(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】通知システムおよび通知方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241016BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/09 H
(21)【出願番号】P 2022099784
(22)【出願日】2022-06-21
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100122116
【氏名又は名称】井上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】チャン レンジェ
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-085256(JP,A)
【文献】特開2004-220143(JP,A)
【文献】特開2010-287161(JP,A)
【文献】特開2021-046023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された検出装置と、1以上の歩行者のそれぞれが所持する1以上の携帯機器とを含む通知システムであって、
前記検出装置は、
前記車両に対し所定の相対位置にある対象領域内において各歩行者の位置を検出する検出部と、
検出された前記位置を示す位置情報を含む検出情報を前記1以上の携帯機器のそれぞれに、車両通信部を介して送信する送信部と、を備え、
各携帯機器は、
前記検出装置から送信された前記検出情報を、携帯通信部を介して受信する受信部と、
当該携帯機器の現在位置が送信された前記検出情報に含まれる位置情報に示された前記検出された位置のいずれか一つに対応する場合、出力機器により当該携帯機器を所持する前記歩行者にメッセージを通知する通知部と、を備える、通知システム。
【請求項2】
各携帯機器は、当該携帯機器を所持する歩行者による前記メッセージに対する応答を受け付けた場合、前記歩行者による応答があったことを表す応答情報を、前記携帯通信部を介して前記検出装置に送信する応答送信部をさらに備える、請求項1に記載の通知システム。
【請求項3】
前記検出情報は、前記位置情報の確からしさを示す精度情報を含む請求項1に記載の通知システム。
【請求項4】
前記検出部は、前記対象領域を、前記車両の所定時間経過後までの走行予定経路に沿った形状に設定する、請求項1に記載の通知システム。
【請求項5】
車両に搭載された検出装置と、1以上の歩行者のそれぞれが所持する1以上の携帯機器と、通信ネットワークを介して前記検出装置および前記1以上の携帯機器と通信可能に接続されたサーバとを含む通知システムであって、
前記検出装置は、
前記車両に対し所定の相対位置にある対象領域内において各歩行者の位置を検出する検出部と、
検出された前記位置を示す位置情報を含む検出情報を前記サーバに車両通信部を介して送信する送信部と、を備え、
各携帯機器は、
当該携帯機器の現在位置を含む機器位置情報を前記サーバに携帯通信部を介してアップロードするアップロード部を備え、
前記サーバは、
サーバ通信部を介して各携帯機器からアップロードされた前記機器位置情報を受信し、各携帯機器に関連づけて当該携帯機器の前記現在位置をサーバ記憶部に記憶させる位置登録部と、
前記サーバ通信部を介して前記検出装置から前記検出情報を受信し、各携帯機器のうち、前記サーバ記憶部に記憶された前記現在位置が、前記検出装置から受信された検出情報に含まれる位置情報に示された前記検出された位置に対応する携帯機器に、前記サーバ通信部を介して通知情報を送信する通知送信部と、を備え、
各携帯機器は、
前記携帯通信部を介して前記サーバから報知された前記通知情報を受信する受信部と、
前記通知情報の受信に応じて、出力機器により当該携帯機器を所持する前記歩行者に通知する通知部と、を備える、通知システム。
【請求項6】
車両に搭載された検出装置が、前記車両に対し所定の相対位置にある対象領域内において1以上の歩行者の位置を検出し、
前記検出装置が、検出された前記位置を示す位置情報を含む検出情報を前記1以上の歩行者のそれぞれが所持する1以上の携帯機器のそれぞれに送信し、
各携帯機器が、前記検出装置から送信された前記検出情報を受信し、
各携帯機器が、当該携帯機器の現在位置が送信された前記検出情報に含まれる位置情報に示された前記検出された位置のいずれか一つに対応する場合、出力機器により当該携帯機器を所持する前記歩行者に通知する、ことを含む、通知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の周辺の歩行者にメッセージを通知する通知システムおよび通知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の周辺に存在する歩行者に対し、警笛の鳴動などによる注意喚起を行うことにより、歩行者の注意を促し、事故をより適切に防止することができる。このとき、注意喚起は、車両の前方といった所定領域内に存在する特定の歩行者に対して選択的に行われることが好ましい。
【0003】
特許文献1に記載の注意喚起装置は、所定領域の歩行者を検知し、検知された歩行者が携帯している携帯機器に対して、危険を意味する危険信号を送出し、携帯機器が歩行者に危険を報知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両の周辺の所定領域内に存在する特定の歩行者に対して選択的に注意喚起するため、対象となる歩行者が携帯している携帯機器に危険信号を選択的に送出するには、所定領域内に存在する歩行者を超音波センサまたはカメラといったセンサにより検出し、歩行者が携帯する携帯機器を特定し、当該携帯機器に対して危険信号を送出することが必要となる。一般的には、センサにより検出される歩行者の情報と携帯機器とは関連づけられていないため、検知された歩行者の情報から送出対象となる携帯機器を特定することは困難である。
【0006】
本開示は、車両の周辺の所定領域内に存在する歩行者に対し、適切にメッセージを通知することができる通知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 車両に搭載された検出装置と、1以上の歩行者のそれぞれが所持する1以上の携帯機器とを含む通知システムであって、検出装置は、車両に対し所定の相対位置にある対象領域内において各歩行者の位置を検出する検出部と、検出された位置を示す位置情報を含む検出情報を1以上の携帯機器のそれぞれに、車両通信部を介して送信する送信部と、を備え、各携帯機器は、検出装置から送信された検出情報を、携帯通信部を介して受信する受信部と、当該携帯機器の現在位置が送信された検出情報に含まれる位置情報に示された検出された位置のいずれか一つに対応する場合、出力機器により当該携帯機器を所持する歩行者にメッセージを通知する通知部と、を備える、通知システム。
【0008】
(2) 各携帯機器は、当該携帯機器を所持する歩行者によるメッセージに対する応答を受け付けた場合、歩行者による応答があったことを表す応答情報を、携帯通信部を介して検出装置に送信する応答送信部をさらに備える、(1)に記載の通知システム。
【0009】
(3) 検出情報は、位置情報の確からしさを示す精度情報を含む、(1)または(2)に記載の通知システム。
【0010】
(4) 検出部は、対象領域を、車両の所定時間経過後までの走行予定経路に沿った形状に設定する、(1)-(3)のいずれか一つに記載の通知システム。
【0011】
(5) 車両に搭載された検出装置と、1以上の歩行者のそれぞれが所持する1以上の携帯機器と、通信ネットワークを介して検出装置および1以上の携帯機器と通信可能に接続されたサーバとを含む通知システムであって、検出装置は、車両に対し所定の相対位置にある対象領域内において各歩行者の位置を検出する検出部と、検出された位置を示す位置情報を含む検出情報を前記サーバに車両通信部を介して送信する送信部と、を備え、各携帯機器は、当該携帯機器の現在位置を含む機器位置情報をサーバに携帯通信部を介してアップロードするアップロード部を備え、サーバは、サーバ通信部を介して各携帯機器からアップロードされた機器位置情報を受信し、各携帯機器に関連づけて当該携帯機器の現在位置をサーバ記憶部に記憶させる位置登録部と、サーバ通信部を介して検出装置から検出情報を受信し、各携帯機器のうち、サーバ記憶部に記憶された現在位置が、検出装置から受信された検出情報に含まれる位置情報に示された検出された位置に対応する携帯機器に、サーバ通信部を介して通知情報を送信する通知送信部と、を備え、各携帯機器は、携帯通信部を介してサーバから報知された通知情報を受信する受信部と、通知情報の受信に応じて、出力機器により携帯機器を所持する歩行者に通知する通知部と、を備える通知システム。
【0012】
(6) 車両に搭載された検出装置が、車両に対し所定の相対位置にある対象領域内において1以上の歩行者の位置を検出し、検出装置が、検出された前記位置を示す位置情報を含む検出情報を前記1以上の歩行者のそれぞれが所持する1以上の携帯機器のそれぞれに送信し、各携帯機器が、検出装置から送信された検出情報を受信し、各携帯機器が、当該携帯機器の現在位置が送信された検出情報に含まれる位置情報に示された検出された位置のいずれか一つに対応する場合、出力機器により当該携帯機器を所持する歩行者に通知する、ことを含む通知方法。
【0013】
本開示にかかる通知システムによれば、車両の周辺の所定領域内に存在する歩行者に対し、適切にメッセージを通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】検出装置が実装される車両の概略構成図である。
【
図5】検出装置が有するプロセッサの機能ブロック図である。
【
図8】携帯機器が有するプロセッサの機能ブロック図である。
【
図9】変形例の通知システムの概要を説明する図である。
【
図10】変形例の通知システムの動作シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、車両の周辺の所定領域内に存在する歩行者に対し、適切にメッセージを通知することができる通知システムについて詳細に説明する。通知システムは、車両に搭載された検出装置と、1以上の歩行者のそれぞれが所持する1以上の携帯機器とを含む。検出装置は、車両に対し所定の相対位置にある対象領域内において各歩行者の位置を検出する。また、検出装置は、検出された位置を示す位置情報を含む検出情報を1以上の携帯機器のそれぞれに、車両通信部を介して送信する。各携帯機器は、検出装置から送信された検出情報を、携帯通信部を介して受信する。また、各携帯機器は、当該携帯機器の現在位置が、送信された検出情報に含まれる位置情報に示された検出された位置のいずれか一つに対応する場合、出力機器により当該携帯機器を所持する歩行者にメッセージを通知する。
【0016】
図1は通知システムの概要を説明する図であり、
図2は通知システムの動作シーケンス図である。
【0017】
通知システム100は、道路RDを走行する車両1に搭載される検出装置7と、車両1の周辺に存在する歩行者P-1ないしP-3(以下、あわせて「歩行者P」ともいう)のそれぞれが所持する携帯機器9-1ないし9-3(以下、あわせて「携帯機器9」ともいう)とを含む。検出装置7は、例えば車両1の周辺の状況を記録するドライブレコーダとして実装される。携帯機器9は、例えば歩行者Pが所持するスマートフォンとして実装される。
【0018】
検出装置7は、車両1の進行方向前方にある対象領域Aにある歩行者P-3の位置を検出する(ステップS11)。検出装置7は、歩行者P-3の位置を示す位置情報を含む検出情報を、携帯機器9(携帯機器9-1ないし9-3のそれぞれ)に送信する(ステップS12)。
【0019】
携帯機器9は、検出情報を受信する(ステップS21)。携帯機器9は、現在位置が受信した検出情報に含まれる位置情報に対応するか否かを判定する(ステップS22)。携帯機器9-3は、現在位置が受信した検出情報に含まれる位置情報に対応するため(ステップS22:Y)、携帯機器9-3を所持する歩行者P-3にメッセージを通知する(ステップS23)。一方、検出情報を受信した携帯機器9-1および9-2は、現在位置が受信した検出情報に含まれる位置情報に対応しないため(ステップS22:N)、携帯機器9-1および9-2のそれぞれを所持する歩行者P-1およびP-2にメッセージを通知しない。
【0020】
図3は、検出装置7が実装される車両1の概略構成図である。
【0021】
車両1は、周辺カメラ2と、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機3と、データ通信モジュール(DCM)4と、ストレージ装置5と、走行制御装置6と、検出装置7とを有する。車両1は、走行制御装置6による制御によって走行可能な自動運転車両である。周辺カメラ2、GNSS受信機3、データ通信モジュール4、およびストレージ装置5と、走行制御装置6および検出装置7とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。
【0022】
周辺カメラ2は、車両1の周辺の状況が表された周辺データを生成するための周辺センサの一例である。周辺カメラ2は、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上の撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系とを有する。周辺カメラ2は、例えば車室内の前方上部に、前方を向けて配置され、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとにフロントガラスを介して車両1の周辺の状況を撮影し、車両1の周辺の状況が表された周辺データとして周辺画像を出力する。なお、車両1は、周辺センサとして、周辺カメラ2以外のセンサ、例えば、車両1の周辺状況に基づいて、各画素が当該画素に表わされた物体までの距離に応じた値を持つ距離画像を周辺データとして生成するLiDAR(Light Detection And Ranging)センサを有していてもよい。
【0023】
GNSS受信機3は、車両測位センサの一例であり、所定の周期ごとにGNSS衛星からのGNSS信号を受信し、受信したGNSS信号に基づいて車両1の自己位置を測位する。GNSS受信機3は、所定の周期ごとに、GNSS信号に基づく車両1の自己位置の測位結果を表す測位信号を、車内ネットワークを介して走行制御装置6および検出装置7へ出力する。
【0024】
データ通信モジュール4は、車両通信部の一例であり、Bluetooth(登録商標) Low Energy、V2X(Vehicle to X)といった無線通信規格に準拠した無線通信処理を実行する機器である。データ通信モジュール4は、例えばBluetooth(登録商標) Low Energy通信におけるブロードキャスターとして動作し、検出装置7から受け取ったデータをアドバタイジング・パケットに含めて送信することができる。データ通信モジュール4は、検出装置7の一部として実装されてもよい。
【0025】
データ通信モジュール4は、さらに、いわゆる4G(4th Generation)または5G(5th Generation)といった広域無線通信規格に準拠した無線通信処理を実行してもよい。データ通信モジュール4は、検出装置7から受け取ったデータを、アップリンクの無線信号に含めて送信することができる。また、データ通信モジュール4は、受信した無線信号に含まれるデータを、検出装置7に渡すことができる。
【0026】
ストレージ装置5は、車両記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置、または不揮発性の半導体メモリを有する。ストレージ装置5は、高精度地図を記憶する。高精度地図には、例えば、その高精度地図に表される所定の領域における車線を区画する車線区画線を表す情報が含まれる。
【0027】
走行制御装置6は、通信インタフェースと、メモリと、プロセッサとを備えるECU(Electronic Control Unit)である。走行制御装置6は、GNSS受信機3から受信した測位信号に表される自車位置の周辺における車線区画線の情報を、高精度地図を保存するストレージ装置5から読み出す。
【0028】
走行制御装置6は、周辺カメラ2から受信した周辺画像を、画像から車線区画線を検出するよう予め学習された識別器に入力することで、周辺データから周辺の車線区画線を検出する。
【0029】
識別器は、例えば入力側から出力側に向けて直列に接続された複数の畳み込み層を有する畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とすることができる。車線区画線を含む画像を教師データとして用いて、誤差逆伝播法といった所定の学習手法に従って予めCNNを学習することにより、CNNは周辺画像から車線区画線を検出する識別器として動作する。
【0030】
走行制御装置6は、周辺画像から検出された車線区画線と、高精度地図における車線区画線とマッチングを行うことで車両1の走行している車線を特定する。そして、走行制御装置6は、車両1が現在走行している車線に沿った走行予定経路を予め設定された目標車速で走行するように車両1の走行機構(不図示)に制御信号を出力する。走行機構には、例えば車両1に動力を供給するエンジンまたはモータ、車両1の加速度を調整するためのアクセル、車両1の走行速度を減少させるブレーキ、および車両1を操舵するステアリング機構が含まれる。
【0031】
図4は、検出装置7のハードウェア模式図である。検出装置7は、周辺カメラ2から受信した周辺画像から車両1の周辺に存在する歩行者を検出する。そのために、検出装置7は、通信インタフェース71と、メモリ72と、プロセッサ73とを備える。
【0032】
通信インタフェース71は、検出装置7を車内ネットワークへ接続するための通信インタフェース回路を有する。通信インタフェース71は、受信したデータをプロセッサ73に供給する。また、通信インタフェース71は、プロセッサ73から供給されたデータを外部に出力する。
【0033】
メモリ72は、車両記憶部の他の一例であり、揮発性の半導体メモリおよび不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ72は、プロセッサ73による処理に用いられる各種データ、例えば、検出対象とすべき歩行者の位置の範囲に対応する対象領域を特定するための領域定義情報を保存する。また、メモリ72は、各種データとして、例えば周辺カメラ2の光学系の焦点距離、撮影方向、ピクセルサイズといった撮影パラメータを保存する。また、メモリ72は、各種データとして、例えば周辺画像から歩行者の表された領域を検出する識別器として使用されるCNNを規定するためのパラメータ(層数、層構成、カーネル、重み係数等)等を保存する。また、メモリ72は、各種データとして、歩行者の標準サイズを保存する。また、メモリ72は、各種アプリケーションプログラム、例えば検出処理を実行するための検出用プログラム等を保存する。
【0034】
プロセッサ73は、車両制御部の一例であり、1以上のプロセッサおよびその周辺回路を有する。プロセッサ73は、論理演算ユニット、数値演算ユニット、またはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。
【0035】
図5は、検出装置7が有するプロセッサ73の機能ブロック図である。検出装置7のプロセッサ73は、機能ブロックとして、検出部731と、送信部732とを有する。
【0036】
プロセッサ73が有するこれらの各部は、メモリ72に記憶されプロセッサ73上で実行されるコンピュータプログラムによって実装される機能モジュールである。プロセッサ73の各部の機能を実現するコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。あるいは、プロセッサ73が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、またはファームウェアとして検出装置7に実装されてもよい。
【0037】
検出部731は、車両1に対し所定の相対位置にある領域内において各歩行者の位置を検出する。
【0038】
検出部731は、周辺カメラ2から取得される周辺画像を、例えば画像から車線区画線を含む地物と歩行者とを検出するよう予め学習された識別器に入力することで、地物の種別と、周辺画像において車線区画線を含む地物および歩行者が表された領域とを特定する。
【0039】
周辺センサがLiDARセンサである場合、検出部731は、例えば距離画像から歩行者を検出するよう予め学習された識別器に入力することで、LiDARセンサから取得される距離画像において歩行者が表された領域を特定してもよい。
【0040】
また、検出部731は、GNSS受信機3から受信した測位信号に表される自車位置の周辺における車線区画線の情報を、高精度地図を保存するストレージ装置5から読み出す。検出部731は、周辺データから検出された車線区画線の位置とストレージ装置5から読み出した車線区画線の位置とをマッチングすることで、周辺データが生成されたときの車両1の位置および方位を推定する。なお、検出部731は、車両1の位置および方位を、走行制御装置6から取得してもよく、GNSS受信機から受信した測位信号に表される自車位置および車両1に搭載された方位センサ(不図示)から取得される方位情報により特定してもよい。
【0041】
また、検出部731は、周辺データにおいて歩行者が表された領域の位置と、メモリ72に保存された周辺カメラ2の撮影パラメータとを用いて、車両1に対して歩行者が存在する方向を推定する。また、検出部731は、周辺データにおいて歩行者が表された領域の大きさと、メモリ72に保存された歩行者の標準サイズとを用いて、車両1からの歩行者の距離を推定する。
【0042】
検出部731は、車両1の位置および方位と、車両1に対して歩行者が存在する方向と、車両1からの歩行者の距離とを用いて、周辺画像の生成時における世界座標系での歩行者の位置を求める。
【0043】
検出部731は、周辺画像に表された世界座標系での歩行者の位置と、メモリ72に記憶された領域定義情報により特定される対象領域Aとを対比し、対象領域A内に位置する歩行者を検出する。
【0044】
対象領域Aは、所定の領域定義情報に基づいて設定される。対象領域Aは、例えば縦方向に車両1の前方端から20m先まで、横方向に車両1の左端の1m左から右端の1m右までの矩形領域である。
【0045】
また、対象領域Aは、現在から所定時間(例えば2秒)後までの車両1の走行予定経路に沿った形状であってもよい。すなわち、車両1が直線形状の道路を走行している場合、対象領域Aは矩形領域となる。また、車両1がカーブ形状の道路を走行している場合、対象領域Aはカーブした形状となる。また、車両1において交差点での右左折が予定されている場合、対象領域Aは右左折する走行予定経路に応じた形状となる。検出部731は、現在から所定時間後までの車両1の走行予定経路を、走行制御装置6から取得する。
【0046】
対象領域Aの前後方向の長さは、車両1の速度により変化してよい。例えば、車両1が高速で走行している場合、車両1の所定時間後の位置は低速で走行している場合よりも遠くなるので、対象領域の縦方向の長さは低速で走行している場合よりも長くしてよい。また、対象領域Aは、車両1が後退走行している場合、車両1の後方に設定されてよい。
【0047】
送信部732は、対象領域A内で検出された歩行者の世界座標系での位置を示す位置情報を含む検出情報を、車両1の周辺に位置する1以上の歩行者のそれぞれが携帯する1以上の携帯機器9のそれぞれに送信する。
【0048】
送信部732は、データ通信モジュール4に対して検出情報を出力し、データ通信モジュール4に、例えばBluetooth(登録商標) Low Energy通信におけるアドバタイジング・パケットに検出情報を含めて送信させる。このとき、携帯機器9はBluetooth(登録商標) Low Energy通信におけるオブザーバーとして動作し、データ通信モジュール4から送信されたアドバタイジング・パケットをスキャンすることで、検出情報を受信する。送信部732は、データ通信モジュール4に、広域無線通信規格に準拠した無線通信処理により、検出情報を送信させてもよい。
【0049】
検出情報は、位置情報の確からしさを表す精度情報を含んでいてもよい。精度情報は、例えば車両1の測位信号の生成にあたりGNSS受信機3の受信した電波に対応するGNSS衛星の種類および数に応じて定められる。
【0050】
【0051】
検出情報821では、検出された移動物体ごとに、当該物体を識別するための識別子(ID)と、当該物体の緯度および経度で表される位置情報と、当該物体の位置情報の誤差(m)により確からしさを表す精度情報とが関連づけられている。
【0052】
図7は、携帯機器9のハードウェア模式図である。携帯機器9は、近距離無線回路91と、広域無線回路92と、GNSS受信機93と、出力装置94と、入力装置95と、メモリ96と、プロセッサ97とを備える。
【0053】
近距離無線回路91は、携帯通信部の一例であり、携帯機器9と比較的近距離にある機器との無線によるデータを送受信するための回路およびアンテナを有する。近距離無線回路91は、受信したデータをプロセッサ97に供給する。また、近距離無線回路91は、プロセッサ97から供給されたデータを外部に送信する。近距離無線回路91は、例えばBluetooth(登録商標) Low Energy、NFC(Near Field Communication)、IEEE 802.11といった規格に準拠した無線通信を行う。
【0054】
広域無線回路92は、携帯通信部の他の一例であり、携帯機器9が広域無線通信を行うための回路およびアンテナを有する。広域無線回路92は、例えば通信ネットワークに含まれる無線基地局との間でデータを送受信するための回路である。広域無線回路92は、受信したデータをプロセッサ97に供給する。また、広域無線回路92は、プロセッサ97から供給されたデータを、無線基地局に送信する。
【0055】
GNSS受信機93は、携帯測位センサの一例であり、所定の周期ごとにGNSS衛星からのGNSS信号を受信し、受信したGNSS信号に基づいて携帯機器9の自己位置を測位する。GNSS受信機93は、所定の周期ごとに、GNSS信号に基づく携帯機器9の自己位置の測位結果を表す測位信号を、プロセッサ97へ出力する。
【0056】
出力装置94は、携帯出力部の一例であり、携帯機器9を所持する歩行者に対する出力を行うデバイスである。出力装置94は、例えば、ディスプレイ、スピーカといったデバイスを有する。ディスプレイは、画像を表示するデバイスであり、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等である。ディスプレイは、プロセッサ97から受信した画像データに応じた画像を表示する。スピーカは、音声を出力するデバイスである。出力装置94は、プロセッサ97が生成した信号に応じて、画像、音声等を出力する。また、出力装置94は、プロセッサ97が生成した信号に応じて、所定のパターンで発光する光源、または、所定のパターンで振動する振動子を有してもよい。
【0057】
入力装置95は、携帯入力部の一例であり、携帯機器9を所持する歩行者による操作を受け付けるデバイスである。入力装置95は、例えば、ディスプレイに重畳されたタッチパネル、音声を受け付けるマイクといったデバイスを有する。入力装置95は、受け付けた操作に対応する信号を生成し、プロセッサ97に出力する。
【0058】
メモリ96は、携帯記憶部の一例であり、揮発性の半導体メモリおよび不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ96は、プロセッサ97による処理に用いられる各種データ、例えば、携帯機器9を所持する歩行者に対して通知されるメッセージの内容を表すメッセージ情報を保存する。メッセージ情報は、例えば「車両が接近しているので注意してください」といった音声を表す音声情報、警報音を表す音声情報、「車両が接近しているので注意してください」といったテキストを表す文字情報などである。また、メモリ96は、検出装置7から受信した検出情報821を一時保存する。また、メモリ72は、各種アプリケーションプログラム、例えば検通知理を実行するための通知用プログラム等を保存する。
【0059】
プロセッサ97は、携帯制御部の一例であり、1以上のプロセッサおよびその周辺回路を有する。プロセッサ97は、論理演算ユニット、数値演算ユニット、またはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。
【0060】
図8は、携帯機器9が有するプロセッサ97の機能ブロック図である。携帯機器9のプロセッサ97は、機能ブロックとして、受信部971と、通知部972と、応答送信部973とを有する。
【0061】
プロセッサ97が有するこれらの各部は、メモリ96に記憶されプロセッサ97上で実行されるコンピュータプログラムによって実装される機能モジュールである。プロセッサ97の各部の機能を実現するコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。あるいは、プロセッサ97が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、またはファームウェアとして携帯機器9に実装されてもよい。
【0062】
受信部971は、近距離無線回路91を介して、検出装置7から送信された検出情報を受信する。検出装置7の送信部732について上述したように、近距離無線回路91と検出装置7との間の通信は、同報通信技術を用いて行なわれる。同報通信技術として、例えばBluetooth(登録商標) Low Energy通信が用いられる場合、近距離無線回路91は、Bluetooth(登録商標) Low Energy通信におけるオブザーバーとして動作し、ブロードキャスターとして動作する検出装置7から所定時間間隔で定期的に送信されるアドバタイジング・パケットをスキャンすることで、検出情報を受信することができる。
【0063】
通知部972は、所定の時間間隔おきにGNSS受信機93から測位信号を受信し、測位信号に表される携帯機器9の位置を特定する。また、通知部972は、特定された携帯機器9の位置が、受信した検出情報に含まれる位置情報に示された位置のいずれか一つに対応するか否かを判定する。通知部972は、特定された携帯機器9の位置が、受信した検出情報に含まれる位置情報に示された位置のいずれか一つに対応する場合、出力装置94により携帯機器9を所持する歩行者にメッセージを通知する。
【0064】
通知部972は、特定された携帯機器9の位置を、受信した検出情報に含まれる移動物体ごとに、当該移動物体に関連づけられた位置情報に対応するか否かを判定する。通知部972は、特定された携帯機器9の位置が、受信した検出情報に含まれるいずれかの移動物体に関連づけられた位置情報に示される位置から、当該移動物体に関連づけられた精度情報に示される距離の範囲に含まれる場合、特定された携帯機器9の位置が、受信した検出情報に含まれる位置情報に示された位置のいずれか一つに対応すると判定する。
【0065】
通知部972は、特定された携帯機器9の位置が、受信した検出情報に含まれる位置情報に示された位置のいずれか一つに対応すると判定された場合、メモリ96に保存されたメッセージ情報を出力装置94に出力し、当該携帯機器9を所持する歩行者に通知させる。
【0066】
応答送信部973は、携帯機器9を所持する歩行者によるメッセージに対する応答を受け付けた場合、歩行者による応答があったことを示す応答情報を、近距離無線回路91を介して検出装置7に送信する。近距離無線回路91は、例えばBluetooth(登録商標) Low Energy通信により、応答情報を検出装置7に送信してもよい。
【0067】
応答送信部973は、例えばディスプレイに重畳されたタッチパネルである入力装置95により、ディスプレイに表示されたメッセージの領域に対する歩行者のタッチを検出することにより、歩行者によるメッセージに対する応答を受け付けてよい。また、応答送信部973は、例えばマイクである入力装置95により、音声により通知されたメッセージに対する歩行者の音声応答(「了解」「OK」など)を検出することにより、歩行者のメッセージに対する応答を受け付けてよい。
【0068】
なお、受信部971は、広域無線回路92を介して、検出装置7から送信された検出情報を受信してもよい。また、応答送信部973は、広域無線回路92を介して、応答情報を検出装置7に送信してもよい。
【0069】
検出装置7は、検出情報に含まれる位置情報の数と、携帯機器9から受信した応答情報の数とを比較する。検出装置7は、受信した応答情報の数が検出情報に含まれる位置情報の数に満たない場合、走行制御装置6に対し、周辺物体までの間隔をより長くする、走行速度をより遅くするなど、より安全に車両1の走行を制御することを要求する安全走行要求信号を送信する。
【0070】
このように検出装置7および携帯機器9を構成することにより、通知システム100は、車両の周辺の所定領域内に存在する歩行者に対し、適切にメッセージを通知することができる。
【0071】
通知システム100は、歩行者または歩行者が所持する携帯機器を特定することなく、車両の周辺の所定領域に存在する歩行者に対し選択的にメッセージを送信することができる。そのため、通知システム100は、歩行者のプライバシーを適切に保護しつつ、適切にメッセージを通知することができる。
【0072】
図9は変形例の通知システムの概要を説明する図であり、
図10は変形例の通知システムの動作シーケンス図である。
【0073】
通知システム200は、車両1に搭載される検出装置7と、車両1の周辺に存在する1以上の歩行者Pがそれぞれ所持する1以上の携帯機器9と、通信ネットワークNWに通信可能に接続されたサーバ10とを含む。サーバ10は、通信回路(サーバ通信部の一例、不図示)と、メモリ(サーバ記憶部の一例、不図示)と、プロセッサ(不図示)とを備える。検出装置7は、データ通信モジュール4および通信ネットワークNWに含まれる無線基地局WBSを介して、サーバ10と通信可能である。携帯機器9は、広域無線回路92および通信ネットワークNWに含まれる無線基地局WBSを介して、サーバ10と通信可能である。
【0074】
携帯機器9のプロセッサ97は、機能ブロックとしてアップロード部(不図示)をさらに備える。アップロード部は、広域無線回路92を介して、機器位置情報を定期的(例えば1分おき)にサーバ10にアップロードする(ステップS41)。
【0075】
サーバ10のプロセッサは、機能ブロックとして位置登録部(不図示)を有する。位置登録部は、通信インタフェースを介して携帯機器9から機器位置情報を受信し、各携帯機器に関連づけて当該携帯機器の現在位置をメモリに記憶させる(ステップS51)。
【0076】
検出装置7の検出部731は、対象領域A内において歩行者Pの位置を検出する(ステップS31)。検出装置7の送信部732は、歩行者Pの位置を示す位置情報を含む検出情報を、データ通信モジュール4および通信ネットワークNWに含まれる無線基地局WBSを介してサーバ10に送信する(ステップS32)。
【0077】
サーバ10のプロセッサは、機能ブロックとして通知送信部(不図示)をさらに備える。通知送信部は、通信回路を介して検出装置から検出情報を受信し、メモリに記憶された各携帯機器の現在位置のそれぞれが、検出装置から受信された検出情報に含まれる位置情報に示された検出された位置に対応するか否かを判定する(ステップS52)。通知送信部は、各携帯機器のうち、現在位置が検出された位置に対応すると判定された携帯機器に、通信回路を介して通知情報を送信する(ステップS52:Y)。通知情報は、送信対象となる携帯機器が当該携帯機器を所持する歩行者に対して所定の通知を行うべきことを示す情報である。また、通知送信部は、検出された位置に対応すると判定されない現在位置に関連づけられた携帯機器には、通知情報を送信しない(ステップS52:N)。
【0078】
各携帯機器のうち、通知情報を受信した携帯機器9は、出力装置94により、当該携帯機器9を所持する歩行者にメッセージを通知する(ステップS42)。
【0079】
このように検出装置7、携帯機器9、およびサーバ10が動作することにより、通知システム200は、車両の周辺の所定領域内に存在する歩行者に対し、適切にメッセージを通知することができる。
【0080】
当業者は、本開示の精神および範囲から外れることなく、種々の変更、置換および修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0081】
100、200 通知システム
1 車両
7 検出装置
731 検出部
732 送信部
9 携帯機器
971 受信部
972 通知部
973 応答送信部
10 サーバ