(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】二次電池の温度調節装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/617 20140101AFI20241016BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241016BHJP
H01M 10/6569 20140101ALI20241016BHJP
H01M 10/6557 20140101ALI20241016BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20241016BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241016BHJP
【FI】
H01M10/617
H01M10/613
H01M10/6569
H01M10/6557
H01M10/651
H01M10/625
(21)【出願番号】P 2022018673
(22)【出願日】2022-02-09
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】若杉 知寿
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-062023(JP,A)
【文献】特開2017-220396(JP,A)
【文献】特開平11-026031(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0066768(US,A1)
【文献】特開2016-105365(JP,A)
【文献】特開2019-079605(JP,A)
【文献】国際公開第2022/084599(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/617
H01M 10/613
H01M 10/6569
H01M 10/6557
H01M 10/651
H01M 10/625
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の温度調節装置であって、
前記二次電池のうち鉛直方向の上方に配置される冷媒流路であって、冷媒が流れる冷媒流路を形成する冷媒流路形成部と、
前記二次電池の側面に配置される熱交換媒体流路であって、前記二次電池と前記冷媒流路を流れる前記冷媒とのそれぞれと熱交換可能な熱交換媒体が収容された熱交換媒体流路を形成する熱交換媒体流路形成部と、
前記二次電池のうち鉛直方向の下方に配置される熱媒流路であって、前記熱交換媒体と熱交換可能な熱媒が流れる熱媒流路を形成する熱媒流路形成部と、
を備え、
前記熱交換媒体は、
前記熱交換媒体流路内において、前記冷媒によって冷却されることで凝縮し、前記二次電池の熱を奪って加熱されることにより蒸発
し、
前記熱交換媒体流路内において、前記熱媒によって加熱されることで蒸発し、前記二次電池に熱を与えて冷却されることにより凝縮する、温度調節装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の温度調節装置であって、
前記熱交換媒体流路形成部は、
前記二次電池の側面に隣接する外壁と、
前記外壁の内側に配置された、多孔質体で形成された多孔質体層と、
を有する、温度調節装置。
【請求項3】
二次電池の温度調節装置であって、
前記二次電池のうち鉛直方向の上方に配置される冷媒流路であって、冷媒が流れる冷媒流路を形成する冷媒流路形成部と、
前記二次電池の側面に配置される熱交換媒体流路であって、前記二次電池と前記冷媒流路を流れる前記冷媒とのそれぞれと熱交換可能な熱交換媒体が収容された熱交換媒体流路を形成する熱交換媒体流路形成部と、
を備え、
前記熱交換媒体は、前記熱交換媒体流路内において、前記冷媒によって冷却されることで凝縮し、前記二次電池の熱を奪って加熱されることにより蒸発し、
前記熱交換媒体流路形成部は、
前記二次電池の側面に隣接する外壁と、
前記外壁の内側に配置された、多孔質体で形成された多孔質体層と、
を有する、温度調節装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の温度調節装置であって、さらに、
前記二次電池のうち鉛直方向の下方に配置される貯留部であって、液体の前記熱交換媒体を貯留する貯留部を備える、温度調節装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の温度調節装置であって、
複数の前記熱交換媒体流路を有し、
各前記熱交換媒体流路は、前記冷媒流路の下方において並べて配置された複数の前記二次電池の間に、それぞれ配置され、
前記貯留部は、複数の前記二次電池の下方において、複数の前記熱交換媒体流路を接続するように前記二次電池の配列方向に沿って延びている、温度調節装置。
【請求項6】
請求項
3から請求項
5までのいずれか一項に記載の温度調節装置であって、さらに、
前記二次電池のうち鉛直方向の下方に配置される熱媒流路であって、前記熱交換媒体と熱交換可能な熱媒が流れる熱媒流路を形成する熱媒流路形成部を備え、
前記熱交換媒体は、前記熱交換媒体流路内において、前記熱媒によって加熱されることで蒸発し、前記二次電池に熱を与えて冷却されることにより凝縮する、温度調節装置。
【請求項7】
請求項1
から請求項6までのいずれか一項に記載の温度調節装置であって、
前記熱交換媒体は、フロン類の化合物である、温度調節装置。
【請求項8】
請求項1
から請求項
7までのいずれか一項に記載の温度調節装置であって、
前記熱交換媒体は、沸点が摂氏30度(℃)以下である、温度調節装置。
【請求項9】
請求項1から請求項
8までのいずれか一項に記載の温度調節装置であって、
複数の前記熱交換媒体流路を有し、
各前記熱交換媒体流路は、前記冷媒流路の下方において並べて配置された複数の前記二次電池の間に、それぞれ配置され、
前記温度調節装置は、さらに、
複数の前記二次電池の上方において、複数の前記熱交換媒体流路を接続するように前記二次電池の配列方向に沿って連通する連通空間を備える、温度調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の温度調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温度が上昇したバッテリを冷却する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術では、ヒートパイプの一端がバッテリに接続され、他端が蓄熱材を包含するヒートシンクに接続されている。蓄熱材は、ヒートシンクを介してバッテリの熱を奪い、ヒートシンク内を通る冷却水により冷却される。温度が上昇した冷却水は、ラジエータにより外部へと熱を放出することで冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された液体を用いてバッテリから熱を移動させる液冷式の冷却方法では、冷却水の流体比熱が大きく、冷却能力が高い。しかしながら、複数のバッテリが積層されている電池システムを液冷式で冷却すると、各バッテリ間に形成された複数の流路のそれぞれへと、均一に冷却水を分配できない。この結果、各バッテリの冷却度合いにバラツキが生じる。また、冷却水が流れる流路では、入口側の冷却水の温度よりも出口側の冷却水の温度の方が高く、冷却水の流れ方向であるバッテリの面方向に沿ったバッテリの温度差が大きくなる。この結果、冷却水の分配が少ない流路に隣接するバッテリを十分に冷却できず、冷却されていない一部のバッテリが他のバッテリよりも劣化してしまう課題がある。空冷式の冷却方法でも、液冷式と同じ課題が存在する。特に、自動車に搭載されるリチウム電池などの二次電池の寿命を長く維持するためには、一部の二次電池が他の二次電池よりも極端に劣化しないように、複数の二次電池を均一に冷却することが望まれていた。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、二次電池における温度分布の差を抑制して、二次電池全体を均一に冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。二次電池の温度調節装置であって、前記二次電池のうち鉛直方向の上方に配置される冷媒流路であって、冷媒が流れる冷媒流路を形成する冷媒流路形成部と、前記二次電池の側面に配置される熱交換媒体流路であって、前記二次電池と前記冷媒流路を流れる前記冷媒とのそれぞれと熱交換可能な熱交換媒体が収容された熱交換媒体流路を形成する熱交換媒体流路形成部と、前記二次電池のうち鉛直方向の下方に配置される熱媒流路であって、前記熱交換媒体と熱交換可能な熱媒が流れる熱媒流路を形成する熱媒流路形成部と、を備え、前記熱交換媒体は、前記熱交換媒体流路内において、前記冷媒によって冷却されることで凝縮し、前記二次電池の熱を奪って加熱されることにより蒸発し、前記熱交換媒体流路内において、前記熱媒によって加熱されることで蒸発し、前記二次電池に熱を与えて冷却されることにより凝縮する、温度調節装置。二次電池の温度調節装置であって、前記二次電池のうち鉛直方向の上方に配置される冷媒流路であって、冷媒が流れる冷媒流路を形成する冷媒流路形成部と、前記二次電池の側面に配置される熱交換媒体流路であって、前記二次電池と前記冷媒流路を流れる前記冷媒とのそれぞれと熱交換可能な熱交換媒体が収容された熱交換媒体流路を形成する熱交換媒体流路形成部と、を備え、前記熱交換媒体は、前記熱交換媒体流路内において、前記冷媒によって冷却されることで凝縮し、前記二次電池の熱を奪って加熱されることにより蒸発し、前記熱交換媒体流路形成部は、前記二次電池の側面に隣接する外壁と、前記外壁の内側に配置された、多孔質体で形成された多孔質体層と、を有する、温度調節装置。そのほか、本発明は、以下の形態としても実現可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、二次電池の温度調節装置が提供される。この二次電池の温度調節装置は、前記二次電池のうち鉛直方向の上方に配置される冷媒流路であって、冷媒が流れる冷媒流路を形成する冷媒流路形成部と、前記二次電池の側面に配置される熱交換媒体流路であって、前記二次電池と前記冷媒流路を流れる前記冷媒とのそれぞれと熱交換可能な熱交換媒体が収容された熱交換媒体流路を形成する熱交換媒体流路形成部と、を備え、前記熱交換媒体は、前記熱交換媒体流路内において、前記冷媒によって冷却されることで凝縮し、前記二次電池の熱を奪って加熱されることにより蒸発する。
【0008】
この構成によれば、充電または放電によって二次電池が発熱すると、熱交換媒体流路に収容された熱交換媒体が二次電池の熱を奪って蒸発する。蒸発した熱交換媒体は、熱交換
媒体流路内において上昇し、冷媒流路を流れる冷媒によって冷却され凝縮する。凝縮した熱交換媒体は、再度二次電池の熱を奪って蒸発する。すなわち、熱交換媒体は、液体と気体とに交互に変化して熱交換媒体流路内を循環することにより、二次電池を冷却する。本構成と異なる空冷式および液冷式の冷却方法では、気体または液体の熱交換媒体は、二次電池の熱を奪って昇温するため、流入する入口側と出口側とで温度差が生じる。換言すると、入口側と出口側とで二次電池を冷却する冷媒の温度分布差が発生する。この結果、空冷式および液冷式の冷却方法では、充放電を繰り返すと、二次電池の部位によって劣化具合が異なる。それに対して、本構成では、熱交換媒体の蒸発潜熱を利用して二次電池を冷却しているため、二次電池が熱交換媒体の沸点近傍の温度で、かつ、速やかに冷却され、二次電池における温度分布差が抑制される。すなわち、本構成では、二次電池全体をできるだけ均一に冷却し、充放電を繰り返した二次電池の一部が極端に劣化することを抑制できる。
【0009】
(2)上記態様の二次電池の温度調節装置において、前記熱交換媒体は、フロン類の化合物であってもよい。
この構成によれば、熱交換媒体がフロン類の化合物である。フロン類の熱交換媒体は、水などに比べて密度が高いため、凝縮した場合に鉛直下方へと速やかに移動する。この結果、熱交換媒体が二次電池を冷却する速度が上昇する。
【0010】
(3)上記態様の二次電池の温度調節装置において、前記熱交換媒体は、沸点が摂氏30度(℃)以下であってもよい。
この構成によれば、熱交換媒体の沸点は、二次電池が稼働に適した温度の上限付近の30℃である。そのため、熱交換媒体が液体から気体へと変化する際の蒸発潜熱を二次電池の冷却に効果的に利用できる。これにより、二次電池の温度が30℃よりも高くなることを抑制できる。
【0011】
(4)上記態様の二次電池の温度調節装置において、さらに、前記二次電池のうち鉛直方向の下方に配置される熱媒流路であって、前記熱交換媒体と熱交換可能な熱媒が流れる熱媒流路を形成する熱媒流路形成部を備え、前記熱交換媒体は、前記熱交換媒体流路内において、前記熱媒によって加熱されることで蒸発し、前記二次電池に熱を与えて冷却されることにより凝縮してもよい。
この構成によれば、寒冷地などにおいて二次電池の温度が過度に低下している場合に、熱媒流路を流れる熱媒が熱交換媒体を加熱して蒸発させる。蒸発した熱交換媒体が、蒸気拡散作用により広い表面に拡散して二次電池を加熱する。その後、凝縮した熱交換媒体は、重力作用により速やかに熱媒側へ液体として供給されるため、熱交換媒体の熱輸送速度が高くなる。本構成では、空冷、液冷、および直接沸騰冷却と比較して、熱交換媒体の流量を分配する必要がないため、熱交換媒体の流量を削減でき、稼働に適した温度よりも低い二次電池の温度を稼働に適した温度へと速やかに加熱できる。
【0012】
(5)上記態様の二次電池の温度調節装置において、前記熱交換媒体流路形成部は、前記二次電池の側面に隣接する外壁と、前記外壁の内側に配置された、多孔質体で形成された多孔質体層と、を有していてもよい。
この構成によれば、熱交換媒体流路を形成する熱交換媒体流路形成部は、二次電池に隣接する外壁の内側に多孔質体層を有している。液体の熱交換媒体は、多孔質体によって発生する毛細管現象により、多孔質体層へと浸透する。この結果、液体の熱交換媒体が速やかに多孔質体層へと広がるため、外壁を介した熱交換媒体と二次電池との熱交換が速やかに行われる。この結果、熱交換媒体は、二次電池を速やかに冷却できる。
【0013】
(6)上記態様の二次電池の温度調節装置において、さらに、前記二次電池のうち鉛直方向の下方に配置される貯留部であって、液体の前記熱交換媒体を貯留する貯留部を備えて
いてもよい。
この構成によれば、貯留部に貯留されている液体の熱交換媒体は、多孔質体層の毛細管現象により、多孔質体層へと浸透する。そのため、重力作用により鉛直下方の貯留部に貯留された熱交換媒体は、多孔質体層に浸透することにより二次電池との熱交換を速やかに行うことができる。
【0014】
(7)上記態様の二次電池の温度調節装置において、複数の前記熱交換媒体流路を有し、各前記熱交換媒体流路は、前記冷媒流路の下方において並べて配置された複数の前記二次電池の間に、それぞれ配置され、前記貯留部は、複数の前記二次電池の下方において、複数の前記熱交換媒体流路を接続するように前記二次電池の配列方向に沿って延びていてもよい。
この構成によれば、複数の二次電池が配置されている二次電池間に熱交換媒体流路が形成されている。貯留部は、複数の二次電池の配列方向に沿って延びている各熱交換媒体流路を、二次電池の鉛直下方において接続している。本構成と異なる空冷式および液冷式の冷却方法では、二次電池間に形成された複数の熱交換媒体流路に対して、熱交換媒体を均一に分配できずに、各二次電池を均一に冷却できない場合がある。この場合に、充放電を繰り返すと、複数の二次電池において、十分に冷却されなかった二次電池の劣化が大きくなる。複数の二次電池を一括で制御する場合には、最も劣化した二次電池に応じて充放電が行われるため、一部の二次電池が他の二次電池よりも劣化していると、複数の二次電池全体の寿命を低下させるおそれがある。これに対して、本構成では、蒸発することにより二次電池を冷却する熱交換媒体を利用して二次電池を冷却しているため、複数の二次電池のそれぞれが熱交換媒体の沸点温度でほぼ均一に冷却される。また、貯留部が複数の熱交換媒体流路に接続しているため、一部の二次電池の温度が高い場合に、当該二次電池を多くの熱交換媒体により冷却できる。この結果、本構成では、複数の二次電池間における温度分布差が抑制され、複数の二次電池を一括で制御する場合に複数の二次電池全体の寿命の低下を抑制できる。
【0015】
(8)上記態様の二次電池の温度調節装置において、複数の前記熱交換媒体流路を有し、各前記熱交換媒体流路は、前記冷媒流路の下方において並べて配置された複数の前記二次電池の間に、それぞれ配置され、前記温度調節装置は、さらに、複数の前記二次電池の上方において、複数の前記熱交換媒体流路を接続するように前記二次電池の配列方向に沿って連通する連通空間を備えていてもよい。
この構成によれば、複数の二次電池が配置されている二次電池間に熱交換媒体流路が形成されている。連通空間は、複数の二次電池の配列方向に沿って延びている各熱交換媒体流路を、二次電池の鉛直上方において接続している。そのため、外部衝撃等による特定の二次電池における電極間短絡などにより、当該二次電池が急激に発熱して熱交換媒体の蒸気量が増加しても、熱交換媒体が連通空間を介して他の熱交換媒体流路に流入するため、圧力上昇が緩和される。また、冷媒により増加した熱交換媒体の蒸気が凝縮するため、圧力上昇がさらに緩和される。すなわち、電極間短絡などに起因する二次電池の発熱による高温劣化を抑制できる。また、本構成では、熱交換媒体の蒸発を利用して二次電池を冷却しているため、各二次電池は、部位にかかわらずほぼ均一に冷却される。連通空間が複数の熱交換媒体流路を接続しているため、一の熱交換媒体流路を流れていた熱交換媒体は、連通空間を介して他の熱交換媒体流路へと流入可能である。そのため、一部の二次電池の温度が他の二次電池よりも高い場合に、温度が高い二次電池と熱交換可能な熱交換媒体流路に熱交換媒体が流入することにより、温度が高い二次電池を多くの熱交換媒体により冷却できる。この結果、本構成では、複数の二次電池における温度分布差が抑制され、複数の二次電池を一括で制御する場合に複数の二次電池全体の寿命の低下を抑制できる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、二次電池、二次電池の温度調節装置、二次電池の冷却装置、リチウムイオン電池、二次電池の温度調節方法
、二次電池の制御方法およびこれらの装置を備えるシステム、これら装置を実行するためのコンピュータプログラム、このコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、コンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態としての二次電池システムの概略断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態としての二次電池システムの概略断面図である。
【
図3】二次電池の温度上昇のサイクル回数と容量損失との説明図である。
【
図5】二次電池の温度変化についての説明図である。
【
図6】二次電池の温度変化についての説明図である。
【
図7】HW走行モードの場合における二次電池の温度変化の説明図である。
【
図8】HW走行モードの場合における二次電池の温度変化の説明図である。
【
図9】HW走行モードの場合における二次電池の温度変化の説明図である。
【
図10】各冷却方法で二次電池を冷却した場合の電池容量率の説明図である。
【
図11】各冷却方法で二次電池を冷却した場合の電池容量率の説明図である。
【
図12】熱交換媒体の沸点が異なる低沸点媒体の評価の説明図である。
【
図13】熱交換媒体の沸点が異なる低沸点媒体の評価の説明図である。
【
図14】第2実施形態の二次電池システムの一部の概略断面図である。
【
図15】多孔質体層による熱交換媒体の液輸送速度の説明図である。
【
図16】多孔質体層による熱交換媒体の液輸送速度の説明図である。
【
図17】多孔質体層を用いた熱交換媒体と減圧水との液輸送量についての説明図である。
【
図18】第3実施形態の二次電池システムの一部の概略断面図である。
【
図19】冷却された複数の二次電池のうちの最大温度と最小温度との差についての説明図である。
【
図20】空冷で冷却した場合の各二次電池の温度の説明図である。
【
図21】低沸点媒体の冷却と空冷とによる二次電池の容量劣化率の説明図である。
【
図22】低沸点媒体の冷却と液冷とによる二次電池の容量劣化率の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
1.二次電池システムの構成:
図1および
図2は、本発明の一実施形態としての二次電池システム100の概略断面図である。本実施形態の二次電池システム100は、複数の二次電池10と、二次電池10の温度を調節する温度調節システム20とを備えている。温度調節システム20は、低い沸点を有する熱交換媒体の蒸発潜熱を利用して二次電池の温度を調節することにより、複数の二次電池全体をほぼ均一かつ速やかに冷却する。
【0019】
図1,2には、二次電池システム100の一部の概略断面図が示されている。各二次電池10は、略直方体の形状を有している。本実施形態における複数の二次電池10のそれぞれは、同じ材質および形状を有するリチウムイオン電池である。複数の二次電池10は、水平方向に沿って配列されている。なお、
図1,2に示される直交座標系CSは、水平方向に平行なX軸と、鉛直方向に平行なZ軸と、X軸とY軸とのそれぞれに直交するY軸と、により構成されている。直交座標系CSは、
図3以降に示される直交座標系CSと対応している。
【0020】
温度調節システム20は、二次電池10の上方に配置される冷媒流路31を形成する冷媒流路形成部30と、二次電池10のうち鉛直方向の下方に配置される熱媒流路41を形
成する熱媒流路形成部40と、各二次電池10の間に配置される複数の熱交換媒体流路51を形成する熱交換媒体流路形成部50と、を備えている。
【0021】
図1,2に示されるように、本実施形態の冷媒流路形成部30は、X軸に沿って延び、内部に冷媒が流れる配管の外壁である。同じように、熱媒流路形成部40は、X軸に沿って延び、内部に熱媒が流れる配管の外壁である。冷媒流路31および熱媒流路41を流れる冷媒は、不凍液(LLC:long life coolant)である。
図1,2では図示されていないが、本実施形態の冷媒流路31を流れる冷媒は、空気中の大気によって大気の温度(摂氏27度(℃))、または、媒体をエアコン冷媒としていた場合にはエアコン冷媒温度(5℃)まで冷却される。熱媒流路41を流れる熱媒は、図示されていないヒータにより、35℃まで加熱される。
【0022】
本実施形態の熱交換媒体流路形成部50は、内部に熱交換媒体を収容する空間を形成する外壁である。
図1,2に示されるように、複数の熱交換媒体流路形成部50は、複数の熱交換媒体流路51を形成する。本実施形態では、複数の熱交換媒体流路形成部50は、各熱交換媒体流路51が別々の空間になるように形成されている。各熱交換媒体流路51は、冷媒流路形成部30および熱媒流路形成部40と隣接している。そのため、熱交換媒体流路51を流れる熱交換媒体は、冷媒と熱媒とのそれぞれと熱交換可能である。また、各熱交換媒体流路形成部50は二次電池10と隣接しているため、熱交換媒体は、熱交換媒体流路形成部50を介して、二次電池10と熱交換可能である。
【0023】
本実施形態の熱交換媒体は、沸点が29℃のフロン類の化合物で形成された低沸点媒体である。
図1には、二次電池10および冷媒との熱交換により、熱交換媒体流路51内を流れる熱交換媒体のイメージが示されている。二次電池10の温度が29℃を超えると、液体の熱交換媒体は、二次電池10との熱交換により、二次電池10の熱を奪って加熱されることにより蒸発する。蒸発した熱交換媒体GSは、
図1に示されるように、熱交換媒体流路51内を上昇して、冷媒流路31を流れる冷媒によって冷却されることで凝縮する。凝縮した熱交換媒体は、熱交換媒体流路形成部50の内側を伝わって、二次電池10との熱交換を再度行う。すなわち、熱交換媒体は、二次電池10との熱交換と、冷媒との熱交換とにより、熱交換媒体流路51内で蒸発と凝縮とを繰り返して循環し、二次電池10を冷却する。
【0024】
図2には、二次電池10および熱媒との熱交換により、熱交換媒体流路51内を流れる熱交換媒体のイメージが示されている。二次電池10が寒冷地などに存在して、二次電池10の温度が非常に低い場合(例えば、-10℃)に、熱交換媒体を介して熱媒が二次電池10を加熱する。二次電池10の温度が低い場合に、液体の熱交換媒体は、熱交換媒体流路51内の下方において、熱媒流路41を流れる熱媒によって29℃よりも高く加熱されることにより蒸発する。蒸発した熱交換媒体GSは、
図2に示されるように、熱交換媒体流路51内を上昇して、蒸気拡散作用により熱交換媒体流路形成部50を介して二次電池10と熱交換を行う。これにより、熱交換媒体GSは、二次電池10に熱を与えて冷却されることにより、凝縮して重力作用により下方に速やかに移動して、熱媒側に供給される。凝縮した熱交換媒体は、熱媒により加熱されることで、再度蒸発して二次電池10と熱交換を行う。すなわち、熱交換媒体は、二次電池10の温度が低い場合に、熱媒との熱交換と、二次電池10との熱交換とにより、二次電池10を加熱する。
【0025】
2.効果:
図3は、二次電池10の温度上昇のサイクル回数と容量損失との説明図である。
図3には、各温度(K:ケルビン)における充電と放電とを繰り返すサイクル回数に応じて、二次電池10の劣化による容量損失の解析結果が示されている。容量損失とは、未使用の二次電池10の電池容量率を1とした場合に、温度上昇サイクルにより失われる電池容量率
である。
図3には、25℃での充電と放電とを繰り返すサイクルの場合の損失曲線C1(実線)と、50℃での充電と放電とを繰り返すサイクルの場合の損失曲線C2(破線)とが示されている。
図1に示されるように、基準温度に対してより温度差がある損失曲線C2の方が、サイクル回数に応じた容量損失が増加する。すなわち、二次電池10の充放電を繰り返して、二次電池10の寿命を長くするためには、サイクルを繰り返す温度上昇幅の差を小さくすることが好ましい。
【0026】
次に、低沸点媒体を熱交換媒体として用いた蒸気熱輸送による冷却方法と、熱交換媒体として大気を利用した空冷と、熱交換媒体としてLLCを用いた冷式とより二次電池10を冷却した場合の二次電池10の温度上昇について解析した。
図4は、解析条件についての説明図である。
図4には、エンジンと走行用の二次電池10を備えるプラグインハイブリッド車(PHV:Plug-in Hybrid Vehicle)と、二次電池10により稼働する電気自動車(EV:Electric Vehicle)とに各冷却方法を適用する場合の冷却諸元が表として示されている。
図4に示される解析条件では、外気の温度を27℃とし、液冷の場合に二次電池10を冷却するために必要な外気温度差を6℃とした。液冷では、二次電池10を冷却するための冷媒であるLLCの流入温度が、外気の27℃よりも高くなり、33℃として設定した。
【0027】
図5および
図6は、二次電池10の温度変化についての説明図である。二次電池10の温度は、走行時よりも充電時に上昇しやすい。
図5,6では、所定の運転モードである「街乗りモード」を1日に4回行い、街乗りモード4回/日を5日間行った後に、週に1回の充電を行った場合の放電深度の変化が示されている。
図5には、充電速度を表すCレート毎に、時間に応じて変化する二次電池10の放電深度が示されている。
図5には、Cレートが1Cの場合の放電深度の変化直線L1(実線)と、Cレートが2Cの場合の放電深度の変化直線L2(破線)と、Cレートが3Cの場合の放電深度の変化直線L3(一点鎖線)とが示されている。Cレートが1Cの場合に二次電池10の充電に要した時間は48分(min)であり、2Cの場合の所要時間が24minであり、3Cの場合の所要時間が16minである。
【0028】
図6には、1C~3CのCレートに対して、各冷却方法で冷却した場合における二次電池10の温度変化が示されている。
図7には、蒸気熱輸送で冷却した場合の二次電池10の温度変化C31(実線)と、空冷の各Cレートに対応した温度変化C41~C43(破線)と、液冷の各Cレートに対応した温度変化C51~C53(一点鎖線)とが示されている。なお、蒸気熱輸送の冷却方法の温度変化は、Cレートにかかわらず同じであったため、
図6では、Cレートが3Cである温度変化C31のみが示されている。
【0029】
図6の温度変化C31で示されるように、蒸気熱輸送の冷却方法では、二次電池10の温度は、熱交換媒体の沸点である29℃程度までしか上昇しない。一方、温度変化C43で示されるように、空冷の冷却方法では、Cレートが3Cの場合に二次電池10の温度が最大で50℃まで上昇する。また、温度変化C53で示されるように、液冷の冷却方法では、Cレートが3Cの場合に二次電池10の温度が最大で37℃まで上昇する。すなわち、蒸気熱輸送の冷却方法は、空冷および液冷よりも二次電池10の温度上昇を抑制できる。
【0030】
次に、運転モードを変化させた場合の二次電池10の温度変化について評価した。
図7から
図9までの各図は、HW走行モードの場合における二次電池10の温度変化についての説明図である。
図7~9では、所定の運転モードとしてHW走行モードが行われた場合の温度変化が示されている。HW走行モードは、50分間、時速100km(km/h)の走行と、10分間、3CのCレートの充電とを繰り返す運転モードである。
【0031】
図7には、二次電池10の電力変化C6と、二次電池10の放電深度変化C7とが示されている。電力変化C6は、二次電池10単体での走行時に放電している電力を表し、充電時に充電されている電力を表している。
図7の電力変化C6で示されるように、二次電池10の充電時の電力は、走行時の電力よりも大きくなる。
図7に示される放電深度変化C7は、放電深度(DOD:Depth of Discharge)が0.3から0.7の間で推移している。放電深度は、充電時に最小の0.3となり、走行すると徐々に増加する。
【0032】
図8には、HW走行モードにおいて各冷却方法で冷却した場合の二次電池10の温度変化が示されている。
図8には、蒸気熱輸送で冷却した場合の二次電池10の温度変化C8(実線)と、空冷の二次電池10の温度変化C9(破線)と、液冷の二次電池10の温度変化C10(一点鎖線)とが示されている。
図8に示されるように、いずれの冷却方法でも充電時に二次電池10の温度が最も高くなる。蒸気熱輸送の温度変化C8で示されるように、蒸気熱輸送で冷却される二次電池10の温度は、走行時において29℃であり、充電時において一時的に29℃よりも若干高くなる。一方で、空冷の温度変化C9で示されるように、空冷の二次電池10の温度は、充電時において45℃前後まで上昇し、走行時において30℃前後まで低下する。また、液冷の温度変化C10で示されるように、液冷の二次電池10の温度は、充電時において38℃前後まで上昇し、33℃前後まで低下する。すなわち、空冷/液冷では走行時も電池温度が高いが、蒸気熱輸送の冷却方法は、空冷および液冷よりも二次電池10の温度上昇を抑制する。
【0033】
図9には、HW走行モードにおいて各冷却方法における冷媒(熱交換媒体)の媒体流入温度からの顕熱変化が示されている。
図9には、蒸気熱輸送の熱交換媒体の顕熱変化C11(実線)と、空冷の熱交換媒体である空気の顕熱変化C12(破線)と、液冷の熱交換媒体であるLLCの顕熱変化C13(一点鎖線)とが示されている。蒸気熱輸送の顕熱変化C11で示されるように、熱交換媒体の顕熱変化量は、ほぼ一定である。一方で、空冷の顕熱変化C12および液冷の顕熱変化C13で示されるように、空冷および液冷の熱交換媒体の顕熱変化量は、充電時に上昇して、走行時に低下する。
図8,9に示される二次電池10の温度上昇および熱交換媒体における顕熱変化量の上昇は、二次電池10の劣化に影響する。そのため、蒸気熱輸送の冷却方法は、空冷および液冷よりも二次電池10の劣化を抑制する。
【0034】
図10および
図11は、各冷却方法で二次電池10を冷却した場合の電池容量率についての説明図である。電池容量率は、未使用の二次電池10が充放電可能な容量を1とした場合に、二次電池10の10年使用後に劣化した二次電池10の充放電可能な容量の割合である。
図10,11では、所定の運転モードにより使用した二次電池10の10年後の電池容量率が示されている。
【0035】
図10には、蒸気熱輸送と、空冷と、液冷とにおいて3つの運転モードで二次電池10を使用した場合の10年後の電池容量率が棒グラフで示されている。3つの運転モードは、街乗りモードと、街乗りモードとHWモードとを組み合わせた混合モードと、混合モードにおいて冷媒の流量分配を考慮した流量分配モードとである。混合モードでは、街乗りモードに加えて、月に1回の50分放電と10分充電とを5連続で行うHWモードを加えている。混合モードでは、二次電池10間の各熱交換媒体流路を流れる熱交換媒体の流量が同じである。一方で、流量分配モードは、主管を流れる熱交換媒体の流量が各熱交換媒体流路に分配されている。そのため、流量分配モードでは、各熱交換媒体流路内の熱交換媒体の流量が異なる。なお、蒸気熱輸送では、流量分配は不要である。そのため、蒸気熱輸送においては、街乗りモードと混合モードとの2つの運転モードに対応した電池容量率が
図10に示されている。
【0036】
図10に示されるように、蒸気熱輸送で冷却された二次電池10の電池容量率は、街乗
りモードで0.83、混合モードで0.66である。一方で、空冷の二次電池10の電池容量率は、街乗りモードで0.79、混合モードで0.58、流量分配モードで0.54である。また、液冷の二次電池10の電池容量率は、街乗りモードで0.78、混合モードで0.57、流量分配モードで0.57である。以上のことから、蒸気熱輸送を利用して二次電池10を冷却することにより、空冷および液冷よりも電池容量率の減少を抑制できる。
【0037】
図11には、蒸気熱輸送の冷却と、空冷と、液冷とのそれぞれについて、放電および充電が及ぼす電池容量率の劣化の度合いが示されている。なお、空冷と液冷との電池容量率は、流量分配モードの数値が示されている。
図11に示されるように、蒸気熱輸送の電池容量率は、放電により0.25劣化し、充電により0.08劣化する。空冷の電池容量率は、放電により0.31劣化し、充電により0.15劣化する。液冷の電池容量率は、放電により0.31劣化し、充電により0.12劣化する。
【0038】
図12および
図13は、熱交換媒体の沸点が異なる低沸点媒体の評価の説明図である。
図12には、沸点が29℃、39℃、49℃の熱交換媒体を用いて、街乗りモードの二次電池10を蒸気熱輸送で冷却した場合に、放電および充電が及ぼす電池容量率の劣化の度合いが示されている。
図12に示されるように、沸点が29℃の熱交換媒体を用いた蒸気熱輸送の電池容量率は、放電により0.09劣化し、充電により0.08劣化した0.83である。沸点が39℃の電池容量率は、放電により0.10劣化し、充電により0.11劣化した0.79である。沸点が49℃の電池容量率は、放電により0.18劣化し、充電により0.18劣化した0.64である。熱交換媒体の沸点が高くなることにより、冷却後の二次電池10の温度も高くなる。
図12に示されるように、二次電池10の温度が充電時および放電時に高く維持されると、二次電池10が劣化し、二次電池10の電池容量率が低下する。
【0039】
図13には、温度に応じて変化する熱交換媒体のゲージ圧変化が示されている。具体的には、沸点が29℃の熱交換媒体のゲージ圧変化C14が実線で示され、沸点が39℃の熱交換媒体のゲージ圧変化C15が破線で示され、沸点が49℃の熱交換媒体のゲージ圧変化C16が一点鎖線で示されている。
図13に示されるように、同じ温度でも沸点が低い熱交換媒体ほどゲージ圧が高くなる。-5℃から40℃の環境温度下で熱交換媒体のゲージ圧がゼロよりも大きい正圧だと、熱交換媒体が大気に漏れる場合がある。ゲージ圧が正圧の場合には、漏れた熱交換媒体を定期的に補充することで、熱交換媒体の冷却機能を維持できる。一方で、環境温度下で熱交換媒体のゲージ圧がゼロよりも小さい負圧だと、大気が熱交換媒体流路51に流れ込む場合がある。熱交換媒体と空気とが混合されると、熱交換媒体の分圧が低下し大気成分が蒸気の拡散を阻害するため、熱交換媒体の蒸気輸送能力が低下するおそれがある。そのため、熱交換媒体のゲージ圧は高い方が好ましい。すなわち、
図13に示される3種類の熱交換媒体のうち、沸点が29℃の熱交換媒体が二次電池10の冷却に用いられることが好ましい。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の温度調節システム20では、冷媒が流れる冷媒流路31を形成する冷媒流路形成部30は、二次電池10の上方に配置されている。熱交換媒体流路形成部50が形成する熱交換媒体流路51には、二次電池10と冷媒と熱交換可能な熱交換媒体が流れている。液体の熱交換媒体は、二次電池10との熱交換により、二次電池10の熱を奪って加熱されることにより蒸発する。蒸発した熱交換媒体GSは、熱交換媒体流路51内を上昇して、冷媒流路31を流れる冷媒によって冷却されることで凝縮する。そのため、本実施形態の温度調節システム20では、充電または放電によって二次電池10が発熱すると、熱交換媒体流路51に収容された熱交換媒体が二次電池の熱を奪って蒸発する。蒸発した熱交換媒体は、熱交換媒体流路51内において上昇し、冷媒流路31を流れる冷媒によって冷却され凝縮する。凝縮した熱交換媒体は、再度二次電池10
の熱を奪って蒸発する。すなわち、熱交換媒体は、液体と気体とに交互に変化して熱交換媒体流路51内を循環することにより、二次電池10を冷却する。本実施形態と異なる空冷式および液冷式の冷却方法では、冷媒は、二次電池10の熱を奪って昇温するため、流入する入口側と出口側とで温度差が生じる。換言すると、入口側と出口側とで二次電池10を冷却する冷媒の温度分布差が発生する。この結果、空冷式および液冷式の冷却方法では、充放電を繰り返すと、二次電池10の部位によって劣化具合が異なる。それに対して、本実施形態では、熱交換媒体の蒸発潜熱を利用して二次電池10を冷却しているため、二次電池10が熱交換媒体の沸点近傍の温度で、かつ、速やかに冷却され、二次電池10における温度分布差が抑制される。すなわち、本実施形態では、二次電池10全体をできるだけ均一に冷却し、充放電を繰り返した二次電池10の一部が極端に劣化することを抑制できる。
【0041】
また、本実施形態の熱交換媒体は、フロン類の化合物である。フロン類の熱交換媒体は、水などに比べて密度が高いため、凝縮した場合に鉛直下方へと速やかに移動する。この結果、熱交換媒体が二次電池10を冷却する速度が上昇する。
【0042】
また、本実施形態の熱交換媒体は、沸点が29℃(≦30℃)である。沸点の29℃は、二次電池10が稼働に適した温度の上限温度付近であるため、熱交換媒体が液体から気体へと変化する際の蒸発潜熱を二次電池10の冷却に効果的に利用できる。これにより、二次電池10の温度が29℃よりも高くなることを抑制できる。
【0043】
また、本実施形態の温度調節システム20では、熱媒流路形成部40が二次電池10のうち鉛直方向の下方に配置される熱媒流路41を形成する。二次電池10の温度が低い場合に、液体の熱交換媒体は、熱交換媒体流路51内の下方において、熱媒流路41を流れる熱媒によって加熱されることにより沸点よりも高温の気体に変化する。熱交換媒体は、二次電池10に熱を与えて冷却されることにより、液体へと変化して重力作用により下方に速やかに移動して、熱媒側に供給される。そのため、本実施形態では、寒冷地などにおいて二次電池10の温度が過度に低下している場合に、熱媒流路41を流れる熱媒が熱交換媒体を加熱して蒸発させる。蒸発した熱交換媒体が、蒸気拡散作用により広い表面に拡散して二次電池10を加熱する。その後、凝縮した熱交換媒体は、重力作用により速やかに熱媒側へ液体として供給されるため、熱交換媒体の熱輸送速度が高くなる。本実施形態では、空冷、液冷、および直接沸騰冷却と比較して、熱交換媒体の流量を分配する必要がないため、熱交換媒体の流量を削減でき、稼働に適した温度よりも低い二次電池10の温度を稼働に適した温度へと速やかに加熱できる。
【0044】
<第2実施形態>
図14は、第2実施形態の二次電池システム100aの一部の概略断面図である。第2実施形態では、第1実施形態の二次電池システム100と比較して、熱交換媒体流路形成部50aが外壁52および多孔質体層53を備えることが第1実施形態と異なる。そのため、第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成について説明し、第1実施形態と同じ構成および形状等についての説明を省略する。
【0045】
図14に示されるように、外壁52は、二次電池10の側面に隣接する。外壁52は、金属の材質で形成されている。多孔質体層53は、外壁52の内側に配置され、多孔質体で形成されている。本実施形態では、多孔質体層53を形成する多孔質体は、空隙率が80%、目開きが100μm、厚さが1mmのアルミで形成されている。第2実施形態では、二次電池10の冷却時に、冷媒流路31を流れる冷媒により冷却されて凝縮した熱交換媒体は、毛細管現象と重力作用とにより多孔質体層53内を鉛直下方へと流れ落ちる。
【0046】
図15および
図16は、多孔質体層53による熱交換媒体の液輸送速度の説明図である
。
図15には、フロン類の化合物である熱交換媒体の液輸送速度の時間変化C17(実線)と、フロン類化合物と同じ沸点(29℃)である4.1kPaの減圧水の液輸送速度の時間変化C18(破線)と、が示されている。
図15に示される液輸送速度Vは、運動量方程式から導出された下記式(1)により算出される。
図15の時間変化C17,18で示されるように、フロン類化合物の液輸送速度Vは、減圧水よりも速い。
【0047】
【数1】
r:気孔径
η:粘度
h
c:浸透距離
σ:表面張力
θ:接触角
ρ:密度
g:重力加速度
ξ:屈曲や気孔径変化の補正係数
【0048】
図16には、
図15の0s~20sを拡大したフロン類化合物の熱輸送速度の時間変化C17が示されている。
図16に示される時間変化C17では、冷媒流路形成部30から二次電池10の下端までの距離が30cmの場合に、冷媒により冷却されて凝縮した熱交換媒体が二次電池10の下端に到達するまでの時間は8.6sであった。
【0049】
図17は、多孔質体層53を用いたフロン類化合物と減圧水との液輸送量についての説明図である。
図17に示されるように、沸点が29℃のフロン類化合物である熱交換媒体の液輸送量は、3.28cc/sである。一方で、同じ沸点温度の減圧水の液輸送量は、1.43cc/sである。すなわち、フロン類化合物の液輸送量は、減圧水の約2.3倍である。
【0050】
以上説明したように、第2実施形態の二次電池システム100aでは、熱交換媒体流路形成部50aは、二次電池10の側面に隣接する外壁52と、外壁52の内側に多孔質体で形成された多孔質体層53と、を備えている。そのため、第2実施形態では、液体の熱交換媒体は、多孔質体によって発生する毛細管現象と重力作用により、多孔質体層53へと浸透する。この結果、液体の熱交換媒体が速やかに多孔質体層53へと広がるため、外壁52を介した熱交換媒体と二次電池10との熱交換が速やかに行われる。この結果、熱交換媒体は、二次電池10を速やかに冷却できる。特に、二次電池10の充電時のCレートが3C等である急速充電時にも、多孔質体層53により熱交換媒体の十分な液輸送量を得ることができる。
【0051】
<第3実施形態>
図18は、第3実施形態の二次電池システム100bの一部の概略断面図である。第3実施形態の二次電池システム100bは、二次電池10の鉛直上方に形成された連通空間54と、二次電池10の鉛直下方に配置された貯留部60と、を備えることが第2実施形態の二次電池システム100aと異なる。そのため、第3実施形態では、第1実施形態と第2実施形態とのそれぞれと異なる構成について説明し、第1実施形態または第2実施形態と同じ構成および形状等についての説明を省略する。
【0052】
図18に示されるように、連通空間54は、冷媒流路31の鉛直下方において各二次電
池10の間に配置された複数の熱交換媒体流路51を、二次電池10の配列方向に沿って連通している。そのため、熱交換媒体流路51内で蒸発した熱交換媒体は、連通空間54を介して他の熱交換媒体流路51へと流入可能である。貯留部60は、複数の熱交換媒体流路51を接続するように二次電池10の配列方向に沿って延びている。そのため、熱交換媒体流路51内で凝縮した熱交換媒体は、貯留部60を介して他の熱交換媒体流路51へと流入可能である。
【0053】
二次電池システム100bは、複数の二次電池10の充電量(SOC:State Of Charge)を一括で管理する。SOC一括管理では、複数の二次電池10のうちの一部が他の二次電池10よりも劣化している場合に、劣化している二次電池10が過充電または過放電とならないように、各二次電池10の充放電が行われる。すなわち、複数の二次電池10のSOC範囲で規定される電池容量率は、最も劣化している二次電池10によって決まる。二次電池システム100bの複数の二次電池10間の劣化の分布を抑制するために、各二次電池10の温度が均一に冷却されることが好ましい。
【0054】
図19は、冷却された複数の二次電池10のうちの最大温度と最小温度との差についての説明図である。
図19には、各二次電池10を、第3実施形態の低沸点媒体と、比較例の空冷および液冷とのそれぞれで冷却した場合に、最も高い二次電池10の温度と、最も低い二次電池10の温度差である最大最小温度差が示されている。空冷および液冷では、二次電池10の配列と鉛直方向に配置された主管から、配列方向に平行な各熱交換媒体流路51を枝管とするマニホールド分配方式で熱交換媒体の空気またはLLCが供給されている。
【0055】
熱交換媒体が低沸点媒体である第3実施形態では、連通空間54で蒸気圧力が均質化されて冷媒流路31にほぼ均一に供給されて凝縮する。その後、凝縮した熱交換媒体が多孔質体層53を介して鉛直下方に輸送される。その結果、
図19に示されるように、最大最小温度差は、0.01℃以下であり、ほとんど生じていない。
【0056】
一方で、空冷または液冷で各二次電池10が冷却された場合には、複数の枝管である熱交換媒体流路51のうち、主管に熱交換媒体が流れ込む流入口側に近い熱交換媒体流路51ほど熱交換媒体である空気またはLLCの流量が少なくなる。一方で、流入口側に最も遠い位置にある熱交換媒体流路51内の熱交換媒体の流量が多くなる。そのため、熱交換媒体の流量が多い熱交換交換媒体流路51に隣接する二次電池10の温度が相対的に下がり、熱交換媒体の流量が少ない熱交換媒体流路51に隣接する二次電池10の温度が相対的に上昇する。その結果、
図19に示されるように、空冷で二次電池10が冷却された場合の最大最小温度差が14.6℃であった。また、液冷で各二次電池10が冷却された場合の最大最小温度差が3.7℃であった。
【0057】
図20は、空冷で冷却した場合の各二次電池10の温度の説明図である。
図20には、主管における熱交換媒体としての空気の流入口側から遠い順番に二次電池10のセルナンバー(Cell Number)を付した場合に、各二次電池10の温度がプロットされている。
図20では、真ん中のセルナンバーの二次電池10に隣接する熱交換媒体流路51内の熱交換媒体の流量を基準として、他の熱交換媒体流路51内の最大の熱交換媒体の流量と、最小の熱交換媒体の流量とが異なる4種類の二次電池10の温度がプロットされている。
図20では、最大と最小の熱交換媒体の流量が、同じ(ゼロ)である温度が黒で塗りつぶした丸でプロットされ、±20%の温度が星印でプロットされ、±40%の温度が黒の四角でプロットされ、±60%の温度が白抜きの丸でプロットされている。
図20の4種類のプロットで示されるように、複数の熱交換媒体流路51に流れる流量の差が大きくなるほど、各熱交換媒体流路51に隣接する複数の二次電池10の温度差が大きくなる。
【0058】
図21は、低沸点媒体の冷却と空冷とによる二次電池10の容量劣化率の説明図である。
図21には、
図20と同じセルナンバーに対応する二次電池10の容量劣化率が示されている。
図21には、低沸点媒体を熱交換媒体として用いて二次電池10を3CのCレートでの充電を10年間使用した場合の容量劣化率が実線で示されている。また、
図21には、
図20に対応するように、複数の熱交換媒体流路51を流れる熱交換媒体の流量が最大と最小が、±20%と、±40%と、±60%との場合の容量劣化率がプロットと、各プロットを結ぶ直線(実線、破線、一点鎖線)とで示されている。
図21に示されるように、低沸点媒体を熱交換媒体として用いて二次電池システム100bを冷却する方法は、最大と最小の流量差が生じる空冷の冷却方法よりも、各二次電池10の容量劣化を抑制できる。また、空冷では、複数の熱交換媒体流路51に流れる流量の差が大きくなるほど、各二次電池10における劣化度合いの差が大きくなる。
【0059】
図22は、低沸点媒体の冷却と液冷とによる二次電池10の容量劣化率の説明図である。
図22には、
図21における空冷の代わりに液冷の場合の容量劣化率が示されている。
図22には、複数の熱交換媒体流路51を流れる熱交換媒体としてのLLCの流量が最大と最小が、±20%と、±40%と、±60%との場合の容量劣化率がプロットと、各プロットを結ぶ直線(実線、破線、一点鎖線)とで示されている。
図22に示されるように、低沸点媒体を熱交換媒体として用いて二次電池システム100bを冷却する方法は、最大と最小の流量差が生じる液冷の冷却方法よりも、各二次電池10の容量劣化を抑制できる。また、液冷では、複数の熱交換媒体流路51に流れる流量の差が大きくなるほど、各二次電池10における劣化度合いの差が大きくなる。
【0060】
以上説明したように、第3実施形態の貯留部60は、二次電池10の鉛直下方に配置されている。貯留部60に貯留されている液体の熱交換媒体は、多孔質体層53の毛細管現象により、多孔質体層53へと浸透する。そのため、鉛直下方に存在して、二次電池10と熱交換が行いづらい熱交換媒体でも、多孔質体層53により二次電池10との熱交換を速やかに行うことができる。そのため、第3実施形態では、貯留部60に貯留されている液体の熱交換媒体は、多孔質体層53の毛細管現象により、多孔質体層53へと浸透する。これにより、余剰液体により鉛直下方の貯留部60に貯留された熱交換媒体は、多孔質体層53の上昇方向に浸透することにより二次電池10との熱交換を速やかに行うことができる。
【0061】
また、第3実施形態の貯留部60は、複数の熱交換媒体流路51を接続するように二次電池10の配列方向に沿って延びている。
図19~22に示されるように、比較例の空冷および液冷では、複数の二次電池10間に形成された各熱交換媒体流路51に対して熱交換媒体を均一に分配できずに、各二次電池10を均一に冷却できない場合がある。この場合に、充放電を繰り返すと、複数の二次電池10において、十分に冷却されなかった二次電池10の劣化が大きくなる。SOC一括管理では、最も劣化した二次電池10に応じて充放電が行われるため、一部の二次電池10が他の二次電池10よりも劣化していると、複数の二次電池10全体の寿命を低下させるおそれがある。これに対して、第3実施形態の二次電池システム100bでは、低沸点媒体の熱交換媒体を利用して二次電池10を冷却しているため、複数の二次電池10のそれぞれが熱交換媒体の沸点温度でほぼ均一に冷却される。また、貯留部60が複数の熱交換媒体流路51を接続しているため、一部の二次電池10の温度が高い場合に、当該二次電池10を多くの熱交換媒体により冷却できる。この結果、複数の二次電池10間における温度分布差が抑制され、複数の二次電池10をSOC一括管理する場合に、複数の二次電池10を備える二次電池システム100bの寿命の低下を抑制できる。
【0062】
また、第3実施形態の連通空間54は、二次電池10の鉛直上方に形成されている。連通空間54は、冷媒流路31の鉛直下方において各二次電池10の間に配置された複数の
熱交換媒体流路51を、二次電池10の配列方向に沿って連通している。そのため、外部衝撃等による特定の二次電池10における電極間短絡などにより、当該二次電池10が急激に発熱して熱交換媒体の蒸気量が増加しても、熱交換媒体が連通空間54を介して他の熱交換媒体流路51に流入するため、圧力上昇が緩和される。また、冷媒により増加した熱交換媒体の蒸気が凝縮するため、圧力上昇がさらに緩和される。すなわち、電極間短絡などに起因する二次電池10の発熱による高温劣化を抑制できる。また、第3実施形態の二次電池システム100bでは、熱交換媒体である低沸点媒体の蒸発を利用して二次電池10を冷却しているため、各二次電池10は、枝管に沿った位置にかかわらずほぼ均一に冷却される。連通空間54が複数の熱交換媒体流路51を接続しているため、一部の熱交換媒体流路51を流れていた熱交換媒体は、連通空間54を介して他の熱交換媒体流路51へと流入可能である。そのため、一部の二次電池10の温度が他の二次電池10よりも高い場合に、温度が高い二次電池10と隣接する熱交換媒体流路51に熱交換媒体が流入することにより、温度が高い二次電池10を多くの熱交換媒体により冷却できる。この結果、第3実施形態では、複数の二次電池10における温度分布差が抑制され、複数の二次電池10をSOC一括管理で制御する場合に、一部の二次電池10が他の二次電池10と比較して過度に劣化することを抑制できる。よって、複数の二次電池10を備える二次電池システム100bの寿命の低下を抑制できる。
【0063】
<上記実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。また、上記実施形態において、ハードウェアによって実現されるとした構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されるとした構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0064】
上記第1実施形態から第3実施形態までの二次電池システム100,100a,100bは、一例であって、二次電池システム100,100a,100bの構成および計上等については変形可能である。例えば、二次電池システム100は、複数の二次電池10を備えていない温度調節システム20のみで構成されていてもよい。温度調節システム20は、冷媒が流れる冷媒流路31を形成する冷媒流路形成部30を備えていなくてもよい。熱媒流路41を流れる熱媒と二次電池10との熱交換を行う熱交換媒体は、沸点が29℃のフロン類化合物でなくてもよく、例えば、沸点が調整された減圧水であってもよく、沸点が30℃を超えるフロン類の化合物であってもよい。なお、熱交換媒体は、沸点が30℃以下のフロン類化合物が好ましい。
【0065】
二次電池システム100における熱交換媒体流路形成部50は、配列された複数の二次電池10間にそれぞれ配置されたが、必ずしも各二次電池10間に配置されてなくもよい。例えば、熱交換媒体流路形成部50は、鉛直方向に沿って1つのみ配置されてもよいし、複数個の二次電池10を1セットとして各セット間に配置されてもよい。熱交換媒体流路形成部50は、二次電池10に隣接するように配置されたが、熱交換媒体が二次電池10と熱交換可能な状態で配置されていればよい。例えば、二次電池10と熱交換媒体流路形成部50との間に他の部材が配置されてもよい。
【0066】
二次電池システム100では、複数の二次電池10の配列方向が水平方向に平行であったが、二次電池10の鉛直上方に熱媒流路41が配置される範囲で、二次電池10の配列方向については変形可能である。上記第2実施形態の多孔質体層53を形成する多孔質体は、熱交換媒体が毛細管現象を利用できる範囲で変形可能である。例えば、多孔質体の材質と、目開きと、空隙率とについては変形高可能である。また、多孔質体層53の厚さについても変形可能である。多孔質体層53は、流れ方向に液浸透速度を向上させるため、伝熱面上に溝を形成させたものでもよい。
【0067】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0068】
10…二次電池
20…温度調節システム
30…冷媒流路形成部
31…冷媒流路
40…熱媒流路形成部
41…熱媒流路
50,50a…熱交換媒体流路形成部
51…熱交換媒体流路
52…外壁
53…多孔質体層
54…連通空間
60…貯留部
100,100a,100b…二次電池システム
C1,C2…損失曲線
C8,C9,C10…温度変化
C11,C12,C13…顕熱変化
C14,C15,C16…ゲージ圧変化
C17,C18…時間変化
C31,C41,C43,C51,C53…温度変化
C6…電力変化
C7…放電深度変化
CS…直交座標系
GS…熱交換媒体
L1,L2,L3…放電深度の変化直線