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特許7571761運転診断装置、運転診断方法、及び運転診断プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】運転診断装置、運転診断方法、及び運転診断プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20241016BHJP
   B60K 28/10 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G08G1/00 D
B60K28/10 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022065905
(22)【出願日】2022-04-12
(65)【公開番号】P2023156188
(43)【公開日】2023-10-24
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫛引 有輝也
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-068708(JP,A)
【文献】特開2010-182211(JP,A)
【文献】特開2016-057490(JP,A)
【文献】特開2007-207068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
B60K 28/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを有し、前記プロセッサは、
車両に搭載されたセンサから前記車両のドアにおける開閉の状態を示す状態情報を取得し、
前記状態情報が予め定められた条件を満たした場合、前記状態の変化を示すイベントと判定し、
前記イベントに係る予め定められた期間において、前記車両の運転操作の評価を行い、
操舵角を含む前記車両の操作を示す車両操作情報をさらに取得し、
前記車両操作情報から前記操舵角の加速度を示すステア角加速度を導出し、
前記ステア角加速度が第2範囲の範囲外である場合、注意すべき運転操作として評価し、
前記車両操作情報は、前記車両に係る車速をさらに含み、
前記プロセッサは、
前記車速の平均値に応じて、前記第2範囲を設定する、
運転診断装置。
【請求項2】
前記予め定められた条件は、
前記ドアが閉状態から開状態へと変化した状態であり、
前記プロセッサは、
前記予め定められた条件を満たした場合、前記イベントと判定し、
前記イベントが発生するまでの予め定められた期間を対象期間として、運転操作の評価を行う
請求項1に記載の運転診断装置。
【請求項3】
前記予め定められた条件は、
前記ドアが開状態から閉状態へと変化した状態であり、
前記プロセッサは、
前記予め定められた条件を満たした場合、前記イベントと判定し、
前記イベントが発生してから予め定められた期間を対象期間として、運転操作の評価を行う
請求項1に記載の運転診断装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記車両の加速度を含む前記車両の操作を示す車両操作情報をさらに取得し、
前記加速度が予め定められた第1範囲の範囲外である場合、注意すべき運転操作として評価する
請求項1に記載の運転診断装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記車両の加速度を含む前記車両の操作を示す車両操作情報をさらに取得し、
前記加速度が予め定められた第1範囲の範囲外である場合、かつ前記ステア角加速度が第2範囲の範囲外である場合、注意すべき運転操作として評価する
請求項に記載の運転診断装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記状態情報が開状態、かつ前記車両が走行している状態を検出した場合、前記プロセッサは、ドアが開いた状態で走行している旨を通知する
請求項1に記載の運転診断装置。
【請求項7】
車両に搭載されたセンサから前記車両のドアにおける開閉の状態を示す状態情報を取得し、
前記状態情報が予め定められた条件を満たした場合、前記状態の変化を示すイベントと判定し、
前記イベントに係る予め定められた期間において、前記車両の運転操作の評価を行い、
操舵角を含む前記車両の操作を示す車両操作情報をさらに取得し、
前記車両操作情報から前記操舵角の加速度を示すステア角加速度を導出し、
前記ステア角加速度が第2範囲の範囲外である場合、注意すべき運転操作として評価し、
前記車両操作情報は、前記車両に係る車速をさらに含み、
前記車速の平均値に応じて、前記第2範囲を設定する、
処理をコンピュータが実行する運転診断方法。
【請求項8】
車両に搭載されたセンサから前記車両のドアにおける開閉の状態を示す状態情報を取得し、
前記状態情報が予め定められた条件を満たした場合、前記状態の変化を示すイベントと判定し、
前記イベントに係る予め定められた期間において、前記車両の運転操作の評価を行い、
操舵角を含む前記車両の操作を示す車両操作情報をさらに取得し、
前記車両操作情報から前記操舵角の加速度を示すステア角加速度を導出し、
前記ステア角加速度が第2範囲の範囲外である場合、注意すべき運転操作として評価し、
前記車両操作情報は、前記車両に係る車速をさらに含み、
前記車速の平均値に応じて、前記第2範囲を設定する、
処理をコンピュータに実行させる運転診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアを開閉する際に、急な急発進、及び急停車を伴う運転を行っているか否かを診断する運転診断装置、運転診断方法、及び運転診断プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のドアが半ドアの状態である場合において、当該ドアから乗員が転落する可能性を検出した場合、車両の減速制御を行う運転制御装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-290496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、半ドアであるドアから乗員が転落する可能性を検出するに留まるため、ドアが開閉する前後の運転について評価して、安全な運転に支障をきたす注意すべき運転を検出することができるとは限らなかった。
【0005】
本発明は、ドアが開閉する前後の運転について評価して、安全な運転に支障をきたす注意すべき運転を検出することができる運転診断装置、運転診断方法、及び運転診断プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の運転診断装置は、プロセッサを有し、前記プロセッサは、車両に搭載されたセンサから前記車両のドアにおける開閉の状態を示す状態情報を取得し、前記状態情報が予め定められた条件を満たした場合、前記状態の変化を示すイベントと判定し、前記イベントに係る予め定められた期間において、前記車両の運転操作の評価を行う。
【0007】
請求項1に記載の運転診断装置は、ドアの開閉の状態を示す状態情報を取得し、当該状態情報を用いて、ドアの開扉、又は閉扉を示すイベントを検出し、ドアを開扉するまでのイベント期間、又はドアを閉扉してからのイベント期間における運転診断を行う。これにより、ドアが開閉する前後の運転について評価して、安全な運転に支障をきたす注意すべき運転を検出することができる。
【0008】
請求項2に記載の運転診断装置は、請求項1に記載の運転診断装置において、前記予め定められた条件は、前記ドアが閉状態から開状態へと変化した状態であり、前記プロセッサは、前記予め定められた条件を満たした場合、前記イベントと判定し、前記イベントが発生するまでの予め定められた期間を対象期間として、運転操作の評価を行う。
【0009】
請求項2に記載の運転診断装置によれば、ドアが開扉する前のイベントを明確に検出して評価を行うことができる。
【0010】
請求項3に記載の運転診断装置は、請求項1又は請求項2に記載の運転診断装置において、前記予め定められた条件は、前記ドアが開状態から閉状態へと変化した状態であり、前記プロセッサは、前記予め定められた条件を満たした場合、前記イベントと判定し、前記イベントが発生してから予め定められた期間を対象期間として、運転操作の評価を行う。
【0011】
請求項3に記載の運転診断装置によれば、ドアが閉扉した後のイベントを明確に検出して評価を行うことができる。
【0012】
請求項4に記載の運転診断装置は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の運転診断装置において、前記プロセッサは、前記車両の加速度を含む前記車両の操作を示す車両操作情報をさらに取得し、前記加速度が予め定められた第1範囲の範囲外である場合、注意すべき運転操作として評価する。
【0013】
請求項4に記載の運転診断装置によれば、安全な運転に支障をきたす車両操作を検出できる。
【0014】
請求項5に記載の運転診断装置は、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の運転診断装置において、前記プロセッサは、操舵角を含む前記車両の操作を示す車両操作情報をさらに取得し、前記車両操作情報から前記操舵角の加速度を示すステア角加速度を導出し、前記ステア角加速度が第2範囲の範囲外である場合、注意すべき運転操作として評価する。
【0015】
請求項5に記載の運転診断装置によれば、安全な運転に支障をきたす車両操作を検出できる。
【0016】
請求項6に記載の運転診断装置は、請求項5に記載の運転診断装置において、前記プロセッサは、前記車両の加速度を含む前記車両の操作を示す車両操作情報をさらに取得し、
前記加速度が予め定められた第1範囲の範囲外である場合、かつ前記ステア角加速度が第2範囲の範囲外である場合、注意すべき運転操作として評価する。
【0017】
請求項6に記載の運転診断装置によれば、さらに注意すべき車両操作を検出できる。
【0018】
請求項7に記載の運転診断装置は、請求項5又は請求項6に記載の運転診断装置において、前記車両操作情報は、前記車両に係る車速をさらに含み、前記プロセッサは、前記車速の平均値に応じて、前記第2範囲を設定する。
【0019】
請求項7に記載の運転診断装置によれば、車速に応じて評価が変動する場合であっても、安全な運転に支障をきたす車両操作を明確に検出できる。
【0020】
請求項8に記載の運転診断装置は、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の運転診断装置において、前記プロセッサは、前記状態情報が開状態、かつ前記車両が走行している状態を検出した場合、前記プロセッサは、ドアが開いた状態で走行している旨を通知する。
【0021】
請求項8に記載の運転診断装置によれば、安全な運転に支障をきたす車両操作を認識できる。
【0022】
請求項9に記載の運転診断方法は、車両に搭載されたセンサから前記車両のドアにおける開閉の状態を示す状態情報を取得し、前記状態情報が予め定められた条件を満たした場合、前記状態の変化を示すイベントと判定し、前記イベントに係る予め定められた期間において、前記車両の運転操作の評価を行う処理をコンピュータが実行する。
【0023】
請求項9に記載の運転診断方法は、ドアの開閉の状態を示す状態情報を取得し、当該状態情報を用いて、ドアの開扉、又は閉扉を示すイベントを検出し、ドアを開扉するまでのイベント期間、又はドアを閉扉してからのイベント期間における運転診断を行う。これにより、ドアが開閉する前後の運転について評価して、安全な運転に支障をきたす注意すべき運転を検出することができる。
【0024】
請求項10に記載の運転診断プログラムは、車両に搭載されたセンサから前記車両のドアにおける開閉の状態を示す状態情報を取得し、前記状態情報が予め定められた条件を満たした場合、前記状態の変化を示すイベントと判定し、前記イベントに係る予め定められた期間において、前記車両の運転操作の評価を行う処理をコンピュータに実行させる。
【0025】
請求項10に記載の運転診断プログラムが実行されるコンピュータは、ドアの開閉の状態を示す状態情報を取得し、当該状態情報を用いて、ドアの開扉、又は閉扉を示すイベントを検出し、ドアを開扉するまでのイベント期間、又はドアを閉扉してからのイベント期間における運転診断を行う。これにより、ドアが開閉する前後の運転について評価して、安全な運転に支障をきたす注意すべき運転を検出することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ドアが開閉する前後の運転について評価して、安全な運転に支障をきたす注意すべき運転を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る運転診断システムの概略構成を示す図である。
図2】実施形態の車両のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】実施形態の車載器の機能構成を示すブロック図である。
図4】実施形態のセンタサーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】実施形態のセンタサーバの機能構成を示すブロック図である。
図6】実施形態に係るステア角加速度の範囲の導出の説明に供する平均車速度、及びステア角加速度の範囲の関係の一例を示す図である。
図7】実施形態のセンタサーバにおいて実行される運転診断の処理の流れを示すフローチャートである。
図8】実施形態のセンタサーバにおいて実行されるドアの開扉前における評価の処理の流れを示すフローチャートである。
図9】実施形態のセンタサーバにおいて実行されるドアの閉扉後における評価の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の運転診断装置を含む運転診断システムについて説明する。運転診断システムは、車両に搭載されている車載器から取得した車両のドアの開閉状態を示す情報(以下、「状態情報」という。)を用いて、車両がドアを開扉するまでのイベント期間、又はドアを閉扉してからのイベント期間を検出するシステムである。また、運転診断システムは、車両の操作に係る情報(以下、「車両操作情報」という。)を用いて、イベント期間における車両の操作の評価を行う。
【0029】
(全体構成)
図1に示されるように、本発明の実施形態の運転診断システム10は、車両12と、運転診断装置としてのセンタサーバ30と、を含んで構成されている。また、車両12には車載器20が搭載されており、車載器20は、ネットワークNを通じて相互にセンタサーバ30に接続されている。
【0030】
なお、図1には、1のセンタサーバ30に対して、車載器20を含む1台の車両12が図示されているが、車両12、車載器20、及びセンタサーバ30の数はこの限りではない。
【0031】
車載器20は、ドアの開閉状態を示す状態情報、及び車両12の操作に関する車両操作情報を取得して、センタサーバ30に送信する装置である。ここで、本実施形態に係る状態情報、及び車両操作情報は、車両12に搭載されている各々の機器から検出された特徴量の時系列データである。例えば、本実施形態に係る状態情報は、車両から検出したカーテシ信号の時系列データであり、車両操作情報は、車両の車速、加速度、及びステアリングにおけるステア角(操舵角)等の車両12の操作に係る時系列データである。ここで、カーテシ信号とは、ドアの開閉に連動し、開閉状態を示す信号である。
【0032】
センタサーバ30は、例えば、車両12を製造する製造元や当該製造元系列のカーディーラーに設置されている。センタサーバ30は、車載器20から状態情報、及び車両操作情報を取得して、車両が開扉するまでのイベント、及び閉扉してからのイベントを検出し、イベント期間における車両操作の評価を行う。ここで、本実施形態に係るイベント期間は、例えば、10秒等の予め定められた期間である。
【0033】
(車両)
図2に示されるように、本実施形態に係る車両12は、車載器20と、複数のECU(Electronic Control Unit)22と、複数の車載機器24と、を含んで構成されている。
【0034】
車載器20は、CPU(Central Processing Unit)20A、ROM(Read Only Memory)20B、RAM(Random Access Memory)20C、車内通信I/F(Interface)20D、及び無線通信I/F20Eを含んで構成されている。CPU20A、ROM20B、RAM20C、車内通信I/F20D、及び無線通信I/F20Eは、内部バス20Gを介して相互に通信可能に接続されている。
【0035】
CPU20Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU20Aは、ROM20Bからプログラムを読み出し、RAM20Cを作業領域としてプログラムを実行する。
【0036】
ROM20Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。本実施形態のROM20Bには、ECU22から車両12の運転操作に係る車両操作情報の収集を行う収集プログラム100が記憶されている。収集プログラム100の実行に伴い、車載器20は、車両操作情報をセンタサーバ30に送信する処理を実行する。また、ROM20Bには、車両操作情報のバックアップデータである履歴情報110が記憶されている。RAM20Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
【0037】
車内通信I/F20Dは、各ECU22と接続するためのインタフェースである。当該インタフェースは、CANプロトコルによる通信規格が用いられる。車内通信I/F20Dは、外部バス20Fに対して接続されている。
【0038】
無線通信I/F20Eは、センタサーバ30と通信するための無線通信モジュールである。当該無線通信モジュールは、例えば、5G、LTE、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格が用いられる。無線通信I/F20Eは、ネットワークNに対して接続されている。
【0039】
ECU22は、ADAS(Advanced Driver Assistance System)-ECU22A、ステアリングECU22B、及びドア制御ECU22Cを少なくとも含む。
【0040】
ADAS-ECU22Aは、先進運転支援システムを統括制御する。ADAS-ECU22Aには、車載機器24を構成する車速センサ24A、ヨーレートセンサ24B、加速度センサ24C、及び外部センサ24Dが接続されている。車速センサ24Aは、車両の速度を検出するセンサであり、ヨーレートセンサ24Bは、車両の旋回における角速度を検出するセンサであり、加速度センサ24Cは、車両の進行方向の加速度を検出するセンサである。外部センサ24Dは、車両12の周辺環境の検出に用いられるセンサ群とされている。この外部センサ24Dには、例えば、車両12の周囲を撮像するカメラ、探査波を送信し反射波を受信するミリ波レーダ、及び車両12の前方をスキャンするライダ(Laser Imaging Detection and Ranging)等が含まれる。
【0041】
ステアリングECU22Bは、パワーステアリングを制御する。ステアリングECU22Bには、車載機器24を構成するステアリングセンサ24Eが接続されている。ステアリングセンサ24Eはステアリングホイールの操舵角を検出するセンサである。
【0042】
ドア制御ECU22Cは、車両12のドアの開閉を制御する。ドア制御ECU22Cは、アクチュエータ24F、及びドアカーテシ24Gが接続されている。アクチュエータ24Fは、ドア制御ECU22Cの制御に応じて、車両のドアの開閉を行う。ドアカーテシ24Gは、ドアの開閉状態を検知するセンサである。
【0043】
図3に示されるように、本実施形態の車載器20では、CPU20Aが、収集プログラム100を実行することで、収集部200、送受信部210、及び通知部220として機能する。
【0044】
収集部200は、車両12の各ECU22から車載機器24が検知した情報を取得し、状態情報、及び車両操作情報を収集する機能を有している。
【0045】
送受信部210は、収集部200が収集した状態情報、及び車両操作情報をセンタサーバ30に向けて出力する機能を有している。また、送受信部210は、センタサーバから通知を受信する機能を有している。
【0046】
通知部220は、センタサーバ30から受信した通知を図示しないモニタに表示してユーザに通知する機能を有している。
【0047】
(センタサーバ)
図4に示されるように、センタサーバ30は、CPU30A、ROM30B、RAM30C、ストレージ30D、及び通信I/F30Eを含んで構成されている。CPU30A、ROM30B、RAM30C、ストレージ30D、及び通信I/F30Eは、内部バス30Fを介して相互に通信可能に接続されている。CPU30A、ROM30B、RAM30C、及び通信I/F30Eの機能は、上述した車載器20のCPU20A、ROM20B、RAM20C及び無線通信I/F20Eと同じである。なお、通信I/F30Eは有線による通信を行ってもよい。
【0048】
メモリとしてのストレージ30Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、各種プログラム及び各種データを記憶している。本実施形態のストレージ30Dには、運転診断プログラム120、及び車両操作情報データベース(以下、「車両操作情報DB」という。)130が記憶されている。なお、ROM30Bが運転診断プログラム120、及び車両操作情報DB130を記憶してもよい。
【0049】
プログラムとしての運転診断プログラム120は、センタサーバ30を制御するためのプログラムである。運転診断プログラム120の実行に伴い、センタサーバ30は、状態情報からイベントを検出する処理、及び車両の操作を評価する処理を含む各処理を実行する。
【0050】
車両操作情報DB130には、車載器20から受信した状態情報及び車両操作情報と、車両操作情報を用いて評価した評価結果と、が記憶されている。
【0051】
図5に示されるように、本実施形態のセンタサーバ30では、CPU30Aが、運転診断プログラム120を実行することで、取得部300、判定部310、導出部320、設定部330、評価部340、記憶部350、及び通知部360として機能する。
【0052】
取得部300は、車両12の車載器20から送信された状態情報、及び車両操作情報を取得する機能を有している。ここで、本実施形態に係る取得部300は、状態情報として、カーテシ信号の時系列データを取得し、車両操作情報として、車両の車速度、加速度、及びステア角に係る時系列データを取得する。なお、本実施形態に係る加速度は、進行方向に加速する正の加速度、及び進行方向に減速する負の加速度である。また、本実施形態に係るステア角は、車両が左旋回する方向を正の方向とし、車両が右旋回する方向を負の方向とする。
【0053】
判定部310は、取得した状態情報を用いて、ドアを開閉しているか否かの判定を行い、イベントを検出する。また、判定部310は、取得した状態情報、及び車両操作情報を用いて、ドアが開扉された状態で走行しているか否かを判定する。
【0054】
例えば、判定部310は、状態情報を用いて、ドアが閉じた状態から開いた状態へと遷移したことを検出した場合、ドアが開扉されたと判断して、ドアの開扉イベントを検出する。また、判定部310は、ドアが開いた状態から閉じた状態へと遷移したことを検出した場合、ドアが閉じられたと判断して、ドアの閉扉イベントを検出する。
【0055】
また、判定部310は、状態情報が開状態であり、かつ車両操作情報に含まれる車速度が0km/hを超えている(車両が走行している)場合、ドアが開扉された状態で走行していると判定する。
【0056】
導出部320は、各々のイベントを検出した場合、車両操作情報を用いて、各々のイベント期間における車両の平均車速度、ステア角加速度、及びステア角加速度の閾値をそれぞれ導出する。例えば、導出部320は、車両操作情報に含まれる車速度を用いてイベント期間における平均車速度を導出し、車両操作情報に含まれるステア角を用いてステア角加速度を導出する。ここで、ステア角加速度は、ステア角に係る時系列データを2階微分することによって導出される。
【0057】
設定部330は、導出した平均車速度に応じて、ステア角加速度の範囲(第2範囲)を導出する。一例として図6に示すように、平均車速度が大きくなるほど、ステア角加速度の第2範囲が小さくなるようにステア角加速度の閾値の範囲が設定される。例えば、図6に示すように、設定部330は、平均車速度が0km/hを超え、かつ10km/h以下の場合、第2範囲を-300deg/sから300deg/sと設定する。また、設定部330は、平均車速度が10km/hを超え、かつ20km/h以下の場合、第2範囲を-220deg/sから220deg/sと設定し、平均車速度が20km/hを超え、かつ30km/h以下の場合、第2範囲を-150deg/sから150deg/sと設定する。
【0058】
評価部340は、イベント期間における運転操作を評価する。例えば、評価部340は、車両12の加速度が予め定められた第1範囲の範囲外である場合、注意すべき運転操作と評価する。また、評価部340は、車両操作情報に含まれるステア角から導出したステア角加速度が、導出された第2範囲の範囲外である場合、注意すべき運転操作と評価する。ここで、第1範囲は、例えば、-2.5m/sから2.5m/sの範囲である。また、ドアの開扉に係るイベント期間は、車両12にドアを開扉するまでの予め定められた期間(例えば、10秒等)でり、ドアの閉扉に係るイベント期間は、車両12にドアを閉扉してから予め定められた期間(例えば、10秒等)が経過するまでである。
【0059】
記憶部350は、状態情報、車両操作情報、及び評価部340が評価した評価結果を車両操作情報DB130に記憶する。
【0060】
通知部360は、判定部310によってドアが開扉された状態で走行していると判定された場合、車載器20にドアが開扉された状態で走行している旨の通知を送信する。
【0061】
(制御の流れ)
本実施形態の運転診断システム10で実行される各処理の流れについて、図7から図9のフローチャートを用いて説明する。センタサーバ30における各処理は、センタサーバ30のCPU30Aが、取得部300、判定部310、導出部320、設定部330、評価部340、記憶部350、及び通知部360として機能することにより実行される。図7に示すイベントを検出する処理は、例えば、イベントを検出する指示が入力された場合、実行される。
【0062】
ステップS100において、CPU30Aは、状態情報、及び車両操作情報を取得する。ここで、CPU30Aは、状態情報として、カーテシ信号を取得し、車両操作情報として、車両12の車速度、加速度、及びステア角を取得する。
【0063】
ステップS101において、CPU30Aは、状態情報を用いて、カーテシ信号が切り替わったか否かを判定する。カーテシ信号が切り替わった場合(ステップS101:YES)、CPU30Aは、ステップS102に移行する。一方、カーテシ信号が切り替わっていない場合(ステップS101:NO)、CPU30Aは、ステップS105に移行する。
【0064】
ステップS102において、CPU30Aは、状態情報を用いて、カーテシ信号が閉状態から開状態に切り替わったか否かを判定する。カーテシ信号が閉状態から開状態に切り替わった場合(ステップS102:YES)、CPU30Aは、ステップS103に移行する。一方、カーテシ信号が閉状態から開状態に切り替わっていない(カーテシ信号が開状態から閉状態に切り替わった)場合(ステップS102:NO)、CPU30Aは、ステップS104に移行する。
【0065】
ステップS103において、CPU30Aは、ドアの開扉イベントを検出し、開扉前における評価処理を行う。なお、開扉前における評価処理は、後述する図8において詳細に説明する。
【0066】
ステップS104において、CPU30Aは、ドアの閉扉イベントを検出し、閉扉後における評価処理を行う。なお、閉扉後における評価処理は、後述する図9において詳細に説明する。
【0067】
ステップS105において、CPU30Aは、状態情報を用いて、カーテシ信号が開状態か否かを判定する。カーテシ信号が開状態である場合(ステップS105:YES)、CPU30Aは、ステップS106に移行する。一方、カーテシ信号が開状態ではない(カーテシ信号が閉状態である)場合(ステップS105:NO)、CPU30Aは、ステップS108に移行する。
【0068】
ステップS106において、CPU30Aは、車両が走行しているか否かを判定する。車両が走行している(車速度が0km/hを超えている)場合(ステップS106:YES)、CPU30Aは、ステップS107に移行する。一方、車両が走行していない(車速度が0km/hである)場合(ステップS106:NO)、CPU30Aは、ステップS108に移行する。
【0069】
ステップS107において、CPU30Aは、ドアが開状態で走行している旨の通知を車載器20に送信する。
【0070】
ステップS108において、CPU30Aは、状態情報、及び車両操作情報を車両操作情報DB130に記憶する。なお、CPU30Aは、各々の評価処理を行った場合、状態情報、及び車両操作情報と共に評価結果を関連付けて記憶する。
【0071】
ステップS109において、CPU30Aは、イベントを検出する処理を終了するか否かの判定を行う。イベントを検出する処理を終了する場合(ステップS109:YES)、CPU30Aは、イベントを検出する処理を終了する。一方、イベントを検出する処理を終了しない場合(ステップS109:NO)、CPU30Aは、ステップS100に移行して、状態情報、及び車両操作情報を取得する。
【0072】
次に、本実施形態の運転診断システム10で実行される開扉前における車両操作を評価する処理について、図8のフローチャートを用いて説明する。図8に示す評価処理は、例えば、開扉前における車両操作を評価する処理を実行する指示が入力された場合、実行される。
【0073】
ステップS200において、CPU30Aは、車両操作情報として、イベント期間における車両の加速度、及びステア角を取得する。ここで、ドアの開扉前における評価処理のイベント期間は、車両12にドアを開扉するまでの予め定められた期間である。
【0074】
ステップS201において、CPU30Aは、取得した車両操作情報を用いて、平均車速度、ステア角加速度、及びステア角加速度の範囲(第2範囲)を導出する。
【0075】
ステップS202において、CPU30Aは、車両の加速度が第1範囲の範囲外であるか否かの判定を行う。車両の加速度が第1範囲の範囲外である場合(ステップS202:YES)、ステップS203に移行する。一方、車両の加速度が第1範囲の範囲外ではない(車両の加速度が第1範囲の範囲内である)場合(ステップS202:NO)、CPU30Aは、ステップS204に移行する。
【0076】
ステップS203において、CPU30Aは、取得した車両操作情報に対して、注意すべき車両操作と評価する。
【0077】
ステップS204において、CPU30Aは、ステア角加速度が第2範囲の範囲外であるか否かの判定を行う。ステア角加速度が第2範囲の範囲外である場合(ステップS204:YES)、ステップS203に移行する。一方、車両の加速度が第2範囲の範囲外ではない(ステア角加速度が第2範囲の範囲内である)場合(ステップS204:NO)、CPU30Aは、開扉前における評価処理を終了する。
【0078】
なお、本実施形態では、加速度が第1範囲の範囲外である場合、又はステア角加速度が第2範囲の範囲外である場合、注意すべき車両操作と評価する形態について説明した。しかし、これに限定されない。加速度が第1範囲の範囲外である場合、かつステア角加速度が第2範囲の範囲外である場合、注意すべき車両操作と評価してもよい。
【0079】
次に、本実施形態の運転診断システム10で実行される閉扉後における車両操作を評価する処理について、図9のフローチャートを用いて説明する。図9に示す評価処理は、例えば、閉扉後における車両操作を評価する処理を実行する指示が入力された場合、実行される。
【0080】
ステップS300において、CPU30Aは、車両操作情報として、イベント期間における車両の加速度、及びステア角を取得する。ここで、閉扉後における評価処理のイベント期間は、車両12にドアを閉扉してから予め定められた期間が経過するまでである。
【0081】
ステップS301において、CPU30Aは、取得した車両操作情報を用いて、平均車速度、ステア角加速度、及びステア角加速度の範囲(第2範囲)を導出する。
【0082】
ステップS302において、CPU30Aは、車両の加速度が第1範囲の範囲外であるか否かの判定を行う。車両の加速度が第1範囲の範囲外である場合(ステップS302:YES)、ステップS303に移行する。一方、車両の加速度が第1範囲の範囲外ではない(車両の加速度が第1範囲の範囲内である)場合(ステップS302:NO)、CPU30Aは、ステップS304に移行する。
【0083】
ステップS303において、CPU30Aは、取得した車両操作情報に対して、注意すべき車両操作と評価する。
【0084】
ステップS304において、CPU30Aは、ステア角加速度が第2範囲の範囲外であるか否かの判定を行う。ステア角加速度が第2範囲の範囲外である場合(ステップS304:YES)、ステップS303に移行する。一方、車両の加速度が第2範囲の範囲外ではない(ステア角加速度が第2範囲の範囲内である)場合(ステップS304:NO)、CPU30Aは、ステップS305に移行する。
【0085】
ステップS305において、CPU30Aは、イベント期間が経過したか否かの判定を行う。イベント期間が経過した場合(ステップS305:YES)、閉扉後における評価処理を終了する。一方、イベント期間が経過していない(イベント期間内である)場合(ステップS305:NO)、CPU30Aは、ステップS300に移行して、車両操作情報を取得する。
【0086】
以上、本実施形態によれば、ドアが開閉する前後の運転について評価して、安全な運転に支障をきたす注意すべき運転を検出することができる。
【0087】
(まとめ)
本実施形態の運転診断装置としてのセンタサーバ30は、ドアの開閉の状態示す状態情報を取得し、当該状態情報を用いて、ドアの開扉、又は閉扉を示すイベントを検出し、ドアを開扉するまでのイベント期間、又はドアを閉扉してからのイベント期間における運転診断を行う。これにより、ドアが開閉する前後の運転について評価して、安全な運転に支障をきたす注意すべき運転を検出することができる。
【0088】
[備考]
なお、本実施形態では、センタサーバ30が運転診断装置を搭載している形態について説明した。しかし、これに限定されない。車両12に搭載されている車載器20が運転診断装置であってもよい。例えば、車載器20が、車載機器24から取得した状態情報、及び車両操作情報を用いて、イベントの検出、及び車両操作の評価を行い、評価結果をセンタサーバ30等に送信してもよい。
【0089】
また、本実施形態では、第1範囲、及び第2範囲は、予め定められている形態について説明した。しかし、これに限定されない。第1範囲、及び第2範囲は、ユーザによって設定されてもよいし、ユーザから変更を受け付けてもよい。
【0090】
また、本実施形態では、車載器20が、ECU22を介して、センサ等の車載機器24から車両操作情報を収集する形態について説明した。しかし、これに限定されない。車載機器24が車載器20に接続されて、車載器20が車載機器24から車両操作情報を収集してもよい。
【0091】
また、本実施形態では、評価処理によって評価された評価結果を車両操作情報と共に車両操作情報DB130に記憶する形態について説明した。しかし、これに限定されない。評価結果に応じて、車両を運転している運転者に通知を行ってもよい。例えば、センタサーバ30は、注意すべき運転操作を検出した場合、注意すべき運転操作であった旨の通知を車載器20に送信し、車載器20に接続されている図示しないモニタに通知を表示させてもよい。
【0092】
なお、上記実施形態でCPU20A、及びCPU30Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上述した各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0093】
また、上記実施形態において、各プログラムはコンピュータが読み取り可能な非一時的記録媒体に予め記憶(インストール)されている態様で説明した。例えば、車載器20における収集プログラム100はROM20Bに予め記憶され、センタサーバ30における運転診断プログラム120はストレージ30Dに予め記憶されている。しかしこれに限らず、各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0094】
上記実施形態で説明した処理の流れは、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0095】
12 車両
20 車載器
30 センタサーバ(運転診断装置)
30A CPU(プロセッサ)
120 運転診断プログラム
300 取得部
310 判定部
340 評価部
360 通知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9