(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
F01M 1/08 20060101AFI20241016BHJP
F01M 1/16 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
F01M1/08 B
F01M1/16 E
(21)【出願番号】P 2023175932
(22)【出願日】2023-10-11
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 宗昌
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-019795(JP,A)
【文献】特開2014-084760(JP,A)
【文献】特開2005-299592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 1/08
F01M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンのピストンに向かってオイルを吐出する吐出部に前記オイルを導く油圧回路を制御する制御装置であって、
前記オイルを圧送するポンプと、
前記圧送されたオイルを流すための第1流路と、
前記第1流路に配置され、前記第1流路を流れる前記オイルとの熱交換により、前記オイルの温度を低下させる第1熱交換部と、
前記圧送されたオイルを流すための第2流路と、
前記圧送されたオイルを前記第1流路および前記第2流路のいずれかに流すことを切り換える切換部と、
前記第1流路の下流側と、前記第2流路の下流側とに接続された第3流路と、
前記第3流路に配置され、かつ、前記車両において前記オイルより高い温度の流体が存在する箇所に対応して配置され、内部を流通する前記オイルと前記流体とを熱交換させる第2熱交換部と、
前記切換部の制御、および、前記第2熱交換部における前記オイルの流通量の制御を行う制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記吐出部から前記ピストンに前記オイルが供給されている場合、前記圧送されたオイルが前記第1流路を流通するように前記切換部を制御すると共に、前記第2熱交換部における前記圧送されたオイルの流通量を、前記流体の温度を基に設定された前記ピストンの温度に影響を与えない所定値以下に制限し、
前記吐出部から前記ピストンへの前記オイルの供給が停止された場合、前記圧送されたオイルが前記第2流路を流通するように前記切換部を制御すると共に、前記第2熱交換部に、前記所定値を超過する流通量の前記オイルを流通させる、
制御装置。
【請求項2】
前記第2熱交換部は、前記エンジンの排気を吸気側に再循環させる再循環通路に配置されて、前記オイルと前記排気とを熱交換させる請求項
1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第2熱交換部は、前記再循環通路において前記排気を冷媒と熱交換させる第3熱交換部に対して直列に配置さ
れる請求項
2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第2熱交換部は、前記再循環通路において前記排気を冷媒と熱交換させる第3熱交換部に対して並列に配置さ
れる請求項
2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第2熱交換部は、過給機に対応して配置され、前記オイルと前記過給機に存在する前記流体とを熱交換する請求項
1に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンにおいてピストンを冷却またはピストンの摺動を潤滑するために、ピストンに対してオイルを吐出する技術が実用化されている。ここで、例えばピストンの温度が低いときにオイルを供給すると、冷却損失が高まり、仕事が減少するおそれがある。
【0003】
そこで、冷却損失を抑制する技術として、例えば、特許文献1には、内燃機関の運転状態に応じて、オイルジェットの噴射及び停止を適宜に制御する内燃機関の制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の制御装置は、オイルジェットを停止したときに油圧回路内のオイルの温度が低下するおそれがある。特に、ピストンに吐出されたオイルを冷却するための熱交換部が設けられた油圧回路では、オイルジェットを停止しても、その熱交換部でオイルが冷却されるため、オイルの温度が大きく低下するおそれがある。そして、オイルの温度が低下すると、オイルの粘度が上昇し、例えば油圧回路においてオイルを移送させるポンプの駆動損失が高まることになる。
【0006】
本開示は、オイルの温度低下を抑制する制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る制御装置は、車両のエンジンのピストンに向かってオイルを吐出する吐出部に前記オイルを導く油圧回路を制御する制御装置であって、前記オイルを圧送するポンプと、前記圧送されたオイルを流すための第1流路と、前記第1流路に配置され、前記第1流路を流れる前記オイルとの熱交換により、前記オイルの温度を低下させる第1熱交換部と、前記圧送されたオイルを流すための第2流路と、前記圧送されたオイルを前記第1流路および前記第2流路のいずれかに流すことを切り換える切換部と、前記第1流路の下流側と、前記第2流路の下流側とに接続された第3流路と、前記第3流路に配置され、かつ、前記車両において前記オイルより高い温度の流体が存在する箇所に対応して配置され、内部を流通する前記オイルと前記流体とを熱交換させる第2熱交換部と、前記切換部の制御、および、前記第2熱交換部における前記オイルの流通量の制御を行う制御部と、を有し、前記制御部は、前記吐出部から前記ピストンに前記オイルが供給されている場合、前記圧送されたオイルが前記第1流路を流通するように前記切換部を制御すると共に、前記第2熱交換部における前記圧送されたオイルの流通量を、前記流体の温度を基に設定された前記ピストンの温度に影響を与えない所定値以下に制限し、前記吐出部から前記ピストンへの前記オイルの供給が停止された場合、前記圧送されたオイルが前記第2流路を流通するように前記切換部を制御すると共に、前記第2熱交換部に、前記所定値を超過する流通量の前記オイルを流通させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、オイルの温度低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1に係る制御装置を備えたエンジンシステムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態1における制御装置の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態1の動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態2における制御装置の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態2において再循環通路に配置された熱交換部を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態2の変形例において再循環通路に配置された熱交換部を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態2の他の変形例において再循環通路に配置された熱交換部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
(実施形態1)
図1に、本開示の実施形態1に係る制御装置を備えたエンジンシステムの構成を示す。このエンジンシステムは、エンジン1と、制御装置2とを有する。エンジンシステムは、例えば、商用車(例えばトラック)などの車両に搭載されてもよい。
【0012】
エンジン1は、燃料を燃焼して車両を走行するための駆動力を発生させるもので、例えば、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程の4つの行程を繰り返す、いわゆる4ストローク機関から構成される。エンジン1は、シリンダー内を往復運動するピストン3を有し、このピストン3により燃料と空気との混合気が燃焼する燃焼室が形成される。エンジン1としては、例えば、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンなどが挙げられる。
【0013】
制御装置2は、吐出部4と、油圧回路5とを有する。
【0014】
吐出部4は、吐出口4aが形成され、エンジン1のピストン3に向かって吐出口4aからオイル(例えば潤滑油)を吐出する。例えば、吐出部4は、オイルを噴射するオイルジェットなどから構成されてもよい。
【0015】
油圧回路5は、吐出部4にオイルを導くもので、オイルが循環するように形成されている。
【0016】
次に、制御装置2の構成について詳細に説明する。
図2に示すように、制御装置2は、吐出部4と油圧回路5に加えて、熱交換部6と、フィルタ7と、制御部8とを有する。また、油圧回路5は、ポンプ9と、調圧弁10と、切換部11と、流量調整バルブ12と、オイルパン13と、油路14とを有する。
【0017】
油路14は、制御装置2の各部にオイルLを導くもので、ポンプ9、調圧弁10、切換部11、熱交換部6、フィルタ7、流量調整バルブ12および吐出部4を順次接続するように形成されている。ここで、油路14には、切換部11から熱交換部6を介してフィルタ7に至る油路14aに対して、熱交換部6をオイルが通過せず、切換部11とフィルタ7を接続する油路14bが並列に延びるように形成されている。すなわち、油路14は、油路14aと油路14bとに分岐するように形成されている。また、油路14は、フィルタ7とエンジン摺動部15とを接続して、フィルタ7を通過したオイルLをエンジン摺動部15に導く油路14cを有する。なお、エンジン摺動部15は、エンジンシステムにおいてオイルLの潤滑作用で動作するもので、例えば、ギアトレーン、クランクシャフト、カムシャフト、変速機などを含んでもよい。なお、油路14aは、本開示の第1流路を構成する。また、油路14bは、本開示の第2流路を構成する。
【0018】
熱交換部6は、油圧回路5に配置され、内部を流通する冷媒と、油路14aを流通するオイルLとを熱交換してオイルLを冷却する。冷媒の温度は、オイルLの温度に応じて設定されてよく、例えばピストン3への供給により上昇するオイルLの温度に基づいて設定されてもよい。冷媒は、例えば、エンジン1の冷却水などを用いてもよい。
【0019】
フィルタ7は、オイルLに含まれる鉄粉などの不純物を除去するように形成されている。
【0020】
ポンプ9は、オイルパン13からオイルLを汲み上げて、そのオイルを圧送する。例えば、ポンプ9は、エンジン1の回転により駆動される機械式ポンプから構成されてもよい。また、ポンプ9は、可変容量型ポンプを用いてもよい。
【0021】
調圧弁10は、油路14の圧力を調整するもので、例えば、油路14の圧力が所定値以上になると開弁して、オイルLをオイルパン13に戻すように形成される。調圧弁10は、例えば、リリーフ弁などから構成されてもよい。
【0022】
切換部11は、オイルLを流通させる油路14に対する接続を、油路14aと油路14bとの間で切り換える。すなわち、切換部11は、オイルLを熱交換部6との熱交換が可能な油路14aと、熱交換部6が設けられていない油路14bとを切り換える。切換部11は、例えば、オイルLの流れる方向を制御する方向制御弁などから構成されてもよい。
【0023】
流量調整バルブ12は、吐出部4に供給するオイルLの流量を調整する。
【0024】
オイルパン13は、オイルLを貯留するもので、例えばエンジン1のシリンダブロックの下方に配置されて吐出部4から吐出されたオイルL、エンジン摺動部15を流通したオイルLなどを貯留してもよい。
【0025】
制御部8は、切換部11に電気的に接続され、吐出部4からピストン3へのオイルLの供給の有無に基づいて切換部11を切り換える。具体的には、制御部8は、吐出部4からピストン3へオイルLが供給される場合、熱交換部6を通る油路14aをオイルLが流通するように切換部11を切り換える。一方、制御部8は、吐出部4からピストン3へのオイルLの供給が停止された場合、熱交換部6をオイルLが通過しない油路14bをオイルLが流通するように熱交換部6を切り換える。
【0026】
また、制御部8は、ポンプ9に電気的に接続されて、ポンプ9の駆動を制御する。例えば、制御部8は、エンジン1の運転領域(高負荷、中負荷、低負荷など)に応じた油圧でオイルLが流通するように調圧弁10とポンプ9を制御してもよい。
【0027】
また、制御部8は、流量調整バルブ12に電気的に接続されて、吐出部4へのオイルLの供給量、すなわち吐出部4からのオイルLの吐出量を制御する。ここで、制御部8は、吐出部4からピストン3へオイルLを供給する場合、ピストン3の温度に基づいて設定された所定量のオイルLが吐出部4に供給されるように流量調整バルブ12を制御する。一方、制御部8は、吐出部4からピストン3へオイルLを供給しない場合、吐出部4へのオイルLの供給を停止してもよいし、オイルLがピストン3に到達しないように吐出部4へのオイルLの供給量を制限してもよい。また、制御部8は、吐出部4の駆動を停止してもよいし、ピストン3に到達しない吐出量でオイルLを吐出するように吐出部4を制御してもよい。このとき、制御部8は、ピストン3の温度を示すピストン温度情報をエンジン1の制御部から取得し、そのピストン温度情報に基づいて、吐出部4からピストン3へオイルLを供給するか否かを判定してもよい。例えば、制御部8は、エンジン1を駆動する運転領域(例えば高負荷など)をピストン温度情報として取得し、その運転領域に基づいて、吐出部4からピストン3へオイルLを供給するか否かを判定してもよい。
【0028】
なお、制御部8の機能は、コンピュータプログラムにより実現させることもできる。例えば、コンピュータの読取装置が、制御部8の機能を実現するためのプログラムを記録した記録媒体からそのプログラムを読み取り、記憶装置に記憶させる。そして、CPU(Central Processing Unit)が、記憶装置に記憶されたプログラムをRAM(Random Access Memory)にコピーし、そのプログラムに含まれる命令をRAMから順次読み出して実行することにより、制御部8の機能を実現することができる。
【0029】
次に、本実施形態の動作について、
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0030】
まず、車両においてエンジン1が駆動されると、ステップS1で、制御装置2の制御部8が、
図2に示すように、油路14をオイルLが流通するようにポンプ9を駆動させる。また、制御部8は、ステップS2で、ピストン3の温度に基づいて、ピストン3にオイルLを供給するか否かを繰り返し判定する。すなわち、制御部8は、ピストン3の温度が所定の閾値以上の場合、ピストン3にオイルLを供給すると判定する。このとき、制御部8は、ピストン3の温度を示すピストン温度情報、例えばエンジン1の運転領域をエンジン1の制御部から取得し、その運転領域に基づいてピストン3にオイルLを供給するか否かを判定してもよい。例えば、制御部8は、運転領域に対して所定の閾値が予め設定され、エンジン1の運転領域が所定の閾値以上(例えば高負荷)を示す場合、ピストン3が高温に達したとして、ピストン3にオイルLを供給すると判定してもよい。
【0031】
制御部8は、ピストン3にオイルLを供給すると判定すると、ステップS3に進んで、オイルLを吐出するように吐出部4または流量調整バルブ12を制御する。これにより、吐出部4から吐出されたオイルLが、ピストン3に供給されることになる。オイルLの供給により、ピストン3が冷却されると共にピストン3をスムーズに摺動させることができる。
【0032】
続いて、ピストン3に供給されたオイルLは、オイルパン13に戻り、オイルパン13において貯留される。そして、オイルパン13に貯留されたオイルLは、ポンプ9で汲み上げられて、調圧弁10を介して切換部11に達する。
【0033】
ここで、制御部8は、ステップS2においてピストン3にオイルLを供給すると判定した場合、ステップS4で、熱交換部6を通る油路14aをオイルLが流通するように切換部11を制御する。すなわち、制御部8は、油路14aおよび油路14bのうち油路14aを、オイルLが流通する油路14に接続するように切換部11を切り換える。これにより、熱交換部6を流通する冷媒と、油路14aを流通するオイルLとの間で熱交換され、ピストン3への供給により上昇したオイルLの温度を低下させることができる。
【0034】
熱交換部6により冷却されたオイルLは、フィルタ7で不純物が除去されると、流量調整バルブ12へと流通し、上述したように吐出部4からピストン3に向かって吐出される。また、フィルタ7において不純物が除去されたオイルLの一部は、油路14cを流通して、エンジン摺動部15に供給される。これにより、エンジン摺動部15は、スムーズに摺動することができる。
【0035】
ここで、エンジン1の運転領域が低負荷に変更されたものとする。制御部8は、エンジン1の運転領域が所定の閾値未満(例えば低負荷)を示す場合、ステップS2で、ピストン3へのオイルLの供給を停止すると判定する。制御部8は、ピストン3へのオイルLの供給を停止すると判定した場合、ステップS5に進んで、オイルLの吐出を停止するように吐出部4または流量調整バルブ12を制御する。これにより、ピストン3の冷却損失を低減し、図示仕事を増加させることができる。
【0036】
そして、制御部8は、ピストン3へのオイルLの供給を停止すると判定した場合、ステップS6で、熱交換部6を通過しない油路14bをオイルLが流通するように切換部11を制御する。すなわち、制御部8は、油路14aおよび油路14bのうち油路14bを、オイルLが流通する油路14に接続するように切換部11を切り換える。これにより、供給停止時におけるオイルLの温度低下を抑制し、オイルLを適切な粘度に維持することができる。そして、オイルLを適切な粘度に維持することで、オイルLを移送させるポンプ9の駆動損失を抑制することができる。また、オイルLが適切な粘度でエンジン摺動部15に供給されるため、摺動不良などによるエンジン摺動部15の破損を抑制することができる。
【0037】
なお、エンジン1の運転領域が高負荷から低負荷に短時間で変化した場合、エンジン1が低負荷で運転されていても、ピストン3は高温であるおそれがある。そこで、制御部8は、エンジン1の運転領域の履歴に基づいて高負荷から低負荷に短時間で変化したか否かを判定し、短時間で変化したと判定した場合、例えばピストン3の温度が所定の閾値未満となる時間が経過するまで、ピストン3へのオイルLの供給を継続するように吐出部4または流量調整バルブ12を制御してもよい。このとき、制御部8は、ステップS4で、熱交換部6を通る油路14aをオイルLが流通するように切換部11を制御する。これにより、ピストン3を適切に冷却することができる。
【0038】
本実施形態によれば、圧送されたオイルLを油路14aおよび油路14bのいずれかに流すことを切り換える切換部11を有する。これにより、制御装置2は、オイルLの温度低下を抑制することができる。
【0039】
(実施形態2)
以下、本開示の実施形態2について説明する。ここでは、上記の実施形態1との相違点を中心に説明し、上記の実施形態1との共通点については、共通の参照符号を使用して、その詳細な説明を省略する。
【0040】
実施形態2では、新たな熱交換部を油圧回路5に接続する。この油圧回路5は、車両においてオイルLより高い温度の流体に対応して配置され、内部を流通するオイルLと流体とを熱交換するように構成される。そして、制御部8は、吐出部4からピストン3へのオイルLの供給が停止された場合、新たな熱交換部にオイルLまたは流体を流通させてオイルLと流体とを熱交換させる。例えば、新たな熱交換部は、エンジン1の排気を吸気側に再循環させる排気ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)の通路に配置されて、オイルLと排気とを熱交換するように構成されてもよい。
【0041】
図4に、実施形態2の制御装置2の構成を示す。制御装置2は、熱交換部22をさらに配置し、油路14dを介して熱交換部22をフィルタ7に接続してもよい。
【0042】
熱交換部22は、車両においてオイルLより高い温度の流体が存在する箇所に対応して配置され、内部を流通するオイルLと流体とを熱交換させるように構成されている。
【0043】
制御部8は、ピストン3にオイルLが供給されている場合、熱交換部6を通る油路14aをオイルLが流通するように切換部11を制御すると共に、熱交換部22におけるオイルLまたは流体の流通量を所定値以下に制限する。このとき、所定値は、流体の温度に基づいてピストン3の温度に影響を与えない値に設定されてもよい。一方、制御部8は、吐出部4からピストン3へのオイルLの供給が停止された場合、熱交換部6を通過しない油路をオイルLが流通するように切換部11を制御すると共に、熱交換部22にオイルLまたは流体を流通させる、すなわち所定値を超過する流通量のオイルLまたは流体を流通させる。
【0044】
図5に、車両において熱交換部22が配置される箇所の一例を示す。エンジンシステムは、吸気通路23と、排気通路24と、再循環通路25と、エアクリーナ26と、過給機27と、中間冷却器28と、後処理装置29と、熱交換部22および30と、バルブ31とを有する。
【0045】
吸気通路23は、エンジン1から外部に延びるように配置され、外部から取り入れた空気をエンジン1に導くように形成されている。
【0046】
排気通路24は、エンジン1から外部に延びるように配置され、エンジン1から流入する排気を外部に導くように形成されている。
【0047】
再循環通路25は、排気通路24と吸気通路23とを接続するように配置され、排気通路24を流通するエンジン1の排気の一部を吸気通路23に導いて再循環させる。
【0048】
エアクリーナ26は、吸気通路23の基端部に配置され、外部から吸気通路23に流入する空気を濾過して塵埃を除去する。
【0049】
過給機27は、排気通路24を流通する排気により回転駆動するタービンと、そのタービンと同軸に接続されて、吸気通路23において吸気を圧送するコンプレッサとを有する。
【0050】
中間冷却器28は、吸気通路23において過給機27の下流側に配置され、過給機27で圧縮される吸気を冷却して吸気の密度を高める。
【0051】
後処理装置29は、排気通路24を流通する排気を処理するもので、例えば、酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst:DOC)、ディーゼル・パティキュレート・フィルタ(Diesel Particulate Filter:DPF)、選択的還元触媒(Selective Catalytic Reduction:SCR)などを含んでもよい。DOCは、未燃燃料を酸化して排気温度を上昇させると共に、排気中のNO(一酸化窒素)を酸化してNO2(二酸化窒素)を生成する。DPFは、排気中の粒子状物質を捕集する。SCRは、排気中の窒素酸化物(NOx)を浄化するNOx触媒として、排気熱により尿素水から加水分解されて生成されるアンモニアを用いて排気中のNOxを選択的に還元浄化する。
【0052】
熱交換部30は、再循環通路25に配置され、内部を流通する冷媒と再循環通路25を流通する排気との間で熱交換して排気を冷却する。冷媒は、例えば、エンジン1の冷却水などを用いてもよい。
【0053】
熱交換部22は、エンジン1の排気を吸気側に再循環させる再循環通路に配置され、内部を流通するオイルLを冷媒とし、そのオイルLと排気とを熱交換させて排気を冷却するように構成されている。すなわち、排気は、オイルLより高い温度の流体を示す。また、熱交換部22は、再循環通路25において排気を冷媒と熱交換させる熱交換部30と直列に配置される。
【0054】
ここで、制御装置2の制御部8は、吐出部4からピストン3にオイルLが供給されている場合、熱交換部22におけるオイルLまたは排気の流通量が所定値以下となるように油圧回路5を制御する。一方、制御部8は、吐出部4からピストン3へのオイルLの供給が停止された場合、オイルLが熱交換部22を流通する、すなわち所定値を超過する流通量のオイルLが熱交換部22を流通するように油圧回路5を制御する。
【0055】
バルブ31は、再循環通路25に配置され、再循環通路25の開度を変更して吸気通路23への排気の供給量を調整する。
【0056】
次に、本実施形態の動作について説明する。
【0057】
まず、
図4に示すように、制御部8が、ステップS2においてピストン3にオイルLを供給すると判定した場合、ステップS3で、オイルLを吐出するように吐出部4または流量調整バルブ12を制御する。また、制御部8は、ステップS4で、熱交換部6を通る油路14aをオイルLが流通するように切換部11を制御する。ここで、制御部8は、吐出部4からピストン3にオイルLが供給されている場合、熱交換部22におけるオイルLの流通量を所定値以下とするように油圧回路5を制御する。例えば、制御部8は、吐出部4からオイルLを吐出させる流量調整バルブ12の制御に応じて、熱交換部22におけるオイルLの流通量を所定値以下に自動的に減少させることができる。また、フィルタ7と熱交換部22との間にオイルLの流量を制御する制御弁を配置してもよい。これにより、制御部8は、熱交換部22におけるオイルLの流通量を所定値以下になるように制御弁を制御することができる。
【0058】
一方、制御部8は、ステップS2においてピストン3へのオイルLの供給が停止されていると判定した場合、ステップS5で、オイルLの吐出を停止するように吐出部4または流量調整バルブ12を制御する。また、制御部8は、ステップS6で、熱交換部6をオイルLが通過しない油路14bをオイルLが流通するように切換部11を制御する。ここで、制御部8は、ピストン3へのオイルLの供給が停止されている場合、熱交換部22におけるオイルLの流通量が所定値を超過するように油圧回路5を制御する。例えば、制御部8は、吐出部4からのオイルLの吐出を停止させる流量調整バルブ12の制御に応じて、熱交換部22におけるオイルLの流通量が所定値を超過するように自動的に増加させることができる。また、フィルタ7と熱交換部22との間にオイルLの流量を制御する制御弁を配置してもよい。これにより、制御部8は、熱交換部22におけるオイルLの流通量が所定値を超過するように制御弁を制御することができる。
【0059】
ここで、エンジンシステムでは、
図5に示すように、吸気通路23を流通する吸気が、過給機27により圧送された後、中間冷却器28で冷却されて密度が高められて、エンジン1に順次供給される。また、エンジン1から排出された排気が、排気通路24を流通して後処理装置29で処理された後、外部に排出される。また、排気の一部は、再循環通路25を流通して吸気通路23に供給される。このとき、排気通路24から再循環通路25に流入する排気は、高温であり、オイルLより高い温度を有する。
【0060】
そこで、熱交換部30が、再循環通路25を流通する排気を、冷媒との熱交換により冷却する。また、熱交換部22が、熱交換部30を通過した排気を、オイルLとの熱交換によりさらに冷却する。
【0061】
このように、熱交換部22が、車両においてオイルLより高い温度の流体が存在する箇所に対応して配置される。そして、制御部8が、吐出部4からピストン3へのオイルLの供給が停止された場合、熱交換部22にオイルLを流通させることにより、熱交換部22において内部を流通するオイルLと流体とが熱交換する。これにより、流体の熱がオイルLに伝導されるため、オイルLの温度低下を確実に抑制することができる。そして、オイルLの温度低下を抑制することにより、オイルLをより適切な粘度に維持することができ、オイルLを移送させるポンプ9の駆動損失を確実に抑制することができる。
【0062】
このとき、熱交換部22は、再循環通路25に配置されて、オイルLと排気とを熱交換させる。これにより、オイルLの温度低下を確実に抑制すると共に、再循環通路25を流通する排気を確実に冷却することができる。
【0063】
また、熱交換部22は、再循環通路25において排気を冷媒と熱交換させる熱交換部30に対して直列に配置される。そして、制御部8は、吐出部4からピストン3へのオイルLの供給が停止された場合、オイルLが熱交換部22を流通するように油圧回路5を制御する。これにより、オイルLの温度低下を抑制しつつ、再循環通路25を流通する排気を確実に冷却することができる。
【0064】
なお、熱交換部22は、再循環通路25における排気の流通方向に対して、熱交換部30の下流側に配置してもよい。このように、排気の冷却能力が高い熱交換部30を熱交換部22の下流側に配置することにより、再循環通路25を流通する排気を効率的に冷却することができる。また、再循環通路25において熱交換部30を配置せずに、熱交換部22のみを配置してもよい。
【0065】
本実施形態によれば、熱交換部22が、車両においてオイルLより高い温度の流体に対応して配置され、内部を流通するオイルLと流体とを熱交換させる。そして、制御部8は、吐出部4からピストン3へのオイルLの供給が停止された場合、熱交換部22にオイルLを流通させる。これにより、オイルLの温度低下を確実に抑制することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、制御部8は、吐出部4からピストン3へのオイルLの供給が停止された場合に、熱交換部22にオイルLを流通させることでオイルLと流体の熱交換を制御したが、熱交換部22に流体を流通させることでオイルLと流体の熱交換を制御してもよい。例えば、
図6に示すように、熱交換部22は、再循環通路25において熱交換部30に対して並列に配置してもよい。具体的には、再循環通路25において排気通路24から並列に延びる再循環通路25aと再循環通路25bとを設けてもよい。そして、再循環通路25aに熱交換部30とバルブ32とを配置し、再循環通路25bに熱交換部22とバルブ33とを配置してもよい。バルブ32および33は、例えば、再循環通路25aおよび25bを流通する排気の流通量を変更可能に構成されてもよい。また、バルブ32および33は、制御装置2の制御部8に電気的に接続されてもよい。
【0067】
このような構成により、制御部8は、吐出部4からピストン3にオイルLが供給されている場合、熱交換部30に排気が流通するようにバルブ32を制御する。また、制御部8は、熱交換部22に排気が流通しないようにバルブ33を制御する。これにより、制御部8は、熱交換部22においてオイルLとの間で熱交換されないため、熱交換部6で冷却されたオイルLの温度を維持することができる。一方、制御部8は、吐出部4からピストン3へのオイルLの供給が停止された場合、熱交換部30と熱交換部22にそれぞれ排気が流通するようにバルブ32および33を制御する。これにより、熱交換部22においてオイルLと排気との間で熱交換されるため、オイルLの温度低下を抑制することができる。また、熱交換部22においてオイルLと排気との間で熱交換されるため、排気を確実に冷却することができる。なお、バルブ32は、再循環通路25aに配置しなくてもよい。
【0068】
また、
図7に示すように、バルブ32および33に換えて、方向制御弁34を配置してもよい。例えば、再循環通路25aと再循環通路25bは、排気通路24から分岐するように形成されてもよい。そして、方向制御弁34が、再循環通路25aと再循環通路25bの分岐点に配置されてもよい。ここで、方向制御弁34は、再循環通路25における排気の流通方向を、再循環通路25aおよび25bの少なくとも一方に制御するように構成されてもよい。また、方向制御弁34は、制御装置2の制御部8に電気的に接続されてもよい。
【0069】
このような構成により、制御部8は、吐出部4からピストン3にオイルLが供給されている場合、熱交換部30に排気が流通する一方、熱交換部22に排気が流通しないように方向制御弁34を制御する。これにより、制御部8は、熱交換部22においてオイルLとの間で熱交換されないため、熱交換部6で冷却されたオイルLの温度を維持することができる。一方、制御部8は、吐出部4からピストン3へのオイルLの供給が停止された場合、熱交換部30と熱交換部22にそれぞれ排気が流通するように方向制御弁34を制御する。これにより、熱交換部22においてオイルLと排気との間で熱交換されるため、オイルLの温度低下を抑制することができる。また、熱交換部22においてオイルLと排気との間で熱交換されるため、排気を確実に冷却することができる。
【0070】
(実施形態3)
以下、本開示の実施形態3について説明する。ここでは、上記の実施形態1および2との相違点を中心に説明し、上記の実施形態1および2との共通点については、共通の参照符号を使用して、その詳細な説明を省略する。
【0071】
実施形態2では、熱交換部22は、オイルLより高い温度の排気が流通する再循環通路25に配置されたが、車両においてオイルLより高い温度の流体が存在する箇所に対応して配置されればよく、これに限定されない。
【0072】
例えば、熱交換部22は、過給機27に対応して配置してもよい。この過給機27は、オイルLより高い温度の排気が流通する。また、過給機27のシャフトには、タービンの回転に応じてオイルLより高い温度となる潤滑油が保持されている。このように、過給機27には、オイルLより高い温度の流体が存在することになる。そして、熱交換部22は、内部を流通するオイルLと過給機27に存在する流体とを熱交換する。
【0073】
このような構成により、制御部8は、吐出部4からピストン3にオイルLが供給されている場合、熱交換部22におけるオイルLの流通量を所定値以下とするように油圧回路5を制御する。これにより、制御部8は、熱交換部6で冷却されたオイルLの温度を維持することができる。一方、制御部8は、吐出部4からピストン3へのオイルLの供給が停止された場合、オイルLが熱交換部22を流通するように油圧回路5を制御する。これにより、熱交換部22においてオイルLと過給機27の流体との間で熱交換されるため、オイルLの温度低下を抑制することができる。また、熱交換部22においてオイルLと過給機27の流体との間で熱交換されるため、過給機27の流体を確実に冷却することができる。
【0074】
本実施形態によれば、熱交換部22は、過給機27に対応して配置され、オイルLと過給機27に存在する流体とを熱交換する。これにより、オイルLの温度低下を確実に抑制することができる。
【0075】
その他、上記の実施形態は、何れも本発明の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、上記の実施形態で説明した各部の形状や個数などについての開示はあくまで例示であり、適宜変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本開示に係る制御装置は、ピストンに向かって吐出されるオイルを導く油圧回路を制御する装置に利用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 エンジン
2 制御装置
3 ピストン
4 吐出部
4a 吐出口
5 油圧回路
6,22,30 熱交換部
7 フィルタ
8 制御部
9 ポンプ
10 調圧弁
11 切換部
12 流量調整バルブ
13 オイルパン
14,14a~14d 油路
15 エンジン摺動部
23 吸気通路
24 排気通路
25,25a,25b 再循環通路
26 エアクリーナ
27 過給機
28 中間冷却器
29 後処理装置
31,32,33 バルブ
34 方向制御弁
L オイル
【要約】
【課題】オイルの温度低下を抑制する制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置は、エンジンのピストンに向かってオイルを吐出する吐出部に前記オイルを導く油圧回路を制御する制御装置であって、前記オイルを圧送するポンプと、前記圧送されたオイルを流すための第1流路と、前記第1流路に配置され、前記第1流路を流れる前記オイルとの熱交換により、前記オイルの温度を低下させる第1熱交換部と、前記圧送されたオイルを流すための第2流路と、前記圧送されたオイルを前記第1流路および前記第2流路のいずれかに流すことを切り換える切換部と、を有する。
【選択図】
図2