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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
A01B69/00 303J
A01B69/00 302
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023019201
(22)【出願日】2023-02-10
(62)【分割の表示】P 2019158307の分割
【原出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2023059912
(43)【公開日】2023-04-27
【審査請求日】2023-03-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 裕真
(72)【発明者】
【氏名】川上 修平
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-113937(JP,A)
【文献】特開2019-097454(JP,A)
【文献】特開2019-103422(JP,A)
【文献】特開2016-095658(JP,A)
【文献】特開2018-068181(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0357267(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車両と、
前記走行車両の後部に取り付けられる作業機と、
前記作業機に設けられ、当該作業機の形状に関する寸法データを記憶する作業機制御部と、
前記走行車両に取り付けられ、後方の障害物を検知する後方障害物検知手段と、
前記走行車両に取り付けられ、前記後方障害物検知手段の検知範囲のパターンを設定する車両制御部とを備え、
前記車両制御部が、前記作業機制御部から、前記走行車両の後部に取り付けられた前記作業機の形状に関する寸法データを受信し、前記作業機制御部から受信した前記作業機の形状に関する寸法データに基づいて、前記後方障害物検知手段の検知範囲のパターンを補正して設定するように構成され
前記寸法データは、第1寸法データと第2寸法データを含み、
前記第1寸法データは、前記作業機における中央部分よりも高い左右部分同士の間隙の幅の大きさであり、
前記第2寸法データは、前記作業車両の前後方向における前記後方障害物検知手段から前記作業機の後端部までの距離であることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記作業機制御部は、当該作業機の種類を特定する固有IDを有し、前記車両制御部が、左右部分の高さが中央部分よりも高い形状である前記作業機の前記固有IDと、検知可能範囲の左右両端部分が制限され、左右方向における中央部分を前記後方障害物検知手段の検知範囲とするパターンを紐付けるデータを記憶していることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記作業機制御部は、当該作業機の形状を表す形状データを有し、前記車両制御部が、左右部分の高さが中央部分よりも高い形状である前記作業機の前記形状データと、検知可能範囲の左右両端部分が制限され、左右方向における中央部分を前記後方障害物検知手段の検知範囲とするパターンを紐付けるデータを記憶していることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星測位システムを利用して機体の位置を測位しながら、設定作業エリア内を自律走行する農業用作業車両で、障害物検知手段を備えた農業用作業車両が知られている。例えば、特許文献1には、機体の位置算出手段と、障害物を検知する障害物検知手段と、障害物検知手段の感度を調整する感度調整手段を備え、設定作業エリア内では障害物検知手段の感度を高く調整し、設定作業エリア外では感度を低く調整することにより、設定作業エリア外に存在する障害物を検知手段が検知して走行が停止してしまう事態を防ぐ自立走行作業車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-191592
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された作業車両においては、作業車両の後部に取り付けられた作業機の形状によっては、作業車両の後方を監視する後方障害物検知手段が作業機を障害物と判断(誤検知)し、作業車両が走行を停止したり、警報を発したりすることがあり、作業効率が低下する場合があった。
【0005】
したがって、本発明は、後方障害物検知手段による作業機の誤検知を防止することにより、効率よく作業できる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のかかる目的は、走行車両と、前記走行車両の後部に取り付けられる作業機と、前記作業機に設けられ、当該作業機の形状に関する寸法データを記憶する作業機制御部と、前記走行車両に取り付けられ、後方の障害物を検知する後方障害物検知手段と、前記走行車両に取り付けられ、前記後方障害物検知手段の検知範囲のパターンを設定する車両制御部とを備え、前記車両制御部が、前記作業機制御部から、前記走行車両の後部に取り付けられた前記作業機の形状に関する寸法データを受信し、前記作業機制御部から受信した前記作業機の形状に関する寸法データに基づいて、前記後方障害物検知手段の検知範囲のパターンを補正して設定するように構成され、前記寸法データは、第1寸法データと第2寸法データを含み、前記第1寸法データは、前記作業機における中央部分よりも高い左右部分同士の間隙の幅の大きさであり、前記第2寸法データは、前記作業車両の前後方向における前記後方障害物検知手段から前記作業機の後端部までの距離であることを特徴とする作業車両によって達成される。
【0007】
本発明によれば、走行車両の後部に取り付けられた作業機に設けられた作業機制御部から受信した作業機の形状に関する作業機における中央部分よりも高い左右部分同士の間隙の幅の大きさである第1寸法データと作業車両の前後方向における前記後方障害物検知手段から前記作業機の後端部までの距離である第2寸法データに基づいて、車両制御部により、後方障害物検知手段の検知範囲のパターンが補正して設定されるから、走行車両の後部に取り付けられた中央部分よりも高い左右部分を有する作業機の形状に合致するように、後方障害物検知手段の検知範囲のパターンが補正して設定され、したがって、後方障害物検知手段によって、作業機の左右部分が誤って検知され、走行車両が停止したり、警報を発することを防止し、認識すべき障害物のみを認識して、効率よく作業することが可能になる。
【0008】
本発明の好ましい実施態様においては、前記作業機制御部は、当該作業機の種類を特定する固有IDを有し、前記車両制御部が、左右部分の高さが中央部分よりも高い形状である前記作業機の前記固有IDと、検知可能範囲の左右両端部分が制限され、左右方向における中央部分を前記後方障害物検知手段の検知範囲とするパターンを紐付けるデータを記憶している。
【0009】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、作業機制御部から受信した左右部分の高さが中央部分よりも高い形状である作業機の固有IDに基づいて、車両制御部により、検知可能範囲の左右両端部分が制限され、左右方向における中央部分を後方障害物検知手段の検知範囲とするパターンが設定されるから、後方障害物検知手段によって、作業機の左右部分が誤って検知され、走行車両が走行を停止したり、警報を発することを防止でき、効率よく作業することが可能になる。
【0010】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記作業機制御部は、当該作業機の形状を表す形状データを有し、前記車両制御部が、左右部分の高さが中央部分よりも高い形状である前記作業機の前記形状データと、検知可能範囲の左右両端部分が制限され、左右方向における中央部分を前記後方障害物検知手段の検知範囲とするパターンを紐付けるデータを記憶している。
【0011】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、作業機制御部から受信した左右部分の高さが中央部分よりも高い形状である作業機の形状データに基づいて、車両制御部により、検知可能範囲の左右両端部分が制限され、左右方向における中央部分を後方障害物検知手段の検知範囲とするパターンが設定されるから、後方障害物検知手段によって、作業機の左右部分が誤って検知され、走行車両が走行を停止したり、警報を発することを防止でき、効率よく作業することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、後方障害物検知手段による作業機の誤検知を防止することにより、効率よく作業できる作業車両を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる作業車両の略側面図である。
図2図2は、図1に示された作業車両の略平面図である。
図3図3は、図1に示された作業車両の制御系、検出系、通信系、表示系のブロックダイアグラムである。
図4図4は、走行車両の後部に、作業機として、図1および図2に示されたロータリー耕耘機が取り付けられた場合における後方障害物センサの検知範囲を示す略平面模式図である。
図5図5(a)は、作業機として、折りたたみ草刈機が取り付けられた場合の後方障害物センサの検知範囲のパターンを示す略平面模式図であり、図5(b)は、その略背面図である。
図6図6(a)は、作業機として、圃場の土を均平にするレーザーレベラーが取り付けられた場合の後方障害物センサの検知範囲のパターンを示す略平面模式図であり、図6(b)は、その略背面図である。
図7図7(a)は、作業機として、圃場の土を粗起こしするカルチベータが取り付けられた場合の後方障害物センサの検知範囲のパターンを示す略平面模式図であり、図7(b)は、その略側面図である。
図8図8は、図1に示された作業車両の後方障害物センサによる検知範囲を設定する手順を示すフローチャートである。
図9図9は、本発明の別の好ましい実施態様にかかる作業車両の後方障害物センサによる検知範囲を設定する手順を示すフローチャートである。
図10図10は、本発明の更に好ましい実施態様にかかる作業車両の制御系、検出系、表示系のブロックダイアグラムである。
図11図11は、図10に示された更に好ましい実施態様にかかる作業車両の携帯端末に表示される、寸法データの入力画面を示す概略図である。
図12図12は、図10に示された更に好ましい実施態様にかかる作業車両の携帯端末の画面に表示される現在取り付けられている作業機の固有ID、形状タイプおよび寸法データと、後方障害物センサに設定された検知範囲のパターンを示す概略図である。
図13図13は、本発明のさらに他の好ましい実施態様にかかる作業車両の携帯端末に表示される、作業機の固有ID、形状タイプおよび寸法データと、後方障害物センサの検知範囲のパターンのリストを示す概略図である。
図14図14は、図13に示されたさらに他の好ましい実施態様にかかる作業車両の携帯端末に表示される、作業機の形状データおよび寸法データを車両ECUに送信するためのリストを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
【0019】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる作業車両1の略側面図であり、図2は、図1に示された作業車両1の略平面図である。本明細書においては、図1に矢印で示されるように、作業車両1の進行方向となる側を前方(F)とする。
【0020】
作業車両1は自律走行することが可能に構成された走行車両2と走行車両2の後部に取り付けられる作業機40を備えている。
【0021】
本実施態様においては、走行車両2に、種々の作業機40が取り付け可能に構成されており、図1および図2においては、走行車両2の後部に、ロータリー耕耘機である作業機40が取り付けられた状態が示されている。
【0022】
走行車両2の前部のボンネット7に覆われた内部にはエンジン5が設けられており、走行車両2は、エンジン5の回転動力を、複数の変速装置を介して、前輪3及び後輪4に伝達することによって走行できるように構成されている。また、エンジン5の後方には、キャビン6が設けられており、キャビン6の後方の走行車両2には圃場60を耕耘可能な作業機40が取り付けられている。キャビン6の前に設けられたボンネット7の前端部には、前方障害物検知手段として機能する前方障害物センサ10と、車両前方を照らし、ロービームとハイビームとを切り替え可能なヘッドライト9とが設けられており、作業車両1は前方障害物センサ10によって走行中に車両前方の障害物を検知可能に構成されている。
【0023】
図1に示されるように、キャビン6には、人が乗り込んで操作できるように、ステアリングハンドル64と操縦席65が設けられている。キャビンの天井であるキャビンルーフ8の前部にはGPS(Global Positioning System)受信機12が取り付けられている。キャビン6の後部には後方障害物検知手段として機能する後方障害物センサ11が設けられており、後方障害物センサ11は、作業車両1の後方の障害物を検知可能に構成されている。
【0024】
前方障害物センサ10および後方障害物センサ11はそれぞれ、赤外線レーザ光源と赤外線を感知する二次元センサを備えており、二次元センサは、フォトダイオードで構成された複数の受光素子を備えているため、作業車両1の前方または後方に存在する障害物を検出し、その位置を算出可能に構成されている。
【0025】
具体的には、前方障害物センサ10および後方障害物センサ11は、赤外線レーザ光源からパルス状に変調を加えた赤外線レーザ光を作業車両1の前方または後方に向けて照射し、その照射先に存在する障害物によって反射された光を複数の受光素子を有する二次元センサによって感知し、前方障害物センサ10または後方障害物センサ11から赤外線を放出した時間と、障害物によって反射された光を二次元センサが検出した時間に基づいて、いわゆるToF(Time Of Flight)法により、二次元センサの各受光素子と対象物との距離を求めることによって、前方障害物センサ10または後方障害物センサ11に対する障害物の位置を算出するように構成されている。図1においては、後方障害物センサ11からの赤外線レーザ光の軌跡が一点鎖線により示されている。
【0026】
ここに、前方障害物センサ10は、キャビン6の前に設けられたボンネット7の前端部に取り付けられているから、検知すべき障害物の範囲は一定で、作業機40の種類が変わっても、どの範囲に位置する物によって反射された赤外線を感知して障害物として検出すべきかも一定である。
【0027】
これに対し、後方障害物センサ11は、キャビン6の後部に設けられ、その後ろの走行車両2に作業機40が取り付けられるように構成されており、作業機40は種類により、その形状を異にするから、後方障害物センサ11によって照射すべき赤外線の照射範囲と、どの範囲に位置する物によって反射された赤外線を感知して障害物として検出すべきかを一定にすると、ある形状の作業機40が取り付けられた場合には、後方障害物センサ11によって検出されるべき障害物を検出することができず、他の形状の作業機40が取り付けられた場合には、作業機40の一部を誤って障害物として検出することが起こり得る。
【0028】
そこで、本実施態様においては、後方障害物センサ11が、走行車両2に取り付けられている作業機40の種類が異なり、その形状が異なっても、後方の障害物を適切に検知し、誤検知を防止するため、作業機40ごとに障害物を検知すべき検知範囲をあらかじめ定め、上述のように、照射した赤外線が照射した領域に存在する物によって反射されてから、後方障害物センサ11の二次元センサを構成する各受光素子によって検出されるまでの時間を測定して、障害物の位置を算出することによって、あらかじめ定めた検知範囲内にあると判定した物のみを障害物として認識するように構成されている。
【0029】
本実施態様においては、代表的な4種類の作業機40の種類ごとに、後方の障害物を検出するのに適した検知範囲を決定し、走行車両2に設けられた記憶装置(図1および図2には図示せず)に格納し、作業機40の種類に応じて、対応する検知範囲を読み出して、後方障害物センサ11の二次元センサが検出した障害物の検出信号に基づいて、検知すべき障害物を検知するように構成されている。
【0030】
図1に示されるように、走行車両2の後部には、上方に位置するトップリンク45aと下方に位置する左右のロアリンク45bとを備えた3点リンク機構45が設けられており、3点リンク機構45により、走行車両2の後部に作業機40が連結されている。ロアリンク45bには、リフトアーム42を介して作業機昇降シリンダ41が接続されており、作業機昇降シリンダ41を伸縮させることにより、ロアリンク45bを上下させることができるように構成されている。したがって、3点リンク機構45は、作業機昇降シリンダ41を伸縮させることにより、圃場60の土を耕すときは作業機40を下ろして接地させ、単に移動するときには、作業機40を持ち上げて接地しないようにしておくことにより、作業機40が不必要に地面と接触し、作業車両1の走行の妨げになることを防ぐことができる。
【0031】
図1においては、作業機40として、ロータリー耕耘機が用いられ、作業機40は、圃場の土を耕す耕耘爪46と、耕耘爪46の上方を覆うロータリカバー47と、ロータリカバー47の後部に上下動自在に支持されるリヤカバー48を備え、さらに、ロータリカバー47上にポテンショメータ式の耕深センサ49が設けられ、耕深センサ49により、ロータリカバー47に対するリヤカバー48の回動角度を耕深度として検出するように構成されている。
【0032】
作業機40と走行車両2はそれぞれ、通信規格であるISOBUSに対応しており、ISOBUSに対応するコネクタ同士を接続することにより、作業機40内に設けられた作業機制御部としての作業機ECU(ECU:Electronic Control Unit)(図1図2には図示せず)と、走行車両2内に設けられた車両制御部としての車両ECU(図1図2には図示せず)とがネットワークによって相互に通信可能な状態
となっている。
【0033】
図3は、図1に示された作業車両1の制御系、検出系、通信系、表示系のブロックダイアグラムである。
【0034】
図3に示されるように、作業車両1の走行車両2の制御系は、車両ECU2Aと記憶装置2Bを備えている。また、作業車両1の作業機40の制御系は、作業機ECU40Aと記憶装置40Bを備えている。
【0035】
作業機40の記憶装置40Bには、当該作業機40の作業機情報が記憶され、作業者情報には、当該作業機40の形状を特定するために用いられ、その種類を特定する固有IDおよび/または後に詳述する作業機40の形状データが含まれている。
【0036】
一方、走行車両2の記憶装置2Bには、当該作業機40の固有IDと、当該作業機40の形状に基づいて決定された後方障害物センサ11の検知範囲とが紐付けられたデータおよび/または作業機40の形状を表す形状データと、当該作業機40についての後方障害物センサ11の検知範囲とが紐付けられたデータが記憶されている。
【0037】
図3に示されるように、作業車両1の検出系は、GPS受信機12を備え、GPS衛星70からの電波を所定の時間間隔で受信して、作業車両1の位置情報を取得し、車両ECU2Aに出力するように構成されている。作業車両1の検出系は、さらに、前方障害物センサ10および後方障害物センサ11を備え、前方障害物センサ10および後方障害物センサ11の検出信号はそれぞれ車両ECU2Aに入力されている。
【0038】
図3に示されるように、作業車両1の表示系は、操縦席65の近傍に設けられたディスプレイ70を備えており、車両ECU2AはISOBUSに対応する作業機40に関する情報などの種々の情報をディスプレイ70に表示させることができるように構成されている。
【0039】
上述のように、本実施態様においては、後方障害物センサ11は、代表的な4種類の作業機40につき、後方の障害物を検出するのに適した検知範囲が設定可能に構成され、走行車両2の記憶装置2Bに、4種類の作業機40ごとに、後方障害物センサ11の検知範囲が、パターンの形で格納されている。
【0040】
図4ないし図7は、代表的な4種類の作業機40についての後方障害物センサ11の検知範囲のパターンを示している。
【0041】
図4は、走行車両2の後部に、作業機40として、図1および図2に示されたロータリー耕耘機が取り付けられた場合における後方障害物センサ11の検知範囲を示す略平面模式図であり、後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11Aが斜線によって示されている。
【0042】
ここに、図1に示されるように、ロータリー耕耘機40は、一点鎖線で表された後方障害物センサ11からの赤外線レーザ光の軌跡に対して、過度な高さがあったり、過度に後方に延びた部分を有していないから、図4に示されるように、後方障害物センサ11の検知範囲に制限が加えられておらず、平面視において略五角形をなすパターン11Aが後方障害物センサ11の検知範囲として設定されている。
【0043】
図5(a)は、作業機40として、折りたたみ草刈機が取り付けられた場合の後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11Bを示す略平面模式図であり、図5(b)は、その略背面図である。
【0044】
図5(a)および図5(b)においては、走行車両2の後部に、作業機40として、ロータリー耕耘機に比して、左右両端部分の高さが高い折りたたみ草刈機が取り付けられており、使用時に作業車両1の左右方向に延びる刈刃によって草を刈るが、図5(b)に矢印で示されるように、その刈刃を上下方向に延びるように折りたたんだ際に、斜線で示された作業機40の左右両端部分が高くなり、後方障害物センサ11により障害物と誤検知されてしまうため、折りたたみ草刈機が取り付けられた場合には、図5(a)に示されるように、図4の範囲のうちの左右両端部分が制限され、左右方向における中央部分を後方障害物センサ11の検知範囲とするパターン11Bが設定されている。
【0045】
図6(a)は、作業機40として、圃場60の土を均平にするレーザーレベラーが取り付けられた場合の後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11Cを示す略平面模式図であり、図6(b)は、その略背面図である。
【0046】
図6(a)および図6(b)においては、走行車両2の後部に、作業機40として、ロータリー耕耘機に比して、左右方向における中央部分に設けられたポールの高さが高いレーザーレベラーが取り付けられており、中央部分に設けられたポールが後方障害物センサ11により障害物と誤検知されることを防止するために、図6(a)に示されるように、後方障害物センサ11の検知範囲として、図4の範囲のうちの左右方向における中央部分が制限されたパターン11Cが設定されている。
【0047】
図7(a)は、作業機40として、圃場60の土を粗起こしするカルチベータが取り付けられた場合の後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11Dを示す略平面模式図であり、図7(b)は、その略側面図である。
【0048】
図7(a)および図7(b)においては、走行車両2の後部に、作業機40として、ロータリー耕耘機に比して、作業車両1の後方に長く延びた形状を有するカルチベータが取り付けられており、作業車両1の後方に長く延びた部分の後部が後方障害物センサ11により障害物と誤検知されることを防止するために、後方障害物センサ11の検知範囲として、図4の範囲のうちの下部が制限されたパターン11Dが設定されている。
【0049】
本実施態様にかかる作業車両1においては、以下のようにして、走行車両2の後部に取り付けられた作業機40の形状に適切な後方障害物センサ11の検知範囲が設定される。
【0050】
図8は、図1に示された作業車両1の後方障害物センサ11による検知範囲を設定する手順を示すフローチャートである。
【0051】
作業機40が走行車両2の後部に取り付けられると、作業機40と走行車両2がISOBUSに対応するそれぞれのコネクタ同士で接続され、作業機40の作業機ECU40Aと走行車両2の車両ECU2Aとが相互に通信可能な状態になる(ステップS1)。
【0052】
車両ECU2Aとネットワーク接続されると、作業機ECU40Aはまず、作業機40の記憶装置40Bから作業機40に関する情報である作業機情報を取得する(ステップS2)。
【0053】
次いで、作業機ECU40Aは、取得した作業機40に関する作業機情報の中に含まれている作業機40の種類を示す固有IDを車両ECU2Aに送信する(ステップS3)。固有IDは、それぞれの種類の作業機40に付された固有のコードである。
【0054】
固有IDを受信すると、車両ECU2Aは、記憶装置2Bにアクセスし、受信した固有IDに紐付けられた後方障害物センサ11の検知範囲のデータが格納されているか否かを判定する(ステップS4)。
【0055】
作業機ECU40Aから受信した作業機40の固有IDに対応する後方障害物センサ11の検知範囲のデータ(パターン11A~11D)が記憶装置2Bに格納されているときは、車両ECU2Aは、検知範囲のパターン11A~11Dを読み出す(ステップS5)。
【0056】
こうして、固有IDに紐付けられた後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dを読み出すと、車両ECU2Aは、後方障害物センサ11に出力し、後方障害物センサ11の検知範囲をそのパターン11A~11Dに設定する(ステップS6)。後方障害物センサ11の検知範囲が、当該作業機40の固有IDに紐付けされたパターン11A~11Dに設定されることにより、後方障害物センサ11は、その検知範囲を含む領域に赤外線レーザ光を照射し、その反射光を二次元センサにより感知した後、照射した光を反射した物の位置を算出し、今回車両ECU2Aによって設定されたパターン11A~11Dの範囲内に存在する物のみを、障害物として検出することが可能になる。
【0057】
これに対して、作業機ECU40Aから受信した固有IDに紐付けられた後方障害物センサ11の検知範囲のデータが記憶装置2Bに格納されていないと判定したときは、車両ECU2Aはその旨のデータを作業機ECU40Aに送信する(ステップS7)。
【0058】
車両ECU2Aに送信した固有IDと紐付けされている後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dが記憶装置2Bに格納されていない旨の情報を車両ECU2Aから受けたときは、作業機ECU40Aは、記憶装置40Bから取得した作業機情報の中に、その作業機40の形状を表す形状データが含まれているか否かを判定する(ステップS8)。ここに、作業機ECU40Aが記憶装置40Bから取得する、作業機40の形状を表す形状データとは、図4ないし図7に示された4種類の作業機40に代表される4つの形状タイプのうちのいずれの形状タイプであるかを表すデータである。具体的には、形状データはその作業機40が、図4に示されるロータリー耕耘機のように赤外線レーザ光の軌跡に対して過度な高さ・後方に延びた部分を有しない形状タイプ、図5に示された折りたたみ草刈機にように左右両端部分の高さが高い形状タイプ、図6に示されたレーザーレベラーのように左右方向における中央部分の高さが高い形状タイプ、図7に示されたカルチベータのように後方に長く延びた形状タイプの計4つの形状タイプのうちのいずれの形状タイプであるかを表すデータであり、形状データによって、後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dが決定される。
【0059】
本実施態様においては、記憶装置40Bに格納された作業機情報には、当該作業機の固有IDおよび/または当該作業機の形状データが格納されているから、作業機ECU40Aは形状データを読み出し、車両ECU2Aに送信する(ステップS9)。
【0060】
上述のように、走行車両2の記憶装置2Bには、作業機40の固有IDと後方障害物センサ11の検知範囲とが紐付けられたデータおよび/または作業機40の形状データと後方障害物センサ11の検知範囲とが紐付けられたデータが記憶されているから、走行車両2の記憶装置2Bに、作業機40の固有IDと後方障害物センサ11の検知範囲とが紐付けられたデータが格納されていないときは、作業機40の形状データと後方障害物センサ11の検知範囲とが紐付けられたデータが記憶されているので、車両ECU2Aは、作業機40の形状データに基づいて、その形状データに紐付けされた後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dを読み出す(ステップS10)。
【0061】
こうして、形状データに紐付けされた後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dを読み出すと、車両ECU2Aは、読み出した検知範囲のパターン11A~11Dを後方障害物センサ11に出力し、後方障害物センサ11の検知範囲をそのパターン11A~11Dに設定する(ステップS11)。
【0062】
その結果、後方障害物センサ11は今回車両ECU2Aによって設定されたパターンの範囲内に存在する物のみを、障害物として検知することが可能になる。
【0063】
本実施態様によれば、ISOBUSに対応する機種である作業機40が走行車両2の後部に取り付けられた際に、作業機ECU40Aは、作業機40の記憶装置40Bから取得した作業機情報の中に含まれる作業機40の固有IDを車両ECU2Aに送信し、車両ECU2Aは、走行車両2の記憶装置2Bに、受信した固有IDに紐付けられた後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dのデータが格納されているか否かを判定し、格納されている場合には、作業機ECU40Aから受信した固有IDに紐付けられた後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dのデータを読み出して後方障害物センサ11に出力し、後方障害物センサ11の検知範囲が、作業機40に適切なパターン11A~11Dに設定されるから、検知範囲の外に位置する作業機40からの赤外線反射光を二次元センサで感知しても、後方障害物センサ11は障害物が存在する旨のデータを車両ECU2Aに出力しない状態となり、後方障害物センサ11によって作業機40が障害物と誤検知されることを防止し、作業車両1が走行を停止したり、警報を発することによって作業効率が低下することを防止できる。
【0064】
また、本実施態様によれば、車両ECU2Aが作業機ECU40Aから受信した固有IDに紐付けられた後方障害物センサ11の検知範囲のデータが記憶装置2Bに格納されていない場合には、作業機ECU40Aは形状データを車両ECU2Aに送信し、車両ECU2Aは、記憶装置2Bに格納されている、その形状データに紐付けされた後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dを読み出し、後方障害物センサ11に出力し、後方障害物センサ11の検知範囲を作業機40に適切なパターン11A~11Dに設定するから、走行車両2の記憶装置2Bに、作業機40の固有IDに対応する検知範囲のパターン11A~11Dのデータが格納されていない場合であっても、後方障害物センサ11によって作業機40が障害物と誤検知されることを防止し、作業車両1が走行を停止したり、警報を発することによって作業効率が低下することを防止できる。
【0065】
さらに、本実施態様によれば、後方障害物センサ11の検知範囲が作業機40に適切な状態に設定され、後方障害物センサ11による作業機40の誤検知を防止できるから、作業機40を後方障害物センサ11が反応しない形状に規制する必要がなく、様々な形状の作業機40を走行車両2の後部に取り付けることができ、作業車両1の使用用途を増やすことができる。
【0066】
図9は、本発明の別の好ましい実施態様にかかる作業車両1の後方障害物センサ11による検知範囲を設定する手順を示すフローチャートである。
【0067】
本実施態様においても、前記実施態様と同様に、作業機40の記憶装置40Bには、作業機40の固有IDおよび/または作業機40の形状データが格納され、走行車両2の記憶装置2Bには、作業機40の固有IDに紐付けられた後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dおよび/または作業機40の形状データに紐付けられた後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dが格納されている。
【0068】
図9に示されるように、前記実施態様の場合と同様に、作業機40が走行車両2の後部に取り付けられた際、まず、ISOBUSに対応するコネクタ同士を接続することにより、車両ECU2Aと作業機ECU40Aが相互に通信可能な状態となる(ステップSS1)。
【0069】
次いで、作業機ECU40Aは、記憶装置40Bから作業機40の作業機情報を取得し(ステップSS2)、作業機情報に含まれる固有IDを車両ECU2Aに送信する(ステップSS3)。
【0070】
車両ECU2Aは、受信した固有IDに紐づけられた後方障害物センサ11の検知範囲のパターンデータ11A~11Dが記憶装置2Bに格納されているか否かを判定し(ステップSS4)、格納されている場合には、そのパターンのデータ11A~11Dを読み出し(ステップSS5)、後方障害物センサ11に出力し、検知範囲を設定する(ステップSS6)。
【0071】
一方、受信した固有IDと紐付けられた検知範囲のパターンのデータ11A~11Dが記憶装置2Bに格納されていない場合には、車両ECU2Aはその旨のデータを作業機ECU40Aに送信し(ステップSS7)、作業機ECU40Aは、作業機情報の中に、作業機40の形状データが含まれているか否かを判断する(ステップSS8)。
【0072】
本実施態様においては、作業機40の記憶装置40Bには、作業機40の固有IDおよび/または作業機40の形状データが格納されているから、作業機ECU40Aは記憶装置40Bから当該作業機40の形状データを読み取って、車両ECU2Aに送信する(ステップSS9)。
【0073】
本実施態様においては、走行車両2の記憶装置2Bには、作業機40の固有IDに紐付けられた後方障害物センサ11の検知範囲のパターンのデータ11A~11Dおよび/または作業機40の形状データに紐付けられた後方障害物センサ11の検知範囲のパターンのデータ11A~11Dが格納されているから、車両ECU2Aは、受信した作業機40の形状データに基づき、記憶装置2Bにアクセスして、当該作業機40の形状データに紐付けられた後方障害物センサ11の検知範囲のパターンのデータ11A~11Dを読み出し(ステップSS10)、後方障害物センサ11に出力することにより、検知範囲をそのパターン11A~11Dに設定する(ステップSS11)。
【0074】
本実施態様にかかる作業車両1においては、作業機情報に含まれる固有IDまたは形状データに基づいて、後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dを設定した後、作業機ECU40Aは、記憶装置40Bから取得した作業機情報に、作業機40の寸法データが含まれているか否かを判定する(ステップSS12)。
【0075】
ここに、寸法データとは、作業機40の寸法にかかるデータである。
【0076】
すなわち、記憶装置2Bに格納されている代表的な4種類の作業機40の後方の障害物を検出するのに適した検知範囲のパターンは、図4ないし図7に示されるように、代表的な4種類の作業機40の典型的な形状に基づくものであり、検知範囲の各パターンの寸法はそれぞれ所定の値に設定されている。しかし、例えば左右両端部分の高さが高い形状の作業機40で、図5に示される検知範囲のパターン11Bが適用される場合でも、メーカーや機種によって各部の寸法は同じではないため、選択された検知範囲のパターン11B~11Dをそのまま用いる場合には、作業機40自体を障害物として検出し、警報を発したり、作業車両1を停止させたりすることが全くないと言い得ない。
【0077】
そこで、本実施態様においては、作業機40の記憶装置40Bに格納された作業機情報に寸法データが含まれている場合には、固有IDまたは形状データに基づいて選択された検知範囲のパターンを、その寸法データを用いて補正するように構成されている。
【0078】
具体的には、作業機情報に、作業機40の寸法データが含まれているか否かを判定した結果、寸法データが含まれている場合に、作業機ECU40Aは寸法データを読み出して、車両ECU2Aに送信する(ステップSS13)。
【0079】
寸法データを受信すると、車両ECU2Aは、固有IDまたは形状データに基づいて後方障害物センサ11に出力した検知範囲のパターン11B~11Dのデータを寸法データに基づいて補正した検知範囲のデータを後方障害物センサ11に出力し、その検知範囲を設定する(ステップSS14)。
【0080】
寸法データとしては、たとえば、作業機40が折りたたみ草刈機である場合に、作業機40の後端部における左右の刈刃間の間隙の幅寸法と、作業車両1の前後方向における後方障害物センサ11から作業機40の後端部までの距離の寸法がある。作業機40が折りたたみ草刈機である場合には、後方障害物センサ11の検知範囲のパターンは、図5(a)に示されるように、略二等辺三角形のパターン11Bになるが、固有IDまたは形状データにより設定された後方障害物センサ11の検知範囲パターン11B~11Dを寸法データによって補正する例としては、作業機40の後端部における左右の刈刃間の間隙の幅寸法と、作業車両1の前後方向における後方障害物センサ11から作業機40の後端部までの距離の寸法を用いて、左右の刈刃が検知範囲に含まれない略二等辺三角形の頂角の角度を算出し、左右の刈刃を検知範囲に含まないように、略二等辺三角形の頂角を小さく補正することが挙げられる。
【0081】
一方、作業機40の作業機情報の中に、作業機40の寸法データが含まれているか否かの判定の結果、寸法データが含まれていない場合には、固有IDまたは形状データに基づいて設定された後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dがそのまま用いられる。
【0082】
車両ECU2Aによる検知範囲の設定が終わると、後方障害物センサ11は、赤外線レーザ光源からその検知範囲を含む領域に赤外線レーザ光を照射し、後方障害物センサ11の後方に存在する物により反射された光を二次元センサで感知して、その物の位置を算出し、その位置が、上述のように設定された検知範囲内である場合にのみ、障害物として認識し、車両ECU2Aに障害物が存在する旨のデータを出力するようになる。したがって、後方障害物センサ11は、作業機40の一部を誤って、障害物と認識することを防止し、認識すべき障害物のみを障害物と認識することができる。
【0083】
本実施態様によれば、作業機40の作業機情報の中に、作業機40の寸法データが含まれている場合には、固有IDまたは形状データに基づいて後方障害物センサ11に出力した検知範囲のパターン11B~11Dを、寸法データを用いて、より適切なものに補正しているから、後方障害物センサ11によって作業機40が障害物と誤検知されることを効果的に防止し、作業車両1が走行を停止したり、警報を発することによって作業効率が低下することを防止できる。
【0084】
図10は、本発明の更に好ましい実施態様にかかる作業車両1の制御系、検出系、表示系のブロックダイアグラムである。
【0085】
本実施態様においては、作業機40の記憶装置40Bに当該作業機40の寸法データが格納されていない場合に、作業者が携帯端末を使って、当該作業機40の寸法データを生成し、作業機40の固有IDまたは作業機40の形状データを用いて決定された後方障害物センサ11の検知範囲のパターンを補正可能に構成されている。
【0086】
図10に示されるように、作業車両1の走行車両2の制御系は、車両ECU2Aと記憶装置2Bを備え、作業車両1の作業機40の制御系は作業機ECU40Aと記憶装置40Bを備えており、走行車両2と作業機40それぞれのISOBUSに対応するコネクタ同士を接続することにより、車両ECU2Aと作業機ECU40Aが相互に通信可能に構成されている。
【0087】
図10に示されるように、作業車両1の検出系は、GPS受信機12、前方障害物センサ10および後方障害物センサ11を備えており、それぞれの検出信号は車両ECU2Aに入力されているため、車両ECU2Aは自律走行可能な作業車両1の位置情報を取得し、作業車両1の前方および後方に存在する障害物を検知することが可能に構成されている。また、車両ECU2Aは、後方障害物センサ11に検知範囲に関するデータを出力することにより、その検知範囲を設定可能に構成されている。
【0088】
図10に示されるように、作業車両1の表示系は、操縦席65の近傍に設けられたディスプレイ70を備え、車両ECU2Aは作業車両1の種々の情報をディスプレイ70に表示可能に構成されている。
【0089】
さらに、本実施態様にかかる作業車両1においては、作業車両1が自律走行を行っている場合に、作業者が作業車両1から離れた場所にいても、作業機40の固有IDや形状データ、寸法データなど、作業機40に関する情報などを確認したり、後方障害物センサ11の検知範囲の設定を確認したりすることを可能にするため、車両ECU2Aは無線通信によって携帯端末50と相互に通信可能に構成されている。携帯端末50は、タッチパネル式の画面50Aおよび記憶装置50Bを備えたタブレット型のパーソナルコンピュータとして構成され、車両ECU2Aへ寸法データを送信するための入力装置として機能する他、作業車両1の表示系として機能し、車両ECU2Aから送信された作業機40の固有IDや形状データ、寸法データなどを表示可能に構成されている。
【0090】
本実施態様にかかる作業車両1においては、車両ECU2Aが作業機ECU40Aから受信した固有IDまたは形状データに基づいて、後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dを決定し、出力した後、作業機ECU40Aが作業機情報の中に作業機40の寸法データが含まれているか否かを判定した結果、寸法データが含まれている場合には、上述したのと同様に、寸法データを用いて、固有IDまたは形状データに基づいて出力された後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11B~11Dを補正し、寸法データが含まれていない場合には、車両ECU2Aは、無線通信により携帯端末50を通じて、作業者に寸法データを要求し、作業者によって生成された寸法データを用いて、固有IDまたは形状データに基づいて出力された後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11B~11Dを補正することができるように構成されている。
【0091】
具体的には、作業機ECU40Aは、寸法データが含まれているか否かを判定した結果、寸法データが含まれていない場合には、その旨の通知を車両ECU2Aに送信する。
【0092】
通知を受けると、車両ECU2Aは、後方障害物センサ11に出力する検知範囲のパターンを読み出すために用いた固有IDと、読み出した検知範囲のパターンと、その検知範囲のパターンから判明する作業機40の形状タイプとを携帯端末50に表示させ、さらに、後方障害物センサ11に出力された検知範囲のパターンをより適切なものに補正するために必要な作業機40の部分の寸法を入力するように作業者に要求する。
【0093】
図11は、図10に示された更に好ましい実施態様にかかる作業車両1の携帯端末50に表示される、寸法データの入力画面を示す概略図である。
【0094】
図11には、固有ID「002」と検知範囲のパターン11Bとが紐付けされたデータが走行車両2の記憶装置2Bに格納され、作業機ECU40Aから受信した固有ID「002」に基づいて、図5に示された検知範囲のパターン11Bを読み出した場合で、作業機40の寸法データが作業機情報に含まれていない場合に、携帯端末50に表示される寸法データの入力画面を示すものである。
【0095】
図11に示されるように、左から1列目のC1列には、走行車両2に取り付けられた作業機40の固有ID「002」が表示され、2列目のC2列には、車両ECU2Aが読み出したパターン11Bと、そのパターン11Bから判明する作業機40の形状タイプとして、左右両端部分の高さが高い形状タイプの作業機40がそれぞれ模式的に表示されている。そして、3列目のC3列には、パターン11Bにかかる検知範囲の補正に必要な場所が表示されている。検知範囲の補正に必要な場所はパターンによってそれぞれ異なり、パターン11BにおいてはAおよびBとして表示され、Aは左右の高さが高い部分同士の間隙の幅寸法であり、Bは作業車両1の前後方向における後方障害物センサ11から作業機40の後端部までの寸法であることが矢印によって示されている。
【0096】
ここに、本実施態様においては、当該作業機40は、図5に示された折りたたみ草刈機で構成されており、図11に示されるように、作業者は、折りたたみ草刈機の後端部における左右の刈刃間の間隙の幅寸法と、作業車両1の前後方向における後方障害物センサ11から作業機40の後端部までの距離寸法とを入力することとなる。
【0097】
図11のC3列の右部には、場所AおよびBの寸法を入力するためのテキストボックス51,52が設けられており、各テキストボックスを押圧操作することにより、ボックス内にカーソル(図示せず)が表示され、さらに画面50Aの下部に、寸法を入力するためのキースイッチ(図示せず)が表示されて、場所AおよびBの寸法を入力可能に構成されている。テキストボックス51,52への入力後、C3列の下方に表示されている寸法データ送信スイッチ53を押圧操作することにより、携帯端末50は、その寸法データを記憶装置50Bに格納するとともに、車両ECU2Aに送信する。
【0098】
車両ECU2Aは、携帯端末50から寸法データを受けると、後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11B~11Dをその寸法データを用いて補正し、後方障害物センサ11の検知範囲を新たに設定する。その結果、後方障害物センサ11は、作業機40の一部を誤って、障害物と認識することを防止し、認識すべき障害物のみを障害物と認識することができる。
【0099】
したがって、作業車両1が走行を停止したり、警報を発することによって作業効率が低下することを効果的に防止できる。
【0100】
一方、車両ECU2Aは、前記実施態様と同様に、作業機ECU40Aから受信した固有IDまたは形状データに基づいて後方障害物センサ11の検知範囲の適切なパターン11A~Dを設定し、作業機ECU40Aまたは携帯端末50から受信した寸法データを用いて検知範囲のパターン11B~11Dを補正した新しい検知範囲を後方障害物センサ11に設定する。次いで、自律走行する作業車両1から離れた位置にいる作業者が携帯端末50上で、後方障害物センサ11のその時点で設定されている検知範囲を確認することができるよう、作業機40の固有ID、形状データおよび後方障害物センサ11の検知範囲を設定するために用いられている作業機ECU40Aから読み出された寸法データと、設定された後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dを携帯端末50に送信し、画面50Aに表示させる。なお、寸法データが携帯端末50から入力され、車両ECU2Aに送信されている場合には、車両ECU2Aは、携帯端末50に寸法データを送信せず、携帯端末50から入力された寸法データを画面50Aに表示させる。一方、作業機40の固有IDまたは形状データに基づいて、検知範囲のパターンが設定され、それが図4に示された11Aの場合には、検知範囲の補正が行われていないため、作業機40の作業機情報に寸法データは含まれておらず、画面50Aにも表示されない。
【0101】
図12は、図10に示された更に好ましい実施態様にかかる作業車両1の携帯端末50の画面50Aに表示される現在取り付けられている作業機40の固有ID、形状タイプおよび寸法データと、後方障害物センサ11に設定された検知範囲のパターン11A~11Dを示す概略図である。
【0102】
図12に示されるように、C1列には走行車両2の後部に現在取り付けられている作業機40の固有IDが表示され、C2列にはその作業機40の形状タイプと、後方障害物センサ11の検知範囲として現在設定されているパターンとが模式的に表示されており、ここでは左右両端部分の高さが高い形状タイプである作業機40と、後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11Bが、それぞれ模式的に示されている。
【0103】
さらに、C3列には、C2列に表示された後方障害物センサ11の検知範囲のパターンの補正に用いられた寸法データが、検知範囲を補正するために必要な場所をAおよびBとして、その具体的な寸法ととともに示され、ここでは左右両端部分の高さが高い形状タイプの折りたたみ草刈機で構成された作業機40の後端部における左右の刈刃間の間隙の幅寸法と、作業車両1の前後方向における後方障害物センサ11から作業機40の後端部までの距離寸法がそれぞれ示されている。
【0104】
したがって、作業者は、図12に示された、携帯端末50の画面50Aに表示された情報を確認することにより、後方障害物センサ11の検知範囲11A~11Dを決定する基となった作業機40の固有ID、いずれの形状タイプであるかを表す形状データおよび寸法データと、設定された後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dを認識することができる。
【0105】
この際、何らかの不具合により、後方障害物センサ11に現在設定されている検知範囲が、作業機40の形状に適切なものでない場合、つまり後方障害物センサ11に現在設定されている検知範囲と、後方障害物センサ11の現在の検知範囲を決定する基となった作業機40の固有ID、形状データおよび寸法データに基づいて設定されるべき後方障害物センサ11の検知範囲とが異なる場合には、車両ECU2Aは、携帯端末50にその旨の警告情報を送信し、携帯端末50は、後方障害物センサ11の現在の検知範囲の設定が作業機40に適切なものでない旨を示す警告を、画面50Aに現在表示されている画像の前面に割り込む形で表示するから、作業者は自律走行する作業車両1から離れた場所にいてもその旨を認識することができる。
【0106】
図13は、本発明のさらに他の好ましい実施態様にかかる作業車両1の携帯端末50に表示される、作業機40の固有ID、形状タイプおよび寸法データと、後方障害物センサ11の検知範囲のパターンのリストを示す概略図である。
【0107】
本実施態様にかかる作業車両1においては、図12に示された前記実施態様と同様に、現在取り付けられている作業機40の固有ID、形状タイプおよび寸法データと、後方障害物センサ11に設定された現在の検知範囲のパターン11A~11Dが携帯端末50の画面50Aに表示された状態で、携帯端末50は、現在の検知範囲のパターン11A~11Dが作業機40に適切なものであるか否かを見比べて確認することができるリストをさらに画面50Aに表示するように構成されている。
【0108】
携帯端末50の記憶装置50Bには、複数の作業機40の固有IDおよび形状タイプと、それぞれの作業機40に適切な後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dと、検知範囲のパターン11B~11Dを適切に補正するための寸法データとが紐付けされたリストが格納されており、後方障害物センサ11の現在の検知範囲を決定する基となった作業機40の固有ID、形状タイプを表す形状データおよび寸法データと、設定された後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dが携帯端末50の画面50Aに表示されている状態で、自律走行する作業車両1から離れた場所にいる作業者が見比べて確認することができるよう、携帯端末50は記憶装置50Bからリストを読み出し、画面50Aに表示する。リストの各行に記載されている、後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dとそれを補正するための寸法データは、後方障害物センサ11による作業機40の誤検知を防止する上で、各行の作業機40の形状に適切なものとして予め登録されている。
【0109】
図13のC1列には各作業機40の固有IDが示されており、C2列には各作業機40の形状データから判断される形状タイプと、後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dが模式的に示されており、C3列にはC2列に示された後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11B~11Dを補正するための作業機40の寸法データが示されている。
【0110】
図13に示されるように、リストのR1行目には、それぞれの列のタイトルが表示されており、R2行目には、ロータリー耕耘機として構成された作業機40に関する情報が表示されている。C1列のR2行目には作業機40の固有IDが示され、C2列のR2行目にはその作業機40の形状データから判断される作業機40の形状タイプおよび作業機40に適切なパターン11Aがそれぞれ模式的に示され、C3列のR2行目の寸法データの欄には、作業機40が後方障害物センサ11の検知範囲の補正が不要な形状タイプであるため、寸法データによる検知範囲の補正を行わない旨を示す斜線が引かれている。
【0111】
さらに、R3~R5行目の欄にはそれぞれ、後方障害物センサ11の検知範囲のうちのいずれかの部分の補正が可能な形状タイプの作業機40に関する情報が表示されている。
【0112】
C1列のR3~R5行目には、それぞれの作業機40の固有IDが示されており、C2列のR3~R5行目には、それぞれの作業機40の形状タイプと、それに応じた検知範囲のパターン11B~11Dが示されており、C3列のR3行目の欄にのみ、形状データに応じた検知範囲のパターン11Bを補正するために必要な場所A,Bの寸法が登録されている。
【0113】
ここに、図12に示された前記実施態様と同様に、携帯端末50の画面50Aに、走行車両2の後部に現在取り付けられている作業機40の固有ID、形状データおよび寸法データと、後方障害物センサ11の現在の検知範囲のパターン11A~11Dとが別途表示され、さらに図13に示されるリストが画面50Aに表示された状態で、それらを見比べることにより、後方障害物センサ11の現在の検知範囲が適切な状態になっているか否かを確認することができる。
【0114】
さらに、何らかの不具合により、後方障害物センサ11に現在設定されている検知範囲が、作業機40の形状に適切なものでない場合、つまり、後方障害物センサ11に現在設定されている検知範囲が、後方障害物センサ11の現在の検知範囲を決定する基となった作業機40の固有ID、形状データおよび寸法データに基づいて設定されるべき後方障害物センサ11の検知範囲と異なる場合には、車両ECU2Aはその旨の警告情報を携帯端末50に送信し、携帯端末50は、後方障害物センサ11の現在の検知範囲の設定が作業機40に適切なものでない旨を示す警告を、画面50Aに表示されている画像の前面に割り込む形で表示するから、不具合が生じた際に、それを確実に認識することができる。
【0115】
図14は、図13に示されたさらに他の好ましい実施態様にかかる作業車両1の携帯端末50に表示される、作業機40の形状データおよび寸法データを車両ECU2Aに送信するためのリストを示す概略図である。
【0116】
本実施態様における作業車両1は、走行車両2の後部にISOBUSに対応しない機種である作業機40が取り付けられた場合においても、作業機40の形状に応じた後方障害物センサ11の検知範囲を設定できるように構成されており、以下のようにして後方障害物センサ11の検知範囲が設定される。
【0117】
まず、作業機40が走行車両2の後部に取り付けられると、車両ECU2Aは、作業機40から作業機40の固有IDや形状データ、寸法データを得ることができず、作業機40の取り付けに伴って自動的に後方障害物センサ11に作業機40の形状に応じた検知範囲のデータを出力することができないため、作業者は、自身で車両ECU2Aに対して作業機40の形状データを送信するか、または形状データとともに寸法データを送信することにより、後方障害物センサ11の検知範囲を作業機40の形状に応じた状態に設定することができる。
【0118】
具体的には、作業者は、図14に示された、作業機40の形状データと、形状データによって決定される後方障害物センサ11の検知範囲のパターンを補正するための寸法データを車両ECU2Aに送信するためのリストを携帯端末50の画面50A上に表示させ、そのリストの中から現在走行車両2に取り付けられている作業機40の形状に合う形状データおよび寸法データにかかる行を選択することにより、その形状データおよび寸法データを車両ECU2Aに送信する。
【0119】
図14のC1列には、車両ECU2Aに送信する作業機40の4種類の各形状データにかかる形状タイプが、それぞれの形状タイプに応じた後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dとともに模式的に示されている。C2列には、C1列に示された作業機40の形状タイプにかかる形状データを基に設定される検知範囲のパターンが11B~11Dである場合に、その検知範囲を補正するための作業機40の寸法データが示されている。
【0120】
寸法データは、図4に示された前記実施態様のロータリー耕耘機として構成された作業機40のような過度な高さ・後方に延びた部分を有しない形状タイプ以外の形状タイプにおいて、各形状タイプごとに、検知範囲を補正するために必要な場所が予め定められ、AおよびBとして示されており、作業者はそのAおよびBの寸法のみを登録可能に構成されている。例えば、左右両端部分の高さが高い形状タイプである折りたたみ草刈機で構成された作業機40の場合には、作業機40の後端部における左右の刈刃間の間隙の幅寸法と、作業車両1の前後方向における後方障害物センサ11から作業機40の後端部までの距離寸法のみが登録可能に構成されている。
【0121】
図14に示されるように、リストのC1列のR1行目には、C1列のタイトルが表示され、C2列のR1行目には、C2列のタイトルが表示されている。C1列のR2行目の欄には、過度な高さ・後方に延びた部分を有さず、後方障害物センサ11の検知範囲の補正が不要な形状タイプの作業機40および検知範囲のパターン11Aが表示されており、C2列のR2行目には、作業機40が後方障害物センサ11の検知範囲の補正が不要な形状タイプのため、寸法データの登録ができない旨が斜線により示されている。
【0122】
C1列のR3~R6行目の欄にはそれぞれ、後方障害物センサ11の検知範囲のうちのいずれかの部分の補正が可能な形状タイプの作業機40およびそれぞれの作業機40の形状に応じた検知範囲のパターン11B~11Dが表示されている。R3行目およびR6行目の欄にはそれぞれ、左右両端部分の高さが高いタイプの作業機40が、それぞれの行のC2列の欄に登録された場所A,Bの寸法の値が異なる状態で示されており、R4行目の欄には左右方向における中央部分の高さが高いタイプの作業機40が、R5行目の欄には高さは低いが後方に延びた作業機40がそれぞれ、C2列に、検知範囲の補正に必要な場所A,Bの寸法の登録がない状態で示されている。
【0123】
ここに、作業車両1の走行車両2の後部に、ISOBUSに対応しない機種である作業機40が取り付けられた場合に、図14に示された、携帯端末50に表示されるリストの中から、作業機40の形状タイプや寸法データが正しい行をR2行目からR6行目までの中から選択することにより、その行に作業機40の形状データのみが登録されている場合には形状データが車両ECU2Aに送信され、その行に形状データおよび寸法データが登録されている場合には形状データおよび寸法データが車両ECU2Aに送信される。例えば、R4行目が選択された場合には、携帯端末50は左右方向における中央部分の高さが高い形状タイプに関する形状データのみを車両ECU2Aに送信することとなる。
【0124】
車両ECU2Aは、形状データを受信すると、図8に示された前記実施態様と同様に、走行車両2の記憶装置2Bに格納された、作業機40の形状データと、当該作業機40についての後方障害物センサ11の検知範囲とが紐付けられたデータにアクセスし、今回受信した形状データに基づいて、その形状データに紐付けされた後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dを読み出して後方障害物センサ11に出力し、検知範囲として設定する。さらに、携帯端末50から受信したデータに作業機40の寸法データが含まれている場合には、車両ECU2Aは、出力した後方障害物センサ11の検知範囲のパターンのデータを、受信した寸法データを用いて補正することにより、後方障害物センサ11の新しい検知範囲のデータを生成して後方障害物センサ11に出力し、検知範囲を補正した状態に設定変更する。したがって、作業機40がISOBUSに対応していない機種である場合であっても、後方障害物センサ11の検知範囲を作業機40の形状に応じた状態に設定することができ、後方障害物センサ11によって作業機40が障害物と誤検知されることを防止し、作業車両1が走行を停止したり警報を発することによって作業効率が低下することを防止できる。
【0125】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0126】
たとえば、図1に示される実施態様においては、作業車両1はトラクタとして構成されているが、トラクタに限定するものではなく、コンバインなどであってもよい。また、作業機40についてもロータリー耕耘機に限定するものではなく、圃場60に肥料を散布する施肥機や、圃場60の雑草を刈り取る草刈機、レーザーレベラー、カルチベータ、畝立て機などであってもよい。
【0127】
さらに、図1に示される実施態様においては、後方障害物センサ11は、赤外線レーザを照射することにより作業車両1の後方の障害物を検出可能に構成されているが、検出手段として、他の光センサや超音波センサを用いてもよい。
【0128】
さらに、図1に示される実施態様においては、後方障害物センサ11は、その検知範囲を含む領域に赤外線レーザ光を照射し、作業車両1の後方に存在する物から反射した光を感知し、その物の位置を算出した後、予め設定された範囲内である検知範囲内に存在する物のみを障害物として認識するように構成されているが、後方障害物センサ11の検知範囲の制限方法をこれに限定する物ではない。
【0129】
さらに、図3に示される実施態様においては、作業機40の作業機ECU40Aと、走行車両2の車両ECU2Aとの通信はISOBUSによって構成されているが、ISOBUSに限定されるものではなく、他の通信規格によって相互に通信する構成としてもよい。
【0130】
さらに、図4図8に示される実施態様においては、後方障害物センサ11の検知範囲として、4つのパターンを設定できるように構成されているが、後方障害物センサ11の検知範囲のパターンの数は4つに限定されるものではなく、さらにその形状もとくに限定されるものではない。また、後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dはそれぞれ、ロータリー耕耘機、折りたたみ草刈機、レーザーレベラー、カルチベータに限定して設定されるものではなく、走行車両2の後部に取り付けられた作業機40の形状に応じたパターンを設定されるものである。
【0131】
さらに、図10に示される実施態様においては、車両ECU2Aは、その無線通信により携帯端末50と情報を送受信できるように構成されているが、必ずしも無線通信である必要はなく、有線接続によってデータを送受信できるように構成されてもよい。
【0132】
さらに、図10に示される実施態様においては、携帯端末50はタブレット型のパーソナルコンピュータとして構成されているが、携帯電話やノート型のパーソナルコンピュータなどであってもよい。
【0133】
さらに、図11に示される実施態様においては、作業機40の記憶装置40Bに格納されている作業機情報の中に、作業機40の寸法データが含まれていない場合に、作業者は携帯端末50の画面50Aに表示された作業機の場所の寸法を測定して入力し、車両ECU2Aに寸法データを送信可能に構成されているが、作業機情報に作業機40の寸法データが含まれる場合においても、検知範囲のパターンの補正に必要な作業機40の場所にかかる寸法を携帯端末50に入力して車両ECU2Aに送信し、検知範囲を任意に補正可能に構成されてもよい。
【0134】
さらに、図13に示される実施態様においては、携帯端末50は、記憶装置50Bから、複数の作業機40の固有IDおよび形状データと、それらに適切な後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dと、検知範囲のパターン11B~11Dを適切に補正するための寸法データとが紐付けされたリストを取得するよう構成されているが、サーバーに保存された同リストをダウンロードするように構成してもよいし、車両ECU2Aから同リストを受信するように構成されてもよい。
【0135】
さらに、図14に示される実施態様においては、作業機40がISOBUSに対応しない機種である場合に、携帯端末50は、記憶装置50Bから、作業機40の形状データおよび寸法データを車両ECU2Aに送信するためのリストを取得するよう構成されているが、サーバーに保存された同リストをダウンロードするように構成してもよいし、車両ECU2Aから同リストを受信するように構成されてもよい。
【0136】
さらに、図9ないし図14に示される実施態様においては、走行車両2の後部に作業機40が取り付けられた際、車両ECU2Aは、作業機ECU40Aから受信した固有IDまたは形状データに基づいて、作業機40に適切な後方障害物センサ11の検知範囲のパターン11A~11Dのデータを後方障害物センサ11に出力して検知範囲を設定し、さらに記憶装置40Bから読み出した作業機情報の中に寸法データが存在する場合には寸法データを作業機ECU40Aから受信して、検知範囲のパターン11B~11Dを寸法データにより補正した新しい検知範囲のデータを後方障害物センサ11に出力するよう構成されているが、車両ECU2Aは、寸法データが存在する場合に必ずしもこのように2度検知範囲のデータを後方障害物センサ11に出力する必要はなく、固有IDまたは形状データに基づいて決定された検知範囲のパターン11B~11Dのデータを出力する前に、作業機ECU40Aから寸法データを受信し、固有IDまたは形状データに基づいて決定される検知範囲のパターンのデータを寸法データにより補正した検知範囲のデータを後方障害物センサ11に出力するよう構成されてもよい。
【0137】
さらに、図8ないし図14に示される各実施態様においては、作業機ECU40Aは、作業機40の記憶装置40Bから作業機情報を取得した後、まず作業機40の固有IDを車両ECU2Aに送信し、車両ECU2Aは、その記憶装置2Bの中に、受信した固有IDと紐付けされている後方障害物センサ11の検知範囲のパターンの情報が格納されている場合には、作業機40の固有IDに基づいて作業機40に適切な後方障害物センサ11の検知範囲のパターンを出力し、走行車両2の記憶装置2B内に、受信した固有IDと紐付けされている後方障害物センサ11の検知範囲のパターンのデータが格納されていない場合には、作業機ECU40Aは、作業機情報に作業機40の形状データが含まれているか否かを判定し、形状データが含まれている場合には、形状データを車両ECU2Aに送信し、車両ECU2Aは形状データに基づいて作業機40に適切な後方障害物センサ11の検知範囲のパターンを出力する構成としているが、別の実施態様として、作業機ECU40Aは、作業機情報を取得した後、まず作業機情報に作業機40の形状データが含まれているか否かを判定し、形状データが含まれている場合には、形状データを車両ECU2Aに送信し、車両ECU2Aは形状データに基づいて作業機40に適切な後方障害物センサ11の検知範囲のパターンを出力し、作業機情報に作業機40の形状データが含まれていない場合に、作業機ECU40Aは、作業機40の固有IDを車両ECU2Aに送信し、車両ECU2Aは固有IDに基づいて作業機40に適切な後方障害物センサ11の検知範囲のパターンを出力する構成としてもよい。
【0138】
さらに、図8ないし図14に示される各実施態様においては、作業機ECU40Aは、作業機情報を記憶装置40Bから取得した後、まず固有IDを車両ECU2Aに送信し、その固有IDにかかる作業機40の形状に応じた後方障害物センサ11の検知範囲のパターンの情報が走行車両2の記憶装置2Bに格納されていなかった場合に、さらに作業機情報内の形状データの有無を判定し、形状データが含まれている場合には形状データを送信し、さらに寸法データの有無を判定し、寸法データが含まれている場合には寸法データを車両ECU2Aに送信するよう構成されているが、作業機ECU40Aは記憶装置40Bから作業機情報を取得した後、固有ID、形状データおよび寸法データのうち、作業機情報に含まれるものすべてを一度に車両ECU2Aに送信する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0139】
1 作業車両
2 走行車両
2A 車両ECU
2B 記憶装置
3 前輪
4 後輪
5 エンジン
6 キャビン
7 ボンネット
8 キャビンルーフ
9 ヘッドライト
10 前方障害物センサ
11 後方障害物センサ
11A 検知範囲のパターン
11B 検知範囲のパターン
11C 検知範囲のパターン
11D 検知範囲のパターン
12 GPS受信機
17 変速装置
40 作業機
40A 作業機ECU
40B 記憶装置
41 作業機昇降シリンダ
42 リフトアーム
45 3点リンク機構
45a トップリンク
45b ロアリンク
46 耕耘爪
47 ロータリカバー
48 リヤカバー
49 耕深センサ
50 携帯端末
50A 画面
50B 記憶装置
51 テキストボックス
52 テキストボックス
53 寸法データ送信スイッチ
60 圃場
64 ステアリングハンドル
65 操縦席
70 GPS衛星
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14