(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】回転電機のステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/04 20060101AFI20241016BHJP
H02K 15/085 20060101ALI20241016BHJP
H02K 15/04 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H02K3/04 E
H02K15/085
H02K15/04 E
(21)【出願番号】P 2022024254
(22)【出願日】2022-02-18
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】大杉 亮祐
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-169392(JP,A)
【文献】特開2018-098919(JP,A)
【文献】特開2016-015797(JP,A)
【文献】特開2002-291184(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016210927(DE,A1)
【文献】特開平11-262232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/04
H02K 15/085
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心とする筒状のステータコアと、
前記ステータコアのスロットのそれぞれに挿入された複数のセグメントコイルを含むコイルと、を備える、回転電機のステータであって、
前記コイルは、前記軸線方向における前記ステータコアの一端面側から外側に突出した
前記軸線方向の長さが同じである前記セグメントコイルの先端部同士がそれぞれ溶接された複数の溶接部を有し、
前記ステータコアの周方向及び前記ステータコアの径方向の少なくとも一方において、複数の前記溶接部は、前記セグメントコイルの先端部同士における
複数の前記溶接部の前記ステータコアの前記一端面からの距離が異なる複数の種類を含む
ことを特徴とする回転電機のステータ。
【請求項2】
前記一端面からの距離が異なる
複数の種類の前記溶接部は、前記セグメントコイルの先端部同士における前記溶接部の位置及び大きさの少なくとも1つが異なっている
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機のステータ。
【請求項3】
前記ステータコアの周方向において、複数の前記溶接部は、前記複数の種類を含み、
前記ステータコアの周方向に隣接する前記溶接部は、前記複数の種類のうちの異なる種類である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転電機のステータ。
【請求項4】
前記ステータコアの径方向において、複数の前記溶接部は、前記複数の種類を含み、
前記ステータコアの径方向に隣接する前記溶接部は、前記複数の種類のうちの異なる種類である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の回転電機のステータ。
【請求項5】
前記ステータコアの周方向において、複数の前記溶接部は、前記複数の種類を含み、
複数の前記溶接部において、前記軸線を中心にして点対称な位置の前記溶接部は、前記複数の種類のうちの異なる種類である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の回転電機のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータコアの軸線方向の一端面よりも外側において、コイルがステータコアの周方向に曲げられて溶接されている、回転電機のステータに関する。
【背景技術】
【0002】
ステータコアの軸線方向の一端面よりも外側において、コイルがステータコアの周方向に曲げられて溶接されている、回転電機のステータが知られている。例えば、特許文献1に記載された回転電機のステータがそれである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の回転電機のステータでは、コイルの円環剛性が均一であることによりステータの円環剛性も均一となって、ステータで共振が発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、コイルの円環剛性が不均一となるようにしてステータの共振を抑制できる回転電機のステータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の要旨とするところは、軸線を中心とする筒状のステータコアと、前記ステータコアのスロットのそれぞれに挿入された複数のセグメントコイルを含むコイルと、を備える、回転電機のステータであって、(a)前記コイルは、前記軸線方向における前記ステータコアの一端面側から外側に突出した前記軸線方向の長さが同じである前記セグメントコイルの先端部同士がそれぞれ溶接された複数の溶接部を有し、(b)前記ステータコアの周方向及び前記ステータコアの径方向の少なくとも一方において、複数の前記溶接部は、前記セグメントコイルの先端部同士における複数の前記溶接部の前記ステータコアの前記一端面からの距離が異なる複数の種類を含むことにある。
【0007】
第2発明の要旨とするところは、第1発明において、前記一端面からの距離が異なる複数の種類の前記溶接部は、前記セグメントコイルの先端部同士における前記溶接部の位置及び大きさの少なくとも1つが異なっていることにある。
【0008】
第3発明の要旨とするところは、第1発明又は第2発明において、(a)前記ステータコアの周方向において、複数の前記溶接部は、前記複数の種類を含み、(b)前記ステータコアの周方向に隣接する前記溶接部は、前記複数の種類のうちの異なる種類であることにある。
【0009】
第4発明の要旨とするところは、第1発明乃至第3発明のいずれか1の発明において、(a)前記ステータコアの径方向において、複数の前記溶接部は、前記複数の種類を含み、(b)前記ステータコアの径方向に隣接する前記溶接部は、前記複数の種類のうちの異なる種類であることにある。
【0010】
第5発明の要旨とするところは、第1発明乃至第4発明のいずれか1の発明において、(a)前記ステータコアの周方向において、複数の前記溶接部は、前記複数の種類を含み、(b)複数の前記溶接部において、前記軸線を中心にして点対称な位置の前記溶接部は、前記複数の種類のうちの異なる種類であることにある。
【発明の効果】
【0011】
第1発明の回転電機のステータによれば、(a)前記コイルは、前記軸線方向における前記ステータコアの一端面側から外側に突出した前記軸線方向の長さが同じである前記セグメントコイルの先端部同士がそれぞれ溶接された複数の溶接部を有し、(b)前記ステータコアの周方向及び前記ステータコアの径方向の少なくとも一方において、複数の前記溶接部は、前記セグメントコイルの先端部同士における複数の前記溶接部の前記ステータコアの前記一端面からの距離が異なる複数の種類を含む。このように、ステータコアの周方向及びステータコアの径方向の少なくとも一方において、複数の溶接部は、前記一端面からの距離が異なる複数の種類を含む。これにより、複数の溶接部の溶接状態が同一種類である場合に比較して、コイルの円環剛性が不均一となっている。コイルの円環剛性が不均一となっていることにより、ステータの円環剛性も不均一となってステータの共振が抑制される。
【0012】
第2発明の回転電機のステータによれば、第1発明において、前記一端面からの距離が異なる複数の種類の前記溶接部は、前記セグメントコイルの先端部同士における前記溶接部の位置及び大きさの少なくとも1つが異なっている。複数の溶接部が、セグメントコイルの先端部同士における溶接部の位置及び大きさの少なくとも1つが異なっている場合には、そうでない場合に比較して個々のセグメントコイルにおける剛性がそれぞれ異なっている。これにより、コイルの円環剛性が不均一となっていることにより、ステータの円環剛性も不均一となってステータの共振が抑制される。
【0013】
第3発明の回転電機のステータによれば、第1発明又は第2発明において、(a)前記ステータコアの周方向において、複数の前記溶接部は、前記複数の種類を含み、(b)前記ステータコアの周方向に隣接する前記溶接部は、前記複数の種類のうちの異なる種類である。ステータコアの周方向において隣接する溶接部が異なる種類である場合には、そうでない場合に比較してコイルの円環剛性が周方向で不均一となっていることにより、ステータの共振が抑制される。
【0014】
第4発明の回転電機のステータによれば、第1発明又は第3発明のいずれか1の発明において、(a)前記ステータコアの径方向において、複数の前記溶接部は、前記複数の種類を含み、(b)前記ステータコアの径方向に隣接する前記溶接部は、前記複数の種類のうちの異なる種類である。ステータコアの径方向において隣接する溶接部が異なる種類である場合には、そうでない場合に比較してコイルの円環剛性が径方向で不均一となっていることにより、ステータの共振が抑制される。
【0015】
第5発明の回転電機のステータによれば、第1発明乃至第4発明のいずれか1の発明において、(a)前記ステータコアの周方向において、複数の前記溶接部は、前記複数の種類を含み、(b)複数の前記溶接部において、前記軸線を中心にして点対称な位置の前記溶接部は、前記複数の種類のうちの異なる種類である。複数の溶接部において、軸線を中心にして点対称な位置の溶接部が異なる種類である場合には、そうでない場合に比較してコイルの円環剛性が軸線を中心にした点対称な位置で不均一となっていることにより、ステータの円環剛性も不均一となってステータの共振が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1に係る回転電機のステータの概略構成を説明する斜視図である。
【
図2】
図1に示すステータコアにコイルを巻回する方法を説明する図であって、スロットにセグメントコイルを挿入した状態をステータコアにおける周方向に展開して内周側から外周側に見た図である。
【
図3】
図1に示すステータコアにコイルを巻回する方法を説明する図であって、セグメントコイルを溶接で接続した状態をステータコアにおける周方向に展開して内周側から外周側に見た図である。
【
図4】
図1に示すステータコアに巻回されたコイルにおける複数の溶接部の配置を軸線方向に見た概略図である。
【
図5】
図1に示すステータコアの歯部にコイルを巻回する方法についての各工程を説明する図である。
【
図6】本発明の実施例2に係る回転電機のステータコアに巻回されたコイルにおける複数の溶接部の配置を軸線方向に見た概略図である。
【
図7】本発明の実施例3に係る回転電機のステータコアに巻回されたコイルにおける複数の溶接部の配置を軸線方向に見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施例について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施例において図は理解を容易とするために適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。また、各実施例においては、先行する実施例と異なる部分を中心に説明することとし、先行する実施例と機能において実質的に共通する部分には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1に係る回転電機MGのステータ10の概略構成を説明する斜視図である。
図1では、セグメントコイル60(
図2,
図3参照)に形成された絶縁被膜は省略されている。
図1では、軸線CLが紙面上下方向に示されているが、例えば回転電機MGが車両に搭載された状態では、軸線CLは水平方向である。なお、この状態における水平方向は、厳密な水平方向でなくとも良く厳密な水平方向に対して傾いていても良い、すなわち軸線CLは水平方向に延伸していれば良い。
【0019】
回転電機MGは、例えばハイブリッド車両や電気自動車に搭載され、電動機(モータ)としての機能及び発電機(ジェネレータ)としての機能を有する回転電機機械であって、所謂モータジェネレータである。回転電機MGは、車両の走行用駆動源である。回転電機MGは、軸線CL方向に延びる筒状のステータ10と、ステータ10の内周側に配された不図示のロータと、を備える。ロータは、ステータ10が発生する回転磁界により回転可能とされる。
【0020】
ステータ10は、ステータコア20及びコイル50を備える。
図1では、いくつかのスロット22をまたいで1個のコイルを巻く分布巻となっている。ステータコア20は、複数枚の電磁鋼板が積層された、軸線CLを中心とする筒状である。好適には、ステータコア20は円筒状であるが、その外形は円筒状に限られず筒状であれば良い。コイル50は、ステータコア20と同様に、軸線CLを中心とする円環状である。以下、本明細書では、「軸線CLに平行な方向」、「ステータコア20の周方向」、及び「ステータコア20の径方向」を、それぞれ単に「軸線CL方向」、「周方向」、及び「径方向」と記す。筒状のステータコア20の内周面には、径方向の外周側に向かう方向の深さを有し且つ軸線CL方向に貫通する複数本の溝部すなわちスロット22が軸線CL周りに等角度間隔で設けられている。隣接するスロット22間には、歯部24が軸線CL周りに等角度間隔で形成されている。後述するように、スロット22にセグメントコイル60(
図2,
図3参照)が挿入されてそれら複数のセグメントコイル60同士が連結されることにより、歯部24にコイル50(巻線)が巻回される。ステータコア20のうち歯部24以外の部位であって、電磁石となった歯部24同士の磁力線の経路となる部位がヨーク26である。なお、ステータコア20は、必ずしも電磁鋼板に限られず、例えば磁性体の粉体、固体等を成形加工したものであっても良い。コイル50は、例えばU相、V相、及びW相の3相巻線である。
【0021】
図2は、
図1に示すステータコア20にコイル50を巻回する方法を説明する図であって、スロット22にセグメントコイル60を挿入した状態をステータコア20における周方向に展開して内周側から外周側に見た図である。
図3は、
図1に示すステータコア20にコイル50を巻回する方法を説明する図であって、セグメントコイル60を溶接で接続した状態をステータコア20における周方向に展開して内周側から外周側に見た図である。
【0022】
スロット22に挿入されるセグメントコイル60は、例えば長手状導体板のような断面が長方形である所謂平角導体にエナメルなどの絶縁被膜が表面に形成されたものである。セグメントコイル60は、略U字状に曲げ加工されている。セグメントコイル60は、U字の左右で同じ方向に直線状に延びている第1腕部62a及び第2腕部62bと、第1腕部62aの根元部及び第2腕部62bの根元部を連結している連結部66と、を有する。第1腕部62aの先端部64a及び第2腕部62bの先端部64bは、いずれも絶縁被膜が取り除かれている。以下、特に区別しない場合には、第1腕部62a及び第2腕部62bを、「腕部62」と記し、先端部64a及び先端部64bを、「先端部64」と記す。
【0023】
まず、
図2に示すように、セグメントコイル60の腕部62がスロット22内に挿入される。これにより、セグメントコイル60の連結部66がステータコア20の他端面20b側に接触した状態とされる。また、セグメントコイル60の腕部62の先端部64側が、ステータコア20の一端面20aから突出した状態となる。
図2では、挿入されたセグメントコイル60の1つを代表して図示している。各スロット22には、例えば複数個(本実施例では4個)のセグメントコイル60が径方向に並べられて挿入される。
【0024】
次に、
図3に示すように、セグメントコイル60における一端面20aから突出した先端部64が、ステータコア20における周方向に曲げられる。そして、一のセグメントコイル60における一端面20aから突出した先端部64と、他のセグメントコイル60における一端面20aから突出した先端部64と、が溶接されて溶接部68が形成される。このように複数のセグメントコイル60同士が溶接部68によって電気的に接続されることにより、歯部24に巻回されたコイル50が形成される。溶接部68は、例えばTIG(Tungsten Inert Gas)溶接によって形成される。
【0025】
図3に示すように、複数の溶接部68は、軸線CL方向における一端面20aからの距離がそれぞれ異なる位置(以下、「溶接位置」と記す。)を占める4種類の第1溶接部68a,第2溶接部68b,第3溶接部68c,第4溶接部68dを含む。以下、特に区別しない場合には、第1溶接部68a,第2溶接部68b,第3溶接部68c,第4溶接部68dを、「溶接部68」と記す。周方向において第1溶接部68a,第2溶接部68b,第3溶接部68c,第4溶接部68dがそれぞれ4つ置きに配置されており、周方向において隣接する溶接部68は、異なる種類である。例えば、TIG溶接における電極棒から先端部64に対してアークを発生させる位置を変更することで、溶接位置を変更することができる。これにより、それぞれの溶接部68で連結された組となるセグメントコイル60における周方向の剛性が異なることとなる。コイル50において、それぞれ溶接部68で連結された組となるセグメントコイル60の周方向の剛性がそれぞれ異なるため、全体として円環状となっているコイル50の剛性(以下、「円環剛性」と記す。)も周方向で不均一となる。なお、溶接位置は、本発明における「セグメントコイルの先端部同士における溶接状態」及び「溶接部の位置」に相当する。
【0026】
なお、
図2及び
図3ではコイル50を巻回する方法を概念的に説明しているが、例えば実際には同一形状である複数のセグメントコイル60がスロット22に円環状に組み合わされた状態で挿入され、これら複数のセグメントコイル60が互いに溶接されることによって円環状のコイル50が形成される。コイル50は、ステータコア20の一端面20a側及び他端面20b側を押圧した状態となっている。そのため、ステータ10の円環剛性は、ステータコア20の円環剛性とともにコイル50の円環剛性の影響も受ける。
【0027】
図4は、
図1に示すステータコア20に巻回されたコイル50における複数の溶接部68の配置を軸線CL方向に見た概略図である。
【0028】
周方向において、領域A,領域B,領域C,領域Dがそれぞれ4つ置きに規則的に配置されている。領域A,領域B,領域C,領域D内にそれぞれ位置する溶接部68は、径方向が異なっても第1溶接部68a,第2溶接部68b,第3溶接部68c,第4溶接部68dである。
【0029】
図5は、
図1に示すステータコア20の歯部24にコイル50を巻回する方法についての各工程を説明する図である。
【0030】
まず、ステップ(以下、ステップを省略する)S10において、載置されたステータコア20の他端面20b側から、例えば円環状に組み合わされた状態の各セグメントコイル60の腕部62が挿入される。これにより、各セグメントコイル60の腕部62の先端部64側が、ステータコア20の一端面20aから突出した状態となる。S10の実行後、S20において、各セグメントコイル60における一端面20aから突出した先端部64が、周方向に曲げられる。S20の実行後、S30において、セグメントコイル60の腕部62の先端部64同士が溶接される。これにより、歯部24に巻回されたコイル50が形成される。そして、終了となる。
【0031】
本実施例によれば、(a)コイル50は、軸線CL方向におけるステータコア20の一端面20a側から外側に突出したセグメントコイル60の先端部64同士がそれぞれ溶接された複数の溶接部68を有し、(b)ステータコア20の周方向において、複数の溶接部68は、セグメントコイル60の先端部64同士における溶接位置が異なる複数の種類を含む。また、周方向において隣接する溶接部68は、セグメントコイル60の先端部64同士における溶接位置がそれぞれ異なる4種類の第1溶接部68a,第2溶接部68b,第3溶接部68c,第4溶接部68dのうち異なる種類である。これにより、周方向において複数の溶接部68の溶接位置が同一種類である場合に比較して、コイル50の円環剛性が周方向に不均一となっていることにより、ステータ10の円環剛性も不均一となってステータ10の共振が抑制される。このステータ10の共振には、例えば周方向の共振、径方向の共振、一端面20a側と他端面20b側との間で捻れる共振、他端面20b側が非回転部材に固定され且つ一端面20a側が固定されていない場合における一端面20a側が軸線CLから外れる共振などが含まれる。
【実施例2】
【0032】
図6は、本発明の実施例2に係る回転電機MGのステータコア20に巻回されたコイル50における複数の溶接部68の配置を軸線CL方向に見た概略図である。
図6は、前述の実施例1における
図4に対応した図である。本実施例は、実施例1に係るステータ10の構成やコイル50の巻回方法と略同じであるが、複数の溶接部68の配置が異なっている。
【0033】
図6に示すように、径方向において、内周側に位置する領域E及び外周側に位置する領域Fがそれぞれ規則的に配置されている。領域E及び領域F内に位置する溶接部68は、周方向が異なってもそれぞれ第1溶接部68a及び第2溶接部68bである。
【0034】
本実施例によれば、(a)コイル50は、軸線CL方向におけるステータコア20の一端面20a側から外側に突出したセグメントコイル60の先端部64同士がそれぞれ溶接された複数の溶接部68を有し、(b)ステータコア20の径方向において、複数の溶接部68は、セグメントコイル60の先端部64同士における溶接位置が異なる複数の種類を含む。また、径方向において隣接する溶接部68は、セグメントコイル60の先端部64同士における溶接された位置がそれぞれ異なる2種類の第1溶接部68a及び第2溶接部68bのうち異なる種類である。これにより、径方向において複数の溶接部68の溶接位置が同一種類である場合に比較して、コイル50の円環剛性が径方向に不均一となっていることにより、ステータ10の円環剛性も不均一となってステータ10の共振が抑制される。
【実施例3】
【0035】
図7は、本発明の実施例3に係る回転電機MGのステータコア20に巻回されたコイル50における複数の溶接部68の配置を軸線CL方向に見た概略図である。
図7は、前述の実施例1における
図4に対応した図である。本実施例は、実施例1に係るステータ10の構成やコイル50の巻回方法と略同じであるが、複数の溶接部68の配置が異なっている。
【0036】
前述の実施例1では、周方向に第1溶接部68a,第2溶接部68b,第3溶接部68c,第4溶接部68dがそれぞれ4つ置きに配置されていた。軸線CL方向に見た場合において、本実施例では、複数の溶接部68のうち軸線CLを中心にして点対称な位置には、異なる種類が配置されている。例えば、コイル50を軸線CL周りに2π/6[rad]の等角度間隔でそれぞれ第1領域から第6領域に区切った場合、軸線CLを中心にして点対称な位置である第1領域及び第4領域には、互いに異なる種類の第1溶接部68a及び第2溶接部68bがそれぞれ配置されている。同様に、軸線CLを中心にして点対称な位置である第2領域及び第5領域には、互いに異なる種類の第3溶接部68c及び第2溶接部68bがそれぞれ配置されている。また、軸線CLを中心にして点対称な位置である第3領域及び第6領域には、互いに異なる種類の第1溶接部68a及び第3溶接部68cがそれぞれ配置されている。
【0037】
本実施例によれば、(a)ステータコア20の周方向において、複数の溶接部68は、セグメントコイル60の先端部64同士における溶接位置が異なる複数の種類を含み、(b)軸線CLを中心にして点対称な位置の溶接部68は、溶接位置が異なる3種類の第1溶接部68a,第2溶接部68b,第3溶接部68cのうちの異なる種類が配置されている。軸線CLを中心にして点対称な位置に異なる種類の溶接部が配置されている場合には、そうでない場合に比較してコイル50の円環剛性が軸線CLを中心にした点対称な位置で不均一となっていることにより、ステータ10の円環剛性も不均一となってステータ10の共振が抑制される。
【0038】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0039】
前述の実施例1では、複数の溶接部68には、周方向に4種類の異なる第1溶接部68a,第2溶接部68b,第3溶接部68c,第4溶接部68dが4つ置きに規則的に配置され、周方向において隣接する溶接部が異なる種類であったが、本発明はこれに限らない。例えば、複数の溶接部68は、周方向に4種類の異なる第1溶接部68a,第2溶接部68b,第3溶接部68c,第4溶接部68dがランダムに配置されたり、周方向において一部の隣接する溶接部が同じ種類であったりしても良い。要は、周方向に同じ種類の溶接部が配置されるのに比較して、複数の溶接部68はコイル50の円環剛性が不均一となるように溶接部が配置されていれば良い。周方向において配置される複数の溶接部68は、2種類以上すなわち複数の種類であれば良い。
【0040】
前述の実施例2では、複数の溶接部68には、径方向に2種類の異なる第1溶接部68a及び第2溶接部68bが配置され、径方向において隣接する溶接部が異なる種類であったが、本発明はこれに限らない。例えば、複数の溶接部68は、径方向に2種類の異なる第1溶接部68a及び第2溶接部68bがランダムに配置されたり、径方向において一部の隣接する溶接部が同じ種類であったりしても良い。要は、径方向に同じ種類の溶接部が配置されるのに比較して、複数の溶接部68はコイル50の円環剛性が不均一となるように溶接部が配置されていれば良い。径方向において配置される複数の溶接部68は、3種類以上であっても良い。
【0041】
前述の実施例3では、複数の溶接部68のうち軸線CLを中心にして点対称な位置には、3種類のうち異なる種類が配置されている態様であったが、2種類のうち異なる種類が配置されている態様であっても良い。要は、複数の溶接部68のうち軸線CLを中心にして点対称な位置には、複数の種類のうち異なる種類が配置されていれば良い。
【0042】
前述の実施例1~3では、複数の溶接部68における複数の種類は、溶接位置(すなわち軸線CL方向における一端面20aからの距離)がそれぞれ異なっていたが、本発明はこの態様に限らない。例えば、複数の種類は、溶接部68の大きさ(=溶融された部分の大きさ)が異なる態様であっても良い。例えば、TIG溶接における電極棒から先端部64に対してアークを発生させる時間を変更することで、溶接部68の大きさを変更することができる。また、例えば複数の種類は、溶接部68の溶接位置及び大きさの組み合わせが異なる種類であっても良い。すなわち、複数の溶接部68は、溶接位置及び大きさの少なくとも1つが異なる種類を含む態様であっても良い。なお、溶接部68の大きさは、本発明における「セグメントコイルの先端部同士における溶接状態」及び「溶接部の大きさ」に相当する。
【0043】
前述の実施例1では、複数の溶接部68は、周方向において異なる種類を含み、前述の実施例2では、複数の溶接部68は、径方向において異なる種類を含む態様であったが、本発明は、複数の溶接部68が周方向及び径方向のいずれの方向にも異なる種類を含む態様であっても良い。すなわち、複数の溶接部68は、周方向及び径方向の少なくとも一方において異なる種類を含む態様であれば良い。
【0044】
前述の実施例1~3では、溶接部68はTIG溶接で形成されたが、他の溶接方法であっても良い。例えば、電極で溶接対象を抑えると同時に抵抗熱で溶接を行うシーム溶接などの抵抗溶接、レーザで加熱して溶接するレーザ溶接など他の溶接方法であっても良い。例えば、シーム溶接における電流を流す位置及び電流の大きさや電流を流す時間、レーザ溶接におけるレーザを照射する位置及びレーザスポット径の大きさやレーザを照射する時間などの溶接条件を変更することで、溶接位置や溶接された部分の大きさを変更することができる。
【0045】
前述の実施例1~3では、コイル50が分布巻であったが、本発明は、コイル50が集中巻のステータ10にも適用可能である。
【0046】
前述の実施例1~3では、回転電機MGは、車両の走行用駆動源であるモータジェネレータであったが、本発明はこの態様に限らない。例えば、回転電機MGは、発電機機能を有さず電動機機能のみを有する車両駆動用の電動機であっても良いし、電動機機能を有さず発電機機能のみを有する回生用の発電機であっても良い。
【0047】
なお、上述したのはあくまでも本発明の実施例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0048】
10:ステータ
20:ステータコア
20a:一端面
22:スロット
50:コイル
60:セグメントコイル
64:先端部
68:溶接部
CL:軸線
MG:回転電機