(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】走行状態判定装置及び走行状態判定方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2023114386
(22)【出願日】2023-07-12
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】田中 優介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 航
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-095915(JP,A)
【文献】特開2017-107299(JP,A)
【文献】特開2011-227551(JP,A)
【文献】特開2002-087107(JP,A)
【文献】特開2014-088166(JP,A)
【文献】特開2021-026762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像画像から抽出した道路区画線の位置と車両の位置との第1距離を特定する特定部と、
所定の時刻より第1時間前の時刻から前記所定の時刻において前記特定部が特定した複数の前記第1距離から、前記第1距離の最大値と前記第1距離の最小値との差を示す最大横変位を算出し、前記所定の時刻より、前記第1時間より長い第2時間前の時刻から前記所定の時刻における複数の前記最大横変位の統計量を算出する算出部と、
前記所定の時刻に算出した前記統計量を前記所定の時刻より単位時間前の時刻に算出した前記統計量で除算した除算値が閾値以上である場合に、前記車両のふらつきがあると判定する判定部と、
を有する走行状態判定装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記単位時間が経過するたびに、前記第1距離を特定し、
前記算出部は、前記単位時間が経過するたびに、前記最大横変位と前記統計量とを算出する、
請求項1に記載の走行状態判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、記憶部に記憶された、前記車両の前輪軸と後輪軸との距離に対応する閾値を参照することにより、当該距離に対応する前記閾値を特定し、
前記閾値は、前記車両の前輪軸と後輪軸との距離が第1軸間距離である場合、前記車両の前輪軸と後輪軸との距離が前記第1軸間距離よりも長い第2軸間距離である場合よりも大きい値を示す、
請求項1又は2に記載の走行状態判定装置。
【請求項4】
前記判定部は、記憶部に記憶された、前記車両の車幅に対応する閾値を参照することにより、当該車幅に対応する前記閾値を特定し、
前記閾値は、前記車両の車幅が第1車幅である場合、前記車両の車幅が前記第1車幅よりも広い第2車幅である場合よりも大きい値を示す、
請求項1又は2に記載の走行状態判定装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記車両の車速が所定の車速未満である場合、前記車両のふらつきがあるか否かを判定しない、
請求項1又は2に記載の走行状態判定装置。
【請求項6】
前記車両のふらつきがあると前記判定部が判定した場合、前記車両の運転者に前記車両のふらつきを警告する警告部をさらに有し、
前記警告部は、前記車両の車速が前記所定の車速未満である場合、前記車両のふらつきを前記運転者に警告しない、
請求項1又は2に記載の走行状態判定装置。
【請求項7】
前記単位時間が経過するたびに前記算出部が算出した前記最大横変位と前記統計量とを記憶する記憶部をさらに有し、
前記判定部は、前記車両が所定時間停止している場合は、前記記憶部が記憶した前記最大横変位と前記統計量とを消去させる、
請求項1又は2に記載の走行状態判定装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記単位時間が経過するたびに算出した前記最大横変位が所定の最大横変位以上である状態、又は前記単位時間が経過するたびに算出した前記統計量が所定の統計量以上である状態の少なくともいずれかが、前記所定の時刻より第3時間前の時刻から前記所定の時刻において所定の割合以上である場合に、前記車両のふらつきがあると判定する、
請求項1又は2に記載の走行状態判定装置。
【請求項9】
前記判定部は、記憶部に記憶された、前記車両の前輪軸と後輪軸との距離に対応する所定の割合を参照することにより、当該距離に対応する前記所定の割合を特定し、
前記所定の割合は、前記車両の前輪軸と後輪軸との距離が第1軸間距離である場合、前記車両の前輪軸と後輪軸との距離が前記第1軸間距離よりも長い第2軸間距離である場合よりも大きい値を示す、
請求項8に記載の走行状態判定装置。
【請求項10】
前記判定部は、記憶部に記憶された、前記車両の車幅に対応する所定の割合を参照することにより、当該車幅に対応する前記所定の割合を特定し、
前記所定の割合は、前記車両の車幅が第1車幅である場合、前記車両の車幅が前記第1車幅よりも広い第2車幅である場合よりも大きい値を示す、
請求項8に記載の走行状態判定装置。
【請求項11】
前記特定部は、前記車両が備える撮像機器が撮像した前記撮像画像から特定した、前記車両の車幅方向に設けられた道路区画線の位置と前記撮像機器の位置との第2距離から、前記撮像機器の位置と前記撮像機器の車幅方向における前記車両の側面又は前記車両の中央の位置との第3距離を減算することにより、第1距離を特定する、
請求項1又は2に記載の走行状態判定装置。
【請求項12】
コンピュータが実行する、
撮像画像から抽出した道路区画線の位置と車両の位置との第1距離を特定する特定工程と、
所定の時刻より第1時間前の時刻から前記所定の時刻において、前記特定工程において特定した複数の前記第1距離から、前記第1距離の最大値と前記第1距離の最小値との差を示す最大横変位を算出し、前記所定の時刻より、前記第1時間より長い第2時間前の時刻から前記所定の時刻における複数の前記最大横変位の統計量を算出する算出工程と、
前記所定の時刻に算出した前記統計量を前記所定の時刻より単位時間前の時刻に算出した前記統計量で除算した除算値が閾値以上である場合に、前記車両のふらつきがあると判定する判定工程と、
を有する走行状態判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行状態判定装置及び走行状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の覚醒度推定装置は、所定時間において検出した車幅方向の動作量(すなわち横変位)を周波数変換して得られたパワーの合計と、所定時間における所定の周波数に対応するパワーの最大値とから算出した評価値に基づいて、車両のふらつきを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来においては、検出した横変位が大きい場合に、覚醒状態では横変位が小さい運転をする運転者の覚醒状態が低下したことにより車両がふらつくと判定したか、覚醒状態であっても横変位が大きい運転をする運転者が運転したことにより車両がふらつくと判定したかを区別できない。その結果、運転者によっては、車両がふらつくような運転をしていないにもかかわらず、車両がふらつくと判定されてしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、車両のふらつきの誤判定を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る走行状態判定装置は、撮像画像から抽出した道路区画線の位置と車両の位置との第1距離を特定する特定部と、所定の時刻より第1時間前の時刻から前記所定の時刻において前記特定部が特定した複数の前記第1距離から、前記第1距離の最大値と前記第1距離の最小値との差を示す最大横変位を算出し、前記所定の時刻より、前記第1時間より長い第2時間前の時刻から前記所定の時刻における複数の前記最大横変位の統計量を算出する算出部と、前記所定の時刻に算出した前記統計量を前記所定の時刻より単位時間前の時刻に算出した前記統計量で除算した除算値が閾値以上である場合に、前記車両のふらつきがあると判定する判定部と、を有する。
【0007】
前記特定部は、前記単位時間が経過するたびに、前記第1距離を特定し、前記算出部は、前記単位時間が経過するたびに、前記最大横変位と前記統計量とを算出してもよい。
【0008】
前記判定部は、記憶部に記憶された、前記車両の前輪軸と後輪軸との距離に対応する閾値を参照することにより、当該距離に対応する前記閾値を特定し、前記閾値は、前記車両の前輪軸と後輪軸との距離が第1軸間距離である場合、前記車両の前輪軸と後輪軸との距離が前記第1軸間距離よりも長い第2軸間距離である場合よりも大きい値を示してもよい。
【0009】
前記判定部は、記憶部に記憶された、前記車両の車幅に対応する閾値を参照することにより、当該車幅に対応する前記閾値を特定し、前記閾値は、前記車両の車幅が第1車幅である場合、前記車両の車幅が前記第1車幅よりも広い第2車幅である場合よりも大きい値を示してもよい。
【0010】
前記判定部は、前記車両の車速が所定の車速未満である場合、前記車両のふらつきがあるか否かを判定しなくてもよい。
【0011】
前記車両のふらつきがあると前記判定部が判定した場合、前記車両の運転者に前記車両のふらつきを警告する警告部をさらに有し、前記警告部は、前記車両の車速が前記所定の車速未満である場合、前記車両のふらつきを前記運転者に警告しなくてもよい。
【0012】
前記単位時間が経過するたびに前記算出部が算出した前記最大横変位と前記統計量とを記憶する記憶部をさらに有し、前記判定部は、前記車両が所定時間停止している場合は、前記記憶部が記憶した前記最大横変位と前記統計量とを消去させてもよい。
【0013】
前記判定部は、前記単位時間が経過するたびに算出した前記最大横変位が所定の最大横変位以上である状態、又は前記単位時間が経過するたびに算出した前記統計量が所定の統計量以上である状態の少なくともいずれかが、前記所定の時刻より第3時間前の時刻から前記所定の時刻において所定の割合以上である場合に、前記車両のふらつきがあると判定してもよい。
【0014】
前記判定部は、記憶部に記憶された、前記車両の前輪軸と後輪軸との距離に対応する所定の割合を参照することにより、当該距離に対応する前記所定の割合を特定し、前記所定の割合は、前記車両の前輪軸と後輪軸との距離が第1軸間距離である場合、前記車両の前輪軸と後輪軸との距離が前記第1軸間距離よりも長い第2軸間距離である場合よりも大きい値を示してもよい。
【0015】
前記判定部は、記憶部に記憶された、前記車両の車幅に対応する所定の割合を参照することにより、当該車幅に対応する前記所定の割合を特定し、前記所定の割合は、前記車両の車幅が第1車幅である場合、前記車両の車幅が前記第1車幅よりも広い第2車幅である場合よりも大きい値を示してもよい。
【0016】
前記特定部は、前記車両が備える撮像機器が撮像した前記撮像画像から特定した、前記車両の車幅方向に設けられた道路区画線の位置と前記撮像機器の位置との第2距離から、前記撮像機器の位置と前記撮像機器の車幅方向における前記車両の側面又は前記車両の中央の位置との第3距離を減算することにより、第1距離を特定してもよい。
【0017】
本発明の第2の態様に係る走行状態判定方法は、コンピュータが実行する、撮像画像から抽出した道路区画線の位置と車両の位置との第1距離を特定する特定工程と、所定の時刻より第1時間前の時刻から前記所定の時刻において、前記特定工程において特定した複数の前記第1距離から、前記第1距離の最大値と前記第1距離の最小値との差を示す最大横変位を算出し、前記所定の時刻より、前記第1時間より長い第2時間前の時刻から前記所定の時刻における複数の前記最大横変位の統計量を算出する算出工程と、前記所定の時刻に算出した前記統計量を前記所定の時刻より単位時間前の時刻に算出した前記統計量で除算した除算値が閾値以上である場合に、前記車両のふらつきがあると判定する判定工程と、を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両のふらつきの誤判定を抑制するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。
【
図2】撮像機器11の位置と道路区画線の位置とを説明するための図である。
【
図3】車両Sのふらつきを判定する動作を説明するための図である。
【
図4】走行状態判定装置30における処理シーケンスの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<車両Sの概要>
図1は、本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。
図1に示す車両Sは、速度センサ10と、撮像機器11と、表示部20と、出音部21と、走行状態判定装置30と、を備える。車両Sは、車両Sが走行する道路の道路区画線(例えば、白線)の位置と車両Sの位置との距離に基づいて、車両Sがふらつきながら走行しているか否かを判定する機能を有する。本実施形態において車両Sが判定する車両Sのふらつきは、例えば、覚醒状態が低下した運転者が運転することに起因するふらつき(一例として、居眠り運転による車両Sのふらつき)である。
【0021】
速度センサ10は、車両Sの速度を検出するためのセンサである。撮像機器11は、単眼カメラ等のカメラであり、例えば、車両Sの前方の上部に設けられている。撮像機器11は、単位時間(例えば、0.1秒)が経過するたびに、車両Sが走行する道路の道路区画線を撮像した撮像画像に基づいて、撮像機器11の位置と道路区画線の位置との距離を特定する。
【0022】
表示部20は、速度、燃料の残量、時刻又は気温等の情報を表示するディスプレイであり、車両Sがふらつきながら走行していると判定した場合は警告画像又は警告ランプを表示する。表示部20は、車両Sのインストルメントパネルに設けられているが、運転手が使用する情報端末に設けられていてもよい。出音部21は、スピーカであり、車両Sがふらつきながら走行していると判定した場合は警告音を出音する。出音部21は、例えば、車両Sのインストルメントパメルの周囲に設けられている。
【0023】
走行状態判定装置30は、撮像機器11が特定した、撮像機器11の位置と車両Sの位置との距離に基づいて、車両Sがふらつきながら走行していると判定した場合には、警告画像又は警告ランプを表示部20に表示させるとともに、警告音を出音部21に出音させる処理を実行する。走行状態判定装置30は、電子部品を含む筐体を有していてもよく、電子部品が実装されたプリント基板であってもよい。
【0024】
ところで、車両Sのふらつきは、単位時間が経過するたびに撮像機器11が特定した、撮像機器11の位置と道路区画線の位置との距離の変化量に基づいて判定できる。変化量は、例えば、所定の時刻に撮像機器11が特定した撮像機器11の位置と道路区画線の位置との距離と、所定の時刻より単位時間前の時刻に撮像機器11が特定した撮像機器11の位置と道路区画線の位置との距離との差であり、いわゆる横変位である。一例として、所定の時刻は、現在時刻又は現在時刻の直前の時刻である。すなわち、単位時間が経過するたびに、変化量が所定値よりも大きいか否かを特定し、変化量が所定値よりも大きい場合に車両Sがふらつきながら走行していると判定できる。しかしながら、この場合、覚醒状態では横変位が小さい運転をする運転者の覚醒状態が低下したことにより横変位が大きいのか、覚醒状態であっても横変位が大きい運転をする運転者が運転をしたことにより横変位が大きいのかを区別することができない。
【0025】
そこで、走行状態判定装置30は、単位時間が経過するたびに、所定の時刻から第1時間(例えば、10秒)前までの時刻に特定した、道路区画線の位置と車両Sの位置との距離の最大値と最小値との差(以下、「最大横変位」という)を算出する。そして、走行状態判定装置30は、単位時間が経過するたびに、所定の時刻から第2時間(例えば、120秒)前までの時刻に算出した複数の最大横変位の統計量(例えば、平均値)を算出する。さらに、走行状態判定装置30は、単位時間が経過するたびに、所定の時刻において算出した統計量を所定の時刻より単位時間前の時刻に算出した統計量で除算した除算値(以下、「増加率」という場合がある)を算出する。増加率が閾値以上である場合、走行状態判定装置30は、車両Sのふらつきがあると判定する。
【0026】
走行状態判定装置30が上記のように動作することで、覚醒状態であっても横変位が大きい運転をする場合は、最大横変位が大きい状態が継続するため、統計量も大きい状態が継続することにより増加率が閾値未満になり、車両Sがふらついていないと判定できる。その結果、車両Sがふらつくと判定した場合は、覚醒状態が低下した運転者が運転することに起因する車両Sのふらつきである確率が高くなるため車両Sのふらつきを誤判定することを抑制できる。
以下、走行状態判定装置30の構成及び動作を詳細に説明する。
【0027】
<走行状態判定装置30の構成>
走行状態判定装置30は、記憶部31と、制御部32と、を有する。制御部32は、取得部321と、特定部322と、算出部323と、判定部324と、警告部325と、を有する。
【0028】
記憶部31は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部31は、制御部32が実行するプログラムを記憶している。記憶部31は、制御部32が車両Sのふらつきを判定するための各種の情報を記憶している。
【0029】
制御部32は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はECU(Electronic Control Unit)等のプロセッサである。制御部32は、記憶部31に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部321、特定部322、算出部323、判定部324及び警告部325として機能する。なお、制御部32は、1つのプロセッサで構成されていてもよいし、複数のプロセッサ又は1以上のプロセッサと電子回路との組み合わせにより構成されていてもよい。
以下、制御部32により実現される各部の構成を説明する。
【0030】
取得部321は、速度センサ10が検出した車両Sの車速を取得する。取得部321は、例えば、単位時間が経過するたびに車両Sの車速を取得する。取得部321は、速度センサ10が検出した車速を、速度センサ10から取得した時刻と関連付けて記憶部31に記憶させる。取得部321は、単位時間が経過するたびに撮像機器11が特定した、撮像機器11の位置と車両Sが走行する道路の道路区画線の位置との距離を取得する。単位時間は、例えば、0.1秒である。取得部321は、撮像機器11から取得した距離を、撮像機器11から取得した時刻と関連付けて記憶部31に記憶させる。
【0031】
図2は、撮像機器11の位置と道路区画線の位置とを説明するための図である。
図2においては、撮像機器11と、車両Sと、車両Sの進行方向に対して左側に設けられた道路区画線WLと、車両Sの進行方向に対して右側に設けられた道路区画線WRと、が示されている。
図2において、撮像機器11は、車幅方向における車両Sの中央に設置されているが、異なる位置に設置されていてもよい。本実施形態においては、撮像機器11が道路区画線WLの位置を特定する場合の動作を説明する。
図2において、取得部321は、車両Sの車幅方向に設けられた道路区画線WLの位置と撮像機器11の位置との距離L2を取得する。取得部321は、距離L2が、道路区画線WL又は道路区画線WRのうち、道路区画線WLに対応する距離であることを示すフラグ情報を、距離L2とともに取得してもよい。
【0032】
特定部322は、撮像機器11が撮像画像から抽出した道路区画線WLの位置と、車両Sの位置との距離L1を特定する。車両Sの位置は、例えば、車両Sの側面の位置である。特定部322は、例えば、単位時間が経過するたびに距離L1を特定する。特定部322は、例えば、取得部321から、撮像機器11が撮像した撮像画像から特定した、車両Sの車幅方向に設けられた道路区画線WLの位置と撮像機器11の位置との距離L2を取得する。そして、特定部322は、距離L2から、撮像機器11の位置と、撮像機器11の車幅方向における、進行方向に対して車両Sの左側面の位置との距離L3を減算することにより、距離L1を特定する。距離L3は、記憶部31に記憶されている。また、距離L3は、撮像機器11の位置と車両Sの左側面の位置との距離に限らない。距離L3は、例えば、撮像機器11の位置と車両Sの中央の位置との距離であってもよい。
【0033】
算出部323は、所定の時刻より第1時間前の時刻から所定の時刻において特定部322が特定した複数の距離L1から、距離L1の最大値と距離L1の最小値との差を示す最大横変位を算出する。第1時間は、0.1Hz近傍の周波数に対応する周期で最大横変位を算出できる時間であり、例えば、10秒である。算出部323は、例えば、単位時間が経過するたびに、最大横変位を算出する。
【0034】
図3は、車両Sのふらつきを判定する動作を説明するための図である。
図3(a)は、時刻ごとの距離L1を示す。
図3(b)は、時刻ごとの最大横変位を示す。
図3(c)は、時刻ごとの統計量を示す。
図3(d)は、時刻ごとの増加率を示す。
図3(a)、
図3(b)、
図3(c)及び
図3(d)の横軸は時刻を示す。
図3(a)の縦軸は距離L1を示し、
図3(b)の縦軸は最大横変位を示し、
図3(c)の縦軸は統計量を示し、
図3(d)の縦軸は増加率を示す。
図3(d)においては、閾値DTが示されている。
図3(c)に示す統計量、
図3(d)に示す増加率と閾値DTとについては、後述する。
【0035】
例えば、
図3(a)に示す時刻T2おいて、算出部323は、時刻T2より第1時間前の時刻T0から時刻T2までに特定部322が特定した複数の距離L1から、
図3(b)に示す最大横変位H0を算出する。続いて、
図3(a)に示す、時刻T2から単位時間が経過した時刻T3において、算出部323は、時刻T3より第1時間前の時刻T1から時刻T3までに特定部322が特定した複数の距離L1から、
図3(b)に示す最大横変位H1を算出する。算出部323は、単位時間が経過するたびに、上記の動作を繰り返す。算出部323は、算出した最大横変位を記憶部31に記憶させる。
【0036】
覚醒状態が低下した運転者が運転することにより車両Sの横変位(すなわち、所定の時刻の距離L1と所定の時刻より単位時間前の時刻の距離L1との変化量)が大きくなる周期は、10秒近傍であることが知られている。そこで、算出部323が上記のように、単位時間が経過するたびに第1時間(例えば10秒)における最大横変位を算出することで、判定部324が、運転者の覚醒状態の低下に起因する車両Sのふらつきを判定しやすくなる。
【0037】
算出部323は、所定の時刻より、第1時間より長い第2時間前の時刻から所定の時刻における複数の最大横変位の統計量を算出する。算出部323は、例えば、単位時間が経過するたびに統計量を算出する。第2時間は、実験又はシミュレーションにより決定された時間であり、例えば、120秒である。統計量は、平均値、中央値、最大値又はFFT(Fast Fourier Transform)を用いて算出した周波数特性を示す値のいずれかである。
【0038】
例えば、
図3(b)に示す時刻T2において、算出部323は、時刻T2より第2時間前の時刻T4から時刻T2までに算出部323が算出した複数の最大横変位から、
図3(c)に示す統計量A0を算出する。続いて、
図3(b)に示す、時刻T2から単位時間が経過した時刻T3において、算出部323は、時刻T3より第2時間前の時刻T5から時刻T3までに算出部323が算出した複数の最大横変位から、
図3(c)に示す統計量A1を算出する。算出部323は、単位時間が経過するたびに、上記の動作を繰り返す。算出部323は、算出した統計量を記憶部31に記憶させる。
【0039】
運転者は、覚醒状態であるにもかかわらず操作を一時的に誤り、操舵角を大きくする操作を行った直後に操舵角を小さくする場合がある。このような誤操作が発生した場合、誤操作が発生した時刻を含む第1時間において算出した最大横変位は大きくなる。そこで、算出部323が上記のように、第2時間における最大横変位の統計量(例えば、平均値又は中央値)を算出することで、瞬間的に大きくなった最大横変位の影響が小さい値を用いて、判定部324が車両Sのふらつきを判定できる。その結果、判定部324が、覚醒状態にある運転者の誤操作による車両Sのふらつきを除外しやすくなる。
【0040】
判定部324は、所定の時刻に算出した統計量を所定の時刻より単位時間前の時刻に算出した統計量で除算した除算値である増加率が閾値DT以上である場合に、車両Sのふらつきがあると判定する。閾値DTは、誤って警報を発する蓋然性を低くするために、実験又はシミュレーションにより決定された値であり、例えば1.5である。一例として、判定部324は、単位時間が経過するたびに、車両Sのふらつきがあるか否かを判定する。
【0041】
例えば、
図3(c)に示す時刻T2において、判定部324は、算出部323が時刻T2において算出した統計量A0を、算出部323が時刻T2より単位時間前の時刻T6において算出した統計量A2で除算することにより、
図3(d)に示す増加率D0を算出する。判定部324は、増加率D0が閾値DT未満であることにより、車両Sのふらつきがないと判定する。続いて、
図3(c)に示す時刻T3において、判定部324は、算出部323が時刻T3において算出した統計量A1を、算出部323が時刻T3より単位時間前の時刻T2において算出した統計量A0で除算することにより、
図3(d)に示す増加率D1を算出する。判定部324は、増加率D1が閾値DT以上であることにより、車両Sのふらつきがあると判定する。
【0042】
判定部324がこのように動作することで、覚醒状態であっても車両Sがふらつきやすい運転をする運転者が運転した場合は、最大横変位の統計量が大きい状態が継続するため、増加率が閾値DT未満になり、車両Sのふらつきがないと判定できる。その結果、運転者の覚醒状態が低下したことに起因する車両Sのふらつきを判定しやすくなるため、車両Sのふらつきの誤判定を抑制できる。
【0043】
ところで、車両Sの前輪軸と後輪軸との距離(いわゆる、ホイールベース)と車幅とは、車両Sの種類により異なる。そして、車両Sの走行時の安定性は、ホイールベースの長さ又は車幅に応じて異なるため、運転者が同じ車線で同じ操作を行ったとしても、車両Sの種類に応じて最大横変位、統計量、及び増加率は異なる。そこで、判定部324は、ホイールベース及び車幅の少なくともいずれかに基づいて、
図3(d)に示す閾値DTの値を特定してもよい。
【0044】
判定部324は、例えば、記憶部31に記憶された、ホイールベースに対応する閾値DTを参照することにより、車両Sのホイールベースに対応する閾値DTを特定する。車両Sは、ホイールベースが短いほど安定性が低くなるため、記憶部31に記憶された閾値DTは、ホイールベースが短いほど大きい値を示す。例えば、閾値DTは、車両Sのホイールベースが第1軸間距離である場合、当該ホイールベースが第1軸間距離よりも長い第2軸間距離である場合よりも大きい値を示す。閾値DTは、ホイールベースを複数の範囲で区切る場合、各範囲に対応する値であってもよい。例えば、閾値DTは、当該範囲が短い値を示す範囲であるほど、大きい値を示す。
【0045】
一例として、判定部324は、記憶部31に記憶された車両情報を参照することにより車両Sのホイールベースを特定し、記憶部31に記憶された複数の閾値DTのうち当該ホイールベースに対応する閾値DTを特定する。そして、判定部324は、算出した増加率が、特定した閾値DT以上であるか否かを特定することにより、車両Sのふらつきを判定する。判定部324がこのように動作することで、車両Sごとにホイールベースに応じた閾値DTを記憶部31に記憶させる手間を省略できる。さらに、判定部324は、ホイールベースに基づく車両Sの安定性を考慮して車両Sのふらつきを判定できるため、当該判定の精度を向上させることができる。
【0046】
また、判定部324は、例えば、記憶部31に記憶された、車両Sの車幅に対応する閾値DTを参照することにより、車両Sの車幅に対応する閾値DTを特定する。車両Sは、車幅が狭いほど安定性が低くなるため、記憶部31に記憶された閾値DTは、車幅が狭いほど大きい値を示す。例えば、閾値DTは、車両Sの車幅が第1車幅である場合、当該車両Sの車幅が第1車幅よりも広い第2車幅である場合よりも大きい値を示す。閾値DTは、車幅を複数の範囲で区切る場合、各範囲に対応する値であってもよい。例えば、閾値DTは、当該範囲が狭い値を示す範囲であるほど、大きい値を示す。
【0047】
一例として、判定部324は、記憶部31に記憶された車両情報を参照することにより、車両Sの車幅を特定し、記憶部31に記憶された複数の閾値DTのうち当該車幅に対応する閾値DTを特定する。そして、判定部324は、算出した増加率が、特定した閾値DT以上であるか否かを判定することにより、車両Sのふらつきを判定する。判定部324がこのように動作することで、車両Sごとに車幅に応じた閾値DTを記憶部31に記憶させる手間を省略できる。さらに、判定部324は、車幅に基づく車両Sの安定性を考慮して車両Sのふらつきを判定できるため、当該判定の精度を向上させることができる。
【0048】
運転者は、一般道路のように分岐点が多く低速で走行する車線よりも、高速道路又は幹線道路のように分岐点が少なく高速で走行する車線の方が、覚醒状態が低下しやすくなる。そこで、判定部324は、車両Sの車速が所定の車速以上の場合に、車両Sのふらつきを判定してもよい。所定の車速は、例えば、時速60キロである。判定部324は、例えば、取得部321が速度センサ10から取得した車両Sの車速が所定の車速以上である場合、車両Sのふらつきがあるか否かを判定し、車両Sの車速が所定の車速未満である場合、車両Sのふらつきがあるか否かを判定しない。判定部324がこのように動作することで、車両Sのふらつきを判定する必要性が高い場合に限り車両Sのふらつきを判定することができるため、処理の負荷を軽減することができる。
【0049】
例えば、車両Sが信号又は交通渋滞により停止している場合に、単位時間が経過するたびに特定部322が特定した距離L1に基づいて、算出部323が最大横変位と統計量とを算出し、記憶部31に記憶させたとする。そして、信号の変化又は交通渋滞の解消により車両Sが移動を開始させると、移動を開始した直後の最大横変位及び統計量は、車両Sが停止した際の値を含むため、車両Sのふらつきを判定する精度が低下する。そこで、判定部324は、車両Sが停止した場合に記憶部31に記憶させた最大横変位及び統計量を消去させてもよい。
【0050】
判定部324は、例えば、取得部321が速度センサ10から取得した車速が0であることを特定した場合、取得部321が0を示す車速を取得した時刻を特定する。判定部324は、特定した時刻から所定時間、取得部321が取得した車速が0である場合は、車両Sが所定時間停止していると判定する。所定時間は、例えば、第1時間に相当する時間(10秒)である。判定部324は、車両Sが所定時間停止している場合は、記憶部31が記憶した、単位時間が経過するたびに算出部323が算出した最大横変位と統計量とを消去させる。判定部324がこのように動作することで、車両Sが停止している際の距離L1に基づく最大横変位及び統計量を除外して、車両Sのふらつきを判定できるため、車両Sのふらつきを誤判定する蓋然性を低くすることができる。
【0051】
警告部325は、車両Sがふらついていると判定部324が判定した場合、警告画像又は警告ランプの表示、及び警告音の出音の少なくともいずれかを実行させることにより、運転者に車両Sのふらつきを警告する。警告部325は、例えば、車両Sがふらついていると判定部324が判定した場合、表示部20に警告画像又は警告ランプを表示させる。警告部325は、車両Sがふらついていると判定部324が判定した場合、出音部21に警告音を出音させる。
【0052】
警告部325は、例えば、車両Sの車速が所定の速度以上である場合、判定部324が車両Sのふらつきがあると判定したことにより、運転者に警告をする。一方、警告部325は、車両Sの車速が所定の車速未満である場合、判定部324が車両Sのふらつきがあると判定したとしても、車両Sのふらつきを運転者に警告しない。警告部325がこのように動作することで、分岐点が多く低速で走行する一般道路のような覚醒状態が低下しにくい車線において、警告を発することを抑制できる。その結果、警告部325は、適切な車線及び適切なタイミングで運転者に警告をすることができる。
【0053】
<走行状態判定装置30における処理シーケンス>
図4は、走行状態判定装置30における処理シーケンスの例を示す図である。
図4に示す処理シーケンスは、走行状態判定装置30が、走行中の車両Sのふらつきを判定する動作を示す。走行状態判定装置30は、
図4に示す処理シーケンスを、単位時間が経過するたびに実行する。
【0054】
取得部321は、撮像機器11が撮像した撮像画像から特定した、車両Sの車幅方向に設けられた道路区画線WLの位置と撮像機器11の位置との距離L2を取得する(S11)。特定部322は、取得部321が取得した距離L2から、撮像機器11の位置と、撮像機器11の車幅方向における、進行方向に対して車両Sの左側面の位置との距離L3を減算することにより、道路区画線WLの位置と車両Sの位置との距離L1を特定する(S12)。特定部322は、特定した距離L1と当該距離L1を特定した時刻とを記憶部31に記憶させる。
【0055】
算出部323は、所定の時刻から第1時間前の時刻から所定の時刻において特定部322が特定した複数の距離L1から、距離L1の最大値と距離L1の最小値との差を示す最大横変位を算出する(S13)。算出部323は、算出した最大横変位と当該最大横変位を算出した時刻とを記憶部31に記憶させる。算出部323は、所定の時刻から第2時間前の時刻から所定の時刻における複数の最大横変位の統計量を算出する(S14)。
【0056】
判定部324は、所定の時刻に算出部323が算出した統計量を、所定の時刻から単位時間前に算出部323が算出した統計量で除算した増加率を算出する(S15)。判定部324は、算出した増加率を記憶部31に記憶させる。判定部324は、算出した増加率が閾値DT以上である場合(S16のYES)、車両Sのふらつきがあると判定する(S17)。一方、判定部324は、算出した増加率が閾値DT未満である場合(S16のNO)、車両Sのふらつきがないと判定する(S18)。
【0057】
<第1変形例>
以上の説明においては、判定部324が、所定の時刻に算出した増加率が閾値DT以上であるか否かを特定することにより、車両Sのふらつきを判定する動作を例示したが、これに限らない。判定部324は、単位時間が経過するたびに算出する最大横変位が所定の最大横変位以上である状態又は単位時間が経過するたびに算出する統計量が所定の統計量以上である状態の少なくともいずれかが、所定の時間において所定の割合以上である場合に、車両Sのふらつきを判定してもよい。所定の最大横変位、及び所定の統計量は、実験又はシミュレーションにより決められた値であり、記憶部31に記憶されている。所定の割合は、記憶部31に記憶された、実験又はシミュレーションにより決められた値であり、例えば、最大値を1とすると、0.33(すなわち33%)である。
【0058】
判定部324は、例えば、単位時間が経過するたびに、算出した最大横変位が記憶部31に記憶された所定の最大横変位以上であるか否かを判定する。判定部324は、単位時間が経過するたびに、算出した統計量が記憶部31に記憶された所定の統計量以上であるか否かを判定する。そして、判定部324は、所定の時刻(例えば、現在の時刻)より第3時間前の時刻から所定の時刻において、最大横変位が所定の最大横変位以上である状態の第1割合と統計量が所定の統計量以上である状態の第2割合とを特定する。第3時間は、実験又はシミュレーションにより決められた時間であり、例えば、第1時間以上かつ第2時間以下の時間である。判定部324は、特定した第1割合又は第2割合の少なくともいずれかが、記憶部31に記憶された所定の割合以上である場合に、車両Sのふらつきがあると判定する。判定部324がこのように動作することで、運転者が操作を一時的に誤ったことにより最大横変位及び統計量が所定値以上である状態が一時的に発生したとしても、車両Sのふらつきがないと判定できるため、車両Sのふらつきを判定する精度を向上させることができる。
【0059】
さらに、判定部324は、車両Sの走行時の安定性に係るホイールベース又は車幅の少なくともいずれかに応じて、車両Sのふらつきを判定するための所定の割合を特定してもよい。判定部324は、例えば、記憶部31に記憶された、ホイールベースに対応する所定の割合を参照することにより、ホイールベースに対応する所定の割合を特定する。車両Sは、ホイールベースが短いほど安定性が低くなることにより、運転者が操作を誤りやすくなるため、記憶部31に記憶された所定の割合は、車両Sのホイールベースが短いほど大きい値を示す。例えば、所定の割合は、車両Sのホイールベースが第1軸間距離である場合、当該ホイールベースが第1軸間距離よりも長い第2軸間距離である場合よりも大きい値を示す。所定の割合は、ホイールベースを複数の範囲で区切る場合、各範囲に対応する値であってもよい。例えば、所定の割合は、当該範囲が短い値を示す範囲であるほど、大きい値を示す。
【0060】
また、判定部324は、例えば、記憶部31に記憶された、車両Sの車幅に対応する所定の割合を参照することにより、車両Sの車幅に対応する所定の割合を特定する。車両Sは、車幅が狭いほど安定性が低くなることにより、運転者が操作を誤りやすくなるため、記憶部31に記憶された所定の割合は、車両Sの車幅が狭いほど大きい値を示す。例えば、所定の割合は、車両Sの車幅が第1車幅である場合、当該車両Sの車幅が第1車幅よりも広い第2車幅である場合よりも大きい値を示す。所定の割合は、車幅を複数の範囲で区切る場合、各範囲に対応する値であってもよい。例えば、所定の割合は、当該範囲が狭い値を示す範囲であるほど、大きい値を示す。上記のように判定部324が車両Sのホイールベース又は車幅の少なくともいずれかに応じて所定の割合を特定することで、車両Sの安定性を考慮して車両Sのふらつきを判定できるため、当該判定の精度を向上させることができる。
【0061】
<第2変形例>
以上の説明においては、特定部322が、進行方向に対して車両Sの左側の道路区画線WLの位置と進行方向に対して車両Sの左側面の位置との距離L1を特定する動作を例示したが、これに限らない。
図2に示すように、特定部322は、進行方向に対して車両Sの右側の道路区画線WRの位置と進行方向に対して車両Sの右側面の位置との距離R1を特定してもよい。
【0062】
例えば、取得部321は、
図2において、撮像機器11が特定した、車両Sの進行方向に対して右側の道路区画線WRの位置と撮像機器11の位置との距離R2を取得する。特定部322は、取得部321が取得した距離R2から、撮像機器11の車幅方向における、車両Sの進行方向に対して車両Sの右側面又は車両Sの中央の位置と撮像機器11の位置との距離R3を減算することにより、距離R1を特定する。
【0063】
また、特定部322は、取得部321が取得した距離L2又は距離R2とともに取得したフラグ情報に基づいて、距離L1又は距離R1のどちらを特定するかを決定してもよい。特定部322は、例えば、取得部321が取得した距離L2又は距離R2に対応するフラグ情報を参照することにより、取得部321が取得した距離が道路区画線WLに対応する距離か道路区画線WRに対応する距離かを特定する。取得部321が道路区画線WLに対応する距離L2を取得した場合、特定部322は距離L1を特定し、取得部321が道路区画線WRに対応する距離R2を取得した場合、特定部322は、距離R1を特定する。特定部322がこのように動作することで、車両Sの左右の道路区画線のうち一方の道路区画線を撮像機器11が特定できない場合であっても、他方の道路区画線に基づいて車両Sの位置と道路区画線の位置との距離を特定できる。
【0064】
<走行状態判定装置30による効果>
以上説明したように、走行状態判定装置30は、単位時間が経過するたびに、撮像画像から抽出した道路区画線の位置と車両Sの位置との第1距離を特定する特定部322と、単位時間が経過するたびに、所定の時刻より第1時間前の時刻から所定の時刻において特定部322が特定した複数の第1距離から、第1距離の最大値と第1距離の最小値との差を示す最大横変位を算出し、所定の時刻より、第1時間より長い第2時間前の時刻から所定の時刻における複数の最大横変位の統計量を算出する算出部323と、所定の時刻に算出した統計量を所定の時刻より単位時間前の時刻に算出した統計量で除算した除算値(増加率)が閾値DT以上である場合に、車両Sのふらつきがあると判定する判定部324と、を有する。
【0065】
走行状態判定装置30がこのように構成されることで、覚醒状態であっても車両Sがふらつきやすい運転をする運転者が運転したことにより車両Sがふらついた場合は、増加率が閾値DT未満になるため、車両がふらついていないと判定できる。その結果、車両Sがふらつくと判定した場合は、覚醒状態では車両Sがふらつきにくい運転をする運転者の覚醒状態が低下したことにより車両Sがふらつくと判定した確率が高くなるため、覚醒状態の低下による車両Sのふらつきを判定する精度を向上できる。
【0066】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0067】
10 速度センサ
11 撮像機器
20 表示部
21 出音部
30 走行状態判定装置
31 記憶部
32 制御部
321 取得部
322 特定部
323 算出部
324 判定部
325 警告部
【要約】
【課題】車両のふらつきの誤判定を抑制する。
【解決手段】走行状態判定装置30は、撮像画像から抽出した道路区画線の位置と車両の位置との第1距離を特定する特定部322と、所定の時刻より第1時間前の時刻から所定の時刻において特定部322が特定した複数の第1距離から、第1距離の最大値と第1距離の最小値との差を示す最大横変位を算出し、所定の時刻より、第1時間より長い第2時間前の時刻から所定の時刻における複数の最大横変位の統計量を算出する算出部323と、所定の時刻に算出した統計量を所定の時刻より単位時間前の時刻に算出した統計量で除算した除算値が閾値以上である場合に、車両のふらつきがあると判定する判定部324と、を有する。
【選択図】
図1