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特許7571788二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/14 20060101AFI20241016BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20241016BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
B29C55/14
B29K23:00
B29L7:00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022531804
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2021022512
(87)【国際公開番号】W WO2021261313
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2024-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2020109789
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀之内 一仁
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】種木 健介
(72)【発明者】
【氏名】今井 徹
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/158590(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/14
B29K 23/00
B29L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソペンタッド分率が97.0%以上であるポリプロピレン樹脂を含むポリプロピレン樹脂組成物を押出して未延伸シートを得る工程、未延伸シートを長手方向に延伸する工程、長手方向延伸フィルムをTm~Tm+25℃の範囲の予熱温度に加熱する予熱工程、予熱された長手方向延伸フィルムをTm-10℃以上、予熱温度以下の温度で幅方向に10倍以上の倍率で延伸する工程、幅方向延伸終了時に幅方向延伸温度以下で、かつTm-80℃以上、Tm-15℃以下の温度でフィルムを冷却する工程、Tm-5℃以上、Tm+20℃以下で幅方向に1.03倍以上の倍率で延伸しながら熱固定する工程を順に含む二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂の結晶化温度が105℃以上であり、融点が160℃以上である、請求項1に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが4.0g/10分以上である、請求項1又は2に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂の分子量10万以下の成分量が35質量%以上である、請求項1~3のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は剛性と耐熱性に優れる二軸配向ポリプロピレンフィルムに関する。詳しくは、包装袋としたときの袋形状を保持しやすく、しかもヒートシールしたときにシール部のシワが少ないため、包装袋に好適に用いることができる二軸配向ポリプロピレンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸配向ポリプロピレンフィルムは、防湿性を有し、しかも必要な剛性、耐熱性を有するため、包装用途や工業用途に用いられている。近年、環境への配慮から、減容(フィルム厚みを薄く)しても強度を維持することも求められており、そのためには、著しく剛性を向上させることが不可欠である。剛性を向上する手段として、ポリプロピレン樹脂の重合時の触媒やプロセス技術の改良により、そのポリプロピレン樹脂の結晶性や融点が向上することや、製膜プロセス中での延伸倍率を上げてフィルムの配向度を高める技術があった。しかしながら、剛性を上げると同時に耐熱性が低下する問題があり、これまでに十分な剛性と耐熱性を有する二軸配向ポリプロピレンフィルムはなかった。また、剛性を向上させてフィルムの減容化をすると、水蒸気バリア性が低下し、防湿性が損なわれるため、食品が劣化する問題があった。
【0003】
二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造工程において、幅方向に延伸後に、幅方向延伸時の温度以下でフィルムを弛緩しながら一段目の熱処理を行い、二段目で一段目温度~幅方向延伸温度で熱処理を行う方法(例えば、特許文献1等参照。)や、幅方向延伸後にさらに、長手方向に延伸を行う方法(例えば、特許文献2、3等参照。)が提案されている。しかしながら、特許文献2に記載のフィルムは剛性には優れるが、ヒートシール後はシール部にシワが生じやすく、耐熱性に劣るものであった。また、特許文献1記載のフィルムの配向は低く、剛性は十分でない。特許文献3記載のフィルムは、逐次二軸延伸を行い、幅方向に配向したものを、長手方向に再延伸するため長手方向への分子鎖の配列が十分に行われず、長手方向の剛性は低いものであった。また、幅方向へ緩和を行っているため、幅方向の配向は低く、剛性が十分でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2016/182003号国際公報
【文献】特開2013-177645号公報
【文献】特開2001-40111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上述した問題点を解決することにある。すなわち、フィルムの剛性と150℃もの高温での耐熱性を両立する二軸配向ポリプロピレンフィルムに関する。詳しくは、剛性が高く、フィルムの薄膜化しても包装袋としたときの袋形状を保持しやすいと同時に、フィルムの薄膜化しても従来の厚み同等のガスバリア性を保持でき、包装体にするために、ヒートシールしたときにシール部及びその周辺にシワが少ない二軸配向ポリプロピレンフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らがかかる目的を達成するために鋭意検討した結果、剛性が高く、150℃もの高温での耐熱性にも優れ、包装袋としたときの袋形状を保持しやすく、しかも印刷時のピッチずれやヒートシールしたときにシール部のシワが少ない二軸配向ポリプロピレンフィルムを得ることができることを見出した。
すなわち、本発明は、メソペンタッド分率が97.0%以上であるポリプロピレン樹脂を含むポリプロピレン樹脂組成物を押出して未延伸シートを得る工程、未延伸シートを長手方向に延伸する工程、長手方向延伸フィルムをTm~Tm+25℃の範囲の予熱温度に加熱する予熱工程、予熱された長手方向延伸フィルムをTm-10℃以上、予熱温度以下の温度で幅方向に10倍以上の倍率で延伸する工程、幅方向延伸終了時に幅方向延伸温度以下で、かつTm-80℃以上、Tm-15℃以下の温度でフィルムを冷却する工程、Tm-5℃以上、Tm+20℃以下で幅方向に1.03倍以上の倍率で延伸しながら熱固定する工程を順に含む二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法である。
【0007】
この場合において、前記二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂の結晶化温度が105℃以上であり、融点が161℃以上であることが好適である。
【0008】
また、この場合において、前記二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが4.0g/10分以上であることが好適である。
【0009】
さらにまた、この場合において、前記二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂の分子量10万以下の成分量が35質量%以上であることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、剛性が高く、フィルムの薄膜化ができると同時に、フィルムの薄膜化しても従来の厚み同等のガスバリア性を保持でき、包装体にするために、ヒートシールしたときにシール部及びその周辺にシワが少ない二軸配向ポリプロピレンフィルムである。よって、包装体、工業用などに好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、さらに詳しく本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムについて説明する。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂を主成分とするポリプロピレン樹脂組成物からなる。なお、「主成分」とは、ポリプロピレン樹脂がポリプロピレン樹脂組成物中に占める割合が90質量%以上であることを意味し、より好ましくは93質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは97質量%以上である。
【0012】
(ポリプロピレン樹脂)
本発明に用いられるポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレン単独重合体や、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体を用いることができる。実質的にエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンを含まないプロピレン単独重合体が好ましく、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィン成分を含む場合であっても、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィン成分量は1モル%以下であるのが好ましく、より好ましくは0.5モル%以下であり、さらに好ましくは0.3モル%以下であり、特に好ましくは0.1モル以下である。上記範囲であると結晶性が向上しやすい。このような共重合体を構成する炭素数4以上のα-オレフィン成分として、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチルペンテン-1、3-メチルブテン-1、1-ヘキセン、4-メチルペンテン-1、5-エチルヘキセン-1、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
ポリプロピレン樹脂は異なる2種以上のポリプロピレン単独重合体や、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0013】
(立体規則性)
本発明に用いられるポリプロピレン樹脂の立体規則性の指標であるメソペンタッド分率([mmmm]%)は、97.0~99.9%の範囲内であることが好ましく、97.5~99.7%の範囲内であることがより好ましく、98.0~99.5%の範囲内であるとさらに好ましく、98.5~99.3%の範囲内であると特に好ましい。
97.0%以上であると、ポリプロピレン樹脂の結晶性が高まり、フィルムにおける結晶の融点、結晶化度、結晶配向度が向上し、剛性と高温での耐熱性が得られやすい。99.9%以下であるとポリプロピレン製造の点でコストを抑えやすく、製膜時に破断しにくくなる。メソペンタッド分率は核磁気共鳴法(所謂NMR法)で測定される。
99.5%以下であることがより好ましい。メソペンタッド分率は核磁気共鳴法(所謂NMR法)で測定される。
ポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率を上述の範囲内とするためには、得られたポリプロピレン樹脂パウダーをn-ヘプタンなどの溶媒で洗浄する方法や、触媒および/または助触媒の選定、ポリプロピレン樹脂組成物の成分の選定を適宜行う方法などが好ましく採用される。
【0014】
(融解温度)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成する上記ポリプロピレン樹脂のDSCで測定される融解温度(Tm)の下限は好ましくは160℃であり、より好ましくは161℃であり、さらに好ましくは162℃であり、よりさらに好ましくは163℃であり、さらに好ましくは164℃である。Tmが160℃以上であると剛性と高温での耐熱性が得られやすい。Tmの上限は、好ましくは170℃であり、より好ましくは169℃であり、さらに好ましくは168℃であり、よりさらに好ましくは167℃であり、特に好ましくは166℃である。Tmが170℃以下であると、ポリプロピレン製造の点でコストアップを抑制しやすかったり、製膜時に破断しにくくなる。前述のポリプロピレン樹脂に結晶核剤を配合することによって、融解温度をより上げることもできる。
Tmとは、1~10mgのサンプルをアルミパンに詰めて示差走査熱量計(DSC)にセットし、窒素雰囲気下で、230℃で5分間融解し、走査速度-10℃/分で30℃まで降温した後、5分間保持し、走査速度10℃/分で昇温した際に観察される、融解にともなう吸熱ピークの主たるピーク温度である。
【0015】
(結晶化温度)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成する上記ポリプロピレン樹脂のDSCで測定される結晶化温度(Tc)の下限は105℃であり、好ましくは108℃であり、より好ましくは110℃である。Tcが105℃以上であると、幅方向延伸とそれに続く冷却工程において結晶化が進みやすく、剛性と高温での耐熱性が得られやすい。Tcの上限は、好ましくは135℃であり、より好ましくは133℃であり、さらに好ましくは132℃であり、よりさらに好ましくは130℃であり、特に好ましくは128℃であり、最も好ましくは127℃である。Tcが135℃以下であるとポリプロピレン製造の点でコストアップしにくかったり、製膜時に破断しにくくなる。前述のポリプロピレン樹脂に結晶核剤を配合することによって、結晶化温度をより上げることもできる。
Tcとは、1~10mgのサンプルをアルミパンに詰めてDSCにセットし、窒素雰囲気下で、230℃で5分間融解し、走査速度-10℃/分で30℃まで降温したときに観察される発熱ピークの主たるピーク温度である。
【0016】
(メルトフローレート)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成する上記ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210(1995)の条件M(230℃、2.16kgf)に準拠して測定した場合において、4.0g/10分以上、30g/10分以下であることが好ましく、4.5g/10分以上、25g/10分以下であるとより好ましく、4.8g/10分以上、22g/10分以下であるとさらに好ましく、5.0g/10分以上、20g/10分以下であると特に好ましく、6.0g/10分以上、20g/10分以下であると最も好ましい。
ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)が4.0g/10分以上であると、熱収縮が低い二軸配向ポリプロピレンフィルムを得られやすい。
また、ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)が30g/10分以下であると、フィルムの製膜性を維持しやすい。
【0017】
フィルム特性の観点からは、フィルムを構成するポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kgf)の下限を好ましくは5.0g/10分、より好ましくは5.5g/10分、さらに好ましくは6.0g/10分、特に好ましくは6.3g/10分、最も好ましくは6.5g/10分とするのが良い。
ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)が5.0g/10分以上であると、フィルムを構成するポリプロピレン樹脂の低分子量成分量が多くなるため、後述するフィルム製膜工程での幅方向延伸工程を採用することにより、ポリプロピレン樹脂の配向結晶化がより促進されること、及びフィルムにおける結晶化度がより高まりやすくなることに加えて、非晶部分のポリプロピレン分子鎖同士の絡み合いがより少なくなり、耐熱性をより高めやすい。
ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)を上記の範囲内とするためには、ポリプロピレン樹脂の平均分子量や分子量分布を制御する方法などを採用するのが好ましい。
【0018】
すなわち、本発明のフィルムを構成するポリプロピレン樹脂のGPC積算カーブにおける分子量10万以下の成分の量の下限は35質量%であり、好ましくは38質量%であり、より好ましくは40質量%であり、さらに好ましくは41質量%であり、特に好ましくは42質量%である。
GPC積算カーブでの分子量10万以下の成分の量の上限は、好ましくは65質量%であり、より好ましくは60質量%であり、さらに好ましくは58質量%である。GPC積算カーブでの分子量10万以下の成分の量が65質量%以下であるとフィルム強度が低下しにくい。
このとき、緩和時間の長い高分子量成分や長鎖分岐成分を含むと、ポリプロピレン樹脂に含まれる分子量10万以下の成分の量を、全体の粘度を大きく変えずに、調整しやすくなるので、剛性や熱収縮にあまり影響させずに、製膜性を改善しやすい。
【0019】
(分子量分布)
本発明に用いるポリプロピレン樹脂は、分子量分布の広さの指標である質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の下限が、好ましくは3.5であり、より好ましくは4であり、さらに好ましくは4.5であり、特に好ましくは5である。Mw/Mnの上限は、好ましくは30であり、より好ましくは25であり、さらに好ましくは23であり、特に好ましくは21であり、最も好ましくは20である。
Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて得ることができる。Mw/Mnが上記範囲であると、分子量10万以下の成分の量を多くすることが容易である。
【0020】
なお、ポリプロピレン樹脂の分子量分布は、異なる分子量の成分を多段階に一連のプラントで重合したり、異なる分子量の成分をオフラインで混練機にてブレンドしたり、異なる性能をもつ触媒をブレンドして重合したり、所望の分子量分布を実現できる触媒を用いたりすることで調整することが可能である。GPCで得られる分子量分布の形状としては、横軸に分子量(M)の対数(logM)、縦軸に微分分布値(logMあたりの重量分率)をとったGPCチャートにおいて、単一ピークを有するなだらかな分子量分布であってもよく、複数のピークやショルダーを有する分子量分布であってよい。
【0021】
(二軸配向ポリプロピレンフィルムの製膜方法)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、上述したポリプロピレン樹脂を主成分とするポリプロピレン樹脂組成物からなる未延伸シートを作製し、二軸延伸することによって得ることが好ましい。二軸延伸の方法としては、インフレーション同時二軸延伸法、テンター同時二軸延伸法、テンター逐次二軸延伸法のいずれによっても得られるが、製膜安定性、厚み均一性の観点でテンター逐次二軸延伸法を採用することが好ましい。特に長手方向に延伸後、幅方向に延伸することが好ましいが、幅方向に延伸後に長手方向に延伸する方法でもよい。
【0022】
次に本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法を以下に説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。なお、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、少なくとも片面に他の機能を有する層を積層させてもよい。積層するのは片面でも両面でも良い。その時は他の一方の層、また中央層の樹脂組成物を上述のポリプロピレン樹脂組成物を採用すればよい。また、上述のポリプロピレン樹脂組成物と異なるものでも良い。積層する層の数は、片面につき、1層や2層、3層以上でもよいが、製造の観点から、1層または2層が好ましい。積層の方法としては、例えば、フィードブロック方式やマルチマニホールド方式による共押出が好ましい。特に、二軸配向ポリプロピレンフィルムの加工性を向上させる目的で、ヒートシール性を有する樹脂層を、特性を低下させない範囲で積層することができる。また、印刷性付与のために、片面、もしくは両面にコロナ処理を施すこともできる。
【0023】
以下には、単層の場合の例について、テンター逐次二軸延伸法を採用した場合について述べる。
まず、ポリプロピレン樹脂を含む樹脂組成物を単軸または二軸の押出機で加熱溶融させ、Tダイからシート状に押出し、冷却ロール上に接地させて冷却固化する。固化を促進する目的で、冷却ロールで冷却したシートを水槽に浸漬するなどして、さらに冷却することが好ましい。
【0024】
ついで、シートを加熱した2対の延伸ロールで、後方の延伸ロールの回転数を大きくすることでシートを長手方向に延伸し、一軸延伸フィルムを得る。
【0025】
引き続き、一軸延伸フィルムを予熱後、テンター式延伸機でフィルム端部を把持しながら、特定の温度で幅方向に延伸を行い、二軸延伸フィルムを得る。この幅方向延伸工程については後に詳細に述べる。
【0026】
幅方向延伸工程が終了後、二軸延伸フィルムを特定の温度で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。熱処理工程においては、幅方向にフィルムを弛緩してもよい。
【0027】
こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムに、必要に応じて、例えば少なくとも片面にコロナ放電処理を施した後、ワインダーで巻取ることによりフィルムロールを得ることができる。
【0028】
以下それぞれの工程について詳しく説明する。
(押出し工程)
まず、ポリプロピレン樹脂を主成分とするポリプロピレン樹脂組成物を単軸または二軸の押出機で200℃~300℃の範囲で加熱溶融させ、Tダイから出たシート状の溶融ポリプロピレン樹脂組成物を押出し、金属製の冷却ロールに接触させて冷却固化させる。得られた未延伸シートはさらに水槽に投入するのが好ましい。
冷却ロール、又は冷却ロールと水槽の温度は、10℃からTcまでの範囲であることが好ましく、フィルムの透明性を上げたい場合は、10~50℃の範囲の温度の冷却ロールで冷却固化するのが好ましい。冷却温度を50℃以下にすると未延伸シートの透明性が高まりやすく、好ましくは40℃以下であり、さらに好ましくは30℃以下である。逐次二軸延伸後の結晶配向度を増大させるには冷却温度を40℃以上とするのも好ましい場合があるが、上述のようにメソペンダット分率が97.0%以上のプロピレン単独重合体を用いる場合は、冷却温度を40℃以下とするのが次工程の延伸を容易に行い、また厚み斑を低減する上で好ましく、30℃以下とするのがより好ましい。
未延伸シートの厚みは3500μm以下とするのが、冷却効率の上で好ましく、3000μm以下とするのがさらに好ましく、逐次二軸延伸後のフィルム厚みに応じて、適宜調整できる。未延伸シートの厚みはポリプロピレン樹脂組成物の押出し速度及びTダイのリップ幅等で制御できる。
【0029】
(長手方向延伸工程)
長手方向延伸倍率の下限は好ましくは3.5倍であり、より好ましくは3.8倍であり、特に好ましくは4.2倍である。上記範囲であると強度を高めやすく、膜厚ムラも少なくなる。
長手方向延伸倍率の上限は好ましくは7.0倍であり、より好ましくは6.0倍であり、特に好ましくは7倍である。上記範囲であると、幅方向延伸工程での幅方向延伸がしやすく、生産性が向上する。
長手方向延伸温度の下限は、好ましくはTm-30℃であり、より好ましくはTm-27℃であり、さらに好ましくはTm-25℃である。上記範囲であると引き続いて行われる幅方向延伸が容易になり、厚みムラも少なくなる。長手方向延伸温度の上限は好ましくはTm-7℃であり、より好ましくはTm-10℃であり、さらに好ましくはTm-12℃である。上記範囲であると熱収縮率を小さくしやすく、延伸ロールに付漕し延伸しにくくなったり、表面の粗さが大きくなることにより品位が低下することも少ない。
なお、長手方向延伸は3対以上の延伸ロールを使用して、2段階以上の多段階に分けて延伸してもよい。
【0030】
(予熱工程)
幅方向延伸工程の前に、長手方向延伸後の一軸延伸フィルムをTm~Tm+25℃の範囲で加熱して、ポリプロピレン樹脂組成物を軟化させる必要がある。Tm以上とすることにより、軟化が進み、幅方向の延伸が容易になる。Tm+25℃以下とすることで、横延伸時の配向が進み、剛性が発現しやすくなる。より好ましくはTm+2~Tm+20℃であり、特に好ましくはTm+3~Tm+15℃である。ここで、予熱工程での最高温度を予熱温度とする。
【0031】
(幅方向延伸工程)
予熱工程後の幅方向延伸工程においては、好ましい方法は以下のとおりである。
【0032】
幅方向延伸工程においては、Tm-10℃以上、予熱温度以下の温度で延伸するのが好ましい。このとき、幅方向延伸の開始時は予熱温度に達した時点でも良いし、予熱温度に達した後に温度を降下させ予熱温度よりも低い温度に達した時点でもよい。
幅方向延伸工程における温度の下限は、より好ましくはTm-9℃であり、さらに好ましくはTm-7℃であり、特に好ましくはTm-5℃である。幅方向延伸温度がこの範囲であると、得られる二軸配向フィルムの剛性を向上させやすい。
幅方向延伸工程における温度の上限は、好ましくはTm+10℃であり、さらに好ましくはTm+7℃であり、特に好ましくはTm+5℃である。幅方向延伸温度がこの範囲であると、延伸ムラが生じにくい。
幅方向延伸工程において、上記の温度範囲での幅方向延伸に引き続き、より低温で延伸する後期延伸工程を加えてもよい。
つまり、Tm-10℃以上、Tm+10℃以下の温度で延伸する区間(前期区間)に続いて、前期区間の温度よりも低く、かつTm-70℃以上、Tm-5℃以下の温度で延伸する区間(後期区間)を設けても良い。前期区間及び後期区間を設けることでより剛性を高めやすい。
後期区間の延伸温度の下限は、好ましくはTm-65℃であり、より好ましくはTm-60℃であり、さらに好ましくはTm-55℃である。後期区間の延伸温度がこの範囲であると製膜が安定しやすい。
【0033】
幅方向延伸工程における最終幅方向延伸倍率の下限は、好ましくは9倍であり、より好ましくは10倍である。9倍以上であると剛性を高めやすく、膜厚ムラも少なくなりやすい。幅方向延伸倍率の上限は、好ましくは20倍であり、より好ましくは17倍であり、さらに好ましくは15倍である。20倍以下であると熱収縮率を小さくしやすく、延伸時に破断しにくい。
後期区間を加える場合は、合計の延伸倍率が上記範囲となるようにする。このとき前期延伸工程の延伸倍率の下限は、好ましくは4倍であり、より好ましくは5倍であり、さらに好ましくは6倍であり、特に好ましくは6.5倍である。前期区間終了時の延伸倍率の上限は、好ましくは15倍であり、より好ましくは14倍であり、さらに好ましくは13倍である。
【0034】
幅方向延伸終了時、すなわち幅方向最終延伸倍率に到達した時の直後に、フィルムを冷却するのが好ましい。この時の冷却の温度は、幅方向延伸の温度以下で、かつTm-80℃以上、Tm-15℃以下の温度にするのが好ましく、Tm-80℃以上、Tm-20℃以下の温度にすることがより好ましく、Tm-80℃以上、Tm-30℃以下の温度とすることがさらに好ましく、Tm-70℃以上、Tm-35℃以下の温度とすることが特に好ましい。冷却工程を加えることで、結晶化が起こり結晶配向が固定化され、その後、融解以上の温度に昇温しても配向の履歴が維持され、結果的にフィルム中の結晶配向を大きくすることができる。
幅方向延伸終了時の温度から冷却時の温度へは徐々に低下させることもできるが、段階的にあるいは一段階で低下させることもできる。温度を段階的にあるいは一段階で低下させると、フィルム中の結晶配向をより大きくしやすいため好ましい。
【0035】
フィルムを冷却した後に、高温で再度幅方向に延伸を行うのが好ましい。延伸温度の下限はTm-5℃であり、好ましくはTmであり、より好ましくはTm+5℃であり、さらに好ましくはTm+7℃であり、特に好ましくはTm+9℃である。Tm-5℃以上であると、剛性を高めやすく、熱収縮率も低下させやすい。
延伸温度の上限は好ましくはTm+20℃であり、より好ましくはTm+18℃であり、さらに好ましくはTm+16℃である。Tm+20℃以下であると、剛性を高めやすい。
高温での再延伸倍率の下限は1.03倍であり、好ましくは1.05倍であり、より好ましくは1.10倍である。
高温での再延伸倍率の上限は好ましくは2倍であり、より好ましくは1.7倍であり、さらに好ましくは1.5倍である。再延伸倍率が大きすぎると、熱収縮率が大きくなりすぎたり、厚みムラが生じたり、フィルムが破断したりすることがある。
【0036】
つまり、従来のように幅方向延伸後に、直ちに高温で弛緩させるのではなく、再度幅方向に融点よりも十分に高い温度で延伸することによって、熱収縮率を低下させながら、剛性をより向上させることが可能であることを見出した。
すなわち、最初の幅方向延伸後の工程において、Tm-5℃以上で、延伸を行うことが好ましい。Tm-5℃以上では、分子鎖の運動性が十分に高くなり、延伸により、分子鎖の絡み合いの影響を解消しやすくなり、その結果、分子鎖が拘束されにくいために、乱れた分子配向になりにくく、結晶化も十分に進行する。
高温で幅方向に延伸後にフィルムを結晶化可能な温度以下に冷却することにより、結晶配向が固定化され、結晶化度が高く、結晶ラメラも厚い高融点のフィルムを得ることができる。
【0037】
また、結晶ラメラ以外の部分においても、絡み合い点によって拘束された分子鎖が少なく、分子配向の歪が小さいので、結晶の融解が始まっても、フィルムは収縮しにくい。さらに、結晶化度が向上し、結晶ラメラが厚いと融点が高くなりやすく、融点以下では融解が起こりにくい。これにより、熱収縮率が低下しやすい。
この結果、剛性をより向上させながら、熱収縮率を低下させることが可能になった。
【0038】
通常の製膜プロセス押出し―縦方向延伸―幅方向延伸―熱処理)においては、融点よりも低温で行う幅方向延伸による歪を解消するために、熱処理工程でフィルムを融点以上の高温に曝すとともに、数%から数十%の弛緩を施すことで、熱収縮率を低くしていた。弛緩させることで、分子鎖が拘束されていることにより結晶化が進行しにくいことを解消することができ、熱収縮率の低下に寄与する。しかしながら、逆に、横延伸過程で生成した分子鎖の幅方向の配向が低下することで剛性も低下するため、低熱収縮率と高剛性を両立させることは困難であった。また、あまり高温にすると、フィルムが白化する問題もあった。
通常の製膜プロセス(押出し―縦方向延伸―幅方向延伸―熱処理)においては、幅方向延伸工程の温度を高くすることにより、分子鎖の運動性が高く、歪が残らないように延伸すると、縦方向延伸により生成した結晶の融解が進むため、結晶配向が低下する。
本発明の方法では、一度、幅方向延伸を行い、十分に幅方向に配向させた後に、冷却によって固定された結晶配向が融解しても十分な張力をもったフィルムを、Tm-5℃以上の高温下で再び延伸するため、再度延伸する際にも、十分な張力があり、厚みムラが生じたり、フィルムが破断する懸念も少ない。
高温での延伸倍率は、分子鎖の絡み合いをほぐし、整列させることができる程度であればよく、1.03倍以上であればよい。2倍以下の延伸倍率にすると厚みムラが生じにくい。
【0039】
このように、立体規則性が高く、高融点である結晶性の高いポリプロピレン樹脂を用い、上述の縦延伸工程、幅方向延伸工程、冷却工程、高温延伸工程を採用することにより、ポリプロピレン樹脂の分子が著しく高度に主配向方向に(上述した幅方向延伸工程では幅方向が該当する。)に整列するため、得られる二軸配向フィルム中の結晶配向が強く、融点も高い結晶がより多く生成しやすくなる。
【0040】
また、ポリプロピレン樹脂の低分子量成分を増やすことで、分子鎖の絡み合いがより少なくなり、フィルムの結晶化度がより高まりやすくなり、結晶ラメラ以外の部分が少なくなる。また、結晶ラメラ以外の部分の熱収縮応力を弱くなることで、熱収縮率をさらに低下しやすい。
従来技術では、剛性と熱収縮率のどちらかが向上すれば、他方の特性が低下する傾向となることを考慮すると、本発明は画期的な効果を有すると言える。
【0041】
(熱処理工程)
二軸延伸フィルムは必要に応じて、熱収縮率をさらに小さくするために、熱処理することができる。熱処理温度の上限は好ましくは、183℃であり、より好ましくは180℃であり、さらに好ましくは178℃である。183℃以下にすることで、剛性が低下しにくく、フィルム表面の粗さが大きくなりすぎず、フィルムが白化しにくい。熱処理温度の下限は好ましくはTm-3℃であり、より好ましくはTm-2℃であり、特に好ましくはTmである。
熱収縮率を調整する目的で、熱処理時に幅方向にフィルムを弛緩(緩和)させてもよいが、弛緩率の上限は好ましくは8%であり、より好ましくは5%であり、さらに好ましくは3%である。上記範囲内であると、剛性が低下しにくく、フィルム厚み変動が小さくなりやすい。剛性をより高めるときは、熱処理を行わなくてもよい。
【0042】
(冷却工程)
幅方向延伸後、再度幅方向にTm-5℃以上の温度で延伸した直後、あるいは熱処理工程直後に、フィルムを冷却するのが好ましい。この時の冷却の温度は、10℃以上、140℃以下の温度にするのが好ましく、15℃以上、135℃以下の温度にすることがより好ましく、20℃以上、130℃以下の温度にすることがさらに好ましく、20℃以上、125℃以下の温度にすることが特に好ましい。冷却工程を設けることで、フィルムの状態を固定することができる。
【0043】
(フィルム厚み)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの厚みは各用途に合わせて設定されるが、フィルムの強度を得るには、フィルム厚みの下限は好ましくは2μmであり、より好ましくは3μmであり、さらに好ましくは4μmであり、特に好ましくは8μmであり、最も好ましくは10μmである。フィルム厚みが2μm以上であるとフィルムの剛性を得やすい。フィルム厚みの上限は好ましくは100μmであり、より好ましくは80μmであり、さらに好ましくは60μmであり、特に好ましくは50μmであり、最も好ましくは40μmである。フィルム厚みが100μm以下であると押出工程時の未延伸シートの冷却速度が小さくなりにくい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは通常、幅2000~12000mm、長さ1000~50000m程度のロールとして製膜され、フィルムロール状に巻き取られる。さらに、各用途に合わせてスリットされ、幅300~2000mm、長さ500~5000m程度のスリットロールとして供される。本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムはより長尺のフィルムロールを得ることが可能である。
【0044】
(厚み均一性)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの厚み均一性の下限は好ましくは0%であり、より好ましくは0.1%であり、さらに好ましくは0.5%であり、特に好ましくは1%である。厚み均一性の上限は好ましくは20%であり、より好ましくは17%であり、さらに好ましくは15%であり、特に好ましくは12%であり、最も好ましくは10%である。上記範囲だとコートや印刷などの後加工時に不良が生じにくく、精密性を要求される用途に用いやすい。
測定方法は下記のとおりとした。フィルムの長さ方向にフィルム物性が安定している定常領域から幅方向40mmの試験片を切り出し、ミクロン計測器(株)製のフィルム送り装置(製番:A90172を使用)及びアンリツ株式会社製フィルム厚み連続測定器(製品名:K-313A広範囲高感度電子マイクロメーター)を用い、20000mmにわたって連続してフィルム厚みを計測し、下式から厚み均一性を算出した。
厚み均一性(%)=[(厚みの最大値-厚みの最低値)/厚みの平均値]×100
【0045】
(フィルム特性)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、下記特性に特徴がある。ここで本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにおける「長手方向」とは、フィルム製造工程における流れ方向に対応する方向であり、「幅方向」とは、前記のフィルム製造工程における流れ方向と直交する方向である。フィルム製造工程における流れ方向が不明なポリプロピレンフィルムについては、フィルム表面に対して垂直方向に広角X線を入射し、α型結晶の(110)面に由来する散乱ピークを円周方向にスキャンし、得られた回折強度分布の回折強度が最も大きい方向を「長手方向」、それと直交する方向を「幅方向」とする。
【0046】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの150℃での幅方向の熱収縮率(%)及び23℃での幅方向の5%伸長時応力(MPa)が下記式を満足するのが好ましい。
下記式を満足することにより、剛性がより高く、かつ高温での熱収縮率がより小さいため、包装袋としたときの袋形状を保持しやすさがより向上するとともに、高温でのヒートシールなどの加工時のフィルムの変形がより起こりにくく、包装品質がより向上する。また、より薄膜化が可能となり、包装材料の減容化にも貢献できる。
23℃での幅方向の5%伸長時応力(MPa)≧150℃での幅方向の熱収縮率(%)×4.0+140
また、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの150℃での幅方向の熱収縮率(%)及び23℃での幅方向の5%伸長時応力(MPa)が下記式を満足することがより好ましい。
23℃での幅方向の5%伸長時応力(MPa)≧150℃での幅方向の熱収縮率(%)×4.0+150
さらに、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの150℃での幅方向の熱収縮率(%)及び23℃での幅方向の5%伸長時応力(MPa)が下記式を満足することがさらに好ましい。
23℃での幅方向の5%伸長時応力(MPa)≧150℃での幅方向の熱収縮率(%)×4.0+160
【0047】
(150℃熱収縮率)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの150℃での長手方向の熱収縮率の上限は好ましくは10%であり、より好ましくは7.0%であり、さらに好ましくは6.0%であり、特に好ましくは5.0%であり、最も好ましくは4.0%以下である。150℃での幅方向の熱収縮率の上限は好ましくは30%であり、より好ましくは20%であり、さらに好ましくは16%であり、特に好ましくは15%以下である。
長手方向の熱収縮率が10%以下、かつ、幅方向の熱収縮率が30%以下であると、ヒートシール時のシワが生じにくく、特に150℃での長手方向の熱収縮率が8.0%以下、150℃での幅方向の熱収縮率が15%以下であると、開ロ部にチャック部を融着する際の歪みが小さく好ましい。150℃での熱収縮率を小さくするには、フィルムを構成するポリプロピレン樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)積算カーブを測定した場合の分子量10万以下の成分の量の下限を35質量%とするのが有効である。
【0048】
(23℃5%伸長時応力)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での幅方向のF5の下限は好ましくは140MPaであり、より好ましくは160MPaであり、さらに好ましくは180MPaであり、特に好ましくは190MPaである。140MPa以上では、剛性が高いため、包装袋としたときの袋形状を保持しやすく、印刷など加工時にフィルムの変形が起こりにくい。
23℃での幅方向のF5の上限は、好ましくは300MPaであり、より好ましくは290MPaであり、さらに好ましくは280Paである。280MPa以下だと、現実的な製造が容易であったり、縦一幅バランスが良化しやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での長手方向の5%伸長時の応力(F5)の下限は好ましくは40Paであり、より好ましくは42Paであり、さらに好ましくは46Paであり、特に好ましくは48Paである。40MPa以上では、剛性が高いため、包装袋としたときの袋形状を保持しやすく、印刷など加工時にフィルムの変形が起こりにくい。
23℃での長手方向のF5の上限は、好ましくは70MPaであり、より好ましくは65MPaであり、さらに好ましくは62MPaであり、特に好ましくは60Paである。70MPa以下では現実的な製造が容易となったり、縦一幅バランスが良化しやすい。
F5は延伸倍率やリラックス率を調節したり、製膜時の温度を調整することで範囲内とすることが出来る。
【0049】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、下記特性、構造を有するとより良い。
(120℃熱収縮率)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの120℃での長手方向の熱収縮率の上限は好ましくは2.0%であり、より好ましくは1.5%であり、さらに好ましくは1.2%であり、特に好ましくは1.0%である。2.0%以下であると、印刷インキを転写する際の印刷ピッチずれが生じにくくなる。120℃での幅方向の熱収縮率の上限は10.0%以下であり、好ましくは5.0%であり、より好ましくは3.5%であり、特に好ましくは2.5%である。10.0%以下であると、ヒートシール時のシワが生じにくい。
120℃での熱収縮率は延伸倍率、延伸温度、熱固定温度の調整により範囲内とすることが出来る。
【0050】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの120℃での幅方向の熱収縮率(%)及び23℃での幅方向の引張弾性率(GPa)が下記式を満足すのが好ましい。
下記式を満足することにより、剛性がより高く、かつ高温での熱収縮率がより小さいため、製装袋とするときに印刷ピッチずれが生じにくい。
23℃での幅方向の引張弾性率(GPa)≧120℃での幅方向の熱収縮率(%)×0.1+7.0
また、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの120℃での幅方向の熱収縮率(%)及び23℃での幅方向の引張弾性率(GPa)が下記式を満足すのがより好ましい。
23℃での幅方向の引張弾性率(GPa)≧120℃での幅方向の熱収縮率(%)×0.1+8.0
さらに、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの120℃での幅方向の熱収縮率(%)及び23℃での幅方向の引張弾性率(GPa)が下記式を満足すのがさらに好ましい。
23℃での幅方向の引張弾性率(GPa)≧120℃での幅方向の熱収縮率(%)×0.1+9.0
【0051】
(23℃引張弾性率)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での長手方向の引張弾性率の下限は好ましくは2.0GPaであり、より好ましくは2.1GPaであり、さらに好ましくは2.2GPaであり、よりさらに好ましくは2.3GPaであり、特に好ましくは2.4GPaであり、最も好ましくは2.6GPaである。2.0GPa以上では、剛性が高いため、包装袋としたときの袋形状を保持しやすく、印刷など加工時にフィルムの変形が起こりにくい。長手方向の引張弾性率の上限は、好ましくは4.0GPaであり、より好ましくは3.8GPaであり、さらに好ましくは3.7GPaであり、特に好ましくは3.6GPaであり、最も好ましくは3.5GPaである。4.0GPa以下では現実的な製造が容易であったり、長手方向-幅方向の特性のバランスが良化しやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での幅方向の引張弾性率の下限は好ましくは6.0GPaであり、より好ましくは6.5GPaであり、より好ましくは6.7GPaであり、さらに好ましくは7.0GPaであり、特に好ましくは8.0GPaであり、最も好ましくは8.5GPaである。6.0GPa以上では、剛性が高いため、包装袋としたときの袋形状を保持しやすく、印刷など加工時にフィルムの変形が起こりにくい。幅方向の引張弾性率の上限は、好ましくは15GPaであり、より好ましくは13GPaであり、さらに好ましくは12GPaである。15GPa以下だと現実的な製造が容易であったり、長手方向-幅方向の特性のバランスが良化しやすい。
引張弾性率は延伸倍率やリラックス率を調節したり、製膜時の温度を調整することで範囲内とすることが出来る。
【0052】
(23℃引張破断強度)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での長手方向の引張破断強度の下限は、好ましくは90MPaであり、より好ましくは100MPaであり、さらに好ましくは110MPaであり、特に好ましく115MPaである。90MPa以上だと印刷インキを転写する際の印刷ピッチずれが生じにくくなり、包装袋の耐久性にも優れやすい。長手方向の引張破断強度の上限は、現実的な値として好ましくは200MPaであり、より好ましくは180MPaであり、さらに好ましくは160MPaである。200MPa以下だとフィルムの破断や包装袋の破袋が少なくなりやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での幅方向の引張破断強度の下限は、好ましくは400MPaであり、より好ましくは420MPaであり、さらに好ましくは440MPaであり、特に好ましくは450MPaである。400MPa以上だと印刷インキを転写する際の印刷ピッチずれが生じにくくなり、包装袋の耐久性にも優れやすい。幅方向の引張破断強度の上限は、現実的な値として好ましくは650MPaであり、より好ましくは600MPaであり、さらに好ましくは550MPaである。650MPa以下だとフィルムの破断や包装袋の破袋が少なくなりやすい。
引張破断強度は延伸倍率、延伸温度、熱固定温度の調整により範囲内とすることが出来る。
【0053】
(23℃引張破断伸度)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での長手方向の引張破断伸度の下限は、好ましくは180%であり、より好ましくは190%であり、より好ましくは200%であり、特に好ましくは210%以上である。180%以上であるとフィルムの破断や包装袋の破袋が少なくなりやすい。23℃での長長手方向の引張破断伸度の上限は、現実的な値として好ましくは300%であり、より好ましくは280%である。
【0054】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での幅方向の引張破断伸度の下限は、好ましくは15%であり、より好ましくは20%であり、より好ましくは30%であり、15%以上だと、フィルムの破断や包装袋の破袋が少なくなりやすい。23℃での幅方向の引張破断伸度の上限は、好ましくは60%であり、より好ましくは55%であり、さらに好ましくは50%である。60%以下だと印刷インキを転写する際の印刷ピッチずれが生じにくくなり、包装袋の耐久性にも優れやすい。
引張破断伸度は延伸倍率、延伸温度、熱固定温度の調整により範囲内とすることが出来る。
【0055】
(屈折率)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの長手方向の屈折率(Nx)の下限は、好ましくは1.4950であり、より好ましくは1.4970であり、さらに好ましくは1.4980であり、特に好ましくは1.4990であり、最も好ましくは1.5000である。1.4950以上だとフィルムの剛性を大きくしやすい。長手方向の屈折率(Nx)の上限は、好ましくは1.5100であり、より好ましくは15070であり、さらに好ましくは1.5050である。1.5100以下だとフィルムの長手方向-幅方向の特性のバランスに優れやすい。
【0056】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの幅方向の屈折率(Ny)の下限は好ましくは1.5250であり、より好ましくは1.5253であり、さらに好ましくは1.5255であり、特に好ましくは1.5260であり、最も好ましくは1.5265である。1.5250以上だとフィルムの剛性を大きくしやすい。幅方向の屈折率(Ny)の上限は、好ましくは1.5280であり、より好ましくは1.5275であり、さらに好ましくは1.5270である。1.5280以下だとフィルムの長手方向-幅方向の特性のバランスに優れやすい。
【0057】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの厚み方向の屈折率(Nz)の下限は、好ましくは1.4960であり、より好ましくは14965であり、さらに好ましくは1.4970であり、特に好ましくは1.4980であり、最も好ましくは1.4990である。1.4960以上だとフィルムの剛性を大きくしやすい。厚み方向の屈折率(Nz)の上限は、好ましくは1.5020であり、より好ましくは1.5015であり、さらに好ましくは1.5010である。1.5020以下だとフィルムの耐熱性を高めやすい。
屈折率は延伸倍率、延伸温度、熱固定温度の調整により範囲内とすることが出来る。
【0058】
(△Ny)
本発明の本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの幅方向の配向の程度である△Nyの下限は好ましくは0.0240であり、より好ましくは0.0245であり、さらに好ましくは0.0247であり、特に好ましくは0.0250であり、最も好ましくは0.0255であり、特に最も好ましくは0.0260である。0.0240以上だとフィルムの剛性が高くなりやすい。△Nyの上限は、現実的な値として好ましくは0.0280であり、より好ましくは0.0277であり、さらに好ましくは0.0273であり、特に好ましくは0.0270である。0.0280以下だと厚みムラも良好となりやすい。△Nyはフィルムの延伸倍率、延伸温度、熱固定温度の調整により範囲内とすることが出来る。
△Nyはフィルムの長手方向、幅方向、厚み方向に沿った屈折率をそれぞれNx、Ny、Nzとし、下記式で計算されるが、フィルムの長手方向、幅方向、厚み方向全体の配向における幅方向の配向の程度を意味する。
△Ny=Ny-[(Nx+Nz)/2]
【0059】
(面配向係数)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの面配向係数(ΔP)の下限は、好ましくは0.0135であり、より好ましくは0.0138であり、さらに好ましくは0.0140である。0.0135以上だとフィルムの面方向のバランスが良好で、厚みムラも良好である。面配向係数(ΔP)の上限は、現実的な値として好ましくは0.0155であり、より好ましくは0.0152であり、さらに好ましくは0.0150である。0.0155以下だと高温での耐熱性に優れやすい。面配向係数(ΔP)は延伸倍率、延伸温度、熱固定温度の調整により範囲内とすることが出来る。
また、面配向係数(ΔP)は、(式)[(Nx+Ny)/2]-Nzを用いて計算した。
【0060】
(平均屈折率)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの平均屈折率の下限は好ましくは好ましくは1.5080であり、より好ましくは1.5081であり、さらに好ましくは1.5082であり、特に好ましくは1.5083であり、最も好ましくは1.5090である。平均屈折率の上限は、現実的な値として好ましくは1.5150であり、より好ましくは1.5140であり、さらに好ましくは1.5135であり、特に好ましくは1.5130である。1.5080以上だとフィルムのヒートシール時のシワが生じにくい。平均屈折率はフィルムの延伸倍率、延伸温度、熱固定温度の調整により範囲内とすることが出来る。
平均屈折率はフィルムの長手方向、幅方向、厚み方向に沿った屈折率をそれぞれNx、Ny、Nzとし、下記式で計算される。
平均屈折率=(Nx+Ny+Nz)/3
【0061】
(ヘイズ)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムのヘイズの上限は好ましくは5.0%であり、より好ましくは4.5%であり、さらに好ましくは4.0%であり、特に好ましくは3.5%であり、最も好ましくは3.0%である。5.0%以下であると透明が要求される用途で使いやすい。ヘイズの下限は、現実的値としては好ましくは0.1%であり、より好ましくは0.2%であり、さらに好ましくは0.3%であり、特に好ましくは0.4%である。0.1%以上であると製造しやすい。ヘイズは、冷却ロール(CR)温度、幅方向延伸温度、テンター幅方向延伸前予熱温度、幅方向延伸温度、又は熱固定温度、若しくはポリプロピレン樹脂の分子量が10万以下の成分の量を調節することで範囲内とすることが出来るが、ブロッキング防止剤の添加や、シール層付与により、大きくなることがある。
【0062】
(配向結晶に由来する回折ピークの半値幅)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの、フィルム面に垂直に入射した広角X線測定で得られるポリプロピレンα型結晶の(110)面の散乱ピークの方位角依存性において、フィルムの幅方向の配向結晶に由来する回折ピークの半値幅(Wh)の上限は好ましくは21.0°であり、より好ましくは20.5°以下であり、より好ましくは20.0°以下であり、特に好ましくは19.5°以下であり、最も好ましくは19.0°以下である。半値幅(Wh)が21.0°以下であるとフィルムの剛性を高くしやすい。また、水蒸気透過度を低くしやすい。Whの下限は、好ましくは15°であり、より好ましくは16°であり、さらに好ましくは17°である。
【0063】
(X線配向度)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムのWhから下記式で算出されるX線配向度の下限は、好ましくは0.883であり、より好ましくは0.886であり、さらに好ましくは0.889である。0.892以上とすることで剛性を高めやすい。
X線配向度=(180-Wh)/180
X線配向度の上限は、好ましくは0.917であり、より好ましくは0.911であり、さらに好ましくは0.906である。0.917以下とすることで製膜が安定しやすい。
【0064】
(水蒸気透過率)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの水蒸気透過率は、20μm厚みに換算して5.0g/m・d以下にすることが好ましく、4.6g/m・d以下にすることがより好ましく、4.3g/m・d以下にすることがさらに好ましい。5.0g/m・d以下であると、薄膜化を行ったときでも水蒸気バリア性が十分に得られる。
【0065】
(フィルムの実用特性)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの有する実用特性について説明する。
(剛性及び水蒸気バリア性)
食品や飲料等の包装に用いられる包装材料は、様々な流通、冷蔵等の保存や加熱殺菌などの処理等から内容物を保護するため、剛性や耐熱性といった機能以外にも、内容物の品質保持及び内容量保持という目的から高いバリア性が特に要求されており、薄膜化してもこれらの特性に優れることが求められる。
【0066】
(ヒートシール時のシワ)
食品を包装する袋を形成するには、製袋済みの袋に内容物を充填し、加熱してフィルムを溶融して融着して密封する。また、食品を充填しながら製袋する際にも同様に行う場合が多い。通常は基材フィルムにポリエチレンやポリプロピレンなどからなるシーラントフィルムを積層し、このシーラントフィルム面同士を融着させる。加熱方法は基材フィルム側から加熱板で圧力をかけフィルムを押さえてシールするが、シール幅は10mm程度とする場合が多い。このとき基材フィルムも加熱されるため、その際の収縮がシワを発生させる。袋の耐久性においてシワは少ない方が良く、購買意欲を高めるためにもシワは少ない方が良い。シール温度は120℃程度である場合もあるが、製袋加工速度を高めるためにはより高温でのシール温度が求められ、その場合でも収縮が小さいことが好ましい。袋の開ロ部にチャックを融着する場合には、さらに高温でのシールが求められる。
【0067】
(印刷ピッチずれ)
包装フィルムの構成としては、基本的な構成として、印刷が施された基材フィルムとシーラントフィルムの積層フィルムからなる場合が多い。袋の製造には、製袋機が使用され、三方袋、スタンディング袋、ガゼット袋などがあり、さまざまな製袋機が使用されている。印刷ピッチズレは、印刷工程時にフィルムにテンションや熱を掛けるため、フィルムの基材が伸び縮みするため発生すると考えられる。印刷ピッチズレによる不良品をなくすことは資源の有効活用の点でも重要であり、購買意欲を高めるためにも重要である。
【0068】
(フィルム加工)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの印刷は用途に応じて、凸版印刷・平版印刷・凹版印刷、孔版印刷、転写印刷方式により行うことができる。
また、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリエステルからなる未延伸シート、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルをシーラントフィルムとして貼り合せて、ヒートシール性を付与したラミネート体としても使用することができる。さらにガスバリア性や耐熱性を高めたいときはアルミ箔やポリ塩化ビニリデン、ナイロン、エチレンービニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールからなる未延伸シート、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムを二軸配向ポリプロピレンフィルムとシーラントフィルムの間に中間層として設けることができる。シーラントフィルムの貼り合せには、ドライラミネーション法又はホットメルトラミネーション法により塗布した接着剤を使用することができる。
ガスバリア性を高めるには、二軸配向ポリプロピレンフィルムや中間層フィルム、あるいはシーラントフィルムにアルミや無機酸化物を蒸着加工することもできる。蒸着方法に真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング法を採用できるが、特にシリカ、アルルミナ、又はこれらの混合物を真空蒸着するのが好ましい。
【0069】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムには、例えば、多価アルコールの脂肪酸エステル類、高級脂肪酸のアミン類、高級脂肪酸のアマイド類、高級脂肪酸のアミンやアマイドのエチレンオキサイド付加物などの防曇剤のフィルム中での存在量を0.2~5質量%の範囲することで、野菜、果実、草花など高い鮮度が要求される植物類からなる生鮮品を包装するのに適したものとすることができる。
【0070】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、滑り性や帯電防止性などの品質向上のための各種添加剤、例えば、生産性の向上のためにワックス、金属石鹸などの潤滑剤、可塑剤、加工助剤や熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などを配合することも可能である。
【0071】
(産業上の利用可能性)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは上記の様な従来にはない優れた特性を有するため、包装袋に好ましく使用することができ、またフィルムの厚みを従来よりも薄くすることが可能である。
【0072】
さらには、コンデンサーやモーターなどの絶縁フィルム、太陽電池のバックシート、無機酸化物のバリアフィルム、ITOなどの透明導電フィルムのベースフィルムなど高温で使用される用途や、セパレートフィルムなど剛性が必要とされる用途にも好適である。ま、従来用いられにくかったコート剤やインキ、ラミネート接着剤などを用い、高温でのコートや印刷加工が可能となり、生産の効率化が期待できる。
【実施例
【0073】
以下、実施例により本発明を群細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
(1)メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)は、JISK7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgfで測定した。
【0074】
(2)メソペンダット分率
ポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率([mmmm]%)の測定は、13C-NMRを用いて行った。メソペンタッド分率は、Zambelliら、Macromolecules、第6巻、925頁(1973)に記載の方法に従って算出した。13C-NMR測定は、BRUKER社製AVANCE500を用い、試料200mgをo-ジクロロベンゼンと重ベンゼンの8:2の混合液に135℃で溶解し、110℃で行った。
【0075】
(3)ポリプロピレン樹脂の数平均分子量、重量平均分子量、分子量10万以下の成分量、および分子量分布
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、単分散ポリスチレン基準としPP換算分子量として求めた。ベースラインが明確でないときは、標準物質の溶出ピークに最も近い高分子量側の溶出ピークの高分子量側のすそ野の最も低い位置までの範囲でベースラインを設定することとした。
GPC測定条件は次のとおりである。
装置:HLC-8321PC/HT(東ソー株式会社製)
検出器:RI
溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン+ジブチルヒドロキシトルエン(0.05%)カラム:TSKgelguardcolumnHHR(30)HT(7.5mmI.D.×7.5cm)×1本+TSKgelGMHHR-H(20)HT(7.8mmI.D.×30cm)×3本
流量:1.0mL/min
注入量:0.3mL
測定温度:140℃
数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)はそれぞれ、分子量較正曲線を介して得られたGPC曲線の各溶出位置の分子量(M)の分子数(N)により次式で定義される。
数平均分子量:Mn=Σ(N・M)/ΣN
質量平均分子量:Mw=Σ(N・M )/Σ(N・M
ここで、分子量分布は、Mw/Mnで得ることができる。
また、GPCで得られた分子量分布の積分曲線から、分子量10万以下の成分の割合を求めた。
【0076】
(4)結晶化温度(Tc)、融解温度(Tm)
ティー・エイ・インスツルメント社製Q1000示差走査熱量計を用いて、窒素雰囲気下で熱測定を行った。ポリプロピレン樹脂のペレットから約5mgを切り出して測定用のアルミパンに封入した。230℃まで昇温し5分間保持した後、-10℃/分の速度で30℃まで冷却し、発熱ピーク温度を結晶化温度(Tc)とした。また、結晶化熱量(△Hc)は、発熱ピークの面積をピークの開始からピーク終了まで、スムーズにつながるようにベースラインを設定して求めた。そのまま、30℃で5分間保持し、10℃/分で230℃まで昇温し、主たる吸熱ピーク温度を融解温度(Tm)とした。
【0077】
(5)フィルム厚み
セイコー・イーエム社製ミリトロン1202Dを用いて、フィルムの厚さを計測した。
【0078】
(6)ヘイズ
日本電色工業株式会社製NDH5000を用い、23℃にて、JISK7105に従って測定した。
【0079】
(7)引張試験
JISK7127に準拠してフィルムの長手方向および幅方向の引張強度を23℃にて測定した。サンプルは15mm×200mmのサイズにフィルムより切り出し、チャック幅は100mmで、引張試験機(インストロンジャパンカンパニイリミテッド社製デュアルコラム卓上型試験機インストロン5965)にセットした。引張速度200mm/分にて引張試験を行った。得られた歪み-応力カーブより、伸長初期の直線部分の傾きから引張弾性率を、また、5%伸長時の応力をF5とした。
引張破断強度、引張破断伸度は、それぞれ、サンプルが破断した時点での強度と伸度とした。
【0080】
(8)熱収縮率
JISZ1712に準拠して以下の方法で測定した。フィルムを20mm巾で200mmの長さでフィルムの長手方向、幅方向にそれぞれカットし、120℃または150℃の熱風オーブン中に吊るして5分間加熱した。加熱後の長さを測定し、元の長さに対する収縮した長さの割合で熱収縮率を求めた。
【0081】
(9)屈折率、△Ny、面配向係数、平均屈折率
(株)アタゴ製アッベ屈折計を用いて波長589.3nm、温度23℃で測定した。フィルムの長手方向、幅方向に沿った屈折率をそれぞれNx、Nyとし、厚み方向の屈折率をNzとした。幅方向の配向の程度である△Nyは、Nx、Ny、Nzを用いて、(式)Ny-[(Nx+Nz)/2]を用いて求めた。また、面配向係数(ΔP)は、(式)ΔP=[(Nx+Ny)/2]-Nzを用いて計算した。また、平均屈折率は(式)平均屈折率=(Nx+Ny+Nz)/3を用いて計算した。
【0082】
(10)X線半値幅、配向度
X線回折装置((株)リガク製SmartLab,αβγアタッチメント付属)を用いて透過法にて測定した。波長1.5418ÅのX線を用いて、X線出力は45kV、200mAの出力で用いた。検出器にはハイブリッド型多次元ピクセル検出器 Hypix-3000を0次元モードで使用した。平行ビーム法で入射側のスリットとして、ソーラースリット2.5°、長手制限スリット10mm、入射スリット幅1mmを使用した。また、受光側のスリットとして、パラレルスリットアナライザー0.228°を使用した。
カメラ長300mm、検出器の積分幅は2mmで行った。
400μmの厚みになるようにフィルムを重ね合わせて試料を調製した。ポリプロピレン樹脂のα型結晶の(110)面の回折ピーク位置(回折角度2θ=14.1°)に検出器を置き、サンプルをフィルムの厚み方向を軸として360°回転させ、(110)面の回折強度の方位角依存性を得た。ステップ間隔は0.5°、測定スピードは60°/minで測定した。この方位角依存性より、フィルムの幅方向の配向結晶に由来する回折ピークの半値幅Whを求めた。
また、Whを用いて、下記式よりX線配向度を算出した。
X線配向度=(180-Wh)/180
【0083】
(11)水蒸気透過率
265 水蒸気透過度はJIS K7129 B法に準じて測定した。
水蒸気透過度測定装置(PERMATRAN-W3/33 MOCON社製)を用いて、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下において、水蒸気透過度を測定した。水蒸気透過度はフィルム厚みに反比例するため、測定するサンプルそれぞれの厚みを測定し、20μmでの値に換算した。
【0084】
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂として、MFR=7.5g/10分、[mmmm]=98.9%、Tc=116.2℃、Tm=162.5℃であるプロピレン単独重合体PP-1(住友化学(株)製、住友ノーブレンFLX80E4)を80重量部と、MFR=11g/10分、[mmmm]=98.8%、Tc=116.5℃、Tm=161.5℃であるプロピレン単独重合体PP-2(住友化学(株)製、EL80F5)を20重量部とをブレンドして用いた。
250℃でTダイよりシート状に押出し、20℃の冷却ロールに接触させ、そのまま20℃の水槽に投入した。その後、142℃で二対のロールで長手方向に4.5倍に延伸し、ついで両端をクリップで挟み、熱風オーブン中に導いて、170℃で予熱後、幅方向に1段目として162℃で10倍延伸を行った。幅方向延伸直後に、クリップに把持したまま120℃で冷却し、その後、175℃で幅方向に1.2倍再延伸を行った。最後に室温にて冷却した。こうして得られたフィルムの厚みは18.6μmであった。
表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性に非常に優れるものであり、高温での熱収縮率が低いフィルムが得られた。また、水蒸気透過度に優れるフィルムであった。
【0085】
(実施例2)
165℃で幅方向に1.2倍再延伸した以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの厚みは18.4μmであった。表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性に非常に優れるものであり、高温での熱収縮率が低いフィルムが得られた。また、水蒸気透過度に優れるフィルムであった。
【0086】
(実施例3)
長手方向に147℃で延伸し、幅方向に1段目として165℃で10倍延伸を行い、幅方向延伸直後に、クリップに把持したまま120℃で冷却し、その後、177℃で幅方向に1.2倍再延伸を行った以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの厚みは18.9μmであった。
表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性が高く、高温での熱収縮率が低いフィルムが得られた。また、水蒸気透過度に優れるフィルムであった。
【0087】
(実施例4)
177℃で幅方向に1.1倍再延伸した以外は実施例3と同様に行った。得られたフィルムの厚みは20.6μmであった。表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。
表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性が高く、高温での熱収縮率も低いものであった。また、水蒸気透過度に優れるフィルムであった。
【0088】
(比較例1)
幅方向に1段目として162℃で12倍延伸を行い、幅方向延伸直後に、クリップに把持したまま100℃で冷却し、その後、170℃で幅一定のまま熱固定を行った以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの厚みは20.8μmであった。
表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、水蒸気透過度に優れ、剛性が高いものの、熱収縮率が劣るものであった。
【0089】
(比較例2)
幅方向に1段目として162℃で12倍延伸を行い、幅方向延伸直後に、クリップに把持したまま冷却を行わず、172℃で幅一定のまま熱固定を行った以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの厚みは23.1μmであった。
表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性が劣るものであった。また、水蒸気透過度に劣るフィルムであった。
【0090】
(比較例3)
幅方向に1段目として168℃で12倍延伸を行い、幅方向延伸直後に、クリップに把持したまま100℃で冷却し、その後、170℃で幅一定のまま熱固定を行った以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの厚みは18.7μmであった。
表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、高温での熱収縮率が高く、剛性も劣るものであった。また、水蒸気透過度に劣るフィルムであった。
【0091】
(比較例4)
ポリプロピレン樹脂として、MFR=3g/10分、[mmmm]=94.8%、Tc=117.2℃、Tm=160.6℃であるPP-3(日本ポリプロ(株)製、FL203D)を用いた。250℃でTダイよりシート状に押出し、20℃の冷却ロールに接触させ、そのまま20℃の水槽に投入した。その後、長手方向に、130℃で4.5倍延伸し、テンターでの幅方向延伸において、予熱温度を168℃とし、延伸1段目として155℃で8.2倍延伸を行った。幅方向延伸直後に、クリップに把持したまま120℃で冷却し、その後、170℃で幅方向に1.2倍再延伸を行った。最後に室温にて冷却した。得られたフィルムの厚みは18.8μmであった。
表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、高温での熱収縮率が高く、剛性も劣るものであった。また、水蒸気透過度に劣るフィルムであった。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】