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  • 特許-回転機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】回転機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
H02K9/19 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023042992
(22)【出願日】2023-03-17
(65)【公開番号】P2024132271
(43)【公開日】2024-09-30
【審査請求日】2024-03-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】植松 拓
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-161999(JP,A)
【文献】特開2003-102138(JP,A)
【文献】特開2012-090411(JP,A)
【文献】特開2021-197843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、前記ロータの径方向外側にギャップを介して対向するステータと、を有する回転機であって、
前記ステータは、ステータコイルと、前記ステータコイルを収容するスロットを有するステータコアと、を有し、
前記ステータは、少なくとも前記ステータコアの内周面の一部を覆う薄膜部材を有し、
前記薄膜部材は、軸方向中央で前記ステータコアが径方向内側に露出する窓部と、前記窓部の軸方向両側で前記ステータコアの内周面を覆う円筒部と、を有し、
前記薄膜部材は、前記スロットの側壁に沿って前記円筒部から径方向外側に拡がる放射部を有し、
前記薄膜部材は、前記窓部から前記円筒部の径方向外側に至り、前記放射部に沿って軸方向両端に延びる第1流路を有する、
ことを特徴とする回転機。
【請求項2】
前記ロータは、回転軸となるシャフトと、前記シャフトの軸方向一方側に固定された第1ロータコアと、前記シャフトの軸方向他方側に固定された第2ロータコアと、前記第1ロータコアと前記第2ロータコアとに挟まれてその内周面が前記シャフトの外周面に固定されたリング部材と、を有し、
前記シャフトは、軸方向一端から少なくとも軸方向中央まで軸方向に延びる第2流路と、前記第2流路から径方向外側に貫通する第3流路と、を有し、
前記リング部材は、その軸方向位置が前記第3流路と軸方向で一致する位置であり、
前記リング部材は、その内周面に前記第3流路と連通し周方向の全周に亘って径方向外側に凹む第4流路と、前記第4流路から径方向外側に貫通する第5流路と、を有し、
前記第5流路の径方向外側の開口は、前記窓部と軸方向で対向する、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転機。
【請求項3】
前記シャフトは、周方向に等間隔で複数の前記第3流路を有し、
前記リング部材は、周方向に等間隔で複数の前記第5流路を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の回転機。
【請求項4】
前記第5流路の数は、前記第3流路の数よりも多い、
ことを特徴とする請求項3に記載の回転機。
【請求項5】
前記ロータは、前記第1ロータコアに埋め込まれた第1マグネットと、前記第2ロータコアに埋め込まれた第2マグネットと、を有し、
前記リング部材は、前記第1マグネット及び前記第2マグネットの埋め込まれた径方向位置よりも径方向内側に位置する、
ことを特徴とする請求項2に記載の回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転機の冷却においては、冷媒としてのオイルをステータコイルのコイルエンドに直接かける方式が知られている。しかしながら、この方式では、ステータコイルのうちコイルエンド以外の部分、特にステータコアのスロット内の軸方向中央付近でコイル温度が上がりやすいという問題があった。
【0003】
これに対し、特許文献1に記載の発明では、軸方向に延びる中心孔をシャフトに設け、更に軸方向中央付近で中心孔からシャフトの外周面に延びる複数の貫通孔を設けるとともに、ロータやステータに内部から外周面に連通する冷媒流路を設ける構成を開示している。この構成によれば、シャフトの軸方向から冷媒を供給することで、シャフトの外周面に延びる貫通孔の軸方向位置において、ロータの冷媒流路を介してステータに冷媒を供給することができ、ステータコアのスロット内の軸方向中央付近でステータコア冷却し、また、ステータコアの外周面に沿って流れた冷媒によりコイルエンドを冷却しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-97556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、ロータやステータに冷媒流路を形成しなければならず、製造工程が煩雑であるという問題があった。また、シャフトの外周面に延びる貫通孔の数が少ないとロータの周方向において冷却ムラが発生するおそれがあり、一方貫通孔の数を増やすと機械的強度が低くなってしまうという問題があった。したがって、従来、回転機の冷却構造に改善の余地があった。
【0006】
本発明は、回転機の冷却構造を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る回転機は、ロータと、前記ロータの径方向外側にギャップを介して対向するステータとを有する回転機であって、前記ステータは、ステータコイルと、前記ステータコイルを収容するスロットを有するステータコアと、を有し、前記ステータは、少なくとも前記ステータコアの内周面の一部を覆う薄膜部材を有し、前記薄膜部材は、軸方向中央で前記ステータコアが径方向内側に露出する窓部と、前記窓部の軸方向両側で前記ステータコアの内周面を覆う円筒部と、を有し、前記薄膜部材は、前記スロットの側壁に沿って前記円筒部から径方向外側に拡がる放射部を有し、前記薄膜部材は、前記窓部から前記円筒部の径方向外側に至り、前記放射部に沿って軸方向両端に延びる第1流路を有する。
【0008】
上記の一態様の回転機において、前記ロータは、回転軸となるシャフトと、前記シャフトの軸方向一方側に固定された第1ロータコアと、前記シャフトの軸方向他方側に固定された第2ロータコアと、前記第1ロータコアと前記第2ロータコアとに挟まれてその内周面が前記シャフトの外周面に固定されたリング部材と、を有し、前記シャフトは、軸方向一端から少なくとも軸方向中央まで軸方向に延びる第2流路と、前記第2流路から径方向外側に貫通する第3流路と、を有し、前記リング部材は、その軸方向位置が前記第3流路と軸方向で一致する位置であり、前記リング部材は、その内周面に前記第3流路と連通し周方向の全周に亘って径方向外側に凹む第4流路と、前記第4流路から径方向外側に貫通する第5流路と、を有し、前記第5流路の径方向外側の開口は、前記窓部と軸方向で対向する。
【0009】
上記の一態様の回転機において、前記シャフトは、周方向に等間隔で複数の前記第3流路を有し、前記リング部材は、周方向に等間隔で複数の前記第5流路を有する。
【0010】
上記の一態様の回転機において、前記第5流路の数は、前記第3流路の数よりも多い。
【0011】
上記の一態様の回転機において、前記ロータは、前記第1ロータコアに埋め込まれた第1マグネットと、前記第2ロータコアに埋め込まれた第2マグネットと、を有し、前記リング部材は、前記第1マグネット及び前記第2マグネットの埋め込まれた径方向位置よりも径方向内側に位置する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、回転機の冷却構造を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係るモータの断面図である。
図2】モータ100を図1とは異なる面で切断した断面図である。
図3】リング部材108の斜視図である。
図4】モータ100からロータ102を取り除いて、内周面が見える状態のステータ101の斜視図である。
図5図4のステータ101を、Z軸と平行な面で切断して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る回転機について説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺及び数等を異ならせる場合がある。また、各構成を見易さのため、実際の形状と異なる概略で示している。
【0015】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、図1に示す中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。Y軸方向は、中心軸Jに対する径方向のうち図1の上下方向とする。X軸方向は、Y軸方向及びZ軸方向の両方と直交する方向とする。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のいずれにおいても、図中に示す矢印が指す側を+側、反対側を-側とする。
【0016】
また、以下の説明においては、Z軸方向の正の側(+Z側)を「一方側」と呼び、Z軸方向の負の側(-Z側)を「他方側」と呼ぶ。なお、一方側及び他方側とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。径方向において中心軸Jに近づく側を「径方向内側」と呼び、中心軸Jから遠ざかる側を「径方向外側」と呼ぶ。
【0017】
なお、本明細書において、「軸方向に延びる」とは、厳密に軸方向(Z軸方向)に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、「径方向に延びる」とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向(Z軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また「平行」とは、厳密に平行な場合に加えて、互いに成す角が45°未満の範囲で傾いた場合も含む。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るモータの断面図である。図1は、モータ100を、中心軸Jを通り、X軸と直交する面で切断して示す図である。モータ100は、本発明に係る回転機の一例である。モータ100は、インナーロータ型のラジアルギャップモータである。
【0019】
モータ100は、ロータ102と、ロータ102の径方向外側にギャップを介して対向する円筒形状のステータ101とを有する。モータ100は、円筒形状のケース104を有する。ステータ101及びロータ102は、ケース104に収容される。モータ100は、ケース104の軸方向一方側を塞ぐブラケット105と、ケース104の軸方向他方側を塞ぐブラケット106と、ブラケット106の軸方向他方側に位置する補助部材107と、を有する。ブラケット105は、ケース104に固定される。ブラケット106は、ケース104に固定される。補助部材107は、ブラケット106に固定される。
【0020】
ケース104は、冷媒としてのオイルを外部から供給するための供給口110と、供給口110と連通する流路111と、を有する。流路111は、軸方向に延びる。ブラケット106は、軸方向に延びる流路112を有する。流路112の軸方向一方端は、流路111の軸方向他方端と連通する。補助部材107は、径方向に延びる流路113を有する。流路113の径方向外側端は、流路112の軸方向他方端と連通する。
【0021】
ロータ102は、回転軸となるシャフト103と、シャフト103の軸方向一方側に固定されたロータコア102aと、シャフト103の軸方向他方側に固定されたロータコア102bと、ロータコア102aとロータコア102bとに挟まれたリング部材108と、を有する。
【0022】
シャフト103は、中心軸Jに沿って延びる。シャフト103は、軸受103aによって軸支され、ブラケット105及びブラケット106に対して回転可能に支持される。シャフト103は、軸方向他方端から軸方向一方側に延びる流路114を有する。流路114の軸方向他方側端は、流路113の径方向内側端と連通する。シャフト103は、軸方向に延びる流路115を有する。流路115の軸方向他方側端は、流路114の軸方向一方側端と連通する。流路115は、少なくとも軸方向中央まで延びる。流路115の軸方向一方側端は塞がっている。流路114及び流路115は、シャフト103と同軸である。流路115の流路径は、流路114の流路径よりも大きい。シャフト103は、流路115から径方向外側に貫通する流路116を有する。
【0023】
ステータ101は、ステータコイル101と、ステータコイル101bを収容するスロット101ab(図2参照)を有するステータコア101aと、を有する。ステータ101は、少なくともステータコア101aの内周面の一部を覆う薄膜部材125を有する。薄膜部材125は、例えば樹脂製の部材である。薄膜部材125の詳細は後述する。
【0024】
図2は、モータ100を図1とは異なる面で切断した断面図である。図2は、リング部材108の流路118を通り、Z軸と直交する面で切断して示す図である。図2に示すように、本実施形態では、シャフト103は、周方向に等間隔で2つの流路116を有する。
【0025】
図3は、リング部材108の斜視図である。リング部材108は、平板リング状の部材である。リング部材108は、軸方向に貫通する固定穴108aを周方向に複数有する。リング部材108は、例えば固定穴108aでロータコア102a及びロータコア102bに固定される。
【0026】
リング部材108は、その内周面がシャフト103の外周面に固定される。リング部材108は、その内周面に周方向の全周に亘って径方向外側に凹む溝状の流路117を有する。リング部材108は、その軸方向位置が流路116と軸方向で一致する位置であり、リング部材108の流路117は、流路116と連通する。
【0027】
リング部材108は、流路117から径方向外側に貫通する流路118を有する。図2に示すように、本実施形態では、リング部材108は、周方向に等間隔で8つの流路118を有する。流路118の数は、流路116の数よりも多い。流路116の数が多いとシャフト103の機械的強度上の問題が生じる可能性がある。一方、シャフト103からステータ101に冷媒を噴射する噴射口の数が少ないと冷却の際の冷却ムラが生じる可能性がある。本実施形態によれば、流路116の数を少なくすることでシャフト103の機械的強度を確保しつつ、流路118の数すなわちステータ101に冷媒を噴射する噴射口の数を多くすることで冷却ムラを低減することができる。
【0028】
また、図2に示すように、ロータ102は、ロータコア102bに埋め込まれたマグネット102baを有する。ロータ102は、マグネット102baと同じ径方向位置及び周方向位置に、ロータコア102aに埋め込まれたマグネットを有するが、図示は省略する。リング部材108は、ロータコア102bに埋め込まれたマグネット102ba及びロータコア102aに埋め込まれたマグネットの径方向位置よりも径方向内側に位置する。この構成によれば、ロータコア102bに埋め込まれたマグネット102ba及びロータコア102aに埋め込まれたマグネットの磁路へのリング部材108の影響がなく、損失(鉄損)を生じることがない。
【0029】
図4は、モータ100からロータ102を取り除いて、内周面が見える状態のステータ101の斜視図である。薄膜状の部材である薄膜部材125は、軸方向中央でステータコア101aが径方向内側に露出する窓部130を有する。
【0030】
図5は、図4のステータ101を、Z軸と平行な面で切断して示す断面図である。薄膜部材125は、窓部130の軸方向両側でステータコア101aの内周面を、周方向の全周に亘って覆う円筒部125aを有する。
【0031】
また、薄膜部材125は、スロット101abの側壁に沿って、円筒部125aから径方向外側に拡がる放射部125bを有する。薄膜部材125は、窓部130から円筒部125aの径方向外側に至り、放射部125bに沿って軸方向両端に延びる流路119を有する。リング部材108の流路118の径方向外側の開口は、窓部130と軸方向で対向する。
【0032】
上述の構成により、外部から供給口110に供給された冷媒としてのオイルは、流路111、流路112及び流路113を介して、流路114からシャフト103に流入する。さらに、流路114からシャフト103に流入したオイルは、流路115及び流路116を介して、流路117からリング部材108に流入する。流路117からリング部材108に流入したオイルは、流路118の径方向外側の開口から窓部130に向けて噴射される。窓部130に噴射されたオイルは、流路119を介して軸方向両端に流れ、ステータコイル101bの両端のコイルエンドに達した後、流れ落ちて排出口120から外部に排出される。
【0033】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0034】
100…モータ、101…ステータ、102…ロータ、103…シャフト

図1
図2
図3
図4
図5