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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】車両用電子制御装置及び更新プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 8/65 20180101AFI20241016BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G06F8/65
B60R16/02 660U
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023522578
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2022018438
(87)【国際公開番号】W WO2022244588
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2021086157
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】上原 一浩
【審査官】大倉 崚吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-009658(JP,A)
【文献】国際公開第2020/170407(WO,A1)
【文献】特開2015-041334(JP,A)
【文献】特開2010-245716(JP,A)
【文献】米国特許第07546595(US,B1)
【文献】国際公開第2020/090418(WO,A1)
【文献】特開2020-190479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/60-8/658
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から更新データをダウンロードするダウンロード処理を実行するダウンロード処理実行部に対し、前記ダウンロード処理の実行を指示する第1実行指示部(35)と、
更新データをインストールして更新後のソフトウェアを生成するインストール処理及び更新後のソフトウェアを有効とするアクティベート処理を実行する更新対象ノードに対し、前記インストール処理の実行及び前記アクティベート処理の実行を指示する第2実行指示部(36~38)と、
前記第1実行指示部又は前記第2実行指示部に対し、実行要求を、前記更新対象ノードのソフトウェアを更新する際の通信方式や処理の手続きの種別に基づく更新手法単位で送信し、前記ダウンロード処理、前記インストール処理及び前記アクティベート処理のうち何れかの実行を、前記更新対象ノードのソフトウェアを更新する際の通信方式や処理の手続きの種別に基づく更新手法単位で要求する実行要求部(34b)と、を備え
前記実行要求部は、前記第2実行指示部に対し、前記インストール処理に係る実行要求を前記更新手法単位で送信することで、前記インストール処理を前記更新手法単位で一括して要求する車両用電子制御装置。
【請求項2】
外部から諸元データを取得する諸元データ取得部(34a)を備え、
前記実行要求部は、前記諸元データに基づいて前記実行要求の送信対象及び送信順序を決定する請求項1に記載した車両用電子制御装置。
【請求項3】
前記実行要求部は、前記ダウンロード処理、前記インストール処理及び前記アクティベート処理を対象とし、前記ダウンロード処理の実行を要求する前に、前記実行要求の送信対象及び送信順序を決定する請求項2に記載した車両用電子制御装置。
【請求項4】
前記実行要求部は、前記ダウンロード処理、前記インストール処理及び前記アクティベート処理を対象とし、何れかの処理を完了する都度、前記実行要求の次の送信対象を決定する請求項2に記載した車両用電子制御装置。
【請求項5】
状態を判定する状態判定部(34c)を備え、
前記実行要求部は、前記ダウンロード処理、前記インストール処理及び前記アクティベート処理を実行可能な状態であることが前記状態判定部により判定されていることを条件とし、その実行可能な状態である処理の実行を要求する請求項1から4の何れか一項に記載した車両用電子制御装置。
【請求項6】
前記ダウンロード処理、前記インストール処理、前記アクティベート処理のうち何れかに係るユーザからの承諾結果を受信する承諾結果受信部(34d)と、
何れかの承諾結果が前記承諾結果受信部により受信されると、その受信された承諾結果を外部に送信する承諾結果送信部(34e)と、を備える請求項1から5の何れか一項に記載した車両用電子制御装置。
【請求項7】
前記第1実行指示部は、前記ダウンロード処理の完了を特定すると、ダウンロード処理完了通知を送信し、
前記第2実行指示部は、前記インストール処理の完了を特定すると、インストール処理完了通知を送信し、前記アクティベート処理の完了を特定すると、アクティベート処理完了通知を送信し、
前記ダウンロード処理完了通知、前記インストール処理完了通知、前記アクティベート処理完了通知のうち何れかを受信する処理完了通知受信部(34f)と、
何れかの処理完了通知が前記処理完了通知受信部により受信されると、その受信された処理完了通知を外部に送信する処理完了通知送信部(34e)と、を備える請求項1から6の何れか一項に記載した車両用電子制御装置。
【請求項8】
前記実行要求部は、前記第1実行指示部又は前記第2実行指示部に対し、実行要求を更新手法単位で送信した後に、前記ダウンロード処理、前記インストール処理及び前記アクティベート処理のうち何れかが実行されておらず実行要求の再送条件が成立すると、実行要求を再送する請求項1から7の何れか一項に記載した車両用電子制御装置。
【請求項9】
前記実行要求部は、実行中処理の優先度よりも後続処理の優先度が高い場合には、前記実行中処理を中断し、前記後続処理の実行要求を送信し、前記後続処理を完了後に当該中断した処理の再開を要求する請求項1から8の何れか一項に記載した車両用電子制御装置。
【請求項10】
外部から更新データをダウンロードするダウンロード処理を実行するダウンロード処理実行部に対し、前記ダウンロード処理の実行を指示する第1実行指示部(35)と、
更新データをインストールして更新後のソフトウェアを生成するインストール処理及び更新後のソフトウェアを有効とするアクティベート処理を実行する更新対象ノードに対し、前記インストール処理の実行及び前記アクティベート処理の実行を指示する第2実行指示部(36~38)と、を備える車両用電子制御装置(13)の制御部(33)に、
前記第1実行指示部又は前記第2実行指示部に対し、実行要求を、前記更新対象ノードのソフトウェアを更新する際の通信方式や処理の手続きの種別に基づく更新手法単位で送信し、前記ダウンロード処理、前記インストール処理及び前記アクティベート処理のうち何れかの実行を、前記更新対象ノードのソフトウェアを更新する際の通信方式や処理の手続きの種別に基づく更新手法単位で要求する実行要求手順を実行させ、
前記実行要求手順は、前記第2実行指示部に対し、前記第2実行指示部に対し、前記インストール処理に係る実行要求を前記更新手法単位で送信することで、前記インストール処理を前記更新手法単位で一括して要求する更新プログラム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年5月21日に出願された日本出願番号2021-086157号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、車両用電子制御装置及び更新プログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
近年、運転支援機能や自動運転機能等の車両制御の多様化に伴い、車両の電子制御装置(以下、ECU(Electronic Control Unit)と称する)等のノードに搭載される車両制御や診断等のプログラムやデータを含むソフトウェアの規模が増大している。又、機能改善等によるバージョンアップに伴い、ノードの動作に必要なソフトウェアを更新する(リプログする)機会も増えつつある。一方、通信ネットワークの進展等に伴い、コネクッテッドカーの技術も普及している。このような事情から、車両側にゲートウェイECUとして機能する車両用電子制御装置が設けられ、車両用電子制御装置において、センター装置からダウンロードした更新データを更新対象ノードに配信し、更新対象ノードのソフトウェアをOTA(Over The Air)により更新する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-27627号公報
【発明の概要】
【0005】
更新対象となり得るノードは多種多様であり、ソフトウェアの更新手法が異なる場合がある。例えば運転支援や自動運転のためのADAS(Advanced Driving Assistant System)系のノードのソフトウェアを更新する場合には高速なファイル通信でデータ転送し、車両走行のための駆動系のノードのソフトウェアを更新する場合にはダイアグ通信でデータ転送するというように更新手法が異なる。そのため、1つのキャンペーン情報において複数の更新対象ノードのソフトウェアを異なる更新手法で更新する場合がある。そのような場合、更新順序を適切に管理せずに複数の更新手法を同時に実行してしまうと、意図しない組み合わせでソフトウェアが更新されてしまう虞がある。
【0006】
本開示は、複数の更新対象ノードのソフトウェアを異なる更新手法で更新する場合に、ソフトウェアを適切に更新することを目的とする。
【0007】
本開示の一態様によれば、第1実行指示部は、外部から更新データをダウンロードするダウンロード処理を実行するダウンロード処理実行部に対し、ダウンロード処理の実行を指示する。第2実行指示部は、更新データをインストールして更新後のソフトウェアを生成するインストール処理及び更新後のソフトウェアを有効とするアクティベート処理を実行する更新対象ノードに対し、インストール処理の実行及びアクティベート処理の実行を指示する。実行要求部は、第1実行指示部又は第2実行指示部に対し、実行要求を、更新対象ノードのソフトウェアを更新する際の通信方式や処理の手続きの種別に基づく更新手法単位で送信し、ダウンロード処理、インストール処理及びアクティベート処理のうち何れかの実行を、更新対象ノードのソフトウェアを更新する際の通信方式や処理の手続きの種別に基づく更新手法単位で要求する。実行要求部は、第2実行指示部に対し、インストール処理に係る実行要求を更新手法単位で送信することで、インストール処理を更新手法単位ごとに一括して要求する。
【0008】
ダウンロード処理、インストール処理及びアクティベート処理のうち何れかの実行を、更新対象ノードのソフトウェアを更新する際の通信方式や処理の手続きの種別に基づく更新手法単位で要求することで、ダウンロード処理、インストール処理及びアクティベート処理のうち何れかを、更新対象ノードのソフトウェアを更新する際の通信方式や処理の手続きの種別に基づく更新手法単位で実行させるようにした。複数の更新対象ノードのソフトウェアを異なる更新手法で更新する場合に、複数の更新手法を同時に実行してしまう事態や複数の更新手法を不適切な順序で実行してしまう事態を回避することができる。これにより、意図しない組み合わせでソフトウェアが更新されてしまう事態を回避することができ、ソフトウェアを適切に更新することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示についての上記目的及びその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
図1図1は、一実施形態の全体構成を示す図であり、
図2図2は、CGWの電気的な構成を示す図であり、
図3図3は、ECUの電気的な構成を示す図であり、
図4図4は、CGWの機能ブロック図であり、
図5図5は、諸元データのうち実行要求の送信対象を示す図であり、
図6図6は、諸元データのうち実行要求の送信順序を示す図であり、
図7図7は、処理の流れを示す図(その1)であり、
図8図8は、処理の流れを示す図(その2)であり、
図9図9は、フローチャート(その1)であり、
図10図10は、フローチャート(その2)であり、
図11図11は、フローチャート(その3)であり、
図12図12は、フローチャート(その4)であり、
図13図13は、フローチャート(その5)であり、
図14図14は、フローチャート(その6)であり、
図15図15は、フローチャート(その7)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。
車両用電子制御システムは、電子制御装置(以下、ECU(Electronic Control Unit)と称する)に搭載されている車両制御や診断等のソフトウェアをOTA(Over The Air)により更新可能なシステムである。ソフトウェアは、車両制御や診断等の機能を実現するためのプログラムやデータを含み、アプリケーションと表現することもできる。本実施形態では、車両制御や診断等のソフトウェアを更新する場合について説明するが、例えば地図アプリや当該地図アプリで使用される地図データ等を更新する場合にも適用することができる。
【0011】
図1に示すように、車両用電子制御システム1は、通信ネットワーク2側のセンター装置3と、車両側の車両側システム4及び表示端末5とを有する。通信ネットワーク2は、例えば4G回線等による移動体通信ネットワーク、インターネット、WiFi(Wireless Fidelity)(登録商標)等を含んで構成される。
【0012】
HMI(Human Machine Interface)としての表示端末5は、ユーザからの操作入力を受付ける機能や各種画面を表示する機能を有する端末であり、例えばユーザが携帯可能なスマートフォンやタブレット等の携帯端末6、車室内に配置されている車載ディスプレイ7である。携帯端末6は、移動体通信ネットワークの通信圏内であれば、通信ネットワーク2を介してセンター装置3とデータ通信可能である。車載ディスプレイ7は、車両側システム4に接続されており、ナビゲーション機能を兼用する構成であっても良い。又、車載ディスプレイ7は、ECUの機能を有する車載ディスプレイECUであっても良いし、センターディスプレイやメータディスプレイ等への表示を制御する機能を有していても良い。
【0013】
ユーザは、車室外であって移動体通信ネットワークの通信圏内であれば、ソフトウェアの更新に関与する各種画面を携帯端末6により確認しながら操作入力を行い、ソフトウェアの更新に関与する手続きを可能である。ユーザは、車室内では、ソフトウェアの更新に関与する各種画面を車載ディスプレイ7により確認しながら操作入力を行い、ソフトウェアの更新に関与する手続きを可能である。即ち、ユーザは、車室外と車室内で携帯端末6と車載ディスプレイ7を使い分け、ソフトウェアの更新に関与する手続きを可能である。
【0014】
センター装置3は、車両用電子制御システム1において通信ネットワーク2側のソフトウェアの更新機能を統括し、OTAサービスを提供するOTAセンターとして機能する。センター装置3は、ファイルサーバ8と、ウェブサーバ9と、管理サーバ10とを有し、各サーバ8~10が相互にデータ通信可能に構成されている。即ち、センター装置3は、機能毎に異なる複数のサーバを含んで構成されている。
【0015】
ファイルサーバ8は、センター装置3から車両側システム4に配信されるソフトウェアのファイルを管理するサーバである。ファイルサーバ8は、センター装置3から車両側システム4に配信されるソフトウェアの提供事業者であるサプライヤ等から提供される更新データ、OEM(Original Equipment Manufacturer)から提供される諸元データ、車両側システム4から取得する車両状態等を管理する。
【0016】
ファイルサーバ8は、通信ネットワーク2を介して車両側システム4との間でデータ通信可能であり、キャンペーン情報を車両側システム4に送信し、諸元データを車両側システム4に送信する。又、ファイルサーバ8は、車両側システム4からパッケージデータのダウンロード要求を受信すると、更新データがパッケージ化されたパッケージデータを車両側システム4に送信する。パッケージデータは、圧縮されているzip形式のファイルを含む。尚、ファイルサーバ8は、諸元データと更新データとがパッケージ化されたパッケージデータを車両側システム4に送信することで、諸元データと更新データとを車両側システム4に同時に送信しても良い。
【0017】
ウェブサーバ9は、ウェブ情報を管理するサーバである。ウェブサーバ9は、携帯端末6等が有するウェブブラウザからの要求に応じて自己が管理するウェブデータを送信する。管理サーバ10は、ソフトウェアの更新のサービスに登録しているユーザの個人情報、車両毎のソフトウェアの更新履歴等を管理するサーバである。
【0018】
車両側システム4は、車両用マスタ装置11を有する。車両用マスタ装置11は、車両用電子制御システム1において車両側のソフトウェアの更新機能を統括し、OTAマスタとして機能する。車両用マスタ装置11は、DCM(Data Communication Module)12と、CGW(Central Gate Way)13とを有する。
【0019】
DCM12は、センター装置3との間で通信ネットワーク2を介してデータ通信を行い、ダウンロード処理実行部に相当する。CGW13は、ゲートウェイECUとして機能し、車両用電子制御装置に相当する。DCM12とCGW13とは、第1バス14を介してデータ通信可能に接続されている。図1では、DCM12と車載ディスプレイ7が同一の第1バス14に接続されている構成を例示しているが、DCM12と車載ディスプレイ7とが別々のバスに接続されている構成でも良い。又、DCM12の機能の一部又は全体をCGW13が有する構成でも良いし、CGW13の機能の一部又は全体をDCM12が有する構成でも良い。即ち、車両用マスタ装置11において、DCM12とCGW13との機能分担がどのように構成されていても良い。車両用マスタ装置11は、DCM12及びCGW13の2つのECUから構成されても良いし、DCM12の機能とCGW13の機能とを有する1つの統合ECUで構成されても良い。
【0020】
CGW13には、第1バス14に加え、第2バス15と、第3バス16と、第4バス17と、第5バス18とが車内側のバスとして接続されており、バス15~17を介して各種ECU19が接続されていると共に、バス18を介して電源管理ECU20が接続されている。ECU19はノードに相当する。
【0021】
第2バス15は、例えばマルチメディア系のバスであり、マルチメディア系の制御を行うECU19が接続されている。第3バス16は、例えば運転支援や自動運転のためのADAS系のバスであり、ADAS系の制御を行うECU19が接続されている。第4バス17は、例えば車両走行のための駆動系のバスであり、駆動系の制御を行うECU19が接続されている。バス15~17は、マルチメディア系のバス、ADAS系のバス、駆動系のバス以外の系統のバスであっても良い。又、バスの本数やECU19の個数は例示した構成に限らない。又、バスは系統毎に分けられている必要はなく、例えば車両の前方と後方等、制御対象となるECU19の場所に応じて分けられても良いし、系統とECU19の設定場所に応じて分けられても良い。電源管理ECU20は、DCM12、CGW13、各種ECU19等に供給する電源を管理するECUである。
【0022】
CGW13には、第6バス21が車外側のバスとして接続されている。第6バス21には、サービスツールとして機能するツール23が着脱可能に接続されるDLC(Data Link Coupler)コネクタ22が接続されている。車内側のバス14~18及び車外側のバス21は、例えばCAN(Controller Area Network、登録商標)バスにより構成されており、CGW13は、CANのデータ通信規格や診断通信規格(UDS(Unified Diagnosis Services):ISO14229)にしたがってDCM12と、各種ECU19と、ツール23との間でデータ通信を行う。尚、DCM12とCGW13とがイーサーネットにより接続されていても良いし、DLCコネクタ22とCGW13とがイーサーネットにより接続されても良い。
【0023】
CGW13は、パッケージデータをダウンロード可能な条件が成立していることを条件とし、パッケージデータのダウンロード要求をDCM12を介してセンター装置3に送信する。パッケージデータをダウンロード可能な条件とは、ダウンロードの承諾が得られていること、CGW13がDCM12を介してセンター装置3とデータ通信可能であること、DCM12のストレージの空き容量が所定容量以上であること、車載バッテリの残容量が所定容量以上であること等である。CGW13は、センター装置3からDCM12を介してパッケージデータをダウンロードすると、そのダウンロードしたパッケージデータから更新データを取得する。
【0024】
CGW13は、更新データを書込むインストールを指示可能な条件が成立していることを条件とし、その取得した更新データのインストールをソフトウェアの更新対象ECU19に指示する。インストールを指示可能な条件とは、インストールの承諾が得られていること、車両状態がインストール可能な状態であること、更新対象ECU19がインストール可能な状態であること、更新データが正常なデータであること、車載バッテリの残容量が所定容量以上であること等である。更新対象ECU19は、CGW13から更新データのインストールが指示されると、更新データのインストールを実行する。
【0025】
CGW13は、更新対象ECU19において更新データのインストールが完了すると、インストール完了後のソフトウェアを有効とするアクティベートを指示可能な条件が成立していることを条件とし、アクティベートを更新対象ECU19に指示する。アクティベートを指示可能な条件とは、アクティベートの承諾が得られていること、車両状態がアクティベート可能な状態であること、更新対象ECU19がアクティベート可能な状態であること、車載バッテリの残容量が所定容量以上であること等である。更新対象ECU19は、CGW13からアクティベートが指示されると、アクティベートを実行する。
【0026】
図2に示すように、CGW13は、電気的な機能ブロックとして、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと称する)24と、ストレージ25と、データ転送回路26と、電源回路27と、電源検出回路28とを有する。マイコン24は、非遷移的実体的記憶媒体に格納されている各種制御プログラムを実行して各種処理を行い、CGW13の動作を制御する。本実施形態では、CGW13に1個のマイコン24が搭載されている構成を例示しているが、CGW13に搭載されるマイコンの個数、スペック、組み合わせは、CGW13に要求される処理能力に応じて決定される。即ち、CGW13に比較的高い処理能力が要求される場合であれば、比較的高いスペックのマイコンが採用されたり、分散処理や並列処理を実現するために複数のマイコンが採用されたりする。
【0027】
ストレージ25は、例えばeMMC(embedded Multi Media Card)、NorFlashである。データ転送回路26は、バス14~18,21との間のCANのデータ通信規格、イーサーネットの通信規格、診断通信規格等に準拠したデータ通信を制御する。電源回路27は、バッテリ電源、アクセサリ電源、イグニッション電源を入力する。電源検出回路28は、電源回路27が入力するバッテリ電源の電圧値、アクセサリ電源の電圧値、イグニッション電源の電圧値を検出し、これらの検出した電圧値を所定の電圧閾値と比較し、その比較結果をマイコン24に出力する。マイコン24は、電源検出回路28から入力する比較結果により、外部からCGW13に供給されているバッテリ電源、アクセサリ電源、イグニッション電源が正常であるか異常であるかを判定する。
【0028】
図3に示すように、ECU19は、電気的な機能ブロックとして、マイコン29と、データ転送回路30と、電源回路31と、電源検出回路32とを有する。マイコン29は、CPU29aと、ROM29bと、RAM29cと、フラッシュメモリ29dとを有する。フラッシュメモリ29dには、ECU19の外部から情報の読出しが不可であるセキュア領域が含まれる。マイコン29は、非遷移的実体的記憶媒体に格納されている各種制御プログラムを実行して各種処理を行い、ECU19の動作を制御する。
【0029】
データ転送回路30は、バス15~17との間のCANのデータ通信規格、イーサーネットの通信規格等に準拠したデータ通信を制御する。電源回路31は、バッテリ電源、アクセサリ電源、イグニッション電源を入力する。電源検出回路32は、電源回路31が入力するバッテリ電源の電圧値、アクセサリ電源の電圧値、イグニッション電源の電圧値を検出し、これらの検出した電圧値を所定の電圧閾値と比較し、その比較結果をマイコン29に出力する。マイコン29は、電源検出回路32から入力する比較結果により、外部からECU19に供給されているバッテリ電源、アクセサリ電源、イグニッション電源が正常であるか異常であるかを判定する。尚、ECU19は、自己が接続する例えばセンサやアクチュエータ等の負荷が異なり、基本的には同等の構成である。
【0030】
上記した構成において、更新対象となり得るECU19が多種多様であることから、マルチメディア系のECU19、ADAS系のECU19、駆動系のECU19では、ソフトウェアの更新手法が異なる場合がある。例えばADAS(Advanced Driving Assistant System)系のECU19のソフトウェアを更新する場合には高速なファイル通信でデータ転送し、駆動系のECU19のソフトウェアを更新する場合にはダイアグ通信でデータ転送するというように更新手法が異なる。このようにソフトウェアの更新手法が異なる複数のECU19が混在する構成に対し、CGW13は以下の構成を採用している。更新手法が異なるとは、上記したようにデータ転送する通信方式が異なること以外に、データ転送する通信方式が同じでもECU19の系統が異なることも意味する。更新手法とは、ECU19のソフトウェアを更新する際の方式や順序であり、方式や順序とは、より具体的には、例えばストレージやストリーミング等のデータ転送する通信方式や更新に必要な処理の手続きの種別を示す。尚、1つの更新手法により更新対象となるECU19は1つに限らず、纏めて更新される複数のECU19の場合もある。
【0031】
図4に示すように、CGW13は、制御部33において、全体管理部34と、ダウンローダ35と、第1更新マスタ36と、第2更新マスタ37と、第3更新マスタ38と、諸元データ記憶部39とを有する。ダウンローダ35は、第1実行指示部に相当する。第1更新マスタ36、第2更新マスタ37及び第3更新マスタ38は、第2実行指示部に相当する。全体管理部34は、諸元データ取得部34aと、実行要求部34bと、状態判定部34cと、承諾結果受信部34dと、承諾結果送信部34eと、処理完了通知受信部34fと、処理完了通知送信部34gとを有する。各部34~38,34a~34gは更新プログラムにより実行される機能に相当する。即ち、制御部33は、更新プログラムを実行することで各部34~38,34a~34gの機能を行う。尚、図4では、例えば第1更新マスタ36がマルチメディア系のECU19と接続されているが、更新マスタとECU19の関係はこのような対応関係以外でも良い。第1更新マスタ36とADAS系のECU19が接続されているならば、第1更新マスタ36がADAS系のECU19の更新処理を管理しても良い。又、第1更新マスタ36が駆動系のECU19の更新処理を管理しても良い。
【0032】
ダウンローダ35は、全体管理部34からのダウンロード実行要求の受信を契機としてDCM12に対してダウンロード処理の実行を指示する。第1更新マスタ36は、マルチメディア系のECU19の更新処理を管理し、マルチメディア系のECU19に対し、全体管理部34からのインストール実行要求の受信を契機としてインストール処理の実行を指示し、アクティベート実行要求の受信を契機としてアクティベート処理の実行を指示する。第2更新マスタ37は、ADAS系のECU19の更新処理を管理し、ADAS系のECU19に対し、全体管理部34からのインストール実行要求の受信を契機としてインストール処理の実行を指示し、アクティベート実行要求の受信を契機としてアクティベート処理の実行を指示する。第3更新マスタ38は、駆動系のECU19の更新処理を管理し、駆動系のECU19に対し、全体管理部34からのインストール実行要求の受信を契機としてインストール処理の実行を指示し、アクティベート実行要求の受信を契機としてアクティベート処理の実行を指示する。換言すると、更新マスタ36~38は、管理対象とするECU19の更新処理を管理し、全体管理部34からのインストール実行要求の受信を契機としてインストール処理の実行を指示し、アクティベート実行要求の受信を契機としてアクティベート処理の実行を指示する。一例として、CGW13において、全体管理部34、ダウンローダ35、更新マスタ36~38をそれぞれ機能的に独立したモジュールとしている。このような構成を採用することで、ソフトウェア構成を簡素化すると共に、システムの品質保証を適切に確保することができる。更には、それぞれを独立した状態でソフトウェア開発することが可能になり、開発効率が向上する。
【0033】
諸元データ取得部34aは、パッケージデータから諸元データを取得し、その取得した諸元データを諸元データ記憶部39に記憶する。諸元データは、ソフトウェアの更新に関する各種情報を含み、その一つとして、図5に示す実行要求の送信対象に関する情報、図6に示す実行要求の送信順序に関する情報を含む。実行要求の送信対象に関する情報は、更新マスタ、更新マスタのノードID、実行要求の送信対象とする処理の項目を含む。図5では、インストール実行要求の送信対象が、第1更新マスタ36、第2更新マスタ37、第3更新マスタ38であり、アクティベート実行要求の送信対象が、第1更新マスタ36、第2更新マスタ37、第3更新マスタ38であることを例示している。実行要求の送信順序に関する情報は、更新マスタ36~38を対象としてインストール処理及びアクティベート処理の優先順位を含む。図6では、インストール実行要求を第1更新マスタ36、第2更新マスタ37、第3更新マスタ38の順序で送信し、アクティベート実行要求を第1更新マスタ36、第2更新マスタ37、第3更新マスタ38に同時に送信することを例示している。即ち、諸元データは、ダウンロード処理、インストール処理、アクティベート処理の実行を更新手法単位で要求する際の実行要求の送信対象及び送信順序を特定可能な情報を含むデータ構造である。尚、ダウンロード、インストール、アクティベートの何れであるかを示す実行要求の種別と、実行要求の送信対象及び送信順序とを指定する形式であれば、データ構造は他の形式であっても良い。
【0034】
実行要求部34bは、ダウンロード実行要求をダウンローダ35に送信することで、ダウンロード処理の実行をダウンローダ35からDCM12に指示し、DCM12においてダウンロード処理を実行させる。実行要求部34bは、インストール実行要求を更新マスタ36~38に送信することで、インストール処理の実行を更新マスタ36~38から更新対象ECU19に指示し、更新対象ECU19においてインストール処理を実行させる。実行要求部34bは、アクティベート実行要求を更新マスタ36~38に送信することで、アクティベート処理の実行を更新マスタ36~38から更新対象ECU19に指示し、更新対象ECU19においてアクティベート処理を実行させる。
【0035】
状態判定部34cは、ダウンロード処理を実行可能な状態であるか否か、インストール処理を実行可能な状態であるか否か、アクティベート処理を実行可能な状態であるか否かを判定する。状態判定部34cは、上記したパッケージデータをダウンロード可能な条件を判定することで、ダウンロード処理を実行可能な状態であるか否かを判定する。状態判定部34cは、上記したインストールを指示可能な条件を判定することで、インストール処理を実行可能な状態であるか否かを判定する。状態判定部34cは、上記したアクティベートを指示可能な条件を判定することで、アクティベート処理を実行可能な状態であるか否かを判定する。
【0036】
承諾結果受信部34dは、ダウンロード処理、インストール処理、アクティベート処理のユーザからの承諾結果を受信する。承諾結果送信部34eは、ダウンロード処理、インストール処理、アクティベート処理のユーザからの承諾結果が承諾結果受信部34dにより受信されると、その受信された承諾結果をセンター装置3に送信する。
【0037】
処理完了通知受信部34fは、ダウンローダ35からダウンロード処理の完了を示すダウンロード処理完了通知を受信する。処理完了通知受信部34fは、更新マスタ36~38からインストール処理の完了を示すインストール処理完了通知、アクティベート処理の完了を示すアクティベート処理完了通知を受信する。処理完了通知送信部34gは、ダウンロード処理完了通知が処理完了通知受信部34fにより受信されると、その受信されたダウンロード処理完了通知をセンター装置3に送信する。処理完了通知送信部34gは、インストール処理完了通知、アクティベート処理完了通知が処理完了通知受信部34fにより受信されると、その受信されたインストール処理完了通知、アクティベート処理完了通知をセンター装置3に送信する。
【0038】
次に、上記した構成の作用について図7から図15を参照して説明する。ここでは、図5及び図6に示したように、諸元データにより実行要求の送信対象及び送信順序が設定されていることを前提として説明する。
【0039】
CGW13の制御部33において、全体管理部34は、センター装置3からDCM12を介してキャンペーン情報を受信した(t1)、又は更新マスタ36~38の何れかからイベント通知を受信したと判定すると(S1:YES、t2)、センター装置3からの諸元データの受信を待機する(S2)。全体管理部34は、センター装置3からDCM12を介して諸元データを受信したと判定すると(S2:YES、t3)、その受信した諸元データを諸元データ記憶部39に記憶し、その諸元データを参照して実行要求の送信対象及び送信順序を決定する(S3)。全体管理部34は、例えば前述したようにインストール実行要求を第1更新マスタ36、第2更新マスタ37、第3更新マスタ38の順序で送信すること、アクティベート実行要求を第1更新マスタ36、第2更新マスタ37、第3更新マスタ38に同時に送信することを決定する。
【0040】
全体管理部34は、ダウンロード承諾画面表示要求をHMIに送信し(S4、t4)、HMIからの承諾結果の受信を待機する(S5)。HMIは、全体管理部34からダウンロード承諾画面表示要求を受信すると、ダウンロードの承諾画面を表示し、ユーザが承諾許可の操作を行うと、承諾許可を示す承諾結果を全体管理部34に送信する(t5)。
【0041】
全体管理部34は、HMIから承諾許可を示す承諾結果を受信したと判定すると(S5:YES)、承諾許可を示す承諾結果をDCM12を介してセンター装置3に送信する(S6、t6)。全体管理部34は、ダウンロード処理を実行可能な状態であるか否かを判定し(S7)、ダウンロード処理を実行可能な状態であると判定すると(S7:YES)、ダウンロード実行要求をダウンローダ35に送信し(S8、t7、実行要求手順に相当する)、ダウンローダ35からのダウンロード実行要求に対するACKの受信を待機する(S9)。ダウンローダ35は、全体管理部34からダウンロード実行要求を受信すると、ACKを全体管理部34に返信する。
【0042】
全体管理部34は、ダウンローダ35からACKを受信したと判定すると(S9:YES)、ダウンロード処理の実行をダウンローダ35からDCM12に指示する(S10)。全体管理部34は、ダウンロード処理の実行をダウンローダ35からDCM12に指示すると、ダウンローダ35からのダウンロード処理完了通知の受信を待機すると共に(S11)、ダウンロード処理の実行を指示してからの経過時間を監視する(S12)。
【0043】
ダウンローダ35は、全体管理部34からダウンロード実行要求を受信したことで、パッケージデータのダウンロード要求をDCM12を介してセンター装置3に送信する(t8)。センター装置3は、CGW13からパッケージデータのダウンロード要求を受信すると、パッケージデータをDCM12に配信する(t9)。DCM12は、センター装置3からのパッケージデータのダウンロード処理を開始し、ダウンロード処理を完了すると、ダウンロード処理完了通知をダウンローダ35に送信する。ダウンローダ35は、DCM12からダウンロード処理完了通知を受信すると、ダウンロード処理完了通知を全体管理部34に送信する(t10)。
【0044】
全体管理部34は、ダウンロード処理の実行を指示してから一定時間が経過する前に、ダウンローダ35からダウンロード処理完了通知を受信したと判定すると(S11:YES)、ダウンロード処理完了通知をDCM12を介してセンター装置3に送信する(S13、t11)。
【0045】
一方、全体管理部34は、ダウンローダ35からダウンロード処理完了通知を受信する前に、ダウンロード処理の実行を指示してから一定時間が経過したと判定すると(S12:YES)、リトライ回数が予め設定している上限回数に達しているか否かを判定する(S14)。全体管理部34は、リトライ回数が上限回数に達していないと判定すると(S14:NO)、ダウンロード実行要求をダウンローダ35に再送し(S15)、リトライ回数をインクリメントし(S16)、ステップS11,S12に戻る。全体管理部34は、リトライ回数が上限回数に達したと判定すると(S14:YES)、ダウンロード処理のエラーを示すエラー通知をDCM12を介してセンター装置3に送信する(S17)。
【0046】
全体管理部34は、DCM12によるダウンロード処理を完了すると、インストール承諾画面表示要求をHMIに送信し(S18、t12)、HMIからの承諾結果の受信を待機する(S19)。HMIは、全体管理部34からインストール承諾画面表示要求を受信すると、インストールの承諾画面を表示し、ユーザが承諾許可の操作を行うと、承諾許可を示す承諾結果を全体管理部34に送信する(t13)。
【0047】
全体管理部34は、HMIから承諾許可を示す承諾結果を受信したと判定すると(S19:YES)、承諾許可を示す承諾結果をDCM12を介してセンター装置3に送信する(S20、t14)。全体管理部34は、インストール処理を実行可能な状態であるか否かを判定し(S21)、インストール処理を実行可能な状態であると判定すると(S21:YES)、ソフトウェアの更新対象とする更新マスタ36~38の中でインストール処理の優先順位が最上位である更新マスタ36を対象とし、インストール実行要求を更新マスタ36に送信し(S22、t15、実行要求手順に相当する)、更新マスタ36からのインストール実行要求に対するACKの受信を待機する(S23)。更新マスタ36は、全体管理部34からインストール実行要求を受信すると、ACKを全体管理部34に返信する。
【0048】
全体管理部34は、更新マスタ36からACKを受信したと判定すると(S23:YES)、インストール処理の実行を更新マスタ36から更新対象ECU19に指示する(S24)。全体管理部34は、インストール処理の実行を更新マスタ36から更新対象ECU19に指示すると、更新マスタ36からのインストール処理完了通知の受信を待機すると共に(S25)、インストール処理の実行を指示してからの経過時間を監視する(S26)。
【0049】
更新マスタ36により管理される更新対象ECU19は、更新マスタ36からインストール処理の実行が指示されると、インストール処理を開始し、インストール処理を完了すると、インストール処理完了通知を更新マスタ36に送信する。更新マスタ36は、更新対象ECU19からインストール処理完了通知を受信すると、インストール処理完了通知を全体管理部34に送信する(t16)。この場合、更新マスタ36により管理される更新対象ECU19が複数であれば、更新マスタ36は、全ての更新対象ECU19からインストール処理完了通知を受信すると、インストール処理完了通知を全体管理部34に送信する。
【0050】
全体管理部34は、インストール処理の実行を更新マスタ36に指示してから一定時間が経過する前に、更新マスタ36からインストール処理完了通知を受信したと判定すると(S25:YES)、インストール処理完了通知をDCM12を介してセンター装置3に送信する(S27、t17)。
【0051】
一方、全体管理部34は、更新マスタ36からインストール処理完了通知を受信する前に、インストール処理の実行を更新マスタ36に指示してから一定時間が経過したと判定すると(S26:YES)、リトライ回数が予め設定している上限回数に達しているか否かを判定する(S28)。全体管理部34は、リトライ回数が上限回数に達していないと判定すると(S28:NO)、インストール実行要求を更新マスタ36に再送し(S29)、リトライ回数をインクリメントし(S30)、ステップS25,S26に戻る。全体管理部34は、リトライ回数が上限回数に達したと判定すると(S28:YES)、インストール処理のエラーを示すエラー通知をDCM12を介してセンター装置3に送信する(S31)。
【0052】
全体管理部34は、今回のキャンペーン情報においてインストール実行要求の送信対象である更新マスタ36~38の全てに対してインストール実行要求を送信済みであるか否かを判定する(S32)。全体管理部34は、送信対象である更新マスタ36~38の全てに対してインストール実行要求を送信済みでなく、インストール実行要求を未送信の更新マスタ36~38が存在すると判定すると(S32:NO)、ソフトウェアの更新対象とする更新マスタ36~38の中で優先順位が次位である更新マスタ37を対象とし、ステップS22に戻り、ステップS22以降を繰り返す。
【0053】
図6に示したように、インストール処理の優先順位が第1更新マスタ36、第2更新マスタ37、第3更新マスタ38の順序で設定されている場合には、全体管理部34は、インストール実行要求を第1更新マスタ36、第2更新マスタ37、第3更新マスタ38の順序で送信することで、マルチメディア系の更新対象ECU19に対するインストール処理の実行、ADAS系の更新対象ECU19に対するインストール処理の実行、駆動系の更新対象ECU19に対するインストール処理の実行を順次指示する(t15~t23)。
【0054】
一方、全体管理部34は、送信対象である更新マスタ36~38の全てに対してインストール実行要求を送信済みであり、インストール実行要求を未送信の更新マスタ36~38が存在しないと判定し(S32:YES)、更新マスタ36~38によるインストール処理を完了すると、アクティベート承諾画面表示要求をHMIに送信し(S33、t24)、HMIからの承諾結果の受信を待機する(S34)。HMIは、全体管理部34からアクティベート承諾画面表示要求を受信すると、アクティベートの承諾画面を表示し、ユーザが承諾許可の操作を行うと、承諾許可を示す承諾結果を全体管理部34に送信する(t25)。
【0055】
全体管理部34は、HMIから承諾許可を示す承諾結果を受信したと判定すると(S34:YES)、承諾許可を示す承諾結果をDCM12を介してセンター装置3に送信する(S35、t26)。全体管理部34は、アクティベート処理を実行可能な状態であると判定すると(S36:YES)、アクティベート実行要求を更新マスタ36~38に同時に送信し(S37、t27、実行要求手順に相当する)、更新マスタ36~38からのアクティベート実行要求に対するACKの受信を待機する(S38)。更新マスタ36~38は、全体管理部34からアクティベート実行要求を受信すると、ACKを全体管理部34に返信する。
【0056】
全体管理部34は、更新マスタ36~38からACKを受信したと判定すると(S38:YES)、アクティベート処理の実行を更新マスタ36~38から更新対象ECU19に同時に指示する(S39)。全体管理部34は、アクティベート処理の実行を更新マスタ36~38から更新対象ECU19に同時に指示すると、更新マスタ36~38からのアクティベート処理完了通知の受信を待機すると共に(S40)、アクティベート処理の実行を同時に指示してからの経過時間を監視する(S41)。
【0057】
更新マスタ36~38により管理される更新対象ECU19は、更新マスタ36~38からアクティベート処理の実行が指示されると、アクティベート処理を開始し、アクティベート処理を完了すると、アクティベート処理完了通知を更新マスタ36~38に送信する。更新マスタ36~38は、更新対象ECU19からアクティベート処理完了通知を受信すると、アクティベート処理完了通知を全体管理部34に送信する(t28)。この場合、更新マスタ36~38の各々により管理される更新対象ECU19が複数であれば、更新マスタ36~38は、各々が管理する全ての更新対象ECU19からアクティベート処理完了通知を受信すると、アクティベート処理完了通知を全体管理部34に送信する。
【0058】
全体管理部34は、アクティベート処理の実行を指示してから一定時間が経過する前に、更新マスタ36~38からアクティベート処理完了通知を受信したと判定すると(S40:YES)、アクティベート処理完了通知をDCM12を介してセンター装置3に送信する(S42、t29)。
【0059】
一方、全体管理部34は、更新マスタ36~38からアクティベート処理完了通知を受信する前に、アクティベート処理の実行を指示してから一定時間が経過したと判定すると(S41:YES)、リトライ回数が予め設定している上限回数に達しているか否かを判定する(S43)。全体管理部34は、リトライ回数が上限回数に達していないと判定すると(S43:NO)、アクティベート実行要求を更新マスタ36~38に再送し(S44)、リトライ回数をインクリメントし(S45)、ステップS40,S41に戻る。全体管理部34は、リトライ回数が上限回数に達したと判定すると(S43:YES)、アクティベートのエラーを示すエラー通知をDCM12を介してセンター装置3に送信する(S46)。
【0060】
ところで、例えばインストール実行要求を何れかの更新マスタに送信した後に、その更新マスタにより管理される更新対象ECU19においてインストール処理を完了する前に、法規等の優先度が高い処理要求が発生する場合があり得る。このような場合、全体管理部34は、図15に示す処理を行う。
【0061】
全体管理部34は、実行要求を何れかの更新マスタに送信すると(S51)、その実行中処理の実行要求に対する処理完了通知を受信したか否かを判定すると共に(S52)、優先度が高い処理要求が発生したか否かを判定する(S53)。全体管理部34は、その実行中処理の実行要求に対する処理完了通知を受信する前に、優先度が高い処理要求が発生したと判定すると(S53:YES)、実行中処理の中断要求を更新マスタに送信し、実行中処理を中断し(S54)、優先度が高い後続処理の実行要求を更新マスタに送信する(S55)。
【0062】
全体管理部34は、優先度が高い後続処理の実行要求を更新マスタに送信すると、その優先度が高い後続処理の実行要求に対する処理完了通知を受信したか否かを判定する(S56)。全体管理部34は、その優先度が高い後続処理の実行要求に対する処理完了通知を受信したと判定すると(S56:YES)、中断した処理の再開要求を更新マスタに送信し、中断した処理を再開し(S57)、ステップS52,S53に戻る。尚、アクティベート実行要求を何れかの更新マスタに送信した後に、その更新マスタにより管理される更新対象ECU19においてアクティベート処理を完了する前に、法規等の優先度が高い処理要求が発生する場合も同様である。
【0063】
以上に説明したように実施形態によれば、次に示す作用効果を得ることができる。
CGW13において、ダウンロード処理、インストール処理及びアクティベート処理の実行を更新手法単位で要求することで、ダウンロード処理、インストール処理及びアクティベート処理を更新手法単位で実行させるようにした。複数の更新対象ECU19のソフトウェアを異なる更新手法で更新する場合に、複数の更新手法を同時に実行してしまう事態や複数の更新手法を不適切な順序で実行してしまう事態を回避することができる。これにより、意図しない組み合わせでソフトウェアが更新されてしまう事態を回避することができ、ソフトウェアを適切に更新することができ、安全安心なソフトウェア更新を担保することができる。
【0064】
CGW13において、更新マスタ36~38を更新手法単位で設けたので、更新マスタ36~38にソフトウェア更新の制御を集約することで、ソフトウェア構成を簡素化すると共に、システムの品質保証を適切に確保することができる。
【0065】
CGW13において、諸元データにより実行要求の送信対象及び送信順序を設定するようにしたので、ソフトウェア更新の内容を諸元データにより容易に切り替えることができ、様々なシステムに適用したCGW13を個別に準備する必要がなくなり、品番削減を図ることができる。
【0066】
CGW13において、ダウンロード処理、インストール処理及びアクティベート処理を実行可能な状態であると判定したことを条件とし、その実行可能な状態である処理の実行要求を送信するようにしたので、ダウンロード処理、インストール処理及びアクティベート処理の実行を担保することができる。
【0067】
CGW13において、ダウンロード処理、インストール処理、アクティベート処理のユーザからの承諾結果を受信すると、その受信した承諾結果をセンター装置3に送信するようにしたので、ダウンロード処理、インストール処理、アクティベート処理のユーザからの承諾結果をセンター装置3で管理することができる。
【0068】
CGW13において、ダウンロード処理完了通知、インストール処理完了通知、アクティベート処理完了通知を受信すると、その受信した処理完了通知をセンター装置3に送信するようにしたので、ダウンロード処理、インストール処理、アクティベート処理の完了をセンター装置3で管理することができる。
【0069】
CGW13において、全体管理部34からの実行要求の再送条件が成立すると、実行要求を再送するようにしたので、全体管理部34が実行要求を送信したにも拘らず何らの理由で処理を実行しない場合に適切に対処することができる。
【0070】
CGW13において、実行中処理の優先度よりも後続処理の優先度が高い場合に、実行中処理を中断し、後続処理の実行要求を送信し、後続処理を完了後に当該中断した処理の再開を要求するようにしたので、法規等の優先度が高い処理要求が発生した場合に適切に対処することができる。
【0071】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、更には、それらに一要素のみ、それ以上、或いはそれ以下を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0072】
3個の更新マスタ36~38が設けられることで、3種類の系統のECU19の更新処理を管理する構成を例示したが、2個以下や4個以上の更新マスタが設けられることで、2種類以下や4種類以上の系統のECU19の更新処理を管理する構成でも良い。即ち、1個の更新マスタが設けられることで、1種類の系統のECU19の更新処理を管理する構成でも良い。
【0073】
アクティベート実行要求を第1更新マスタ36、第2更新マスタ37、第3更新マスタ38に同時に送信する構成を例示したが、アクティベート実行要求を第1更新マスタ36、第2更新マスタ37、第3更新マスタ38に個別のタイミングで送信する構成でも良い。
【0074】
全体管理部34において、諸元データを受信したと判定すると、その諸元データを参照して実行要求の送信対象及び送信順序を決定する構成を例示したが、実行要求の最初の送信対象だけを決定し、処理完了通知を受信する都度、実行要求の次の送信対象を決定しても良い。
【0075】
センター装置3からのパッケージデータをDCM12がダウンロードして更新データを取得する構成を例示したが、更新対象ECU19がダウンローダ35の機能を有することで、センター装置3からのパッケージデータを更新対象ECU19が直接ダウンロードして更新データを取得する構成でも良い。
【0076】
ダウンロード承諾、インストール承諾及びアクティベート承諾は、それぞれの処理において必要ではない。例えばインストール承諾とアクティベート承諾とを一度の承諾により実施しても良い。
【0077】
本開示に記載の制御部及びそのパターンは、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。或いは、本開示に記載の制御部及びそのパターンは、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によりプロセッサを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。若しくは、本開示に記載の制御部及びそのパターンは、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路により構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されても良い。又、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていても良い。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15