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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】可溶化剤および可溶化溶液
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20241016BHJP
   G01N 33/82 20060101ALI20241016BHJP
   G01N 33/92 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G01N33/48 A
G01N33/82
G01N33/92
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022516969
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2021015253
(87)【国際公開番号】W WO2021215293
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2020074983
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100122345
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 繁久
(72)【発明者】
【氏名】小林 滉
(72)【発明者】
【氏名】松田 将
(72)【発明者】
【氏名】野田 朋澄
【審査官】白形 優依
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/021678(WO,A1)
【文献】特表2003-507490(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039319(WO,A1)
【文献】特開2015-119687(JP,A)
【文献】特開2003-137816(JP,A)
【文献】松野亮介 ほか,マイケル付加を用いたホスホリルコリン型両性界面活性剤の合成と可溶化特性評価,高分子学会予稿集,2009年,第58巻,第2号,p.4609
【文献】MATSUNO, R. et al.,Simple Synthesis of a Library of Zwitterionic Surfactants via Michael-Type Addition of Methacrylate and Alkane Thiol Compounds,Langmuir,2010年,Vol.26, No.16,pp.13028-13032
【文献】BISSETTE, A. J. et al.,Physical autocatalysis driven by a bond-forming thiol-ene reaction,nature communications,2014年09月02日,Vol.5, Article number: 4607,pp.1-8
【文献】松野亮介 ほか,マイケル付加を利用したホスホリルコリン化合物ライブラリの構築,高分子学会予稿集,2010年,第59巻,第2号,p.4892
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
(式中、Xは、水素原子またはメチル基を示し、およびnは、5~15の整数を示す。)で示される化合物を含む、難水溶性物質のための可溶化剤であって、難水溶性物質が、脂溶性ビタミン、ステロイドおよび脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも一つである可溶化剤
【請求項2】
請求項1に記載の可溶化剤および水を含む、難水溶性物質のための可溶化溶液であって、難水溶性物質が、脂溶性ビタミン、ステロイドおよび脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも一つである可溶化溶液
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難水溶性物質のための可溶化剤、および難水溶性物質のための可溶化溶液に関する。本発明の可溶化剤および可溶化溶液は、例えば、血漿、血清および血液などの検体中に存在する難水溶性物質を水または水溶液(例えば緩衝液)に溶解させるために用いることができる。
【背景技術】
【0002】
疾病の早期発見を目指し、臨床検査、診断薬の分野において、免疫反応を利用する測定方法が広く行われている。その中で、検査対象の拡大や測定感度の向上が求められており、その中でも難水溶性物質の検出は大きな課題になっている。
【0003】
免疫反応を利用する測定方法では、検体である血清、血漿、細胞抽出物および尿に含まれる物質(例えば、ペプチド、蛋白質、核酸、抗体、抗原など)を検査対象として検出する。しかし、検査対象が脂質、脂溶性ビタミン、ステロイドなどのように難水溶性物質であった場合、それらの水に対する溶解性が低いため、免疫反応を担う抗体または酵素が反応しない、或いは測定時に沈殿や白濁が生じ、その検出は困難となる。
【0004】
従来、これらの難水溶性物質の溶解性を上げる際には、界面活性剤が広く用いられている。界面活性剤は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン界面活性剤に分類され、その種類も非常に多い。この点、特許文献1に記載されているように、非イオン界面活性剤およびアニオン界面活性剤を組み合わて用いる場合、界面活性剤の種類が多いため、その組み合わせの検討は非常に煩雑となる。加えて、免疫反応や酵素反応を応用する診断薬では、界面活性剤による蛋白質変性に伴い、抗体や酵素の活性が低下してしまうため、使用できる界面活性剤の選択と、その添加濃度の検討に多大な労力が必要であった。
【0005】
特許文献2および3には、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン重合体を用いた膜蛋白質や難水溶性物質の可溶化方法が記載されている。しかし、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン重合体を溶液に添加すると、その重合体の濃度次第では溶液の粘性が高くなり、ハンドリング性が低下する可能性がある。
【0006】
非特許文献1には、ホスホリルコリン界面活性剤の合成が記載されている。しかし、非特許文献1では、そのホスホリルコリン界面活性剤を用いた難水溶性物質の可溶化試験は行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平5-312807号公報
【文献】特開2007-314526号公報
【文献】特開2003-137816号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Ryosuke Matsumoto, Kimiaki Takami, Kazuo Ishihara, "Simple Synthesis of a Zwitterionic Surfactants via Michael-Type Addition of Mathacrylate and Alkane Thiol Compounds", Langmuir Letter, 第26巻, 第16号, p. 13028-13032, 2010年7月16日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1~3に開示の方法により、ある程度、難水溶性物質を溶解させることは可能だが、いまだ十分ではない。また特許文献2および3に記載される重合体は、高分子量であるため、その濃度次第では、得られる溶液の粘性が高くなり、その溶液のハンドリング性が低下する可能性もある。そこで、本発明の課題は、脂溶性ビタミン、脂肪酸などの難水溶性物質を、水または水溶液(例えば緩衝液)に溶解させることができる可溶化剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、下記式(1)で示される化合物(以下「化合物(1)」と略称することがある)が、脂溶性ビタミンなどの難水溶性物質のための可溶化剤として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
上記知見に基づく本発明は、以下の通りである。
[1] 式(1):
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、Xは、水素原子またはメチル基を示し、およびnは、5~15の整数を示す。)で示される化合物を含む、難水溶性物質のための可溶化剤。
[2] 難水溶性物質が、脂溶性ビタミン、ステロイドおよび脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも一つである前記[1]に記載の可溶化剤。
[3] 前記[1]または[2]に記載の可溶化剤および水を含む、難水溶性物質のための可溶化溶液。
【発明の効果】
【0014】
本発明の可溶化剤の有効成分である化合物(1)は、難水溶性物質の水への溶解性を向上させ得る。さらに化合物(1)は、低分子量であるため、化合物(1)を含む溶液の粘度上昇を抑えることができ、ハンドリング性が良好な難水溶性物質のための可溶化溶液を調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「難水溶性物質」とは、その水溶性が、第十七改正日本薬局方に記載される「やや溶けにくい」、「溶けにくい」、「極めて溶けにくい」、「ほとんど溶けない」のいずれかにあてはまる物質を意味する。なお、第十七改正日本薬局方での上記水溶性は、次の基準により判定される。即ち、対象物が固形の場合は粉末とした後、水中に入れ、20±5℃で5分ごとに強く30秒間振り混ぜて、30分以内に溶ける度合を検討し、対象物1gまたは1mLを溶かすのに要する水の量が30mL以上100mL未満のものを「やや溶けにくい」、100mL以上1,000mL未満のものを「溶けにくい」、1,000mL以上10,000mL未満のものを「極めて溶けにくい」、10,000mL以上のものを「ほとんど溶けない」と判定する。また、「難水溶性物質のための可溶化剤」とは、難水溶性物質を、水または水溶液(例えば緩衝液)に溶解させるために用いられる剤を意味する。また、「難水溶性物質のための可溶化溶液」とは、難水溶性物質を溶解させるために用いられる溶液を意味する。
【0016】
本発明の可溶化剤は、酵素反応または抗原抗体反応を利用して測定する免疫学的測定法等において使用可能である。具体的には、本発明の可溶化剤は、公知の放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、ラテックス比濁法等、特に好ましくは酵素免疫測定法(EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、ラテックス比濁法、ウェスタンブロッティング等に使用することができる。
【0017】
本発明の可溶化剤の有効成分は、下記式(1)で示される化合物である。
【0018】
【化2】
【0019】
式(1)中のXは、水素原子またはメチル基を示し、好ましくはメチル基である。式(1)中のnは、5~15の整数を示す。nが5より小さいと、化合物(1)の可溶化性能が低下するおそれがあり、15を超えると、化合物(1)自体の水溶性が低下するおそれがある。nは、好ましくは7~15である。
【0020】
本発明の可溶化剤中の化合物(1)の含有量は、可溶化剤全体に対して、好ましくは50~100質量%である。本発明の可溶化剤は、より好ましくは化合物(1)からなる。
【0021】
化合物(1)は、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-トリメチルアンモニオエチルホスフェートと1-アルカンチオールとを、例えば、アルコール溶媒中、ジイソプロピルアミン等のアミン系触媒を用いて、室温下に10~50時間反応させることによって合成することができる。1-アルカンチオールとしては、炭素数が6~16の1-アルカンチオールが好ましい。
【0022】
本発明の可溶化溶液は、本発明の可溶化剤(即ち、化合物(1)を含む可溶化剤)および水を含有する。本発明の可溶化溶液は、化合物(1)および水以外の成分(以下「他の成分」と記載する)を含有していてもよい。他の成分としては、例えばグリシン、アラニン、セリン、トレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、リジン、ヒスチジン等のアミノ酸およびその塩;グリシルグリシン等のペプチド類;リン酸およびその塩、ホウ酸およびその塩、塩酸およびその塩(例えば、塩化ナトリウム、塩酸とトリスヒドロキシメチルアミノメタンとの塩)、硫酸塩等の無機酸およびその塩;フラビン類;酢酸およびその塩、クエン酸およびその塩、リンゴ酸およびその塩、マレイン酸およびその塩、グルコン酸およびその塩等の有機酸およびその塩;グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース等の糖;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール;測定に用いられる試薬等が挙げられる。
【0023】
本発明の可溶化溶液のために使用する水としては、例えば、精製水、純水、イオン交換水等が挙げられる。また、本発明の可溶化溶液は、緩衝液(例えば、免疫学的測定方法に使用することができる緩衝液)であってもよい。緩衝液の具体例としては、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、HEPES衝液が挙げられる。
【0024】
本発明の可溶化溶液中の化合物(1)の含有量(濃度)は、可溶化性能の観点から、可溶化溶液全体に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.025質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.10質量%以上である。化合物(1)の含有量の上限は、化合物(1)が可溶化溶液に溶解する限り特に制限はない。本発明の可溶化溶液中の化合物の含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。
【0025】
本発明の可溶化溶液中の水の含有量は、抗体、酵素など蛋白質の活性保持または変性防止の観点から、可溶化溶液全体に対して、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上であり、好ましくは99.99質量%以下、より好ましくは99.975質量%以下、さらに好ましくは99.95質量%以下、特に好ましくは99.90質量%以下である。
【0026】
次に、難水溶性物質について説明する。難水溶性物質としては、例えば脂溶性ビタミン(ビタミンD、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンKなど)、ステロイド(コルチゾール(別名:ハイドロコルチゾン)、ノルアドレナリンなどのホルモン、コレステロールなど)、脂肪酸(ラウリン酸、ミリスチン酸、リノール酸、リノレン酸など)を挙げることができる。難水溶性物は、好ましくは脂溶性ビタミン、ステロイドおよび脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくは脂溶性ビタミンおよび脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも一つである。
【0027】
本発明の可溶化剤または可溶化溶液を用いて、難水溶性物質を水に溶解させる方法について説明する。前記方法としては、例えば、難水溶性物質または難水溶性物質を含む混合物(例えば、難水溶性物質を含む検体)、本発明の可溶化剤および水を混合し、得られた混合物を攪拌することによって、難溶性物質を水に溶解させる方法が挙げられる。
【0028】
難溶性物質、本発明の可溶化剤および水の混合方法に特に限定はなく、例えば、下記方法が挙げられる:
(a)本発明の可溶化剤と水とを混合して可溶化溶液を調製し、得られた可溶化溶液と難水溶性物質または難水溶性物質を含む混合物(例えば、難水溶性物質を含む検体)とを混合する方法、
(b)難水溶性物質または難水溶性物質を含む混合物と水とを混合し、得られた難水溶性物質および水を含む混合物と、本発明の可溶化剤または本発明の可溶化水溶液とを混合する方法、
(c)難水溶性物質を含む混合物が水を含む場合(例えば、難水溶性物質を含む混合物が、難水溶性物質の水性分散液である場合)、前記混合物と本発明の可溶化剤または本発明の可溶化水溶液とを混合する方法。
【0029】
難溶性物質、本発明の可溶化剤および水を含む混合物を攪拌する際の温度は、例えば4~37℃である。本発明の可溶化剤または可溶化溶液を用いて、難水溶性物質を水に溶解させる方法における、可溶化剤(特に化合物(1))、可溶化溶液および難水溶性物質の説明は上述の通りである。
【0030】
可溶化剤、水および難水溶性物質を含む混合物中の化合物(1)の含有量は、前記混合物全体に対して、好ましくは0.025~5.0質量%、より好ましくは0.05~5.0質量%である。可溶化剤、水および難水溶性物質を含む混合物中の水の含有量は、前記混合物全体に対して、好ましくは85.00~99.974質量%、より好ましくは90.00~99.94質量%である。可溶化剤、水および難水溶性物質を含む混合物中の難水溶性物質の含有量は、前記混合物全体に対して、好ましくは0.001~10.0質量%、より好ましくは0.01~5.0質量%である。
【0031】
つづいて、本発明の可溶化剤の用途について説明する。その用途としては、例えば、難水溶性物質を測定するために、本発明の可溶化剤を用いて当該難水溶性物質を水または水溶液(例えば緩衝液)に溶解させることが挙げられる。
【0032】
上述のような難水溶性物質の測定において、測定用試薬、測定対象である難水溶性物質、水および化合物(1)を含む混合物中の化合物(1)の含有量は、前記混合物全体に対して、好ましくは0.025~5.0質量%、より好ましくは0.05~5.0質量%である。
【実施例
【0033】
以下の実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。下記実施例においては、下記合成例1~3で得られた化合物を各可溶化剤として用いた。
【0034】
化合物(1)の合成
合成例1
2-メタクリロイルオキシエチル-2-トリメチルアンモニオエチルホスフェート(MPC)14.7635g(0.050mol)および1-オクタンチオール8.0460g(0.055mol)をエタノール81.00gに溶解させ、触媒としてジイソプロピルアミン0.2226g(0.0022mol)を加え、室温で24時間反応させた。反応終了後、反応溶液を濃縮し、濃縮物を酢酸エチルに添加して、析出した沈殿物をろ過で回収し、真空乾燥機で乾燥することによって、2-[3-(オクチルスルファニル)-2-メチルプロピオニルオキシ]エチル-2-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(式(1)のXがメチル基であり、且つnが7である化合物)を白色粉末として得た(12g、収率:50%)。
【0035】
合成例2
1-オクタンチオールの代わりに1-ドデカンチオールを用い、原料のモル比が合成例1と等しくなるように仕込み量を変更したこと以外は合成例1と同様にして、2-[3-(ドデシルスルファニル)-2-メチルプロピオニルオキシ]エチル-2-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(式(1)のXがメチル基であり、且つnが11である化合物)を白色粉末として得た(12g、収率:50%)。
【0036】
合成例3
1-オクタンチオールの代わりに1-ヘキサデカンチオールを用い、原料のモル比が合成例1と等しくなるように仕込み量を変更したこと以外は合成例1と同様にして、2-[3-(ヘキサデシルスルファニル)-2-メチルプロピオニルオキシ]エチル-2-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(式(1)のXがメチル基であり、且つnが15である化合物)を白色粉末として得た(14g、収率:50%)。
【0037】
可溶化溶液の調製
調製例1-1-1
合成例1で得られた化合物を、その濃度が5.000質量%となるように、リン酸緩衝生理食塩水(以下「PBS」と記載する)に溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0038】
調製例1-1-2
合成例1で得られた化合物を、その濃度が0.500質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0039】
調製例1-1-3
合成例1で得られた化合物を、その濃度が0.050質量%となるようにPBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0040】
調製例1-1-4
合成例1で得られた化合物を、その濃度が0.025質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0041】
調製例1-1-5
合成例1で得られた化合物を、その濃度が0.010質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0042】
調製例1-2-1
合成例2で得られた化合物を、その濃度が5.000質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0043】
調製例1-2-2
合成例2で得られた化合物を、その濃度が0.500質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0044】
調製例1-2-3
合成例2で得られた化合物を、その濃度が0.050質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0045】
調製例1-2-4
合成例2で得られた化合物を、その濃度が0.025質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0046】
調製例1-2-5
合成例2で得られた化合物を、その濃度が0.010質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0047】
調製例1-3-1
合成例3で得られた化合物を、その濃度が5.000質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0048】
調製例1-3-2
合成例3で得られた化合物を、その濃度が0.500質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0049】
調製例1-3-3
合成例3で得られた化合物を、その濃度が0.050質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0050】
調製例1-3-4
合成例3で得られた化合物を、その濃度が0.025質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0051】
調製例1-3-5
合成例3で得られた化合物を、その濃度が0.010質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0052】
調製例1-4-1
バイオ・ラッド ラボラトリーズ社製のTween(登録商標)20を、その濃度が5.000質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0053】
調製例1-4-2
Tween(登録商標)20を、その濃度が0.500質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0054】
調製例1-4-3
Tween(登録商標)20を、その濃度が0.050質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0055】
調製例1-4-4
Tween(登録商標)20を、その濃度が0.025質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0056】
調製例1-4-5
Tween(登録商標)20を、その濃度が0.010質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0057】
調製例1-5-1
ナカライテスク社製のTriton(登録商標)X-100を、その濃度が5.000質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0058】
調製例1-5-2
Triton(登録商標)X-100を、その濃度が0.500質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0059】
調製例1-5-3
Triton(登録商標)X-100を、その濃度が0.050質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0060】
調製例1-5-4
Triton(登録商標)X-100を、その濃度が0.025質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0061】
調製例1-5-5
Triton(登録商標)X-100を、その濃度が0.010質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0062】
調製例1-6-1
ナカライテスク社製のTriton(登録商標)X-405を、その濃度が5.000質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0063】
調製例1-6-2
Triton(登録商標)X-405を、その濃度が0.500質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0064】
調製例1-6-3
Triton(登録商標)X-405を、その濃度が0.050質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0065】
調製例1-6-4
Triton(登録商標)X-405を、その濃度が0.025質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0066】
調製例1-6-5
Triton(登録商標)X-405を、その濃度が0.010質量%となるように、PBSに溶解させて、可溶化溶液を調製した。
【0067】
コレカルシフェロール(ビタミンD )の可溶化試験
実施例1-1-1および実施例1-1-2
コレカルシフェロール(ビタミンD)を、その濃度が20mg/mLとなるようにエタノールに溶解させて、コレカルシフェロール溶液を調製した。96ウェルプレートに、調製例1-1-3または調製例1-1-4で得られた可溶化溶液を、100μL/wellの量で分注した。コレカルシフェロール溶液を1μL/wellの量で分注した。各ウェル中の混合物を1分間攪拌した後に、混合物の波長450nmにおける吸光度を測定した。また、コレカルシフェロールを含まないPBSのみの波長450nmにおける吸光度を測定した。可溶化溶液およびコレカルシフェロール溶液の混合物の波長450nmにおける吸光度と、PBSのみの波長450nmにおける吸光度との差を、「可溶化溶液およびコレカルシフェロール溶液の混合物の濁度」とした。濁度が小さいほど、溶解している難水溶性物質量が多いことを示す。
【0068】
可溶化溶液の代わりにPBSを用いたこと以外は上記と同様にして、「PBSおよびコレカルシフェロール溶液の混合物の濁度」(即ち、PBSおよびコレカルシフェロール溶液の混合物の波長450nmにおける吸光度と、PBSのみの波長450nmにおける吸光度との差)を算出した。
【0069】
コレカルシフェロールは、PBSに対して不溶である。そこで、コレカルシフェロールが溶解しているか否かを評価する指標として、下記式:
PBSに対する濁度割合(%)=100×(可溶化溶液およびコレカルシフェロール溶液の混合物の濁度)/(PBSおよびコレカルシフェロール溶液の混合物の濁度)
から、PBSに対する濁度割合を算出した。PBSに対する濁度割合が10%未満である場合、コレカルシフェロールが溶解していると評価した。
【0070】
実施例1-2-1および実施例1-2-2
調製例1-1-3または調製例1-1-4で得られた可溶化溶液の代わりに調製例1-2-3または調製例1-2-4で得られた可溶化溶液を用いたこと以外は実施例1-1-1および実施例1-1-2と同様にして、可溶化試験を行った。
【0071】
実施例1-3-1および実施例1-3-2
調製例1-1-3または調製例1-1-4で得られた可溶化溶液の代わりに調製例1-3-3または調製例1-3-4で得られた可溶化溶液を用いたこと以外は実施例1-1-1および実施例1-1-2と同様にして可溶化試験を行った。
【0072】
比較例1-1-1
調製例1-1-3または調製例1-1-4で得られた可溶化溶液の代わりに調製例1-4-3で得られた可溶化溶液を用いたこと以外は実施例1-1-1および実施例1-1-2と同様にして可溶化試験を行った。
【0073】
比較例1-2-1
調製例1-1-3または調製例1-1-4で得られた可溶化溶液の代わりに調製例1-5-3で得られた可溶化溶液を用いたこと以外は実施例1-1-1および実施例1-1-2と同様にして可溶化試験を行った。
【0074】
比較例1-3-1
調製例1-1-3または調製例1-1-4で得られた可溶化溶液の代わりに調製例1-6-3で得られた可溶化溶液を用いたこと以外は実施例1-1-1および実施例1-1-2と同様にして可溶化試験を行った。
【0075】
表1に、使用した可溶化溶液、使用した可溶化剤、可溶化溶液中の可溶化剤の濃度(表1では「可溶化剤の濃度」と記載)、可溶化溶液およびコレカルシフェロール溶液の混合物の濁度(表1では「濁度」と記載)、PBSおよびコレカルシフェロール溶液の混合物の濁度(表1では「PBSの濁度」と記載)、PBSに対する濁度割合を示す。なお、表1の「-m」の記載は、各実施例および各比較例の末尾を表す。例えば、「実施例1-1」の「-1」の行は「実施例1-1-1」を表す。また、可溶化溶液の列には、可溶化溶液を調製した調製例を記載する。また、可溶化剤の列には、可溶化剤を合成した合成例または界面活性剤の商品名を記載する。
【0076】
【表1】
【0077】
表1に示すとおり、実施例1-1-1~実施例1-3-2では、PBSに対する濁度割合が10%未満であることから、難水溶性物質であるコレカルシフェロールが溶解したことが分かる。一方、比較例1-1~比較例1-3ではPBSに対する濁度割合が10%以上である。これらの結果から、実施例1-1-1~実施例1-3-2で使用した可溶化剤および可溶化溶液は、比較例1-1~比較例1-3で使用したものと比べて、難水溶性物質であるコレカルシフェロールを可溶化する性能が優れていることが分かる。
【0078】
DL-α-トコフェロール(ビタミンE)の可溶化試験
実施例2-1-1および実施例2-1-2
DL-α-トコフェロール(ビタミンE)を、その濃度が20mg/mLとなるようにエタノールに溶解させて、DL-α-トコフェロール溶液を調製し、これをコレカルシフェロール溶液の代わりに使用したこと以外は実施例1-1-1および実施例1-1-2と同様にして可溶化試験を行い、「可溶化溶液およびDL-α-トコフェロール溶液の混合物の濁度」(即ち、可溶化溶液およびDL-α-トコフェロール溶液の混合物の波長450nmにおける吸光度と、PBSのみの波長450nmにおける吸光度との差)を算出した。
【0079】
可溶化溶液の代わりにPBSを用いたこと以外は上記と同様にして、「PBSおよびDL-α-トコフェロール溶液の混合物の濁度」(即ち、PBSおよびDL-α-トコフェロール溶液の混合物の波長450nmにおける吸光度と、PBSのみの波長450nmにおける吸光度との差)を算出した。
【0080】
DL-α-トコフェロールは、PBSに対して不溶である。そこで、DL-α-トコフェロールが溶解しているか否かを評価する指標として、下記式:
PBSに対する濁度割合(%)=100×(可溶化溶液およびDL-α-トコフェロール溶液の混合物の濁度)/(PBSおよびDL-α-トコフェロール溶液の混合物の濁度)
から、PBSに対する濁度割合を算出した。PBSに対する濁度割合が10%未満である場合、DL-α-トコフェロールが溶解していると評価した。
【0081】
実施例2-2-1
調製例1-1-3または調製例1-1-4で得られた可溶化溶液の代わりに調製例1-2-3で得られた可溶化溶液を用いたこと以外は実施例2-1-1および実施例2-1-2と同様にして、可溶化試験を行った。
【0082】
比較例2-2-1
調製例1-1-3または調製例1-1-4で得られた可溶化溶液の代わりに調製例1-5-3で得られた可溶化溶液を用いたこと以外は実施例2-1-1および実施例2-1-2と同様にして、可溶化試験を行った。
【0083】
表2に、使用した可溶化溶液、使用した可溶化剤、可溶化溶液中の可溶化剤の濃度(表2では「可溶化剤の濃度」と記載)、可溶化溶液およびDL-α-トコフェロール溶液の混合物の濁度(表2では「濁度」と記載)、PBSおよびDL-α-トコフェロール溶液の混合物の濁度(表2では「PBSの濁度」と記載)、PBSに対する濁度割合を示す。なお、表2の「-m」の記載は、各実施例および各比較例の末尾を表す。また、可溶化溶液の列には、可溶化溶液を調製した調製例を記載する。また、可溶化剤の列には、可溶化剤を合成した合成例または界面活性剤の商品名を記載する。
【0084】
【表2】
【0085】
表2に示すとおり、実施例2-1-1~実施例2-2-1では、PBSに対する濁度割合が10%未満であることから、難水溶性物質であるDL-α-トコフェロールが溶解したことが分かる。一方、比較例2-2-1では、PBSに対する濁度割合が10%以上である。これらの結果から、実施例2-1-1~実施例2-2-1で使用した可溶化剤および可溶化溶液は、比較例2-2-1で使用したものと比べて、難水溶性物質であるDL-α-トコフェロールを可溶化する性能が優れていることが分かる。
【0086】
ハイドロコルチゾンの可溶化試験
実施例3-3
ハイドロコルチゾンを、その濃度が20mg/mLとなるようにエタノールに溶解させて、ハイドロコルチゾン溶液を調製し、これをコレカルシフェロール溶液の代わりに使用したこと、ハイドロコルチゾン溶液を125μL/wellの量で分注したこと、および調製例1-1-3または調製例1-1-4で得られた可溶化溶液の代わりに、調製例1-3-3で得られた可溶化溶液を用いたこと以外は実施例1-1-1および実施例1-1-2と同様にして可溶化試験を行い、「可溶化溶液およハイドロコルチゾン溶液の混合物の濁度」(即ち、可溶化溶液およびハイドロコルチゾン溶液の混合物の波長450nmにおける吸光度と、PBSのみの波長450nmにおける吸光度との差)を算出した。
【0087】
可溶化溶液の代わりにPBSを用いたこと以外は上記と同様にして、「PBSおよびハイドロコルチゾン溶液の混合物の濁度」(即ち、PBSおよびハイドロコルチゾン溶液の混合物の波長450nmにおける吸光度と、PBSのみの波長450nmにおける吸光度との差)を測定した。
【0088】
ハイドロコルチゾンは、PBSに対して不溶である。そこで、ハイドロコルチゾンが溶解しているか否かを評価する指標として、下記式:
PBSに対する濁度割合(%)=100×(可溶化溶液およびハイドロコルチゾン溶液の混合物の濁度)/(PBSおよびハイドロコルチゾン溶液の混合物の濁度)
から、PBSに対する濁度割合を算出した。PBSに対する濁度割合が10%未満である場合、ハイドロコルチゾンが溶解していると評価した。
【0089】
比較例3-1
調製例1-3-3で得られた可溶化溶液の代わりに調製例1-4-3で得られた可溶化溶液を用いたこと以外は実施例3-3と同様にして、可溶化試験を行った。
【0090】
比較例3-2
調製例1-3-3で得られた可溶化溶液の代わりに調製例1-5-3で得られた可溶化溶液を用いたこと以外は実施例3-3と同様にして、可溶化試験を行った。
【0091】
比較例3-3
調製例1-3-3で得られた可溶化溶液の代わりに調製例1-6-3で得られた可溶化溶液を用いたこと以外は実施例3-3と同様にして、可溶化試験を行った。
【0092】
表3に、使用した可溶化溶液、使用した可溶化剤、可溶化溶液中の可溶化剤の濃度(表3では「可溶化剤の濃度」と記載)、可溶化溶液およびハイドロコルチゾン溶液の混合物の濁度(表3では「濁度」と記載)、PBSおよびハイドロコルチゾン溶液の混合物の濁度(表3では「PBSの濁度」と記載)、PBSに対する濁度割合を示す。また、可溶化溶液の列には、可溶化溶液を調製した調製例を記載する。また、可溶化剤の列には、可溶化剤を合成した合成例または界面活性剤の商品名を記載する。
【0093】
【表3】
【0094】
表3に示すとおり、実施例3-3では、PBSに対する濁度割合が10%未満であることから、難水溶性物質であるハイドロコルチゾンが溶解したことが分かる。一方、比較例3-1~比較例3-3ではPBSに対する濁度割合が10%以上である。これらの結果から、実施例3-3で使用した可溶化剤および可溶化溶液は、比較例3-1~比較例3-3で使用したものと比べて、難水溶性物質であるハイドロコルチゾンを可溶化する性能が優れていることが分かる。
【0095】
ラウリン酸の可溶化試験
実施例4-1
ラウリン酸を、その濃度が100mg/mLとなるようにエタノールに溶解させて、ラウリン酸溶液を調製し、これをコレカルシフェロール溶液の代わりに使用したこと、ラウリン酸溶液を3μL/wellの量で分注したこと、および調製例1-1-3または調製例1-1-4で得られた可溶化溶液の代わりに、調製例1-1-1で得られた可溶化溶液を使用したこと以外は実施例1-1-1および実施例1-1-2と同様にして可溶化試験を行い、「可溶化溶液およラウリン酸溶液の混合物の濁度」(即ち、可溶化溶液およびラウリン酸溶液の混合物の波長450nmにおける吸光度と、PBSのみの波長450nmにおける吸光度との差)を算出した。
【0096】
可溶化溶液の代わりにPBSを用いたこと以外は上記と同様にして、「PBSおよびラウリン酸溶液の混合物の濁度」(即ち、PBSおよびラウリン酸溶液の混合物の波長450nmにおける吸光度と、PBSのみの波長450nmにおける吸光度との差)を算出した。
【0097】
ラウリン酸は、PBSに対して不溶である。そこで、ラウリン酸が溶解しているか否かを評価する指標として、下記式:
PBSに対する濁度割合(%)=100×(可溶化溶液およびラウリン酸溶液の混合物の濁度)/(PBSおよびラウリン酸溶液の混合物の濁度)
から、PBSに対する濁度割合を算出した。PBSに対する濁度割合が10%未満である場合、ラウリン酸が溶解していると評価した。
【0098】
比較例4-1
調製例1-1-1で得られた可溶化溶液の代わりに調製例1-4-1で得られた可溶化溶液を用いたこと以外は実施例4-1と同様にして可溶化試験を行った。
【0099】
比較例4-2
調製例1-1-1で得られた可溶化溶液の代わりに調製例1-5-1で得られた可溶化溶液を用いたこと以外は実施例4-1と同様にして可溶化試験を行った。
【0100】
比較例4-3
調製例1-1-1で得られた可溶化溶液の代わりに調製例1-6-1で得られた可溶化溶液を用いたこと以外は実施例4-1と同様にして可溶化試験を行った。
【0101】
表4に、使用した可溶化溶液、使用した可溶化剤、可溶化溶液中の可溶化剤の濃度(表4では「可溶化剤の濃度」と記載)、可溶化溶液およびラウリン酸溶液の混合物の濁度(表4では「濁度」と記載)、PBSおよびラウリン酸溶液の混合物の濁度(表4では「PBSの濁度」と記載)、PBSに対する濁度割合を示す。なお、可溶化溶液の列には、可溶化溶液を調製した調製例を記載する。また、可溶化剤の列には、可溶化剤を合成した合成例または界面活性剤の商品名を記載する。
【0102】
【表4】
【0103】
表4に示すとおり、実施例4-1では、PBSに対する濁度割合が10%未満であることから、難水溶性物質であるラウリン酸が溶解したことが分かる。一方、比較例4-3ではPBSに対する濁度割合が10%以上である。これらの結果から、実施例4-1で使用した可溶化剤および可溶化溶液は、比較例4-3で使用したものと比べて、難水溶性物質であるラウリン酸を可溶化する性能が優れていることが分かる。また、実施例4-1のPBSに対する濁度は、比較例4-1および比較例4-2のものと同等またはそれ以下であった。これらの結果から、実施例4-1で使用した可溶化剤および可溶化溶液のラウリン酸を可溶化する性能は、比較例4-1または比較例4-2で使用した可溶化剤(即ち、市販のTween(登録商標)20またはTriton(登録商標)X-100)および可溶化溶液のものと同等またはそれ以上であることが分かる。
【0104】
ミリスチン酸の可溶化試験
実施例5-1
ミリスチン酸を、その濃度が100mg/mLとなるようにエタノールに溶解させて、ミリスチン酸溶液を調製し、これをコレカルシフェロール溶液の代わりに使用したこと、ミリスチン酸溶液を3μL/wellの量で分注したこと、および調製例1-1-3または調製例1-1-4で得られた可溶化溶液の代わりに、調製例1-1-1で得られた可溶化溶液を使用したこと以外は実施例1-1-1および実施例1-1-2と同様にして可溶化試験を行い、「可溶化溶液およミリスチン酸溶液の混合物の濁度」(即ち、可溶化溶液およびミリスチン酸溶液の混合物の波長450nmにおける吸光度と、PBSのみの波長450nmにおける吸光度との差)を算出した。
【0105】
可溶化溶液の代わりにPBSを用いたこと以外は上記と同様にして、「PBSおよびミリスチン酸溶液の混合物の濁度」(即ち、PBSおよびミリスチン酸溶液の混合物の波長450nmにおける吸光度と、PBSのみの波長450nmにおける吸光度との差)を算出した。
【0106】
ミリスチン酸は、PBSに対して不溶である。そこで、ミリスチン酸が溶解しているか否かを評価する指標として、下記式:
PBSに対する濁度割合(%)=100×(可溶化溶液およびミリスチン酸溶液の混合物の濁度)/(PBSおよびミリスチン酸溶液の混合物の濁度)
から、PBSに対する濁度割合を算出した。PBSに対する濁度割合が10%未満である場合、ミリスチン酸が溶解していると評価した。
【0107】
比較例5-1
調製例1-1-1で得られた可溶化溶液の代わりに調製例1-4-1で得られた可溶化溶液を用いたこと以外は実施例5-1と同様にして、可溶化試験を行った。
【0108】
比較例5-2
調製例1-1-1で得られた可溶化溶液の代わりに調製例1-5-1で得られた可溶化溶液を用いたこと以外は実施例5-1と同様にして可溶化試験を行った。
【0109】
比較例5-3
調製例1-1-1で得られた可溶化溶液の代わりに調製例1-6-1で得られた可溶化溶液を用いたこと以外は実施例5-1と同様にして可溶化試験を行った。
【0110】
表5に、使用した可溶化溶液、使用した可溶化剤、可溶化溶液中の可溶化剤の濃度(表5では「可溶化剤の濃度」と記載)、可溶化溶液およびミリスチン酸溶液の混合物の濁度(表5では「濁度」と記載)、PBSおよびミリスチン酸溶液の混合物の濁度(表5では「PBSの濁度」と記載)、PBSに対する濁度割合を示す。なお、可溶化溶液の列には、可溶化溶液を調製した調製例を記載する。また、可溶化剤の列には、可溶化剤を合成した合成例または界面活性剤の商品名を記載する。
【0111】
【表5】
【0112】
表5に示すとおり、実施例5-1では、PBSに対する濁度が10%未満であることから、難水溶性物質であるミリスチン酸が溶解したことが分かる。一方、比較例5-1~比較例5-3ではPBSに対する濁度割合が10%以上である。これらの結果から、実施例5-1で使用した可溶化剤および可溶化溶液は、比較例5-1~比較例5-3で使用したものと比べて、難水溶性物質であるミリスチン酸を可溶化する性能が優れていることが分かる。
【0113】
以上の結果から、本発明の可溶化剤を使用することにより、難水溶性物質を可溶化することができることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の可溶化剤は、例えば、難水溶性物質の測定のために利用することができる。
【0115】
本願は、日本で出願された特願2020-074983号を基礎としており、その内容は本願明細書に全て包含される。