(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 5/46 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
H02P5/46 H
(21)【出願番号】P 2022014759
(22)【出願日】2022-02-02
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昭徳
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-36078(JP,A)
【文献】特開平2-36793(JP,A)
【文献】特開2016-111742(JP,A)
【文献】特開2015-173537(JP,A)
【文献】特開2008-5604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 5/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を空けてコイルが巻き付けられた円筒状のステータと、永久磁石を備え前記コイルに交流電流を通電することによって回転するロータとを備えた駆動用モータが、右側駆動輪と左側駆動輪とのそれぞれに連結されたモータ制御装置において、
前記右側駆動輪に連結された駆動用モータである右側モータと、前記左側駆動輪に連結された駆動用モータである左側モータとは、前記ロータの回転角度を検出する回転角センサを備え、
前記右側モータと前記左側モータとの少なくともいずれか一方の駆動用モータは、前記ステータおよび前記回転角センサの回転方向の角度を調整する調整機構を備え、
前記調整機構を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記右側モータにおけるコイルに通電する交流電流の周波数と、前記左側モータにおけるコイルに通電する交流電流の周波数とを求める第1演算部と、
前記右側モータにおけるコイルに通電する交流電流の位相と、前記左側モータにおけるコイルに通電する交流電流の位相とを求める第2演算部と、
前記第1演算部で演算されたそれぞれの周波数が、予め定められた第1周波数であり、かつそれぞれの交流電流の位相が同位相である場合に、前記それぞれの位相が前記同位相でない異なる位相となるように前記調整機構によって前記右側モータと前記左側モータとの少なくともいずれか一方の前記ステータおよび前記回転角センサの回転方向の角度を調整し、前記第1演算部で演算されたそれぞれの周波数が、前記第1周波数とは異なる予め定められた第2周波数であり、かつ前記それぞれの位相が逆位相である場合に、前記それぞれの位相が前記逆位相でない異なる位相となるように前記調整機構によって前記右側モータと前記左側モータとの少なくともいずれか一方のステータおよび前記回転角センサの回転方向の角度を調整する調整機構制御部と
を備えている
ことを特徴とするモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、左右のそれぞれの駆動輪に連結されたモータに通電する交流電流の位相差を制御する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インホイールモータ車両に搭載された三相交流モータを制御する装置が記載されている。この特許文献1に記載された制御装置は、左右輪の一方に連結されたモータと、他方に連結されたモータとの回転角のずれ量が0度でありかつ所定の回転数で回転している場合には、回転角のずれ量が180度となるように、いずれか一方のモータの回転速度を調整し、また上記回転角のずれ量が180度でありかつ他の所定の回転数で回転している場合には、回転角のずれ量が0度となるように、いずれか一方のモータの回転速度を調整するように構成されている。そして、上記のように回転角のずれ量を調整した後における各モータのトルクの位相差および振幅差に基づいて、高調波電流を駆動電量に付加することによって、モータ駆動時にトルクリプルが生じることによる振動を低減するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたモータ制御装置は、駆動電流に含まれる6次高調波電流によるトルクリプルを要因とした振動を低減するように構成されている。すなわち、高次の振動を低減するように構成されている。しかしながら、駆動電流である基本波電流によっても同様にトルクリプルも同様に発生する。このトルクリプルの周波数は、モータの回転数に応じた周波数となる。そのため、各モータで生じる基本波電流に応じたトルクリプルの周波数と、車室内で共鳴する周波数や車体の固有振動数とが一致すると、車室音や振動が大きくなる可能性がある。このような共振は、各モータの位相が同位相の場合に限らず、各モータの位相が逆位相の場合にも生じる可能性がある。
【0005】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、複数の駆動モータの基本波電流に応じたトルクリプルに起因する振動や音を抑制することができるモータ制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、所定の間隔を空けてコイルが巻き付けられた円筒状のステータと、永久磁石を備え前記コイルに交流電流を通電することによって回転するロータとを備えた駆動用モータが、右側駆動輪と左側駆動輪とのそれぞれに連結されたモータ制御装置において、前記右側駆動輪に連結された駆動用モータである右側モータと、前記左側駆動輪に連結された駆動用モータである左側モータとは、前記ロータの回転角度を検出する回転角センサを備え、前記右側モータと前記左側モータとの少なくともいずれか一方の駆動用モータは、前記ステータおよび前記回転角センサの回転方向の角度を調整する調整機構を備え、前記調整機構を制御するコントローラを備え、前記コントローラは、前記右側モータにおけるコイルに通電する交流電流の周波数と、前記左側モータにおけるコイルに通電する交流電流の周波数とを求める第1演算部と、前記右側モータにおけるコイルに通電する交流電流の位相と、前記左側モータにおけるコイルに通電する交流電流の位相とを求める第2演算部と、前記第1演算部で演算されたそれぞれの周波数が、予め定められた第1周波数であり、かつそれぞれの交流電流の位相が同位相である場合に、前記それぞれの位相が前記同位相でない異なる位相となるように前記調整機構によって前記右側モータと前記左側モータとの少なくともいずれか一方の前記ステータおよび前記回転角センサの回転方向の角度を調整し、前記第1演算部で演算されたそれぞれの周波数が、前記第1周波数とは異なる予め定められた第2周波数であり、かつ前記それぞれの位相が逆位相である場合に、前記それぞれの位相が前記逆位相でない異なる位相となるように前記調整機構によって前記右側モータと前記左側モータとの少なくともいずれか一方のステータおよび前記回転角センサの回転方向の角度を調整する調整機構制御部とを備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、第1演算部によって算出された右側モータにおけるコイルに通電する交流電流の周波数と、左側モータにおけるコイルに通電する交流電流の周波数が第1周波数であり、かつ第2演算部によって算出された右側モータにおけるコイルに通電する交流電流の位相と、左側モータにおけるコイルに通電する交流電流の位相とが同位相である場合、あるいは上記の周波数が第2周波数であり、かつ上記の位相が逆位相である場合に、調整機構制御部によって少なくとも一方の駆動用モータのステータおよび回転角センサの回転方向の角度が調整される。すなわち、それぞれのコイルに通電する交流電流の位相を同位相や逆位相からずらすことができる。言い換えると、駆動用モータの回転数に応じて定まる基本波形の電流に基づくトルクリプルの位相をずらすことができる。車体には、各駆動用モータから振動が伝達される。すなわち、各駆動用モータで生じた振動を合成した振動が車体に伝達される。したがって、上記のように交流電流の位相を同位相や逆位相からずらすことによって、車体に伝達される振動のレベルを低減することができ、基本波電流に応じたトルクリプルが車体に伝達されることによる車室内の音や振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施形態における駆動用モータの一例を説明するための模式図である。
【
図2】電子制御装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図3】ECUにより実行される制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明の実施形態における駆動用モータの一例を説明するための模式図を
図1に示してある。
図1に示す駆動用モータ1の基本構成は、従来の永久磁石式同期モータと同様に構成されている。すなわち、円筒状に形成されたステータ2と、そのステータ2の内側に配置されたロータ3とによって構成されている。
【0010】
ステータ2は、円周方向に所定の間隔を空けかつ内周側に突出したステータティース4を備えた鋼板を、軸線方向に積層して一体化されて構成されていて、それぞれのステータティース4にコイル5が巻き付けられている。また、ロータ3は、ステータ2と同様に円筒状の鋼板を、軸線方向に積層して一体化されて構成されていて、その円周方向に所定の間隔を空けて永久磁石6が埋め込められている。なお、ロータ3には、ロータ軸7が一体回転可能に挿入されている。
【0011】
この駆動用モータ1は、ステータ2と回転方向に一体化された図示しないレゾルバを備えている。このレゾルバは、従来のレゾルバと同様にロータの回転角度を検出する装置であり、この発明の実施形態における「回転角センサ」に相当する。
【0012】
また、この発明の実施形態における駆動用モータ1は、ステータ2の回転角度を調整する調整機構8を備えている。
図1に示す調整機構8は、ステータ2の外周面に接触する円弧状の接触部材9と、その接触部材9をステータ2の外周面に押圧する押圧部材10と、その押圧部材10の押圧力に対抗した荷重を発生させることができる摩擦力制御装置11とによって構成されている。
【0013】
押圧部材10は、例えば、バネなどの弾性部材によって構成することができる。この押圧部材10による押圧力は、駆動用モータ1が通常に駆動している場合にステータ2が回転しない摩擦力をステータ2と接触部材9との間で発生できる荷重に設定されている。すなわち、駆動用モータ1の定格などによって定められた最大トルクを発生させるようにコイル5に通電した場合に、ステータ2に作用する反力トルクと、ステータ2の半径と、ステータ2と接触部材9との間の摩擦係数とに基づいて、押圧部材10による押圧力が設定されている。
【0014】
摩擦力制御装置11は、上記の押圧力を減じるための装置であって、例えば、接触部材9をステータ2から離隔させる方向に電磁力を発生させるように構成されている。なお、押圧力を減じる手段は、例えば、接触部材9をステータ2から離隔する方向に油圧を作用させてもよい。また、押圧部材10がバネによって構成されている場合には、バネ荷重が低下するように、すなわちバネの変位量を増加させるようにバネの一方の端部を受ける座面の位置を変更するように構成してもよい。
【0015】
したがって、上述した調整機構8は、駆動用モータ1を通常に駆動している間は、摩擦力制御装置11を特に作動させることなく、押圧部材10による押圧力を接触部材9に作用させて、ステータ2の位置を固定する。一方、後述する制御が実行されてステータ2およびレゾルバの回転方向の角度を調整する場合には、摩擦力制御装置11を作動させて接触部材9に作用する押圧力を低下させる。そのように接触部材9に作用させる押圧力を低下させ、ステータ2と接触部材9との間の摩擦力を低下させた状態で、駆動用モータ1が駆動するようにコイル5に通電すると、ステータ2に作用する反力トルクによってステータ2が回動する。そして、ステータ2が所定角度回動した時点で、摩擦力制御装置11を停止するなどにより押圧部材10の押圧力のみによって接触部材9をステータ2に押圧してステータ2を固定する。なお、上述したようにレゾルバは、ステータ2と回転方向で一体化されているため、上記のようにステータ2が回転することに伴ってレゾルバも同様に回転する。
【0016】
上述したようにステータ2と接触部材9との摩擦力を低下させつつ、駆動用モータ1を駆動することによる反力トルクをステータ2に作用させることにより、ステータ2を回転させる。したがって、摩擦力のバラツキや反力トルクのバラツキなどを要因としてステータ2の回転角度が意図した回転角度よりも大きくなる可能性がある。
【0017】
そのため、
図1に示す駆動用モータ1は、ステータ2の回転角度が所定角度以上とならないようにストッパー12が設けられている。具体的には、ステータ2の円周方向における所定位置にステータ2の外周側に突出したストッパー12が設けられ、ステータ2やロータ3を収容するケース13の内面には、ストッパー12の先端側が挿入されかつ円周方向に所定の長さを有する凹部14が形成されている。
【0018】
したがって、ステータ2が意図した以上に回転した場合には、ストッパー12と凹部14とが接触することにより、ステータ2に作用する反力トルクに対向した荷重をケース13が受け持つことができ、ステータ2の過剰な回転が規制される。
【0019】
図1に示す駆動用モータ1は、上記のようなストッパー12と凹部14とが接触することを抑制するために、ストッパー12と凹部14とのステータ2の回転方向での間にコイルバネ15が設けられている。具体的には、ステータ2の回転方向におけるストッパー12の一方側と、ストッパー12の他方側とのそれぞれにコイルバネ15,15が設けられている。したがって、ステータ2を回転させる方向のトルクが発生してステータ2が回転し始めると、いずれか一方のコイルバネ15が圧縮されてそのトルクに対向したトルクを発生させる。そのため、ストッパー12が急激に凹部14の壁面に向けて移動するなどの事態が生じることを抑制でき、ステータ2を意図した位置で固定することが容易になる。
【0020】
この発明の実施形態におけるモータ制御装置は、上述したように構成された駆動用モータ1を車両の右側駆動輪と左側駆動輪との少なくとも一方の駆動輪に連結し、その駆動用モータ1に設けられた調整機構8を制御するように構成されている。すなわち、右側駆動輪と左側駆動輪との一方に上記の駆動用モータ1を連結し、他方に従来の駆動用モータ(すなわち、上記のステータ2とロータ3とを備えた駆動用モータ)を連結してもよく、左右の駆動輪のそれぞれに上記の駆動用モータ1をそれぞれ連結してもよい。
【0021】
上述した調整機構8を制御する電子制御装置(以下、ECUと記す)16を備えている。このECU16は、この発明の実施形態における「コントローラ」に相当するものであって、従来のECUと同様にマイクロコンピュータを主体に構成されている。このECU16には、車両や駆動用モータ1に設けられた種々のセンサから信号が入力され、その入力された信号と予め記憶されているマップや演算式などとに基づいて、調整機構8を制御する信号を出力するように構成されている。なお、調整機構8を制御する信号に加えて、コイル5などの他の装置を制御する信号を出力するように構成されていてよい。
【0022】
図2には、ECU16の構成を説明するためのブロック図を示してある。
図2に示すECU16は、各駆動用モータ1のコイル5に通電する交流電流の周波数を求める第1演算部17と、各駆動用モータ1のコイル5に通電する交流電流の位相を求める第2演算部18と、それらの周波数および位相に基づいてステータ2およびレゾルバを回転させるか否かを判断するとともに、その判断に基づいて調整機構8に信号を出力する調整機構制御部19とによって構成されている。
【0023】
図3には、上述したECU16によって実行される制御の一例を説明するためのフローチャートを示してある。
図3に示す例では、まず、各駆動用モータ1の回転速度を算出する(ステップS1)。このステップS1は、各駆動用モータ1に設けられたレゾルバの検出信号に基づいて算出することができる。
【0024】
ついで、各駆動用モータ1に通電する交流電流の周波数を算出する(ステップS2)。このステップS2は、第1演算部17によって算出することができ、従来の駆動用モータに通電する交流電流と同様に、ステップS1で算出された各駆動用モータ1の回転速度に基づいて交流電流の基本波形を生成し、その生成された基本波形に基づいて交流電流の周波数を算出することができる。
【0025】
続いて、ステップS2で求められた交流電流の周波数が、各駆動用モータ1に設けられたコイル5に通電する交流電流の位相が同位相(すなわち、電気角で0度のずれ量)である場合に、車室音や振動が大きくなる周波数であるか否かを判断する(ステップS3)。このステップS3における周波数は、実験やシミュレーションなどによって予め定められた周波数であって、この発明の実施形態における「第1周波数」に相当する。
【0026】
ステップS2で求められた交流電流の周波数が、各コイル5に通電する交流電流の位相が同位相である場合に車室音や振動が大きくなる周波数であることによりステップS3で肯定的に判断された場合は、各コイル5に通電する交流電流の位相が同位相であるか否かを判断する(ステップS4)。このステップS4は、まず、各コイル5に通電する交流電流の位相を第2演算部18によって求める。具体的には、一方の駆動用モータ1に設けられたレゾルバによって検出されたロータ3の回転角度に基づいて、それぞれの位相を求める。ついで、その求められたそれぞれの位相を比較して同位相であるか否かを判断する。
【0027】
各コイル5に通電する交流電流の位相が同位相でないことによりステップS4で否定的に判断された場合は、そのままこのルーチンを一旦終了する。すなわち、調整機構8が設けられた駆動用モータ1におけるステータ2を固定した状態を維持する。
【0028】
それとは反対に、各コイル5に通電する交流電流の位相が同位相であることによりステップS4で肯定的に判断された場合は、調整機構8が設けられた駆動用モータ1におけるステータ2を回転させて(ステップS5)、このルーチンを一旦終了する。すなわち、摩擦力制御装置11を作動させて接触部材9とステータ2との接触圧を低下させる。なお、ステップS5では、駆動用モータ1が駆動していることにより、ステータ2にはその反力トルクが作用しているため、上記のように接触部材9とステータ2との接触圧を低下させることによりステータ2が回転する。そのステータ2の回転角度は、各コイル5に通電する交流電流の位相が同位相でない異なる位相となればよく、適宜定めてよい。
【0029】
一方、ステップS2で求められた交流電流の周波数が、各コイル5に通電する交流電流の位相が同位相である場合に車室音や振動が大きくなる周波数でないことによりステップS3で否定的に判断された場合は、ステップS2で求められた交流電流の周波数が、各駆動用モータ1に設けられたコイル5に通電する交流電流の位相が逆位相(すなわち、電気角で180度のずれ量)である場合に、車室音や振動が大きくなる周波数であるか否かを判断する(ステップS6)。このステップS6における周波数は、実験やシミュレーションなどによって予め定められた周波数であって、この発明の実施形態における「第2周波数」に相当する。
【0030】
ステップS2で求められた交流電流の周波数が、各コイル5に通電する交流電流の位相が逆位相である場合に車室音や振動が大きくなる周波数でないことによりステップS6で否定的に判断された場合は、そのままこのルーチンを一旦終了する。すなわち、調整機構8が設けられた駆動用モータ1におけるステータ2を固定した状態を維持する。
【0031】
それとは反対に、ステップS2で求められた交流電流の周波数が、各コイル5に通電する交流電流の位相が逆位相である場合に車室音や振動が大きくなる周波数であることによりステップS6で肯定的に判断された場合は、各コイル5に通電する交流電流の位相が逆位相であるか否かを判断する(ステップS7)。このステップS7は、ステップS4と同様に、各コイル5に通電する交流電流の位相を第2演算部18によって求め、ついで、その求められたそれぞれの位相を比較して逆位相であるか否かを判断する。
【0032】
各コイル5に通電する交流電流の位相が逆位相でないことによりステップS7で否定的に判断された場合は、そのままこのルーチンを一旦終了する。すなわち、調整機構8が設けられた駆動用モータ1におけるステータ2を固定した状態を維持する。
【0033】
それとは反対に、各コイル5に通電する交流電流の位相が逆位相であることによりステップS7で肯定的に判断された場合は、ステップS5に移行する。すなわち、摩擦力制御装置11を作動させて接触部材9とステータ2との接触圧を低下させ、ステータ2が回転する。そのステータ2の回転角度は、各コイル5に通電する交流電流の位相が逆位相でない異なる位相となればよく、適宜定めてよい。
【0034】
上述したように左右の駆動用モータ1に通電する交流電流の周波数が、それらの交流電流の位相が同位相でありまたは逆位相である場合に車室内の音や振動が大きくなる周波数である場合に、ステータ2およびレゾルバを回転させて各駆動用モータ1に通電する交流電流の位相をずらすことができる。すなわち、駆動用モータ1の回転数に応じて定まる基本波電流に基づくトルクリプルの位相をずらすことができる。車体には、各駆動用モータ1から振動が伝達される。すなわち、各駆動用モータ1で生じた振動を合成した振動が車体に伝達される。したがって、上記のように交流電流の位相を同位相や逆位相からずらすことによって、車体に伝達される振動のレベルを低減することができ、基本波電流に応じたトルクリプルが車体に伝達されることによる車室内の音や振動を抑制することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 駆動用モータ
2 ステータ
3 ロータ
5 コイル
8 調整機構
9 接触部材
10 押圧部材
11 摩擦力制御装置
12 ストッパー
13 ケース
14 凹部
15 コイルバネ
16 電子制御装置(ECU)
17,18 演算部
19 調整機構制御部