IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-配車システム、配車管理方法 図1
  • 特許-配車システム、配車管理方法 図2
  • 特許-配車システム、配車管理方法 図3
  • 特許-配車システム、配車管理方法 図4
  • 特許-配車システム、配車管理方法 図5
  • 特許-配車システム、配車管理方法 図6
  • 特許-配車システム、配車管理方法 図7
  • 特許-配車システム、配車管理方法 図8
  • 特許-配車システム、配車管理方法 図9
  • 特許-配車システム、配車管理方法 図10
  • 特許-配車システム、配車管理方法 図11
  • 特許-配車システム、配車管理方法 図12
  • 特許-配車システム、配車管理方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】配車システム、配車管理方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/123 20060101AFI20241016BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20241016BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20241016BHJP
   G16Y 40/10 20200101ALI20241016BHJP
【FI】
G08G1/123 A
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022034680
(22)【出願日】2022-03-07
(65)【公開番号】P2023130166
(43)【公開日】2023-09-20
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 勇介
(72)【発明者】
【氏名】河内 太一
(72)【発明者】
【氏名】堀田 大地
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-070951(JP,A)
【文献】特開2021-043058(JP,A)
【文献】特開2019-008540(JP,A)
【文献】特開2020-154624(JP,A)
【文献】特開2021-033821(JP,A)
【文献】特開2021-140309(JP,A)
【文献】特開2018-128799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のMaaS車両と、
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサと結合され、複数の実行可能なインストラクションを記憶するプログラムメモリと、
を含み、
前記複数の実行可能なインストラクションは、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記複数のMaaS車両の配車計画を生成する配車計画生成処理を実行させるように構成され、
前記複数のMaaS車両は、前記配車計画に従って自律走行を行う1又は複数の自動運転車を含み、
前記配車計画生成処理は、
前記1又は複数の自動運転車の運行設計領域を取得する処理と、
前記1又は複数の自動運転車の運行エリアについて、所定期間未来までの間の運行環境情報の予測を取得する処理と、
前記運行設計領域及び前記運行環境情報の予測に基づいて、前記1又は複数の自動運転車のうち現在の前記配車計画において前記運行設計領域を満たさなくなることが予測される運行不可車両を特定する処理と、
前記運行不可車両の車両情報又は運行情報に応じて、前記配車計画を更新する計画更新処理と、
を含み、
前記1又は複数の自動運転車は、
前記運行設計領域を満たさなくなったとき停車することと、
停車後に前記複数のMaaS車両のいずれかが先行車として通過したことを受けて、前記先行車に追従走行することと、
前記追従走行により前記運行設計領域を満たすこととなったとき、前記自律走行を再開することと、
を実施するように構成されている
ことを特徴とする配車システム。
【請求項2】
請求項1に記載の配車システムであって、
前記計画更新処理は、前記車両情報又は運行情報に応じて、
前記複数のMaaS車両から1又は複数の回収車両を選択し、前記1又は複数の回収車両を前記先行車として前記運行不可車両が前記運行設計領域を満たさなくなることが予測される地点を通過させるように前記配車計画を更新する
ことを含む
ことを特徴とする配車システム。
【請求項3】
請求項2に記載の配車システムであって、
前記1又は複数の回収車両は、手動運転車又は更新された前記配車計画において前記運行設計領域を満たす自動運転車である
ことを特徴とする配車システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の配車システムであって、
前記計画更新処理は、前記車両情報又は運行情報に応じて、
配車前の前記運行不可車両を手動運転車又は前記運行設計領域を満たす自動運転車に置き換えるように前記配車計画を更新する
ことを含む
ことを特徴とする配車システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の配車システムであって、
前記計画更新処理は、前記車両情報又は運行情報に応じて、
現在の前記配車計画において前記運行設計領域を満たさなくなることが予測される地点が同一である配車前の前記運行不可車両の集合のそれぞれについて、少なくとも1台の前記運行不可車両を手動運転車又は前記運行設計領域を満たす自動運転車に置き換えるように前記配車計画を更新する
ことを含む
ことを特徴とする配車システム。
【請求項6】
配車計画に基づいて運行される複数のMaaS車両の配車管理方法であって、
前記複数のMaaS車両は、前記配車計画に従って自律走行を行う1又は複数の自動運転車を含み、
前記配車管理方法は、
前記1又は複数の自動運転車の運行設計領域を取得することと、
前記1又は複数の自動運転車の運行エリアについて、所定期間未来までの間の運行環境情報の予測を取得することと、
前記運行設計領域及び前記運行環境情報の予測に基づいて、前記1又は複数の自動運転車のうち現在の前記配車計画において前記運行設計領域を満たさなくなることが予測される運行不可車両を特定することと、
前記運行不可車両の車両情報又は運行情報に応じて、前記配車計画を更新することと、
を含み、
前記1又は複数の自動運転車は、
前記運行設計領域を満たさなくなったとき停車することと、
停車後に前記複数のMaaS車両のいずれかが先行車として通過したことを受けて、前記先行車に追従走行することと、
前記追従走行により前記運行設計領域を満たすこととなったとき、前記自律走行を再開することと、
を実施するように構成され、
前記配車計画を更新することは、前記車両情報又は運行情報に応じて、
前記複数のMaaS車両から1又は複数の回収車両を選択し、前記1又は複数の回収車両を前記先行車として前記運行不可車両が前記運行設計領域を満たさなくなることが予測される地点を通過させるように前記配車計画を更新する
ことを含む
ことを特徴とする配車管理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の配車管理方法であって、
前記配車計画を更新することは、前記車両情報又は運行情報に応じて、
配車前の前記運行不可車両を手動運転車又は前記運行設計領域を満たす自動運転車に置き換えるように前記配車計画を更新する
ことを含む
ことを特徴とする配車管理方法。
【請求項8】
請求項6に記載の配車管理方法であって、
前記1又は複数の自動運転車は、
前記運行設計領域を満たさなくなったとき停車することと、
停車後に前記複数のMaaS車両のいずれかが先行車として通過したことを受けて、前記先行車に追従走行することと、
前記追従走行により前記運行設計領域を満たすこととなったとき、前記自律走行を再開することと、
を実施するように構成され、
前記配車計画を更新することは、前記車両情報又は運行情報に応じて、
現在の前記配車計画において前記運行設計領域を満たさなくなることが予測される地点が同一である配車前の前記運行不可車両の集合のそれぞれについて、少なくとも1台の前記運行不可車両を手動運転車又は前記運行設計領域を満たす自動運転車に置き換えるように前記配車計画を更新する
ことを含む
ことを特徴とする配車管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の配車計画を生成する技術に関する。特に、配車される自動運転車が運行設計領域を満たさなくなる場合に対処する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自律走行用に構成された第1の走行モードと、パイロット車両によって誘導されるように構成された第2の走行モードと、を含む少なくとも2つの異なる走行モードに適応する自律車両が開示されている。また、第2の走行モードが自律性を保証しないと定義された第2の地理的領域に関連付けられ得ること、及び自律車両が第2の地理的領域において第2の走行モードで走行し得ることが開示されている。
【0003】
その他、本技術分野の技術レベルを示す文献として以下の特許文献2乃至特許文献6がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019―510670号公報
【文献】特開2021―163369号公報
【文献】特開2021―043896号公報
【文献】特開2020―106525号公報
【文献】国際公開第2020/196084号
【文献】国際公開第2020/196086号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、移動サービスの提供に供するMaaS(Mobility as a Service)車両の運用に関する様々な技術や事業が注目されている。MaaS車両の運用においては、一般に、提供する移動サービスの内容やユーザの要求に応じて配車計画が与えられ、配車計画に基づくMaaS車両の運行が行われる。ここで、MaaS車両には、配車計画に従って自律走行を行う自動運転車が含まれ得る。
【0006】
ところで、自動運転車には、車両又は適用される自動運転システムに応じて、自律走行を継続可能な環境の条件である運行設計領域(ODD;Operational Design Domain)が定められている。自動運転車は、ODDが満たさなくなったとき、典型的には、車内のドライバーに運転操作を求めるか、車内にドライバーがいない場合は安全に停車するように動作する。ここで、車内にドライバーがいない自動運転車が停車した場合であって、ODDを満たさなくなる要因が比較的長期間である場合は、人を派遣して停車した自動運転車を回収することが必要となる。
【0007】
MaaS車両に含まれ得る自動運転車としては、車内にドライバーがいない自動運転車も想定されている。MaaS車両の運用において、人を派遣して停車した自動運転車を回収するという対応は、運行の停止による乗客への影響や派遣人員による人件費の増大といった大きなコストが生じ得る。一方で、運行設計領域の広い自動運転車は、一般に搭載するセンサやシステムが高価であり、積極的に採用され難い。このため、このような回収の頻度や回収の手間を低減するための技術が求められている。
【0008】
特許文献1に開示される技術によれば、パイロット車両により、自動運転車をODDが満たされなくなる領域(第2の地理的領域)からODDが満たされる領域まで誘導することができる。つまり、パイロット車両があらかじめ用意されていれば、回収の手間を低減することができ、また人を派遣することを要しない。しかしながら、特許文献1に開示される技術では、ODDが満たされなくなる領域があらかじめ定められていることが必要であり、動的な要因によりODDが満たされなくなる場合に対処することができない。また、ODDが満たされなくなる領域にパイロット車両を常駐させることはコストの面からも望ましくない。
【0009】
本開示の1つの目的は、上記の課題を鑑み、自動運転車の回収の頻度や回収の手間を低減することが可能な技術を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の開示は、配車システムに関する。
【0011】
第1の開示に係る配車システムは、複数のMaaS車両と、少なくとも1つのプロセッサと、前記少なくとも1つのプロセッサと結合され、複数の実行可能なインストラクションを記憶するプログラムメモリと、を含む。前記複数の実行可能なインストラクションは、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記複数のMaaS車両の配車計画を生成する配車計画生成処理を実行させるように構成されている。また前記複数のMaaS車両は、前記配車計画に従って自律走行を行う1又は複数の自動運転車を含んでいる。そして、前記配車計画生成処理は、前記1又は複数の自動運転車の運行設計領域を取得する処理と、前記1又は複数の自動運転車の運行エリアについて、所定期間未来までの間の運行環境情報の予測を取得する処理と、前記運行設計領域及び前記運行環境情報の予測に基づいて、前記1又は複数の自動運転車のうち現在の前記配車計画において前記運行設計領域を満たさなくなることが予測される運行不可車両を特定する処理と、前記運行不可車両の車両情報又は運行情報に応じて、前記配車計画を更新する計画更新処理と、を含む。
【0012】
第2の開示は、第1の開示に係る配車システムに対して、さらに以下の特徴を有する配車システムに関する。
【0013】
前記1又は複数の自動運転車は、前記運行設計領域を満たさなくなったとき停車することと、停車後に前記複数のMaaS車両のいずれかが先行車として通過したことを受けて、前記先行車に追従走行することと、前記追従走行により前記運行設計領域を満たすこととなったとき、前記自律走行を再開することと、を実施するように構成されている。
【0014】
第3の開示は、第2の開示に係る配車システムに対して、さらに以下の特徴を有する配車システムに関する。
【0015】
前記計画更新処理は、前記車両情報又は運行情報に応じて、前記複数のMaaS車両から1又は複数の回収車両を選択し、前記1又は複数の回収車両を前記先行車として前記運行不可車両が前記運行設計領域を満たさなくなることが予測される地点を通過させるように前記配車計画を更新することを含む。
【0016】
第4の開示は、第3の開示に係る配車システムに対して、さらに以下の特徴を有する配車システムに関する。
【0017】
前記1又は複数の回収車両は、手動運転車又は更新された前記配車計画において前記運行設計領域を満たす自動運転車である。
【0018】
第5の開示は、第1乃至第4の開示に係る配車システムに対して、さらに以下の特徴を有する配車システムに関する。
【0019】
前記計画更新処理は、前記車両情報又は運行情報に応じて、配車前の前記運行不可車両を手動運転車又は前記運行設計領域を満たす自動運転車に置き換えるように前記配車計画を更新することを含む。
【0020】
第6の開示は、第2乃至第4の開示に係る配車システムに対して、さらに以下の特徴を有する配車システムに関する。
【0021】
前記計画更新処理は、前記車両情報又は運行情報に応じて、現在の前記配車計画において前記運行設計領域を満たさなくなることが予測される地点が同一である配車前の前記運行不可車両の集合のそれぞれについて、少なくとも1台の前記運行不可車両を手動運転車又は前記運行設計領域を満たす自動運転車に置き換えるように前記配車計画を更新することを含む。
【0022】
第7の開示は、配車計画に基づいて運行される複数のMaaS車両の配車管理方法に関する。ここで、前記複数のMaaS車両は、前記配車計画に従って自律走行を行う1又は複数の自動運転車を含む。
【0023】
第7の開示に係る配車管理方法は、前記1又は複数の自動運転車の運行設計領域を取得することと、前記1又は複数の自動運転車の運行エリアについて、所定期間未来までの間の運行環境情報の予測を取得することと、前記運行設計領域及び前記運行環境情報の予測に基づいて、前記1又は複数の自動運転車のうち現在の前記配車計画において前記運行設計領域を満たさなくなることが予測される運行不可車両を特定することと、前記運行不可車両の車両情報又は運行情報に応じて、前記配車計画を更新することと、を含む。
【0024】
第8の開示は、第7の開示に係る配車管理方法に対して、さらに以下の特徴を有する配車管理方法に関する。
【0025】
前記1又は複数の自動運転車は、前記運行設計領域を満たさなくなったとき停車することと、停車後に前記複数のMaaS車両のいずれかが先行車として通過したことを受けて、前記先行車に追従走行することと、前記追従走行により前記運行設計領域を満たすこととなったとき、前記自律走行を再開することと、を実施するように構成されている。また前記配車計画を更新することは、前記車両情報又は運行情報に応じて、前記複数のMaaS車両から1又は複数の回収車両を選択し、前記1又は複数の回収車両を前記先行車として前記運行不可車両が前記運行設計領域を満たさなくなることが予測される地点を通過させるように前記配車計画を更新することを含む。
【0026】
第9の開示は、第7又は第8の開示に係る配車管理方法に対して、さらに以下の特徴を有する配車管理方法に関する。
【0027】
前記配車計画を更新することは、前記車両情報又は運行情報に応じて、配車前の前記運行不可車両を手動運転車又は前記運行設計領域を満たす自動運転車に置き換えるように前記配車計画を更新することを含む。
【0028】
第10の開示は、第7の開示に係る配車管理方法に対して、さらに以下の特徴を有する配車管理方法に関する。
【0029】
前記1又は複数の自動運転車は、前記運行設計領域を満たさなくなったとき停車することと、停車後に前記複数のMaaS車両のいずれかが先行車として通過したことを受けて、前記先行車に追従走行することと、前記追従走行により前記運行設計領域を満たすこととなったとき、前記自律走行を再開することと、を実施するように構成されている。また前記配車計画を更新することは、前記車両情報又は運行情報に応じて、現在の前記配車計画において前記運行設計領域を満たさなくなることが予測される地点が同一である配車前の前記運行不可車両の集合のそれぞれについて、少なくとも1台の前記運行不可車両を手動運転車又は前記運行設計領域を満たす自動運転車に置き換えるように前記配車計画を更新することを含む。
【発明の効果】
【0030】
本開示によれば、複数のMaaS車両に含まれる自動運転車についての運行設計領域(ODD;Operational Design Domain)及び運行環境情報の予測に基づいて、現在の配車計画における運行不可車両が特定される。そして、運行不可車両の車両情報又は運行情報に応じて配車計画が更新される。これにより、現在の配車計画において所定期間未来までの間に予測される運行不可車両に対処することができ、自動運転車の回収の頻度や回収の手間を低減することができる。延いては、運用に係るコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本実施形態に係る配車システムの概要について説明するための概念図である。
図2】配車計画生成処理において特定される運行不可車両について説明するための概念図である。
図3】本実施形態に係る自動運転車がODDを満たさなくなったときの動作について説明するための概念図である。
図4図2に示す配車計画に対して、配車計画の更新の第1の例により更新された配車計画の例を示す概念図である。
図5】配車計画の例を示す概念図である。
図6】配車計画の更新の第3の例により配車計画が更新された場合に実現される運行状況を示す概念図である。
図7】サーバの概略構成を示すブロック図である。
図8】配車計画生成処理の概略構成を示すブロック図である。
図9】自動運転車の概略構成を示すブロック図である。
図10】自律走行制御装置が実行する処理の概略構成を示すブロック図である。
図11】配車計画生成処理を示すフローチャートである。
図12】初期値となる配車計画を生成する処理を示すフローチャートである。
図13】自律走行制御装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。ただし、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲などの数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数が特定される場合を除いて、その言及した数に、本開示に係る思想が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構成等は、特に明示した場合や原理的に明らかにそれに特定される場合を除いて、本開示に係る思想に必ずしも必須のものではない。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を附しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0033】
1.配車システム
図1を参照して、本実施形態に係る配車システム10の概要について説明する。本実施形態に係る配車システム10では、複数のMaaS車両1の配車計画が生成される。配車計画により、複数のMaaS車両1の各々について、目的地、中継地、配車ルート、配車時間、各地点の通過又は到達時間等が与えられる。そして、複数のMaaS車両1の各々は、生成された配車計画に基づいて運行される。
【0034】
複数のMaaS車両1は、配車計画に従って自律走行を行う1又は複数の自動運転車を含んでいる。ここで、複数のMaaS車両1は、形態やスペックの異なる種々の自動運転車を含んでいて良い。例えば、ドライバーがいない自動運転車、手動運転への切り替えが可能な自動運転車、多数のセンサが搭載され周囲環境の検出能力が高い自動運転車、最低限のセンサのみが搭載され周囲環境の検出能力が低い自動運転車等を含んでいて良い。なお、複数のMaaS車両1には、手動運転車が含まれ得る。手動運転車の運行は、生成された配車計画に従うようにドライバーが車両を運転することにより行われることとなる。
【0035】
複数のMaaS車両1の各々は、例えば、特定の地点に位置する複数の配車ステーションのいずれかから配車される。また複数のMaaS車両1の各々は、運行が終了した後、複数の配車ステーションのいずれかに戻る。ただし、複数のMaaS車両1は、駐車場等の所定の駐車場所から配車されても良い。
【0036】
図1に示す配車システム10において、配車計画の生成に係る処理(以下、「配車計画生成処理」とも称する。)は、サーバ2において実行される。サーバ2は、通信ネットワーク4を介して、複数のMaaS車両1と互いに情報を伝達することができるように構成されている。例えば、通信ネットワーク4は、複数のMaaS車両1と無線通信可能な基地局と、インターネットと、により構成される。この場合、サーバ2及び基地局は、インターネットに接続する。
【0037】
サーバ2は、通信ネットワーク4を介して、複数のMaaS車両1から、複数のMaaS車両1の各々についての情報(以下、「車両情報」とも称する。)を取得する。ここで、車両情報として、車両の形態やスペック、走行位置、車体の状態(濡れ、凍結等)、走行状態(車速、加速度等)、周囲環境(先行車、路面、天候、気温等)、搭載されるセンサの状態(カメラ画像の遮蔽の有無、光軸ずれの有無等)や搭載位置、自律走行経路等が例示される。特に、車両情報は、複数のMaaS車両1に含まれる1又は複数の自動運転車(以下、単に「自動運転車」とも称する。)の各々についての運行設計領域(ODD;Operational Design Domain)の情報を含んでいる。ODDの情報として、自律走行を継続可能な明るさ、自律走行を継続可能な路面の状態、自律走行を継続可能な天候状態、自律走行を継続可能なセンサの検出精度、自律走行を継続可能な道路形状、自律走行を継続可能な周囲の障害物の種別等が例示される。
【0038】
そして、サーバ2において、取得する情報に基づいて配車計画生成処理が実行され、サーバ2は、通信ネットワーク4を介して、複数のMaaS車両1に配車計画を送信する。この意味で、サーバ2は、「配車計画装置」と呼ぶこともできる。
【0039】
ところで、ドライバーがいない自動運転車は、ODDを満たさなくなるとき、一般に安全に停車するように動作する。このとき、ODDを満たさなくなる要因が比較的長期間である場合は、自動運転車を回収することが必要となる。例えば、大雨の状況においてODDを満たさなくなる自動運転車について運行中に天気が変化して大雨となる場合、暗所未対応であり夜間においてODDを満たさなくなる自動運転車について運行中に日が沈み夜間となる場合、工事や落下物の出現により道路幅が狭くなることでODDを満たさなくなる場合、自動車専用道路を前提とする自動運転車について走行中の道路で歩行者又は自転車を検出したためにODDを満たさなくなる場合等である。
【0040】
自動運転車の回収に際して、ドライバーとなる人を派遣することは、運行の停止による乗客への影響や派遣人員による人件費の増大といった大きなコストが生じ得る。このため、このような回収の頻度や回収の手間を低減することが望ましい。
【0041】
そこで、本実施形態に係る配車システム10では、サーバ2は、自動運転車の運行エリアについて、所定期間未来までの間の運行環境情報の予測を取得する。ただし、取得する運行環境情報の予測には、現在の運行環境の情報を含んでいて良い。また配車計画生成処理において、自動運転車の各々についてのODD及び運行環境情報の予測に基づいて、自動運転車のうち現在の配車計画においてODDを満たさなくなることが予測される自動運転車(以下、「運行不可車両」とも称する。)を特定する。
【0042】
ここで、自動運転車の運行エリアとは、例えば、自動運転車の運行が予定される領域である。運行エリアは、あらかじめ与えられる特定の領域であっても良いし、運行計画で与えられる運行ルートに応じて与えられる領域(例えば、運行ルート全体を含む領域)であっても良い。
【0043】
また運行環境情報は、複数のMaaS車両1の運行に関わる環境情報である。特に運行環境情報は、自動運転車のODDに関わる情報が含まれる。運行環境情報として、道路交通情報(道路形状、路面状態、停車事故車両の情報等)、日照情報、天候情報、特殊な事態(落下物や暗所の出現等)の発生情報等が例示される。サーバ2は、所定期間未来までの間の各時刻の運行環境情報を取得するように構成されていて良い。なお、サーバ2は、通信ネットワーク4を介して、図1に図示しない他の装置から運行環境情報を取得するように構成することができる。例えば、道路交通情報を発信するサーバや天候情報を発信するサーバと通信することで、運行環境情報を取得することができる。
【0044】
また運行情報は、配車計画に基づく運行に関する情報である。例えば運行情報には、配車計画で与えられる配車ルートや配車ルートの各地点の通過予定時刻等の情報が含まれる。サーバ2は、通信ネットワーク4を介して自動運転車から運行情報を取得しても良いし、現在の配車計画を参照することにより運行情報を取得しても良い。
【0045】
図2を参照して、配車計画生成処理において特定される運行不可車両について説明する。図2は、複数の経路5を含む運行エリア6について、ある時刻における配車計画の例を概念的に示している。図2には、配車計画として、4つのMaaS車両1の各々(1a,1b,1c,及び1d)の配車ルート7a、7b、7c、及び7dが示されている。
【0046】
いま、4つのMaaS車両1の各々は、自動運転車であるとする。つまり、4つのMaaS車両1の各々は、各々の配車ルートに沿って自律走行を行う。また、運転環境情報の予測から、図2に示す地点8において、ODDを満たさなくなる状況が発生することが予測されているとする。このとき、配車ルートが地点8を含む自動運転車1a及び1bが運行不可車両として特定される。ただし、自動運転車1a又は1bが配車計画において地点8を通過する予定の時刻の後に、地点8でODDを満たさなくなる状況が発生することが予測されている場合は、自動運転車1a又は1bは運行不可車両として特定されなくて良い。
【0047】
ここで、自動運転車についてODDを満たさなくなる状況の発生の予測の例として以下に列挙する場合が挙げられる。運行環境情報の予測として各時刻の天気予報を取得し、大雨となる地点を予測する。運転環境情報の予測として日没の予定時刻を取得し、自動運転車の運行中に夜間となるタイミングを予測する。運転環境情報の予測として各時刻の太陽の方角を取得し、運行エリア6の建物の情報から影が生じる地点を予測する。運行環境情報の予測として各時刻の湿度及び気温を取得し、霧が発生する地点や、排気ガスやマンホールから発生するガスにより湯気が発生する地点を予測する。走行する車両に備えるセンサの検出情報を取得することにより、落下物、歩行者、自転車の出現を予測する。
【0048】
なお、ODDを満たさなくなることが予測されるか否かは、自動運転車の各々について判断されて良い。例えば図2において、運転環境情報の予測から地点8で大雨が発生することが予測されているとする。また、自動運転車1aは、スペックが高く大雨であってもODDを満たし、自動運転車1bは、スペックが低く大雨であるときはODDを満たさなくなるとする。このとき、自動運転車1bが運行不可車両として特定される一方で、自動運転車1aは運行不可車両として特定されない。
【0049】
このように、本実施形態に係る配車システム10では、自動運転車の各々についてのODD及び運行環境情報の予測に基づいて、現在の配車計画において運行不可車両が特定される。
【0050】
そして本実施形態に係る配車システム10では、運行計画生成処理において、運行不可車両の車両情報又は運行情報に応じて配車計画を更新する処理(以下、「計画更新処理」とも称する。)が実行される。これにより、現在の配車計画において所定期間未来までの間に予測される運行不可車両に対処することができ、自動運転車の回収の頻度や回収の手間を低減することができる。以下、計画更新処理により実現される配車計画の更新について、いくつかの例を示す。
【0051】
1-1.第1の例
まず第1の例において、自動運転車は、ODDを満たさなくなったとき次のように動作するように構成されている。図3を参照して、第1の例に係る自動運転車がODDを満たさなくなったときの動作について説明する。図3は、自動運転車1bがODDを満たさなくなる地点8に至った際の状況を示している。このとき、まず自動運転車1bは、安全に停車するように動作する。例えば、自動運転車1bは、周囲の車両の走行状況を確認しながら、路肩に停車するように動作する。次に自動運転車1bは、複数のMaaS車両1のいずれかが先行車として通過したことを受けて、先行車に追従走行を行う。図3では、MaaS車両1eが先行車として通過し、自動運転車1bがMaaS車両1eに追従走行を行う様子を示している。そして、自動運転車1bは、追従走行によりODDを満たすこととなったとき、自律走行を再開する。図3では、自動運転車1bが、追従走行によりODDを満たさなくなる地点8を脱したとき、自律走行を再開する様子を示している。
【0052】
このように自動運転車を構成するとき、自動運転車は、ODDを満たさなくなり停車したとしても、複数のMaaS車両1のいずれかが先行車として通過することにより、ODDを満たすこととなるまで追従走行を行うことで停車の状態から脱することができる。この意味で、停車した自動運転車(図3に示す自動運転車1b)の先行車として通過するMaaS車両1(図3に示すMaaS車両1e)は、停車した自動運転車の「回収車両」であると考えることができる。
【0053】
第1の例では、運行不可車両の車両情報又は運行情報に応じて、複数のMaaS車両1から1又は複数の回収車両を選択し、1又は複数の回収車両を先行車として運行不可車両がODDを満たさなくなることが予測される地点を通過させるように配車計画を更新する。
【0054】
図4は、図2に示す配車計画に対して、第1の例により更新された配車計画の例を示す概念図である。いま自動運転車1a及び1bが、地点8においてODDを満たさなくなることが予測される運行不可車両として特定されているとする。図4に示す更新された配車計画では、回収車両として、地点8を通過する配車ルート7eが与えられるMaaS車両1eが新たに配車される。
【0055】
ここで、MaaS車両1eは、地点8を通過する配車ルート7eにおいてODDを満たすように選択される。例えば、地点8で大雨が発生することが予測されるために自動運転車1a及び1bが運行不可車両として特定されている場合は、複数のMaaS車両1のうち、大雨の状況においてもODDを満たす自動運転車が選択される。あるいは、手動運転車が選択される。大雨の状況においてもODDを満たす自動運転車として、カメラが増設された自動運転車や互いに異なる波長のレーザを照射する複数のLiDAR(反射特性から雨による影響を検出できる)を搭載する自動運転車が例示される。
【0056】
その他の状況に対して選択され得るODDを満たす自動運転車としては、以下が挙げられる。ただし、その他の状況に対して手動運転車を選択することもできる。暗所が出現する状況においてもODDを満たす自動運転車として、LiDARが増設された自動運転車や暗視カメラを搭載する自動運転車が例示される。落下物が出現する状況においてもODDを満たす自動運転車として、斜め下向きにレーザを照射するLiDAR、車両低位置に配置されるLiDAR、又は高密度LiDARを搭載する自動運転車が例示される。歩行者や自転車が検出される状況においてもODDを満たす自動運転車として、高密度LiDARを搭載する自動運転車やサーモグラフィを搭載する自動運転車が例示される。
【0057】
これらの自動運転車は、本実施形態に係る配車システム10を適用する場合に、運行エリア6において想定され得る状況から複数のMaaS車両1として用意することができる。特に、コストとのバランスを考慮して必要十分に用意することができる。
【0058】
なお、配車ルート7eの地点8以外の地点においても運行環境情報の予測が行われ、配車ルート7eにおいてODDを満たすようにMaaS車両1が選択される。ただしこれは、少なくとも地点8においてODDを満たすMaaS車両1を回収車両として選択し、選択された回収車両についてODDを満たす配車ルートであって、少なくとも地点8を通過する配車ルートを与えるように行われても良い。
【0059】
また、MaaS車両1eの配車ルート7eは、MaaS車両1eが地点8において自動運転車1a及び1bの先行車として通過するように与えられる。つまり、少なくともMaaS車両1eの配車ルート7eは、MaaS車両1eが地点8を通過する時刻が、自動運転車1a及び1bが地点8を通過する予定の時刻よりも後となるように与えられる。これは、自動運転車1a及び1bの車両情報又は運行情報として、地点8を通過する予定の時刻を取得することにより行うことができる。さらに、自動運転車1a及び1bの停車時間を短縮するために、自動運転車1a及び1bが地点8を通過する予定の時刻の直後にMaaS車両1eが地点8を通過するように配車ルート7eを与えても良い。
【0060】
このように、MaaS車両1eを配車するように配車計画を更新することで、自動運転車1a及び1bは地点8においてMaaS車両1eに追従走行することができる。そして、自動運転車1a及び1bは、追従走行により地点8を脱した後、自律走行を再開することができる。なお、複数の運行不可車両が特定される場合であって、ODDを満たさなくなることが予測される地点が同一の経路5上でない場合や、ODDを満たさなくなることが予測される時刻が互いに離れている場合も考えられる。このような場合は、複数の運行不可車両の車両情報又は運行情報に応じて、複数の回収車両を配車するように配車計画を更新すれば良い。特に、1つの回収車両につき複数の運行不可車両を回収するように配車計画を与える等、効率的な配車計画を与えることも可能である。
【0061】
以上説明されるように第1の例によれば、回収車両を運行不可車両がODDを満たさなくなることが予測される地点を先行車として通過させることができる。これにより、運行不可車両は、ODDを満たさなくなったとしても、回収車両に追従走行することでODDを満たさなくなる地点を脱し、自律走行を再開することができる。延いては、自動運転車の回収の頻度や回収の手間を低減することができる。特に、回収車両の配車を、予測される運行不可車両に対して必要十分に行うことができるため、低コストで実現することができる。
【0062】
1-2.第2の例
第2の例では、運行不可車両の車両情報又は運行情報に応じて、配車前の運行不可車両を手動運転車又はODDを満たすことのできる自動運転車に置き換えるように配車計画を更新する。
【0063】
例えば、現在の配車計画が図2に示す配車計画であり、自動運転車1a、1b、1c、及び1dは配車前であるとする。また、自動運転車1a及び1bが地点8においてODDを満たさなくなることが予測される運行不可車両であるとする。このとき、第2の例では、自動運転車1a及び1bを手動運転車又は地点8においてODDを満たすことのできる自動運転車に置き換えるように配車計画を更新する。
【0064】
例えば、地点8で暗所が出現することが予測されるために自動運転車1a及び1bが運行不可車両として特定されている場合は、自動運転車1a及び1bを手動運転車又は暗所が出現する状況においてもODDを満たす自動運転車に置き換える。あるいは、地点8で大雨が発生することが予測されるために自動運転車1a及び1bが運行不可車両として特定されている場合は、自動運転車1a及び1bを手動運転車又は大雨の状況においてもODDを満たす自動運転車に置き換える。
【0065】
このように配車計画を更新することで、配車前にODDを満たさなくなることが予測されている運行不可車両についての配車計画を、手動運転車又はODDを満たすことのできるMaaS車両1により達成させることができる。延いては、自動運転車の回収の頻度や回収の手間を低減することができる。
【0066】
なお、第1の例と第2の例の組み合わせも可能である。例えば、配車後の運行不可車両に対しては第1の例による配車計画の変更で対応し、配車前の運行不可車両に対しては第2の例による配車計画の変更で対応することが考えられる。
【0067】
1-3.第3の例
まず第3の例において、自動運転車は、ODDを満たさなくなったとき第1の例で説明した動作(図3を参照)と同様に動作するように構成されている。
【0068】
第3の例では、運行不可車両の車両情報又は運行情報に応じて、現在の配車計画においてODDを満たさなくなることが予測される地点が同一である運行不可車両の集合のそれぞれについて、少なくとも1台の運行不可車両を手動運転車又はODDを満たすことのできる自動運転車に置き換えるように配車計画を更新する。
【0069】
以下、図5を参照して、第3の例について説明する。図5は、図2と同様に配車計画の例を示す概念図である。いま現在の配車計画が図5に示す配車計画であり、自動運転車1a、1b、1c、1d、1e、及び1fは配車前であるとする。また運行環境情報の予測と自動運転車の各々のODDから、地点8aにおいて自動運転車1a及び1bについてODDを満たさなくなる状況が発生し、地点8bにおいて自動運転車1c及び1eについてODDを満たさなくなる状況が発生することが予測されているとする。つまり図5に示す例では、自動運転車1a、1b、1c、及び1eが運行不可車両として特定される。特に図5に示す例において、ODDを満たさなくなることが予測される地点が同一である運行不可車両の集合は、自動運転車1a及び1b(地点8aで同一)と自動運転車1c及び1e(地点8bで同一)の2つである。
【0070】
このとき第3の例では、自動運転車1a又は1bのうち少なくとも1台を手動運転車又は地点8aにおいてODDを満たすことのできる自動運転車に置き換え、自動運転車1c又は1eのうち少なくとも1台を手動運転車又は地点8bにおいてODDを満たすことのできる自動運転車に置き換えるように配車計画を更新する。
【0071】
このように配車計画を更新することで、置き換えが行われた運行不可車両についての配車計画は、手動運転車又はODDを満たすことのできるMaaS車両1により達成させることができる。一方で、置き換えが行われていない運行不可車両は、ODDを満たさなくなる地点において、置き換えられた手動運転車又はODDを満たすことのできる自動運転車に追従走行することで、ODDを満たさなくなる地点を脱し、自律走行を再開することができる。延いては、自動運転車の回収の頻度や回収の手間を低減することができる。
【0072】
図5に示す配車計画に対して、第3の例により自動運転車1aと自動運転車1eを置き換えるように配車計画を更新した場合に実現される運行状況を図6に示す。図6に示すように、このように配車計画を更新することで、自動運転車1bは自動運転車1aに追従走行することで地点8aを脱することができ、自動運転車1cは自動運転車1eに追従走行することで地点8bを脱することができることがわかる。また自動運転車1a、1d、1e、及び1fは、更新された配車計画においてODDを満たすことができる。
【0073】
なお、ODDを満たさなくなることが予測される地点のそれぞれは、異なる状況の発生が予測されていることも想定され得る。例えば図5において、地点8aは、大雨が発生することが予測されており、地点8bは、暗所が出現することが予測されている場合、あるいは地点8aは、自動運転車ではODDを満たすことができない状況が発生しており、地点8bは、スペックの高い自動運転車であればODDを満たすことができる状況が発生している場合等である。この場合は、ODDを満たさなくなることが予測される地点それぞれの状況に応じて、運行不可車両の集合それぞれについて置き換えられるMaaS車両1が選択されて良い。特に、コストを考慮して必要十分なMaaS車両1が選択されて良い。
【0074】
なお、第1の例と第3の例の組み合わせも可能である。例えば、配車後の運行不可車両に対しては第1の例による配車計画の変更で対応し、配車前の運行不可車両に対しては第3の例による配車計画の変更で対応することが考えられる。
【0075】
2.構成
以下、本実施形態に係る配車システム10におけるサーバ(配車計画装置)2及び自動運転車の概略構成について説明する。
【0076】
2-1.サーバ(配車計画装置)の構成
図7はサーバ(配車計画装置)2の概略構成を示すブロック図である。サーバ2は、情報処理部200と、通信装置250と、を備えている。情報処理部200は、通信装置250と互いに情報を伝達することができるように構成されている。例えば、ケーブルによる電気的な接続や光回線による接続等で構成されている。
【0077】
情報処理部200は、メモリ210と、プロセッサ220と、を含むコンピュータである。メモリ210は、プロセッサ220と結合し、複数の実行可能なインストラクション212と、処理の実行に必要な種々のデータ213と、を記憶している。インストラクション212は、プログラム211により与えられる。この意味で、メモリ210は、「プログラムメモリ」と呼ぶこともできる。
【0078】
インストラクション212に従ってプロセッサ220が動作することにより、データ213に基づく種々の処理の実行が実現される。特に、配車計画生成処理の実行が実現される。そして、情報処理部200は、配車計画生成処理の実行により生成された配車計画を通信装置250に伝達する。
【0079】
通信装置250は、サーバ2の外部の装置と通信を行うことで種々の情報の送受信を行う。つまり、通信装置250は、通信ネットワーク4を介した通信を行うための装置である。通信装置250により、情報処理部200から取得する配車計画が複数のMaaS車両1に送信される。また通信装置250が受信する情報は、情報処理部200に伝達される。通信装置250が受信する情報として、複数のMaaS車両1の車両情報(ODDの情報を含む)、複数のMaaS車両1の運行エリアの運行環境情報の予測が例示される。情報処理部200が通信装置250から取得する情報は、データ213としてメモリ210に記憶される。
【0080】
次に、図8を参照して、配車計画生成処理の概略構成について説明する。配車計画生成処理は、運行不可車両特定処理P210と、計画更新処理P220と、により構成される。
【0081】
運行不可車両特定処理P210において、複数のMaaS車両1の各々についてのODDの情報及び運行環境情報の予測に基づいて、現在の配車計画における運行不可車両を特定する処理が実行される。つまり、運行不可車両特定処理P210の処理結果として、現在の配車計画における運行不可車両が与えられる。これは、例えば、複数のMaaS車両1の各々について個別に与えられるID情報により与えることができる。さらに、運行不可車両特定処理P210の処理結果には、特定した運行不可車両について、ODDを満たさなくなる地点及びODDを満たさなくなる時刻の情報が含まれていて良い。
【0082】
計画更新処理P220において、運行不可車両特定処理P210により特定された運行不可車両の車両情報又は運行情報に応じて、配車計画を更新する処理が実行される。計画更新処理P220により、例えば、前述した第1の例、第2の例、又は第3の例あるいはそれらの組み合わせに係る配車計画の更新が行われる。そして、更新された配車計画が配車計画生成処理の処理結果として与えられる。
【0083】
なお、複数のMaaS車両1について配車計画生成処理が最初に実行される際は、計画更新処理P220において、まず初期値となる配車計画が生成されることとなる。初期値となる配車計画の生成に係る処理については後述する。
【0084】
2-2.自動運転車の構成
図9は複数のMaaS車両1に含まれる自動運転車の概略構成を示すブロック図である。自動運転車は、自律走行制御装置100と、センサ110と、走行制御装置120と、通信装置150と、を備えている。自律走行制御装置100は、センサ110、走行制御装置120、及び通信装置150と互いに情報を伝達することができるように構成されている。典型的には、ワイヤーハーネスにより電気的に接続している。その他の構成として、無線通信による接続や光通信回線による接続等が例示される。また、通信装置150は、センサ110と互いに情報を伝達することができるように構成されている。
【0085】
センサ110は、自動運転車の運転環境に係る情報を検出し、検出情報を出力する。センサ110が出力する検出情報は、自律走行制御装置100及び通信装置150に伝達される。センサ110は、典型的には、自動運転車の周囲環境(先行車、白線、障害物等)の情報を検出する周囲環境検出センサと、自動運転車の走行状態(車速、加速度、ヨーレート等)の情報を検出する走行状態検出センサと、を含んでいる。周囲環境検出センサとして、カメラ、ミリ波レーダー、LiDAR等が例示される。走行状態検出センサとして、車輪速センサ、Gセンサ、ジャイロセンサ等が例示される。その他、センサ110として、GPSによる位置を取得するGPS受信機が例示される。
【0086】
なお、自動運転車の各々は、スペックに応じて互いに異なるセンサ110を備えていて良い。例えば、自動運転車の各々は、スペックに応じて、暗視カメラ、サーモグラフィ、高密度LiDAR等を適宜備えていて良い。
【0087】
自律走行制御装置100は、取得する情報に基づいて、自律走行に係る処理を実行し制御信号を出力する。自律走行制御装置100は、少なくとも、通信装置150からサーバ2において生成される配車計画を取得し、配車計画に従う自律走行を行うための処理を実行する。自律走行制御装置100が出力する制御信号は、走行制御装置120に伝達される。また自律走行制御装置100は、自律走行に係る処理の実行に伴って制御状態の情報や運行情報を通信装置150に対して出力しても良い。自律走行制御装置100は、典型的には、ECU(Electronic Control Unit)により実現される。
【0088】
通信装置150は、自動運転車の外部の装置と通信を行うことで種々の情報の送受信を行う。通信装置150は、少なくとも、通信ネットワーク4を介してサーバ2と通信を行い、サーバ2において生成される配車計画を受信する。さらに通信装置150は、自律走行制御装置100において他のMaaS車両1が接近し先行車として通過したことを検出することが可能なように、サーバ2又は周囲の他のMaaS車両1と通信を行い、他のMaaS車両1の運行情報を受信するように構成されていて良い。また通信装置150は、少なくとも、自動運転車のODDの情報をサーバ2に送信する。その他、通信装置150が受信する情報として、地図情報、道路交通情報等が例示される。通信装置150が送信する情報として、車両情報、運行情報等が例示される。
【0089】
走行制御装置120は、走行制御に係る処理を実行する。走行制御装置120により、自律走行制御装置100から取得する制御信号に従う走行制御が行われることで、自動運転車の自律走行が実現される。走行制御装置120は、例えば、自動運転車に備える一群のアクチュエータの動作を制御するECUにより実現される。自動運転車に備える一群のアクチュエータとして、動力装置(内燃機関、電気モータ等)を駆動するアクチュエータ、ブレーキ機構を駆動するアクチュエータ、ステアリング機構を駆動するアクチュエータ等が例示される。
【0090】
次に、図10を参照して、自律走行制御装置100が実行する処理の概略構成について説明する。自律走行制御装置100が実行する処理は、外界環境認識処理P110と、ODD逸脱検知処理P120と、走行計画処理P130と、制御量算出処理P140と、により構成される。
【0091】
外界環境認識処理P110において、センサ110の検出情報と、地図情報と、から自動運転車の周囲の外界環境の認識が行われる。外界環境認識処理P110において実行される処理として、自己位置推定、検出情報及び自己位置推定結果と地図情報との統合等が例示される。外界環境認識処理P110は、好適な公知技術を採用して良い。
【0092】
ODD逸脱検知処理P120において、センサ110の検出情報と、地図情報と、からODDを満たすか否かかが判定される。さらに、ODDを満たすか否かの判定において、外界環境認識処理P110による認識結果を用いても良い。
【0093】
走行計画処理P130において、外界環境認識処理P110の認識結果に基づき、走行動作の判断や自律走行経路の生成等の走行計画が行われる。ここで、走行計画処理P130では、ODD逸脱検知処理P120の検知結果に応じて、正常系処理P131又は異常系処理P132のいずれかが実行される。正常系処理P131は、ODD逸脱検知処理P120の検知結果がODDを満たすとするときに実行される処理であり、配車計画に従って自律走行を継続するための処理を実行する。異常系処理P132は、ODD逸脱検知処理P120の検知結果がODDを満たさないとするときに実行される処理であり、図3において説明した動作を行うための処理を実行する。異常系処理P132においては、通信情報として取得する他のMaaS車両1の運行情報に基づいて、他のMaaS車両1が接近し先行車として通過したことを検出する。
【0094】
制御量算出処理P140において、走行計画処理P130の処理結果に基づいて走行制御に係る制御量(例えば、加速、制動、操舵に係る制御量)を与える制御信号が生成される。典型的には、走行計画処理P130の処理結果として自律走行経路が与えられ、自律走行経路に沿って走行するように制御量を与える制御信号が生成される。生成された制御信号が自律走行制御装置100から出力される。
【0095】
3.処理
以下、本実施形態に係る配車システム10におけるサーバ(配車計画装置)2及び自動運転車において実行される処理について説明する。
【0096】
3-1.配車計画生成処理
図11は、サーバ(配車計画装置)2においてプロセッサ220により実行される配車計画生成処理を示すフローチャートである。図11に示すフローチャートの処理は、所定の処理周期毎に繰り返し実行される。
【0097】
ステップS100において、プロセッサ220は、所定期間未来までの間の各時刻における運行環境情報の予測を取得する。
【0098】
ステップS100の後、ステップS110に進む。ここで、ステップS110乃至ステップS140の処理は、複数のMaaS車両1に含まれる自動運転車の各々(i=1,2,・・・,N、Nは自動運転車の総数)を対象として実行される。
【0099】
ステップS110において、プロセッサ220は、対象とした自動運転車の情報(車両情報や運行情報)を取得する。ここで、対象とした自動運転車のODDの情報が取得される。
【0100】
ステップS110の後、処理はステップS120に進む。
【0101】
ステップS120において、プロセッサ220は、運行環境情報の予測及び対象とした自動運転車のODDに基づいて、所定期間未来までの間の各時刻で対象とした自動運転車がODDを満たさなくなるかを判定する。
【0102】
ODDを満たさなくなる場合(ステップS130;Yes)、対象とした自動運転車を運行不可車両とする(ステップS140)。
【0103】
自動運転車の各々(i=1,2,・・・,N)についてステップS110乃至ステップS140の処理の実行が完了した後、処理はステップS150に進む。
【0104】
ステップS150において、プロセッサ220は、ステップS110乃至ステップS140の処理の実行により運行不可車両とする自動運転車があるか否かを判定する。
【0105】
運行不可車両とする自動運転車がある場合(ステップS150;Yes)、処理はステップS160に進む。運行不可車両とする自動運転車がない場合(ステップS150;No)、配車計画を更新することなく今回処理は終了する。
【0106】
ステップS160(計画更新処理)において、プロセッサ220は、運行不可車両の車両情報又は運行情報に応じて、配車計画を更新する。配車計画の更新は、例えば、前述した第1の例、第2の例、又は第3の例あるいはそれらの組み合わせに係る配車計画の更新が行われる。
【0107】
ステップS160の後、今回処理は終了する。
【0108】
このように、サーバ(配車計画装置)2においてプロセッサ220により配車計画生成処理が実行される。またこのように本実施形態に係る配車システム10により、配車計画に基づいて運行される複数のMaaS車両の配車管理方法が実現される。
【0109】
3-2.初期値となる配車計画の生成
サーバ(配車計画装置)2は、複数のMaaS車両1について配車計画生成処理を最初に実行する際、まず初期値となる配車計画を生成し出力する。ここで、運行環境情報の予測や複数のMaaS車両1の車両情報又は運行情報に基づいて、初期値となる配車計画を生成することができる。以下、運行環境情報の予測や複数のMaaS車両1の車両情報又は運行情報に基づいて、初期値となる配車計画を生成する処理について説明する。
【0110】
いま複数のMaaS車両1には、手動運転車又はスペックが高く運行エリアにおいてODDを満たすことのできる自動運転車である上位グレード車両と、運行エリアの状況によってODDを満たさなくなることがある自動運転車である下位グレード車両と、を含んでいるとする。ここで、一般に、上位グレード車両はコストが高く、下位グレード車両はコストが低い。このため、上位グレード車両を必要最低限に利用する配車計画を生成することが望ましい。そこで初期値となる配車計画の生成に際して、まず上位グレード車両に対して重要度の高い運行が割り当てられる。例えば、緊急を要する運搬や人を乗せて運ぶ運行が上位グレード車両に割り当てられる。そして、他の運行は下位グレード車両に割り当てられる。
【0111】
上記を前提として、図12を参照して、初期値となる配車計画を生成する処理について説明する。ただし、複数のMaaS車両1に含まれる自動運転車は、ODDを満たさなくなったとき図3で説明した動作を実施するように構成されているとする。図12に示すフローチャートの処理は、サーバ(配車計画装置)2においてプロセッサ220により実行される。
【0112】
ステップS200において、プロセッサ220は、上位グレード車両についての配車計画を生成する。
【0113】
ステップS200の後、処理はステップS210に進む。
【0114】
ステップS210において、プロセッサ220は、下位グレード車両の出発地と目的地及び地図情報から、下位グレード車両についての経路候補を列挙する。
【0115】
ステップS210の後、処理はステップS220に進む。
【0116】
ステップS220において、プロセッサ220は、ステップS210において列挙した経路候補の各々についてODDを満たさなくなる地点を抽出する。ここで、抽出される地点は、静的な要因(例えば、地図情報で与えられる情報)でODDを満たさなくなる地点だけでなく、運行環境情報の予測に基づいてODDを満たさなくなることが予測される地点を含んでいて良い。
【0117】
ステップS220の後、処理はステップS230に進む。
【0118】
ステップS230において、プロセッサ220は、ステップS210において列挙した経路候補のうちステップS220において抽出したODDを満たさなくなる地点のない経路が存在するか否かを判定する。
【0119】
ODDを満たさなくなる地点のない経路が存在する場合(ステップS230;Yes)、プロセッサ220は、当該経路を下位グレード車両の配車ルートとするように配車計画を生成し(ステップS270)、処理は終了する。なお、ODDを満たさなくなる地点のない経路が複数存在する場合は、走行距離や走行時間が最も短い等、最適な経路を配車ルートとして良い。
【0120】
ODDを満たさなくなる地点のない経路が存在しない場合(ステップS230;No)、処理はステップS240に進む。
【0121】
ステップS240において、プロセッサ220は、ステップS220において抽出したODDを満たさなくなる地点のうち上位グレード車両の配車ルートに存在する地点を除去する。これは、ODDを満たさなくなる地点が上位グレード車両の配車ルートに存在していれば、当該地点において下位グレード車両が上位グレード車両に追従走行することで、ODDを満たさなくなる地点を脱することが期待されるからである。
【0122】
ステップS240の後、処理はステップS250に進む。
【0123】
ステップS250において、プロセッサ220は、ステップS210において列挙した経路候補のうち抽出したODDを満たさなくなる地点のない経路が存在するか否かを再度判定する。
【0124】
ODDを満たさなくなる地点のない経路が存在する場合(ステップS250;Yes)、プロセッサ220は、当該経路を下位グレード車両の配車ルートとするように配車計画を生成し(ステップS270)、処理は終了する。
【0125】
ODDを満たさなくなる地点のない経路が存在しない場合(ステップS250;No)、プロセッサ220は、いずれかの経路を走行可能な車両に置き換えて配車計画を生成する(ステップS260)。例えば、上位グレード車両に置き換える。あるいは、発生する状況に応じて、ODDを満たすことのできる自動運転車に置き換える。ステップS260の後、処理は終了する。
【0126】
以上説明したように初期値となる配車計画を生成することで、初期値となる配車計画において、運行環境情報の予測や複数のMaaS車両1の車両情報又は運行情報が考慮された配車計画を与えることができる。また上位グレード車両を必要最低限に利用する配車計画を与えることができ、低コストの配車計画を生成することができる。延いては、その後に更新された配車計画においてもコストの最適化を図ることができる。
【0127】
なお、図12において説明した初期値となる配車計画の生成について、以下のように変形した態様を採用することも考えられる。
【0128】
1つは、下位グレード車両にスペックの異なる複数の自動運転車が含まれる場合である。この場合、ステップS220において、スペック毎にODDを満たさなくなる地点の抽出が行われて良い。また、ステップS230又はステップS250において、スペック毎にODDを満たさなくなる地点のない経路が存在するか否かの判定が行われて良い。そして、ステップS230又はステップS250において、ODDを満たさなくなる地点のない経路が存在すると判定する場合(ステップS230;Yes、又はステップS250;Yes)、最もコストの低いスペックの自動運転車を割り当てるように配車計画を生成して良い。このように変形した態様を採用することで、より低コストの配車計画を生成することができる。
【0129】
もう1つは、ステップS250において、ODDを満たさなくなる地点のない経路が存在しないとする場合(ステップS250;No)についてである。この場合に、ステップS260に係る処理の代わりに、あるいはステップS260に係る処理に加えて、以下の処理を実行しても良い。まずODDを満たさなくなる地点から除去を必要とする地点を抽出する。除去を必要とする地点とは、例えば、当該地点が除かれればODDを満たさなくなる地点のない経路が存在することとなる地点である。次に上位グレード車両のうち、除去を必要とする地点を経由が可能な車両であって、最も経由に要するコスト(所要時間や乗客の有無等)が小さい車両を選択する。ここで、除去を必要とする地点を経由が可能であるか否かは、例えば、緊急を要する運搬を行う車両にあっては、経由したときに目的の時間に間に合わせることができるかどうか、人を乗せる車両にあっては、乗客のいない区間で経由可能かどうか等が指標となる。そして、選択した上位グレード車両を、除去を必要とする地点を経由する配車ルートに修正して配車計画を生成する。このように変形した態様を採用することで、下位グレード車両をよりコストの高い車両に置き換える頻度を低減させることができる。延いては、コストの低減を図ることができる。
【0130】
3-3.自律走行制御装置が実行する処理
図13は、自動運転車において自律走行制御装置100が実行する処理を示すフローチャートである。図13に示すフローチャートの処理は、所定の処理周期毎に繰り返し実行される。
【0131】
ステップS300において、自律走行制御装置100は、外界環境認識処理P110を実行する。
【0132】
ステップS300の後、処理はステップS310に進む。
【0133】
ステップS310において、自律走行制御装置100は、ODD逸脱検知処理P120を実行する。
【0134】
ODD逸脱検知処理P120の検知結果がODDを満たすとするとき(ステップS320;Yes)、処理はステップS330(正常系処理P131)に進む。ODD逸脱検知処理P120の検知結果がODDを満たさないとするとき(ステップS320;No)、処理はステップS341及びステップS342(異常系処理P132)に進む。
【0135】
ステップS330において、自律走行制御装置100は、外界環境認識処理P110の認識結果に基づいて、配車計画に従い自律走行を継続するように走行計画を生成する。
【0136】
ステップS341において、自律走行制御装置100は、自動運転車を安全に停車させる処理を実行する。自動運転車の停車後、回収車両が通過するまで待機する。
【0137】
そして、回収車両が通過したことを受けて、自動運転車を回収車両に追従走行させる処理を実行する(ステップS342)。なお、追従走行によりODDを満たすこととなったときは(ステップS320;Yes)、ステップS330に係る処理が実行され、再度自律走行が再開される。
【0138】
4.効果
以上説明したように、本実施形態によれば、複数のMaaS車両1に含まれる自動運転車についてのODD及び運行環境情報の予測に基づいて、現在の配車計画における運行不可車両が特定される。そして、運行不可車両の車両情報又は運行情報に応じて配車計画を更新する処理が実行される。これにより、現在の配車計画において所定期間未来までの間に予測される運行不可車両に対処することができ、自動運転車の回収の頻度や回収の手間を低減することができる。延いては、運用に係るコストの低減を図ることができる。
【0139】
なお、本実施形態に係る配車システム10は、配車計画の更新についての第1の例を参考として、配車計画の生成及び更新を行う対象を自動運転車の回収を行う回収車両に限るように構成することも可能である。つまりこの場合、配車システム10により配車されるのは回収車両であり、また回収の対象とする自動運転車は、配車システム10により配車される車両でなくとも良い。特に、回収の対象とする自動運転車は、バスやタクシー等の所定の運行を行う車両に限られず、任意に設定される目的地に向かう車両であっても良い。ただし、サーバ2は、前述したように、自動運転車から車両情報(ODDの情報を含む)や運行情報を取得することができるように構成されることは必要である。このように構成するとき、サーバ2は、「回収計画装置」と呼ぶこともできる。
【符号の説明】
【0140】
1 MaaS車両
2 サーバ
3 配車ステーション
6 運行エリア
7 配車ルート
10 配車システム
100 自律走行制御装置
110 センサ
120 走行制御装置
150 通信装置
200 情報処理部
210 メモリ
211 プログラム
212 インストラクション
213 データ
220 プロセッサ
250 通信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13