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特許7571764ロボットの動作データ生成システム、ロボットの動作データ生成方法、及びロボットの動作データ生成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ロボットの動作データ生成システム、ロボットの動作データ生成方法、及びロボットの動作データ生成プログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20241016BHJP
   B25J 5/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B25J9/22 Z
B25J5/00 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022081584
(22)【出願日】2022-05-18
(65)【公開番号】P2023170104
(43)【公開日】2023-12-01
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山本 一哉
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-036761(JP,A)
【文献】特開2015-134397(JP,A)
【文献】特開2019-042848(JP,A)
【文献】特開2012-223864(JP,A)
【文献】三浦郁奈子,「モーションキャプチャデータに基づくヒューマノイドHRP-4Cのターン動作」,ロボティクス・メカトロニクス講演会 ’09 講演論文集,社団法人日本機械学会
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも腰及び脚を備えるロボットの動作データ生成システムであって、
被験者の離脚する脚の動作からキャプチャされたキャプチャ脚動作データ及び腰の動作からキャプチャされたキャプチャ腰動作データを取得する被験者動作データ取得部と、
前記キャプチャ脚動作データを平滑化してピーク検出を行い、少なくとも離脚開始点、ピーク位置及び離脚終了点を代表点として抽出する代表点抽出部と、
前記代表点における前記キャプチャ脚動作データ及び前記キャプチャ腰動作データを前記ロボットのスケールに変換するスケール変換部と、
前記ロボットのスケールに変換された前記キャプチャ脚動作データ及び前記キャプチャ腰動作データに基づいて、前記代表点における前記ロボットの目標ZMP(ゼロモーメントポイント)を設定し、前記代表点に、予備動作として離脚開始点後の前記脚及び前記腰の姿勢を、前記目標ZMPを満たすように生成して追加し、予備動作として離脚終了点前の前記脚及び前記腰の姿勢を、前記目標ZMPを満たすように生成して追加するZMP設定部と、
前記代表点の間の、前記ロボットの制御周期に応じたステップ毎の前記ロボットの前記脚及び前記腰の姿勢を補間により生成する補間生成部と、
前記ステップ毎の前記ロボットの前記脚及び前記腰の姿勢が前記目標ZMPを満たすように修正し、時系列データを生成することで動作データを生成する動作データ生成部と、を備えるロボットの動作データ生成システム。
【請求項2】
前記ロボットは、上半身を備え、
前記被験者動作データ取得部は、前記被験者の上半身の動作からキャプチャされたキャプチャ上半身動作データを取得し、
前記スケール変換部は、前記代表点における前記被験者の前記キャプチャ上半身動作データを前記ロボットのスケールに変換し、
前記補間生成部は、前記代表点の間の前記ステップ毎の前記ロボットの前記上半身の姿勢を補間により生成し、
前記動作データ生成部は、前記ステップ毎の前記ロボットの前記上半身、前記脚及び前記腰の姿勢が前記目標ZMPを満たすように修正された動作データを生成する、請求項1に記載のロボットの動作データ生成システム。
【請求項3】
少なくとも腰及び脚を備えるロボットの動作データ生成方法であって、
被験者の離脚する脚の動作からキャプチャされたキャプチャ脚動作データ及び腰の動作からキャプチャされたキャプチャ腰動作データを取得するステップと、
前記キャプチャ脚動作データを平滑化してピーク検出を行い、少なくとも離脚開始点、ピーク位置及び離脚終了点を代表点として抽出するステップと、
前記代表点における前記キャプチャ脚動作データ及び前記キャプチャ腰動作データを前記ロボットのスケールに変換するステップと、
前記ロボットのスケールに変換された前記キャプチャ脚動作データ及び前記キャプチャ腰動作データに基づいて、前記代表点における前記ロボットの目標ZMP(ゼロモーメントポイント)を設定し、前記代表点に、予備動作として離脚開始点後の前記脚及び前記腰の姿勢を、前記目標ZMPを満たすように生成して追加し、予備動作として離脚終了点前の前記脚及び前記腰の姿勢を、前記目標ZMPを満たすように生成して追加するステップと、
前記代表点の間の、前記ロボットの制御周期に応じたステップ毎の前記ロボットの前記脚及び前記腰の姿勢を補間により生成するステップと、
前記ステップ毎の前記ロボットの前記脚及び前記腰の姿勢が前記目標ZMPを満たすように修正し、時系列データを生成することで動作データを生成するステップと、を備えるロボットの動作データ生成方法。
【請求項4】
少なくとも腰及び脚を備えるロボットの動作データ生成プログラムであって、
被験者の離脚する脚の動作からキャプチャされたキャプチャ脚動作データ及び腰の動作からキャプチャされたキャプチャ腰動作データを取得するステップと、
前記キャプチャ脚動作データを平滑化してピーク検出を行い、少なくとも離脚開始点、ピーク位置及び離脚終了点を代表点として抽出するステップと、
前記代表点における前記キャプチャ脚動作データ及び前記キャプチャ腰動作データを前記ロボットのスケールに変換するステップと、
前記ロボットのスケールに変換された前記キャプチャ脚動作データ及び前記キャプチャ腰動作データに基づいて、前記代表点における前記ロボットの目標ZMP(ゼロモーメントポイント)を設定し、前記代表点に、予備動作として離脚開始点後の前記脚及び前記腰の姿勢を、前記目標ZMPを満たすように生成して追加し、予備動作として離脚終了点前の前記脚及び前記腰の姿勢を、前記目標ZMPを満たすように生成して追加するステップと、
前記代表点の間の、前記ロボットの制御周期に応じたステップ毎の前記ロボットの前記脚及び前記腰の姿勢を補間により生成するステップと、
前記ステップ毎の前記ロボットの前記脚及び前記腰の姿勢が前記目標ZMPを満たすように修正し、時系列データを生成することで動作データを作成するステップと、を演算装置として動作するコンピュータに実行させるロボットの動作データ生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロボットの動作データ生成システム、ロボットの動作データ生成方法、及びロボットの動作データ生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
2足歩行ロボットは、安定な歩行制御を行うように開発されてきた。特許文献1では、外力に対して受動的に歩行が生成されるように脚の運動を拘束する歩行制御装置が開示されている。歩行制御装置は、股関節部と遊脚の重心とを結ぶ直線が鉛直面となす角度およびその角速度が、支持脚のそれと鏡像関係になるように各関節を駆動している。さらに、歩行制御装置は、目標とする歩行速度に応じて適応的に上体の姿勢を傾斜させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-116672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、計算で求めて実行されたロボットの歩容は、人の自然な歩容と異なっていた。そこで本開示の目的は、ロボットが人の歩容をまねるまたはダンスなどの遊脚表現の再現ためのロボットの動作データ生成システム、ロボットの動作データ生成方法及びロボットの動作データ生成プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のロボットの動作データ生成システムは、
少なくとも腰及び脚を備えるロボットの動作データ生成システムであって、
被験者の離脚する脚の動作からキャプチャされたキャプチャ脚動作データ及び腰の動作からキャプチャされたキャプチャ腰動作データを取得する被験者動作データ取得部と、
前記キャプチャ脚動作データを平滑化してピーク検出を行い、少なくとも離脚開始点、ピーク位置及び離脚終了点を代表点として抽出する代表点抽出部と、
前記代表点における前記キャプチャ脚動作データ及び前記キャプチャ腰動作データを前記ロボットのスケールに変換するスケール変換部と、
前記代表点における前記ロボットの目標ZMP(ゼロモーメントポイント)を設定するZMP設定部と、
前記代表点の間の、前記ロボットの制御周期に応じたステップ毎の前記ロボットの前記脚及び前記腰の姿勢を補間により生成する補間生成部と、
前記ステップ毎の前記ロボットの前記脚及び前記腰の姿勢が前記目標ZMPを満たすように修正された動作データを生成する動作データ生成部と、を備えるロボットの動作データ生成システムである。
【0006】
このような構成によれば、人の歩容をまねたロボットの動作データを生成するシステムを提供できる。また、ダンスなどの片足上げの動きなど遊脚表現の再現ができるロボットの動作データを生成するシステムを提供できる。
【0007】
また、本開示のロボットの動作データ生成システムは、
前記補間生成部の前記代表点に、予備動作として離脚開始点後の前記脚及び前記腰の姿勢を、前記目標ZMPを満たすように生成して追加し、予備動作として離脚終了点前の前記脚及び前記腰の姿勢を、前記目標ZMPを満たすように生成して追加することを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、安定したロボットの歩容を得ることができる。
【0009】
また、本開示の動作データ生成システムは、
前記ロボットは、上半身を備え、
前記被験者動作データ取得部は、前記被験者の上半身の動作からキャプチャされたキャプチャ上半身動作データを取得し、
前記スケール変換部は、前記代表点における前記被験者の前記キャプチャ上半身動作データを前記ロボットのスケールに変換し、
前記補間生成部は、前記代表点の間の前記ステップ毎の前記ロボットの前記上半身の姿勢を補間により生成し、
前記動作データ生成部は、前記ステップ毎の前記ロボットの前記上半身、前記脚及び前記腰の姿勢が前記目標ZMPを満たすように修正された動作データを生成することを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、ロボットは、上半身を含めた全身の人の歩容をまねることができる。また、ロボットは、上半身を含めた全身のダンスなどの片足上げの動きなど遊脚表現の再現ができる。
【0011】
本開示のロボットの動作データ生成方法は、
少なくとも腰及び脚を備えるロボットの動作データ生成方法であって、
被験者の離脚する脚の動作からキャプチャされたキャプチャ脚動作データ及び腰の動作からキャプチャされたキャプチャ腰動作データを取得するステップと、
前記キャプチャ脚動作データを平滑化してピーク検出を行い、少なくとも離脚開始点、ピーク位置及び離脚終了点を代表点として抽出するステップと、
前記代表点における前記キャプチャ脚動作データ及び前記キャプチャ腰動作データを前記ロボットのスケールに変換するステップと、
前記代表点における前記ロボットの目標ZMP(ゼロモーメントポイント)を設定するステップと、
前記代表点の間の、前記ロボットの制御周期に応じたステップ毎の前記ロボットの前記脚及び前記腰の姿勢を補間により生成するステップと、
前記ステップ毎の前記ロボットの前記脚及び前記腰の姿勢が前記目標ZMPを満たすように修正された動作データを生成するステップと、を備えるロボットの動作データ生成方法である。
【0012】
このような構成によれば、人の歩容をまねたロボットの動作データを生成できる。また、ダンスなどの片足上げの動きなど遊脚表現の再現ができるロボットの動作データを生成できる。
【0013】
本開示のロボットの動作データ生成プログラムは、
少なくとも腰及び脚を備えるロボットの動作データ生成プログラムであって、
被験者の離脚する脚の動作からキャプチャされたキャプチャ脚動作データ及び腰の動作からキャプチャされたキャプチャ腰動作データを取得するステップと、
前記キャプチャ脚動作データを平滑化してピーク検出を行い、少なくとも離脚開始点、ピーク位置及び離脚終了点を代表点として抽出するステップと、
前記代表点における前記キャプチャ脚動作データ及び前記キャプチャ腰動作データを前記ロボットのスケールに変換するステップと、
前記代表点における前記ロボットの目標ZMP(ゼロモーメントポイント)を設定するステップと、
前記代表点の間の、前記ロボットの制御周期に応じたステップ毎の前記ロボットの前記脚及び前記腰の姿勢を補間により生成するステップと、
前記ステップ毎の前記ロボットの前記脚及び前記腰の姿勢が前記目標ZMPを満たすように修正された動作データを作成するステップと、を演算装置として動作するコンピュータに実行させるロボットの動作データ生成プログラムである。
【0014】
このような構成によれば、人の歩容をまねたロボットの動作データを生成するプログラムを提供できる。また、ダンスなどの片足上げの動きなど遊脚表現の再現ができるロボットの動作データを生成するプログラムを提供できる。
【発明の効果】
【0015】
本開示により、ロボットが人の歩容をまねるためのロボットの動作データ生成システムを提供できる。また、本開示により、ダンスなどの片足上げの動きなど遊脚表現の再現ができるロボットの動作データ生成システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態にかかるロボットの動作データ生成システムによって制御されるロボットの一構成例を示す模式図である。
図2】実施の形態にかかるロボットの動作データ生成システムの概略的なシステム構成を示す図である。
図3】実施の形態にかかるロボットの動作データ生成システムの演算装置の概略的なシステム構成を示すブロック図である。
図4】実施の形態にかかる人からロボットへのスケール変換を示す図である。
図5】実施の形態にかかるロボットの動作データ生成システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図6】実施の形態にかかるロボットの動作データ生成システムの遊脚データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施の形態に限定するものではない。また、実施の形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0018】
(実施の形態にかかるロボットの構成の説明)
図1は、実施の形態にかかるロボットの動作データ生成システムによって制御されるロボットの一構成例を示す模式図である。図1を参照しながら、実施の形態にかかるロボットの構成を説明する。
【0019】
図1に示すように、ロボット100は、下半身103と、腰102と、上半身101とを備える。
【0020】
実施の形態にかかる下半身103は、人と同じように2本の脚を備える。下半身103は、人の上腿104、下腿105、足106に相当する構成を備える。下半身103は、腰102と上半身101とを支持する。腰102と上腿104は3軸モータで連結され、上腿104と下腿105は1軸モータで連結され、下腿105と足106は2軸モータで連結される。すなわち下半身103である脚は多軸モータで駆動される。
【0021】
腰102は、下半身103と上半身101を連結する。腰102は、例えば、姿勢を変化する動作を行う。当該姿勢は、関節の三次元位置、及び回転を含む。
【0022】
上半身101は、人の頭、首、胴体、腕、手、及び指の少なくとも1つに相当する構成を備えてもよいが、上半身101はなくてもよい。本実施の形態にかかる上半身101は、人の頭、首、胴体、腕、及び手にそれぞれ相当する構成を備える。
【0023】
(実施の形態にかかるロボットの動作データ生成システムの説明)
図2は、実施の形態にかかるロボットの動作データ生成システムの概略的なシステム構成を示す図である。図3は、実施の形態にかかるロボットの動作データ生成システムの演算装置の概略的なシステム構成を示すブロック図である。図2及び3を参照しながら、実施の形態にかかるロボットの動作データ生成システムの説明をする。
【0024】
本実施の形態にかかる動作データ生成システム10は、モーションキャプチャ装置1と、演算装置2とを備える。モーションキャプチャ装置1は、被験者の動作からその動作データを取得する。演算装置2は、モーションキャプチャ装置1により取得された動作データに基づいて、二足歩行ロボットなどの人型ロボット(ヒューマノイドロボット)の動作データを生成する。動作データ生成システム10は、被験者の動作により近い、自然な人型ロボットの動作データを生成することができる。
【0025】
モーションキャプチャ装置1は、被験者の下半身及び腰の各関節位置を取得する装置であればよい。モーションキャプチャ装置1は、さらに被験者の下半身及び腰の各関節の角度を取得してもよい。モーションキャプチャ装置1は、トラッカ、センサ、カメラ画像等を用いてもよい。本実施の形態にかかるモーションキャプチャ装置1は、複数のマーカ11と、トラッカ12と、複数の足裏接触センサ13と、処理部14と、を有する。トラッカ12は、各マーカ11の位置を検出する。処理部14は、トラッカ12で検出された各マーカ11の動作及び足裏接触センサ13の出力信号(床反力情報など)を処理する。
【0026】
各マーカ11は、被験者H1の動作を測定(キャプチャ)する着目部位にそれぞれ取り付けられる(図4参照)。当該着目部位は、被験者H1の下半身及び腰を少なくとも含み、例えば、腰、上腿、下腿、足等である。トラッカ12は、所定の周期で各マーカ11の位置を検出する。トラッカ12で検出された各マーカ11の位置は、処理部14に入力される。このようにして、被験者の着目部位の動作データが取得される。処理部14は、検出されたマーカ11の位置データに対して所定処理を行う。処理部14は、演算装置2に対して、その処理した動作データ(モーションキャプチャデータ)を出力する。
【0027】
演算装置2は、被験者の動作データに基づいてその被験者の動作により近い自然な人型ロボットの動作データを生成する。演算装置2は、CPU(Central Processing Unit)2aと、ROM(Read Only Memory)2bと、RAM(Random Access Memory)2cと、を有するマイクロコンピュータを中心にして、ハードウェア構成されている。CPU2aは、例えば演算処理等を行う。ROM2bはCPU2aによって実行される演算プログラム等を記憶する。RAM2cは、処理データ等を一時的に記憶する。また、これらのCPU2a、ROM2b、及びRAM2cは、データバス2dによって相互に接続されている。
【0028】
図3に示すように、本実施の形態にかかる演算装置2は、被験者動作データ取得部21と、代表点抽出部22と、スケール変換部23と、ZMP設定部24と、補間生成部25と、動作データ生成部26とを備える。
【0029】
被験者動作データ取得部21は、モーションキャプチャ装置1から被験者の動作データである人の腰姿勢、脚の関節角、足先姿勢を取得する。ここでいう姿勢は、各関節の3次元位置及び回転である。被験者動作データ取得部21は、被験者の動作データを時系列データとして記録する。この取得した動作データは、被験者H1の脚の動作からキャプチャされたキャプチャ脚動作データと、腰の動作からキャプチャされたキャプチャ腰動作データとを含む。また、モーションキャプチャ装置1又は演算装置2は、このとき脚が接地しているか否かの判定を行う。判定はモーションキャプチャのデータから解析してもいいが、足裏接触センサ13で測定するとより正確になる。
【0030】
被験者動作データ取得部21は、上半身の動作をキャプチャしたキャプチャ上半身動作データを取得してもよい。キャプチャ上半身動作データを取得することで、ロボットが人の全身の歩容をまねること及びロボットのダンスなどの全身の遊脚表現の再現ができる。ロボット100に上半身がない場合、キャプチャ上半身動作データは取得されなくてもよい。
【0031】
演算装置2は、被験者動作データ取得部21のデータより、1本の脚が非接地の区間、すなわち離脚を判別する。代表点抽出部22は、1本の脚が非接地の時間における脚の3次元位置を平滑化し、ピーク検出を行う。さらに、代表点抽出部22は検出されたピーク位置を代表点として抽出する。このピーク検出は、例えば足先の3次元座標のx方向の位置、y方向の位置、z方向の位置に対してそれぞれ個別に行う。場合によっては例えば足先のロール軸の角度r、ピッチ軸の角度p、ヨー軸の角度yに対してもそれぞれ個別に行う。代表点抽出部22は、検出された代表点全てを足し合わせた上で、時間幅が一定以下の間隔で複数存在する代表点に対して、間引きを行う。この間引きは、近接する代表点の存在する時間を平均し、その解が代表点となるように結合することによって行われる。ピーク検出は、検出閾値を調整できる。ピーク検出は、感度が高い方がより人の特徴を再現できる。代表点抽出部22は、離脚開始点、離脚終了点も代表点として抽出する。
【0032】
スケール変換部23は、スケーリング手段の一具体例である。スケール変換部23は、被験者の動作データを、実際に動作させる人型ロボットに適応させるために、モーションキャプチャ装置1からの動作データに対して、周知のリターゲッティング処理を行う。モーションキャプチャ装置1により取得された動作データは、被験者の各部位の長さに基づいた動作となっている。よって、着目部位の情報(例えば、動作データとして利用したい下半身及び腰の位置姿勢及び任意の関節の角度など)を、その状態のまま人型ロボットに適用することができないために、スケール変換部23が、このリターゲッティング処理を行う。
【0033】
スケール変換部23は、例えば、適用する人型ロボットの各リンク長と、被験者の対応する部位の長さと、の比から人型ロボットの各リンクの倍率をそれぞれ決定して、リターゲッティング処理を行う。
【0034】
図4を用いて被験者H1に取り付けられた各マーカ11の位置(着目部位の位置)をリターゲッティング処理する例について説明する。図4では、人よりも小型のロボット100aについて、リターゲティング処理したマーカをマーカ11aとして示す。人よりも大型のロボット100bについて、リターゲティング処理したマーカをマーカ11bとして示す。ロボット100aの動作データにおける各マーカ11aは互いに接近する。ロボット100bの動作データにおける各マーカ11bは、ロボット100aの動作データにおけるそれと比較して、相互に離隔する。
【0035】
スケーリングで、脚及び腰の位置がロボット100の可動域不足や体格比の違いなどによりロボット100に達成不可能な場合は、スケール変換部23は、近傍で達成可能な範囲に足先や腰の位置を修正する。また、ロボット100に上半身がある場合は、スケール変換部23は、キャプチャ上半身動作データもスケール変換する。
【0036】
ZMP設定部24は、代表点におけるロボット100の目標ZMP(ゼロモーメントポイント)を設定する。ZMP(ゼロモーメントポイント)とは、ロボット100の運動によって発生する慣性力と、ロボット100に作用する重力との合力が床面と交わる点である。目標ZMPは、基本的に立脚を中心に設定するが、ロボット100に応じて補正してもよい。
【0037】
ZMP設定部24は、離脚開始点において、安定して離脚できるように、離脚開始点後又は離脚直後の予備動作を作成し、代表点として追加してもよい。ZMP設定部24は、離脚開始点後、離脚直後の足の位置を予備動作として生成する。また、ZMP設定部24は、目標ZMPを補正することで、予備動作を生成する。例えば、ZMP設定部24は、離脚する脚を少し真上に上げる動作を追加する。同様に、ZMP設定部24は、離脚終了点において、安定して接地できるように、離脚終了点前、接地直前に予備動作を作成し、代表点を追加してもよい。例えば、離脚している脚を接地する面の真上に足を移動してから降ろす動作を追加する。このようにすることで、安定したロボットの歩容及び遊脚表現を得ることができる。
【0038】
補間生成部25は、全ての代表点の間における、ロボット100の制御周期に応じたステップ毎の脚及び腰の姿勢を補間により生成する。補間生成部25は、立脚の所定位置に目標ZMPを置く。補間は複数の周知の方法で可能であるが、足先、腰姿勢及び各関節角が位置連続及び速度連続になるように設定する。また、ロボット100に上半身がある場合は、補間生成部25は、ステップ毎の上半身の姿勢を補間により生成する。
【0039】
動作データ生成部26は、各ステップの脚及び腰の姿勢が目標ZMPを満たすように姿勢を修正し、時系列データを生成する。時系列データは、ロボット100が転倒しないような動作データに変換されている。ロボット100に上半身がある場合は、動作データ生成部26は、各ステップの上半身、腰及び脚の全身姿勢が目標ZMPを満たすように姿勢を修正し、時系列データを生成する。
【0040】
なお、演算装置2は、適宜、データ補正部、第1逆運動学演算部、目標重心軌道算出部、及び第2逆運動学演算部の少なくとも1つをさらに備えてもよい。当該データ補正部は、スケール変換部23によりリターゲッティング処理された動作データに対して、足先の接地状態などの補正処理を行う。第1逆運動学演算部は、上記リターゲッティング処理及び補正処理された動作データに基づいて、人型ロボットの全身における逆運動学演算を行い人型ロボットの各関節角度列(各関節角度の時系列データ)を算出する。また、第1逆運動学演算部は、その算出した各関節角度列に基づいて、動的安定化前の人型ロボットのZMP軌道、重心軌道、重心の角運動量軌道などを算出する。目標重心軌道算出部は、目標重心軌道算出手段の一具体例であり、第1逆運動演算部により算出されたZMP軌道と、ZMP設定部により算出された目標ZMP軌道と、に基づいて、目標重心軌道を算出する。第2逆運動学演算部は、第2逆運動学演算手段の一具体例であり、目標重心軌道算出部により算出された目標重心軌道に基づいて、人型ロボットの全身における逆運動学演算を行い、人型ロボットの各関節角度列を算出する。この算出した人型ロボットの各関節角度列を動作データの一部として利用することができる。
【0041】
このようなロボットの動作データ生成システムで得られた動作データにより、ロボットは人の歩容をまねることができる。また、このようなロボットの動作データ生成システムで得られた動作データにより、ロボットはダンスなどの片足上げの動きなど遊脚表現の再現ができる。
【0042】
(実施の形態にかかるロボットの動作データ生成方法の説明)
図5は、実施の形態にかかるロボットの動作データ生成システムの動作の一例を示すフローチャートである。図6は、実施の形態にかかるロボットの動作データ生成システムの遊脚データの一例を示す図である。図5及び6を参照しながら、実施の形態にかかるロボットの動作データ生成方法の説明を行う。
【0043】
ここから、遊脚の高さ(z軸)のデータについて参照する。まず図5に示すように、被験者動作データ取得部21が、被験者データを取得するステップ(S101)を行う。図6に示すように1.遊脚キャプチャのデータが取得される。この遊脚キャプチャのデータは、水平に対して凹凸が激しく、そのままロボットに適用すると動きが安定しないので、演算装置2が、平滑化及びピーク検出を行う。平滑化後の遊脚キャプチャデータのピーク検出を行うと、図6に示す2.遊脚キャプチャデータの平滑化及びピーク検出のデータが得られる。次に、代表点抽出部22が、図5に示す代表点を抽出するステップ(S102)を行う。代表点を抽出すると、図6に示す3.代表点の抽出のデータが得られる。その後、スケール変換部23が、図5に示す人からロボットへスケールを変換するステップ(S103)を行う。ZMP設定部24が、目標ZMPを設定するステップ(S104)を行う。また、ここで、演算装置2が、離脚開始及び離脚終了のための予備動作の代表点を追加してもよい。補間生成部25が補間により姿勢を生成するステップ(S105)を行う。動作データ生成部26が、動作データを生成するステップ(S106)を行う。補間及び動作データを生成すると、図6に示す4.補間生成及び動作データ生成が得られ、ロボットの動作データが得られる。ここでは脚の高さ方向(z軸)について言及したが、脚の進む方向(x軸)及び幅方向(y軸)についても同様のステップを行う。
【0044】
このようなステップにより、人の歩容をまねたロボットの動作データを生成することができる。また、ダンスなどの片足上げの動きなど遊脚表現の再現ができるロボットの動作データを生成することができる。
【0045】
また、上述した演算装置2における処理の一部又は全部は、コンピュータプログラムとして実現可能である。このようなプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0046】
このような動作データ生成プログラムを演算装置として動作するコンピュータに実行させることにより、人の歩容をまねること及び遊脚表現の再現ができるロボットの動作データを作成できる。
【0047】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 モーションキャプチャ装置
2 演算装置
2a CPU
2b ROM
2c RAM
2d データバス
11 マーカ
11a マーカ
11b マーカ
12 トラッカ
13 足裏接触センサ
14 処理部
21 被験者動作データ取得部
22 代表点抽出部
23 スケール変換部
24 ZMP設定部
25 補間生成部
26 動作データ生成部
100 ロボット
100a ロボット
100b ロボット
101 上半身
102 腰
103 下半身
104 上腿
105 下腿
106 足
H1 被験者
図1
図2
図3
図4
図5
図6