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特許7571765車両搬送システム、車両搬送方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】車両搬送システム、車両搬送方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20241016BHJP
   B60W 50/08 20200101ALI20241016BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20241016BHJP
【FI】
G08G1/09 V
G08G1/09 H
B60W50/08
B60W60/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022082224
(22)【出願日】2022-05-19
(65)【公開番号】P2023170452
(43)【公開日】2023-12-01
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100167461
【弁理士】
【氏名又は名称】上木 亮平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅之
(72)【発明者】
【氏名】前田 岩夫
(72)【発明者】
【氏名】菅野 達也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 紀尚
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕
(72)【発明者】
【氏名】竺原 慶和
(72)【発明者】
【氏名】西川 裕己
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/060269(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/075499(WO,A1)
【文献】特開2013-231322(JP,A)
【文献】特開2004-206218(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0345954(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G05D 1/00 - 1/87
B65G 1/00 - 1/133
B65G 1/14 - 1/20
G06Q 10/00 - 10/30
G06Q 30/00 - 30/08
G06Q 50/00 - 50/20
G06Q 50/26 - 99/00
G06Z 99/00
E04H 6/00 - 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載システムと、
前記車載システムと通信可能、かつ前記車両を自律走行によって搬送可能に構成される車両搬送装置と、
を備える車両搬送システムであって、
前記車両搬送装置は、
前記車両の搬送時に、前記車載システムに遠隔操作要求の有無を確認するための確認信号を送信し、
遠隔操作を希望する要求信号を前記車載システムから受信したときに、前記車両内からの遠隔操作を許可するように構成される、
車両搬送システム。
【請求項2】
前記車両搬送装置は、
前記遠隔操作を許可したときは、前記車両内で行われた加速、操舵又は制動の少なくとも1つに関する運転操作を、自装置の運転操作に反映させるように構成される、
請求項1に記載の車両搬送システム。
【請求項3】
前記車載システムは、
前記車両内で行われた前記運転操作の操作量を、前記車両搬送装置に送信するように構成され、
前記車両搬送装置は、
前記車載システムから受信した前記操作量に基づいて、前記運転操作を実施する、
請求項2に記載の車両搬送システム。
【請求項4】
前記車載システムは、
情報の入出力が可能な端末と、
前記車両搬送装置と通信する通信装置と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記通信装置を介して前記確認信号を受信すると、前記端末に、前記車両搬送装置の遠隔操作要求の有無を確認するための情報を出力するように構成される、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両搬送システム。
【請求項5】
前記車載システムは、
前記車両内で行われた加速、操舵又は制動の少なくとも1つの運転操作に関する操作量を取得する操作量情報取得装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記車両搬送装置の遠隔操作を要求する旨の情報が前記端末を介して入力されると、前記操作量情報取得装置によって取得された運転操作に関する操作量の前記車両搬送装置への送信を開始するように構成される、
請求項4に記載の車両搬送システム。
【請求項6】
車両に搭載される車載システムと通信可能、かつ前記車両を自律走行によって搬送可能に構成される車両搬送装置による車両搬送方法であって、
前記車両の搬送時に、前記車載システムに遠隔操作要求の有無を確認するための確認信号を送信し、
前記車載システムから遠隔操作を希望する要求信号を受信したときに、前記車両内からの遠隔操作を許可する、
車両搬送方法。
【請求項7】
車両に搭載される車載システムと通信可能、かつ前記車両を自律走行によって搬送可能に構成された車両搬送装置を制御するためのコンピュータプラグラムであって、
前記車両の搬送時に、前記車載システムに遠隔操作要求の有無を確認するための確認信号を送信させ、
前記車載システムから遠隔操作を希望する要求信号を受信したときに、前記車両内からの遠隔操作を許可させることを、前記車両搬送装置に実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搬送システム、車両搬送方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動運転車と自動運転非対応車とが駐車可能な駐車場において、自動運転非対応車を、自走式の車両搬送装置によって入出庫部から駐車場所まで搬送するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-204373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
将来的には、車両搬送サービスとして、例えば故障車両などの走行が困難になった有人の車両を、自律走行可能な車両搬送装置によって目的地まで搬送するサービスを提供することが考えられる。このような車両搬送サービスの提供中、すなわち車両搬送装置による車両搬送中に、車両搬送装置に対して車両側からの操作や指示を行うことができないと、車両の乗員が不安を感じるおそれがある。
【0005】
本発明はこのような問題点に着目してなされたものであり、車両搬送装置による車両搬送中に、車両の乗員が不安を感じるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様による車両搬送システムは、車両に搭載される車載システムと、車載システムと通信可能、かつ車両を自律走行によって搬送可能に構成される車両搬送装置と、を備える。車両搬送装置は、車両の搬送時に、車載システムに遠隔操作要求の有無を確認するための確認信号を送信し、遠隔操作を希望する要求信号を前記車載システムから受信したときに、車両内からの遠隔操作を許可するように構成される。
【0007】
また上記課題を解決するために、車両に搭載される車載システムと通信可能、かつ車両を自律走行によって搬送可能に構成される車両搬送装置による、本発明のある態様による車両搬送方法は、車両の搬送時に、車載システムに遠隔操作要求の有無を確認するための確認信号を送信し、遠隔操作を希望する要求信号を車載システムから受信したときに、車両内からの遠隔操作を許可する。
【0008】
また上記課題を解決するために、車両に搭載される車載システムと通信可能、かつ車両を自律走行によって搬送可能に構成された車両搬送装置を制御するための、本発明のある態様によるコンピュータプラグラムは、車両の搬送時に、車載システムに遠隔操作要求の有無を確認するための確認信号を送信させ、遠隔操作を希望する要求信号を車載システムから受信したときに、車両内からの遠隔操作を許可させることを、車両搬送装置に実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のこれらの態様によれば、車両の搬送時に車両搬送装置の遠隔操作が可能になるので、車両の搬送時に車両の乗員が不安を感じるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態による車両搬送システムの概略構成図である。
図2図2は、車両搬送システムによって提供される車両搬送サービスの一例を示す図である。
図3図3は、本発明の一実施形態によるサーバの概略構成図である。
図4図4は、本発明の一実施形態による車載システムの概略構成図である。
図5図5は、本発明の一実施形態による車両搬送装置の概略上面図である。
図6A図6Aは、台車部がリフトアップされていない状態の車両搬送装置の概略側面図である。
図6B図6Bは、台車部がリフトアップされている状態の車両搬送装置の概略側面図である。
図7図7は、車両搬送装置に搭載される自律走行システムの概略構成図である。
図8図8は、サーバ、車載システム及び車両搬送装置において実施される、本発明の一実施形態による車両搬送処理の内容について説明する動作シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態による車両搬送システム100の概略構成図である。
【0013】
図1に示すように、車両搬送システム100は、サーバ1と、車両搬送サービスを利用する各利用客の車両3と、車両3に搭載される車載システム2と、自律走行可能な車両搬送装置4と、を備える。この車両搬送システム100によって提供される車両搬送サービスの内容については、図2を参照して後述する。
【0014】
サーバ1、車載システム2及び車両搬送装置4は、光通信回線等で構成される通信ネットワーク5を介してそれぞれ互いに通信可能となっている。サーバ1は、例えば、不図示のゲートウェイ等を介して通信ネットワーク5と接続される。また、車載システム2及び車両搬送装置4は、例えば、無線基地局6などを介して通信ネットワーク5と接続される。
【0015】
図2は、車両搬送システム100によって提供される車両搬送サービスの一例を示す図である。
【0016】
図2の(A)に示すように、車両搬送システム100は、車両搬送サービスとして、車両搬送サービスの利用客(以下「サービス利用客」という。)からの搬送依頼に基づいて、サービス利用客が乗車した状態の有人の車両3を、自動的に車両搬送装置4によってリフトアップし、その後、図2の(B)に示すように、目的地まで搬送するサービスを提供する。このような車両搬送サービスは、例えば、故障したサービス利用客の車両3を、サービス利用客の指定する目的地まで搬送するのに利用することができる。また例えば、宿泊施設や商業施設、公共施設、旅客施設、医療施設などの各施設に入庫したサービス利用客の車両3を、当該施設の駐車場内の駐車スペースまで搬送するのに利用することができる。
【0017】
ここで、このような車両搬送サービスの提供中、すなわち車両搬送装置4による車両搬送中に、車両搬送装置4に対して車両側からの操作や指示を行うことができないと、車両3の乗員が不安を感じるおそれがある。
【0018】
そこで本実施形態では、車両搬送装置4による車両搬送中に、車両搬送装置4を車両側から遠隔操作できるようにした。以下、図3から図7を参照して、サーバ1、車載システム2、及び車両搬送装置4の構成について説明し、図8を参照して、車両搬送サービスを提供するために、サーバ1、車載システム2及び車両搬送装置4において実施される本実施形態による車両搬送処理の一例について説明する。
【0019】
図3は、サーバ1の概略構成図である。
【0020】
サーバ1は、通信インターフェース(通信I/F)11と、記憶装置12と、プロセッサ13と、を備える。
【0021】
通信インターフェース11は、サーバ1を通信ネットワーク5(図1参照)に接続するためのインターフェース回路を有する。サーバ1は、通信インターフェース11及び通信ネットワーク5を介して、車載システム2及び車両搬送装置4のそれぞれと通信する。
【0022】
記憶装置12は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、光記録媒体、半導体メモリ等の記憶媒体を有する。記憶装置12は、プロセッサ13によって実行される各種のコンピュータプログラムを記憶する。また記憶装置12は、コンピュータプログラムの実行時に使用される各種のデータを記憶する。
【0023】
本実施形態では記憶装置12は、例えば、各車載システム2の識別情報や、車載システム2が搭載された車両3の識別情報及び現在位置情報、各車両搬送装置4の識別情報及び現在位置情報などを、コンピュータプログラムの実行時に使用されるデータとして記憶している。各車載システム2の識別情報は、例えば、MACアドレスとすることができる。各車両3の識別情報は、例えば、各車両3の車両ナンバーとすることができる。各車両搬送装置4の識別情報は、例えば、各車両搬送装置4の車両ナンバーや車台ナンバーとすることができるである。
【0024】
プロセッサ13は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)と、その周辺回路と、を有する。プロセッサは、論理演算ユニットや数値演算ユニットといった他の演算回路をさらに備えていてもよい。プロセッサは、記憶装置12に記憶された各種のコンピュータプラグラムを実行する。プロセッサ13は、例えば、車両搬送処理のうちのサーバ1に関連する処理を実施する。
【0025】
図4は、車載システム2の概略構成図である。
【0026】
車載システム2は、ユーザインターフェース21と、無線通信装置22と、位置測定装置23と、操作量情報取得装置24と、遠隔制御装置25と、を備える。ユーザインターフェース21、無線通信装置22、位置測定装置23及び操作量情報取得装置24は、CAN等の規格に準拠した車載ネットワーク26を介して、遠隔制御装置25と接続される。
【0027】
ユーザインターフェース21は、例えば、情報の入出力が可能なHMI(Human Machine Interface)装置などの車両3に予め搭載されている端末(すなわち車載端末)である。ユーザインターフェース21は、ユーザ(サービス利用客)による各種の入力操作に応じた信号を生成し、その信号を遠隔制御装置25に送信する。またユーザインターフェース21は、遠隔制御装置25から受け取った各種の表示用の情報を表示する。サービス利用客は、ユーザインターフェース21を介して、サーバ1に対する車両3の搬送要求や、車両搬送装置4に対する遠隔操作要求などを行うことができる。
【0028】
なおユーザインターフェース21は、例えば、携帯電話機やタブレットコンピュータなどのサービス利用客が所持する携帯端末であってもよい。この場合、ユーザインターフェース21と、車載システム2の他の装置との通信は、無線通信によって行うことができる。
【0029】
無線通信装置22は、例えば、アンテナと、無線信号の変調及び復調といった無線通信に関連する各種の処理を実行する信号処理回路と、を備える。無線通信装置22は、通信ネットワーク5(図1参照)と不図示のゲートウェイ等を介して接続される無線基地局6(図1参照)にアクセスすることで、無線基地局6を介して通信ネットワーク5と接続される。
【0030】
位置測定装置23は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)信号を受信する受信機と、GNSS信号から車両3の位置を算出する演算回路と、を備える。位置測定装置23は、GNSS信号に基づいて車両3の位置を測定し、車両3の位置を測定する度にその位置を遠隔制御装置25に送信する。
【0031】
操作量情報取得装置24は、車両3の加速、操舵及び制動に関する各運転操作の操作量を取得し、取得した運転操作量を遠隔制御装置25に送信する。加速に関する運転操作の操作量は、例えば、アクセルペダルの踏み込み量である。操舵に関する運転操作の操作量は、例えば、ハンドルの操舵角である。制動に関する運転操作の操作量は、例えば、ブレーキペダルの踏み込み量である。
【0032】
遠隔制御装置25は、通信インターフェース251と、記憶装置252と、プロセッサ253と、を備える。
【0033】
通信インターフェース251は、遠隔制御装置25を車載ネットワーク26に接続するためのインターフェース回路を備える。
【0034】
記憶装置252は、例えば、HDDやSSD、光記録媒体、半導体メモリ等の記憶媒体を有する。記憶装置252は、プロセッサ253上で実行される各種のコンピュータプログラム及び各種のデータを記憶する。
【0035】
プロセッサ253は、一又は複数のCPUと、その周辺回路と、を有する。プロセッサ253は、論理演算ユニットや数値演算ユニットといった他の演算回路をさらに備えていてもよい。プロセッサ253は、記憶装置252に記憶された各種のコンピュータプラグラムを実行する。プロセッサ253は、例えば、車両搬送処理のうちの車載システム2に関連する処理を実施する。
【0036】
続いて、図5から図7を参照して、車両搬送装置4の詳細について説明する。
【0037】
図5は、車両搬送装置4の概略上面図である。図6Aは、車両搬送装置4の台車部42がリフトアップされていない状態(以下「非リフトアップ状態」という。)の車両搬送装置の概略側面図である。図6Bは、車両搬送装置4の台車部42がリフトアップされている状態(以下「リフトアップ状態」という。)の車両搬送装置4の概略側面図である。
【0038】
図5から図6Bに示すように、車両搬送装置4は、自律走行する牽引部41と、牽引部に牽引されて車両3を支持する台車部42と、を備える。
【0039】
牽引部41には、自律走行システム50が搭載されており、当該自律走行システム50によって、加速、操舵及び制動に関する運転操作と、車両3の搬送作業とが、自動的に行われる。自律走行システム50の詳細については、図7を参照して後述する。
【0040】
台車部42は、昇降アクチュエータ(図示せず)によって牽引部41に対して上下方向に昇降させられて、非リフトアップ状態又はリフトアップ状態に切り替えることができるように構成される。昇降アクチュエータの種類や構造は特に限られるものではなく、例えば電動式、油圧式、又は空圧式のリニアアクチュエータとすることができる。
【0041】
また台車部42は、牽引部41側の第1台車部42Aと、伸縮アクチュエータ(図示せず)によって第1台車部42Aに対して台車部42の前後方向に伸縮可能に構成された第2台車部42Bと、を備える。そして第1台車部42Aには、車両3の前輪又は後輪の一方を支持する第1車輪支持アーム43が設けられ、第2台車部42Bには、車両の前輪又は後輪の他方を支持する第2車輪支持アーム44が設けられる。
【0042】
第1車輪支持アーム43は、台車部42の左右方向に延びる固定アーム431と、回動アクチュエータ(図示せず)によって図5において実線で示す格納位置と破線で示す展開位置との間で回動させることが可能な可動アーム432と、を備える。第2車輪支持アーム44は、回動アクチュエータ(図示せず)によって図5において実線で示す格納位置と破線で示す展開位置との間で回動させることが可能な一対の可動アーム441,442を備える。
【0043】
台車部42は、車両3をリフトアップする際に、非リフトアップ状態で車両3のフロント側又はリア側から車両3の底面と地面との間の空間に挿入させられる。そして、車両3のホイールベースに応じて第2台車部42Bを伸縮させた上で、第1車輪支持アーム43及び第2車輪支持アーム44のそれぞれの可動アーム432,441,442を回動させて展開位置にすることによって車両3の前輪及び後輪をそれぞれ挟み込んだ後、リフトアップ状態に切り替えられて、車両3を支持する。
【0044】
図7は、車両搬送装置4に搭載される自律走行システム50の概略構成図である。
【0045】
自律走行システム50は、周辺情報取得装置51と、自車両情報取得装置52と、各種のアクチュエータ類53と、無線通信装置54と、運転制御装置55と、を備える。周辺情報取得装置51、自車両情報取得装置52、各種のアクチュエータ類53及び無線通信装置54は、CAN等の規格に準拠した車両搬送装置4内のネットワーク56を介して運転制御装置55と接続される。
【0046】
周辺情報取得装置51は、車両搬送装置4の周囲の物体(例えば、搬送対象車両を含む周囲の車両や歩行者、道路、建物等の障害物など)のデータを、車両搬送装置4の周辺情報として取得するための装置である。周辺情報取得装置51としては、例えば、車両搬送装置の周囲の物体を撮影するカメラや、車両搬送装置の周囲の物体までの距離を計測するライダ(LiDAR;Light Detection And Ranging)やミリ波レーダセンサなどの測距センサが挙げられるが、これらに限られるものではなく、またカメラや測距センサなどの複数の機器から構成してもよい。周辺情報取得装置51によって取得された車両搬送装置4の周辺情報は、運転制御装置55に送信される。
【0047】
自車両情報取得装置52は、車両搬送装置4の状態に関する各種のデータを、車両搬送装置4の自車両情報として取得するための装置である。本実施形態による自車両情報取得装置52は、車両搬送装置4の速度や各速度、姿勢などを検出する各種のセンサ類や、台車部42の状態(台車部42の昇降状態や各車輪支持アーム43,44の位置など)を検出する各種のセンサ類、車両搬送装置4の現在位置を検出するGNSS受信機などを備える。自車両情報取得装置52によって取得された車両搬送装置4の自車両情報は、運転制御装置55に送信される。
【0048】
各種のアクチュエータ類53は、運転制御装置55によってその動作が制御されるアクチュエータであって、例えば、牽引部41を駆動するための動力を発生させるエンジン又はモータなどの駆動アクチュエータや、牽引部41の進行方向を制御するための操舵アクチュエータ、牽引部41の制動を行うための制動アクチュエータ、台車部42の昇降制御をおこなうための前述した昇降アクチュエータ、台車部42の伸縮制御を行うための前述した伸縮アクチュエータなどのアクチュエータである。
【0049】
無線通信装置54は、例えば、アンテナと、無線信号の変調及び復調といった無線通信に関連する各種の処理を実行する信号処理回路と、を備える。無線通信装置54は、通信ネットワーク5(図1参照)と不図示のゲートウェイ等を介して接続される無線基地局6(図1参照)にアクセスすることで、無線基地局6を介して通信ネットワーク5に接続される。これにより、車両搬送装置4と、サーバ1及び車載システム2との間で、相互に通信が行われる。
【0050】
運転制御装置55は、通信インターフェース551と、記憶装置552と、プロセッサ553と、を備える。
【0051】
通信インターフェース551は、運転制御装置55を車両搬送装置4内のネットワーク56に接続するためのインターフェース回路を備える。すなわちインターフェース71は、車両搬送装置4内のネットワーク56を介して周辺情報取得装置51などと接続される。
【0052】
記憶装置552は、HDDやSSD、光記録媒体、半導体メモリ等の記憶媒体を有する。記憶装置は、プロセッサ553によって実行される各種のコンピュータプログラムを記憶する。また記憶装置552は、コンピュータプログラムの実行時に使用される各種のデータを記憶する。また記憶装置552は、車両搬送装置4が使用される領域の詳細な地図情報を記憶する。
【0053】
プロセッサ553は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)と、その周辺回路と、を有する。プロセッサ553は、論理演算ユニットや数値演算ユニットといった他の演算回路をさらに備えていてもよい。プロセッサ553は、記憶装置552に記憶された各種のコンピュータプラグラムを実行し、車両搬送装置4の全体的な動作を統括的に制御する。例えばプロセッサ553は、車両搬送装置4の周辺情報、自車両情報及び地図情報などに基づいて各種のアクチュエータ類53を制御し、これにより、車両搬送装置4の運転操作や車両3の搬送作業が自動的に行われる。またプロセッサ553は、例えば、車両搬送処理のうちの車両搬送装置4に関連する処理を実施する。
【0054】
図8は、サーバ1、車載システム2及び車両搬送装置4において実施される、本実施形態による車両搬送処理(コンピュータプログラム)の内容について説明する動作シーケンス図である。
【0055】
ステップS101において、車載システム2の遠隔制御装置25は、サービス利用客による車両3の搬送依頼がユーザインターフェース21を介して行われると、サーバ1に対して、車両3の搬送依頼があったことを知らせる搬送依頼信号を送信する。
【0056】
搬送依頼信号には、例えば、当該信号の送信元となる車載システム2の識別情報と、当該車載システム2が搭載された車両3、すなわち搬送対象となる車両3(以下「搬送対象車両3」という。)の識別情報及び現在位置情報と、が含まれる。
【0057】
ステップS102において、サーバ1は、搬送依頼信号を受信すると、例えば、搬送対象車両3の現在位置情報と、車両搬送装置4の現在位置情報及び使用状況と、に基づいて、車両搬送を行う車両搬送装置4を決定し、当該車両搬送装置4に対して車両搬送信号を送信する。車両搬送信号には、例えば、車載システム2の識別情報と、搬送対象車両3の識別情報及び現在位置情報と、が含まれる。なお車両搬送装置4は、自装置の現在位置情報及び使用状況を、サーバ1に定期的に送信しているものとする。
【0058】
ステップS103において、車両搬送装置4の運転制御装置55は、車両搬送信号を受信すると、搬送対象車両3の現在位置情報に基づいて、車両搬送装置4を自律走行によって搬送対象車両3まで移動させる。
【0059】
ステップS104において、車両搬送装置4の運転制御装置55は、例えば、搬送対象車両3の元に到着して搬送対象車両3のリフトアップ作業が完了したときなどの所定のタイミングになると、車載システム2に対して、遠隔操作が可能であることを知らせる遠隔操作容認信号を送信する。なお、遠隔操作容認信号を送信するタイミングは、上記のタイミングに限られるものではなく、例えば、搬送対象車両3の元に到着して搬送対象車両3を周辺情報取得装置51によって確認したタイミングなど、適切と考えられるタイミングで適宜送信すればよいものである。
【0060】
ステップS105において、車載システム2の遠隔制御装置25は、遠隔操作容認信号を受信すると、ユーザインターフェース21を介して、サービス利用客に対して、車両搬送装置4を車両側から遠隔操作できることを知らせると共に、サービス利用客が、車両搬送装置4に対して遠隔操作を要求するための要求信号を、ユーザインターフェース21を介して送信できるようにする。
【0061】
ステップS106において、車載システム2の遠隔制御装置25は、サービス利用客によって、車両搬送装置4に対する車両側からの操作要求がある旨の入力がユーザインターフェース21を介して行われると、遠隔操作容認信号の送信元となる車両搬送装置4に対して、遠隔操作要求信号を送信する。
【0062】
ステップ107において、車両搬送装置4の運転制御装置55は、遠隔操作要求信号を受信すると、搬送対象車両3からの遠隔操作を許可し、遠隔操作モードに移行する。遠隔操作モードは、車載システム2の操作量情報取得装置24で取得され、車載システム2の無線通信装置22から送信されてくる車両3内で行われた加速、操舵及び制動に関する各運転操作の操作量を、自装置の運転操作に反映させて走行するモードである。
【0063】
なお本実施形態では、車両3内で行われた加速、操舵及び制動に関する各運転操作の操作量を車両搬送装置4の運転操作に反映させるようにしているが、必ずしもこれらすべての運転操作の操作量を反映させる必要なく、これらのうちの1つ又は2を選択的に反映させてもよい。
【0064】
なお、車両搬送装置4の運転制御装置55は、遠隔操作容認信号の送信後、所定時間が経過しても遠隔操作要求信号を受信しなかった場合には、遠隔操作要求がないとみなして自律走行を開始させる。
【0065】
ステップS108において、車両搬送装置4の運転制御装置55は、サービス利用客に遠隔操作モードに移行したことを知らせるための移行信号を、車載システム2に送信する。
【0066】
ステップS109において、車載システム2の遠隔制御装置25は、移行信号を受信すると、ユーザインターフェース21を介して、サービス利用客に対して、車両搬送装置4の遠隔操作準備が完了したことを知らせると共に、操作量情報取得装置24によって取得された各運転操作の操作量の車両搬送装置4に対する送信を開始する。これにより、車両搬送装置4によって搬送中の車両3内で行われた加速、操舵及び制動に関する各運転操作の操作量が、車両搬送装置4の運転操作に反映されるので、車両搬送装置4を車両3内から遠隔操作することができる。
【0067】
以上説明した本実施形態による車両搬送システム100は、車両3に搭載される車載システム2と、車載システム2と通信可能、かつ車両3を自律走行によって搬送可能に構成される車両搬送装置4と、を備える。そして車両搬送装置4は、車両3の搬送時に、車載システム2に遠隔操作要求の有無を確認するための遠隔操作容認信号(確認信号)を送信し、遠隔操作を希望する遠隔操作要求信号(要求信号)を車載システム2から受信したときに、車両3内からの遠隔操作を許可するように構成される。
【0068】
これにより、車両3の搬送時に車両搬送装置4の遠隔操作が可能になるので、車両3の搬送時に、車両3の乗員が不安を感じるのを抑制することができる。
【0069】
また車両搬送装置4は、遠隔操作を許可したときは、車両3内で行われた加速、操舵又は制動の少なくとも1つに関する運転操作を、自装置の運転操作に反映させるように構成される。より詳細には、車載システム2は、車両3内で行われた運転操作に関する操作量を、車両搬送装置4に送信するように構成され、車両搬送装置4は、車載システム2から受信した操作量に基づいて運転操作を実施するように構成される。
【0070】
これにより、車両搬送装置4によって搬送中の車両3内で行われた加速、操舵及び制動に関する各運転操作の操作量を、車両搬送装置4の運転操作に反映させて、車両搬送装置4を車両3内から遠隔操作することができる。また、このように、車両3内で行われた加速、操舵及び制動に関する各運転操作の操作量を反映させるため、車両搬送装置4の遠隔での運転操作を、容易に実施することができる。
【0071】
また、本実施形態による車載システム2は、情報の入出力が可能なユーザインターフェース21(端末)と、車両搬送装置4と通信する無線通信装置22(通信装置)と、遠隔制御装置25(制御装置)と、を備える。そして遠隔制御装置25は、無線通信装置22を介して遠隔操作容認信号(確認信号)を受信すると、ユーザインターフェース21に、車両搬送装置4の遠隔操作要求の有無を確認するための情報を出力するように構成される。
【0072】
また車載システム2は、車両3内で行われた加速、操舵又は制動の少なくとも1つの運転操作に関する操作量を取得する操作量情報取得装置24をさらに備え、遠隔制御装置25は、車両搬送装置4の遠隔操作を要求する旨の情報がユーザインターフェース21を介して入力されると、操作量情報取得装置24によって取得された運転操作に関する操作量の車両搬送装置4への送信を開始するように構成される。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0074】
例えば上記の実施形態では、遠隔操作容認信号や遠隔操作要求信号、各運転操作の操作量の、車載システム2と車両搬送装置4との間での情報の送受信を、直接的に実施していたが、サーバ1を介して間接的に実施してもよい。
【0075】
また上記の実施形態において、車両3内で行われる加速、操舵及び制動に関する各運転操作の操作量は、基本的に、車両3のアクセルペダルやハンドル、ブレーキペダルなどの実機を操作した場合の操作量とすることができるが、これに限らず、例えば、ユーザインターフェース21により各運転操作の操作量を入力できるようにしてもよい。この場合、ユーザインターフェース21が操作量情報取得装置24として機能することになる。
【0076】
また上記の実施形態において、サーバ1や車載システムの遠隔制御装置25、車両搬送装置4の運転制御装置55において実行されるコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。
【0077】
1 サーバ
2 車載システム
3 車両
4 車両搬送装置
21 ユーザインターフェース(端末)
22 無線通信装置(通信装置)
24 操作量情報取得装置
25 遠隔制御装置(制御装置)
100 車両搬送システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8