(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】車両制御装置、方法、プログラム、及び車両
(51)【国際特許分類】
B60W 50/00 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
B60W50/00
(21)【出願番号】P 2023085209
(22)【出願日】2023-05-24
(62)【分割の表示】P 2020017334の分割
【原出願日】2020-02-04
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嵩本 益三
(72)【発明者】
【氏名】山田 芳久
(72)【発明者】
【氏名】板橋 界児
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-063098(JP,A)
【文献】特開2014-008927(JP,A)
【文献】国際公開第2011/074115(WO,A1)
【文献】特開2006-123630(JP,A)
【文献】特許第7318550(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された制御装置であって、
複数の運転支援アプリケーションを含む運転支援システムから取得した複数の制御指令を
、前記複数の制御指令の中から1つの制御指令を選択する又は前記複数の制御指令に基づいて別の制御指令を設定することによって、調停する調停部と、
前記調停部による調停後の制御指令に基づいて、前記車両が備える
複数のアクチュエータを制御可能な
複数の制御部に対する指示を出力する出力部と、を備え、
前記出力部は、現在の制御指令に基づく指示が要求する要求値である第1要求値と、新たな制御指令が要求する要求値である第2要求値との差分の絶対値が、前記第2要求値
を出力した前記運転支援アプリケーションから取得する前記第2要求値の変化量の許容上限値であるガード値以上である場合、
前記第2要求値が前記第1要求値よりも大きければ、前記調停後の制御指令に基づく指示として前記第1要求値に前
記ガード値を加算した値を要求する指示を前記制御部に出力し、
前記第2要求値が前記第1要求値よりも大きくなければ、前記調停後の制御指令に基づく指示として前記第1要求値から前
記ガード値を減算した値を要求する指示を前記制御部に出力
し、
前記調停部は、調停の結果を前記複数の運転支援アプリケーションに出力する、制御装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記第1要求値と前記第2要求値との差分の絶対値が、前
記ガード値未満である場合、前記調停後の制御指令に基づく指示として前記第2要求値を要求する指示を前記制御部に出力する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記要求値は、
前記車両の操舵角であり、
前記出力部は、前記調停後の制御指令に基づく指示として前記操舵角に基づく指示を、前記制御部として操舵アクチュエータを制御可能な制御部に出力する、請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記要求値は、
前記車両の加速度であり、
前記出力部は、前記調停後の制御指令に基づく指示として前記加速度に基づく指示を、前記制御部として制動アクチュエータ又は駆動アクチュエータの少なくとも一方を制御可能な制御部に出力する、請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記出力部は
、前記車両の速度又は
進行方向の加速度
が小さくなれば前記ガード値が高くなるように補正し、前記車両の速度又は進行方向の加速度が大きくなれば前記ガード値が低くなるように補正する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
車両に搭載された制御装置のコンピューターが実行する方法であって、
複数の運転支援アプリケーションを含む運転支援システムから取得した複数の制御指令を
、前記複数の制御指令の中から1つの制御指令を選択する又は前記複数の制御指令に基づいて別の制御指令を設定することによって、調停するステップと、
現在の制御指令に基づく指示が要求する要求値である第1要求値と、新たな制御指令が要求する要求値である第2要求値との差分の絶対値を演算するステップと、
前記要求値の差分の絶対値が、前記第2要求値
を出力した前記運転支援アプリケーションから取得する前記第2要求値の変化量の許容上限値であるガード値以上である場合、前記第2要求値が前記第1要求値よりも大きければ、前記調停後の制御指令に基づく指示として前記第1要求値に前
記ガード値を加算した値を要求する指示を、前記車両が備える
複数のアクチュエータを制御可能な
複数の制御部に出力するステップと、
前記要求値の差分の絶対値が、前
記ガード値以上である場合、前記第2要求値が前記第1要求値よりも大きくなければ、前記調停後の制御指令に基づく指示として前記第1要求値から前
記ガード値を減算した値を要求する指示を前記制御部に出力するステップと
、
前記調停の結果を前記複数の運転支援アプリケーションに出力するステップと、を含む、方法。
【請求項7】
車両に搭載された制御装置のコンピューターに実行させるプログラムであって、
複数の運転支援アプリケーションを含む運転支援システムから取得した複数の制御指令を
、前記複数の制御指令の中から1つの制御指令を選択する又は前記複数の制御指令に基づいて別の制御指令を設定することによって、調停するステップと、
現在の制御指令に基づく指示が要求する要求値である第1要求値と、新たな制御指令が要求する要求値である第2要求値との差分の絶対値を演算するステップと、
前記要求値の差分の絶対値が、前記第2要求値
を出力した前記運転支援アプリケーションから取得する前記第2要求値の変化量の許容上限値であるガード値以上である場合、前記第2要求値が前記第1要求値よりも大きければ、前記調停後の制御指令に基づく指示として前記第1要求値に前
記ガード値を加算した値を要求する指示を、前記車両が備える
複数のアクチュエータを制御可能な
複数の制御部に出力するステップと、
前記要求値の差分の絶対値が、前
記ガード値以上である場合、前記第2要求値が前記第1要求値よりも大きくなければ、前記調停後の制御指令に基づく指示として前記第1要求値から前
記ガード値を減算した値を要求する指示を前記制御部に出力するステップと
、
前記調停の結果を前記複数の運転支援アプリケーションに出力するステップと、を含む、プログラム。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の制御装置を搭載した、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の運動を制御する装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
車両で発生する車両の運動に関する複数の制御指令を調停して、その調停の結果に基づいてアクチュエータの動作を制御することができる車両が知られている。特許文献1には、衝突回避支援アプリケーションの制御指令及び車線逸脱支援アプリケーションの制御指令を調停制御部が入力し、調停制御部によって複数の制御指令を調停する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のアプリケーションから同時に複数の制御指令を入力した場合、予め定められた調停ルールに従って、採用する制御指令を決定する。しかしながら、調停によって今回採用した新たな制御指令が要求する要求値と、調停によって前回採用した現在の制御指令に基づく指示が要求する要求値との間に、大きな乖離がある場合には、現在の制御指令から新たな制御指令に切り替えて実行すると、車両の挙動にドライバーが違和感を覚えるような大きな変化が発生する虞がある。
【0005】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、現在の制御指令から新たな制御指令に切り替えて実行した際に、車両の挙動に大きな変化が発生することを抑制できる車両制御装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、車両に搭載された制御装置であって、運転支援システムから取得した複数の制御指令を調停する調停部と、調停部による調停後の制御指令に基づいて、車両が備えるアクチュエータを制御可能な制御部に対する指示を出力する出力部と、を備え、出力部は、現在の制御指令に基づく指示が要求する要求値である第1要求値と、新たな制御指令が要求する要求値である第2要求値との差分の絶対値が、第2要求値に対応するガード値以上である場合、第2要求値が第1要求値よりも大きければ、調停後の制御指令に基づく指示として第1要求値に第2要求値に対応するガード値を加算した値を要求する指示を制御部に出力し、第2要求値が第1要求値よりも大きくなければ、調停後の制御指令に基づく指示として第1要求値から第2要求値に対応するガード値を減算した値を要求する指示を制御部に出力する、制御装置である。
【発明の効果】
【0007】
上記本開示の車両制御装置によれば、現在の制御指令から新たな制御指令に切り替えて実行した際に、車両の挙動に大きな変化が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る車両制御装置とその周辺部の機能ブロック図
【
図2】車両制御装置が実行する処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
本開示の車両制御装置は、複数の運転支援アプリケーションから入力した複数の制御指令を調停した後、調停によって今回採用した新たな制御指令が要求する要求値と、調停によって前回採用した現在の制御指令に基づく指示が要求する要求値との間に、大きな乖離がある場合には、要求値について変化量の絶対値の許容上限を示す正の値であるガード値を用いて調停後の制御指令に基づく指示を作成する。これにより、ドライバーが違和感を覚えてしまうような車両の挙動に大きな変化が発生することを抑制できる。
【0010】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
[構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る車両制御装置20とその周辺部の機能ブロック図である。
図1に例示した機能ブロックは、複数の制御要求部11~13と、車両制御装置20と、パワートレイン制御部31と、ブレーキ制御部32と、ステアリング制御部33と、アクチュエータ41~43と、を備えている。これらの構成は、例えばCAN(Controller Area Network)やイーサネット(登録商標)等の車載ネットワークを介して通信可能に接続されている。なお、
図1の矢印は例示した情報の流れを模式的に表すものであり、実際の通信線の接続態様は限定されない。
【0012】
制御要求部11~13は、それぞれ、運転支援アプリケーションを実行することにより、自動運転や自動駐車、アダプティブクルーズコントロール、レーンキープアシスト、衝突軽減ブレーキ等の車両の運転支援機能を、アクチュエータ41~43に要求して実現するための構成(運転支援装置)である。制御要求部11~13は、CPU等のプロセッサとメモリとを有するECU(Electronic Control Unit)等のコンピューターによって実現される。複数の制御要求部11~13は、それぞれ異なる運転支援機能を実現し、同時に動作可能である。なお、車両に実装される制御要求部の数は、
図1に示した3つに限定されず、2つ以下又は4つ以上であってもよい。
【0013】
制御要求部11~13は、車両が備えるアクチュエータ41~43の動作を要求するための制御指令を出力する。制御要求部11~13は、それぞれ、車両の「走る」「曲がる」「止まる」といった車両の運動に関する制御内容の一部又は全部を、それぞれの運転支援機能に応じて決定し、制御指令として出力する。
【0014】
制御指令は、例えば「走る」「止まる」のための車両の進行方向の運動の要求値や、「曲がる」のための車両の横方向の運動の要求値等である。進行方向の運動の要求値は、具体的には、例えば、進行方向の車両の加速度を目標制御量として表現される。また、横方向の運動の要求値は、具体的には、例えば、ステアリングホイールの操舵角を目標制御量として表現される。
【0015】
また、制御指令には、要求値について変化量の絶対値の許容上限を示す値であるガード値(正の値)を含むことができる。このガード値は、要求値に対応して定められ、一例として、ドライバーが違和感を覚えてしまうような車両の挙動に大きな変化を発生させることがない、進行方向の運動の要求値の変化量及び横方向の運動の要求値の変化量に基づいて定められる。ガード値は、固定値であってもよいし可変値であってもよい。ガード値は、車両の速度や加速度などの状態に基づいて補正された可変値とすることが可能である。例えば、速度や加速度が比較的小さい場合にはガード値を高く補正して、車両挙動の変化に対する制限を弱めることができ、速度や加速度が比較的大きい場合にはガード値を低く補正して、車両挙動の変化に対する制限を強めることができる。
【0016】
車両制御装置20は、制御要求部11~13からの制御指令に基づいて車両の「走る」「曲がる」「止まる」といった車両の運動に関する制御内容を決定し、決定した制御内容に基づいて、パワートレイン制御部31、ブレーキ制御部32、及びステアリング制御部33(さらにはシフトポジションを制御する図示しないシフト制御部)に対して必要な指示を行って、車両の運動に関わるアクチュエータ41~43を適切に制御する運動マネージャーとして、あるいは運動マネージャーの一部として機能し、車両の運動を制御する。車両制御装置20は、あるいは専ら車両の横方向の運動を制御する装置であってもよい。車両の横方向の運動は、典型的にはステアリング装置の操舵を制御することによって実現できる。車両の進行方向の運動は、ブレーキ装置による制動力の発生、及びパワートレインによる駆動力又は制動力の発生を、単独又は組み合わせて制御することによって実現できる。この車両制御装置20は、調停部21と、ガード処理部25と、複数の指示出力部22~24とを、備えている。
【0017】
調停部21は、制御要求部11~13が出力する制御指令を取得し、この取得した制御指令を調停する。この調停部21は、調停処理として、例えば、取得した複数の制御指令の中から1つの制御指令を所定の選択基準に基づいて選択したり、取得した複数の制御指令に基づいて新たな制御指令を設定したりする。この調停した結果は、調停部21から各制御要求部11~13にフィードバックされてもよい。また、調停部21は、後述するパワートレイン制御部31、ブレーキ制御部32、及びステアリング制御部33から通知されるアクチュエータ41~43の動作状態や現在の動作可能な性能範囲であるアベイラビリティを表す情報に基づいて、調停を行ってもよい。調停部21の調停によって得られた制御指令は、ガード処理部25に出力される。
【0018】
ガード処理部25は、調停部21の調停により得られた制御指令(要求値、ガード値)に基づいて、さらには車両の状態に基づいて、運転支援アプリケーションによって要求される車両の運動に関する制御をパワートレイン制御部31、ブレーキ制御部32、及びステアリング制御部33の1つ又は2つ以上に指示するための最終的な要求値を決定する。この要求値の決定には、要求値に対応するガード値に基づいた制限(ガード処理)が加えられる。要求値の決定方法については後述する。ガード処理部25は、決定した要求値を指示出力部22~24に出力する。
【0019】
なお、ガード値は、調停部21が制御要求部11~13から制御指令として要求値と共に取得する場合を説明した。これに代えて、調停部21が制御要求部11~13から制御指令として要求値だけを取得し、この取得した要求値や車両の状態(速度、加速度など)に基づいて、ガード処理部25が要求値に対応するガード値(固定値又は可変値)を生成してもよい。
【0020】
指示出力部22は、ガード処理部25によって決定された要求値に基づいて、パワートレインを構成するアクチュエータ41に駆動力又は制動力を発生させるための指示を作成する。指示出力部22が作成した指示は、パワートレイン制御部31に出力される。
【0021】
指示出力部23は、ガード処理部25によって決定された要求値に基づいて、ブレーキ装置を構成するアクチュエータ42に制動力を発生させるための指示を作成する。指示出力部23が作成した指示は、ブレーキ制御部32に出力される。
【0022】
指示出力部24は、ガード処理部25によって決定された要求値に基づいて、ステアリング装置を構成するアクチュエータ43に操舵角を発生させるための指示を作成する。指示出力部24が作成した指示は、ステアリング制御部33に出力される。
【0023】
なお、上述したガード処理部25、指示出力部22、指示出力部23、及び指示出力部24は、
図1に示すように1つの指示部26を構成する。すなわち、制御指令に基づいて要求値を決定し、この要求値に基づく指示を作成する処理を、一例として1つの機能ブロックでまとめて行う。
【0024】
パワートレイン制御部31は、駆動アクチュエータの1つである、パワートレインを構成するアクチュエータ41の動作を制御することにより、指示出力部22から指示された駆動力を発生させる。パワートレイン制御部31は、パワートレインの構成に応じて、例えば、エンジン制御ECU、ハイブリッド制御ECU、トランスミッションECU等のいずれか又は組み合わせにより実現される。
図1ではパワートレイン制御部31の制御対象として1つのアクチュエータ41を示しているが、パワートレイン制御部31が制御するアクチュエータの数は、車両のパワートレインの構成に応じて2つ以上の場合もある。パワートレインを構成するアクチュエータ41の例としては、エンジン、駆動用モーター、クラッチ、トランスミッション、トルクコンバータ等が挙げられる。また、パワートレイン制御部31は、アクチュエータ41から出力された信号又はセンサーによる測定値に基づいて、アクチュエータ41の動作状態に関する情報を取得する。アクチュエータの動作状態に関する情報の例としては、アクチュエータのアベイラビリティを表す情報や、アクチュエータが実現している駆動力のモニター値を表す情報等が挙げられる。パワートレイン制御部31が取得したアクチュエータ41の動作状態に関する情報は、指示出力部22によって取得される。
【0025】
ブレーキ制御部32は、制動アクチュエータの1つである、各車輪に設けられたブレーキ装置を動作させるアクチュエータ42を制御することにより、指示出力部23から指示された制動力を発生させる。この制動アクチュエータには、油圧ブレーキやインホイールモーター(IWM)等の回生ブレーキが含まれる。ブレーキ制御部32は、例えば、ブレーキ制御ECUにより実現される。ブレーキ制御部32には、各車輪に設けられた車輪速センサーの出力値が入力される。また、ブレーキ制御部32は、アクチュエータ42から出力される信号又はセンサーによる測定値に基づいて、アクチュエータ42の動作状態に関する情報を取得する。アクチュエータ42の動作状態に関する情報としては、上述したアベイラビリティを表す情報や、アクチュエータ42が実現している制動力のモニター値を表す情報の他に、ブレーキパッドの温度が過熱方向に遷移しているか否か等のアクチュエータ42に固有の情報を例示できる。ブレーキ制御部32が取得したアクチュエータ42の動作状態に関する情報は、指示出力部23によって取得される。
【0026】
ステアリング制御部33は、操舵アクチュエータの1つである、電動パワーステアリング(EPS)が備えるアクチュエータ43を制御することにより、ステアリングの操舵角を制御する。ステアリング制御部33は、例えば、パワーステアリング制御ECUにより実現される。また、ステアリング制御部33は、アクチュエータ43から出力される信号又はセンサーによる測定値に基づいて、アクチュエータ43の動作状態に関する情報を取得する。アクチュエータ43の動作状態に関する情報の例としては、上述したアベイラビリティを表す情報や、アクチュエータ43が実現している操舵角のモニター値を表す情報等が挙げられる。ステアリング制御部33が取得したアクチュエータ43の動作状態に関する情報は、指示出力部24によって取得される。
【0027】
[制御]
図2をさらに参照して、本実施形態に係る車両制御装置20が実行する制御を説明する。
図2は、車両制御装置20が実行する制御を説明する処理フローチャートである。この
図2に示す制御処理は、例えば所定の周期で実行され得る。なお、車両制御装置20は、上述のように、制御要求部11~13からガード値を取得するだけでなく、自らガード値を生成することも可能であるが、ここでは、制御要求部11~13から要求値と共に要求値に対応するガード値を取得する例を説明する。
【0028】
ステップS201:車両制御装置20の調停部21は、制御要求部11~13が出力する制御指令として要求値及びその要求値に対応するガード値をそれぞれ取得し、この取得した複数の制御指令を調停する。制御指令が横方向の運動制御に関するものである場合には、要求値として操舵角が、ガード値として操舵角の変化量の許容上限値が、取得される。制御指令が進行方向の運動制御に関するものである場合には、要求値として加減速度が、ガード値として加減速度の変化量の許容上限値が、取得される。なお、一定の待機時間中に、制御要求部11~13から取得した制御指令が1つのみであれば、例えばこの1つの制御指令が調停後の制御指令として採用される。制御指令が調停されると、ステップS202に処理が進む。
【0029】
ステップS202:車両制御装置20のガード処理部25は、調停部21の調停によって前回採用した制御指令(現在の制御指令)に基づく指示が要求する要求値である第1要求値R1と、調停部21の調停によって今回採用した制御指令(新たな制御指令)が要求する要求値である第2要求値R2との差分(=R2-R1)を演算する。この演算によって、現在の制御指令から新たな制御指令へそのまま切り替えた際に要求値が変化する量を求めることができる。差分が演算されると、ステップS203に処理が進む。
【0030】
ステップS203:車両制御装置20のガード処理部25は、要求値の差分の絶対値(=|R2-R1|)が、新たな制御指令が要求する第2要求値R2のガード値G以上であるか否かを判断する。これにより、現在の制御指令から新たな制御指令へそのまま切り替えた際に、車両の挙動にガード値Gによって定めた変化よりも大きな変化が発生するか否かを判断することができる。要求値の差分の絶対値がガード値G以上である場合には(ステップS203、はい)、ステップS204に処理が進む。一方、要求値の差分の絶対値がガード値G未満である場合には(ステップS203、いいえ)、ステップS207に処理が進む。
【0031】
ステップS204:車両制御装置20のガード処理部25は、要求値の差分が正の値か否かを判断する。すなわち、ガード処理部25は、第2要求値R2が第1要求値R1よりも大きいか否かを判断する。これにより、要求値をガード処理する方向を判断することができる。要求値の差分が正の値である(第2要求値R2が第1要求値R1よりも大きい)場合には(ステップS204、はい)、ステップS205に処理が進む。一方、要求値の差分が負の値である(第2要求値R2が第1要求値R1よりも大きくない)場合には(ステップS204、いいえ)、ステップS206に処理が進む。
【0032】
ステップS205:車両制御装置20のガード処理部25は、現在の制御指令に基づく指示が要求する第1要求値R1に新たな制御指令が要求するガード値Gを加算した値(=R1+G)を算出し、この算出した値を最終的な要求値として決定する。要求値が決定されると、ステップS208に処理が進む。
【0033】
ステップS206:車両制御装置20のガード処理部25は、現在の制御指令に基づく指示が要求する第1要求値R1から新たな制御指令が要求するガード値Gを減算した値(=R1-G)を算出し、この算出した値を最終的な要求値として決定する。要求値が決定されると、ステップS208に処理が進む。
【0034】
ステップS207:車両制御装置20のガード処理部25は、新たな制御指令に基づく指示が要求する第2要求値R2を最終的な要求値として決定する。要求値が決定されると、ステップS208に処理が進む。
【0035】
上記ステップS205~S207において決定された要求値は、決定されるごとに車両制御装置20が有するメモリなどに保存され、次回に実行されるステップS202の処理において、差分の絶対値を演算するための現在の制御指令に基づく指示が要求する第1要求値R1として用いられる。
【0036】
ステップS208:車両制御装置20の指示出力部22~24は、ガード処理部25において決定された要求値に基づく指示を作成し、この作成した指示を調停後の制御指令に基づく指示としてパワートレイン制御部31、ブレーキ制御部32、及びステアリング制御部33の少なくとも1つに出力する。指示内容が操舵角の制御である場合には、指示出力部24によってステアリング制御部33に指示が出力される。指示内容が加減速度の制御である場合には、指示出力部22及び23の一方又は両方によってパワートレイン制御部31及びブレーキ制御部32の一方又は両方に指示が出力される。以上で本制御処理が終了する。
【0037】
[作用・効果]
以上のように、本開示の一実施形態に係る車両制御装置は、複数の運転支援アプリケーションから入力した複数の制御指令を調停した後、調停後の制御指令に基づく指示を、変化量の絶対値の許容上限を示すガード値(正の値)に基づいて導出した要求値に基づいて作成する。
【0038】
この制御によって、調停によって今回採用した新たな制御指令が要求する要求値と、調停によって前回採用した現在の制御指令に基づく指示が要求する要求値との間に、大きな乖離がある場合でも、現在の制御指令から新たな制御指令に切り替えて実行した際に、ドライバーが違和感を覚えてしまうような車両の挙動に大きな変化が発生することを抑制できる。
【0039】
以上、本開示技術の一実施形態を説明したが、本開示は、車両制御装置、プロセッサとメモリとを備えた車両制御装置が実行する制御方法、制御方法を実行するための制御プログラム、制御プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的記憶媒体、及び車両制御装置とアプリケーション実行部とアクチュエータ制御部とアクチュエータとを含めたシステム、あるいはシステムを搭載した車両として捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本開示は、車両の運動を制御する装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
11~13 制御要求部
20 車両制御装置
21 調停部
22~24 指示出力部
25 ガード処理部
26 指示部
31 パワートレイン制御部
32 ブレーキ制御部
33 ステアリング制御部
41~43 アクチュエータ