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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】電池の製造方法及び電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/178 20210101AFI20241016BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20241016BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20241016BHJP
   H01M 50/553 20210101ALI20241016BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20241016BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20241016BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20241016BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20241016BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20241016BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20241016BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20241016BHJP
【FI】
H01M50/178
H01M50/105
H01M50/548 301
H01M50/553
H01M50/533
H01M50/184 C
H01M50/186
H01M50/193
H01G11/84
H01G11/78
H01G11/74
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022043977
(22)【出願日】2022-03-18
(65)【公開番号】P2023137677
(43)【公開日】2023-09-29
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】永田 佑佳
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-150231(JP,A)
【文献】特開2013-020758(JP,A)
【文献】特開2020-053238(JP,A)
【文献】特表2020-532082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/00 - 50/198
H01M 50/50 - 50/598
H01G 11/00 - 11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素と、前記発電要素を収容する外装体と、前記発電要素に電気的に接続され、前記外装体から外側に延出するように配置される集電端子とを備えた電池の製造方法であって、
前記発電要素に接続された前記集電端子の厚さ方向の少なくとも一方の表面に沿って樹脂層を配置する配置工程と、
前記発電要素を前記外装体に収容する収容工程と、
熱溶着により前記発電要素を前記外装体に封止する封止工程と、を備え、
前記封止工程において、前記樹脂層と前記外装体とが熱溶着されており、
前記集電端子は厚さが一定の端子平坦部と、前記端子平坦部に接続され、幅方向の外側に向かって厚さが薄くなる端子傾斜部と、を有し、
前記端子傾斜部は前記集電端子の少なくとも一方の端部に形成されており、
前記樹脂層は前記端子平坦部の表面に沿って配置される樹脂層平坦部と、前記樹脂層平坦部に接続され、前記端子傾斜部の表面に沿って配置される樹脂層傾斜部と、を有し、
前記樹脂層は、長さ方向において、前記外装体に溶着される第1領域と、前記外装体に溶着されない第2領域と、を有し、
前記樹脂層の前記第1領域は前記端子平坦部の表面に沿って配置される第1領域平坦部と、前記第1領域平坦部に接続され、前記端子傾斜部の表面に沿って配置される第1領域傾斜部と、を備え、
前記樹脂層の前記第2領域は前記端子平坦部の表面に沿って配置される第2領域平坦部と、前記第2領域平坦部に接続され、前記端子傾斜部の表面に沿って配置される第2領域傾斜部と、を備え、
前記配置工程において、前記端子平坦部と前記端子傾斜部を延長した直線からなる角度をθ1とし、前記樹脂層平坦部と前記樹脂層傾斜部を延長した直線とからなる角度をθ2としたとき、
θ1、θ2がθ1>θ2を満たすように前記集電端子に前記樹脂層を配置し、
前記封止工程において、前記第1領域平坦部と前記第1領域傾斜部を延長した直線とからなる角度をθ5とし、前記第2領域平坦部と前記第2領域傾斜部を延長した直線とからなる角度をθ6としたとき、
θ5、θ6がθ5>θ6を満たすように前記発電要素を前記外装体に封止する、
電池の製造方法。
【請求項2】
前記封止工程において、前記端子平坦部と前記端子傾斜部を延長した直線とからなる角度をθ3とし、前記樹脂層平坦部と前記樹脂層傾斜部を延長した直線とからなる角度をθ4としたとき、
θ3、θ4がθ3>θ4を満たすように前記発電要素を前記外装体に封止する、
請求項1に記載の電池の製造方法。
【請求項3】
発電要素と、
前記発電要素を収容する外装体と、
前記発電要素に電気的に接続され、前記外装体から外側に延出するように配置される集電端子と、
前記集電端子の厚さ方向の少なくとも一方の表面に沿って配置され、前記集電端子と前記外装体との間に配置される樹脂層と、を備え、
前記樹脂層は前記外装体に熱溶着されており、
前記集電端子は厚さが一定の端子平坦部と、前記端子平坦部に接続され、幅方向の外側に向かって厚さが薄くなる端子傾斜部と、を備え、
前記端子傾斜部は前記集電端子の少なくとも一方の端部に形成されており、
前記樹脂層は、長さ方向において、前記外装体に溶着されている第1領域と、前記外装体に溶着されていない第2領域と、を有し、
前記樹脂層の前記第1領域は前記端子平坦部の表面に沿って配置される第1領域平坦部と、前記第1領域平坦部に接続され、前記端子傾斜部の表面に沿って配置される第1領域傾斜部と、を備え、
前記樹脂層の前記第2領域は前記端子平坦部の表面に沿って配置される第2領域平坦部と、前記第2領域平坦部に接続され、前記端子傾斜部の表面に沿って配置される第2領域傾斜部と、を備え、
前記第1領域平坦部と前記第1領域傾斜部を延長した直線とからなる角度をθ5とし、前記第2領域平坦部と前記第2領域傾斜部を延長した直線とからなる角度をθ6としたとき、
θ5、θ6がθ5>θ6を満たす、
電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は電池の製造方法及び電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発電要素をラミネートフィルムで封止したラミネート型電池が知られている。ラミネート型電池は、発電要素に接続された集電端子が外部に延出している構造を有しており、集電端子はラミネートフィルムに挟まれて熱溶着されている。
【0003】
近年、電池の高性能化に対応するために、集電端子の厚さを大きくすることが検討されている。しかしながら、集電端子の厚さを厚くすると、集電端子、特に集電端子の幅方向の端部とラミネートフィルムとの間に空隙が発生する問題がある。空隙が発生すると、ラミネート型電池の気密性が損なわれ、外部から水分が侵入し、発電要素が劣化する問題が生じる。また、液系電池である場合、内部の電解液が空隙を通じて外部に漏れる問題が生じる。したがって、このような熱溶着不良を抑制する必要がある。
【0004】
このような問題に対し、特許文献1は幅方向の外側に向かって厚さが徐々に薄くなる集電端子を有するラミネート型電池を開示している。このようなラミネート型電池によれば、集電端子の端部とラミネートフィルムとの間に空隙が発生し難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-164784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたラミネート型電池によれば、確かに集電端子の端部とラミネートフィルムとの間に空隙が発生し難くなる。しかしながら、製造上の公差により、熱溶着時おいて集電端子の端部とラミネートフィルムとの間に空隙が発生する可能性がある。従って、特許文献1に開示されている技術は改善の余地があった。
【0007】
そこで、本願の主な目的は、熱溶着不良を抑制することができる電池の製造方法及び電池を提供することである
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、上記課題を解決するための一つの態様として、発電要素と、発電要素を収容する外装体と、発電要素に電気的に接続され、外装体から外側に延出するように配置される集電端子とを備えた電池の製造方法であって、発電要素に接続された集電端子の厚さ方向の少なくとも一方の表面に沿って樹脂層を配置する配置工程と、発電要素を外装体に収容する収容工程と、熱溶着により発電要素を外装体に封止する封止工程と、を備え、封止工程において、樹脂層と外装体とが熱溶着され、集電端子は厚さが一定の端子平坦部と、端子平坦部に接続され、幅方向の外側に向かって厚さが薄くなる端子傾斜部と、を有し、端子傾斜部は集電端子の少なくとも一方の端部に形成されており、樹脂層は端子平坦部の表面に沿って配置される樹脂層平坦部と、樹脂層平坦部に接続され、端子傾斜部の表面に沿って配置される樹脂層傾斜部と、を有し、配置工程において、端子平坦部と端子傾斜部を延長した直線からなる角度をθ1とし、樹脂層平坦部と樹脂層傾斜部を延長した直線とからなる角度をθ2としたとき、θ1、θ2がθ1>θ2を満たすように集電端子に樹脂層を配置する、電池の製造方法を提供する。
【0009】
上記の製造方法は、封止工程において、端子平坦部と端子傾斜部を延長した直線とからなる角度をθ3とし、樹脂層平坦部と樹脂層傾斜部を延長した直線とからなる角度をθ4としたとき、θ3、θ4がθ3>θ4を満たすように発電要素を外装体に封止する態様であってもよい。あるいは、上記の製造方法において、樹脂層は、長さ方向において、外装体に溶着される第1領域と、外装体に溶着されない第2領域と、を有し、樹脂層の第1領域は端子平坦部の表面に沿って配置される第1領域平坦部と、第1領域平坦部に接続され、端子傾斜部の表面に沿って配置される第1領域傾斜部と、を備え、樹脂層の第2領域は端子平坦部の表面に沿って配置される第2領域平坦部と、第2領域平坦部に接続され、端子傾斜部の表面に沿って配置される第2領域傾斜部と、を備え、封止工程において、第1領域平坦部と第1領域傾斜部を延長した直線とからなる角度をθ5とし、第2領域平坦部と第2領域傾斜部を延長した直線とからなる角度をθ6としたとき、θ5、θ6がθ5>θ6を満たすように発電要素を外装体に封止する態様であってもよい。
【0010】
本開示は、上記課題を解決するための一つの態様として、発電要素と、発電要素を収容する外装体と、発電要素に電気的に接続され、外装体から外側に延出するように配置される集電端子と、集電端子の厚さ方向の少なくとも一方の表面に沿って配置され、集電端子と外装体との間に配置される樹脂層と、を備え、樹脂層と外装体とは熱溶着されており、集電端子は厚さが一定の端子平坦部と、端子平坦部に接続され、幅方向の外側に向かって厚さが薄くなる端子傾斜部と、を備え、端子傾斜部は集電端子の少なくとも一方の端部に形成されており、樹脂層は端子平坦部の表面に沿って配置される樹脂層平坦部と、樹脂層平坦部に接続され、端子傾斜部の表面に沿って配置される樹脂層傾斜部と、を備え、端子平坦部と端子傾斜部とから形成される角度をθ3とし、樹脂層平坦部と樹脂層傾斜部とから形成される角度をθ4としたとき、θ3、θ4はθ3>θ4を満たす、電池を提供する。
【0011】
本開示は上記課題を解決するための一つの態様として、発電要素と、発電要素を収容する外装体と、発電要素に電気的に接続され、外装体から外側に延出するように配置される集電端子と、集電端子の厚さ方向の少なくとも一方の表面に沿って配置され、集電端子と外装体との間に配置される樹脂層と、を備え、樹脂層は外装体に熱溶着されており、集電端子は厚さが一定の端子平坦部と、端子平坦部に接続され、幅方向の外側に向かって厚さが薄くなる端子傾斜部と、を備え、端子傾斜部は集電端子の少なくとも一方の端部に形成されており、樹脂層は、長さ方向において、外装体に溶着されている第1領域と、外装体に溶着されていない第2領域と、を有し、樹脂層の第1領域は端子平坦部の表面に沿って配置される第1領域平坦部と、第1領域平坦部に接続され、端子傾斜部の表面に沿って配置される第1領域傾斜部と、を備え、樹脂層の第2領域は端子平坦部の表面に沿って配置される第2領域平坦部と、第2領域平坦部に接続され、端子傾斜部の表面に沿って配置される第2領域傾斜部と、を備え、第1領域平坦部と第1領域傾斜部を延長した直線とからなる角度をθ5とし、第2領域平坦部と第2領域傾斜部を延長した直線とからなる角度をθ6としたとき、θ5、θ6がθ5>θ6を満たす、電池を提供する。
【0012】
本開示は、上記課題を解決するための一つの態様として、発電要素と、発電要素に電気的に接続される集電端子と、集電端子の厚さ方向の少なくとも一方の表面に沿って配置される樹脂層と、を備え、集電端子は厚さが一定の端子平坦部と、端子平坦部に接続され、幅方向の外側に向かって厚さが薄くなる端子傾斜部と、を備え、端子傾斜部は集電端子の少なくとも一方の端部に形成されており、樹脂層は端子平坦部の表面に沿って配置される樹脂層平坦部と、樹脂層平坦部に接続され、端子傾斜部の表面に沿って配置される樹脂層傾斜部と、を有し、端子平坦部と端子傾斜部を延長した直線からなる角度をθ1とし、樹脂層平坦部と樹脂層傾斜部を延長した直線とからなる角度をθ2としたとき、θ1、θ2がθ1>θ2を満たす、電池中間体を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、集電端子と外装体との間に空隙が発生することを抑制し、熱溶着不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態である電池の製造方法のフローチャートである。
図2】一実施形態である電池の製造方法により製造される電池100の斜視図である。
図3】電池100の分解斜視図である。
図4】樹脂層40を集電端子20に配置する様子を簡易的に表す斜視図である。
図5】配置工程S1により製造される電池中間体90の斜視図である。
図6】(a)図5のVI-VIで切断した断面図である。(b)(a)の分解断面図である。
図7】集電端子30の他の実施形態である。
図8】ヒートバー50を用いて、樹脂層40を集電端子30に熱溶着する様子を時系列で示した図である。
図9】ヒートバー60を用いて、樹脂層40と外装体20とを熱溶着する様子を時系列で示した図である。
図10】(a)θ1≦θ2である電池中間体を用いて封止工程を行う場合の概略図である。(b)封止工程後の電池の断面図である。
図11】樹脂層40と外装体20とが熱溶着されている部分の分解断面図である。
図12】電池100の集電端子30付近の斜視図である。
図13】(a)図12のa-aで切断したときの分解断面図(第1領域40aの分解断面図)である。(b)図12のb-bで切断したときの分解断面図(第2領域40bの分解断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[電池の製造方法]
本開示の電池の製造方法について、一実施形態である電池の製造方法を参照しつつ説明する。図1に一実施形態の製造方法のフローチャートを示した。また、図2に一実施形態の製造方法により製造される電池100の斜視図を示した。図3に電池100の分解斜視図を示した。ここで、本明細書において、図2に示したx方向を長さ方向(電池100の長さ方向)、y方向を幅方向(電池100の幅方向)、z方向を厚さ方向(電池100の厚さ方向)とする。x、y、z方向はそれぞれ直交する関係にある。
【0016】
一実施形態の製造方法は、発電要素10と、発電要素10を収容する外装体20と、発電要素10に電気的に接続され、外装体20から外側に延出するように配置される集電端子30とを備えた電池100の製造方法であって、図1に記載されている通り、配置工程S1と、収容工程S2と、封止工程S3とを備えている。
【0017】
図3に示した通り、一実施形態の製造方法は、集電端子30に所定の樹脂層40を配置して、電池100を製造する。以下、各工程について説明する。
【0018】
<配置工程S1>
配置工程S1は、発電要素10に接続された集電端子20の厚さ方向の少なくとも一方の表面に沿って樹脂層40を配置する工程である。配置工程S1により電池中間体90を製造することができる。
【0019】
図4に樹脂層40を集電端子20に配置する様子を簡易的に表す斜視図を示した。図5に電池中間体90の斜視図を示した。さらに図6(a)に図5のVI-VIで切断した断面図、図6(b)に図6(a)の分解断面図を示した。
【0020】
(発電要素10)
発電要素10はリチウムイオン電池や、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のような化学電池の発電要素であってもよい。また、発電要素10はキャパシタのような物理電池の発電要素であってもよい。さらに、発電要素10は積層型であってもよく、捲回型であってもよい。また、発電要素10は固体電池であってもよく、液系電池であってもよい。以下に、積層型のリチウムイオン二次電池用の発電要素10を例示する。ただし、本開示の発電要素はこれに限定されない。
【0021】
発電要素10は正極集電箔、正極活物質層、電解質層、負極活物質層、負極集電箔(以下、これらをまとめて「電極要素」ということがある。)を積層している。電極要素は厚さ方向に積層される。積層されるそれぞれの電極要素の数は特に限定されない。また、電極要素は電気的に直列となるように積層されていてもよく、電気的に並列となるように積層されていてもよい。
【0022】
発電要素10はシート状の形状を有しており、平面視において矩形の形状である。ただし、発電要素10は外装20の内部に収容可能な形状を有していれば特に限定されない。また、発電要素10の各集電箔は各集電端子30に接続するためのタブを備えていてもよい。正極タブは各正極集電箔に備えられており、正極集電端子と電気的に接続されている。同様に、負極タブは各負極集電箔に備えられており、負極集電端子と電気的に接続されている。
【0023】
正極集電箔及び負極集電箔はシート状の金属箔である。正極集電箔及び負極集電箔を構成する金属は特に限定されないが、例えばCu、Ni、Cr、Au、Pt、Ag、Al、Fe、Ti、Zn、Co、ステンレス鋼等が挙げられる。正極集電箔を構成する金属としてはAlが好ましい。負極集電箔を構成する材料としてはCuが好ましい。
【0024】
正極集電箔及び負極集電箔は、その表面に抵抗を調整するための何らかのコート層(例えば、カーボンコート層)を有していてもよい。正極集電箔及び負極集電箔の厚さは、例えば0.1μm以上1mm以下としてよい。
【0025】
正極活物質層は、正極活物質を含むシート状の層である。正極活物質はリチウムイオン二次電池に用いることができる正極活物質であれば特に限定されない。例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、スピネル系リチウム化合物等の各種のリチウム含有複合酸化物が挙げられる。
【0026】
正極活物質層は任意に導電助剤やバインダを含んでいてもよい。バインダはリチウムイオン二次電池に用いることができるバインダであれば特に限定されない。例えば、ブタジエンゴム(BR)、ブチレンゴム(IIR)、アクリレートブタジエンゴム(ABR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等が挙げられる。導電助剤はリチウムイオン二次電池に用いることができる導電助剤であれば特に限定されない。例えば、アセチレンブラックやケッチェンブラック等の炭素材料やニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料が挙げられる。
【0027】
電池100が全固体電池である場合、正極活物質層は任意に固体電解質を含んでもよい。固体電解質はリチウムイオン二次電池に用いることができる固体電解質であれば特に限定されない。例えば、有機ポリマー電解質であってもよく、無機固体電解質であってもよい。好ましくは無機固体電解質である。有機ポリマー電解質と比較してイオン伝導度が高く、耐熱性に優れるためである。無機固体電解質は、酸化物固体電解質であってもよく、硫化物固体電解質であってもよい。好ましくは硫化物固体電解質である。酸化物固体電解質としては、例えばランタンジルコン酸リチウム、LiPON、Li1+XAlXGe2-X(PO、Li-SiO系ガラス、Li-Al-S-O系ガラス等が挙げられる。硫化物固体電解質としては、例えばLiS-P、LiS-SiS、LiI-LiS-SiS、LiI-SiS-P、LiS-P-LiI-LiBr、LiI-LiS-P、LiI-LiS-P、LiI-LiPO-P、LiS-P-GeS等が挙げられる
【0028】
正極活物質層における各成分の含有量は目的に応じて適宜設定すればよい。また、正極活物質の表面はニオブ酸リチウム層やチタン酸リチウム層、リン酸リチウム層等の酸化物層で被覆されていてもよい。正極活物質層の厚さは、例えば0.1μm以上1mm以下としてよい。
【0029】
負極活物質層は、負極活物質を含むシート状の層である。負極活物質はリチウムイオン二次電池に用いることができる負極活物質であれば特に限定されない。例えば、Si及びSi合金や、酸化ケイ素等のシリコン系活物質、グラファイトやハードカーボン等の炭素系活物質、チタン酸リチウム等の各種酸化物系活物質、金属リチウム及びリチウム合金等が挙げられる。
【0030】
負極活物質層は任意に導電助剤やバインダを含んでもよい。導電助剤及びバインダは、正極活物質層に用いることができる導電助剤及びバインダから適宜選択することができる。また、電池100が全固体電池である場合、負極活物質層は任意に固体電解質を含んでもよい。固体電解質は正極活物質層に用いることができる固体電解質から適宜選択することができる。
【0031】
負極活物質層における各成分の含有量は目的に応じて適宜設定すればよい。負極活物質層の厚さは、例えば0.1μm以上1mm以下としてよい。
【0032】
電池100が全固体電池である場合、電解質層はシート状の固体電解質層である。固体電解質層は固体電解質を含む。固体電解質は正極活物質層に用いることができる固体電解質層から適宜選択することができる。また、固体電解質層は任意にバインダを含んでもよい。バインダは、正極活物質層に用いることができるバインダから適宜選択することができる。固体電解質層における各成分の含有量は目的に応じて適宜設定すればよい。固体電解質層の厚さは、例えば0.1μm以上1mm以下としてよい。
【0033】
電池100が液系電池である場合、電解質層は電解液とセパレータとを含む。電解液及びセパレータはリチウムイオン二次電池に用いることができる電解液及びセパレータであれば特に限定されない。セパレータは、例えばポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン製の多孔性シート(フィルム)が挙げられる。セパレータの厚さは、例えば0.1μm以上1mm以下としてよい。電解液は通常、非水系溶媒及び支持塩を含有する。非水系溶媒は、例えばカーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等が挙げられる。支持塩は、例えばLiPF、LiBF、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(LiTFSI)等が挙げられる。電解液中の支持塩の濃度は特に限定されないが、例えば0.5mol/L以上5mol/L以下としてよい。また、電解液はガス発生剤や被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の任意の成分を添加してもよい。
【0034】
(集電端子30)
集電端子30は発電要素10に電気的に接続されており、外装体20から外側に延出するように配置される。集電端子30は正極集電端子及び負極集電端子を有しており、正極集電端子は正極集電箔に接続されており、負極集電端子は負極集電箔に接続されている。正極集電端子及び負極集電端子の配置形態は特に限定されず、図2のように発電要素10の対向する面に配置されていてもよく、同一の面に配置されていてもよい。集電端子30の材料は特に限定されず、各集電箔に使用される金属から適宜選択することができる。例えば、集電端子30は各集電箔と同じ金属から構成されていてもよい。正極集電端子を構成する金属はAlが好ましい。負極集電端子を構成する金属はCuが好ましい。
【0035】
集電端子30は厚さが一定の端子平坦部31と、端子平坦部31に接続され、幅方向の外側に向かって厚さが薄くなる端子傾斜部32と、を有し、端子傾斜部32は集電端子30の少なくとも一方の端部に形成されている。これにより、製造される電池100において、集電端子30と外装体20との間に空隙が発生し難くなる。より効果を高める観点から、集電端子30が幅方向の両端部に端子傾斜部32を有していてもよい。図6では、集電端子30は幅方向の両端部に端子傾斜部32を備えている形態を示している。また、幅方向の両端部に端子傾斜部32を備えている集電端子30の他の実施形態として、図7(a)、(b)に示した形態が挙げられる。このように、集電端子30は図6に示すような六角形状の断面を有していてもよく、図7(a)に示すような台形状の断面を有していてもよく、図7(b)に示すような八角形状の断面を有していてもよい。また、図6図7(b)のように、集電端子30の端部の厚さ方向の両表面に端子傾斜部32を有していてもよい。これにより、さらに空隙の発生を抑制することができる。
【0036】
集電端子30の長さ方向の長さは特に限定されず、適宜設定すればよい。また、集電端子30の幅方向の長さは特に限定されず、適宜設定すればよい。端子平坦部31の幅方向の長さは、集電端子30の幅方向の長さの20%以上であってもよく、90%以下であってもよい。端子傾斜部32の幅方向の長さは、集電端子30の幅方向の長さの10%以上であってもよく、80%以下であってもよい。端子平坦部31及び端子傾斜部32の幅方向の長さが、上記した範囲内であることにより、より空隙の発生を抑制することができる。
【0037】
集電端子30の厚さ(端子平坦部31の厚さ)は特に限定されないが、比較的厚くてもよい。例えば、1mm以上であってもよく、5mm以下であってもよい。集電端子30の厚さが厚いと、集電端子30と外装体20との間に空隙が発生しやすくなるが、集電端子30は上記した端子傾斜部32を有しているため、空隙の発生を抑制することができる。また、後述する樹脂層40が有する効果とも相まって、さらに空隙の発生を抑制することができる。
【0038】
(樹脂層40)
樹脂層40は集電端子30の厚さ方向の少なくとも一方の表面に沿って配置される。図5図6示したように、樹脂層30は集電端子30の厚さ方向の両方の表面に沿って配置されていてもよい。樹脂層40は外装体20と熱溶着される部材であるため、熱可塑性樹脂から構成される。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンやポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル等の結晶性樹脂、及びポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の非結晶性樹脂が挙げられる。樹脂層40の幅方向の長さは集電端子30の幅方向の長さよりも長ければよい。また、樹脂層40の長さ方向の長さは熱溶着される領域の長さよりも長ければよい。
【0039】
樹脂層40は、端子平坦部31の表面に沿って配置される樹脂層平坦部41と、樹脂層平坦部41に接続され、端子傾斜部32の表面に沿って配置される樹脂層傾斜部42と、を有している。また、樹脂層40は樹脂層傾斜部42に接続される樹脂層端部43を備えていてもよい。
【0040】
樹脂層40の厚さは特に限定されないが、従来の樹脂層(約100μm程度)よりも比較的厚い樹脂層を用いる。例えば、樹脂層40の厚さは250μm以上としてもよく、400μm以下としてもよい。このように樹脂層40の厚さを比較的厚くする理由は、後述するθ1、θ2がθ1>θ2を満たすようにするためである。言い換えると、端子傾斜部32の傾斜よりも樹脂層傾斜部42の傾斜を緩やかにするためである。これにより、樹脂層傾斜部42は幅方向の外側に向かって厚さが厚くなる。
【0041】
(配置工程S1)
配置工程S1は、図6(b)に示したように、端子平坦部31と端子傾斜部32を延長した直線からなる角度をθ1とし、樹脂層平坦部41と樹脂層傾斜部42を延長した直線とからなる角度をθ2としたとき、θ1、θ2がθ1>θ2を満たすように、集電端子30に樹脂層40を配置することを特徴としている。θ2は樹脂層40の外面の角度である。θ1、θ2がθ1≦θ2である場合、後述の封止工程S3において、製造上の公差により集電端子30と外装体20との間に空隙が発生する可能性がある。製造上の公差とは、封止工程S3におけるヒートバーの位置ずれや、ヒートバーのサイズ、集電端子のサイズ等の公差である。これに対し、配置工程S1後において、θ1、θ2がθ1>θ2を満たすことにより、封止工程S3において製造上の公差が生じたとしても、空隙の発生を抑制することができる。この効果については後述の封止工程S3において詳しく説明する。
【0042】
θ1、θ2はθ1>θ2を満たしていれば特に限定されない。例えば、θ1は30°以上であってもよく、60°以下であってもよい。θ2は10°以上であってもよく、40°以下であってもよい。また、θ1、θ2の差は10°以上であってもよく、30°以下であってもよい。
【0043】
θ1、θ2がθ1>θ2を満たすように、集電端子30に樹脂層40を配置する方法は特に限定されないが、例えば次の態様を挙げることができる。まず、θ1、θ2がθ1>θ2を満たすように集電端子30及び樹脂層40を成形し、図4に示したように集電端子30の表面に沿って樹脂層40を配置する方法が挙げられる。
【0044】
また、ヒートバー50を用いて、樹脂層40を集電端子30に熱溶着する方法が挙げられる。図8(a)~(c)に、ヒートバー50を用いて、樹脂層40を集電端子30に熱溶着する様子を時系列で示した。図8(a)に示したように、集電端子30の外側に樹脂層40を配置し、さらに樹脂層40の外側にヒートバー50を配置する。次に、図8(b)に示したように、2つのヒートバー50で集電端子40及び樹脂層40を挟み込むとともに加熱する。これにより、集電端子30に樹脂層40を密着して配置することができる。また、樹脂層端部43同士が熱溶着され、樹脂層40を集電端子30に固定することができる。そして、図8(c)に示したように、ヒートバー50を樹脂層40から離す。このように樹脂層40で挟んだ集電端子30をさらにヒートバー50で挟みこむことで、樹脂層40を集電端子30に配置することができる。
【0045】
ここで、樹脂層40のθ2が所定の角度となるように、ヒートバー50の形状を設定する。ヒートバー50は、厚さが一定のヒートバー平坦部51と、ヒートバー平坦部51に接続されるヒートバー傾斜部52とを有している。ヒートバー平坦部51は樹脂層平坦部41に対応する部分であり、ヒートバー傾斜部52は樹脂層傾斜部42に対応する部分である。そして、ヒートバー平坦部51とヒートバー傾斜部52を延長した直線からなる角度をθxとしたとき、θx=θ2となるように、ヒートバー50の形状を設定する。θxはヒートバー50の内面の角度である。このようなヒートバー50を用いることにより、樹脂層40のθ2を所定の角度に成形しつつ、樹脂層40を集電端子30に配置することができる。また、ヒートバー50はヒートバー傾斜部52に接続されるヒートバー端部53を備えていてもよい。ヒートバー端部53は樹脂層端部43に対応する部分である。
【0046】
なお、図8では、すでに成形された樹脂層40を用いたが、配置工程S1に用いることができる樹脂層40はこれに限定されず、平坦な樹脂層を用いてもよい。平坦なシート状の樹脂層を用いたとしても、ヒートバー50で所望の形状に成形できるためである。
【0047】
ヒートバー50の温度は特に限定されず、樹脂層40の溶融温度に応じて適宜設定する。例えば、150℃以上であってもよく、200℃以下であってもよい。また、集電端子30及び樹脂層40を挟むときのヒートバー50の圧力は特に限定されず、集電端子30と樹脂層40が適切に熱溶着できればよい。また、樹脂層40を所望の形状に成形できればよい。例えば、0.1MPa以上であってもよく、1MPa以下であってもよい。ヒートバー50は、例えばシリコーンゴム製の公知のヒートバーを用いることができる。
【0048】
<収容工程S2>
収容工程S2は、樹脂層40が配置された発電要素10を外装体20に収容する工程である。この際、集電体30を外装体20から外側に延出するように、発電要素10を外装体20に収容する。また、樹脂層40を集電端子30と外装体20との間に配置するように、外装体20を配置する。後述する封止工程S3において、樹脂層40と外装体20とを熱溶着するためである。
【0049】
(外装体20)
外装体20は熱溶着層を有する外装体を用いる。例えば金属ラミネートフィルムが挙げられる。一般的に、金属ラミネートフィルムは金属層と金属層を覆う樹脂層とを備えている。
【0050】
金属ラミネートフィルムの金属層は、ガスバリア層として機能する。ガスバリア層は電池100の内外で、湿気や空気あるいは電池100の内部で発生したガスの出入りを遮断する層である。金属層は、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属材料で構成されていてもよい。
【0051】
樹脂層は金属層の両面に備えられているが、金属層の面によって樹脂層の機能は異なる。例えば、熱溶着を行う面(通常、内面)に備えられる樹脂層には、熱溶着層を用いる。熱溶着層は熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル;等の結晶性樹脂や、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の非結晶性樹脂が挙げられる。一方で、熱溶着を行わない面(通常、外面)に備えられる樹脂層には、保護層を用いる。保護層には保護層として機能する樹脂を適宜用いる。例えば、PET等のポリエステル、ポリアミド(ナイロン)が挙げられる。
【0052】
外装体20に金属ラミネートフィルムを用いる場合、図2図3に示した通り、2枚の金属ラミネートフィルムで発電要素10を挟みこむ。あるいは、1枚の金属ラミネートフィルムを折り曲げて、発電要素10を挟み込む。この際、熱溶着層同士を重ねるように、金属ラミネートフィルムを配置する。また、金属ラミネートフィルムが発電要素10を収容するための凸部を設けてもよい。凸部は2つの金属ラミネートフィルムに設けてもよく、一方の金属ラミネートフィルムに設けてもよい。このような方法で、発電要素10を外装体20に収容することができる。
【0053】
外装体20の集電端子30側の端部は、図9(a)に示すように成形されていてもよい。この場合、外装体20の集電端子30側の端部は、外装体平坦部21と、外装体平坦部21に接続される外装体傾斜部22とを有していてもよい。外装体平坦部21は樹脂層平坦部41に対応する部分であり、外装体傾斜部22は樹脂層傾斜部42に対応する部分である。また、外装体20集電端子30側の端部は外装体傾斜部22に接続される外装体端部23を有してもよい。外装体端部23は樹脂層端部43に対応する部分である。
【0054】
(封止工程S3)
封止工程S3は熱溶着により発電要素10を外装体20に封止する工程である。具体的には、外装体20の端部を熱溶着し、発電要素10を外装体20の内部に封止する工程である。このとき、樹脂層40は集電端子30と外装体20との間に配置されているため、封止工程S3において、樹脂層40と外装体20とが熱溶着される。
【0055】
外装体20の熱溶着は公知の方法により実施することができるが、樹脂層40と外装体20との熱溶着、すなわち外装体20の集電端子30側の端部の熱溶着は角度を設けたヒートバー60を用いる。
【0056】
図9(a)~(c)にヒートバー60を用いて、樹脂層40と外装体20とを熱溶着する様子を時系列で示した。図9(a)に示したように、樹脂層40を配置した集電端子30の外側に外装体20を配置し、さらに外装体20の外側にヒートバー60を配置する。次に、図9(b)に示したように、2つのヒートバー60で外装体20の集電端子30側の端部を挟み込むとともに加熱する。これにより、集電端子30に配置された樹脂層40と外装体20とが熱溶着される。また、樹脂層端部40よりも幅方向外側の部分に配置される外装体20同士が熱溶着される。そして、図9(c)に示したように、ヒートバー60を外装体20から離す。このようにヒートバー60で集電端子30が配置される外装体20の端部を挟み込むことで、樹脂層40と外装体20とが熱溶着される。
【0057】
ここで、ヒートバー60は、ヒートバー50と同様に、厚さが一定であるヒートバー平坦部61と、ヒートバー平坦部61に接続されるヒートバー傾斜部62とを備えている。ヒートバー平坦部61は外装体平坦部21に対応する部分であり、ヒートバー傾斜部62は外装体傾斜部22に対応する部分である。そして、ヒートバー平坦部61とヒートバー傾斜部62を延長した直線からなる角度をθyとしたとき、θ1≧θy>θ2となるように、ヒートバー60の形状を設定する。θyはヒートバー60の内面の角度である。このような関係を満たす角度に設定することにより、集電端子30(樹脂層40)と外装体20との間に空隙が発生し難くなる。
【0058】
図10に、θ1≦θ2である電池中間体を用いて封止工程を行う場合の概略図を示した。図10(a)は図9(a)に対応する図である。図10(a)に示した通り、上側のヒートバーの位置が所定の位置からずれており、製造上の公差dが発生している。このような状態で、熱溶着を行うと、図10(b)の点線Aに示した通り、樹脂層傾斜部の上部ではヒートバーの熱により樹脂層が溶融して幅方向外側に流れ込むため外装体と熱溶着されるが、点線Bで示した通り、樹脂層傾斜部の下部では樹脂層と外装体との間に隙間Cが発生する。このように、θ1≦θ2であると、製造上の公差によって、隙間が発生する可能性がある。
【0059】
一方で、θ1>θ2であると、樹脂層傾斜部42は幅方向の外側に向かって厚さが厚くなる構造を有している。そのため上記のような製造上の公差が生じたとしても、樹脂層傾斜部42の幅方向の外側の部分において、空隙の発生が抑制される。
【0060】
また、ヒートバー60はヒートバー傾斜部62に接続されるヒートバー端部63を備えていてもよい。これにより、樹脂層端部43と外装体端部23とを熱溶着することができるとともに、樹脂層端部43よりも外側に配置されている外装体端部23同士を熱溶着することができる。
【0061】
なお、図9では、すでに集電端子30側の端部が成形された外装体20を用いたが、封止工程S3に用いることができる外装体20の端部形状はこれに限定されず、平坦な端部を有する外装体を用いてもよい。このような外装体を用いたとしても、ヒートバー60で所望の形状に成形できるためである。
【0062】
ヒートバー60の温度は特に限定されず、外装体20と樹脂層40との熱溶着温度に応じて適宜設定する。例えば、150℃以上であってもよく、200℃以下であってもよい。また、集電端子30、樹脂層40、及び外装体20を挟むときのヒートバー50の圧力は特に限定されず、外装体20と樹脂層40とが適切に熱溶着できればよい。また、外装体20を所望の形状に成形できればよい。例えば、0.1MPa以上であってもよく、1MPa以下であってもよい。ヒートバー60は、例えばシリコーンゴム製の公知のヒートバーを用いることができる。
【0063】
(電池100)
封止工程S3により電池100を製造することができる。電池100は上述の通り、空隙の発生が抑制されている。このような電池100は次の構造的特徴を備えている。
【0064】
図11に、封止工程S3により製造された電池100において、樹脂層40と外装体20とが熱溶着されている部分の分解断面図を示した。また、上側に配置される外装材20にのみ、内部の金属層2aを示した。図11に示した通り、端子平坦部31と端子傾斜部32を延長した直線とからなる角度をθ3とし、樹脂層平坦部41と樹脂層傾斜部42を延長した直線とからなる角度をθ4とした。このとき、封止工程S3の条件によって、θ3、θ4の関係が変化し得る。封止工程S3において、樹脂層40と外装体20の内面に配置されている樹脂層とが熱溶着されると、製造された電池100において、樹脂層40と外装体20の樹脂層との境界が明確でない場合が多いためである。そのため、外装体20の金属層20aの内面の角度をθ4とみなしてもよい。具体的には、図11に示した通り、外装体20の金属層20aの内面の角度であって、外装体平坦部21の金属層20aの内面と、外装体傾斜部22の金属層20aの内面を延長した直線とからなる角度をθ4とみなしてもよい。
【0065】
封止工程S3において、ヒートバー60のθyがθ1>θy>θ2を満たすとき、電池100のθ3、θ4はθ3>θ4を満たす。これは、θ1とθ2との関係と同じである。ただし、θ1とθ3はほぼ同じ値になるが、θ2とθ4とは値が全く異なる場合がある。これは、ヒートバー60を用いた熱溶着により、樹脂層40が溶融し、樹脂層平坦部41と樹脂層傾斜部42を延長した直線とからなる角度が変化し得るためである。従って、θ1とθ3はθ1≒θ3となり、θ2とθ4とはθ4≧θ2となる。樹脂層平坦部41と樹脂層傾斜部42を延長した直線とからなる角度が変化した場合、θ2とθ4とはθ4>θ2となる。そして、θ4>θ2のとき、電池100は次の構造的特徴を有する。
【0066】
図12に電池100の1つの集電端子30付近を切り取った斜視図を示した。図12に示した通り、樹脂層40は、長さ方向において、外装体20に溶着される第1領域40aと、外装体20に溶着されない第2領域40bと、を有している。第1領域40aは言い換えると、ヒートバー60により樹脂層40と外装体20とが熱溶着されている部分である。第2領域40bは、言い換えると、ヒートバー60の影響を受けず樹脂層40と外装体20とが熱溶着されていない部分である。
【0067】
続いて、図13(a)に図12のa-aで切断したときの分解断面図(第1領域40aの分解断面図)、図13(b)に図12のb-bで切断したときの分解断面図(第2領域40bの分解断面図)を示した。
【0068】
図13(a)に示した通り、樹脂層40の第1領域40aは、端子平坦部31の表面に沿って配置される第1領域平坦部41aと、第1領域平坦部41aに接続され、端子傾斜部32の表面に沿って配置される第1領域傾斜部42aと、を備えている。また、第1領域40aは第1領域傾斜部42aに接続される第1領域端部43aを備えていてもよい。また、図13(b)に示した通り、樹脂層40の第2領域40bは、端子平坦部31の表面に沿って配置される第2領域平坦部41bと、第2領域平坦部41bに接続され、端子傾斜部32の表面に沿って配置される第2領域傾斜部42bと、を備えている。また、第2領域40bは第2領域傾斜部42bに接続される第2領域端部43bを備えていてもよい。第1領域平坦部41a及び第2領域平坦部41bは樹脂層平坦部41に対応し、第1領域傾斜部42a及び第2領域傾斜部42bは樹脂層傾斜部42に対応し、第1領域端部43a及び第2領域端部43bは樹脂層端部43に対応する。
【0069】
そして、第1領域平坦部41aと第1領域傾斜部42aを延長した直線とからなる角度をθ5とし、第2領域平坦部41bと第2領域傾斜部42bを延長した直線とからなる角度をθ6としたとき、θ5、θ6がθ5>θ6を満たす。このとき、θ5はθ4に対応し、θ6はθ2に対応する。ただし、上述した通り、製造された電池100において、熱溶着により樹脂層40と外装体20の樹脂層との境界が明確でない場合が多い。そのため、外装体20の金属層20aの内面の角度をθ5とみなしてもよい。具体的には、図13(a)に示した通り、外装体20の金属層20a(上側の外装体20にのみ示した。)の内面の角度であって、第1領域平坦部41aに対応する外装体平坦部21の金属層20aの内面と、第1領域傾斜部42aに対応する外装体傾斜部22の金属層20aの内面を延長した直線とからなる角度をθ5とみなしてもよい。
【0070】
一方で、封止工程S3において、ヒートバー60のθyがθ1=θy>θ2を満たす場合、電池100のθ3、θ4はθ3=θ4となることがある。このような場合であっても、θ5、θ6はθ5>θ6を満たす。
【0071】
このように、封止工程S3により製造される電池100は樹脂層40の角度に所定の構造的特徴を有する。
【0072】
ここでθ3は、例えば30°以上であってもよく、60°以下であってもよい。θ4及びθ5は10°以上であってもよく、20°以上であってもよく、40°以下であってもよく、30°以下であってもよい。θ6は10°以上であってもよく、40°以下であってもよい。また、θ3、θ4の差は10°以上であってもよく、15°以上であってもよく、30°以下であってもよく、25°以下であってもよい。θ5、θ6の差は10°以上であってもよく、15°以上であってもよく、30°以下であってもよく、25°以下であってもよい。
【0073】
以上をまとめると、ヒートバー60のθyがθ1>θy>θ2を満たす場合、封止工程S3において、θ3、θ4がθ3>θ4を満たすように発電要素10を外装体20に封止することができる。一方で、ヒートバー60のθyがθ1=θy>θ2を満たす場合、封止工程S3において、θ5、θ6がθ5>θ6を満たすように発電要素10を外装体20に封止することができる。ただし、ヒートバー60のその他の条件を適宜設定する必要がある。
【0074】
以上、一実施形態を用いて、本開示の電池の製造方法について説明した。本開示の電池の製造方法によれば、集電端子と外装体との間に空隙を発生し難くすることができる。
【0075】
[電池中間体]
本開示は発電要素と、発電要素に電気的に接続される集電端子と、集電端子の厚さ方向の少なくとも一方の表面に沿って配置される樹脂層と、を備え、集電端子は厚さが一定の端子平坦部と、端子平坦部に接続され、幅方向の外側に向かって厚さが薄くなる端子傾斜部と、を備え、端子傾斜部は集電端子の少なくとも一方の端部に形成されており、樹脂層は端子平坦部の表面に沿って配置される樹脂層平坦部と、樹脂層平坦部に接続され、端子傾斜部の表面に沿って配置される樹脂層傾斜部と、を有し、端子平坦部と端子傾斜部を延長した直線からなる角度をθ1とし、樹脂層平坦部と樹脂層傾斜部を延長した直線とからなる角度をθ2としたとき、θ1、θ2がθ1>θ2を満たす、電池中間体を提供する。
【0076】
本開示の電池中間体は、本開示の電池の製造方法における配置工程により製造することができる。本開示の電池中間体によれば、電池中間体を外装体に封止する際に集電端子と外装体との間に空隙が発生することを抑制し、熱溶着不良を抑制することができる。
本開示の電池中間体の詳しい説明は上述したため、ここでは省略する。
【0077】
[電池]
本開示は発電要素と、発電要素を収容する外装体と、発電要素に電気的に接続され、外装体から外側に延出するように配置される集電端子と、集電端子の厚さ方向の少なくとも一方の表面に沿って配置され、集電端子と外装体との間に配置される樹脂層と、を備え、樹脂層と外装体とは熱溶着されており、集電端子は厚さが一定の端子平坦部と、端子平坦部に接続され、幅方向の外側に向かって厚さが薄くなる端子傾斜部と、を備え、端子傾斜部は集電端子の少なくとも一方の端部に形成されており、樹脂層は端子平坦部の表面に沿って配置される樹脂層平坦部と、樹脂層平坦部に接続され、端子傾斜部の表面に沿って配置される樹脂層傾斜部と、を備え、端子平坦部と端子傾斜部とから形成される角度をθ3とし、樹脂層平坦部と樹脂層傾斜部とから形成される角度をθ4としたとき、θ3、θ4はθ3>θ4を満たす、電池を提供する。
【0078】
また、本開示は発電要素と、発電要素を収容する外装体と、発電要素に電気的に接続され、外装体から外側に延出するように配置される集電端子と、集電端子の厚さ方向の少なくとも一方の表面に沿って配置され、集電端子と外装体との間に配置される樹脂層と、を備え、樹脂層は外装体に熱溶着されており、集電端子は厚さが一定の端子平坦部と、端子平坦部に接続され、幅方向の外側に向かって厚さが薄くなる端子傾斜部と、を備え、端子傾斜部は集電端子の少なくとも一方の端部に形成されており、樹脂層は、長さ方向において、外装体に溶着されている第1領域と、外装体に溶着されていない第2領域と、を有し、樹脂層の第1領域は端子平坦部の表面に沿って配置される第1領域平坦部と、第1領域平坦部に接続され、端子傾斜部の表面に沿って配置される第1領域傾斜部と、を備え、樹脂層の第2領域は端子平坦部の表面に沿って配置される第2領域平坦部と、第2領域平坦部に接続され、端子傾斜部の表面に沿って配置される第2領域傾斜部と、を備え、第1領域平坦部と第1領域傾斜部を延長した直線とからなる角度をθ5とし、第2領域平坦部と第2領域傾斜部を延長した直線とからなる角度をθ6としたとき、θ5、θ6がθ5>θ6を満たす、電池を提供する。
【0079】
本開示の電池は、本開示の電池の製造方法により製造することができる。本開示の電池によれば、集電端子と外装体との間に発生する空隙が抑制されており、熱溶着不良が抑制されている。本開示の電池の詳しい説明は上述したため、ここでは省略する。
【符号の説明】
【0080】
10 発電要素
20 外装体
20a 金属層
30 集電端子
31 端子平坦部
32 端子傾斜部
40 樹脂層
40a 第1領域
40b 第2領域
41 樹脂層平坦部
41a 第1領域平坦部
41b 第2領域平坦部
42 樹脂層傾斜部
42a 第1領域傾斜部
42b 第2領域傾斜部
43 樹脂層端部
43a 第1領域端部
43b 第2領域端部
50、60 ヒートバー
51、61 ヒートバー平坦部
52、62 ヒートバー傾斜部
53、63 ヒートバー端部
90 電池中間体
100 電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13