31-2から出力される問合せ信号の電波強度α2及びパターン4において第1通信部31-4から出力される問合せ信号の電波強度α4が弱く、そしてパターン3において第1通信部31-3から出力される問合せ信号の電波強度α3が最も強くなる(α1<α2=α4<α3)。よって、車両2内のECU23は、第1通信部31-3を有する非接触給電装置30-3を、最も強い電波強度の問合せ信号を出力したものとして特定する(ステップS203)。車両2内のペアリング制御部12は、非接触給電装置30-3と車両2とをペアリングする(ステップS204)。
【0074】
図7では、起動制御部11は、例えばパターン1からパターン2の順に、第1通信部31を起動していく(ステップS101)。パターン1において受信した第1通信部31-2及び31-4の各々の問合せ信号の電波強度と当該問合せ信号に係る非接触給電装置30-2及び30-4の各々の識別情報とが対応付けて記憶される(ステップS201)。パターン2において受信した第1通信部31-1及び31-3の各々の問合せ信号の電波強度と当該問合せ信号に係る非接触給電装置30-1及び30-3の各々の識別情報とが対応付けて記憶される(ステップS201)。車両2は駐車区画Cに駐車しているので、パターン2において第1通信部31-1から出力される問合せ信号の電波強度α1が最も弱く、次いでパターン1において第1通信部31-2及び31-4から出力される問合せ信号の電波強度α2及びα4が弱く、そしてパターン2において第1通信部31-3から出力される問合せ信号の電波強度α3が最も強くなる(α1<α2=α4<α3)。よって、車両2内のECU23は、第1通信部31-3を有する非接触給電装置30-3を、最も強い電波強度の問合せ信号を出力したものとして特定する(ステップS203)。車両2内のペアリング制御部12は、非接触給電装置30-3と車両2とをペアリングする(ステップS204)。
【0075】
図5は、非接触給電装置による車両の非接触給電に関する動作フローを示すフローチャートである。
【0076】
図4のステップ204に対応して、ステップS301において、非接触給電装置30は、車両2とペアリングする。
【0077】
ステップS302において、車両2とペアリングした非接触給電装置30の送電回路32は車両2へ送電を開始し、ステップS401において、非接触給電装置30とペアリングした車両2の受電回路22は受電を開始する。送電回路32による送電に際しては、ステップS303において、非接触給電装置30内のコントローラ33は、所定の周期ごとに、当該時点における送電電力値に関するデータを、第1通信部31または他の通信部を介して、車両2へ送信する。
【0078】
ステップS402において、車両2内のECU23は、受信した送電電力値に関するデータとその時点で実際に受電していた電力の値とに基づいて充電効率(=送電電力値/受電していた電力の値×100)を計算し、充電効率が所定の値(例えば70%)以上であるか否かを判定する。
【0079】
ステップS402において充電効率が所定の値以上であると判定された場合は、正しくペアリングできていると考えられるので、ステップS403へ進む。ステップS403では、車両2内のECU23は、バッテリ24の充電率(SOC:State Of Charge)が100%になったか否か(すなわち満充電になったか否か)を判定する。バッテリ24の充電率が100%になったと判定された場合はステップS404へ進み、バッテリ24の充電率が100%になったと判定されなかった場合はステップS402へ戻る。なお、ステップS403における判定処理の基準として用いられる充電率は必ずしも100%である必要はなく、例えばこれに近い値(例えば90%)であってもよい。
【0080】
ステップS404において、車両2内のECU23は第2通信部21または他の通信部を介して、ペアリングしていた非接触給電装置30に対して充電完了通知を送信し、これを受けて非接触給電装置30は、ステップS304において充電完了通知を受信する。ステップS304に続くステップS305において、非接触給電装置30は送電を停止する。そして、ステップS306において非接触給電装置30は車両2とのペアリングを解除し、ステップS405において車両2は非接触給電装置30とのペアリングを解除する。その後処理を終了する。
【0081】
一方、ステップS402において充電効率が所定の値以上であると判定されなかった場合は、誤ペアリングの可能性があるので、ステップS406へ進む。ステップS406では、車両2内のECU23は第2通信部21または他の通信部を介して、ペアリングしていた非接触給電装置30に対して送電停止を指示し、これを受けて非接触給電装置30は送電を停止するとともに当該ペアリングを解除する。ステップS406に続くステップS407において、車両2内のECU23は、車両2内のディスプレイ等を介して、手動でペアリングするようユーザに通知する。その後、ステップS408において、車両2内のECU23は、ユーザが手動でペアリングしたか否かを判定する。ステップS408において手動でペアリングしたと判定された場合はステップS401(及びS301)へ戻る。ステップS408において手動でペアリングしたと判定されなかった場合は、処理を終了する。
【0082】
また、図4のステップS203において、最も強い電波強度の問合せ信号を出力した第1通信部31を有する非接触給電装置30を特定できなかった場合も、ステップS407において、車両2内のECU23は、車両2内のディスプレイ等を介して、手動でペアリングするようユーザに通知する。その後、ステップS408において、車両2内のECU23は、ユーザが手動でペアリングしたか否かを判定する。ステップS408において手動でペアリングしたと判定された場合はステップS401(及びS301)へ戻る。ステップS408において手動でペアリングしたと判定されなかった場合は、処理を終了する。
【0083】
なお、上述のフローチャートでは、車両2内のECU23において充電効率を計算したが(ステップS402)、代替例として、非接触給電装置30内のコントローラ33において充電効率を計算してもよい。この代替例では、ステップS401における車両2の受電開始後、車両内のECU23は、所定の周期ごとに、当該時点における受電電力値に関するデータを、第2通信部21または他の通信部を介して、ペアリングしている非接触給電装置30へ送信する。そして、非接触給電装置30内のコントローラ33は、受信した受電電力値に関するデータとその時点で実際に送電していた電力の値とに基づいて充電効率(=受電電力値/送電していた電力の値×100)を計算し、充電効率が所定の値(例えば70%)以上であるか否かを判定する。この判定結果は第1通信部31または他の通信部を介して、車両2へ送信され、当該判定結果に基づきステップS403またはS406が実行される。
【0084】
<起動制御部を車両内に設けたさらなる実施形態>
上述の実施形態では、起動制御部11は充電ステーション3内に設けられるが、更なる実施形態として図10図12を参照して説明するように、車両2内に起動制御部11を設けてもよい。
【0085】
図10は、本開示のさらなる一実施形態による通信制御装置を有する非接触給電システムの構成を概略的に示す図である。図11は、図10に示す非接触給電システム内の車両の構成を概略的に示す図である。本開示のさらなる実施形態では、起動制御部11は、車両2内に設けられる。車両2内のECU23は、充電回路222、PCU25、第2通信部21、及びペアリング制御部12の各制御に加えて、起動制御部11の制御も行う。それ以外の車両2内の各構成については図3を参照して説明した通りである。
【0086】
図12は、本開示のさらなる実施形態による通信制御装置の動作フローを示すフローチャートである。
【0087】
図12に示すように、起動制御部11を車両2内に設けた場合の通信制御装置1の動作は、図4を参照して説明した起動制御部11を充電ステーション3内に設けた場合の通信制御装置1の動作と比較して、ステップS200を実行する点で異なる。
【0088】
まず、ユーザ(運転手)は、充電ステーション3に設けられた複数の駐車区画のうちの1つの駐車区画に車両2を駐車させる。そして、車両2に乗車しているユーザ(運転手または同乗者)は、例えば車両2内に設けられた所定の操作ボタンを操作することによって通信制御装置1に対して動作の開始を指示する。次いで、ステップS200において、車両2に設けられた起動制御部11は、第2通信部21または他の通信部を介して、充電ステーション3内の複数の非接触給電装置30-1~30-nの各々の第1通信部31-1~31-nから出力される信号が互いに電波干渉しないように、特定の起動パターンで、各第1通信部31-1~31-nの信号出力処理を起動させるよう制御する。起動制御部11により信号出力処理が起動されている第1通信部31(すなわちONしている第1通信部31)は問合せ信号を出力するが、起動制御部11により信号出力処理が起動されていない第1通信部31(すなわちOFFしている第1通信部31)は問合せ信号を出力しない。ステップS200に続くステップS101及びS201~S204の各処理については、図4を参照して説明した通りである。また、その後に続く充電処理については、図5を参照して説明した通りである。
【0089】
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0090】
1 通信制御装置
2 車両
3 充電ステーション
11 起動制御部
12 ペアリング制御部
21 第2通信部
22 受電回路
23 ECU
24 バッテリ
25 PCU
26 モータ
30、30-1~30-n 非接触給電装置
31、31-1~31-n 第1通信部
32、32-1~32-n 送電回路
33 コントローラ
34 電源
41 コイル
42 コンデンサ
51 コイル
52 コンデンサ
221 整流回路
222 充電回路
223 受電側共振回路
231 通信インターフェース
232 メモリ
233 プロセッサ
321 整流回路
322 インバータ
323 送電側共振回路
331 通信インターフェース
332 メモリ
333 プロセッサ
図1
図2
図3
図4
図5
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図12