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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】4ルーメンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/14 20060101AFI20241016BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61M25/14 512
A61M25/00 530
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022524327
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2021015069
(87)【国際公開番号】W WO2021235135
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2024-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2020089928
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓真
(72)【発明者】
【氏名】藤木 裕也
(72)【発明者】
【氏名】中井 翔太
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0261605(US,A1)
【文献】特開2018-198930(JP,A)
【文献】特開2008-441(JP,A)
【文献】特開2016-22192(JP,A)
【文献】特開2011-255179(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0273628(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/14
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端から先端に延びる、外壁に囲まれた円筒状の本体部を備え、
前記本体部の内部は、長手方向に延びる隔壁により、第1領域と第2領域とに区画されており、
前記第1領域は、第1ルーメン及び前記第1ルーメンよりも断面積が小さい第3ルーメンに区画されており、
前記第2領域は、第2ルーメン及び前記第2ルーメンよりも断面積が小さい第4ルーメンに区画されており、
前記第3ルーメンと前記第4ルーメンとは、前記隔壁を挟んで互いに対向する位置に配置され、
前記第2ルーメンの先端に設けられた第2開口面は、前記第1ルーメンの先端に設けられた第1開口面よりも先端側に設けられ、
前記第3ルーメンの先端に設けられた第3開口面は、前記第2開口面よりも先端側に設けられ、
前記第4ルーメンの先端に設けられた第4開口面は、前記第3開口面よりも先端側に設けられ、
前記隔壁は、前記第2開口面よりも前記本体部の先端側において、前記第3ルーメンと前記第4ルーメンの配置側に向かって次第に幅が狭くなる、4ルーメンカテーテル。
【請求項2】
前記第1ルーメンと前記第2ルーメンとは前記隔壁に対して対称に形成され、前記第3ルーメンと前記第4ルーメンとは前記隔壁に対して対称に形成されている、請求項1に記載の4ルーメンカテーテル。
【請求項3】
前記第1開口面及び前記第2開口面の大きさが等しい、請求項1又は2に記載の4ルーメンカテーテル。
【請求項4】
前記第1開口面、前記第2開口面及び前記第3開口面は、それぞれ前記隔壁に対して基端側に傾斜し、
前記第4開口面は、前記隔壁に対して直交している、請求項1~3のいずれか1項に記載の4ルーメンカテーテル。
【請求項5】
前記第2開口面よりも先端側の部分は、該第2開口面から基端部側の部分よりも硬度が低い、請求項1~4のいずれか1項に記載の4ルーメンカテーテル。
【請求項6】
前記本体部の基端には、前記第1ルーメン、前記第2ルーメン、前記第3ルーメン及び前記第4ルーメンにそれぞれ接続され、基端側にコネクタを有する複数の枝管が設けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の4ルーメンカテーテル。
【請求項7】
前記第1ルーメンは、先端部に複数の第1ルーメン側孔を有し、
前記第2ルーメンは、先端部に複数の第2ルーメン側孔を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の4ルーメンカテーテル。
【請求項8】
前記外壁は、前記第1ルーメンを形成する部分に先端の一部が切り欠かれて形成された第1ルーメンスリット及び/又は前記第2ルーメンを形成する部分に先端の一部が切り欠かれて形成された第2ルーメンスリットを有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の4ルーメンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、4ルーメンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
人工透析には、患者の体内から血液を抜き出す脱血ルーメンと、浄化された血液を体内に戻す返血ルーメンとが設けられたカテーテルが用いられる。また、血液透析の際に、薬液投与や中心静脈圧測定などを同時に行う必要がある場合にも対応可能な4ルーメンカテーテルが知られている(例えば、特許文献1を参照)。この4ルーメンカテーテルは、脱血ルーメンと返血ルーメンの他に、2つの輸液ルーメンが設けられている。このため、薬液投与や中心静脈圧測定のために、新たなルートを確保する必要がなく、術者や患者の負担を軽減することができる。
【0003】
ところで、脱血ルーメンから血液を吸引する際に、吸引圧によって血管内壁が脱血ルーメンの開口部に張り付くことがある。これにより、脱血ルーメンの開口が塞がれて、脱血不良や脱血流量の低下が生じるといった問題がある。この問題については、脱血ルーメンと返血ルーメンを入れ替えて使用する逆接続により、脱血ルーメンから返血を行うことで開口部への血管内壁の張り付きが解消できる場合がある(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-441号公報
【文献】特開2018-198930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された4ルーメンカテーテルは、カテーテルの先端部に返血ルーメンが設けられている。このため、逆接続により、先端部の返血ルーメンから脱血を行うと、返血ルーメンよりも基端側に設けられた脱血ルーメンから返血された血液が再び先端部の返血ルーメンに入ってしまう再循環が生じるという問題がある。また、逆接続時において、2つの輸液ルーメンから供給される薬液なども同様に、再循環が生じることが問題となる。
【0006】
本開示の課題は、血管内壁への張り付きの解消又は誤接続等により、返血ルーメンから脱血される場合であっても血液及び薬液の再循環が生じにくい、4ルーメンカテーテルを実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の4ルーメンカテーテルの一態様は、基端から先端に延びる、外壁に囲まれた円筒状の本体部を備え、本体部の内部は、長手方向に延びる隔壁により、第1領域と第2領域とに区画されており、第1領域は、第1ルーメン及び第1ルーメンよりも断面積が小さい第3ルーメンに区画されており、第2領域は、第2ルーメン及び第2ルーメンよりも断面積が小さい第4ルーメンに区画されており、第3ルーメンと第4ルーメンとは、隔壁を挟んで互いに対向する位置に配置され、第2ルーメンの先端に設けられた第2開口面は、第1ルーメンの先端に設けられた第1開口面よりも先端側に設けられ、第3ルーメンの先端に設けられた第3開口面は、第2開口面よりも先端側に設けられ、第4ルーメンの先端に設けられた第4開口面は、第3開口面よりも先端側に設けられ、隔壁は、第2開口面よりも本体部の先端側において、第3ルーメンと第4ルーメンの配置側に向かって次第に幅が狭くなっている。
【0008】
このような構成とすることにより、第1ルーメンから脱血しても、第2ルーメンから脱血しても、血液及び薬液の再循環を生じにくくすることができる。また、カテーテルの血管への挿入が容易になり、血管を傷つけにくくすることができる。さらに、第1ルーメン及び第2ルーメンの断面積を大きくとることができるため、第1ルーメンから脱血しても、第2ルーメンから脱血しても、血管が張り付きにくくすることができる。
【0009】
4ルーメンカテーテルの一態様において、第1ルーメンと第2ルーメンとは、隔壁に対して対称に形成され、第3ルーメンと第4ルーメンとは、隔壁に対して対称に形成されていてもよい。これらの構成とすることにより、血液及び薬液の再循環を生じにくくすることができる。また、各ルーメンを隔壁に対して対称に形成することにより、4ルーメンカテーテルの製造における押出成形が容易になる。
【0010】
4ルーメンカテーテルの一態様において、第1開口面及び第2開口面の大きさを等しくすることができる。このような構成とすることにより、第1ルーメン又は第2ルーメンのいずれを脱血ルーメンとして使用した場合であっても、脱血量を確保することができると共に、吸引圧を下げて血管内壁が第1開口面又は第2開口面に張り付きにくくすることができる。
【0011】
4ルーメンカテーテルの一態様において、第1開口面、第2開口面及び第3開口面は、それぞれ隔壁に対して基端側に傾斜し、第4開口面は、隔壁に対して直交していてもよい。このような構成とすることにより、4ルーメンカテーテルの血管への挿入が容易となると共に、血管を傷つけにくくすることができる。
【0012】
4ルーメンカテーテルの一態様において、第2開口面よりも先端側の部分は、該第2開口面から基端部側の部分よりも硬度を低くすることができる。このような構成とすることにより、4ルーメンカテーテルの血管への挿入が容易となると共に、より血管を傷つけにくくすることができる。
【0013】
4ルーメンカテーテルの一態様において、本体部の基端には、第1ルーメン、第2ルーメン、第3ルーメン及び第4ルーメンにそれぞれ接続され、基端側にコネクタを有する複数の枝管が設けられていてもよい。このような構成とすることにより、コネクタを介して本体部と血液回路等とを接続し、血液透析をすることができる。
【0014】
4ルーメンカテーテルの一態様において、第1ルーメンは、先端部に複数の第1ルーメン側孔を有し、第2ルーメンは、先端部に複数の第2ルーメン側孔を有していてもよい。このような構成とすることにより、第1ルーメン又は第2ルーメンのいずれを脱血ルーメンとして使用した場合であっても、吸引圧を分散し、血管内壁が第1開口面又は第2開口面に張り付きにくくすることができる。また、脱血流量を容易に確保することも可能である。
【0015】
4ルーメンカテーテルの一態様において、外壁は、第1ルーメンを形成する部分に先端の一部が切り欠かれて形成された第1ルーメンスリット及び/又は第2ルーメンを形成する部分に先端の一部が切り欠かれて形成された第2ルーメンスリットを有していてもよい。このような構成とすることにより、第1ルーメン又は第2ルーメンのいずれを脱血ルーメンとして使用した場合であっても、吸引圧を分散し、より血管内壁が第1開口面又は第2開口面に張り付きにくくすることができる。また、脱血流量を容易に確保することも可能である。
【発明の効果】
【0016】
本開示の4ルーメンカテーテルによれば、血管内壁への張り付きの解消又は誤接続等により、返血ルーメンから脱血される場合であっても、再循環が生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係る4ルーメンカテーテルの全体側面図である。
図2】一実施形態に係る4ルーメンカテーテルの全体斜視図である。
図3】一実施形態に係る4ルーメンカテーテルの全体斜視図である。
図4】一実施形態に係る4ルーメンカテーテルを示す右側面図である。
図5】一実施形態に係る4ルーメンカテーテルを示す左側面図である。
図6】一実施形態に係る4ルーメンカテーテルを示す上面図である。
図7】一実施形態に係る4ルーメンカテーテルを示す底面図である。
図8図7の4ルーメンカテーテルを先端側から見た図である。
図9図7の4ルーメンカテーテルを基端側から見た図である。
図10】一実施形態に係る4ルーメンカテーテルを示す斜視図である。
図11】変形例に係る4ルーメンカテーテルの全体側面図である。
図12】変形例に係る4ルーメンカテーテルの全体斜視図である。
図13】変形例に係る4ルーメンカテーテルを示す右側面図である。
図14】変形例に係る4ルーメンカテーテルを示す左側面図である。
図15】変形例に係る4ルーメンカテーテルを示す上面図である。
図16】変形例に係る4ルーメンカテーテルを示す底面図である。
図17】変形例に係る4ルーメンカテーテルを先端側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の4ルーメンカテーテルは、脱血ルーメンと返血ルーメンを使用した血液透析による血液浄化の際に、薬液投与や中心静脈圧測定などを同時に行うときに使用される。図1図10に示すように、本開示の4ルーメンカテーテルは、外壁116に囲まれた円筒状の本体部(カテーテル用チューブ)101を有する。本体部101の内部には、長手方向に延びるように隔壁115が設けられている。本体部101の内部は、隔壁115により、第1領域117と第2領域118とに区画されている。さらに、第1領域117は、第1ルーメン111と第3ルーメン113とに区画され、第2領域118は、第2ルーメン112と第4ルーメン114とに区画されている。通常の順接続時には、第1ルーメン111が脱血用ルーメンとして用いられ、第2ルーメン112が返血用ルーメンとして用いられる。一方、血管壁への張り付きの解消のために脱血と返血とを入れ替えて使用する逆接続時には、第1ルーメン111が返血用ルーメンとして用いられ、第2ルーメン112が脱血用ルーメンとして用いられる。第3ルーメン113及び第4ルーメン114は、輸液ルーメンとして用いられ、薬液の投与や中心静脈圧測定などのルートとして使用される。
【0019】
第3ルーメン113と第4ルーメン114とは、断面円形状に形成され、外壁116と隔壁115とが接する部分の一方側において、隔壁115を挟んで互いに対向する位置に配置されている。また、第1ルーメン111と第2ルーメン112とは、隔壁115を挟んで互いに対向する位置に配置されている。このように、第1領域117に輸液ルーメンの第3ルーメン113を設け、第2領域118に輸液ルーメンの第4ルーメン114を設けることで、2つの輸液ルーメンを設けつつ、第1ルーメン111と第2ルーメン112の断面積を大きくすることができる。このため、第1ルーメン111又は第2ルーメン112のいずれを脱血用ルーメンとして使用した場合であっても、脱血量を確保することができると共に、吸引圧を下げて血管が張り付きにくくすることができる。また、第1ルーメン111と第2ルーメン112、第3ルーメン113と第4ルーメン114が互いに隔壁115を挟んで対称に形成されることにより、4ルーメンカテーテルを製造する際の押出成形が容易となる。
【0020】
第1ルーメン111、第2ルーメン112、第3ルーメン113及び第4ルーメン114の先端は、それぞれの開口が先端側に設けられたエンドホール型の第1開口面121、第2開口面122、第3開口面123及び第4開口面124になっている。第1開口面121において、外壁116は隔壁115から離れるに従い次第に基端側に位置するように切り取られている。このため、第1開口面121は、隔壁115に対して基端側に傾いている。第2開口面122は、第1開口面121よりも先端側に設けられ、外壁116が、隔壁115から離れるに従い次第に基端側に位置するように切り取られている。このため、第2開口面122は、隔壁115に対して基端側に傾いている。第3開口面123は、第2開口面122よりも先端側に設けられ、外壁116が、隔壁115から離れるに従い次第に基端側に位置するように切り取られている。このため、第3開口面123は、隔壁115に対して基端側に傾いている。第4開口面124は、第3開口面123よりも先端側に設けられ、本体部101の先端に位置し、隔壁115に対して直交するようになっている。
【0021】
本実施形態の4ルーメンカテーテルを使用する際に、上下左右方向は限定されないが、以下においては、隔壁115に対して、第1ルーメン111及び第3ルーメン113が設けられている第1領域117を上側、第2領域118を下側とし、第1領域117を上側にした状態で本体部101を先端側から見たときに、第1ルーメン111及び第2ルーメン112が配置されている側を右側、第3ルーメン113及び第4ルーメン114が配置されている側を左側として説明を行う。
【0022】
本実施形態の4ルーメンカテーテルは、第1ルーメン111と第2ルーメン112との間に隔壁115があり、隔壁115は第1ルーメン111の第1開口面121よりも先端側に延びている。このため、逆接続時に第1ルーメン111から返血され隔壁115の上側を流れる血液は、隔壁115の下側の第2開口面122から吸い込まれにくく、再循環を生じにくくすることができる。再循環が生じにくいことは、血管壁への張り付きの解消等のために意図的に逆接続をした場合だけでなく、誤操作による逆接続の場合に悪影響が生じにくいという点でも有益である。
【0023】
また、隔壁115は、第2開口面122の位置を越えて、本体部101の先端側に延びており、第2開口面122の位置から先端側においては、第3ルーメン123と第4ルーメン124が配置される左側に向かって次第に幅が狭くなり、先端において消失している。このため、セルジンガ法等によりカテーテルを挿入する際にカテーテルを挿入しやすくなり、隔壁115が血管を傷つけにくくすることもできる。本実施形態においては、第2開口面122の位置から先端側において次第に隔壁115の幅を狭くしているが、再循環防止の観点から、第2開口面122よりも先端側の位置から次第に隔壁115の幅を狭くしてもよい。
【0024】
第1開口面121は、第1ルーメン111から脱血する場合に、第3ルーメン113及び第4ルーメン114から供給された薬液の再循環を避ける観点から、第3開口面123及び第4開口面124からできるだけ離れていることが好ましい。一方、カテーテルの長さの観点からは、本体部101の先端からの距離を長くしすぎないことが好ましい。具体的には、本体部101の先端(第4開口面124)から第1開口面121までの距離L1は、好ましくは1cm以上、より好ましくは1.5cm以上で、好ましくは10cm以下、より好ましくは5cm以下、さらに好ましくは3cm以下とすることができる。
【0025】
第1開口面121は、隔壁115に対し基端側へ傾斜して設けられている。第1開口面121を基端側へ傾斜させることにより、第1開口面121が垂直である場合と比べて、セルジンガ法等によりカテーテルを体内に挿入する際に挿入抵抗を小さくしてスムーズに挿入できるようになる。また、第1開口面121が血管を傷つけにくくすることもできる。さらに、第1開口面121の大きさ(開口面の面積)は、第1開口面121が垂直である場合よりも大きくなるため、第1ルーメン111から脱血する場合に、血流量の確保が容易になると共に、吸引圧を下げることができる。
【0026】
血管を傷つけにくくする観点から、傾斜角度θ1は、好ましくは60°以下、より好ましくは50°以下、さらに好ましくは40°以下とすることができる。一方、第1ルーメン111から脱血する場合に、脱血の吸引圧により血管壁が第1開口面121に張り付いて第1開口面121が塞がれることを避ける観点から、傾斜角度θ1は、好ましくは10°以上、より好ましくは15°以上とすることができる。
【0027】
第2開口面122は、第1ルーメン111と第2ルーメン112との間の再循環を生じにくくする観点から、第1開口面121からできるだけ離れていることが好ましい。一方、逆接続の際に脱血ルーメンとして用いられる第2ルーメン112と第3ルーメン113との間の再循環を生じにくくする観点から、第3開口面123からもできるだけ離れていることが好ましい。このため、第1開口面121と第2開口面122との間の距離L1-L2は、第1開口面121と第4開口面124との距離L1の好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下とすることができる。
【0028】
第2開口面122は、第1開口面121と同様に、隔壁115に対して基端側に傾斜して設けられている。このため、第2開口面122が垂直である場合と比べて、セルジンガ法等によりカテーテルを体内に挿入する際に挿入抵抗を小さくしてスムーズに挿入できるようになる。また、血管を傷つけにくくすることもできる。さらに、第2開口面122の大きさ(開口面の面積)は、第2開口面122が垂直である場合よりも大きくなるため、第2ルーメン112から脱血する場合に、血流量の確保が容易になると共に、吸引圧を下げることができる。ここで、第2ルーメン112を脱血ルーメンとして使用することを考慮して、第2開口面122の大きさを第1開口面121の大きさと等しくなるように形成してもよい。
【0029】
第2開口面122の傾斜角度θ2は、好ましくは60°以下、より好ましくは50°以下、さらに好ましくは40°以下とすることができる。第2ルーメン112から脱血することを可能にする観点からは、傾斜角度θ2は、好ましくは10°以上、より好ましくは15°以上とすることができる。
【0030】
第3開口面123は、順接続の際に脱血ルーメンとして用いられる第1ルーメン111と第3ルーメン113との間、及び、逆接続の際に脱血ルーメンとして用いられる第2ルーメン112と第3ルーメン113との間の再循環を生じにくくする観点から、第1開口面121及び第2開口面122からできるだけ離れていることが好ましい。このため、第1開口面121と第3開口面123との距離L1-L3は、第1開口面121と第4開口面124との距離L1の好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下とすることができる。また、第2開口面122と第3開口面123との距離L2-L3は、第2開口面122と第4開口面124との距離L2の好ましくは10%以上、より好ましくは25%以上、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下とすることができる。
【0031】
第3開口面123は、第1開口面121及び第2開口面122と同様に、隔壁115に対して基端側に傾斜して設けられている。このため、第3開口面123が垂直である場合と比べて、セルジンガ法等によりカテーテルを体内に挿入する際に挿入抵抗を小さくしてスムーズに挿入できるようになる。また、血管を傷つけにくくすることもできる。第3開口面123の傾斜角度θ3は、好ましくは70°以下、より好ましくは60°以下、さらに好ましくは50°以下とすることができる。ここで、第1開口面121の傾斜角度θ1、第2開口面122の傾斜角度θ2及び第3開口面123の傾斜角度θ3は、互いに同じでもよいが、異なっていてもよい。
【0032】
第4ルーメン114は、本体部101の先端において、断面外形が円形状になっている。このようにすることにより、第4ルーメン114の断面外形が角張った形状である場合と比べ、血管が傷つきにくくすることができる。第3開口面123よりも先端側の第4ルーメン114の外径は、カテーテル挿入性の観点から、好ましくは、1mm以上、より好ましくは1.5mm以上、好ましくは4mm以下、より好ましくは3mm以下とすることができる。
【0033】
本実施形態の4ルーメンカテーテルにおいて、第3開口面123及び第4開口面124は、第2開口面122よりも先端側に位置している。このため、順接続時において、第2ルーメン112を返血ルーメンとして使用した場合には、第3ルーメン113及び第4ルーメン114から供給された薬液が血管の血流および第2開口面122から流れ出る血流に乗って、脱血を行う第1開口面121から遠ざかるため、薬液の再循環が生じにくくすることができる。一方、逆接続時に、第2領域118側の第2ルーメン112を脱血ルーメンとして使用した場合であっても、第3開口面123は、隔壁115を挟んで反対の第1領域117側に配置されており、第3ルーメン113から供給された薬液は、第1開口面121から流れ出る血流に乗って、脱血を行う第2開口面122から遠ざかるため、薬液の再循環が発生しにくくなる。さらに、第4開口面124は、本体部101の先端に位置するため、逆接続時に第2ルーメン112を脱血ルーメンとして使用した場合でも、第4ルーメン114から供給された薬液は、血管の血流及び第1開口面121から流れ出て第1領域117側を流れる血流に乗って、脱血を行う第2開口面122から遠ざかるため、薬液の再循環が生じにくくなる。
【0034】
本実施形態の4ルーメンカテーテルは、第3ルーメン113及び第4ルーメン114を、本体部101の外壁116と隔壁115とが接する部分の近傍に、隔壁115を挟んで互いに対向するように設けており、第3ルーメン113と第4ルーメン114とは、本体部101の一方の側(左側)に配置されている。これにより、第2開口面122よりも先端側において隔壁115の幅を次第に狭くしつつ、第3開口面123を第2開口面122よりも先端側に設けることができるため、血管への挿入を容易にできる。また、第2開口面122と第3開口面123とは、本体部101の中心軸を挟んで反対側に位置し互いの距離が遠くなるため、逆接続時においても再循環が生じにくくなる。仮に、第3ルーメン113が第4ルーメン114と本体部101の中心軸を挟んで反対側に設けられた場合には、逆接続時の再循環防止のために第2開口面122と第3開口面123とを隔壁115で隔てる必要がある。このため、第2開口面122よりも先端側において隔壁115の幅を次第に狭くしつつ、第3開口面123を第2開口面122よりも先端側に設けることは容易にできない。
【0035】
第1ルーメン111から脱血し、第2ルーメン112から返血する場合には、血流量の確保を容易にするために第1ルーメン111の断面積をできるだけ大きくすることが好ましい。しかし、第2ルーメン112からの脱血も可能とする観点からは、第2ルーメン112の断面積の第1ルーメン111の断面積に対する比を、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上とすることができる。第2ルーメン112の断面積の第1ルーメン111の断面積に対する比を1としてもよいが、第1ルーメン111からの脱血量を確保する観点から好ましくは0.95以下、より好ましくは0.9以下とすることができる。なお、隔壁115により区画された第1領域117の断面積と第2領域118の断面積とは同じであってもよいが、第1ルーメン111の断面積を大きくする観点から、第1領域117の断面積を第2領域118の断面積よりも大きくしてもよい。
【0036】
ここで、第1ルーメン111及び第2ルーメン112の断面積と第1開口面121及び第2開口面122の大きさ(開口面の面積)について、第1ルーメン111及び第2ルーメン112の断面積が異なっており、第1開口面121及び第2開口面122の大きさが同じでもよい。また、第1ルーメン111及び第2ルーメン112の断面積が同じであり、第1開口面121及び第2開口面122の大きさが同じであってもよい。
【0037】
第1ルーメン111は、第1領域117における第3ルーメン113を除く部分において、断面積をできるだけ大きくすることが好ましい。そのため、第1ルーメン111は、断面円形状でなくてもよい。例えば、第1領域117における第3ルーメン113を除く部分の形状に合わせて、楕円形状及び扇形状並びにこれらが歪んだ形状等の断面略円形状とすることができる。同様に、第2ルーメン112も、第2領域118における第4ルーメン114を除く部分において、断面積をできるだけ大きくすることが好ましい。そのため、第2ルーメン112は、第2領域118における第4ルーメン114を除く分の形状に合わせて、断面略円形状とすることができる。第1ルーメン111及び第2ルーメン112を共に断面略円形状等とすることにより、本体部101の内腔をより効率的に用いることができ、第1ルーメン111及び第2ルーメン112の断面積を共に大きくすることができる。但し、第1ルーメン111及び第2ルーメン112の少なくとも一方が断面円形状であってもよい。
【0038】
一方、輸液ルーメンである第3ルーメン113及び第4ルーメン114は、大きな流量を必要としないため、第1ルーメン111及び第2ルーメン112の断面積に対して、小さく形成されており、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.25以上で、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.35以下の断面積とすることができる。また、第3ルーメン113の断面積と第4ルーメン114の断面積とを同じにすることができるが、各ルーメンの使用目的に応じて、第3ルーメン113の断面積の第4ルーメン114の断面積に対する比を0.5~1.5程度の範囲で変更することができる。
【0039】
第3ルーメン113及び第4ルーメン114を断面円形状とすることにより、流体の抵抗を小さくして送液を容易にすることができる共に、形成も容易となる。但し、第3ルーメン113及び第4ルーメン114は断面円形状でなくてもよく、断面略円形状とすることができる。
【0040】
第1ルーメン111の先端部に、該第1ルーメン111と外部を連通する第1ルーメン側孔125を設けることができる。第1ルーメン111を脱血ルーメンとして使用する場合に、第1開口面121の吸引圧を低減し、血管内壁が第1開口面121に張り付くことを防ぐことができる。また、脱血流量を容易に確保することも可能である。
【0041】
第1ルーメン側孔125は、吸引圧の分散効果を高めるために、複数設けることが好ましい。第1ルーメン側孔125の数は、特に限定されないが、第1ルーメン111の上側及び右側の位置にそれぞれ2つずつ配置することが好ましい。但し、第1ルーメン側孔125は必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。
【0042】
第2ルーメン112の先端部に、該第2ルーメン112と外部を連通する第2ルーメン側孔126を設けることができる。第2ルーメン112を脱血ルーメンとして使用する場合に、第2開口面122の吸引圧を低減し、血管内壁が第2開口面122に張り付くことを防ぐことができる。また、脱血流量を容易に確保することも可能である。
【0043】
第2ルーメン側孔126は、吸引圧の分散効果を高めるために、複数設けることが好ましい。第2ルーメン側孔126の数は、特に限定されないが、第2ルーメン112の下側及び右側にそれぞれ2つずつ配置することが好ましい。但し、第2ルーメン側孔126は必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。
【0044】
本体部101の長さは、特に限定されないが、カテーテルの留置部位の観点から、好ましくは10cm以上、より好ましくは13cm以上、好ましくは40cm以下、より好ましくは30cm以下である。
【0045】
本体部101の外径は、特に限定されないが、血流量を確保する観点から、好ましくは3mm以上、より好ましくは4mm以上である。また、血管に挿入できるようにする観点から、好ましくは6mm以下、より好ましくは5mm以下とすることができる。
【0046】
本体部101の外壁116の厚さは、特に限定されないが、カテーテルの強度と柔軟性との観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、好ましくは0.8mm以下、より好ましくは0.6mm以下とすることができる。
【0047】
本体部101は、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、シリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及びポリアミド等の血管内において安定な形状を保ち、血管を傷つけない硬さの材料により形成することができる。特にカテーテル挿入性を損なわない程度の硬さを持ち、常温では硬く体内の温度では柔らかくなる性質を有するポリウレタン等が好ましい。また、本体部101の先端部、例えば、第2開口面122よりも先端側を、血管を傷つけにくくするために、基端側よりも柔らかくすることができる。また、挿入位置がわかるように、硫酸バリウム、タングステン酸ビスマス、及び酸化ビスマスなどの造影剤を含む材料により本体部101の少なくとも一部を形成することもできる。さらには、例えば、本体部101の先端部のみ本体部101の他の部分と色彩を変えることにより、本体部101の先端部の位置を認識しやすくすることができる。
【0048】
本体部101の基端側には、分岐部102を介して枝管103A~103Dが延びている。枝管103A~103Dの先端側は、それぞれ第1ルーメン111~第4ルーメン114と接続されている。枝管103A~103Dの基端側には、それぞれコネクタ(図示せず)が接続されている。図1図3では、コネクタが保護キャップ131A~131Dにより覆われているが、これらのコネクタを介して本体部101と血液回路等とを接続することができる。また、枝管103A~103Dには、クランプ132A~132Dが取り付けられている。クランプ132A~132Dを設けることにより、ヘパリンロック等の処置をする際に、枝管103A~103Dを閉止することができる。
【0049】
本実施形態の4ルーメンカテーテルは、内表面及び外表面の少なくとも一方に種々の生体適合性処理をすることができる。例えば、留置中に血液と接触して血栓が形成されるのを防ぐために、抗血栓処理をすることができる。抗血栓処理は、特に限定されないが、ウロキナーゼ等のプラスミノーゲンアクチベーターを固定化する方法、又はヘパリン等の抗凝固因子を固定化する方法等とすることができる。
【0050】
本実施形態のカテーテルは、種々の変形が可能である。以下に示す変形例では、本実施形態と相違する部分についてのみ説明する。本実施形態と共通する構成は、その説明を適宜省略する。また、共通する部分については、本実施形態と同一の符号を付す。
【0051】
本実施形態のカテーテルの変形例として、図11図17に示すように、外壁116の第1ルーメン111を形成する部分に、先端の一部が切り欠かれて形成された第1ルーメンスリット127を形成することができる。また、外壁116の第2ルーメン112を形成する部分に、先端の一部が切り欠かれて形成された第2ルーメンスリット128を形成することができる。
【0052】
これにより、順接続の際に、第1ルーメン111に吸い込まれる血液の流れが第1ルーメンスリット127にも分散されるため、吸引圧が低減し、血管壁への張り付きを生じにくくすることができる。また、第1開口面121が血栓等の影響により閉塞した場合でも、第1ルーメン111を開存させることができる。更に、第2ルーメンスリット128を設けることにより、逆接続の際には、第1ルーメンスリット127を設けた場合と同様の効果を得ることができる。
【0053】
また、本体部101の先端部、例えば、第1ルーメンスリット127の基端位置よりも先端側の外壁116を、本体部101の基端側よりも柔らかくすることができる。外壁116の先端の一部を切り欠いて第1ルーメンスリット127及び第2ルーメンスリット128を形成することにより、外壁116が変形しやすくなるが、外壁116の先端側を柔らかくすることにより、更に外壁116が変形しやすくなる。これによって、カテーテルを挿入する際には、第1ルーメン111及び第2ルーメン112を形成する外壁116がそれぞれ第1ルーメン111及び第2ルーメン112の内側に向かって曲がるように容易に変形する。このため、カテーテルを挿入する際に、第1開口面121及び第2開口面122の位置において本体部101の断面積が小さくなり、挿入抵抗の急激な増大が生じないので、優れたカテーテルの挿入性を得ることができる。
【0054】
第1ルーメンスリット127の長さL4及び第2ルーメンスリット128の長さL5は、特に限定されないが、血管壁への張り付きを低減する観点から、好ましくは2mm以上15mm以下、より好ましくは5mm以上10mm以下である。第1ルーメンスリット127の長さL4及び第2ルーメンスリット128の長さL5は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0055】
第1ルーメンスリット127及び第2ルーメンスリット128は、所定の幅を有していればよい。第1ルーメンスリット127及び第2ルーメンスリット128の幅は、特に限定されないが、外壁116の剛性を確保する観点から、好ましくは0.1mm以上2.5mm以下、より好ましくは0.5mm以上2.0mm以下である。第1ルーメンスリット127及び第2ルーメンスリット128の幅は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0056】
図15及び図16に示す第1ルーメンスリット127及び第2ルーメンスリット128は、長手方向に一定の幅を有するが、これに限定されず、長手方向に幅を変化させることもできる。例えば、第1ルーメンスリット127或いは第2ルーメンスリット128の先端から基端にかけて次第に幅を広くすることもできる。
【0057】
また、変形例として、第1ルーメンスリット127及び第2ルーメンスリット128が形成された4ルーメンカテーテルを示しているが、どちらか一方を形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示の4ルーメンカテーテルは、血管内壁への張り付きの解消又は誤接続等により、返血ルーメンから脱血される場合であっても、血液及び薬液の再循環が生じにくく、透析等に用いるカテーテルとして有用である。
【符号の説明】
【0059】
101 本体部
102 分岐部
103A 枝管
103B 枝管
103C 枝管
111 第1ルーメン
112 第2ルーメン
113 第3ルーメン
114 第4ルーメン
115 隔壁
116 外壁
117 第1領域
118 第2領域
121 第1開口面
122 第2開口面
123 第3開口面
124 第4開口面
125 第1ルーメン側孔
126 第2ルーメン側孔
127 第1ルーメンスリット
128 第2ルーメンスリット
131A 保護キャップ
131B 保護キャップ
131C 保護キャップ
131D 保護キャップ
132A クランプ
132B クランプ
132C クランプ
132D クランプ
図1
図2
図3
図4
図5
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