(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 41/34 20060101AFI20241016BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20241016BHJP
F02D 23/02 20060101ALI20241016BHJP
F02D 41/04 20060101ALI20241016BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
F02D41/34 100
F02B37/00 302G
F02D23/02 K
F02D41/04
F02D45/00 360E
F02D45/00 364E
(21)【出願番号】P 2022039003
(22)【出願日】2022-03-14
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】井戸側 正直
(72)【発明者】
【氏名】金子 理人
(72)【発明者】
【氏名】杉本 元浩
(72)【発明者】
【氏名】内田 孝宏
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-010549(JP,A)
【文献】特開2012-255385(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0137470(US,A1)
【文献】特開2014-224461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/34
F02B 37/00
F02D 23/02
F02D 41/04
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路に燃料を噴射するポート噴射弁と、
前記吸気通路を介さずに気筒内に直接燃料を噴射する筒内噴射弁と、
吸気を過給する過給機と、
大気圧を検出する大気圧センサと、
前記ポート噴射弁に供給される燃料の圧力であるポート用燃圧を検出する燃圧センサと、
を有する内燃機関に適用され、
前記気筒で1回の燃料の燃焼に供される総燃料量に対する、前記ポート噴射弁から噴射される燃料量の比率をポート噴射比率としたとき、
前記過給機が過給を行う運転状態であり、且つバルブオーバーラップ期間がゼロよりも大きい機関運転領域である、という条件を満たす場合には、同条件を満たさない場合に比較して、前記ポート噴射比率を小さく設定し、且つ前記ポート噴射弁からの燃料噴射の開始タイミングを遅くする
特定噴射制御を実行し、
前記特定噴射制御では、
前記バルブオーバーラップ期間よりも後のタイミングを前記開始タイミングとし、且つ前記大気圧センサが検出した最新の前記大気圧が低いほど前記ポート噴射比率を小さくする幅を大きく設定して当該ポート噴射比率を算出する処置を行い、
前記燃圧センサが検出した最新の前記ポート用燃圧の下で前記開始タイミングから吸気バルブの閉弁タイミングまでの期間を対象に前記ポート噴射弁から燃料噴射を行ったと仮定した場合に前記ポート噴射弁が噴射する燃料量を許容ポート噴射量としたとき、
前記許容ポート噴射量が、前記処置で算出した前記ポート噴射比率に応じた前記ポート噴射弁の燃料噴射量未満である場合には、前記処置で算出した前記ポート噴射比率に代えて、前記ポート噴射弁から噴射される燃料量が前記許容ポート噴射量になるように、前記ポート噴射比率を設定し直す
内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された内燃機関は、ポート噴射弁、筒内噴射弁、及び過給機を有する。ポート噴射弁は、吸気通路に燃料を噴射する。筒内噴射弁は、吸気通路を介すことなく気筒内に直接燃料を噴射する。ポート噴射弁と筒内噴射弁とは、機関運転領域毎に定められた噴射比率で燃料噴射を行う。過給機は、吸気を過給する。過給機による過給が行われているときは、吸気通路の圧力が排気通路の圧力よりも高くなる。また、内燃機関は、吸気バルブ及び排気バルブを有する。そして、内燃機関には、吸気バルブと排気バルブとが同時に開弁状態となるバルブオーバーラップ期間が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような内燃機関において、過給機による過給が行われているときにバルブオーバーラップ期間を迎えたとする。この場合、上記のとおり吸気通路の圧力が排気通路の圧力よりも高いことから、吸気通路から気筒に流入した吸気がそのまま排気通路に吹き抜ける。こうした状況下でポート噴射弁が噴射タイミングを迎えて吸気通路に燃料を噴射すると、その燃料は吸気と一緒に排気通路に吹き抜けてしまう。
【0005】
ここで、燃料の吹き抜けを防止するための対策として、バルブオーバーラップ期間の終了後にポート噴射弁による燃料噴射を開始することが考えられる。しかし、ポート噴射弁からの噴射比率が多い場合、次の懸念がある。すなわち、バルブオーバーラップ期間の終了後にポート噴射弁からの燃料噴射を開始すると、ポート噴射弁は要求される燃料量を吸気バルブが閉弁するまでに噴射しきれないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための内燃機関の制御装置は、吸気通路に燃料を噴射するポート噴射弁と、前記吸気通路を介さずに気筒内に直接燃料を噴射する筒内噴射弁と、吸気を過給する過給機と、大気圧を検出する大気圧センサと、前記ポート噴射弁に供給される燃料の圧力であるポート用燃圧を検出する燃圧センサと、を有する内燃機関に適用され、前記気筒で1回の燃料の燃焼に供される総燃料量に対する、前記ポート噴射弁から噴射される燃料量の比率をポート噴射比率としたとき、前記過給機が過給を行う運転状態であり、且つバルブオーバーラップ期間がゼロよりも大きい機関運転領域である、という条件を満たす場合には、同条件を満たさない場合に比較して、前記ポート噴射比率を小さく設定し、且つ前記ポート噴射弁からの燃料噴射の開始タイミングを遅くする特定噴射制御を実行し、前記特定噴射制御では、前記バルブオーバーラップ期間よりも後のタイミングを前記開始タイミングとし、且つ前記大気圧センサが検出した最新の前記大気圧が低いほど前記ポート噴射比率を小さくする幅を大きく設定して当該ポート噴射比率を算出する処置を行い、前記燃圧センサが検出した最新の前記ポート用燃圧の下で前記開始タイミングから吸気バルブの閉弁タイミングまでの期間を対象に前記ポート噴射弁から燃料噴射を行ったと仮定し場合に前記ポート噴射弁が噴射する燃料量を許容ポート噴射量としたとき、前記許容ポート噴射量が、前記処置で算出した前記ポート噴射比率に応じた前記ポート噴射弁の燃料噴射量未満である場合には、前記処置で算出した前記ポート噴射比率に代えて、前記ポート噴射弁から噴射される燃料量が前記許容ポート噴射量になるように、前記ポート噴射比率を設定し直す。
【0007】
上記構成によれば、吸気通路から気筒に流入した吸気がそのまま排気通路に吹き抜けるという現象が起き得る状況下では、ポート噴射弁からの燃料噴射の開始タイミングを遅くする。そのため、バルブオーバーラップ期間の範囲でポート噴射弁から噴射される燃料量を低減できる。したがって、バルブオーバーラップ期間に排気通路に吹き抜ける燃料量も低減できる。なお、上記構成においてポート噴射比率が小さく設定された場合でも、1回の燃料の燃焼に供される総燃料量は変化しない。したがって、上記の制御に伴う内燃機関のトルクの変動等の影響は最小限に留められる。
【0009】
上記構成において、大気圧が低いときには、内燃機関が比較的に低負荷であっても過給機が過給を行う。また、内燃機関が低負荷である場合には、ポート噴射比率が大きく設定される傾向がある。つまり、内燃機関が低負荷であるときには、過給機が過給を行いつつポート噴射比率が大きいという状況が生じ得る。この場合、バルブオーバーラップ期間に多くの燃料が排気通路へと吹き抜けるおそれがある。この点、上記構成によれば、大気圧が低いときには、ポート噴射比率を小さくする幅が大きい。そのため、その分、排気通路へと吹き抜ける燃料量も大きく低減できる。
【0011】
上記構成によれば、バルブオーバーラップ期間にはポート噴射弁から燃料が噴射されない。したがって、バルブオーバーラップ期間において、ポート噴射弁から噴射された燃料が排気通路へと吹き抜ける現象は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】
図3は、第1処置による燃料噴射量の設定の例を表した図である。
【
図4】
図4は、第2処置による燃料噴射量の設定の例を表した図である。
【
図5】
図5は、特定噴射制御の処理手順を表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、内燃機関の制御装置の一実施形態を、図面を参照して説明する。
<内燃機関の概略構成>
図1に示すように、車両300は、内燃機関1を有する。内燃機関1は、車両300の駆動源である。内燃機関1は、4の気筒18、4つのピストン6、4つのコネクティングロッド19、及びクランクシャフト7を有する。なお、
図1では、4つの気筒18のうちの1つのみを示している。ピストン6及びコネクティングロッド19についても同様である。
【0014】
気筒18は、燃料と吸入空気(以下、吸気と記す。)との混合気を燃焼させるための空間である。ピストン6は、気筒18毎に設けられている。ピストン6は、気筒18内に位置している。ピストン6は、気筒18内を往復動する。ピストン6は、コネクティングロッド19を介してクランクシャフト7に連結している。ピストン6の動作に応じてクランクシャフト7は回転する。
【0015】
内燃機関1は、4つの点火プラグ5を有する。なお、
図1では、4つの点火プラグ5のうちの1つのみを示している。点火プラグ5は、気筒18毎に設けられている。点火プラグ5の先端は、気筒18内に位置している。点火プラグ5は、気筒18内の混合気に点火を行う。
【0016】
内燃機関1は、4つの筒内噴射弁20、及び第1燃料通路24を有する。なお、
図1では、4つの筒内噴射弁20のうちの1つのみを示している。筒内噴射弁20は、気筒18毎に設けられている。筒内噴射弁20は、後述の吸気通路3を介さずに気筒18内に直接燃料を噴射する。第1燃料通路24は、各筒内噴射弁20と燃料タンクとを接続している。第1燃料通路24は、各筒内噴射弁20に燃料を供給する。燃料タンクは燃料を貯留している。なお、
図1では燃料タンクの図示を省略している。
【0017】
内燃機関1は、吸気通路3、インタークーラ60、スロットルバルブ29、4つのポート噴射弁4、及び第2燃料通路25を有する。なお、
図1では、4つのポート噴射弁4のうちの1つのみを示している。吸気通路3は、各気筒18に吸気を導入するための通路である。吸気通路3は、各気筒18に接続している。インタークーラ60は、吸気通路3の途中に位置している。インタークーラ60は、吸気を冷却する。スロットルバルブ29は、吸気通路3における、インタークーラ60から視て下流側に位置している。スロットルバルブ29は、開度調整が可能である。スロットルバルブ29の開度が変わると、吸気通路3を流れる吸気の量GAが変わる。すなわち、スロットルバルブ29は、吸気通路3を流れる吸気の量GAを調節する。ポート噴射弁4は、吸気通路3における、スロットルバルブ29から視て下流側に位置している。ポート噴射弁4は、気筒18毎に設けられている。ポート噴射弁4は、吸気通路3に燃料を噴射する。第2燃料通路25は、第1燃料通路24から分岐して各ポート噴射弁4に接続している。第2燃料通路25は、各ポート噴射弁4に燃料を供給する。ポート噴射弁4に供給される燃料の圧力(以下、ポート用燃圧と記す。)PPは、筒内噴射弁20に供給される燃料の圧力(以下、筒内用燃圧と記す。)PDとは異なっている。
【0018】
内燃機関1は、排気通路8、及び触媒70を有する。排気通路8は、気筒18から排気を排出するための通路である。排気通路8は、各気筒18に接続している。触媒70は、排気通路8の途中に位置している。触媒70は、排気通路8を流れる排気を浄化する。
【0019】
内燃機関1は、過給機50を有する。過給機50は、吸気通路3と排気通路8とを跨いで設けられている。過給機50は、コンプレッサホイール51、タービンホイール52、バイパス通路21、及びをウェイストゲートバルブ(以下、WGVと記す。)22を有する。コンプレッサホイール51は、吸気通路3における、インタークーラ60から視て上流側に位置している。タービンホイール52は、排気通路8における、触媒70から視て上流側に位置している。タービンホイール52は、排気の流れに応じて回転する。コンプレッサホイール51は、タービンホイール52と一体回転する。このときコンプレッサホイール51は吸気を圧縮して送り出す。すなわち、コンプレッサホイール51が回転することにより吸気が過給される。バイパス通路21は、排気通路8における、タービンホイール52から視て上流側の部分と下流側の部分とを接続している。すなわち、バイパス通路21は、タービンホイール52を迂回する通路である。WGV22は、バイパス通路21の下流端に位置している。WGV22は、開度調整が可能である。WGV22の開度WVが変わると、バイパス通路21を流れる排気の量が変わる。すなわち、WGV22は、バイパス通路21を流れる排気の量を調整する。WGV22の開度WVが小さくなるほどバイパス通路21を流れる排気の量は少なくなる。この場合、タービンホイール52を通過する排気の量が多くなることから、タービンホイール52及びコンプレッサホイール51の回転速度が上昇する。そして過給圧が高くなる。
【0020】
内燃機関1は、複数の吸気バルブ9、複数の吸気ロッカアーム15、吸気カム軸11、及び吸気バルブ可変装置13を有する。なお、
図1では、複数の吸気バルブ9のうちの1つのみを示している。吸気ロッカアーム15についても同様である。吸気バルブ9は、気筒18毎に設けられている。吸気バルブ9は、吸気通路3における、気筒18との接続口に位置している。吸気バルブ9は、吸気ロッカアーム15を介して吸気カム軸11と連結している。吸気バルブ9は、吸気カム軸11が回転することに応じて動作する。その動作によって、吸気バルブ9は、吸気通路3の上記接続口を開閉する。吸気カム軸11には、クランクシャフト7の回転が伝達される。すなわち、吸気カム軸11は、クランクシャフト7と連動して回転する。吸気バルブ可変装置13は、クランクシャフト7の回転位置(以下、クランク位置と記す。)Scrに対する吸気カム軸11の相対的な回転位置を変更する。その結果として、クランク位置Scrに対して吸気バルブ9の開閉タイミングが変わる。吸気バルブ可変装置13は、電動モータによって駆動される電動式である。
【0021】
内燃機関1は、複数の排気バルブ10、複数の排気ロッカアーム16、排気カム軸12、及び排気バルブ可変装置14を有する。なお、
図1では、複数の排気バルブ10のうちの1つのみを示している。排気ロッカアーム16についても同様である。排気バルブ10は、気筒18毎に設けられている。排気バルブ10は、排気通路8における、気筒18との接続口に位置している。排気バルブ10は、排気ロッカアーム16を介して排気カム軸12と連結している。排気バルブ10は、排気カム軸12が回転することに応じて動作する。その動作によって、排気バルブ10は、排気通路8の上記接続口を開閉する。排気カム軸12は、吸気カム軸11と同様、クランクシャフト7と連動して回転する。排気バルブ可変装置14は、クランク位置Scrに対する排気カム軸12の相対的な回転位置を変更する。その結果として、クランク位置Scrに対して排気バルブ10の開閉タイミングが変わる。排気バルブ可変装置14は、電動モータによって駆動される電気式である。
【0022】
内燃機関1は、クランクポジションセンサ34、エアフロメータ31、第1燃圧センサ32、第2燃圧センサ33を有する。また、内燃機関1は、吸気カムポジションセンサ35、排気カムポジションセンサ36、開度センサ37、及び大気圧センサ30を有する。クランクポジションセンサ34は、クランク位置Scrを検出する。エアフロメータ31は、外部から吸気通路3に流入する吸気の量GAを検出する。第1燃圧センサ32は、ポート用燃圧PPを検出する。第2燃圧センサ33は、筒内用燃圧PDを検出する。吸気カムポジションセンサ35は、吸気カム軸11の回転位置CGを検出する。排気カムポジションセンサ36は、排気カム軸12の回転位置CEを検出する。開度センサ37は、WGV22の開度WVを検出する。大気圧センサ30は、内燃機関1が位置している標高での大気圧Lを検出する。これらの各センサは、自身が検出した情報に応じた信号を後述の制御装置100に繰り返し出力する。
【0023】
車両300は、アクセルペダル27、アクセルセンサ28、及び車速センサ38を有する。アクセルペダル27は、乗員が踏み込むフットペダルである。アクセルセンサ28は、アクセルペダル27の踏み込み量をアクセル操作量ACCPとして検出する。車速センサ38は、車両300の走行速度を車速SPとして検出する。これらの各センサは、自身が検出した情報に応じた信号を後述の制御装置100に繰り返し出力する。
【0024】
<制御装置の概略構成>
図1に示すように、車両300は、制御装置100を有する。制御装置100は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサとして構成し得る。なお、制御装置100は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、またはそれらの組み合わせを含む回路(circuitry)として構成してもよい。プロセッサは、CPU110及び、RAM並びにROM等のメモリ120を含む。メモリ120は、処理をCPU110に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ120すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0025】
制御装置100は、各種センサから受信した検出信号に基づいて、以下のパラメータを随時算出する。制御装置100は、クランクポジションセンサ34が検出するクランク位置Scrに基づいて、クランクシャフト7の回転速度である機関回転速度NEを算出する。また、制御装置100は、機関回転速度NE、及びエアフロメータ31が検出する吸気の量GAに基づいて機関負荷率KLを算出する。機関負荷率KLは、現状の機関回転速度NEにおいてスロットルバルブ29を全開とした状態で内燃機関1を定常運転したときの気筒流入吸気量に対する、現状の気筒流入吸気量の比率を表している。なお、気筒流入吸気量は、吸気行程において各気筒18のそれぞれに流入する吸気の量GAである。
【0026】
<WGVの制御について>
制御装置100は、上記各種センサから受信する検出信号、及びそれに基づいて算出した上記の各パラメータ等に基づいて内燃機関1の各種部位を制御する。例えば、制御装置100は、アクセル操作量ACCP等に基づいて機関負荷率KLの目標値である目標負荷率を算出する。そして、制御装置100は、目標負荷率を実現できるようにスロットルバルブ29及びWGV22を制御する。制御装置100は、WGV22を制御するにあたっては、予め記憶している過給マップを参照する。過給マップは、機関負荷率KLとWGV22の開度WVと大気圧Lとの関係を表したものである。過給マップは、例えば実験又はシミュレーションを基に作成したものである。過給マップは、次のような内容になっている。同一の大気圧Lでみると、機関負荷率KLがある閾値よりも小さい場合にWGV22は全開であり、機関負荷率KLがある閾値以上の場合にWGV22の開度WVは全開よりも小さくなる。詳細には、機関負荷率KLが上記の閾値以上の場合、機関負荷率KLが上記の閾値よりも大きくなるほどWGV22の開度WVは小さくなる。過給マップにおいてWGV22が全開から全開よりも小さい開度に切り替わる上記の閾値を過給開始負荷率KLAと呼称する。機関負荷率KLがこの過給開始負荷率KLA以上の機関運転状態になると、過給機50が過給を行うことになる。過給マップにおいて、過給開始負荷率KLAは、大気圧Lが低いほど小さくなっている。このことにより、大気圧Lが低いほど過給状態に切り替わるアクセル操作量ACCPは小さくなる。つまり、酸素密度が低くなることで機関出力が小さくなりがちな大気圧Lの低い環境下でも、ドライバが指示するアクセル操作量ACCPに対して機関出力の応答性が低下しないように各パラメータの関係が定めてある。制御装置100は、上記過給マップに基づいて、目標負荷率に対応するWGV22の開度WVを目標開度として算出する。そして、制御装置100は、実際のWGV22の開度WVが目標開度と一致するようにWGV22を制御する。
【0027】
<燃料噴射について>
制御装置100は、ポート噴射弁4及び筒内噴射弁20を制御する。制御装置100は、ポート噴射弁4及び筒内噴射弁20の双方から燃料噴射を行ったり、これらの一方のみから燃料噴射を行ったりする。制御装置100は、1つの気筒18で1回の燃料の燃焼に供される総燃料量Fallに対する、ポート噴射弁4から噴射される燃料量の比率であるポート噴射比率Rを機関運転状態に応じて変える。ポート噴射比率Rは「0」以上で「1」以下の値をとる。ポート噴射比率Rが「1」であることは、総燃料量Fallを全てポート噴射弁4によって噴射することを意味する。ポート噴射比率Rが「0」であることは、総燃料量Fallを全て筒内噴射弁20によって噴射することを意味する。ポート噴射比率Rが「0」よりも大きく且つ「1」未満であることは、ポート噴射弁4及び筒内噴射弁20の双方で燃料噴射を行うことを意味する。なお、1回の燃料の燃焼に供される総燃料量Fallは、内燃機関1の1サイクルで1つの気筒18に供給する総燃料量である。内燃機関1の1サイクルは、1つの気筒18で、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、及び排気行程を1度ずつ迎える一連の期間である。
【0028】
制御装置100は、比率マップを予め記憶している。比率マップは、ポート噴射比率Rのベース値である基本ポート噴射比率RBを、機関回転速度NEと機関負荷率KLとで規定される機関運転領域毎に定めたものである。基本ポート噴射比率RBは、標準大気圧下での最適なポート噴射比率Rである。比率マップは、例えば実験又はシミュレーションを基に作成してある。比率マップは次のようになっている。
図2に示すように、機関回転速度NEが第1値NE1以上の高回転の機関運転領域では、機関負荷率KLの大小に拘わらず基本ポート噴射比率RBは「0」である。すなわち、この機関運転領域では、筒内噴射弁20のみから燃料噴射を行うことになる。一方、機関回転速度NEが第1値NE1未満である低回転又は中回転の機関運転領域(以下、規定回転領域と記す。)では、機関負荷率KLの大小に応じて基本ポート噴射比率RBは変わる。以下、規定回転領域での基本ポート噴射比率RBの設定について説明する。この規定回転領域のうち、機関負荷率KLが第1負荷率KL1未満の低負荷の機関運転領域では、基本ポート噴射比率RBは「0」である。機関負荷率KLが第2負荷率KL2以上の高負荷の機関運転領域でも、基本ポート噴射比率RBは「0」である。すなわち、これら低負荷又は高負荷の機関運転領域では、高回転の機関運転領域と同様、筒内噴射弁20のみから燃料噴射を行うことになる。一方、規定回転領域のうち、機関負荷率KLが第1負荷率KL1以上且つ第2負荷率KL2未満の中負荷の機関運転領域では、基本ポート噴射比率RBは「0」よりも大きい。詳細には、上記中負荷の機関運転領域のうち、機関負荷率KLが特定負荷率KLY未満の第1中負荷領域Y1では、基本ポート噴射比率RBは「0」よりも大きく「0.5」未満となっている。すなわち、この第1中負荷領域Y1では、ポート噴射弁4と筒内噴射弁20との双方から燃料噴射を行うとともに、ポート噴射弁4に比べて筒内噴射弁20から噴射する燃料量が多くなる。一方、上記中負荷の機関運転領域のうち、機関負荷率KLが特定負荷率KLY以上である第2中負荷領域Y2では、基本ポート噴射比率RBは「0.5」以上且つ「1」未満となっている。すなわち、この第2中負荷領域Y2では、ポート噴射弁4と筒内噴射弁20との双方から燃料噴射を行うとともに、筒内噴射弁20に比べてポート噴射弁4から噴射する燃料量が多くなる。
【0029】
なお、比率マップにおける、上記中負荷、高負荷といった機関運転領域と、過給開始負荷率KLAとは次のような関係にある。大気圧Lが標準大気圧に近い場合の過給開始負荷率KLA2は、第2負荷率KL2よりもやや小さい。つまり、大気圧Lが標準大気圧に近いような標高の低い地域では、全体としては、ポート噴射比率Rが「0」となる高負荷の機関運転領域で過給を行う機会が多い。なお、
図2では、標高の低い地域において過給を行う機関運転領域をBで示している。さて、上記過給マップで説明したとおり、過給開始負荷率KLAは、大気圧Lが低いほど小さくなる。したがって、大気圧Lが標準大気圧よりも低いほど、過給開始負荷率KLAは第2負荷率KL2に比べて小さくなる。そして、道路が存在し得る標高範囲のうち、例えば標高1000mといったある程度標高が高い地域での過給開始負荷率KLA1は、特定負荷率KLYよりもやや小さい。したがって、
図2のAの範囲で示すように、標高が高い地域では、標高の低い地域に比べ、過給を行う機関運転領域が低負荷の機関運転領域に向けて拡大する。そして、標高が高い地域では、基本ポート噴射比率RBが「0」となる高負荷の機関運転領域のみならず、基本ポート噴射比率RBが「0.5」以上且つ「1」未満となる第2中負荷領域Y2で過給を行う機会も多くなる。なお、以下の記載において、小負荷、中負荷、高負荷といった機関運転領域は、全て比率マップを基準としたものである。
【0030】
<吸気バルブ及び排気バルブの開閉タイミングについて>
制御装置100は、吸気バルブ可変装置13を制御する。そのことによって、制御装置100は、吸気バルブ9の開閉タイミングである吸気バルブタイミングを調整する。本実施形態において、制御装置100は、吸気バルブタイミングが最も遅角側のタイミングになっている状態を初期値の「0」として取り扱う。そして、制御装置100は、この初期値からの吸気バルブタイミングの進角量を調整することによって吸気バルブタイミングを調整する。制御装置100は、吸気バルブタイミングを調整するにあたり、機関回転速度NE及び機関負荷率KL等に基いて、吸気バルブタイミングの進角量の目標値である目標進角量を算出する。そして、制御装置100は、実際の吸気バルブタイミングの進角量が目標進角量と一致するように、吸気バルブ可変装置13を制御する。4つの気筒18のうちの特定の1つを基準気筒と呼称する。制御装置100は、吸気バルブタイミングが初期値となっているときに基準気筒の吸気バルブ9が開弁タイミングとなるクランク位置Scrを予め記憶している。したがって、制御装置100は、このクランク位置Scrに対して目標進角量だけ進角したクランク位置Scrを算出することで、現状において基準気筒の吸気バルブ9が開弁タイミングとなるクランク位置Scrを把握できる。同様に、制御装置100は、吸気バルブタイミングが初期値となっているときに基準気筒の吸気バルブ9が閉弁タイミングとなるクランク位置Scrを予め記憶している。したがって、制御装置100は、現状において基準気筒の吸気バルブ9が閉弁タイミングとなるクランク位置Scrを把握できる。
【0031】
また、制御装置100は、排気バルブ可変装置14を制御する。そのことによって、制御装置100は、排気バルブ10の開閉タイミングである排気バルブタイミングを調整する。本実施形態において、制御装置100は、排気バルブタイミングが最も進角側のタイミングになっている状態を初期値の「0」として取り扱う。そして、制御装置100は、この初期値からの排気バルブタイミングの遅角量を調整することによって排気バルブタイミングを調整する。制御装置100は、排気バルブタイミングを調整するにあたり、機関回転速度NE及び機関負荷率KL等に基いて、排気バルブタイミングの遅角量の目標値である目標遅角量を算出する。そして、制御装置100は、実際の排気バルブタイミングの遅角量が目標遅角量と一致するように、排気バルブ可変装置14を制御する。なお、制御装置100は、排気バルブタイミングが初期値となっているときに基準気筒の排気バルブ10が開弁タイミングとなるクランク位置Scr及び閉弁タイミングとなるクランク位置Scrを予め記憶している。したがって、制御装置100は、吸気バルブ9の場合と同様、現状において基準気筒の排気バルブ10が開弁タイミングとなるクランク位置Scr及び閉弁タイミングとなるクランク位置Scrを把握できる。
【0032】
制御装置100は、吸気バルブタイミングの進角量、及び排気バルブタイミングの遅角量を調整することによって、吸気バルブ9及び排気バルブ10の双方が開弁状態となるバルブオーバーラップ期間VOを機関運転領域に応じて変える。具体的には、制御装置100は、中負荷及び高負荷の機関運転領域では、小負荷の機関運転領域に比べて、吸気バルブタイミングの進角量を大きくする。また、制御装置100は、中負荷及び高負荷の機関運転領域では、小負荷の機関運転領域に比べて、排気バルブタイミングの遅角量を大きくする。これらのことによって、制御装置100は、中負荷及び高負荷の機関運転領域では、小負荷の機関運転領域に比べてバルブオーバーラップ期間VOを長くするとともに、バルブオーバーラップ期間VOの終了タイミングVOEを遅くする。バルブオーバーラップ期間VOの終了タイミングVOEは、排気バルブ10の閉弁タイミングである。なお、制御装置100は、基本的には各機関運転領域でバルブオーバーラップ期間VOを「0」よりも大きくするが、小負荷の機関運転領域ではバルブオーバーラップ期間VOを「0」にすることもある。
【0033】
ここで、上記のとおり、中負荷及び高負荷の機関運転領域は、過給機50による過給を行う機関運転領域である。つまり、制御装置100は、過給を行う機関運転領域でバルブオーバーラップ期間VOを相応に長くすることになる。過給機50による過給が行われているときは、吸気通路3の圧力が排気通路8の圧力よりも高くなる。このときに吸気バルブ9及び排気バルブ10の双方が開弁状態になると、気筒18内に吸気を引き込むとともに気筒18内から排気を掃気するスカベンジングが行われることにより機関出力が高まる。こうした観点において、過給機50による過給を行っているときにバルブオーバーラップ期間VOを長くすることは有効である。なお、制御装置100は、例えば標高の低い地域における中負荷の機関運転領域のように、過給機50による過給を行っていないときにバルブオーバーラップ期間VOを長くすることもある。これは、いわゆる内部排気再循環の効果を高めることでNOxの低減、及び燃費の向上を狙ったものである。
【0034】
<通常噴射制御について>
制御装置100は、内燃機関1の運転中、後述の特定条件が成立していない場合、通常噴射制御を行う。制御装置100は、通常噴射制御では、先ず、1つの気筒18で1回の燃料の燃焼に供される総燃料量Fallを現状の機関回転速度NE及び機関負荷率KL等に基づいて算出する。次に、制御装置100は、比率マップにおいて現状の機関回転速度NE及び機関負荷率KLに対応する基本ポート噴射比率RBを算出する。そして、制御装置100は、総燃料量Fallと基本ポート噴射比率RBとに基づいて、基本ポート噴射比率RBに応じたポート噴射弁4の燃料噴射量である基本ポート噴射量FPBを算出する。また、制御装置100は、総燃料量Fallと基本ポート噴射比率RBとに基づいて、基本ポート噴射比率RBに応じた筒内噴射弁20の燃料噴射量である基本筒内噴射量FDBを算出する。そして、制御装置100は、ポート噴射弁4から基本ポート噴射量FPB分の燃料を噴射させる。また、制御装置100は、筒内噴射弁20から基本筒内噴射量FDB分の燃料を噴射させる。制御装置100は、こうした燃料噴射を4つの気筒18で順に行う。以上の一連の処理からなる通常噴射制御を制御装置100は繰り返す。なお、制御装置100は、通常噴射制御では、ポート噴射弁4の燃料噴射の開始タイミング(以下、ポート噴射タイミングと記す。)FPSを、吸気バルブ9の開弁後の速やかなタイミングとする。また、制御装置100は、通常噴射制御では、筒内噴射弁20の燃料噴射の開始タイミング(以下、筒内噴射タイミングと記す。)FDSを、基本筒内噴射量FDBに見合った適切なタイミングとする。
【0035】
<特定噴射制御の概要>
制御装置100は、特定条件が成立している場合、特定噴射制御を行う。特定条件は、次の2つの項目の双方が満たされていることである。
(イ)過給機50が過給を行う機関運転状態である。
(ロ)バルブオーバーラップ期間VOが「0」よりも大きい機関運転領域である。
【0036】
項目(イ)は、機関負荷率KLが過給開始負荷率KLA以上になっている状態のことである。また、項目(ロ)に関して、上記のとおり、過給機50が過給を行う機関運転領域である、中負荷、高負荷の機関運転領域では、バルブオーバーラップ期間VOが「0」よりも大きい。そのため、項目(ロ)は、項目(イ)が満たされれば必然的に満たされる。
【0037】
さて、過給機50による過給を行っているときにバルブオーバーラップ期間VOを迎えるとスカベンジングが促進される一方で、次の現象も生じる。すなわち、吸気通路3から気筒18に流入した吸気がそのまま排気通路8に吹き抜ける。このとき、ポート噴射弁4が噴射タイミングを迎えて吸気通路3に燃料を噴射すると、その燃料は吸気と一緒に排気通路8に吹き抜ける。特定噴射制御は、こうした燃料の吹き抜けを防止する専用の燃料噴射制御である。特定噴射制御では、具体的には、通常噴射制御に比較して、ポート噴射比率Rを小さく設定し、且つポート噴射弁4からの燃料噴射の開始タイミングを遅くする。
【0038】
制御装置100は、特定噴射制御では、ポート噴射比率Rを小さく設定する上で2段階の処置を行う。制御装置100は、第1処置では、車両300が位置している地点の大気圧Lに応じて基本ポート噴射比率RBを補正する。なお、大気圧Lを考慮した補正を行う理由については、後述の作用の欄で記載する。制御装置100は、大気圧Lに応じた補正を行うための情報として補正マップを予め記憶している。補正マップは、大気圧Lと、ポート噴射比率Rを補正するための補正値Hとの関係を表したものである。補正マップは、例えば実験又はシミュレーションを基に作成したものである。補正マップでは、大気圧Lが低いほど補正値Hは小さくなっている。なお、補正値Hは、「1」以下の値である。制御装置100は、この補正値Hを基本ポート噴射比率RBに乗算した値を補正ポート噴射比率RMとして算出する。したがって、同一の基本ポート噴射比率RBを対象としたとき、補正ポート噴射比率RMは、大気圧Lが低いほど小さくなる。換言すると、補正ポート噴射比率RMは、大気圧Lが低いほど基本ポート噴射比率RBからの低下幅が大きくなる。第1処置は、このような、大気圧Lが低いほど基本ポート噴射比率RBに対して小さくする幅が大きく設定された補正ポート噴射比率RMへとポート噴射比率Rを設定し直すものである。
【0039】
制御装置100は、第1処置を行った場合でも依然として燃料の吹き抜けを防止しきれない場合に限って第2処置を行う。補正ポート噴射比率RMに応じたポート噴射弁4の燃料噴射量を設定ポート噴射量FPUと呼称する。また、ポート噴射弁4の燃料噴射の開始タイミングであるポート噴射タイミングFPSから、吸気バルブ9が閉弁するまでの期間にポート噴射弁4から噴射させることができる燃料量を許容ポート噴射量FPAと呼称する。制御装置100は、第2処置では、設定ポート噴射量FPUに代えて、許容ポート噴射量FPAをポート噴射弁4から噴射させる。そして、制御装置100は、許容ポート噴射量FPAと設定ポート噴射量FPUとの差分を筒内噴射弁20からの噴射で賄うようにする。すなわち、制御装置100は、第2処置では、第1処置で算出した補正ポート噴射比率RMに代えて、ポート噴射弁4から噴射される燃料量が許容ポート噴射量FPAになるように、ポート噴射比率Rを設定し直す。
【0040】
制御装置100は、許容ポート噴射量FPAを算出する上で必要な情報として、ポート用噴射マップを予め記憶している。一定のポート用燃圧PPの下で一定の噴射期間だけポート噴射弁4から燃料噴射を行ったとする。このとき、ポート噴射弁4が噴射する燃料量を可能噴射量と呼称する。可能噴射量は噴射期間に応じて変わる。ポート用噴射マップは、噴射期間と可能噴射量との関係を、ポート用燃圧PP毎に表したものである。ポート用噴射マップにおいて噴射期間と可能噴射量とポート用燃圧PPとは次のような関係になっている。あるポート用燃圧PPでみたとき、噴射期間が長いほど可能噴射量は多くなる。また、噴射期間が同じであれば、ポート用燃圧PPが高いほど可能噴射量は多くなる。ポート用噴射マップは、例えば実験又はシミュレーションを基に作成したものである。
【0041】
制御装置100は、特定噴射制御では、当該特定噴射制御専用のポート噴射タイミングFPSを算出する。本実施形態において、制御装置100は、バルブオーバーラップ期間VOの終了タイミングVOE、すなわちバルブオーバーラップ期間VO内よりも後のタイミングをポート噴射タイミングFPSとする。バルブオーバーラップ期間VOの終了タイミングVOEは、排気バルブ10の閉弁タイミングである。制御装置100が特定噴射制御で決定するポート噴射タイミングFPSは、通常噴射制御のポート噴射タイミングFPSよりも遅いタイミングである。なお、ここで比較対象としている通常噴射制御のポート噴射タイミングFPSは、項目(イ)(ロ)のうち(ロ)のみが満たされている状況で通常噴射制御を行うときのポート噴射タイミングFPSである。(ロ)のみが満たされている状況での通常噴射制御を特定噴射制御との比較対象として挙げている理由は後述する。さて、項目(イ)(ロ)のうち(ロ)のみが満たされている状況は、次のような状況である。例えば、車両300が低地のような標準大気圧に近い地点に位置しているときであって且つ機関運転領域が第2中負荷領域Y2にある状況である。又は、車両300が位置している大気圧Lに拘わらず機関運転領域が第1中負荷領域Y1にある状況である。これらの場合、(イ)が満たされないことから特定条件は成立しない。しかし、機関運転領域から定まるバルブオーバーラップ期間VOの長さ及び終了タイミングVOEは、特定条件が成立している状況、つまり高地且つ第2中負荷領域Y2での過給中と概ね同じである。ここで、特定条件が成立していない場合には、燃料の吹き抜けの問題は生じないため、バルブオーバーラップ期間VOの終了タイミングVOEを待つことなくポート噴射弁4の燃料噴射を開始できる。そのため、(ロ)のみが満たされている状況での通常噴射制御のポート噴射タイミングFPSは、バルブオーバーラップ期間VOの終了タイミングVOEよりも前に設定される。これに対して、制御装置100は、特定噴射制御では、燃料の吹き抜けを避けるために、バルブオーバーラップ期間VOの終了タイミングVOEをポート噴射タイミングFPSとする。つまり、特定噴射制御では、バルブオーバーラップ期間VOの長さ及び終了タイミングVOEが同じ条件下であるときの通常噴射制御に比べて、ポート噴射タイミングFPSを遅くする。
【0042】
なお、特定噴射制御のポート噴射タイミングFPSとの比較対象として、(ロ)のみが満たされている状況で行われる通常噴射処理のポート噴射タイミングFPSを挙げているのは次の理由に因る。通常噴射処理を実行する状況は、特定処理が成立していない状況である。すなわち、項目(イ)(ロ)のいずれか一方しか満たされていない状況である第1状況、又は項目(イ)(ロ)の双方が満たされていない状況である第2状況である。ここで、第1状況に関して、本実施形態のバルブオーバーラップ期間VOの設定上、項目(イ)のみが満たされる状況は生じない。そのため、第1状況は、事実上、(ロ)のみが満たされている状況しか存在しない。また、第2状況に関して、項目(イ)(ロ)の双方が満たされていない状況とは、内燃機関1が小負荷の機関運転領域にある状況である。ここで、
図2に示すように、小負荷の機関運転領域ではポート噴射比率Rが「0」であり、ポート噴射弁4からの燃料噴射が行われない。つまり、項目(イ)(ロ)の双方が満たされていない状況では、ポート噴射タイミングFPSが存在しない。こうした事情から、特定制御処理のポート噴射タイミングFPSとの比較対象として、(ロ)のみが満たされている状況での通常噴射処理のポート噴射タイミングFPSを挙げている。
【0043】
制御装置100は、特定噴射制御では、当該特定噴射制御専用の筒内噴射タイミングFDSを算出する。筒内噴射タイミングFDSは、上記のとおり、筒内噴射弁20の燃料噴射の開始タイミングである。ここで、第1処置で算出する補正ポート噴射比率RMに応じた筒内噴射弁20の燃料噴射量を設定筒内噴射量FDUと呼称する。制御装置100は、第1処置の後に第2処置を行う場合でも行わない場合でも、この設定筒内噴射量FDUに基づいて筒内噴射タイミングFDSを決定する。制御装置100は、次のような点を考慮したタイミングとして筒内噴射タイミングFDSを決定する。筒内噴射弁20が気筒18内に噴射した燃料は、気筒18内で霧化する。このときの気化熱は、点火プラグ5周辺を冷却する。そのため、圧縮上死点近傍に設定される点火時期に筒内噴射タイミングFDSを極力近づけると、上記の気化熱で点火プラグ5周辺を比較的低温にした状況下で点火を行うことができる。このことは、点火プラグ5の損傷を抑える上で有効である。一方、ピストン6が上死点に近い位置にあるときに筒内噴射弁20から燃料を噴射すると、燃料がピストン6の頂面に付着して燃料が霧化し難くなる。この場合、未燃のまま排気通路8に排出される燃料の増加を招く。したがって、排気エミッションの観点からいうと、ピストン6が例えば下死点近傍に位置するときのような、圧縮上死点から極力遡ったタイミングを筒内噴射タイミングFDSとすることが好ましい。制御装置100は、これら点火プラグ5の保護、排気エミッション等を考慮したとき、設定筒内噴射量FDUを筒内噴射弁20から噴射する上で最適なタイミングを筒内噴射タイミングFDSとして決定する。ここで、設定筒内噴射量FDUを筒内噴射弁20から噴射するのに要する期間を必要期間と呼称する。本実施形態において、制御装置100は、予め定められた規定クランク位置から必要期間だけ遡ったクランク位置Scrを筒内噴射タイミングFDSとする。規定クランク位置は、圧縮行程でピストン6が下死点から上死点に至る間のクランク位置Scrのうち、上記観点で筒内噴射タイミングFDSを定める上での基準として最適なクランク位置Scrとして、例えば実験又はシミュレーションを基に定めてある。制御装置100は、基準気筒についての規定クランク位置を予め記憶している。筒内噴射タイミングFDSの決定方法の更なる詳細は後述する。なお、制御装置100が設定する筒内噴射タイミングFDSは、次の事項との関連で、バルブオーバーラップ期間VOの終了タイミングVOE以後のタイミングである。上記事項は、必要期間の算出基である設定筒内噴射量FDUが過度に多くならないように補正マップの補正値Hが調整されていることである。
【0044】
制御装置100は、上記の必要期間を算出する上で必要な情報として、筒内用噴射マップを予め記憶している。筒内用噴射マップは、ポート用噴射マップと同様のものを、筒内噴射弁20用に作成したものである。すなわち、筒内用噴射マップは、噴射期間と可能噴射量との関係を、筒内用燃圧PD毎に表したものである。ここでの可能噴射量は、一定の筒内用燃圧PDの下で一定の噴射期間に筒内噴射弁20が噴射する燃料量である。筒内用噴射マップにおける各パラメータの基本的な関係は、ポート用噴射マップのものと同じである。筒内用噴射マップは、例えば実験又はシミュレーションを基に作成したものである。
【0045】
<特定噴射制御の具体的な処理内容>
制御装置100は、内燃機関1の運転中、特定条件が成立しているか否かを繰り返し判定する。そして、制御装置100は、特定条件が成立している場合、通常噴射制御をキャンセルし、特定噴射制御を行う。制御装置100は、特定条件が成立している状況下が続く間は特定噴射制御を繰り返す。このとき、制御装置100は、内燃機関1の1サイクルにつき1度、特定噴射制御を行う。この特定噴射制御において、上記基準気筒は、4つの気筒18のうち最初に燃料噴射を行う気筒18に設定してある。
【0046】
図5に示すように、制御装置100は、特定噴射制御を開始すると、先ずステップS110の処理を行う。ステップS110において、制御装置100は、1つの気筒18で1回の燃料の燃焼に供される総燃料量Fallを算出する。制御装置100は、最新の機関回転速度NE及び最新の機関負荷率KL等を参照する。そして、制御装置100は、これらに基づいて総燃料量Fallを算出する。例えば、制御装置100は、機関回転速度NEと機関負荷率KLと総燃料量Fallとの関係を表したマップを記憶している。制御装置100はこうしたマップに基づいて総燃料量Fallを算出する。制御装置100は、総燃料量Fallを算出すると、処理をステップS120に進める。
【0047】
ステップS120において、制御装置100は、補正ポート噴射比率RMを算出する。具体的には、制御装置100は、最新の機関回転速度NE、最新の機関負荷率KL、及び比率マップを参照する。そして、制御装置100は、比率マップに基づいて、最新の機関回転速度NE及び最新の機関負荷率KLに対応する基本ポート噴射比率RBを算出する。次に、制御装置100は、最新の大気圧L及び補正マップを参照する。そして、制御装置100は、補正マップに基づいて、最新の大気圧Lに対応する補正値Hを算出する。この後、制御装置100は、比率マップから算出した基本ポート噴射比率RBと補正マップから算出した補正値Hとを乗算する。そして、制御装置100は、得られた値を補正ポート噴射比率RMとする。この後、制御装置100は、処理をステップS130に進める。
【0048】
ステップS130において、制御装置100は、設定ポート噴射量FPUを算出する。設定ポート噴射量FPUは、上記のとおり、補正ポート噴射比率RMに応じたポート噴射弁4の燃料噴射量である。ステップS130の具体的な処理として、制御装置100は、ステップS110で算出した総燃料量Fallと、ステップS120で算出した補正ポート噴射比率RMとを乗算する。そして、制御装置100は、得られた値を設定ポート噴射量FPUとする。この後、制御装置100は、処理をステップS140に進める。
【0049】
ステップS140において、制御装置100は、設定筒内噴射量FDUを算出する。設定筒内噴射量FDUは、上記のとおり、補正ポート噴射比率RMに応じた筒内噴射弁20の燃料噴射量である。ステップS140の具体的な処理として、制御装置100は、ステップS110で算出した総燃料量FallからステップS130で算出した設定ポート噴射量FPUを減算する。そして、制御装置100は、得られた値を設定筒内噴射量FDUとする。この後、制御装置100は、処理をステップS150に進める。なお、ステップS120、ステップS130、及びステップS140の処理は、特定噴射制御の第1処置である。
【0050】
ステップS150において、制御装置100は、ポート噴射弁4の燃料噴射の開始タイミングであるポート噴射タイミングFPSを算出する。制御装置100は、先ず、基準気筒についてのポート噴射タイミングFPSを算出する。具体的には、制御装置100は、排気バルブタイミングの遅角量を調整するための目標遅角量の最新値を参照する。また、制御装置100は、排気バルブタイミングが初期値であるときに基準気筒の排気バルブ10が閉弁タイミングとなるクランク位置Scrを参照する。そして、制御装置100は、このクランク位置Scrから目標遅角量だけ遅角したクランク位置Scrを、現状において基準気筒の排気バルブ10が閉弁タイミングとなるクランク位置Scrとして算出する。そして、制御装置100は、算出したクランク位置Scrを、基準気筒におけるポート噴射タイミングFPSのクランク位置Scrとする。この後、制御装置100は、基準気筒以外の3つの気筒18についてのポート噴射タイミングFPSを算出する。具体的には、制御装置100は、燃焼行程を迎える気筒18の順に、基準気筒のポート噴射タイミングFPSから180度ずつ進んだクランク位置Scrを、各気筒18に対するポート噴射タイミングFPSのクランク位置Scrとする。この後、制御装置100は、処理をステップS160に進める。
【0051】
ステップS160において、制御装置100は、筒内噴射弁20の燃料噴射の開始タイミングである筒内噴射タイミングFDSを算出する。制御装置100は、先ず、基準気筒についての筒内噴射タイミングFDSを算出する。具体的には、制御装置100は、最新の筒内用燃圧PD、ステップS140で算出した設定筒内噴射量FDU、及び筒内用噴射マップを参照する。そして、制御装置100は、筒内用噴射マップに基づいて、最新の筒内用燃圧PD及び設定筒内噴射量FDUに対応する噴射期間を必要期間として算出する。このとき、制御装置100は、筒内用噴射マップにおける可能噴射量に設定筒内噴射量FDUを当てはめればよい。なお、必要期間は、上記のとおり、設定筒内噴射量FDUを筒内噴射弁20から噴射するのに要する期間である。制御装置100は、必要期間を算出すると、当該必要期間をクランクシャフト7の回転量に換算した必要クランク量を算出する。制御装置100は、必要期間と最新の機関回転速度NEとに基づいて必要クランク量を算出する。この後、制御装置100は、予め記憶している基準気筒の上記規定クランク位置を参照する。そして、制御装置100は、規定クランク位置から必要クランク量だけ遡ったクランク位置Scrを、基準気筒における筒内噴射タイミングFDSのクランク位置Scrとして算出する。この後、制御装置100は、基準気筒以外の3つの気筒18についての筒内噴射タイミングFDSを算出する。具体的には、制御装置100は、燃焼行程を迎える気筒18の順に、基準気筒の筒内噴射タイミングFDSから180度ずつ進んだクランク位置Scrを、各気筒18に対する筒内噴射タイミングFDSのクランク位置Scrとする。この後、制御装置100は、処理をステップS170に進める。
【0052】
ステップS170において、制御装置100は、許容ポート噴射量FPAを算出する。上記のとおり、許容ポート噴射量FPAは、ポート噴射タイミングFPSから吸気バルブ9の閉弁タイミングまでの期間にポート噴射弁4から噴射させることができる燃料量である。ステップS170の具体的な処理として、制御装置100は、先ず、基準気筒の吸気バルブ9の閉弁タイミングを算出する。具体的には、制御装置100は、吸気バルブタイミングの進角量を調整するための目標進角量の最新値を参照する。また、制御装置100は、吸気バルブタイミングが初期値であるときに基準気筒の吸気バルブ9が閉弁タイミングとなるクランク位置Scrを参照する。そして、制御装置100は、このクランク位置Scrから目標進角量だけ進角したクランク位置Scrを、基準気筒の吸気バルブ9が閉弁タイミングとなるクランク位置Scrとして算出する。この後、制御装置100は、許容回転量を算出する。許容回転量は、ステップS150で算出した基準気筒のポート噴射タイミングFPSのクランク位置Scrから、基準気筒の吸気バルブ9の閉弁タイミングのクランク位置Scrまでの間にクランクシャフト7が回転する回転角度の大きさである。制御装置100は、許容回転量を算出すると、当該許容回転量と最新の機関回転速度NEとに基づいて、許容回転量を時間の単位に換算する。そして、制御装置100は、得られた値を許容期間とする。この後、制御装置100は、最新のポート用燃圧PPと、ポート用噴射マップとを参照する。そして、制御装置100は、ポート用噴射マップに基づいて、最新のポート用燃圧PPと、許容期間とに対応する可能噴射量を算出する。このとき、制御装置100は、ポート用噴射マップにおける噴射期間に上記の許容期間を当てはめればよい。制御装置100は、ポート用噴射マップから可能噴射量を算出すると、算出した値を許容ポート噴射量FPAとする。この後、制御装置100は、処理をステップS180に進める。
【0053】
ステップS180において、制御装置100は、ステップS170で算出した許容ポート噴射量FPAが、ステップS130で算出した設定ポート噴射量FPU以上であるか否かを判定する。制御装置100は、許容ポート噴射量FPAが設定ポート噴射量FPU以上である場合(ステップS180:YES)、処理をステップS190に進める。
【0054】
ステップS190において、制御装置100は、目標ポート噴射量FPFを算出する。目標ポート噴射量FPFは、ポート噴射弁4から噴射させる燃料量の目標値である。ステップS190の具体的な処理として、制御装置100は、ステップS130で算出した設定ポート噴射量FPUをそのまま目標ポート噴射量FPFとして算出する。この後、制御装置100は、処理をステップS200に進める。
【0055】
ステップS200において、制御装置100は、目標筒内噴射量FDFを算出する。目標筒内噴射量FDFは、筒内噴射弁20から噴射させる燃料量の目標値である。ステップS200の具体的な処理として、制御装置100は、ステップS140で算出した設定筒内噴射量FDUをそのまま目標筒内噴射量FDFとして算出する。この後、制御装置100は、処理をステップS300に進める。
【0056】
一方、ステップS180において、制御装置100は、許容ポート噴射量FPAが設定ポート噴射量FPU未満である場合(ステップS180:NO)、処理をステップS210に進める。そして、ステップS210において、制御装置100は、目標ポート噴射量FPFを算出する。具体的には、制御装置100は、ステップS170で算出した許容ポート噴射量FPAを目標ポート噴射量FPFとして算出する。この後、制御装置100は、ステップS220に処理を進める。なお、ステップS210及びステップS220の処理は、特定噴射制御の第2処置である。
【0057】
ステップS220において、制御装置100は、目標筒内噴射量FDFを算出する。具体的には、制御装置100は、ステップS130で算出した設定ポート噴射量FPUから、ステップS170で算出した許容ポート噴射量FPAを減算した値を差分値Nとして算出する。そして、制御装置100は、差分値Nと、ステップS140で算出した設定筒内噴射量FDUとを加算した値を目標筒内噴射量FDFとして算出する。この後、制御装置100は、処理をステップS300に進める。なお、制御装置100は、以上に説明したステップS110からステップS220までの一連の処理を、基準気筒に対する燃料噴射の開始前までに速やかに行う。
【0058】
ステップS300において、各ポート噴射弁4及び各筒内噴射弁20からの燃料噴射を実行する。具体的には、制御装置100は、ステップS150で算出した気筒18毎のポート噴射タイミングFPSで、各ポート噴射弁4から燃料噴射を開始させる。その際、制御装置100は、各ポート噴射弁4から目標ポート噴射量FPF分の燃料を噴射させる。また、制御装置100は、ステップS160で算出した気筒18毎の筒内噴射タイミングFDSで、各筒内噴射弁20から燃料噴射を開始させる。その際、制御装置100は、各筒内噴射弁20から目標筒内噴射量FDF分の燃料を噴射させる。制御装置100は、4つの気筒18への燃料噴射を完了すると、特定噴射制御の一連の処理を一旦終了する。そして、制御装置100は、再度ステップS110の処理を行う。
【0059】
<実施形態の作用>
図2を用いて既に説明したように、大気圧Lが低くなると過給機50が過給を行う機関運転領域が低負荷の機関運転領域へ向けて拡大する。その結果として、基本ポート噴射比率RBが大きく設定されている第2中負荷領域Y2で過給を行う機会も多くなる。一方、過給機50が過給を行う機関運転領域では、バルブオーバーラップ期間VOが長く設定されている。したがって、大気圧Lが低い環境下で過給機50が過給を行う場合であって且つ基本ポート噴射比率RBをそのまま利用して燃料噴射を行う場合、次のような問題が生じる。すなわち、
図3の(a)に示すように、基本ポート噴射比率RBに応じたポート噴射弁4の燃料噴射量である基本ポート噴射量FPBは相当に多い。このことから、この基本ポート噴射量FPBを吸気バルブ9の閉弁タイミングGVEの前までにポート噴射弁4から噴射しきる上では次のようにする必要がある。すなわち、バルブオーバーラップ期間VOの終了タイミングVOEよりも前からポート噴射弁4の燃料噴射を開始する必要がある。この場合、バルブオーバーラップ期間VOにポート噴射弁4から噴射した燃料は、排気通路8へと吹き抜けてしまう。
【0060】
そこで、特定噴射制御の第1処置では、大気圧Lに応じてポート噴射比率Rを設定し直す。すなわち、制御装置100は、大気圧Lが低いほど基本ポート噴射比率RBからの低下幅が大きくなる補正ポート噴射比率RMを算出する(ステップS120)。
図3の(b)に示すように、この補正ポート噴射比率RMに応じたポート噴射弁4からの燃料噴射量である設定ポート噴射量FPUが、
図3の(c)に示す許容ポート噴射量FPA以下であれば次のことが可能になる。すなわち、バルブオーバーラップ期間VOの終了タイミングVOEからポート噴射弁4による燃料噴射を開始した場合でも、吸気バルブ9の閉弁タイミングGVEの前までにポート噴射弁4は設定ポート噴射量FPUを噴射しきることができる。そこで、制御装置100は、設定ポート噴射量FPUが許容ポート噴射量FPA以下である場合(ステップS180:YES)、設定ポート噴射量FPUを最終的な目標ポート噴射量FPFとする(ステップS190)。そして、制御装置100は、バルブオーバーラップ期間VOの終了タイミングVOEからポート噴射弁4に燃料噴射を開始させる。一方で、制御装置100は、ポート噴射弁4からの燃料噴射量を減らした分を筒内噴射弁20からの燃料噴射で賄う。すなわち、制御装置100は、補正ポート噴射比率RMに応じた筒内噴射弁20からの燃料噴射量である設定筒内噴射量FDUを目標筒内噴射量FDFとする(ステップS200)。そして、制御装置100は、最適なタイミングで筒内噴射弁20に燃料噴射を開始させる。
【0061】
さて、上記のとおり、第1処置では、大気圧Lに応じてポート噴射比率Rを補正する。この補正に伴い、
図4の(a)に示す基本ポート噴射量FPBが、
図4の(b)に示す設定ポート噴射量FPUへと減少したとしる。しかし、
図4の(b)に示すように、設定ポート噴射量FPUが、
図4の(c)に示す許容ポート噴射量FPAよりも多いこともあり得る。こうした状況は、例えば、総燃料量Fallが多かったり、機関回転速度NEが高いことに伴ってバルブオーバーラップ期間VOの終了タイミングVOEから吸気バルブ9の閉弁タイミングGVEまでの期間が短かかったりする場合等に生じ得る。設定ポート噴射量FPUが許容ポート噴射量FPAよりも多い場合、次のような問題が生じる。すなわち、
図4の(b)に示すように、設定ポート噴射量FPUを吸気バルブ9の閉弁タイミングGVEの前までに噴射しきる上では、バルブオーバーラップ期間VOの終了タイミングVOEよりも前からポート噴射弁4の燃料噴射を開始する必要がある。この場合、バルブオーバーラップ期間VOにポート噴射弁4から噴射した燃料は、排気通路8へと吹き抜けてしまう。つまり、依然として燃料の吹き抜けの問題が生じる。
【0062】
そこで、制御装置100は、設定ポート噴射量FPUが許容ポート噴射量FPAより多い場合(ステップS180:NO)、第2処置を行う。すなわち、
図4の(c)に示すように、制御装置100は、設定ポート噴射量FPUではなく、許容ポート噴射量FPAを最終的な目標ポート噴射量FPFとする(ステップS210)。そして、制御装置100は、バルブオーバーラップ期間VOの終了タイミングVOEからポート噴射弁4に燃料噴射を開始させる。これにより、ポート噴射弁4は、要求される量の燃料を吸気バルブ9の閉弁タイミングGVEの前までに噴射しきることができる。一方、制御装置100は、設定ポート噴射量FPUと許容ポート噴射量FPAとの差分値Nを筒内噴射弁20で賄う。すなわち、制御装置100は、上記の差分値Nを設定筒内噴射量FDUに加算した値を目標筒内噴射量FDFとする(ステップS220)。そして、制御装置100は、この目標筒内噴射量FDFを筒内噴射弁20から噴射させる。このときの筒内噴射タイミングFDSは、第1処置の場合と同じである。すなわち、制御装置100は、上記の差分値Nを筒内噴射弁20で賄う場合でも、筒内噴射タイミングFDSを算出し直すことなく、設定筒内噴射量FDUに合わせて算出した筒内噴射タイミングFDSを利用する。
【0063】
なお、
図4では、筒内噴射タイミングFDSを吸気バルブ9の閉弁タイミングGVEよりも後のタイミングに設定した場合の例を示しているが、筒内噴射タイミングFDSが吸気バルブ9の閉弁タイミングGVEよりも前に設定されることもあり得る。また、
図4は、特定噴射制御を行った場合の作用をわかり易く説明するために各噴射弁の噴射量、噴射タイミング、各バルブの開閉タイミング等をあくまでも模式的に描いたものであり、これらは実際のものとは必ずしも一致しない。
【0064】
<実施形態の効果>
(1)上記作用に記載したとおり、制御装置100は、燃料の吹き抜けが生じ得る機関運転領域で内燃機関1を運転する場合、2段階の処置を行うことによってポート噴射比率Rを小さくする。そしてそのことによって目標ポート噴射量FPFを許容ポート噴射量FPA以下の値に設定する。この場合、ポート噴射タイミングFPSをバルブオーバーラップ期間VOの終了後に設定した場合でも、吸気バルブ9の閉弁タイミングまでにポート噴射弁4から目標ポート噴射量FPFを噴射しきることができる。こうした本実施形態の構成では、バルブオーバーラップ期間VOの終了タイミングVOEからポート噴射弁4による燃料噴射を開始することで燃料吹き抜けを防止できる。その上、制御装置100は、ポート噴射弁4からの燃料噴射量を減らした分を全て筒内噴射弁20からの燃料噴射で賄う。したがって、気筒18での1回の燃料の燃焼に供される総燃料量Fallは変化しない。そのため、ポート噴射比率Rを小さくすることに伴う内燃機関1のトルクの変動等の影響は最小限に留められる。
【0065】
(2)筒内噴射弁20から噴射する燃料量が多い場合、次の懸念がある。すなわち、要求される燃料量を筒内噴射弁20から噴射しきるのに要する期間が長くなる。それに伴い、筒内噴射タイミングFDSは、規定クランク位置から相当に遡ったクランク位置Scrに設定される。この場合、筒内噴射タイミングFDSは、例えば、ピストン6が圧縮行程の下死点に位置しているときから相応に遡ったタイミング、つまりピストン6が上死点に近い位置にあるときになり得る。このタイミングで燃料噴射を開始すると、ピストン6の頂面に付着する燃料量が多くなり得る。そして、燃料が霧化し難くなる。このように、筒内噴射弁20からの燃料噴射量を過度に増やすことは好ましくない。こうした事情もあり、特定噴射制御の第1処置でポート噴射比率Rを減らす際に利用する補正値Hは、筒内噴射弁20からの燃料噴射量がさほど多くならないような値になっている。したがって、第1処置で減らすポート噴射弁4の燃料噴射量もある程度に限られる。第1処置にこうした制約があっても、特定噴射処理では、第2処置において目標ポート噴射量FPFが許容ポート噴射量FPAになるようにポート噴射比率Rを設定し直す。したがって、燃料の吹き抜けを確実に防止できる。
【0066】
ここで、特定噴射処理のステップS160で説明したとおり、筒内噴射タイミングFDSを算出する上では相応に複雑な処理が必要である。第2処置においてポート噴射比率Rを設定し直す際、最終的な目標筒内噴射量FDFに合わせて筒内噴射タイミングFDSを再度算出し直すと、制御装置100の処理の負担が増える。この点、本実施形態は、第2処置においてポート噴射比率Rを設定し直す場合でも、筒内噴射タイミングFDSについては算出し直すことなく、設定筒内噴射量FDUに基づいて既に算出した既存の筒内噴射タイミングFDSを利用する。したがって、上記のような2段階の処置を行いつつも、制御装置100の処理負担を最低限に抑えることができる。
【0067】
<変更例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0068】
・特定噴射制御の第2処置の態様は上記実施形態の例に限定されない。すなわち、ステップS210において、許容ポート噴射量FPAをそのまま目標ポート噴射量FPFに設定するのではなく、許容ポート噴射量FPAよりも少ない燃料量を目標ポート噴射量FPFに設定してもよい。この場合でも、総燃料量Fallと上記の目標ポート噴射量FPFとの差分を筒内噴射弁20からの燃料噴射で賄うようにすれば、総燃料量Fallを気筒18に供給できる。
【0069】
・特定噴射制御における筒内噴射タイミングFDSの算出方法は、上記実施形態の例に限定されない。筒内噴射タイミングFDSの算出方法は、点火プラグ5の保護、排気エミッション等を踏まえた上で、適切なタイミングを設定できる手法であればよい。筒内噴射タイミングFDSの算出方法を変更することに伴って、上記実施形態の態様で算出する筒内噴射タイミングFDSとは異なるタイミングが筒内噴射タイミングFDSに設定されてもよい。
【0070】
・特定噴射制御の第2処置を行う場合の筒内噴射タイミングFDSを、第2処置で算出した目標筒内噴射量FDFに合わせて算出し直してもよい。この場合、第2処置で算出した目標筒内噴射量FDFを噴射するのに最適なタイミングから筒内噴射弁20による燃料噴射を開始できる。
【0071】
・特定噴射制御で設定するポート噴射タイミングFPSは、上記実施形態の例に限定されない。ポート噴射タイミングFPSは、バルブオーバーラップ期間VOの終了タイミングVOEよりも後のタイミングに設定してもよい。例えば、設定ポート噴射量FPUが許容ポート噴射量FPAよりも少ないとする。この場合、バルブオーバーラップ期間VOの終了タイミングVOEよりも後のタイミングにポート噴射タイミングFPSを設定しても、吸気バルブ9の閉弁タイミングの前までに設定ポート噴射量FPUをポート噴射弁4から噴射しきることができる。さらに、後述の変更例のように、第2処置を廃止する場合等では、ポート噴射タイミングFPSをバルブオーバーラップ期間VOの途中に設定してもよい。この場合でも、バルブオーバーラップ期間VOのうちの極力遅いタイミングであれば、燃料が排気通路8に吹き抜ける燃料量を少なからず低減できる。特定噴射制御で設定するポート噴射タイミングFPSは、通常噴射制御で設定するポート噴射タイミングFPSよりも遅ければよい。
【0072】
・特定噴射制御の第1処置に関して、ポート噴射比率Rの補正の手法は上記実施形態の例に限定されない。ポート噴射比率Rを補正する上で、補正値Hを乗算するのではなく、補正値Hを加算したり減算したりしてもよい。補正の仕方に合わせて適切な補正値Hを補正マップに設定しておけばよい。大気圧Lが低いほど基本ポート噴射比率RBに対して小さくする幅が大きく設定された補正ポート噴射比率RMを算出できるのであれば、補正の手法は問わない。
【0073】
・上記実施形態では、筒内噴射弁20とポート噴射弁4のうち、ポート噴射弁4に焦点を当てて補正値Hを定めていた。これに代えて、筒内噴射弁20に焦点をあてて補正値Hを定めておいてもよい。具体的には、ステップS120において、「1」から基本ポート噴射比率RBを減算した値を基本筒内噴射比率として算出する。そして、その基本筒内噴射比率に補正値Hを乗算して補正筒内噴射比率を算出する。そして、ステップS130及びステップS140では、その補正筒内噴射比率に応じてそれぞれの噴射弁からの燃料噴射量を決定する。こういった態様を実現できるように補正値Hを定めてもよい。この場合、補正マップは、大気圧Lが低くなるほど補正値Hが大きくなるような内容にしておけばよい。その際、乗算によって補正を行う上での補正値Hは、「1」以上の値にすればよい。また、乗算によって補正を行う上での補正値Hとして、例えば、標準大気圧を、車両300が位置している地点の大気圧Lで除算した値を採用してもよい。これらの場合でも、大気圧Lが低いほどポート噴射比率Rを小さくする幅が大きく設定されることになる。
【0074】
・特定噴射制御の第2処置を廃止し、第1処置のみを行ってもよい。第1処置を行えば、大気圧Lに応じてポート噴射比率Rを相応に減らすことができる。ここで、第1処置によって得られた設定ポート噴射量FPUが許容ポート噴射量FPAよりも多いこともある。この場合、上記変更例に記載したとおり、ポート噴射タイミングFPSをバルブオーバーラップ期間VO内に設定してもよい。この場合でも、第1処置を行わない場合に比べれば、第1処置によってポート噴射比率Rが小さくなっていることから、排気通路8に吹き抜ける燃料量を少なからず低減できる。
【0075】
・特定噴射制御の第1処置を廃止し、第2処置のみを行ってもよい。つまり、大気圧Lに応じた補正を行わなくてもよい。例えば、ステップS120において補正値Hを1として取り扱えば、そういった態様を実現できる。具体的には、補正値Hを1とした場合、ステップS180において、基本ポート噴射比率RBに応じたポート噴射弁4からの燃料噴射量である基本ポート噴射量FPBと、許容ポート噴射量FPAとを比較する。そして、前者が後者よりも多い場合に(ステップS180:NO)、第2処置を行う。そして、ステップS210では、目標ポート噴射量FPFとして許容ポート噴射量FPAを設定する。また、ステップS220では、基本ポート噴射量FPBと許容ポート噴射量FPAとの差分を目標筒内噴射量FDFに含める。こうした態様を採用してもよい。
【0076】
・特定噴射制御の第1処置を廃止し、第2処置のみを行う場合に関して、上記変更例と同様、許容ポート噴射量FPAよりも少ない噴射量を目標ポート噴射量FPFに設定してもよい。そしてその少なくした分を目標筒内噴射量FDFに含めてもよい。
【0077】
・特定噴射制御の第1処置を廃止し、第2処置のみを行う場合に関して、筒内噴射タイミングFDSは、次のいずれとしてもよい。すなわち、基本ポート噴射比率RBに応じた筒内噴射弁20からの燃料噴射量である基本筒内噴射量FDBに合わせて算出した筒内噴射タイミングFDSでもよい。また、第2処置で算出した目標筒内噴射量FDFに合わせて算出した筒内噴射タイミングFDSでもよい。ポート噴射タイミングFPSは、吸気バルブ9の閉弁タイミングの前までに目標ポート噴射量FPFを噴射しきれるように設定すればよい。
【0078】
・特定噴射制御では、第1処置及び第2処置とは異なる手法によってポート噴射比率Rを小さく設定してもよい。例えば、特定噴射制御では、車両300が位置している地点の大気圧Lに拘わらず、予め定められた固定値分だけ基本ポート噴射比率RBを小さくした値を補正ポート噴射比率RMとして算出してもよい。そして、この補正ポート噴射比率RMに応じた燃料を各噴射弁から噴射させてもよい。特定噴射制御は、通常噴射制御に比べて、ポート噴射比率Rを小さく設定し、且つポート噴射タイミングFPSを遅くする内容になっていればよい。
【0079】
・特定噴射制御の処理の中で算出する各バルブタイミングの算出手法は、上記実施形態の例に限定されない。例えば次の各センサの検出値を利用して各バルブタイミングを算出してもよい。各センサは、クランクポジションセンサ34、吸気カムポジションセンサ35、及び排気カムポジションセンサ36である。各バルブタイミングを適切に算出できるのであれば、その手法は問わない。
【0080】
・各マップは、表やグラフではなく数式でもよい。各マップは、それぞれで規定されるパラメータ間の関係性を適切に表したものであればよい。
・機関運転領域に応じた各バルブタイミングの調整態様は、上記実施形態の例に限定されない。各バルブタイミングの調整態様に拘わらず、バルブオーバーラップ期間VOが「0」よりも大きいときに過給機50による過給が行われ、且つそのときにポート噴射比率Rが大きいと燃料の吹き抜けが生じ得る。その燃料の吹き抜けを防止すべく特定噴射制御を行えばよい。
【0081】
・比率マップの内容、過給マップの内容、及びバルブオーバーラップ期間VOの設定の仕方が上記実施形態の例とは異なっていることもあり得る。そしてそれに付随して、過給開始負荷率KLA、基本ポート噴射比率RB、及びバルブオーバーラップ期間VOの長さの関係が、上記実施形態の例とは異なっていることもあり得る。この場合でも、特定噴射制御は、通常噴射制御に比べて、ポート噴射比率Rを小さく設定し、且つポート噴射タイミングFPSを遅くする内容になっていればよい。
【0082】
ここで、吸気バルブタイミング及び排気バルブタイミングの初期値を上記実施形態と同じ態様に設定するものとする。この場合、基準気筒に関して、吸気バルブ可変装置13によって設定される吸気バルブタイミングと、排気バルブ可変装置14によって設定される排気バルブタイミングとにはつぎのような関係がある。すなわち、排気バルブタイミングの遅角量を最大にしたときに排気バルブ10が閉弁タイミングとなるクランク位置Scrは、吸気バルブタイミングが初期値であるときに吸気バルブ9が開弁タイミングとなるクランク位置Scrよりも遅角側である。さて、排気バルブタイミングの遅角量を最大にしてバルブオーバーラップを行っている状況下で特定噴射制御を行うとする。そして、このときのポート噴射タイミングFPSをバルブオーバーラップ期間VOの終了タイミングVOE、すなわち排気バルブ10の閉弁タイミングにしたとする。この態様を規定態様と呼称する。ここで、通常噴射制御では、基本的には、吸気バルブ9の開弁タイミング後の速やかなタイミングがポート噴射タイミングFPSとされる。例えば吸気バルブ9の開弁タイミングと、通常噴射制御のポート噴射タイミングFPSとが概ね同じであるとする。この場合、吸気バルブタイミングが初期値であるときに通常噴射制御を行う場合のポート噴射タイミングFPSは、通常噴射制御を行う場合のうちで最も遅角したタイミングになる。このときのポート噴射タイミングFPSに比べて、上記規定態様で特定噴射制御を行う場合のポート噴射タイミングFPS、すなわち排気バルブタイミングの遅角量を最大にしたときの排気バルブ10の閉弁タイミングは、さらに遅角側である。したがって、吸気バルブ9の開弁タイミングと通常噴射制御のポート噴射タイミングFPSとが概ね同じあるという前提が成立していれば、次のことがいえる。すなわち、規定態様で特定噴射制御を行う場合であれば、当該特定噴射制御のポート噴射タイミングFPSは通常噴射制御のポート噴射タイミングFPSに比べて遅くなる。
【0083】
・内燃機関1の全体構成は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、気筒18の数を変更してもよい。吸気バルブ可変装置13は、油圧によって駆動されるタイプのものでもよい。排気バルブ可変装置14についても同様である。また、例えば第1処置を行わないのであれば、大気圧センサ30を廃止してもよい。内燃機関1は、ポート噴射弁4と、筒内噴射弁20と、過給機50とを有していればよい。
【0084】
・車両300の全体構成は、上記実施形態の例に限定されない。車両300は、例えば、当該車両300の駆動源として内燃機関1のみならず発電電動機を有していてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…内燃機関
3…吸気通路
4…ポート噴射弁
8…排気通路
9…吸気バルブ
10…排気バルブ
13…吸気バルブ可変装置
14…排気バルブ可変装置
18…気筒
20…筒内噴射弁
30…大気圧センサ
50…過給機
100…制御装置