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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】再生制御装置及びこれを備えた建設機械
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/023 20060101AFI20241016BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
F01N3/023 Z
E02F9/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022156440
(22)【出願日】2022-09-29
(65)【公開番号】P2024049923
(43)【公開日】2024-04-10
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】臼本 翔汰
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-225202(JP,A)
【文献】特開2011-037334(JP,A)
【文献】特開2012-145083(JP,A)
【文献】特開2014-029156(JP,A)
【文献】特開2022-097011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
E02F 9/00- 9/18、 9/24- 9/28
F01N 3/00- 3/38、 9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンから排出される排ガスを浄化するための浄化要素を含む排ガス浄化装置と、を備える建設機械のための再生制御装置であって、
前記建設機械による作業を許容しながら前記浄化要素による前記排ガスの浄化性能を回復させる再生処理である作業許容再生処理と前記作業を禁止しながら前記浄化性能を回復させる再生処理である作業禁止再生処理を制御するコントローラを備え、
前記コントローラには、前記浄化要素における異物の堆積量に応じた複数のレベルが予め定められており、前記複数のレベルは、前記堆積量が最も多いレベルである最多レベルと、前記最多レベルの次に前記堆積量が多いレベルである一つ前のレベルと、前記堆積量が最も少ないレベルと、を含み、
前記コントローラは、前記堆積量が前記一つ前のレベルである場合には前記作業許容再生処理の制御を行い、前記作業許容再生処理が中断された場合には前記作業禁止再生処理を開始することの許可をオペレータに求めるための制御である許可要求制御を行い、前記許可を取得した場合には前記作業禁止再生処理の制御を行う、再生制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の再生制御装置であって、
オペレータによる操作が与えられるレバー操作器をさらに備え、
前記コントローラは、前記許可を求めた後に所定の待機時間が経過した時点において前記許可を取得していない場合で、かつ、前記レバー操作器に前記操作が与えられていないことを含む所定の条件が満たされた場合には、前記作業禁止再生処理の制御を行う、再生制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の再生制御装置であって、
前記許可要求制御が行われているときに前記待機時間に関する情報をオペレータに知らせるための報知装置をさらに備える、再生制御装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の再生制御装置を備える建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排ガス浄化装置を備えた建設機械に用いられる再生制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、クレーンなどの建設機械にはエンジンが搭載され、当該エンジンの出力によって建設機械に含まれる駆動対象要素の駆動が行われる。この建設機械は、エンジンから排出される排ガスを浄化するための浄化要素を含む排ガス浄化装置を備える。この浄化要素としては、例えば、SCR触媒(SCR:Selective Catalytic Reduction)、DPF(Diesel Particle Filter)、DOC(Diesel Oxidation Catalyst)などが挙げられる。この浄化要素による排ガスの浄化性能は、排ガスを浄化する時間(浄化処理時間)の経過とともに当該浄化要素への異物の堆積量が増加することに起因して低下する。従って、浄化性能が低下した場合には、浄化性能を回復させるための再生処理が実行される。
【0003】
再生処理としては、建設機械による作業を許容しながら浄化要素による排ガスの浄化性能を回復させる再生処理である作業許容再生処理と、建設機械による作業を禁止しながら前記浄化性能を回復させる再生処理である作業禁止再生処理と、がある。作業許容再生処理は、自動再生処理と称されることがあり、作業禁止再生処理は、手動再生処理、駐車再生処理などと称されることがある。
【0004】
特許文献1の排気処理装置では、自動再生処理は、DPFのPM堆積量推定値が所定の自動再生開始判定値に至ったことに基づいて自動的に開始され、駐車再生処理は、第1条件と第2条件が満たされた場合に行われる。第1条件は、自動再生処理の中断回数が所定の駐車再生要求判定値以上に至ったことに基づいて、駐車再生要求報知部品で駐車再生要求の報知がなされたことである。第2条件は、エンジン搭載機械が走行と作業のいずれもがなされていない駐車状態で、駐車再生開始操作部品が開始操作されたことである。
【0005】
特許文献2は、堆積量のレベルを考慮して的確な再生処理を行うことを目的とする技術を開示している。この特許文献2の再生装置では、微粒子の堆積量が手動再生と自動再生とが可能な第一レベル(特許文献2の図3における「レベル2」)であると判定された場合、手動再生を実行させる再生指示信号の入力を要求する信号入力要求画像を表示手段が表示し、前記微粒子の堆積量が前記第一レベルよりも多く手動再生のみが可能な第二レベル(特許文献2の図3における「レベル3」)であると判定された場合、手動再生を実行させる再生指示信号の入力を要求する信号入力要求画像を表示手段が表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6530351号公報
【文献】特許第5809675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の排気処理装置では、駐車再生処理は、自動再生処理の中断回数が前記判定値以上に達すれば、浄化要素への異物の堆積量が少ない場合であっても行われ、その駐車再生処理中には建設機械が作業を行うことができない。この場合、不要な駐車再生処理に起因してダウンタイムが増加する。
【0008】
特許文献2の再生装置では、予め定められた複数のレベルのうち、微粒子の堆積量が最も多い最多レベル(特許文献2の図3における「レベル4」)に当該堆積量が達すること、すなわち浄化要素における異物の過堆積が生じること、を回避するために、微粒子の堆積量が最多レベルの一つ前のレベル(特許文献2の図3における「レベル3」)であると判定された場合、手動再生が行われる。この手動再生中には建設機械が作業を行うことができず、再生処理に起因するダウンタイムが増加する。
【0009】
本開示は、建設機械が作業を行うことができないダウンタイムが再生処理に起因して増加することを抑制するとともに、浄化要素における異物の過堆積が生じることを抑制することができる再生制御装置及びこれを備えた建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
提供されるのは、エンジンと、前記エンジンから排出される排ガスを浄化するための浄化要素を含む排ガス浄化装置と、を備える建設機械のための再生制御装置であって、前記建設機械による作業を許容しながら前記浄化要素による前記排ガスの浄化性能を回復させる再生処理である作業許容再生処理と前記作業を禁止しながら前記浄化性能を回復させる再生処理である作業禁止再生処理を制御するコントローラを備え、前記コントローラには、前記浄化要素における異物の堆積量に応じた複数のレベルが予め定められており、前記複数のレベルは、前記堆積量が最も多いレベルである最多レベルと、前記最多レベルの次に前記堆積量が多いレベルである一つ前のレベルと、前記堆積量が最も少ないレベルと、を含み、前記コントローラは、前記堆積量が前記一つ前のレベルである場合には前記作業許容再生処理の制御を行い、前記作業許容再生処理が中断された場合には前記作業禁止再生処理を開始することの許可をオペレータに求めるための制御である許可要求制御を行い、前記許可を取得した場合には前記作業禁止再生処理の制御を行う。
【0011】
この再生制御装置では、コントローラは、浄化要素における異物の堆積量が最多レベルの次のレベルである前記一つ前のレベルまで増加している場合であっても、作業禁止再生処理の制御ではなく、作業許容再生処理の制御を優先して行う。この作業許容再生処理が行われているときには建設機械は作業を行うことができるので、建設機械が作業を行うことができないダウンタイムが再生処理に起因して増加することを抑制できる。そして、仮に、何らかの理由で作業許容再生処理が中断された場合であっても、コントローラは、作業禁止再生処理を開始することの許可をオペレータに求めるための許可要求制御を行うので、オペレータに作業禁止再生処理の必要性を知らせ、作業禁止再生処理の開始を許可することをオペレータに促すことができる。そして、コントローラは、オペレータによる許可を取得した場合には作業禁止再生処理の制御を行う。従って、堆積量が最多レベルの次の前記一つ前のレベルまで増加している場合で、かつ、作業許容再生処理が中断された場合であっても、堆積量が最多レベルに達すること、すなわち、浄化要素において異物の過堆積が生じることを抑制できる。
【0012】
前記再生制御装置は、オペレータによる操作が与えられるレバー操作器をさらに備え、前記コントローラは、前記許可を求めた後に所定の待機時間が経過した時点において前記許可を取得していない場合で、かつ、前記レバー操作器に前記操作が与えられていないことを含む所定の条件が満たされた場合には、前記作業禁止再生処理の制御を行うことが好ましい。この構成では、堆積量が最多レベルの次の前記一つ前のレベルまで増加している場合で、作業許容再生処理が中断された場合で、かつ、何らかの理由でオペレータが作業禁止再生処理の開始を許可しない場合であっても、所定の待機時間が経過し、前記所定の条件が満たされた場合には、作業禁止再生処理の制御が自動的に行われるので、浄化要素において異物の過堆積が生じることを抑制できる。
【0013】
前記再生制御装置は、前記許可要求制御が行われているときに前記待機時間に関する情報をオペレータに知らせるための報知装置をさらに備えることが好ましい。この構成では、作業禁止再生処理を開始することの許可をオペレータに求めるための許可要求制御が行われているときに、待機時間に関する情報が報知装置を通じてオペレータに報知されるので、作業禁止再生処理の必要性がオペレータにより効果的に伝達される。
【0014】
提供される建設機械は、上述した再生制御装置を備える。この建設機械は、作業を行うことができないダウンタイムが再生処理に起因して増加することを抑制するとともに、浄化要素における異物の過堆積が生じることを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、建設機械が作業を行うことができないダウンタイムが再生処理に起因して増加することを抑制するとともに、浄化要素における異物の過堆積が生じることを抑制することができる再生制御装置及びこれを備えた建設機械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の実施形態に係る再生制御装置を備える建設機械を示す側面図である。
図2】前記建設機械の機能構成を示すブロック図である。
図3】前記建設機械の排ガス浄化装置及びこれに関連する構成を示すブロック図である。
図4】前記再生制御装置のコントローラにおいて定められた複数のレベルを示す表である。
図5】前記コントローラが行う演算処理の一例を示すフローチャートである。
図6図5の続きのフローチャートである。
図7】前記実施形態の変形例に係る再生制御装置のコントローラにおいて定められた複数のレベルを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の実施形態に係る再生制御装置及びこれを備えた建設機械を、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る建設機械は、エンジンから排出される排ガスを浄化するための浄化要素を含む排ガス浄化装置を備える。
【0018】
図1は、本実施形態に係る再生制御装置を備える建設機械X1を示す。この建設機械X1はクローラクレーンであるが、本開示に係る再生制御装置が適用される建設機械は、クローラクレーンに限定されず、排ガス浄化装置を備える他の建設機械にも広く適用されることが可能である。前記他の建設機械は、例えば、ホイールクレーンであってもよく、油圧ショベルであってもよく、ブルドーザーであってもよい。
【0019】
建設機械X1は、下部走行体1と、下部走行体1の上に旋回可能に支持される旋回フレーム2a及びその上に配置される運転室2bを含む上部旋回体2と、旋回フレーム2aに搭載されて種々の作業を行う作業装置と、を備える。作業装置は、旋回フレーム2aに対して起伏動作を行うことが可能な起伏部材3と、起伏ロープ4の巻取り及び巻出しを行うことにより起伏部材3を起伏させる起伏ウィンチ5と、吊り荷が掛けられる主巻フック6と、主巻ロープ7の巻取り及び巻出しを行うことにより主巻フック6及び吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う主巻ウィンチ8と、図略の補巻ロープの巻取り及び巻出しを行うことにより図略の補巻フック及びこれに掛けられる吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う補巻ウィンチ9と、を有する。本実施形態では、起伏部材3は、ブームにより構成されるが、ブームの先端部に取り付けられる図略のジブをさらに備えていてもよい。
【0020】
図2は、建設機械X1の機能構成を示すブロック図である。図3は、建設機械X1の排ガス浄化装置及びこれに関連する構成を示す図である。
【0021】
この建設機械X1は、エンジン150と、エンジン150から排出される排ガス中の窒素酸化物を還元剤を用いて還元する排ガス浄化装置110と、を備える。本実施形態に係るエンジン150は、ディーゼルエンジンである。
【0022】
この建設機械X1は、再生制御装置を備える。この再生制御装置は、建設機械X1が作業を行うことができないダウンタイムが再生処理に起因して増加することを抑制するとともに、浄化要素における異物の過堆積が生じることを抑制することができる。
【0023】
前記浄化要素としては、例えば、SCR触媒(SCR:Selective Catalytic Reduction)、DPF(Diesel Particle Filter)、DOC(Diesel Oxidation Catalyst)などが挙げられる。
【0024】
この浄化要素による排ガスの浄化性能は、排ガスを浄化する時間(浄化処理時間)の経過とともに当該浄化要素への異物の堆積量が増加することに起因して低下する。従って、浄化性能が低下した場合には、浄化性能を回復させるための再生処理が実行される。再生処理としては、後述する作業許容再生処理(自動再生処理)と作業禁止再生処理(手動再生処理)とがある。
【0025】
図3に示す具体例では、排ガス浄化装置110は、浄化要素としてのDPFと、浄化要素としてのSCR触媒と、を備える。以下の具体例では、DPFによる排ガスの浄化性能を回復させる再生処理に主眼を置いて説明するが、本開示に係る再生制御装置は、SCR触媒による排ガスの浄化性能を回復させる再生処理にも適用可能であり、DOCによる排ガスの浄化性能を回復させる再生処理にも適用可能であり、他の浄化要素による排ガスの浄化性能を回復させる再生処理にも適用可能である。
【0026】
前記再生制御装置は、堆積量検出器135と、コントローラ250と、を備える。堆積量検出器135は、DPFにおける異物の堆積量に関する情報を検出する。堆積量検出器135は、検出結果をコントローラ250に入力する。
【0027】
具体的には、堆積量検出器135は、DPFに対して排ガスの流れの上流における圧力と、DPFに対して排ガスの流れの下流における圧力と、の差(差圧)を検出する。DPFにおける異物の堆積量が増加するにつれて前記差圧が大きくなるので、この差圧は、DPFにおける異物の堆積量に相関する。本実施形態では、堆積量検出器135は、後述する上流排ガス管180における圧力と後述する中間排ガス管181における圧力との差圧を検出する。
【0028】
コントローラ250は、例えば演算処理装置とメモリとを含むコンピュータを備える。コントローラ250は、作業許容再生処理(自動再生処理)と作業禁止再生処置(手動再生処理)を制御する。作業許容再生処理は、建設機械X1による作業を許容しながらDPFによる排ガスの浄化性能を回復させる再生処理である。作業禁止再生処理は、作業を禁止しながらDPFによる排ガスの浄化性能を回復させる再生処理である。
【0029】
再生処理は、例えば、浄化要素を加熱して浄化要素に堆積した異物を燃焼させることにより行われる。再生処理の制御では、例えば、排ガス中に燃料を噴射することにより当該排ガスの温度を上昇させて浄化要素が加熱されてもよい。また、再生処理では、例えば、エンジン150の回転数を増加させることで排ガスの温度を上昇させて浄化要素が加熱されてもよい。また、再生処理では、例えば、図略の負荷がけバルブ(リリーフバルブ)を操作することで排ガスの温度を上昇させて浄化要素が加熱されてもよく、異物の燃焼を促進させるような物を添加することで排ガスの温度を上昇させて浄化要素が加熱されてもよい。
【0030】
図4に示すように、コントローラ250には、DPFにおける異物の堆積量に応じた複数のレベルが予め定められている。DPFに堆積する異物は、例えば、粒子状物質である。複数のレベルは、コントローラ250のメモリに予め記憶されている。
【0031】
図4に示す具体例では、複数のレベルは、レベル0~レベル5までの6つのレベルを含む。レベル0は、異物の堆積量が最も少ない最少レベルである。レベル5は、堆積量が最も多い最多レベルである。レベル4は、レベル5(最多レベル)の次に異物の堆積量が多いレベルである。このレベル4は、本開示における「一つ前のレベル」の一例である。レベル0とレベル4の間には、レベル1、レベル2及びレベル3がさらに設定されている。DPFにおける異物の堆積量は、レベル0からレベル5の順に次第に大きくなる。複数のレベルのそれぞれは、異物の堆積量の範囲を有する。
【0032】
レベル5は、異物の堆積量の上限値以上の範囲である。レベル5(最多レベル)は、DPFの交換が必要になるレベルである。すなわち、最多レベルは、浄化要素を再生することが困難になる程度まで浄化要素における異物の堆積量が多くなるレベルである。
【0033】
コントローラ250は、堆積量検出器135から入力される検出結果に基づいて、DPFにおける異物の堆積量を判定する。コントローラ250は、堆積量がレベル4(前記一つ前のレベル)である場合には作業許容再生処理の制御を行い、作業許容再生処理が中断された場合には作業禁止再生処理を開始することの許可をオペレータに求めるための制御である許可要求制御を行い、許可を取得した場合には作業禁止再生処理の制御を行う。
【0034】
すなわち、コントローラ250は、DPFにおける異物の堆積量がレベル5(最多レベル)の次のレベル4(前記一つ前のレベル)まで増加している場合であっても、作業禁止再生処理の制御ではなく、作業許容再生処理の制御を優先して行う。この作業許容再生処理が行われているときには建設機械X1は作業を行うことができるので、建設機械X1が作業を行うことができないダウンタイムが再生処理に起因して増加することを抑制できる。そして、仮に、何らかの理由で作業許容再生処理が中断された場合であっても、コントローラ250は、作業禁止再生処理を開始することの許可をオペレータに求めるための許可要求制御を行うので、オペレータに作業禁止再生処理の必要性を知らせ、作業禁止再生処理の開始を許可することをオペレータに促すことができる。そして、コントローラ250は、オペレータによる許可を取得した場合には作業禁止再生処理の制御を行う。従って、堆積量がレベル5(最多レベル)の次のレベル4(前記一つ前のレベル)まで増加している場合で、かつ、作業許容再生処理が中断された場合であっても、堆積量がレベル5(最多レベル)に達すること、すなわち、浄化要素において異物の過堆積が生じることを抑制できる。
【0035】
本実施形態に係る再生制御装置は、オペレータによる操作が与えられる複数のレバー操作器210と、レバー操作量検出器230と、をさらに備える。複数のレバー操作器210のそれぞれは、後述するアクチュエータ270を動作させるためのオペレータの操作を受け付ける。複数のレバー操作器210は、例えば、起伏部材3を起伏させるための起伏部材操作器と、主巻フック6を上下に昇降させるための昇降操作器と、上部旋回体2を旋回させるための旋回操作器と、を含んでいてもよい。
【0036】
レバー操作量検出器230は、例えば、ポテンショメータで構成され、複数のレバー操作器210のそれぞれの傾倒角度をそのレバー操作器210に対する操作量として検出する。レバー操作量検出器230は、検出結果をコントローラ250に入力する。
【0037】
コントローラ250は、前記許可要求制御において前記許可を求めた後に所定の待機時間が経過した時点において前記許可を取得していない場合で、かつ、複数のレバー操作器210の何れにも操作が与えられていないことを含む所定の条件が満たされた場合には、作業禁止再生処理の制御を行う。これにより、堆積量がレベル5(最多レベル)の次のレベル4(前記一つ前のレベル)まで増加している場合で、作業許容再生処理が中断された場合で、かつ、何らかの理由でオペレータが作業禁止再生処理の開始を許可しない場合であっても、所定の待機時間が経過し、前記所定の条件が満たされた場合には、作業禁止再生処理の制御が自動的に行われる。その結果、DPFにおいて異物の過堆積が生じることを抑制できる。
【0038】
本実施形態に係る再生制御装置は、前記許可要求制御が行われているときに前記待機時間に関する情報をオペレータに知らせるための報知装置280をさらに備える。これにより、作業禁止再生処理を開始することの許可をオペレータに求めるための許可要求制御が行われているときに、待機時間に関する情報が報知装置280を通じてオペレータに報知されるので、作業禁止再生処理の必要性がオペレータにより効果的に伝達される。
【0039】
なお、本実施形態では、図4の表の最下欄に記載されているように、DPFにおける異物の堆積量のレベルがレベル2~4の何れかである場合には、コントローラ250は、オペレータによる指示に応じて、作業禁止再生処理の制御を行ってもよい。
【0040】
以上の内容が本実施形態に係る再生制御装置の主な内容である。以下、再生制御装置及びこれに付随する建設機械の他の構成要素についてさらに説明する。
【0041】
建設機械X1は、排ガス浄化装置110に還元剤を供給する噴射器120と、エンジン150により駆動され、噴射器120を冷却するための冷却装置と、排ガスの温度を検出する第1温度センサ131及び第2温度センサ132と、をさらに備える。冷却装置は、冷却ポンプ151と、冷却配管170と、を含む。
【0042】
また、建設機械X1は、油圧ポンプ153と、アクセル操作器220と、アクセル操作量検出器240と、コントロールバルブ260と、複数のアクチュエータ270と、をさらに備える。
【0043】
冷却ポンプ151は、エンジン150によって駆動されることにより冷却配管170を通じて冷却水を循環させる。油圧ポンプ153は、エンジン150によって駆動されることにより作動油を吐出する。油圧ポンプ153から吐出された作動油は、コントロールバルブ260を介して複数のアクチュエータ270の少なくとも一つに供給される。
【0044】
排ガス浄化装置110は、第1処理部101と、第2処理部102と、を備える。第1処理部101及び第2処理部102のそれぞれは、排ガスを浄化する処理を行う。図3に示すように、建設機械X1は、上流排ガス管180と、中間排ガス管181と、下流排ガス管182と、を備える。上流排ガス管180は、エンジン150と第1処理部101とを接続する。中間排ガス管181は、第1処理部101と第2処理部102とを接続する。下流排ガス管182には、第2処理部102が接続され、第2処理部102において浄化された排ガスが排出される。排ガス浄化装置110により浄化された排ガスは、下流排ガス管182を通じて大気中に排出される。
【0045】
第1処理部101は、浄化要素としてのDPF及びこれを収容するハウジングを含む第1処理部本体と、第1処理部本体内に排気ガスを導入するために第1処理部本体に設けられた導入管とを備えている。DPFは、排ガス中の粒子状物質を捕捉するためのフィルタである。DPFは、当該DPFに対する粒子状物質の捕捉量の増加に応じて粒子状物質の捕捉性能、つまり、排ガスの浄化性能が低下する。一方、再生処理においてDPFを加熱して当該DPFに捕捉された粒子状物質を燃焼することにより当該DPFによる排ガスの浄化性能は回復し、DPFは再生される。
【0046】
ただし、第1処理部101における浄化要素は、排ガス中の未燃焼ガスを酸化除去するための酸化触媒であるDOCであってもよい。DOCは、排ガスが当該DOCを通過する過程において排ガスを浄化するものであるため、DOCに排ガス中の異物が堆積するとDOCによる排ガスの浄化性能は低下する。再生処理においてDOCを加熱してDOCに堆積した異物を燃焼することにより当該DOCによる排ガスの浄化性能は回復し、DOCは再生される。
【0047】
第2処理部102は、排ガス中の窒素酸化物の選択的触媒還元(SCR)の反応を行うための還元装置を備えている。
【0048】
噴射器120は、排ガス浄化装置110に液体還元剤(例えば、尿素水)を供給する。図3に示すように、建設機械X1は、液体還元剤を貯留する還元剤タンク121と、還元剤タンク121と噴射器120とを接続する還元剤送液管122と、図略の還元剤ポンプと、をさらに備える。噴射器120は、還元剤タンク121から前記還元剤ポンプを通じて供給される還元剤を排ガス管内に噴射する。本実施形態では、噴射器120は、中間排ガス管181に取り付けられており、第2処理部102に向かって中間排ガス管181を流れる排ガスに還元剤を供給する。噴射器120から液体還元剤が排ガス中に噴射されることにより、第2処理部102の還元装置におけるSCRの反応が促進される。
【0049】
第1温度センサ131及び第2温度センサ132のそれぞれは、排ガス浄化装置110に取り付けられ、排ガス浄化装置110を流れる排ガスの温度を検出し、検出結果をコントローラ250に入力する。
【0050】
第1温度センサ131は、DPFを通過した排ガスの温度を検出する。図3に示す具体例では、第1温度センサ131は、第1処理部101から中間排ガス管181に排出された直後の排ガスの温度を検出する。コントローラ250は、第1温度センサ131から入力される検出結果を、DPFの再生処理の制御に用いてもよい。
【0051】
第2温度センサ132は、第2処理部102内の排ガスの温度又は第2処理部102に流入する排ガスの温度を検出する。図3に示す具体例では、第2温度センサ132は、第2処理部102に流入する直前の排ガスの温度を検出する。コントローラ250は、第2温度センサ132から入力される検出結果を、SCR触媒の再生処理の制御に用いてもよい。
【0052】
アクセル操作器220は、例えば、アクセルダイヤル又はアクセルペダルで構成され、エンジン150の回転数を調整するためのオペレータの操作を受け付ける。
【0053】
アクセル操作量検出器240は、例えば、ポテンショメータで構成され、アクセル操作器220の操作角度をアクセル操作器220に対する操作量として検出する。アクセル操作量検出器240は、検出結果をコントローラ250に入力する。
【0054】
コントロールバルブ260は、コントローラ250による制御の下、油圧ポンプ153から吐出された作動油を複数のアクチュエータ270のそれぞれに分配する。
【0055】
複数のアクチュエータ270は、例えば、コントロールバルブ260を介して供給される作動油によって駆動される油圧モータと、油圧シリンダと、を含んでいてもよい。具体的には、複数のアクチュエータ270は、例えば、起伏部材3を起伏させる起伏ウィンチ5を駆動する油圧モータと、主巻フック6を上下方向に昇降させる主巻ウィンチ8を駆動する油圧モータと、上部旋回体2を旋回させる油圧モータと、を含む。
【0056】
コントローラ250は、機械制御部251と、判定部252と、報知制御部253と、浄化装置制御部254と、エンジン制御部255と、を含む。機械制御部251、判定部252、報知制御部253、浄化装置制御部254、及びエンジン制御部255のそれぞれは、メモリに記憶された制御プログラムが実行されることにより実現される。
【0057】
機械制御部251は、堆積量検出器135、第1温度センサ131、第2温度センサ132、レバー操作量検出器230、アクセル操作量検出器240、などの検出器から入力される検出結果に基づいて、建設機械X1の動作を制御する。
【0058】
判定部252は、作業許容再生処理の制御、作業禁止再生処理の制御、許可要求制御などの制御において種々の判定を行う。
【0059】
報知制御部253は、報知装置280を制御する。報知装置280は、モニタ281と、ブザー282と、を含む。モニタ281は、例えば、報知制御部253からの指令に基づいて、許可要求制御が行われているときに待機時間に関する情報をオペレータに知らせるための表示を行う。ブザー282は、例えば、報知制御部253からの指令に基づいて、許可要求制御が行われているときに待機時間に関する情報をオペレータに知らせるための警告音を発する。報知装置280は、例えばランプをさらに含んでいてもよい。
【0060】
浄化装置制御部254は、例えば第1温度センサ131及び/又は第2温度センサ132により検出された排ガスの温度等に応じて、必要な量の還元剤が噴射されるように噴射器120を制御する。浄化装置制御部254は、例えば、噴射器120における噴射弁の開度を制御することで、噴射器120から噴射される還元剤の量を制御してもよい。
【0061】
エンジン制御部255は、エンジン150を制御する。エンジン制御部255は、コントローラ250からの指令にしたがってエンジン150の回転数を制御する。オペレータは、エンジン150を始動させるためのエンジンオン操作又はエンジン150を停止させるためのエンジンオフ操作を例えばイグニションキーなどの図略のエンジン操作器に与える。エンジン制御部255は、エンジンオン操作に基づいてエンジンを始動させ、エンジンオフ操作に基づいてエンジンを停止させる。
【0062】
エンジン150の駆動中には冷却ポンプ151は駆動され、エンジン150が停止すると冷却ポンプ151は停止する。従って、エンジン150の駆動中には、冷却水は、冷却配管170を循環し、これにより、エンジン150、噴射器120、及び排ガス浄化装置110は冷却される。冷却配管170は、エンジン150及び噴射器120間に接続された、冷却水を循環させる循環路である。冷却配管170は、冷却水を冷却させるラジエータを備え、ラジエータにより冷却された冷却水を、噴射器120に供給し、噴射器120を冷却する。
【0063】
図5は、建設機械X1の再生制御装置のコントローラ250が行う演算処理の一例を示すフローチャートであり、図6は、図5の続きのフローチャートである。以下、図5及び図6を参照しながら、コントローラ250による制御について説明する。
【0064】
コントローラ250は、DPFにおける異物の堆積量に関する情報を堆積量検出器135から取得する(ステップS11)。
【0065】
コントローラ250の判定部252は、前記堆積量に関する情報を用いて、その時点でのDPFにおける異物の堆積量(実堆積量)が複数のレベル0~5の何れのレベルに含まれるかを判定する。そして、判定部252は、実堆積量のレベルが、最多レベルの1つ前のレベルであるか否か、すなわち、図4に示すレベル4であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0066】
実堆積量のレベルがレベル4(前記1つ前のレベル)ではない場合(ステップS12においてNO)、コントローラ250は、実堆積量のレベルに応じた処理が行われるように建設機械X1の動作を制御した後(ステップS14)、ステップS11以降の処理を繰り返す。
【0067】
具体的には、例えば図4に示すように、実堆積量のレベルがレベル0(最少レベル)である場合、DPFにおける異物の堆積量が少ないため、再生処理は行われない。実堆積量のレベルがレベル1~3の何れかである場合、コントローラ250は、DPFによる排ガスの浄化性能を回復させるために、作業許容再生処理の制御を行う。実堆積量のレベルがレベル5(最多レベル)である場合、DPFを再生することが困難であるため、コントローラ250の報知制御部253は、DPFの交換が必要であることがモニタ281に表示されるように報知装置280を制御する。
【0068】
実堆積量のレベルがレベル4(前記1つ前のレベル)である場合(ステップS12においてYES)、コントローラ250は、作業許容再生処理(自動再生処理)が開始されるように建設機械X1の動作を制御する(ステップS13)。
【0069】
次に、コントローラ250は、作業許容再生処理(自動再生処理)が中断されたか否かを判定する(ステップS15)。作業許容再生処理を中断させるための入力(中断入力)を受け付ける図略の入力器(例えば中断スイッチ)を建設機械X1が備えている場合には、オペレータがこの入力器に対して中断入力を行うと、中断入力に対応する信号(中断信号)がコントローラ250に入力される。この場合、コントローラ250の判定部252は、中断信号の有無に基づいて、作業許容再生処理が中断されたか否かを判定することができる。ただし、前記入力器は、中断スイッチに限られず、作業許容再生処理を中断させるための入力をオペレータ行うことができる他の装置であってもよい。他の装置は、例えばモニタ281であってもよく、オペレータは、モニタ281の一部に表示された特定の領域をタッチすることで、作業禁止再生処理を中断させるための入力を行ってもよい。
【0070】
作業許容再生処理が中断されていない場合(ステップS15においてNO)、コントローラ250の判定部252は、作業許容再生処理(自動再生処理)が完了したか否かを判定する(ステップS17)。コントローラ250の判定部252は、例えば、堆積量検出器135から入力される堆積量に関する情報に基づいて、作業許容再生処理が完了したか否かを判定してもよい。また、コントローラ250の判定部252は、例えば、作業許容再生処理が開始された時点からの経過時間が予め設定された時間に到達した場合に、作業許容再生処理が完了したと判定してもよい。また、コントローラ250の判定部252は、例えば、第1温度センサ131又は第2温度センサ132により検出される排ガスの温度が予め設定された温度以上になった場合に、作業許容再生処理が完了したと判定してもよい。また、コントローラ250の判定部252は、例えば、第1温度センサ131又は第2温度センサ132により検出される排ガスの温度が予め設定された温度以上になった状態が予め設定された時間以上継続された場合に、作業許容再生処理が完了したと判定してもよい。
【0071】
作業許容再生処理が完了していない場合(ステップS17においてNO)、コントローラ250は、ステップS15以降の処理を繰り返す。作業許容再生処理が完了した場合(ステップS17においてYES)、コントローラ250は、ステップS11以降の処理を繰り返す。
【0072】
作業許容再生処理が中断された場合(ステップS15においてYES)、コントローラ250は、作業許容再生処理(自動再生処理)を停止させ(ステップS16)、図6に示すステップS18以降の処理を行う。ステップS18において、コントローラ250は、作業禁止再生処理(手動再生処理)を開始することの許可をオペレータに求めるための制御である許可要求制御を行う。
【0073】
この許可要求制御において、コントローラ250の報知制御部253は、例えば、作業禁止再生処理の開始を許可する操作をオペレータに促すような内容がモニタ281に表示されるように報知装置280を制御する。この表示内容を見たオペレータは、例えば、モニタ281の一部に表示された「許可」又は「不許可」の領域をタッチすることで、作業禁止再生処理の開始の許可又は不許可の入力を行うことができる。オペレータが入力した情報は、コントローラ250に入力される。また、作業禁止再生処理の開始の許可又は不許可に関する情報を入力するための図略の入力器が別途設けられている場合には、オペレータは、この入力器に対して「許可」又は「不許可」の入力を行う。オペレータが入力した情報は、コントローラ250に入力される。
【0074】
コントローラ250の判定部252は、作業禁止再生処理(手動再生処理)の開始が許可されたか否かを判定する(ステップS19)。
【0075】
コントローラ250は、作業禁止再生処理の開始が許可された場合(ステップS19においてYES)、ステップS22以降の処理を行う。一方、コントローラ250は、作業禁止再生処理の開始が許可されない場合(ステップS19においてNO)、ステップS20及びS21の処理を行った後に、ステップS22以降の処理を行う。
【0076】
作業禁止再生処理の開始が許可された場合(ステップS19においてYES)、コントローラ250の判定部252は、所定の条件が満たされているか否かを判定する(ステップS22)。本実施形態では、所定の条件は、複数のレバー操作器210の何れにも操作が与えられていないことと、エンジン150がアイドリング状態であることと、を含む。コントローラ250は、レバー操作量検出器230から入力される検出結果に基づいて、複数のレバー操作器210に操作が与えられているか否かを判定することができる。エンジン150がアイドリング状態であるか否かについての情報はエンジン制御部255が取得可能である。
【0077】
所定の条件が満たされていない場合(ステップS22においてNO)、コントローラ250は、所定の条件が満たされるまでステップS22の処理を繰り返す。
【0078】
所定の条件が満たされた場合(ステップS22においてYES)、コントローラ250は、レバー操作器210の操作量に応じたパイロット圧がコントロールバルブ260に入力されることを禁止するような制御を行う(ステップS23)。これにより、オペレータがレバー操作器210にレバー操作を与えた場合であっても、油圧ポンプ153からの作動油は、コントロールバルブ260を介して複数のアクチュエータ270の何れにも供給されず、建設機械X1による作業が禁止される。
【0079】
次に、コントローラ250は、作業禁止再生処理(手動再生処理)が開始されるように建設機械X1の動作を制御する(ステップS24)。
【0080】
次に、コントローラ250の判定部252は、作業禁止再生処理が完了したか否かを判定する(ステップS25)。コントローラ250の判定部252は、例えば、堆積量検出器135から入力される堆積量に関する情報に基づいて、作業禁止再生処理が完了したか否かを判定してもよい。また、コントローラ250の判定部252は、例えば、作業禁止再生処理が開始された時点からの経過時間が予め設定された時間に到達した場合に、作業禁止再生処理が完了したと判定してもよい。また、コントローラ250の判定部252は、例えば、第1温度センサ131又は第2温度センサ132により検出される排ガスの温度が予め設定された温度以上になった場合に、作業禁止再生処理が完了したと判定してもよい。また、コントローラ250の判定部252は、例えば、第1温度センサ131又は第2温度センサ132により検出される排ガスの温度が予め設定された温度以上になった状態が予め設定された時間以上継続された場合に、作業禁止再生処理が完了したと判定してもよい。
【0081】
作業禁止再生処理が完了していない場合(ステップS25においてNO)、コントローラ250は、ステップS25の処理を繰り返す。
【0082】
作業禁止再生処理が完了した場合(ステップS25においてYES)、コントローラ250の判定部252は、前記所定の条件が満たされているか否かを判定する(ステップS26)。前記所定の条件は、複数のレバー操作器210の何れにも操作が与えられていないことと、エンジン150がアイドリング状態であることと、を含む。
【0083】
所定の条件が満たされていない場合(ステップS26においてNO)、コントローラ250は、所定の条件が満たされるまでステップS26の処理を繰り返す。
【0084】
所定の条件が満たされた場合(ステップS26においてYES)、コントローラ250は、レバー操作器210の操作量に応じたパイロット圧がコントロールバルブ260に入力されることを許容するような制御を行い(ステップS27)、ステップS11以降の処理を繰り返す。これにより、オペレータがレバー操作器210にレバー操作を与えた場合、油圧ポンプ153からの作動油は、コントロールバルブ260を介して複数のアクチュエータ270のうち前記レバー操作に対応するアクチュエータ270に供給される。すなわち、建設機械X1による作業が許容される。なお、作業許容再生処理は、このように建設機械X1による作業が許容された状態で行われる。
【0085】
次に、ステップS19において作業禁止再生処理の開始が許可されない場合について説明する。
【0086】
コントローラ250は、作業禁止再生処理の開始が許可されない場合(ステップS19においてNO)、報知装置280のモニタ281において待機時間に関する情報が表示されるように報知装置280を制御する(ステップS20)。待機時間は、例えば、作業禁止再生処理の開始を許可する操作をオペレータに促すような内容がモニタ281に表示された時点を時間計測の起点とするような時間であってもよい。待機時間は、例えば数十分、数時間などのように予め設定された時間である。モニタ281に表示される待機時間に関する情報は、例えば、待機時間が経過するまでの残り時間であってもよい。
【0087】
次に、コントローラ250の判定部252は、待機時間が経過したか否かを判定する(ステップS21)。待機時間が経過していない場合(ステップS21においてNO)、コントローラ250は、ステップS19以降の処理を繰り返す。
【0088】
一方、待機時間が経過した場合(ステップS21においてYES)、コントローラ250は、上述したステップS22~S27の処理を行う。すなわち、コントローラ250は、オペレータに対して前記許可を求めた後に所定の待機時間が経過した時点において前記許可を取得していない場合で(ステップS21においてYES)、かつ、レバー操作器210に操作が与えられていないこととエンジン150がアイドリング状態であることとを含む前記所定の条件が満たされた場合には(ステップS22においてYES)、ステップS23の処理を行ったうえで、作業禁止再生処理の制御を行う(ステップS24)。
【0089】
[変形例]
本開示は、以上説明した実施形態に限定されない。本開示は、例えば次のような形態を含む。
【0090】
(A)浄化要素について
前記実施形態に係る再生制御装置は、浄化要素としてのDPFによる排ガスの浄化性能を回復させる再生処理を行うように構成されるが、再生処理の対象となる浄化要素は、DPFに限られず、SCR触媒であってもよく、DOCであってもよい。
【0091】
以下では、再生処理の対象となる浄化要素がSCR触媒である場合について説明する。再生処理の対象となる浄化要素がSCR触媒である場合でも、建設機械X1の構成及び排ガス浄化装置110及びこれに関連する構成は、図1図3に示す構成と同様である。
【0092】
SCR触媒に堆積する異物は、例えば、炭化水素(HC)である。SCR触媒に未燃焼の炭化水素が吸着することでSCR触媒による排ガスの浄化性能が低下することは、一般に、炭化水素被毒(HC被毒)と称される。
【0093】
図7は、本実施形態の変形例に係る再生制御装置のコントローラ250において定められた複数のレベルを示す表である。図7に示すように、コントローラ250には、SCR触媒における異物の堆積量に応じた複数のレベルが予め定められている。
【0094】
図7に示す具体例では、複数のレベルは、レベル0~レベル3までの4つのレベルを含む。レベル0は、異物の堆積量(吸着量)が最も少ない最少レベルである。レベル3は、堆積量(吸着量)が最も多い最多レベルである。レベル2は、レベル3(最多レベル)の次に異物の堆積量(吸着量)が多いレベルである。このレベル2は、本開示における「一つ前のレベル」の一例である。レベル0とレベル2の間には、レベル1がさらに設定されている。SCR触媒における異物の堆積量(吸着量)は、レベル0からレベル3の順に次第に大きくなる。複数のレベルのそれぞれは、異物の堆積量の範囲を有する。
【0095】
レベル3は、異物の堆積量の上限値以上の範囲である。レベル3(最多レベル)は、SCR触媒の交換が必要になるレベルである。すなわち、最多レベルは、浄化要素を再生することが困難になる程度まで浄化要素における異物の堆積量が多くなるレベルである。
【0096】
コントローラ250の判定部252は、基準時からの経過時間に基づいて、SCR触媒における異物の堆積量(吸着量)を判定する。具体的には、基準時は、例えば、前回の再生処理が完了した時点であってもよい。前回の再生処理は、例えば作業禁止再生処理であってもよい。また、基準時は、オペレータによる入力に基づいて決定されたものであってもよい。また、基準時は、コントローラ250が建設機械X1の運転状況に基づいて決定したものであってもよい。
【0097】
具体例を挙げると、図7において、レベル0は、基準時からの経過時間が10時間未満である場合の堆積量(吸着量)のレベルであり、レベル1は、基準時からの経過時間が10時間以上20時間未満である場合の堆積量(吸着量)のレベルであり、レベル2は、基準時からの経過時間が20時間以上30時間未満である場合の堆積量(吸着量)のレベルであり、レベル3は、基準時からの経過時間が30時間以上である場合の堆積量(吸着量)のレベルであってもよい。
【0098】
この変形例では、コントローラ250は、堆積量がレベル2(前記一つ前のレベル)である場合には作業許容再生処理の制御を行い、作業許容再生処理が中断された場合には作業禁止再生処理を開始することの許可をオペレータに求めるための制御である許可要求制御を行い、許可を取得した場合には作業禁止再生処理の制御を行う。
【0099】
すなわち、コントローラ250は、SCR触媒における異物の堆積量がレベル3(最多レベル)の次のレベル2(前記一つ前のレベル)まで増加している場合であっても、作業禁止再生処理の制御ではなく、作業許容再生処理の制御を優先して行う。この作業許容再生処理が行われているときには建設機械X1は作業を行うことができるので、建設機械X1が作業を行うことができないダウンタイムが再生処理に起因して増加することを抑制できる。そして、仮に、何らかの理由で作業許容再生処理が中断された場合であっても、コントローラ250は、作業禁止再生処理を開始することの許可をオペレータに求めるための許可要求制御を行うので、オペレータに作業禁止再生処理の必要性を知らせ、作業禁止再生処理の開始を許可することをオペレータに促すことができる。そして、コントローラ250は、オペレータによる許可を取得した場合には作業禁止再生処理の制御を行う。従って、堆積量がレベル3(最多レベル)の次のレベル2(前記一つ前のレベル)まで増加している場合で、かつ、作業許容再生処理が中断された場合であっても、堆積量がレベル3(最多レベル)に達すること、すなわち、SCR触媒において異物の過堆積が生じることを抑制できる。
【0100】
なお、SCR触媒に堆積する異物は、尿素に由来する白色堆積物であってもよい。この場合にも、コントローラ250には、図7に示すような複数のレベルが予め定められ、コントローラ250は、堆積量がレベル2(前記一つ前のレベル)である場合には作業許容再生処理の制御を行い、作業許容再生処理が中断された場合には作業禁止再生処理を開始することの許可をオペレータに求めるための制御である許可要求制御を行い、許可を取得した場合には作業禁止再生処理の制御を行う。
【0101】
また、再生処理の対象となる浄化要素がDOCである場合には、DOCに堆積する異物は、排ガスがDOCを通過する過程においてDOCに堆積する微細な異物(排ガスに含まれる異物)であり、上記の変形例と同様に、例えば図7に示すような複数のレベルがコントローラ250に予め定められている。各レベルは、基準時からの経過時間に基づいて規定されていてもよく、前記実施形態のように実際の堆積量に基づいて規定されていてもよい。再生処理の対象となる浄化要素がDOCである場合においても、コントローラ250は、前記実施形態及び前記変形例と同様に、作業許容再生処理及び作業禁止再生処理の制御を行う。
【0102】
(B)複数のレベルについて
前記実施形態では、複数のレベルが6つのレベルを含み、前記変形例では、複数のレベルが4つのレベルを含むが、複数のレベルは、3つのレベルのみを含んでいてもよく、7つ以上のレベルを含んでいてもよい。複数のレベルが3つのレベルのみを含む場合、複数のレベルは、堆積量が最も多いレベルである最多レベルと、最多レベルの次に堆積量が多いレベルである一つ前のレベルと、堆積量が最も少ないレベルと、により構成される。
【0103】
また、前記複数のレベルは、再生処理の中断回数に応じて設定されたものであってもよい。この場合、コントローラ250の判定部252は、中断回数に基づいて、浄化要素における異物の堆積量を判定(推定)する。複数のレベルは、中断回数が上限値以上の範囲である最多レベルと、最多レベルの次に中断回数が多いレベルである「一つ前のレベル」と、中断回数が最も少ない最少レベルと、を含む。複数のレベル分けの基準になる再生処理の中断回数は、作業許容再生処理の中断回数であってもよく、作業禁止再生処理の中断回数であってもよく、作業許容再生処理の中断回数と作業禁止再生処理の中断回数の合計であってもよい。作業禁止再生処理及び作業許容再生処理の少なくとも一方が完了すると、中断回数はリセットされてもよい。
【0104】
(C)前記実施形態において説明した負荷がけバルブ(リリーフバルブ)は省略されてもよい。
【符号の説明】
【0105】
110 :排ガス浄化装置
135 :堆積量検出器
150 :エンジン
210 :レバー操作器
250 :コントローラ
280 :報知装置
281 :モニタ
282 :ブザー
X1 :建設機械
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7