(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】浄化システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20241016BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
F01N3/08 B
F01N3/28 301F
(21)【出願番号】P 2023138211
(22)【出願日】2023-08-28
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】藤井 謙治
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0292964(US,A1)
【文献】特開2021-127713(JP,A)
【文献】特開2013-124608(JP,A)
【文献】特開2022-094444(JP,A)
【文献】特表2004-511711(JP,A)
【文献】特開2013-124610(JP,A)
【文献】特開2013-124609(JP,A)
【文献】特開2013-124552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気が通る排気管路と、
前記排気管路に設けられて、前記排気に含まれる粒子状物質を捕集する第1浄化装置と、
前記排気管路において前記第1浄化装置と前記エンジンとの間に設けられ前記排気に含まれる窒素酸化物を浄化する第2浄化装置と、
前記排気管路における前記第1浄化装置の下流に設けられ、前記排気に含まれる窒素酸化物を浄化する第3浄化装置と、
前記排気管路における前記第1浄化装置と前記第2浄化装置との間から、前記排気管路における前記第2浄化装置の上流に前記排気を還流する還流管路と、
前記第2浄化装置を通過した前記排気を、前記還流管路を通して前記排気管路における前記第2浄化装置の上流に還流するか否かを切り替える制御弁を制御する弁制御部と、
を有
し、
前記弁制御部は、前記第3浄化装置の触媒が不活性状態の場合に、前記第2浄化装置を通過した前記排気を前記第2浄化装置の上流に還流させるように前記制御弁を制御する浄化システム。
【請求項2】
前記第2浄化装置の下流から還流された排気及び前記エンジンから排出された排気を前記第2浄化装置に供給するか、前記エンジンから排出された排気を前記第2浄化装置に供給せずに前記還流管路に供給するかを切り替える切替弁と、を有し、
前記弁制御部は、前記第3浄化装置の触媒が活性状態の場合に、前記エンジンから排出された排気を前記第2浄化装置に供給せずに前記還流管路に供給するように前記切替弁を制御する、
請求項
1に記載の浄化システム。
【請求項3】
前記弁制御部は、前記第3浄化装置の触媒が不活性状態であり、かつ前記第2浄化装置に貯蔵されているアンモニアが前記第2浄化装置から排出されるリスクが所定値以上の場合、前記第2浄化装置を通過した排気の一部を前記第2浄化装置の上流に還流するように前記制御弁及び前記切替弁を制御する、
請求項
2に記載の浄化システム。
【請求項4】
前記弁制御部は、前記第3浄化装置の触媒が不活性状態であり、前記リスクが前記所定値未満の場合、前記エンジンから排出された排気を前記第2浄化装置に供給するように前記切替弁を制御し、前記第2浄化装置を通過した排気を前記還流管路に供給せずに前記第1浄化装置に供給するように前記制御弁を制御する、
請求項
3に記載の浄化システム。
【請求項5】
前記還流管路に設けられて、前記第3浄化装置の触媒が不活性状態の場合に動作して、前記第2浄化装置を通過した前記排気の一部を前記排気管路における前記第2浄化装置の上流に還流するポンプを有する、
請求項
2から
4のいずれか一項に記載の浄化システム。
【請求項6】
前記還流管路を流れる排気が前記ポンプを迂回するように設けられた迂回管路と、
前記エンジンから排出されて前記第2浄化装置に至る前の排気を、前記迂回管路を通して前記第2浄化装置の下流に供給するか否かを切り替える迂回弁と、を有し、
前記弁制御部は、前記第3浄化装置の触媒が活性状態である場合、前記エンジンから排出されて前記第2浄化装置に至る前の排気を、前記ポンプを迂回する前記迂回管路を通過して前記第2浄化装置の下流に供給するように前記迂回弁を制御する、
請求項
5に記載の浄化システム。
【請求項7】
前記ポンプは、
前記排気を送り出す向きを変更可能な回転容積型ポンプであり、
前記第3浄化装置の触媒が不活性状態の場合に前記第2浄化装置を通過した排気の一部を還流し、
前記第3浄化装置の触媒が活性状態の場合に前記エンジンから排出された排気を前記第2浄化装置の下流に供給する、
請求項
5に記載の浄化システム。
【請求項8】
前記還流管路に設けられて、前記第2浄化装置を通過した排気の一部を前記排気管路における前記第2浄化装置の上流に還流するポンプと、
前記第2浄化装置に至る前の排気が前記第2浄化装置を迂回するように、前記排気管路に設けられたバイパス管路と、
前記エンジンから排出された排気を前記バイパス管路に供給するかを切り替える調節弁と、を有する、
請求項1に記載の浄化システム。
【請求項9】
前記弁制御部は、前記第3浄化装置の触媒が前不活性状態の場合に前記排気管路において前記第2浄化装置の下流から前記第2浄化装置の上流に排気が還流するように前記調節弁及び前記制御弁を制御し、前記第3浄化装置の触媒が活性状態の場合に前記エンジンから排出された排気が前記バイパス管路を流れることで前記第2浄化装置を迂回して前記第1浄化装置に供給されるように前記調節弁及び前記制御弁を制御す
る、
請求項
8に記載の浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気を浄化する浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気を浄化する浄化装置が知られている。特許文献1には、アンモニアの前駆体である尿素を排気通路内に噴射供給し、尿素が加水分解することで生成されたアンモニアを還元剤として窒素酸化物(NOx)を選択的に還元する選択還元触媒(SCR;Selective Catalytic Reduction)を有する浄化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アンモニアは、浄化装置の触媒に吸着するので通常浄化装置から排出されない。しかし、アンモニアは、排気の温度が上昇すると触媒から脱離して浄化装置から排出されて大気へ放出されてしまうことがある。アンモニアは環境汚染物質であるため、アンモニアの大気への排出を抑制する技術が望まれていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、アンモニアの排出を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様においては、エンジンの排気が通る排気管路と、前記排気管路に設けられて、前記排気に含まれる粒子状物質を捕集する第1浄化装置と、前記排気管路において前記第1浄化装置と前記エンジンとの間に設けられ前記排気に含まれる窒素酸化物を浄化する第2浄化装置と、前記排気管路における前記第1浄化装置と前記第2浄化装置との間から、前記排気管路における前記第2浄化装置の上流に前記排気を還流する還流管路と、を有する浄化システムを提供する。
【0007】
前記浄化システムは、前記排気管路における前記第1浄化装置の下流に設けられ、前記排気に含まれる窒素酸化物を浄化する前記第3浄化装置と、前記第2浄化装置を通過した前記排気を、前記還流管路を通して前記排気管路における前記第2浄化装置の上流に還流するか否かを切り替える制御弁を制御する弁制御部と、を有し、前記弁制御部は、前記第3浄化装置の触媒が不活性状態の場合に、前記第2浄化装置を通過した前記排気を前記第2浄化装置の上流に還流させるように前記制御弁を制御してもよい。
【0008】
前記浄化システムは、前記第2浄化装置の下流から還流された排気及び前記エンジンから排出された排気を前記第2浄化装置に供給するか、前記エンジンから排出された排気を前記第2浄化装置に供給せずに前記還流管路に供給するかを切り替える切替弁と、を有し、前記弁制御部は、前記第3浄化装置の触媒が活性状態の場合に、前記エンジンから排出された排気を前記第2浄化装置に供給せずに前記還流管路に供給するように前記切替弁を制御してもよい。
【0009】
前記弁制御部は、前記第3浄化装置の触媒が不活性状態であり、かつ前記第2浄化装置に貯蔵されているアンモニアが前記第2浄化装置から排出されるリスクが所定値以上の場合、前記第2浄化装置を通過した排気の一部を前記第2浄化装置の上流に還流するように前記制御弁及び前記切替弁を制御してもよい。
【0010】
前記弁制御部は、前記第3浄化装置の触媒が不活性状態であり、前記リスクが前記所定値未満の場合、前記エンジンから排出された排気を前記第2浄化装置に供給するように前記切替弁を制御し、前記第2浄化装置を通過した排気を前記還流管路に供給せずに前記第1浄化装置に供給するように前記制御弁を制御してもよい。
【0011】
前記浄化システムは、前記還流管路に設けられて、前記第3浄化装置の触媒が不活性状態の場合に動作して、前記第2浄化装置を通過した前記排気の一部を前記排気管路における前記第2浄化装置の上流に還流するポンプを有してもよい。
【0012】
前記浄化システムは、前記還流管路を流れる排気が前記ポンプを迂回するように設けられた迂回管路と、前記エンジンから排出されて前記第2浄化装置に至る前の排気を、前記迂回管路を通して前記第2浄化装置の下流に供給するか否かを切り替える迂回弁と、を有し、前記弁制御部は、前記第3浄化装置の触媒が活性状態である場合、前記エンジンから排出されて前記第2浄化装置に至る前の排気を、前記ポンプを迂回する前記迂回管路を通過して前記第2浄化装置の下流に供給するように前記迂回弁を制御してもよい。
【0013】
前記ポンプは、前記排気を送り出す向きを変更可能な回転容積型ポンプであり、前記第3浄化装置の触媒が不活性状態の場合に前記第2浄化装置を通過した排気の一部を還流し、前記第3浄化装置の触媒が活性状態の場合に前記エンジンから排出された排気を前記第2浄化装置の下流に供給してもよい。
【0014】
前記浄化システムは、前記排気管路における前記第1浄化装置の下流に設けられ、前記排気に含まれる窒素酸化物を浄化する第3浄化装置と、前記還流管路に設けられて、前記第2浄化装置を通過した排気の一部を前記排気管路における前記第2浄化装置の上流に還流するポンプと、前記第2浄化装置に至る前の排気が前記第2浄化装置を迂回するように、前記排気管路に設けられたバイパス管路と、前記エンジンから排出された排気を前記バイパス管路に供給するかを切り替える調節弁と、を有してもよい。
【0015】
前記浄化システムは、前記第3浄化装置の触媒が前不活性状態の場合に前記排気管路において前記第2浄化装置の下流から前記第2浄化装置の上流に排気が還流するように前記調節弁及び前記制御弁を制御し、前記第3浄化装置の触媒が活性状態の場合に前記エンジンから排出された排気が前記バイパス管路を流れることで前記第2浄化装置を迂回して前記第1浄化装置に供給されるように前記調節弁及び前記制御弁を制御する弁制御部を有してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アンモニアの排出を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】浄化システムの構成を説明するための図である。
【
図3】排気を還流させる場合の排気の流れを説明するための図である。
【
図4】排気を通過させる場合の排気の流れを説明するための図である。
【
図5】排気を迂回させる場合の排気の流れを説明するための図である。
【
図6】排気の流れを制御する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】第2実施の形態に係る浄化システムを説明するための図である。
【
図8】第3実施の形態に係る浄化システムを説明するための図である。
【
図9】第4実施の形態に係る浄化システムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[浄化システムSの構成]
図1は、浄化システムSの構成を説明するための図である。浄化システムSは、エンジン11と、排気管路12と、第1浄化装置21と、第2浄化装置22と、還流管路31と、制御弁41と、切替弁42とを有する。
【0019】
エンジン11は、燃料と吸気(空気)との混合気を燃焼、膨張させて、動力を発生させる内燃機関である。エンジン11は、例えば自動車や船舶に搭載されたディーゼルエンジンである。
【0020】
排気管路12は、エンジン11から排出された排気が通る排気管である。排気管路12は、エンジン11から排出された排気を外部に排出する。
【0021】
排気管路12には、エンジン11から近い順に、第2浄化装置22、第1浄化装置21及び第3浄化装置23が設けられている。言い換えると、第2浄化装置22は、排気管路12において第1浄化装置21とエンジン11との間に設けられている。第3浄化装置23は、排気管路12における第1浄化装置21の下流に設けられている。
【0022】
第1浄化装置21は、排気に含まれる粒子状物質を捕集する。第1浄化装置21は、粒子状物質を捕集するフィルター(ディーゼル微粒子捕集フィルター)を有する。第1浄化装置21は、ディーゼル・パティキュレート・ディフューザー(Diesel Particulate Diffuser;DPD)とも言う。
【0023】
第1噴射部221は、排気管路12においてエンジン11と第2浄化装置22の間に設けられている。具体的には、第1噴射部221は、排気管路12において第2浄化装置22の直前に設けられている。第1噴射部221が尿素水を噴射することにより、排気管路12において第2浄化装置22に尿素水を供給する。具体的には、第1噴射部221は、排気管路12おいて第2浄化装置22の直前に尿素水を噴射する。
【0024】
第2浄化装置22は、排気に含まれる窒素酸化物を浄化する触媒を有する。第2浄化装置22の第2触媒222は、排気に含まれる窒素酸化物とアンモニアを反応させる選択還元触媒(Selective Catalytic Reduction;SCR)である。第2触媒222は、第1噴射部221から噴射された尿素水が排気の熱で加水分解することで生成されたアンモニアを触媒の表面に吸着させることで貯蔵している。第2触媒222は、活性温度以上の場合に貯蔵しているアンモニアと窒素酸化物を反応させて浄化する活性状態になり、活性温度未満の場合には窒素酸化物とアンモニアを反応させることができない不活性状態になる。
【0025】
第2噴射部231は、排気管路12において第1浄化装置21と第3浄化装置23の間に設けられている。第2噴射部231は、排気管路12において第1浄化装置21と第3浄化装置23の間に尿素水を噴射する。
【0026】
第3浄化装置23は、第2浄化装置22と同様に、排気に含まれる窒素酸化物を浄化する選択還元触媒(SCR)を有する。第3浄化装置23の第3触媒232は、第2触媒222と同様に、活性温度以上の場合に活性状態になり、活性温度未満の場合に不活性状態になる。第3浄化装置23は、触媒が活性状態であるか、不活性状態であるかを示す状態情報を弁制御装置7に通知する。例えば、第3浄化装置23は、第3触媒232の温度を検知する温度センサを有し、第3触媒232の温度が活性温度以上の場合に活性状態を示す状態情報を、触媒の温度が活性温度未満の場合に不活性状態を示す状態情報を弁制御装置7に通知する。活性温度は、アンモニアと窒素酸化物が触媒で反応する温度であり、例えば摂氏200度であるが、これに限定するものではない。なお、第3浄化装置23は、触媒の温度を状態情報として弁制御装置7に通知してもよい。
【0027】
上記のとおり、第1実施の形態の浄化システムSの第3浄化装置23は、第1浄化装置21の下流に設けられている。第3浄化装置23に至る排気の温度は、排気が第1浄化装置21を通過する際に第1浄化装置21と排気の間で熱交換が起こるために低下する。これにより、第3浄化装置23には温度の低下した排気が到達するので、第3触媒232は昇温しにくい。例えば、エンジン11が長期間停止した後に始動する場合(以下「冷間始動時」と言う。)、第1浄化装置21が昇温しないと第3浄化装置23に到達する排気の温度が高くならないので、第3触媒232の温度は上昇しない。そのため、第3触媒232は活性状態にならず、第3浄化装置23は排気中の窒素酸化物を浄化できない。
【0028】
エンジン11の冷間始動時であっても窒素酸化物を浄化するために、第1実施の形態の浄化システムSは、エンジン11と第1浄化装置21の間に第2浄化装置22を有している。第2浄化装置22は、第1浄化装置21よりもエンジン11に近い位置に設けられているので、エンジン11から排出された排気は、他の装置を通過する前に第2浄化装置22を通過する。そのため、第2浄化装置22には温度が低下していない排気が到達するので、第2触媒222は、第3触媒232が活性状態になるよりも短い時間で昇温し、活性状態になる。これにより、浄化システムSは、冷間始動時でも窒素酸化物を浄化することが可能になる。
【0029】
ところで、第2触媒222に吸着して貯蔵されているアンモニアは、第2触媒222の温度が高いほど脱離しやすくなる。言い換えると、第2触媒222が貯蔵可能なアンモニアの最大貯蔵量は、触媒の温度が高くなるほど小さくなる。そのため、第2触媒222の温度が上昇することで小さくなった最大貯蔵量よりも、触媒に吸着しているアンモニアの量が大きくなると、最大貯蔵量を超えた分のアンモニアが脱離して第2浄化装置22から排出されてしまう。そこで、浄化システムSは、第2浄化装置22から排出されたアンモニアが、排気管路12から外部に排出されないように、第2浄化装置22を通過した排気を第2浄化装置22の上流に還流する還流管路31を有する。
【0030】
還流管路31は、第2浄化装置22を通過した排気を第2浄化装置22の上流に還流する。具体的には、還流管路31は、排気管路12における第1浄化装置21と第2浄化装置22の間から、排気管路12におけるエンジン11と第2浄化装置22の間に、第2浄化装置22を通過した排気を還流する。なお、還流管路31は、第2浄化装置22を通過した排気を第2浄化装置22の上流に還流するだけでなく、エンジン11から排出された排気に第2浄化装置22を迂回させることができる。具体的には、還流管路31は、第2浄化装置22に至る前の排気に第2浄化装置22を迂回させて、排気管路12における第2浄化装置22の下流に排気を供給する。
【0031】
制御弁41は、還流管路31が排気管路12から分岐する分岐点411に設けられている。制御弁41は、第2浄化装置22を通過した排気を還流するか否かを切り替える。具体的には、制御弁41は、還流管路31を通して排気管路12における第2浄化装置22の上流に第2浄化装置22を通過した排気の一部を還流するか、第2浄化装置22を通過した排気の全部を第1浄化装置21に供給するかを切り替える。
【0032】
切替弁42は、制御弁41が排気管路12に接続する接続点421に設けられている。切替弁42は、エンジン11から排出された排気の供給先を切り替える。具体的には、切替弁42は、エンジン11から排出された排気を第2浄化装置22に供給するか、エンジン11から排出された排気を第2浄化装置22に供給せずに還流管路31に供給するかを切り替える。より具体的には、切替弁42は、エンジン11から排出された排気及び第2浄化装置22の下流から還流された排気を第2浄化装置22に供給するか、エンジン11から排出された排気を還流管路31に供給するかを切り替える。
【0033】
浄化システムSの弁制御装置7は、制御弁41及び切替弁42を制御して、第2浄化装置22を通過した排気の一部を還流管路31に供給し、還流管路31を通過して還流された排気を第2浄化装置22に供給する。このようにすることで、弁制御装置7は、第2浄化装置22からアンモニアを含む排気が排出されたとしても、アンモニアを含む排気を、再び第2浄化装置22に供給することが可能になる。そして、第2浄化装置22に供給されたアンモニアは、第2浄化装置22を通過する排気に含まれる窒素酸化物と触媒で反応して消費される。その結果、弁制御装置7は、第2浄化装置22から排出されたアンモニアが、排気管路12から外部へ排出されることを抑制できる。以下、弁制御装置7の構成を説明する。
【0034】
弁制御装置7は、記憶部71及び制御部72を有する。記憶部71は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等を含む記憶媒体である。記憶部71は、制御部72が実行するプログラムを記憶する。
【0035】
制御部72は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部72は、記憶部71に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部721及び弁制御部722としての機能を実現する。
【0036】
取得部721は、第3触媒232の活性状態を取得する。例えば、取得部721は、第3浄化装置23から第3触媒232が活性状態であるか不活性状態であるかを示す状態情報を取得する。また、取得部721は、第3触媒232の温度を示す状態情報を取得し、状態情報で示される触媒の温度が活性温度以上の場合に活性状態を取得し、触媒の温度が活性温度未満の場合に不活性状態を取得してもよい。
【0037】
取得部721は、アンモニアのスリップリスクを取得する。スリップリスクは、第2浄化装置22に貯蔵されているアンモニアが、第2触媒222から脱離して第2浄化装置22から排出されるリスクである。例えば、取得部721は、排気温度により定まる第2触媒222が貯蔵可能なアンモニアの最大貯蔵量と、第2触媒222が貯蔵しているアンモニアの推定貯蔵量とに基づくスリップリスクを取得する。以下、スリップリスクについて説明する。
【0038】
図2は、スリップリスクを説明するための図である。
図2の横軸は、排気温度を示し、縦軸は推定貯蔵量を示す。右下がりの直線Aは、排気温度と最大貯蔵量の関係を表す。なお、本実施の形態では、説明を簡単にするため、排気温度と最大貯蔵量の関係を直線Aで表すが、排気温度と最大貯蔵量の関係は、直線に限らない。
図2に示すとおり最大貯蔵量は、排気温度が高いほど小さくなる。より具体的には、排気温度が高くなって第2触媒222の温度が上昇すると、触媒からアンモニアが脱離しやすくなり、触媒に貯蔵可能なアンモニアの最大貯蔵量が減少する。
【0039】
最大貯蔵量CMは、所定の排気温度Bの場合に第2触媒222が貯蔵可能なアンモニアの最大貯蔵量である。推定貯蔵量CSは、現時点で第2触媒222が貯蔵しているアンモニアの推定貯蔵量である。最大貯蔵量CMと推定貯蔵量CSの差Dが大きい場合、排気温度が上昇して最大貯蔵量CMが減少しても、推定貯蔵量CSが最大貯蔵量CMを超えにくいので、スリップリスクは小さい。一方、最大貯蔵量CMと推定貯蔵量CSの差Dが小さい場合、排気温度が上昇して最大貯蔵量CMが減少すると、推定貯蔵量CSが最大貯蔵量CMを超えてしまうおそれがあるので、スリップリスクは大きくなる。
【0040】
上記のとおり、スリップリスクは、最大貯蔵量CMと推定貯蔵量CSの差Dが大きいほど小さくなる。そこで、取得部721は、排気温度Bに対応する最大貯蔵量CMと、推定貯蔵量CSとの差Dの逆数をスリップリスクとして取得する。排気温度Bに対応する最大貯蔵量CMは、記憶部71に記憶されており、取得部721は、記憶部71を参照して、排気温度Bに対応する最大貯蔵量CMを取得する。推定貯蔵量CSは、例えば第2触媒222に供給されたアンモニアの量と、第2触媒222で消費されたアンモニアの量の差である。
【0041】
弁制御部722は、制御弁41及び切替弁42を制御して、排気を還流するか否かを切り替える。例えば、弁制御部722は、第3触媒232が活性状態か否かに応じて第2浄化装置22を通過した排気を還流するか否かを切り替える。具体的には、弁制御部722は、第3触媒232が不活性状態の場合に、第2浄化装置22を通過した排気を第2浄化装置22の上流に還流させるように制御弁41及び切替弁42を制御する。より具体的には、弁制御部722は、第3触媒232が不活性状態の場合、第2浄化装置22を通過した排気の一部を第2浄化装置22の上流に還流するように制御弁41を制御し、エンジン11から排出された排気及び還流管路31を通過して還流された排気を第2浄化装置22に供給するように切替弁42を制御する。
【0042】
弁制御部722は、排気の圧力の変化に合わせて制御弁41及び切替弁42を制御する。具体的には、弁制御部722は、還流管路31内の還流ガスRGの圧力が排気管路12を流れる排気EGの圧よりも高くなるタイミングに合わせて還流管路31内の還流ガスRGを排気管路12に供給し、還流管路31内の還流ガスRGの圧力が排気管路12を流れる排気EGの圧よりも低くなる場合に排気管路12内の排気EGを還流管路31に供給するように、制御弁41及び切替弁42を制御する。このようにすることで、弁制御部722は、第2浄化装置22を通過した排気を第2浄化装置22の上流に還流することができる。
【0043】
図3は、排気を還流させる場合の排気の流れを説明するための図である。
図3において排気の流れがわかりやすくなるように、制御弁41及び切替弁42は省略した。エンジン11から排出された排気EGは、接続点421を通過して第2浄化装置22に供給される。第2浄化装置22を通過した排気の一部は、分岐点411を通過して第1浄化装置21に供給される。第2浄化装置22を通過した排気の残りは、還流管路31に供給される。還流管路31に供給された排気は、還流ガスRGとなり、還流管路31を通過して排気管路12を介して第2浄化装置22に供給される。
【0044】
このようにすることで、弁制御部722は、第2浄化装置22からアンモニアが排出されたとしても、第2浄化装置22を通過した排気を、再び第2浄化装置22に供給することが可能になる。そして、第2浄化装置22に再度供給されたアンモニアは、第2浄化装置22を通過する排気に含まれる窒素酸化物と触媒で反応して消費される。その結果、弁制御部722は、第2浄化装置22から排出されたアンモニアが、排気管路12から外部へ排出されることを抑制できる。
【0045】
ところで、第3触媒232が不活性状態であっても、第2浄化装置22からアンモニアが排出されないならば、第2浄化装置22を通過した排気を還流する必要がない。そこで、弁制御部722は、スリップリスクが高い場合に排気を還流し、低い場合には排気を第2浄化装置22に通過させる。具体的には、弁制御部722は、スリップリスクが所定値以上の場合に排気の一部を還流し、スリップリスクが所定値未満の場合、還流せずに排気の全部を第1浄化装置21に供給する。具体的には、弁制御部722は、エンジン11から排出された排気が第2浄化装置22に供給されるように切替弁42を制御し、第2浄化装置22を通過した排気の全部が第1浄化装置21に供給されるように制御弁41を制御する。
【0046】
図4は、排気を通過させる場合の排気の流れを説明するための図である。
図4において排気の流れがわかりやすくなるように、制御弁41及び切替弁42は省略した。エンジン11から排出された排気EGは、接続点421を通過して第2浄化装置22に供給される。そして、第2浄化装置22を通過した排気は、還流管路31に供給されず、分岐点411を通過して第1浄化装置21に供給される。このように、弁制御部722は、スリップリスクが小さい場合、第2浄化装置22を通過した排気を還流しないので、制御弁41及び切替弁42を制御する処理の負荷を低減できる。
【0047】
ところで、第2触媒222の温度が高くなると、貯蔵しているアンモニアが脱離するだけでなく、アンモニアが酸化されて窒素酸化物が生成されることがある。例えば、エンジン11が始動してから十分な時間が経過して第3触媒232が活性状態になる場合に、第2浄化装置22にエンジン11から排出された排気を供給すると、第2触媒222の温度が高くなりすぎてしまうおそれがある。そこで、弁制御部722は、第3触媒232が活性状態の場合、第2浄化装置22を通過した排気を還流せずに第2浄化装置22を迂回させる。具体的には、弁制御部722は、第3浄化装置23が活性状態の場合、エンジン11から排出された排気を第2浄化装置22に供給せずに還流管路31に供給するように切替弁42を制御し、還流管路31を通過した排気が第1浄化装置21に供給されるように制御弁41を制御する。
【0048】
図5は、排気を迂回させる場合の排気の流れを説明するための図である。
図5において排気の流れがわかりやすくなるように、制御弁41及び切替弁42は省略した。エンジン11から排出された排気EGの全部は、接続点421から還流管路31に供給される。そして、還流管路31を通過した排気EGは、分岐点411から第1浄化装置21に供給される。
【0049】
このように、弁制御部722は、第3触媒232が活性状態の場合、エンジン11から排出された排気に第2浄化装置22を迂回させる。このようにすることで、弁制御部722は、第2触媒222の温度が高くなりすぎてしまうおそれがある際に、排気に第2浄化装置22を迂回させられるので、第2浄化装置22でアンモニアが酸化して窒素酸化物が生成されてしまうことを抑制できる。
【0050】
[排気の流れを制御する処理]
図6は、排気の流れを制御する処理の一例を示すフローチャートである。排気の流れを制御する処理は、エンジン11が始動している間、所定間隔で実行される。所定間隔は例えば100ミリ秒であるがこれに限定するものではない。
【0051】
取得部721は、第3触媒232の活性状態を取得する(ステップS1)。例えば、取得部721は、第3触媒232が活性状態であるか、不活性状態であるかを示す状態情報を第3浄化装置23から取得する。
【0052】
弁制御部722は、第3触媒232の状態が不活性状態であるか否かを判定する(ステップS2)。具体的には、弁制御部722は、取得された状態情報に示される第3触媒232の状態が不活性状態であるかを判定する。
【0053】
取得部721は、第3触媒232が不活性状態の場合(ステップS2でYes)、スリップリスクを取得する(ステップS3)。具体的には、まず、取得部721は、エンジン11から排出される排気の排気温度Bと、第2浄化装置22に貯蔵されているアンモニアの推定貯蔵量CSを取得する。つぎに、取得部721は、記憶部71を参照して取得した排気温度Bに対応する最大貯蔵量CMを取得する。そして、取得部721は、最大貯蔵量CMから推定貯蔵量CSを減算した差Dの逆数をスリップリスクとして取得する。
【0054】
弁制御部722は、スリップリスクが所定値以上か否かを判定する(ステップS4)。弁制御部722は、スリップリスクが所定値以上の場合(ステップS4でYes)、第2浄化装置22を通過した排気を還流させる(ステップS5)。具体的には、弁制御部722は、第2浄化装置22を通過した排気の一部を第2浄化装置22の上流に還流するように制御弁41を制御し、エンジン11から排出された排気及び還流管路31を通過して還流された還流ガスRGを第2浄化装置22に供給するように切替弁42を制御する(
図3参照)。
【0055】
弁制御部722は、スリップリスクが所定値未満の場合(ステップS4でNo)、エンジン11から排出された排気を通過させる(ステップS6)。具体的には、弁制御部722は、エンジン11から排出された排気が第2浄化装置22に供給されるように切替弁42を制御し、第2浄化装置22を通過した排気の全量が第1浄化装置21に供給されるように制御弁41を制御する(
図4参照)。
【0056】
弁制御部722は、第3触媒232が活性状態の場合(ステップS2でNo)、排気を迂回させる(ステップS7)。具体的には、弁制御部722は、エンジン11から排出された排気を第2浄化装置22に供給せずに還流管路31に供給するように切替弁42を制御し、還流管路31を通過した排気が第1浄化装置21に供給されるように制御弁41を制御する(
図5参照)。
【0057】
[第1実施の形態の浄化システムSの効果]
以上説明したとおり、第1実施の形態の浄化システムSは、エンジン11の排気が通る排気管路12に設けられて排気に含まれる粒子状物質を捕集する第1浄化装置21と、排気管路12において第1浄化装置21とエンジン11との間に設けられ排気に含まれる窒素酸化物を浄化する第2浄化装置22と、排気管路12における第1浄化装置21と第2浄化装置22との間から、排気管路12における第2浄化装置22の上流に排気を還流する還流管路31と、を有する。
【0058】
上記の構成により、第1実施の形態の浄化システムSは、第2浄化装置22からアンモニアが排出されたとしても、第2浄化装置22を通過した排気を再び第2浄化装置22に供給することが可能になる。そして、第2浄化装置22に供給されたアンモニアは、第2浄化装置22を通過する排気に含まれる窒素酸化物と触媒で反応して消費される。その結果、第1実施の形態の浄化システムSは、第2浄化装置22から排出されたアンモニアが、排気管路12から外部へ排出されることを抑制できる。
【0059】
[第2実施の形態に係る浄化システムS]
第1実施の形態の浄化システムSは、排気の圧力の変化を利用して第2浄化装置22を通過した排気を第2浄化装置22の上流に還流した。しかし、排気の圧力の変化を利用する場合、排気を還流するタイミングが制限されるので任意のタイミングで排気を還流できない。この場合、第2浄化装置22から排出されたアンモニアが排気管路12から排出されるおそれがある。
【0060】
そこで、第2実施の形態に係る浄化システムSは、排気を還流するためのポンプを有する。
図7は、第2実施の形態に係る浄化システムSを説明するための図である。第2実施の形態に係る浄化システムSは、ポンプ51及び迂回管路32を有する。以下、第2実施の形態に係る浄化システムSについて、第1実施の形態に係る浄化システムSと異なる点について説明し、第1実施の形態に係る浄化システムSと同様の点については割愛する。
【0061】
ポンプ51は、還流管路31に設けられている。ポンプ51は、例えばタービンが回転することにより遠心力で排気を送り出すターボ型ポンプであるが、これに限定するものではなく、公知のポンプが利用可能である。また、ポンプ51は、ポンプに限らず、排気を送り出すことが可能であれば、圧縮機、ブロワ、ファン及び送風機が利用できる。
【0062】
ポンプ51は、第3浄化装置23が不活性状態の場合に動作して、第2浄化装置22を通過した排気の一部を排気管路12における第2浄化装置22の上流に還流する。具体的には、ポンプ51は、エンジン11から排出される排気よりも高い圧力で第2浄化装置22を通過した排気を排気管路12に還流する。これにより、第2実施の形態に係る浄化システムSは、任意のタイミングで第2浄化装置22を通過した排気を排気管路12に還流することが可能になる。その結果、第2実施の形態に係る浄化システムSは、第2浄化装置22から排出されたアンモニアが排気管路12から排出されることを抑制できる。
【0063】
ところで、ポンプ51は、第2浄化装置22を通過した排気の一部を排気管路12における第2浄化装置22の上流に還流するが、第2浄化装置22に至る前の排気を第2浄化装置22の下流に送り出すことができない。そのため、還流管路31を通して排気に第2浄化装置22を迂回させようとしても、ポンプ51が抵抗になるので、排気がポンプ51を迂回できなくなる。そこで、第2実施の形態に係る浄化システムSは、排気にポンプ51を迂回させる迂回管路32を有する。
【0064】
迂回管路32は、第2浄化装置22に至る前の排気にポンプ51を迂回させる管路である。迂回管路32は、還流管路31を流れる排気がポンプ51を迂回するように還流管路31に設けられている。具体的には、迂回管路32は、接続点421とポンプ51との間から、ポンプ51と分岐点411の間を接続している。迂回管路32は、エンジン11から排出されて第2浄化装置22に至る前の排気を通過させることで、ポンプ51を迂回させて、エンジン11を通過した排気がポンプ51に至ることなく第2浄化装置22の下流に供給する。
【0065】
第1迂回弁43は、迂回管路32が還流管路31から分岐する分岐点に設けられている。第1迂回弁43は、排気の供給先を切り替える。第1迂回弁43は、エンジン11から排出されて第2浄化装置22に至る前の排気を、迂回管路32を通して第2浄化装置22の下流に供給するか否かを切り替える。具体的には、第1迂回弁43は、エンジン11から排出されて還流管路31を流れる排気を迂回管路32に供給するか、ポンプ51から送り出された排気を排気管路12に供給するかを切り替える。
【0066】
第2迂回弁44は、迂回管路32が還流管路31に接続する接続点に設けられている。第1迂回弁43は、排気の供給先を切り替える。具体的には、第2迂回弁44は、迂回管路32を通過した排気を排気管路12に供給するか、排気管路12から還流した排気をポンプ51に供給するかを切り替える。
【0067】
弁制御部722は、第1迂回弁43及び第2迂回弁44を制御して、第2浄化装置22を通過した排気を還流させるか、排気に第2浄化装置22を迂回させるかを切り替える。例えば、弁制御部722は、第3触媒232が活性状態である場合、エンジン11から排出されて第2浄化装置22に至る前の排気が第2浄化装置22を迂回するように第1迂回弁43及び第2迂回弁44を制御する。具体的には、弁制御部722は、排気がポンプ51を迂回して第2浄化装置22の下流に供給されるように第1迂回弁43及び第2迂回弁44を制御する。より具体的には、弁制御部722は、排気が還流管路31に供給されるように切替弁42を制御し、還流管路31を流れる排気が迂回管路32に供給されるように第1迂回弁43を制御し、迂回管路32を通過した排気がポンプ51に向かわずに排気管路12に向かうように第2迂回弁44を制御する。
【0068】
これにより、弁制御部722は、第2触媒222の温度が高くなりすぎてしまうおそれがある際に、排気に第2浄化装置22を迂回させられる。その結果、弁制御部722は、第2浄化装置22でアンモニアが酸化して窒素酸化物が生成されてしまうことを抑制できる。
【0069】
[第3実施の形態に係る浄化システムS]
第2実施の形態に係る浄化システムSは、排気を送り出す向きが固定されているターボ型のポンプ51を有していた。そのため、第2実施の形態に係る浄化システムSは、第3触媒232が活性状態の場合に排気にポンプ51を迂回させる迂回管路32が必要になり、第2実施の形態に係る浄化システムSの構成は複雑になっていた。そこで、第3実施の形態に係る浄化システムSは、ターボ型のポンプ51に替えて回転容積型のポンプを有する。
【0070】
図8は、第3実施の形態に係る浄化システムSの構成を説明するための図である。第3実施の形態に係る浄化システムSは、第2実施の形態に係る浄化システムSのポンプ51に替えて、ポンプ52を有する。また、第3実施の形態に係る浄化システムSは、第2実施の形態に係る浄化システムSの迂回管路32を有していない。
【0071】
ポンプ52は、排気を送り出す向きを変更可能なポンプである。ポンプ52は、回転容積型ポンプであるが、排気を送り出す向きを変更可能なポンプであればこれに限らない。ポンプ52は、第3触媒232が不活性状態の場合に第2浄化装置22を通過した排気の一部を還流する向きに排気を送り出す。ポンプ52は、第3触媒232が活性状態の場合にエンジン11から排出されて第2浄化装置22に至る前の排気を第2浄化装置22の下流に供給する向きに排気を送り出す。
【0072】
弁制御部722は、ポンプ52を制御して排気を送り出す向きを反転させる。具体的には、弁制御部722は、第3触媒232が不活性状態の場合、第2浄化装置22を通過した排気が第2浄化装置22の上流に還流する向きに排気を送り出すようにポンプ52を動作させる。また、弁制御部722は、第3触媒232が活性状態の場合、エンジン11から排出されて第2浄化装置22に至る前の排気を第2浄化装置22の下流に供給する向きに排気を送り出すようにポンプ52を動作させる。このように、第3実施の形態に係る浄化システムSは、回転容積型のポンプ52を用いることで、第2実施の形態に係る浄化システムSに比べて構成が簡単になる。
【0073】
[第4実施の形態に係る浄化システムS]
第2実施の形態に係る浄化システムSは、還流管路31にポンプ51を迂回する迂回管路32を有していた。しかし、ポンプ51を迂回させる管路は、還流管路31に限らず、排気管路12に設けてもよい。第4実施の形態に係る浄化システムSは、第2実施の形態に係る浄化システムSの迂回管路32に替えてバイパス管路33を有する。バイパス管路33は、排気に第2浄化装置22を迂回させるための管路である。バイパス管路33は、第2浄化装置22に至る前の排気が第2浄化装置22を迂回するように、排気管路12に設けられている。具体的には、バイパス管路33は、接続点421から分岐して分岐点411に接続されている。
【0074】
第1四方弁45は、排気の供給先を切り替えるための四方弁である。第1四方弁45は、エンジン11から排出された排気及び還流された排気を第2浄化装置22に供給するか、エンジン11から排出された排気をバイパス管路33に供給するかを切り替える。第2四方弁46は、排気の供給先を切り替えるための四方弁である。第2四方弁46は、第2浄化装置22を通過した排気の全部を第1浄化装置21に供給するか、第2浄化装置22を通過した排気の一部を還流管路31に供給して残りを第1浄化装置21に供給するか、バイパス管路33を通過した排気を第1浄化装置21に供給するかを切り替える。
【0075】
弁制御部722は、第3触媒232の活性状態と、第2浄化装置22のスリップリスクとに応じて、第1四方弁45及び第2四方弁46を制御して、排気の供給先を制御する。具体的には、弁制御部722は、第3触媒232が活性状態の場合、排気がバイパス管路33を流れるように第1四方弁45及び第2四方弁46を制御する。弁制御部722は、第3触媒232が不活性状態、かつ第2浄化装置22のスリップリスクが所定値以上の場合、第2浄化装置22を通過した排気の一部が還流するように第1四方弁45及び第2四方弁46を制御する。弁制御部722は、第3触媒232が不活性状態であり、かつ第2浄化装置22のスリップリスクが所定値未満の場合、排気が第2浄化装置22を通過して還流しないように第1四方弁45及び第2四方弁46を制御する。
【0076】
上記のとおり、第4実施の形態に係る浄化システムSは、第1四方弁45及び第2四方弁46を制御するだけで、排気の供給先を切替可能である。そのため、第4実施の形態に係る浄化システムSは、第2実施の形態に係る浄化システムSに比べて弁を制御する処理が簡単になる。
【0077】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0078】
S 浄化システム
11 エンジン
12 排気管路
21 第1浄化装置
22 第2浄化装置
23 第3浄化装置
221 第1噴射部
231 第2噴射部
31 還流管路
32 迂回管路
33 バイパス管路
41 制御弁
42 切替弁
43 第1迂回弁
44 第2迂回弁
45 第1四方弁
46 第2四方弁
411 分岐点
421 接続点
51 ポンプ
52 ポンプ
7 弁制御装置
71 記憶部
72 制御部
721 取得部
722 弁制御部
【要約】
【課題】アンモニアの排出を抑制する。
【解決手段】浄化システムSは、エンジン11の排気が通る排気管路12と、排気管路12に設けられて、排気に含まれる粒子状物質を捕集する第1浄化装置21と、排気管路12において第1浄化装置21とエンジン11との間に設けられ排気に含まれる窒素酸化物を浄化する第2浄化装置22と、排気管路12における第1浄化装置21と第2浄化装置22との間から、排気管路12における第2浄化装置22の上流に排気を還流する還流管路31と、を有する。
【選択図】
図1