(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】切粉回収装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20241016BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B23Q11/00 M
B23Q11/08 E
B23Q11/00 Q
(21)【出願番号】P 2022037873
(22)【出願日】2022-03-11
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼沢 武尊
(72)【発明者】
【氏名】野中 博樹
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-267942(JP,A)
【文献】特開2009-297823(JP,A)
【文献】特表2003-514674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B23Q 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切粉回収装置であって、
ワークのうちの除去加工が施される加工部分を覆うカバーを備え、
前記カバーは、
前記加工部分に前記除去加工を施す工具が挿入される工具挿入口と、
前記加工部分に前記除去加工を施すことにより生じる切粉を排出するための排出口と、
前記排出口に向けて気体を噴射する第1噴射口と、
を有し、
前記加工部分は、前記第1噴射口と前記排出口との間に配置され
、
前記工具は、前記加工部分の表面に沿って、前記加工部分および前記カバーに対して移動しながら前記加工部分に前記除去加工を施し、
前記カバーの外壁面には、凹部が形成されており、
前記工具挿入口は、前記凹部の底面に、前記除去加工時の前記工具の移動方向に沿って設けられており、
前記凹部の側壁面は、前記工具挿入口に近付くほど前記凹部の幅が狭くなるように傾斜しており、
前記第1噴射口は、前記工具挿入口の縁部に沿って設けられている、
切粉回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の切粉回収装置であって、
前記排出口は、前記加工部分に対して鉛直方向における下側に配置されている、切粉回収装置。
【請求項3】
請求項1に記載の切粉回収装置であって、
前記カバーは、前記排出口に向けて気体を噴射する第2噴射口を有し、
前記第2噴射口は、前記加工部分と前記排出口との間に配置されている、切粉回収装置。
【請求項4】
請求項1に記載の切粉回収装置であって、
前記カバーに連結され、前記排出口から排出される前記切粉を捕集し、前記排出口から排出される前記気体を通過させるフィルタを備える、切粉回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、切粉回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、工具により切削加工が施されるワークを覆うカバーと、ワークおよび工具に気体を吹き付けることによって切削加工により生じた切粉をワークおよび工具から分離させるブローノズルと、ワークおよび工具の上方に配置され、ブローノズルからの気体および切粉を吸引する吸引ノズルとを備える装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献の装置では、ブローノズルからワークおよび工具に気体を吹き付けることによってワークおよび工具から切粉を分離させ、吸引ノズルによる吸引によって切粉を回収しているので、装置の構成が複雑である。そこで、より簡素な構成で切粉を回収可能な装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、切粉回収装置が提供される。この切粉回収装置は、ワークのうちの除去加工が施される加工部分を覆うカバーを備える。前記カバーは、前記加工部分に前記除去加工を施す工具が挿入される工具挿入口と、前記加工部分に前記除去加工を施すことにより生じる切粉を排出するための排出口と、前記排出口に向けて気体を噴射する第1噴射口と、を有し、前記加工部分は、前記第1噴射口と前記排出口との間に配置される。
この形態の切粉回収装置によれば、ワークの加工部分を覆うカバーが設けられているので、ワークに除去加工を施すことによって生じる切粉がカバーの外部に飛散することを抑制できる。さらに、カバーには排出口に向けて気体を噴射する第1噴射口が設けられており、第1噴射口と排出口との間にワークの加工部分が配置されるので、第1噴射口から噴射される気体によって、ワークに対する除去加工によって生じる切粉を排出口に移動させることができる。そのため、簡素な構成で切粉を回収することができる。
(2)上記形態の切粉回収装置において、前記工具は、前記加工部分の表面に沿って、前記加工部分および前記カバーに対して移動しながら前記加工部分に前記除去加工を施し、前記工具挿入口は、前記除去加工時の前記工具の移動方向に沿って設けられており、前記第1噴射口は、前記工具挿入口の縁部に沿って設けられてもよい。
この形態の切粉回収装置によれば、除去加工時の工具の移動方向に沿って工具挿入口が設けられているので、工具によるワークへの除去加工がカバーによって妨げられることを抑制できる。
(3)上記形態の切粉回収装置において、前記カバーの外壁面には、凹部が形成されており、前記工具挿入口は、前記凹部の底面に設けられており、前記凹部の側壁面は、前記工具挿入口に近付くほど前記凹部の幅が狭くなるように傾斜してもよい。
この形態の切粉回収装置によれば、工具挿入口に近付くほど凹部の幅が狭くなるように凹部の側壁面が傾斜しているので、第1噴射口からの気体の噴射に伴って工具挿入口からカバー内に流入する空気の流速を高めることができる。そのため、工具挿入口を通じてカバーの外部に切粉が飛散することを抑制できる。
(4)上記形態の切粉回収装置において、前記工具は、前記加工部分の表面に沿って、前記加工部分および前記カバーに対して移動しながら前記加工部分に前記除去加工を施し、前記カバーの外壁面には、凹部が形成されており、前記工具挿入口は、前記凹部の底面に、前記除去加工時の前記工具の移動方向に沿って設けられており、前記凹部の側壁面は、前記工具挿入口に近付くほど前記凹部の幅が狭くなるように傾斜しており、前記第1噴射口は、前記工具挿入口の縁部に沿って設けられてもよい。
この形態の切粉回収装置によれば、除去加工時の工具の移動方向に沿って工具挿入口が設けられているので、工具によるワークへの除去加工がカバーによって妨げられることを抑制できる。さらに、工具挿入口に近付くほど凹部の幅が狭くなるように凹部の側壁面が傾斜しているので、第1噴射口からの気体の噴射に伴って工具挿入口からカバー内に流入する空気の流速を高めることができる。そのため、工具挿入口を通じてカバーの外部に切粉が飛散することを抑制できる。
(5)上記形態の切粉回収装置において、前記排出口は、前記加工部分に対して鉛直方向における下側に配置されてもよい。
この形態の切粉回収装置によれば、排出口が加工部分に対して鉛直方向における下側に配置されているので、第1噴射口から噴射される気体だけではなく、重力によっても切粉を排出口に移動させることができる。そのため、切粉を排出口に移動させやすくすることができる。
(6)上記形態の切粉回収装置において、前記カバーは、前記排出口に向けて気体を噴射する第2噴射口を有し、前記第2噴射口は、前記加工部分と前記排出口との間に配置されてもよい。
この形態の切粉回収装置によれば、第2噴射口からの気体の噴射によって、第1噴射口から噴射される気体を第1噴射口から排出口に向かって流れやすくすることができる。
(7)上記形態の切粉回収装置は、前記カバーに連結され、前記排出口から排出される前記切粉を捕集し、前記排出口から排出される前記気体を通過させるフィルタを備えてもよい。
この形態の切粉回収装置によれば、排出口に移動した切粉をフィルタによって容易に回収することができる。
本開示は、切粉回収装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、工作機械やカバーなどの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の工作機械の概略構成を示す側面図。
【
図2】第1実施形態の切粉回収装置の構成を示す斜視図。
【
図3】第1実施形態のカバーの構成を示す第1の断面図。
【
図4】第1実施形態のカバーの構成を示す第2の断面図。
【
図5】第1実施形態のカバーの構成を示す第3の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における切粉回収装置15が装着される工作機械10の概略構成を示す側面図である。
図1には、互いに直交する3つの座標軸であるX,Y,Z軸を表す矢印が示されている。X軸およびY軸は水平面に平行な座標軸である。Z軸は鉛直方向に平行な座標軸であり、Z軸を表す矢印の指し示す方向は鉛直方向とは反対方向である。X,Y,Z軸を表す矢印は、他の図においても、矢印の指し示す方向が
図1と対応するように適宜、図示してある。
【0009】
本実施形態の工作機械10は、マシニングセンタであり、ベッド20と、コラム30と、主軸回転装置40と、サドル50と、テーブル60と、図示されていない制御装置とを備えている。ベッド20は、工作機械10の下端部に設けられている。ベッド20の上面には、コラム30が固定されている。コラム30は、Z軸に沿って設けられている。
【0010】
主軸回転装置40は、ベッド20の上方に配置されており、コラム30によって支持されている。主軸回転装置40は、コラム30の正面に設けられたレール35にガイドされながら、Z軸に沿って移動することができる。主軸回転装置40は、主軸45を有している。主軸45には、工具TLが装着される。本実施形態では、工具TLとして、エンドミルが用いられる。主軸回転装置40は、回転軸Rtを中心にして主軸45を回転させることにより、工具TLを回転させる。主軸回転装置40は、Y軸に平行な回転軸Rsを中心にして回転することにより、主軸45および工具TLの向きを変更する。
【0011】
サドル50は、ベッド20の上方に配置されている。サドル50は、ベッド20の上面に設けられたレール25にガイドされながら、X軸に沿って移動する。サドル50の上方には、テーブル60が配置されている。テーブル60は、サドル50の上面に設けられたレール55にガイドされながら、Y軸に沿って移動する。テーブル60の上面には、ワークWKをテーブル60に固定するためのワーク固定治具70が設置されている。上述した主軸回転装置40、サドル50、および、テーブル60は、例えば、制御装置の制御下で駆動される図示されていないサーボモータによって駆動される。
【0012】
本実施形態では、ワーク固定治具70は、ベース部73と、ワーク固定部75と、ワーク回転部78とを備えている。ベース部73は、Z軸に沿って設けられている。ベース部73は、例えば、ボルトによって、テーブル60に固定されている。ワーク固定部75は、ベース部73によって回転可能に支持されている。ワーク固定部75には、ワークWKが固定される。本実施形態では、ワークWKは、棒状の外観形状を有している。具体的には、本実施形態では、ワークWKは、銅製の導体の表面にエナメル製の絶縁被膜が設けられた平角銅線である。ワーク回転部78は、X軸に平行な回転軸Rwを中心にして、ワーク固定部75を回転させることにより、ワークWKの向きを変更する。本実施形態では、ワーク回転部78は、制御装置の制御下で駆動されるサーボモータと、ベルトと、プーリとを組み合わせて構成されている。
【0013】
工作機械10は、ワークWKに対して工具TLを相対回転させながら、工具TLをワークWKに接触させることにより、ワークWKに対して切削加工を施す。本実施形態では、工作機械10は、ワーク回転部78によってワークWKの向きを変更しつつ、回転している工具TLを、予め定められた経路に沿ってワークWKに対して相対移動させることにより、ワークWKの絶縁被膜を除去して、ワークWKの導体を所望の形状に加工する。以下の説明では、ワークWKのうち、切削加工等の除去加工が施される部分のことを加工部分と呼ぶ。
【0014】
工作機械10には、切粉回収装置15が装着されている。本実施形態では、切粉回収装置15は、カバー100と、フィルタ200とを備えている。カバー100は、ワークWKの加工部分を覆っている。フィルタ200は、カバー100に連結されており、ワークWKの加工部分に切削加工を施すことにより生じる切粉を捕集する。切粉とは、ワークWKに対して切削加工等の除去加工を施すことにより生じるワークWKの屑のことを意味する。切粉は、ワークWKに対して切削加工を施すことの他に、例えば、ワークWKに対して研削加工を施すことによっても生じる。
【0015】
カバー100は、図示されていない配管を介して、気体供給源18に接続されている。気体供給源18は、カバー100内に気体GSを圧送する。本実施形態では、気体供給源18は、エアコンプレッサであり、気体GSは、空気である。カバー100内で生じた切粉は、気体供給源18からの気体GSによってフィルタ200に搬送される。なお、他の実施形態では、気体供給源18は、エアコンプレッサではなく、例えば、圧縮された気体GSを貯蔵するガスタンクでもよい。気体GSは、空気ではなく、例えば、アルゴン等の不活性ガスでもよい。
【0016】
図2は、本実施形態の切粉回収装置15の構成を示す斜視図である。
図3は、本実施形態のカバー100の構成を示す第1の断面図である。
図4は、本実施形態のカバー100の構成を示す第2の断面図である。
図5は、本実施形態のカバー100の構成を示す第3の断面図である。
図3には、Y軸に垂直な平面でカバー100を切断したときのカバー100およびワーク固定治具70の断面が表されている。
図4には、X軸に垂直な平面でカバー100を切断したときのカバー100の断面が表されている。
図5には、Z軸に垂直な平面でカバー100を切断したときのカバー100の断面が表されている。
【0017】
図2に示すように、本実施形態では、切粉回収装置15は、カバー100と、フィルタ200とを備えている。カバー100は、本体部110と、フランジ部120とを有している。本実施形態では、カバー100は、左右対称に構成されている。なお、他の実施形態では、カバー100は、左右非対称に構成されてもよい。
【0018】
本体部110は、前壁部111と、左側壁部112と、右側壁部113と、後壁部114と、左ノズル部115と、右ノズル部116とを有している。前壁部111および後壁部114は、互いに向かい合うように配置されている。本実施形態では、Z軸に沿った前壁部111の長さは、Z軸に沿った後壁部114の長さよりも短い。前壁部111の上端部は、後壁部114の上端部よりも下方に設けられており、前壁部111の下端部は、後壁部114の下端部とほぼ同じ高さに設けられている。左側壁部112および右側壁部113は、互いに向かい合うように配置されている。左側壁部112は、前壁部111の左端部と後壁部114の左端部とを接続しており、右側壁部113は、前壁部111の右端部と後壁部114の右端部とを接続している。
【0019】
左ノズル部115は、左側壁部112の上端部から右側壁部113に向かって突き出すように設けられている。左ノズル部115は、左側壁部112と後壁部114との接続部から左側壁部112と前壁部111との接続部まで、左側壁部112の縁に沿って設けられている。左ノズル部115の先端部には、後述する第1噴射口165Lが設けられている。右ノズル部116は、右側壁部113の上端部から左側壁部112に向かって突き出すように設けられている。右ノズル部116は、左ノズル部115と左右対称に設けられている。右ノズル部116の先端部には、後述する第1噴射口165Rが設けられている。
【0020】
フランジ部120は、平板状に構成されており、後壁部114の左右の端部に接続されている。本実施形態では、フランジ部120は、複数の貫通穴125を有しており、各貫通穴125に挿入されるボルトによってワーク固定治具70のベース部73に固定される。なお、フランジ部120は、ボルトではなく、例えば、クランプによってベース部73に固定されてもよい。
【0021】
本実施形態では、カバー100は、樹脂材料で形成されている。カバー100は、例えば、射出成形法や、3Dプリンタを用いた付加製造法によって製造することができる。なお、他の実施形態では、カバー100は、樹脂材料ではなく、金属材料で形成されてもよい。
【0022】
フィルタ200は、カバー100の下端部に固定されている。本実施形態では、フィルタ200は、メッシュ部材で構成されており、有底筒状の外観形状を有している。フィルタ200は、気体GSを通過させ、切粉を捕集する。
【0023】
図3および
図4に示すように、カバー100は、前壁部111、左側壁部112、右側壁部113、後壁部114、左ノズル部115、および、右ノズル部116によって囲まれた内部空間SPを有している。内部空間SPに面するカバー100の内壁面は、略円筒状に構成されている。
【0024】
図3に示すように、本実施形態では、カバー100は、ワーク挿入口130と、工具挿入口140と、排出口150と、導入口161と、共通流路163Cと、左流路163Lと、右流路163Rと、第1噴射口165L,165Rと、第2噴射口169とを有している。
【0025】
図4に示すように、ワーク挿入口130は、後壁部114の中央部に設けられている。ワーク挿入口130は、後壁部114を貫通するように設けられており、カバー100の外部と内部空間SPとを連通している。ワーク固定部75に固定されたワークWKは、ワーク挿入口130を通じて、内部空間SPに挿入される。
【0026】
カバー100の外壁面には左ノズル部115と右ノズル部116とによって凹部119が形成されており、工具挿入口140は、凹部119の底面に設けられている。凹部119の側壁面、つまり、左ノズル部115の上面および右ノズル部116の上面は、工具挿入口140に近付くほど凹部119の幅が狭くなるように傾斜している。凹部119の幅とは、互いに向かい合うように配置された側壁面同士の間隔のことを意味する。本実施形態では、凹部119の幅とは、Y軸に沿った方向における、左ノズル部115の上面および右ノズル部116の上面との間隔のことを意味する。工具挿入口140は、カバー100の外部と内部空間SPとを連通している。
図3に示すように、工作機械10の主軸45に装着された工具TLは、工具挿入口140を通じて、内部空間SPに挿入される。上述したとおり、本実施形態では、工作機械10は、Y軸に平行な回転軸Rsを中心にしてワークWKに対する工具TLの先端部の傾斜角を変更しつつ、予め定められた経路に沿って工具TLの先端部をワークWKに対してX軸およびZ軸に沿って相対移動させることにより、ワークWKに対して切削加工を施す。工具挿入口140は、上記経路に沿って移動する工具TLに接触しないように設けられている。より具体的には、本実施形態では、工具挿入口140は、切削加工時の工具TLの移動方向に沿って後壁部114から前壁部111の上端部まで連続するスリット状に設けられている。
【0027】
排出口150は、カバー100の下端部に設けられている。排出口150は、カバー100の外部と内部空間SPとを連通している。排出口150からは、ワークWKに切削加工を施すことにより生じる切粉が排出される。
【0028】
図2に示すように、導入口161は、前壁部111の外表面の中央部に設けられている。図示については省略するが、導入口161には、上述した気体供給源18に連通する配管が接続されている。本実施形態では、導入口161に接続される配管に工具TLや主軸回転装置40が接触しないように、導入口161が前壁部111の下側部分に設けられている。気体供給源18から供給された気体GSは、導入口161を通じて、共通流路163Cに導入される。
【0029】
図5に示すように、共通流路163Cは、前壁部111の中央部に設けられている。共通流路163Cの一端は、導入口161に連通している。共通流路163Cの他端は、左流路163Lおよび右流路163Rに連通している。
図4および
図5に示すように、左流路163Lは、前壁部111の左側部分、左側壁部112の内部、および、左ノズル部115の内部を通って、第1噴射口165Lおよび第2噴射口169に連通している。右流路163Rは、前壁部111の右側部分、右側壁部113の内部、および、右ノズル部116の内部を通って、第1噴射口165Rおよび第2噴射口169に連通している。
【0030】
図4に示すように、第1噴射口165L,165Rは、ワークWKの加工部分に対して排出口150とは反対側に配置されている。換言すれば、ワークWKの加工部分は、第1噴射口165L,165Rと排出口150との間に配置されている。本実施形態では、左側の第1噴射口165Lは、左ノズル部115の先端部にスリット状に設けられており、右側の第1噴射口165Rは、右ノズル部116の先端部にスリット状に設けられている。第1噴射口165L,165Rは、排出口150に向けて気体GSを噴射する。第1噴射口165L,165Rが排出口150に向けて気体GSを噴射するとは、第1噴射口165L,165Rからの気体GSの噴射方向を表すベクトルが、第1噴射口165L,165Rから排出口150に向かう成分を有しているという意味であり、第1噴射口165L,165Rからの気体GSの噴射方向を表すベクトルの延長線上に排出口150が配置されていなくてもよい。本実施形態では、第1噴射口165L,165Rからの気体GSの噴射によって、工具挿入口140とワークWKの加工部分との間に気流によるカーテンが形成されるように、第1噴射口165L,165Rが設けられている。なお、他の実施形態では、第1噴射口165L,165Rがスリット状に設けられなくてもよい。例えば、左ノズル部115の先端部に複数の第1噴射口165Lが並んで設けられ、右ノズル部116の先端部に複数の第1噴射口165Rが並んで設けられてもよい。
【0031】
第2噴射口169は、ワークWKの加工部分と排出口150との間に配置されている。本実施形態では、第2噴射口169は、前壁部111の内壁面に、Y軸に沿ってスリット状に設けられている。第2噴射口169は、排出口150に向けて気体GSを噴射する。第2噴射口169が排出口150に向けて気体GSを噴射するとは、第2噴射口169からの気体GSの噴射方向を表すベクトルが、第2噴射口169から排出口150に向かう成分を有しているという意味であり、第2噴射口169からの気体GSの噴射方向を表すベクトルの延長線上に排出口150が配置されていなくてもよい。なお、他の実施形態では、第2噴射口169がスリット状に設けられなくてもよい。例えば、複数の第2噴射口169がY軸に沿って並んで設けられもよい。
【0032】
図3に示すように、第1噴射口165L,165Rから気体GSが噴射されることによって、内部空間SPには、第1噴射口165L,165Rから排出口150に向かう気体GSの流れが形成される。ワークWKの加工部分から生じた切粉は、気体GSによって排出口150に搬送されて、フィルタ200によって捕集される。さらに、第1噴射口165L,165Rから排出口150に向かう気体GSの流れが生じると、工具挿入口140を通じてカバー100の外部から内部空間SPに空気が流入するので、工具挿入口140を通じて切粉がカバー100の外部に飛散することが抑制される。さらに、本実施形態では、第1噴射口165L,165Rだけではなく、第2噴射口169からも気体GSが噴射されるので、排出口150の近傍で気体GSが滞留することを抑制できる。
【0033】
以上で説明した本実施形態における切粉回収装置15によれば、ワークWKの加工部分を覆うカバー100が設けられているので、ワークWKに切削加工を施すことによって生じる切粉がカバー100の外部に飛散することを抑制できる。さらに、本実施形態では、カバー100には排出口150に向けて気体GSを噴射する第1噴射口165L,165Rが設けられており、第1噴射口165L,165Rと排出口150との間にワークWKの加工部分が配置されている。そのため、第1噴射口165L,165Rから噴射される気体GSによって、ワークWKに対する切削加工によって生じる切粉を排出口150に搬送することができる。したがって、簡素な構成で切粉を回収することができる。特に、本実施形態では、カバー100の内部空間SPから切粉を吸引する装置を設けずに、簡素な構成で切粉を回収することができる。
【0034】
また、本実施形態では、カバー100には、工具TLの先端部が挿入される工具挿入口140が設けられており、工具TLの全体がカバー100によって覆われない。そのため、工具TLの全体をカバーで覆う形態に比べて、カバー100を小型化することができる。特に、本実施形態では、工具挿入口140は、ワークWKおよびカバー100に対して相対移動しながらワークWKに切削加工を施す工具TLに接触しないようにスリット状に設けられている。そのため、カバー100が設けられることによって、ワークWKを所望の形状に加工することが制限されることを抑制できる。さらに、本実施形態では、工具挿入口140の縁部に沿って第1噴射口165L,165Rが設けられているので、第1噴射口165L,165Rからの気体GSの噴射によって、工具挿入口140とワークWKの加工部分との間に気流によるカーテンを形成することができる。そのため、工具挿入口140を通じてカバー100の外部に切粉が飛散することを抑制できる。
【0035】
また、本実施形態では、工具挿入口140は、カバー100の外壁面に形成された凹部119に設けられており、凹部119の側壁面は、工具挿入口140に近付くほど凹部119の幅が狭くなるように傾斜しているので、第1噴射口165L,165Rからの気体GSの噴射に伴って工具挿入口140からカバー100の内部空間SPに流入する空気の流速を高めることができる。そのため、工具挿入口140を通じてカバー100の外部に切粉が飛散することを抑制できる。
【0036】
また、本実施形態では、排出口150は、ワークWKの加工部分に対して鉛直方向の下側に配置されているので、第1噴射口165L,165Rから噴射される気体GSだけではなく、重力によっても切粉を排出口150に移動させることができる。そのため、切粉を排出口150に移動させやすくできる。
【0037】
また、本実施形態では、カバー100には、ワークWKの加工部分と排出口150との間に配置され、排出口150に向けて気体GSを噴射する第2噴射口169が設けられている。そのため、第2噴射口169からの気体GSの噴射によって、第1噴射口165L,165Rから噴射される気体GSを第1噴射口165L,165Rから排出口150に向かって流れやすくすることができる。
【0038】
また、本実施形態では、排出口150には、気体GSを通過させ、切粉を捕集するフィルタ200が設けられている。そのため、フィルタ200によって切粉を容易に回収できる。特に、本実施形態では、フィルタ200は、気体GSを通過させやすいようにメッシュ部材で構成されているので、ワークWKの加工部分と排出口150との間で気体GSの圧力が高まって、加工部分から工具挿入口140に向かう気体GSの流れが形成されることを抑制できる。
【0039】
B.他の実施形態:
(B1)上述した第1実施形態では、工作機械10は、工具TLを用いてワークWKに切削加工を施すマシニングセンタである。これに対して、工作機械10は、マシニングセンタではなく、例えば、ボール盤や旋盤であってもよい。工作機械10がボール盤である場合には、工具TLとしてドリルが用いられてもよい。工作機械10が旋盤である場合には、工具TLとしてバイトが用いられてもよい。切粉回収装置15のカバー100は、工作機械10の種類や、工具TLの種類や、加工方法等に応じて設計できる。例えば、工作機械10がボール盤である場合には、カバー100は、工具TLの回転軸Rtに沿った中心軸を有する円筒状に構成されもよい。工作機械10が旋盤である場合には、カバー100は、ワークWKの回転軸Rwに沿った中心軸を有する円筒状に構成され、工具挿入口140が円筒状のカバー100の側面部に設けられてもよい。
【0040】
(B2)上述した第1実施形態では、工作機械10は、工具TLを用いてワークWKに切削加工を施すマシニングセンタである。これに対して、工作機械10は、工具TLを用いてワークWKに切削加工以外の除去加工を施す機械であってもよい。例えば、工作機械10は、工具TLとして研削砥石を用いて、ワークWKに研削加工を施す研削盤であってもよい。
【0041】
(B3)上述した第1実施形態の切粉回収装置15では、工具挿入口140は、カバー100の外壁面に形成された凹部119の底面に設けられており、凹部119の側壁面は、工具挿入口140に近付くほど凹部119の幅が狭くなるように傾斜している。これに対して、工具挿入口140は、凹部119の底面に設けられていなくてもよい。また、工具挿入口140が凹部119の底面に設けられている場合であっても、凹部119の側壁面は、工具挿入口140に近付くほど凹部119の幅が狭くなるように傾斜していなくてもよい。
【0042】
(B4)上述した第1実施形態の切粉回収装置15では、カバー100には、第2噴射口169が設けられている。これに対して、第2噴射口169がカバー100に設けられていなくてもよい。
【0043】
(B5)上述した第1実施形態の切粉回収装置15では、カバー100には、ワーク挿入口130が設けられている。これに対して、ワーク挿入口130がカバー100に設けられていなくてもよい。この場合、カバー100は、ワーク固定治具70およびワークWKを覆うように設けられてもよい。
【0044】
(B6)上述した第1実施形態の切粉回収装置15は、フィルタ200を備えている。これに対して、切粉回収装置15は、フィルタ200を備えていなくてもよい。例えば、カバー100の排出口150は、ホースを介して、切粉を貯留する回収容器が接続されてもよい。
【0045】
(B7)上述した第1実施形態の切粉回収装置15では、カバー100の第1噴射口165L,165Rは、左右対称に設けられている。これに対して、第1噴射口165L,165Rは、左右対称に設けられていなくてもよい。例えば、
図6に示すように、左右の第1噴射口165L,165Rは、互いの位置を前後に異ならせて配置され、円柱状の内部空間SPの中心軸に平行に視たときに、カバー100の内壁面の接線方向に沿って気体GSを噴射するように設けられてもよい。この場合、内部空間SPに、第1噴射口165L,165Rから排出口150に向かう渦状の気体GSの流れが形成されるので、第1噴射口165L,165Rから排出口150に向かって気体GSを流れやすくすることができる。なお、
図6では、第1噴射口165L,165Rの周辺の構成について示しているが、その他の構成については図示を省略している。
【0046】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
10…工作機械、15…切粉回収装置、18…気体供給源、20…ベッド、30…コラム、40…主軸回転装置、45…主軸、50…サドル、60…テーブル、70…ワーク固定治具、73…ベース部、75…ワーク固定部、78…ワーク回転部、100…カバー、110…本体部、111…前壁部、112…左側壁部、113…右側壁部、114…後壁部、115…左ノズル部、116…右ノズル部、119…凹部、120…フランジ部、125…貫通穴、130…ワーク挿入口、140…工具挿入口、150…排出口、161…導入口、163C…共通流路、163L…左流路、163R…右流路、165L,165R…第1噴射口、169…第2噴射口、200…フィルタ、GS…気体、SP…内部空間、TL…工具、WK…ワーク