(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20241016BHJP
G01V 8/12 20060101ALI20241016BHJP
G01V 9/00 20060101ALI20241016BHJP
G01V 11/00 20060101ALI20241016BHJP
H01L 31/12 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G01L5/00 Z
G01V8/12 A
G01V9/00 B
G01V11/00
H01L31/12 E
(21)【出願番号】P 2023536694
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2022027065
(87)【国際公開番号】W WO2023002866
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2021120854
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100199314
【氏名又は名称】竹内 寛
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 博
(72)【発明者】
【氏名】菅原 滉平
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴敏
【審査官】井上 昌宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/100261(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/326882(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/240691(US,A1)
【文献】国際公開第2009/144767(WO,A1)
【文献】特開昭60-168028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00
G01V 8/12
G01V 9/00
G01V 11/00
H01L 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた力センサと、
前記基板上から光を発光する発光部と、
前記基板上において光を受光して、物体の近接を検知する受光部と、
弾性体で一体的に構成される弾性部材とを備え、
前記弾性部材は、
前記力センサを覆う第1部分と、
前記発光部及び前記受光部の周囲において、少なくとも前記発光部と前記受光部と前記力センサとの各々の間に延在する第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分とを連結する第3部分とを含み、
前記弾性部材において、前記基板からの前記第3部分の高さは、前記第1及び第2部分よりも低い
センサ装置。
【請求項2】
前記弾性部材における前記第2部分の高さは、前記第1部分よりも低い
請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記弾性部材における前記第2部分の高さは、前記発光部及び受光部よりも高い
請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記弾性部材における前記第2部分は、前記発光部の周囲を囲む第1開口領域と、前記受光部の周囲を囲む第2開口領域とを規定する
請求項1
又は2に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記第1開口領域は、前記発光部の周囲において前記第1部分とは反対側にて最も低い高さを有し、
前記第2開口領域は、前記受光部の周囲において前記第1部分とは反対側にて最も低い高さを有する
請求項4に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記弾性部材における前記第2部分は、前記発光部及び前記受光部の周囲において、前記第1部分とは反対側を除いて延在する
請求項1
又は2に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記弾性部材における前記第1部分は、前記基板からの位置が高くなるにつれて外径が狭まるテーパー形状を有し、
前記第2部分は、前記基板からの位置が高くなるにつれて開口径が広がるテーパー形状を有する
請求項1
又は2に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記基板は、少なくとも前記弾性部材における前記第1部分と前記第2部分との間の位置において可撓性を有する
請求項1
又は2に記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記発光部は、発光素子と、前記発光素子から出射する光を、前記第1部分とは反対側に向ける第1光学部材とを備え、
前記受光部は、受光素子と、前記受光素子に入射する光を、前記第1部分とは反対側に向ける第2光学部材とを備える
請求項1
又は2に記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記力センサは、前記発光部とは別の発光素子、及び前記受光部とは別の受光素子を含み、
前記発光部及び前記力センサの発光素子を制御する発光制御回路と、
前記受光部及び前記力センサの受光素子を制御する受光制御回路とをさらに備える
請求項1
又は2に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の接触による力および近接を検知するセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットハンド又はヒューマンマシンインタフェース等に搭載され、物体の近接或いは接触といった多様なセンシングを可能とする各種センサが提案されている。
【0003】
特許文献1は、ロボットハンド等に取り付けられる複合型センサを開示している。複合型センサは、触覚センサと近接覚センサから構成されている。触覚センサは、指先部を覆っている可撓性の感圧シートを備え、感圧シートに作用する荷重の大きさ、及び荷重の中心位置を検出可能である。特許文献1の複合型センサでは、触覚センサの感圧シートに、貫通穴が形成されている。触覚センサの感圧シートにおける貫通穴において、近接覚センサの感受面が露出している。これにより、把持物体の接近の検出を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の複合型センサでは、触覚センサ内に近接覚センサのための貫通穴を形成している。このため、接触する対象物が触覚センサ上に均等に押圧力を印加した場合であっても、可撓性の触覚センサの変形が均等ではなくなってしまう。又、対象物から過度な力が印加された際に、近接覚センサが破損する虞がある。このように、従来技術では、触覚と近接覚を両立するセンサ装置において、種々の干渉を抑制し難い問題があった。
【0006】
本発明は、物体による力の検知と近接の検知との両立における干渉を抑制することができるセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るセンサ装置は、基板上に設けられた力センサと、基板上から光を発光する発光部と、基板上において光を受光して、物体の近接を検知する受光部と、弾性体で一体的に構成される弾性部材とを備える。弾性部材は、力センサを覆う第1部分と、発光部及び受光部の周囲において、少なくとも発光部と受光部と力センサとの各々の間に延在する第2部分と、第1部分と第2部分とを連結する第3部分とを含む。弾性部材において、基板からの第3部分の高さは、第1及び第2部分よりも低い。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るセンサ装置によると、物体による力の検知と近接の検知との両立における干渉を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係るセンサ装置の概要を示す斜視図
【
図2】
図1のセンサ装置の内部構造を例示する斜視図
【
図4】実施形態1におけるセンサ装置のカバー部材の斜視図
【
図5】実施形態1に係るセンサ装置の構成を例示する回路図
【
図6】実施形態1の変形例におけるセンサ装置の構成を例示する斜視図
【
図7】実施形態2におけるセンサ装置の構成を示す斜視図
【
図8】実施形態3におけるセンサ装置の構成を示す斜視図
【
図11】
図10のB-B’断面におけるセンサ装置1Dの断面図
【
図12】実施形態4に係るセンサ装置の構成を例示する回路図
【
図13】変形例1に係るセンサ装置の構成を例示する斜視図
【
図14】変形例2に係るセンサ装置の構成を例示する斜視図
【
図15】変形例3に係るセンサ装置の構成を例示する斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して本発明に係るセンサ装置の実施の形態を説明する。
【0011】
各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。実施形態2以降では実施形態1と共通の事項についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態毎には逐次言及しない。
【0012】
(実施形態1)
1.概要
実施形態1に係るセンサ装置の構成の概要について、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るセンサ装置1の概要を示す斜視図である。
【0013】
本実施形態のセンサ装置1は、光学式の検知方式において対象物5の近接を検知する近接センサ部12と、対象物5が接触したときに作用する力(即ち接触力)を検知する力センサ部13とが一体的に構成されたセンサモジュールである。センサ装置1は、例えばロボットハンドにおいて、把持する対象の各種物体を対象物5として検知する用途に適用可能である。また、ヒューマンマシンインタフェース(HMI)において、人間の多様な指示や意図を機械や機器に伝える入力インタフェースの用途にも適用可能である。
【0014】
本実施形態のセンサ装置1は、近接センサ部12及び力センサ部13により、対象物5が近接して接触に到り、力を作用させる等の一連の過程を連続的に検知可能である。センサ装置1は、例えば基板11上に近接センサ部12と力センサ部13とを組み付けて構成される。以下、基板11の主面に平行な2方向をそれぞれX方向及びY方向とし、当該主面の法線方向をZ方向とする。又、基板11から力センサ部13が突出する+Z側を上側といい、反対側となる-Z側を下側という場合がある。
【0015】
本実施形態のセンサ装置1において、力センサ部13は、力センサ素子3と、上側(+Z)から力センサ素子3を覆う弾性体で構成されるカバー部41とを含む。光学式の近接センサ部12は、発光部21と、受光部22と、発光部21及び受光部22を囲むように構成されるカバー部42とを含む。基板11上で力センサ部13と近接センサ部12とが並ぶ方向をX方向とし、力センサ部13側を-X側とし、近接センサ部12側を+X側とする。
【0016】
本実施形態におけるセンサ装置1は、力センサ用のカバー部41を構成する弾性体を+X側に延伸させて、近接センサ用のカバー部42を共に一体形成するカバー部材4を備える。本実施形態では、カバー部材4の構成により、力センサ部13と近接センサ部12とについて種々の観点から生じ得る干渉を抑制して、対象物5の接触による力の検知と近接の検知とを両立し易くできるセンサ装置1を提供する。
【0017】
以下、本実施形態に係るセンサ装置1の構成の詳細を説明する。
【0018】
2.構成
図2は、
図1のセンサ装置1の内部構造を例示する斜視図である。
図2では、
図1に例示したセンサ装置1において、カバー部材4がない状態を示している。
【0019】
本実施形態のセンサ装置1においては、例えば
図2に示すように、近接センサ部12を構成する発光部21と受光部22とが、リジッド基板などの基板11上で力センサ部13よりも+X側において、Y方向に並んで配置される。以下では、基板11上で発光部21の位置が-Y側であり、受光部22の位置が+Y側である例を説明する。
【0020】
センサ装置1における発光部21は、近接センサ部12において対象物5の近接を検知するための光(以下「検知光」という)を発光する部分である。発光部21は、例えば
図2に示すように、発光素子23と、発光素子23を樹脂等で封止する封止体25とを含む。
【0021】
発光素子23は、例えばLED(発光ダイオード)等の光源素子を含む。例えば、発光素子23は、赤外領域などの所定の波長帯を有する光を検知光として発光する。発光素子23は、発光した検知光を出射する光出射面を有し、光出射面を上側に向けて配置される。
【0022】
発光素子23は、LEDに限らず、例えばLD(半導体レーザ)或いはVCSEL(面発光レーザ)など種々の固体光源素子を含んでもよい。発光素子23は、複数の光源素子を含んでもよい。発光素子23には、光源素子からの光をコリメートするレンズ及びミラー等の光学系が設けられてもよい。
【0023】
近接センサ部12における受光部22は、発光部21からの検知光が対象物5により反射された反射光を受光して、対象物5の近接を検知する部分である。受光部22は、例えば
図2に示すように、受光素子24と、受光素子24を樹脂等で封止する封止体26とを含む。
【0024】
受光素子24は、PD(フォトダイオード)等の1つ又は複数の受光器を含み、受光器で構成される受光面を有する。受光素子24は、検知光が対象物5において反射した反射光等の光を受光面にて受光して、例えば受光された光量を受光結果として示す受光信号を生成する。
【0025】
受光素子24は、PDに限らず、例えばフォトトランジスタ、PSD(位置検出素子)、CIS(CMOSイメージセンサ)或いはCCDなど種々の受光器を含んでもよい。受光素子24は、受光器のリニアアレイ或いは2次元アレイで構成されてもよい。受光素子24には上記反射光を集光するためのレンズ等の光学系が設けられてもよい。また、受光素子24の受光面には、検知光の波長帯とは異なる波長帯の光を遮断するバンドパスフィルタ等が設けられてもよい。これにより、外部環境による外乱光の影響を抑制できる。
【0026】
発光部21の封止体25及び受光部22の封止体26は、それぞれ近接センサ部12における検知光の波長帯について透光性を有する樹脂等を適宜、成形して構成される。各封止体25,26の上面は、例えばそれぞれ発光部21及び受光部22の高さを規定する。各封止体25,26は、特定の波長帯を選択的に透過する波長フィルタ特性を有してもよい。
【0027】
本実施形態において、力センサ部13には、対象物5からの力を検知するために各種の力検知方式を採用可能である。各種の力検知方式は、例えば圧電式、光学式、ひずみ抵抗式及び静電容量式などを含む。力センサ部13は、例えば3軸又は6軸といった多軸における力を検知する。力センサ素子3は、力センサ部13に採用される力検知方式に応じた各種のセンサ素子で構成される。力センサ素子3は、本実施形態における力センサの一例である。
【0028】
2-1.カバー部材について
本実施形態のセンサ装置1におけるカバー部材4の構造について、
図3~4を用いて説明する。
【0029】
図3は、
図1のセンサ装置1の断面図を示す。
図4は、センサ装置1のカバー部材4の斜視図を示す。
図3は、
図1のA-A’断面に対応する。A-A’断面は、XZ平面に沿って発光部21を通る断面である。
【0030】
本実施形態のセンサ装置1において、カバー部材4は、力センサ用のカバー部41と、近接センサ用のカバー部42と、各カバー部41,42に連結した基底部40とを含む。本実施形態のカバー部材4においては、例えば
図3に示すように、力センサ用のカバー部41と近接センサ用のカバー部42とが、基底部40を介して溝をあけるように配置される。
【0031】
こうしたカバー部材4によると、各センサ用のカバー部41,42を一体的に形成することで、センサ装置1において力センサ部13と近接センサ部12とを互いに近付けたレイアウトを実現し易い。これにより、例えば、センサ装置1の小型化および製造容易化、ひいては上述した連続的な検知性能の向上などを図ることができる。
【0032】
その一方で、各センサのカバーを単に一体化すると、力センサと近接センサとについて各種の要因から互いに干渉してしまう事態が想定される。例えば、力センサ用のカバーと近接センサ用のカバーとが、特に溝をあけず直接的に連結するような一体形成では、接触力に対する力センサ用のカバーの変形が、近接センサ用のカバーの存在に起因して不均等になるといった干渉が考えられる。
【0033】
これに対して、本実施形態のカバー部材4によると、各カバー部41,42の間に溝をあけるような配置により、力センサ用のカバー部41は、近接センサ用のカバー部42に依らず、所望の接触力に対して均等に変形でき、上記の干渉を抑制できる。カバー部材4は、本実施形態のセンサ装置1において力センサ用のカバー部41を第1部分とし、近接センサ用のカバー部42を第2部分とし、基底部40を第3部分とする弾性部材の一例である。
【0034】
カバー部材4は、例えばシリコーン系樹脂等の弾性体材料で構成される。カバー部材4は、例えばショアA20以上80以下の硬度を有する。カバー部材4は特にシリコーン系樹脂に限らず、種々の弾性体材料で構成されてもよく、例えばエポキシ系樹脂であってもよい。
【0035】
基底部40は、カバー部材4において下側(-Z側)に延在する部分である。例えば、基底部40は、基板11に沿って平面状に形成される。例えば
図3に示すように、基板11からの基底部40の高さH0は、各カバー部41,42の高さH1,H2よりも低い。基底部40は、力センサ用のカバー部41と近接センサ用のカバー部42との間における溝の底部を形成する(
図3参照)。
【0036】
基底部40は、各カバー部41,42を連結する連結部として機能する各種の構成であってもよい。例えば、基底部40の形状は特に平面状に限定されず、種々の形状であってもよい。又、基底部40は、特に基板11全体を覆わなくてもよく、例えば各カバー部41,42の間を含む一部の領域を限定的に覆ってもよい。
【0037】
力センサ用のカバー部41は、力センサ素子3を覆うように、上側(+Z側)に向けて凸状に形成される。力センサ用のカバー部41は、例えば接触力の印加に応じて弾性的に変形し、接触力がなくなると復元可能である。力センサ用のカバー部41の凸形状は、特に近接センサ用のカバー部42とは分離して形成できる。こうした力センサ用のカバー部41の形状によると、力センサ部13において接触力の対象とする位置が、カバー部41が突出する位置として一義的に定義可能であり、対象物5の力検知を行い易くすることができる。
【0038】
力センサ用のカバー部41は、例えば
図3に示すように、上側(+Z側)に向かうにつれてXY断面における外径R1が小さくなるテーパー形状を有する。
図1~3では、力センサ用のカバー部41の形状の一例として、円錐台形状を例示しているが、特にこれに限定されない。力センサ用のカバー部41の形状は、円錐、四角錐、多角錐、直方体、又は半筒形状などであってもよい。力センサ用のカバー部41の内部は、カバー部材4と同じ弾性体又はその他の材料で充填されてもよい。
【0039】
近接センサ用のカバー部42は、例えば
図4に示すように、発光用の開口領域A1と、受光用の開口領域A2とを規定する。発光用の開口領域A1は、発光部21から光が出射可能な角度範囲すなわち視野角(或いは配光角)を規制するように、発光部21の周囲を囲む。受光用の開口領域A2は、受光部22の視野角を規制するように、受光部22の周囲を囲む。
【0040】
本実施形態において、近接センサ用のカバー部42では、発光部21及び受光部22の+Z側をあけて、発光部21周囲の全周と受光部22周囲の全周とを囲むように、各開口領域A1,A2が規定される。これにより、近接センサ部12の視野角がZ方向に向けられて、例えば+Z側から近接する対象物5の検知を行い易くできる(
図1参照)。
【0041】
本実施形態において、近接センサ用のカバー部42は、例えば
図4に示すように、2つの開口領域A1,A2の間に位置する中央の壁部42aと、各開口領域A1,A2の四方の壁部42b~42eとを含む。
【0042】
近接センサ用のカバー部42において、中央の壁部42aは、発光部21と受光部22とを隔てるように延在して、発光部21と受光部22との間で光を遮光する(
図1参照)。これにより、発光部21から発光した検知光が、特に対象物5等に反射されずに直接、受光部22に入射してしまうような直接カップリングを防ぐことができ、発光部21と受光部22との間の干渉を抑制できる。
【0043】
-X側の壁部42bは、発光部21及び受光部22と、力センサ部13との間を仕切るように延在する。壁部42bによると、力センサ部13に接触中の対象物5等による各種干渉を抑制することができる。例えば、例えば接触力により変形した力センサ用のカバー部41が、発光部21又は受光部22に当たってしまう事態を回避できる。
【0044】
+X側の壁部42cは、発光部21及び受光部22から、力センサ部13とは反対側に位置する。-Y側の壁部42dは、発光部21から見て、受光部22とは反対側に位置する。+Y側の壁部42eは、受光部22から見て、発光部21とは反対側に位置する。こうした壁部42c~42eによると、例えばセンサ装置1に隣接した外部光源が存在するような場合であっても、外部光源からの光を遮光して、外部光源と近接センサ部12との干渉を抑制することができる。
【0045】
さらに
図3に例示するように、基板11からの近接センサ部12の高さH2(即ち近接センサ用のカバー部42の高さ)は、力センサ部13の高さH1(即ち力センサ用のカバー部41の高さ)よりも低い。これにより、力センサ部13に対する対象物5の接触を、近接センサ用のカバー部42が阻害するような事態を低減して、力センサ部13に対する近接センサ部12の干渉を抑制することができる。
【0046】
また、近接センサ用のカバー部42の高さH2は、発光部21及び受光部22の高さH3よりも高い。これにより、近接センサ用のカバー部42は、上方からの対象物5等の接触に対して、発光部21及び受光部22を保護し易い。なお、本例では、発光部21と受光部22とが同じ高さH3であり、各壁部42a~42eが同じ高さH2である場合を例示しているが、特にこれに限定されない。
【0047】
更に、近接センサ用のカバー部42は、例えば各開口領域A1,A2を規定する各壁部42a~42eの内壁において、上側(+Z側)に向かうにつれてXY断面における開口径R2が大きくなるテーパー形状を有する。こうした近接センサ用のカバー部42のテーパー形状の方向性は、力センサ用のカバー部41のテーパー形状の方向性と合致している。例えば、力センサ用のカバー部41の+X側の側面と、近接センサ用のカバー部42の-X側の内壁とは、共に上側に向かうにつれて-X側へ傾斜する。
【0048】
上記のようなテーパー形状によると、近接センサ部12の視野角が、特に力センサ部13と干渉せず容易に確保することができる。さらに、上記のような各カバー部41,42のテーパー形状は、センサ装置1の製造時において、カバー部材4を金型などで成形する際の抜きテーパーとしても機能し、センサ装置1の製造を容易化できる。
【0049】
以上のようなセンサ装置1におけるカバー部材4は、各カバー部41,42において異なる硬度を有するように構成されてもよい。例えば、カバー部材4は、別々の硬度を有した複数種類の材料による2色成形で構成されてもよい。例えば、力センサ用のカバー部41の硬度は、近接センサ用のカバー部42の硬度よりも柔軟に設定されてもよい。力センサ用のカバー部41の柔軟性により、例えばHMI等の用途において、力センサ部13の押圧に応じた変形という直感的な感覚フィードバックを与え易くすることができる。
【0050】
また、カバー部材4は、発光部21からの検知光を反射する光学特性を有してもよく、例えば反射率50%以上の材料で構成されてもよい。これにより、近接センサ部12において検知光を導光し易くすることができる。
【0051】
2-2.センサ装置の制御部
図5は、本実施形態に係るセンサ装置1の電気的な構成を例示する回路図である。本実施形態のセンサ装置1は、上述した構造的な構成に加えて、
図5に示すように、制御部15をさらに備えてもよい。
【0052】
センサ装置1の制御部15は、例えば
図5に示すように、発光制御回路51と、受光制御回路52と、力センサ制御回路53と、インタフェース回路54とを備える。
【0053】
発光制御回路51は、例えば、発光素子23に電気的に接続される光源駆動部を含む。光源駆動部は、検知光を発光させる駆動信号を発光素子23に供給する。発光制御回路51は、例えばAM変調などの変調器を含んでもよい。例えば、発光制御回路51は、10Hzから1MHz等における特定の周波数を、光の振幅を周期的に変動させる変調周波数に用いて、検知光を変調してもよい。検知光の変調により、外乱光から検知光及びその反射光を区別し易くなる。
【0054】
受光制御回路52は、例えば、受光素子24に電気的に接続される増幅器、及び増幅器に接続されるA/D(アナログ/デジタル)変換器を含む。受光制御回路52は、受光素子24から出力される受光信号に各種の信号処理を行って、例えばインタフェース回路54に出力する。
【0055】
例えば、受光制御回路52は、受光信号における反射光の受光量に基づいて、対象物5の近接の検知処理を行う。センサ装置1における近接の検知処理は、反射光の受光量に限らず、例えば反射光と検知光間の位相差に基づき行われてもよい。又、こうした近接の検知処理自体は、必ずしもセンサ装置1内で行われなくてもよく、センサ装置1外部の演算回路等で行われてもよい。センサ装置1においては、発光部21の駆動に同期して検知光の反射光を含む受光信号を生成することによって、対象物5等の物体の近接検知を実現可能である。
【0056】
受光制御回路52は、例えば検知光の変調周波数を含む信号成分を通過させるバンドパスフィルタ等のフィルタ処理を行ってもよいし、発光制御回路51と同期して同期検波を行ってもよい。例えば、受光制御回路52において、定常的なDC成分を遮断することにより、外乱光から分離して上記反射光の解析を行うことができる。検知光の変調周波数は、例えば赤外線リモコンのキャリアとして利用される38kHzなど、既存の外部システムにおいて利用される周波数を避けて適宜、設定可能である。これにより、外部システムに起因するようなセンサ装置1の誤動作を抑制することができる。
【0057】
力センサ制御回路53は、力センサ部13中で力センサ素子3を構成する各種センサ素子を駆動制御する制御回路、及び当該センサ素子からの出力信号の増幅器などを含む。力センサ制御回路53は、例えば上記の出力信号に基づき多軸における力の検知結果を示す力検知信号を生成する回路構成を含んでもよい。力センサ制御回路53は、多軸に限らず、一軸の力の検知結果の力検知信号を出力してもよい。
【0058】
例えば力検知方式が圧電式であれば、力センサ部13内の基板上に配置された1つ以上の圧電素子の圧電効果を利用し、対象物5(
図1)が接触したことによる力センサ部13内に生じる応力を圧電素子にて電荷に換算し、その変化から力をセンシングする。光学式の場合は、力センサ部13内の基板上に配置された1つ以上の発光素子と1つ以上の受光素子を利用し、対象物5が接触したことによる変形によって生じる力センサ部13内の反射光分布の変化を受光素子によって読み取り力センシングする。ひずみ抵抗式は、力センサ部13内の基板上に配置された1つ以上のひずみゲージを利用し、対象物5が接触したことによる変形によって、力センサ部13内を経由しひずみゲージに伝わるひずみを抵抗変化として捉え、その変化を利用し力センシングをする。静電容量式は、力センサ部13内の基板上に配置された1つ以上の静電容量検知電極を利用し、対象物5が接触したことによる力センサ部13の変形によって、変化する静電容量検知電極と基準電位との結合容量変化から力センシングをする。なお、各方式において、力センサ部13内に配置する圧電素子や受発光素子、ひずみゲージ、静電容量検知電極といった各種センサ素子を複数用いることで、力センシングの多軸化が可能となる。
【0059】
インタフェース回路54は、発光制御回路51、受光制御回路52及び力センサ制御回路53に接続する。インタフェース回路54は、センサ装置1を外部機器に接続して各種信号の入出力を行う。
【0060】
なお、以上に説明した構成は一例であり、センサ装置1は、特に上記の構成に限定されない。例えば、本実施形態のセンサ装置1は、制御部15の各回路51~54の何れかを外部構成としてもよいし、制御部15の各回路51~54とは別体のモジュールとして提供されてもよい。
【0061】
3.まとめ
以上のように、本実施形態におけるセンサ装置1は、基板11上に設けられた力センサの一例である力センサ素子3と、基板11上から光を発光する発光部21と、基板11上において光を受光して、対象物5等の物体の近接を検知する受光部22と、弾性体で一体的に構成される弾性部材の一例であるカバー部材4とを備える。カバー部材4は、第1部分の一例として力センサ用のカバー部41と、第2部分の一例として近接センサ用のカバー部42と、第3部分の一例として基底部40とを含む。力センサ用のカバー部41は、力センサ素子3を覆う。近接センサ用のカバー部42は、発光部21及び受光部22の周囲において、少なくとも発光部21と受光部22と力センサ素子3との各々の間に延在する。基底部40は、力センサ用のカバー部41と近接センサ用のカバー部42とを連結する。カバー部材4において、基板11からの基底部40の高さH0は、力センサ用のカバー部41の高さH1及び近接センサ用のカバー部42の高さH2よりも低い(
図3参照)。
【0062】
以上のセンサ装置1によると、力センサ用のカバー部41と、近接センサ用のカバー部42とを、高さH0が低い基底部40により溝をあけるように連結したカバー部材4により、対象物5よる力の検知と近接の検知との両立における干渉を抑制することができる。
【0063】
本実施形態において、カバー部材4における近接センサ用のカバー部42の高さH2は、力センサ用のカバー部41の高さH1よりも低い。これにより、近接センサ用のカバー部42が、力センサ部13に接触する対象物5の力検知に干渉する事態を抑制できる。
【0064】
本実施形態において、カバー部材4における近接センサ用のカバー部42の高さH2は、発光部21及び受光部22の高さH3よりも高い。こうした近接センサ用のカバー部42により、対象物5が力センサ部13に接触する際に、発光部21又は受光部22にまで接触して破損を招く等の干渉を抑制することができる。
【0065】
本実施形態において、カバー部材4における近接センサ用のカバー部42は、第1開口領域の一例として発光用の開口領域A1と、第2開口領域の一例として受光用の開口領域A2とを規定する。発光用の開口領域A1は、発光部21の周囲を囲む。受光用の開口領域A2は、受光部22の周囲を囲む。こうした近接センサ用のカバー部42によると、各開口領域A1,A2により近接センサ部12の視野角(或いは配光)を制御して、力検知に合わせた近接検知を行い易くできる。
【0066】
本実施形態において、カバー部材4における力センサ用のカバー部41は、基板11からの位置が高くなるにつれて外径R1が狭まるテーパー形状を有する。近接センサ用のカバー部42は、基板11からの位置が高くなるにつれて開口径が広がるテーパー形状を有する。これにより、力センサ用のカバー部41と近接センサ用のカバー部42との間でテーパー形状の方向性を合わせて、近接センサ部12の視野角や製造上の干渉を抑制することができる。
【0067】
本実施形態において、カバー部材4は、少なくとも力センサ用のカバー部41において所定値(例えばショアA80)以下の硬度を有してもよい。これにより、対象物5がカバー部41に接触力を加える際に、対象物5にフィードバック感を与え易い。本実施形態において、カバー部材4は、力センサ用のカバー部41及び近接センサ用のカバー部42において上記所定値以下の硬度を有してもよい。
【0068】
本実施形態において、カバー部材4は、発光部21から発光する検知光の波長に関して50%以上の反射率を有する弾性体で構成されてもよい。これにより、近接センサ用のカバー部42において検知光を導光して、近接センサ部12の配光制御を行い易い。
【0069】
(実施形態1の変形例)
以上の実施形態1の説明では、センサ装置1における基板11がリジッド基板の例を説明した。センサ装置1の基板11は、特にこれに限らず各種基板を採用可能である。こうした変形例について、
図6を用いて説明する。
【0070】
図6は、実施形態1の変形例におけるセンサ装置1Aの構成を例示する。
図6は、本変形例のセンサ装置1Aについて、
図3と同様の断面図を示す。本変形例のセンサ装置1Aは、上述した実施形態1のセンサ装置1と同様の構成において、可撓性を有する基板11Aを備える。
【0071】
本変形例のセンサ装置1Aにおいて、基板11Aは、例えばフレキシブル基板またはリジッドフレキシブル基板などである。基板11Aは、力センサ用のカバー部41と近接センサ用のカバー部42間の溝に対応する部分等において、屈曲可能に構成される。また、本変形例において、カバー部材4も、少なくとも上記の溝に対応する基底部40において屈曲可能な硬度を有する。
【0072】
こうしたセンサ装置1Aによると、
図6に示すように、基板11Aを屈曲させることで、例えば力センサ部13に対して、近接センサ部12の視野角の方向を+X側等にずらすことができる。これにより、例えば対象物5が力センサ部13に近接する際に+X側から到来するような状況において、対象物5が力センサ部13に接触する前に近接した状態を、近接センサ部12によって検知し易くすることができる。
【0073】
以上のように、本実施形態のセンサ装置1Aにおいて、基板11Aは、少なくともカバー部材4における力センサ用のカバー部41と近接センサ用のカバー部42との間の位置において可撓性を有してもよい。これにより、力センサ部13の配置に対して近接センサ部12の視野角の向きを変更でき、力検知と近接検知との両立を行い易くできる。
【0074】
(実施形態2)
実施形態1では、カバー部材4において発光部21及び受光部22の全周を囲むセンサ装置1について説明した。実施形態2では、発光部21及び受光部22の全周において一部を開けたセンサ装置について、
図7を用いて説明する。
【0075】
図7は、実施形態2におけるセンサ装置1Bの構成を示す。実施形態1のセンサ装置1では、近接センサ用のカバー部42において、発光部21及び受光部22全周の壁部42a~42eが設けられた(
図4)。本実施形態のセンサ装置1Bは、実施形態1のセンサ装置1と同様の構成において力センサ部13とは反対側(即ち+X側)の壁部42cの代わりに、
図7に示すように、開放端45を構成したカバー部材4Bを備える。
【0076】
本実施形態のカバー部材4Bにおける開放端45は、近接センサ用のカバー部42Bが、+X側を除いて延在することにより形成され、各壁部42a,42b,42d,42eと共に開口領域A1B,A2Bを規定する。本実施形態の各開口領域A1B,A2Bは、+X側が開放端45であることから基板11に到る、すなわち、+X側において基板11からの高さが最小となる。
【0077】
実施形態1のセンサ装置1では、全周の壁部42a~42eによる各開口領域A1,A2により(
図4)、近接センサ部12の視野角がZ方向に向けられた。本実施形態のカバー部材4Bでは、開放端45がある各開口領域A1B,A2Bにより、近接センサ部12の視野角が、Z方向から+X側に向けられる。
【0078】
こうした本実施形態のセンサ装置1Bによると、例えば近接する対象物5がZ方向よりも+X側から到来するような状況において、特に基板11を屈曲しなくても(
図6参照)、対象物5の近接検知を行い易くすることができる。
【0079】
以上のように、本実施形態のセンサ装置1Bにおいて、発光用の開口領域A1Bは、発光部21の周囲において力センサ用のカバー部41とは反対側(+X側)にて最も低い高さを有する。受光用の開口領域A2Bは、受光部22の周囲において力センサ用のカバー部41とは反対側にて最も低い高さを有する。こうした各開口領域A1B,A2Bによると、近接センサ部12の視野角を、力センサ部13とは反対側に向ける制御を容易に行え、力検知との両立を考慮した近接検知を行い易くできる。
【0080】
本実施形態において、カバー部材4における近接センサ用のカバー部42Bは、発光部21及び受光部22の周囲において、力センサ用のカバー部41とは反対側を除いて延在する。これにより、近接センサ用のカバー部42Bは、+X側に開放端45を形成して、力検知との両立を考慮した近接センサ部12の視野角の制御を容易に行える。
【0081】
(実施形態3)
実施形態2では、近接センサ用のカバー部42Bの形状により近接センサ部12の視野角を設定するセンサ装置1Bについて説明した。実施形態3では、光学的な構成を用いて視野角を設定するセンサ装置について、
図8~9を用いて説明する。
【0082】
図8は、実施形態3におけるセンサ装置1Cの構成を示す。
図9は、
図8のセンサ装置1Cの、A-A’断面における断面図を示す。
【0083】
本実施形態のセンサ装置1Cは、例えば実施形態2のセンサ装置1Bと同様の構成から、
図8に示すように、発光部21C及び受光部22Cの各封止体25C,26Cの形状を変更して構成される。本実施形態において、各封止体25C,26Cは、それぞれ第1及び第2光学部材の一例である。
【0084】
本実施形態において、発光部21Cの封止体25Cは、発光素子23(
図9)から出射する検知光を、Z方向から+X側に向けて屈折させるようなレンズ形状を有する。封止体25Cは、+X側に出射する光束の配光角を狭めるような集光機能を有してもよい。例えば、上記のような発光部21Cの封止体25Cは、
図9に示すようにXZ断面において傾斜し、
図8に示すようにYZ断面において曲率を有するような曲面形状で実現できる。また、受光部22Cの封止体26Cは、例えば発光部21Cの封止体25Cと同様に構成できる。
【0085】
上記のような発光部21C及び受光部22Cの各封止体25C,26Cのレンズ形状によると、センサ装置1Cにおいて、近接センサ部12の配光制御の自由度を向上できる。よって、センサ装置1Cを適用する各種用途に応じて、適切な配光を設定可能にすることができる。
【0086】
以上のように、本実施形態のセンサ装置1Cにおいて、発光部21は、発光素子23と、第1光学部材の一例である封止体25Cとを備える。発光部21の封止体25Cは、発光素子23から出射する検知光を、力センサ用のカバー部41とは反対側に向けるように形成される。受光部22は、受光素子24と、第2光学部材の一例である封止体26Cとを備える。受光部22の封止体26Cは、対象物5からの反射光などの、受光素子24に入射する光を、力センサ用のカバー部41とは反対側に向けるように形成される。こうしたセンサ装置1Cによると、各封止体25C,26Cを利用して、力検知との両立を考慮した近接センサ部12の配光制御を容易に行える。
【0087】
(実施形態4)
実施形態4では、力検知方式として光学式を採用する例について、
図10~12を用いて説明する。
【0088】
図10は、実施形態4におけるセンサ装置1Dの斜視図を示す。
図11は、
図10のB-B’断面におけるセンサ装置1Dの断面図を示す。B-B’断面は、XZ平面に沿って力センサ部13Dを通る断面である。
【0089】
本実施形態のセンサ装置1Dでは、例えば実施形態3のセンサ装置1Cと同様の構成において、力センサ部13Dが光学式で構成される。光学式の力センサ部13Dは、例えば
図11に示すように、力センサ素子3Dとして、発光素子31と、受光素子32とを含む。発光素子31及び受光素子32は、例えば透明樹脂等による封止体33で封止されてもよい。
【0090】
又、光学式の力センサ部13Dにおいて、力センサ用のカバー部41内部は、中空構造であってもよいし、例えば封止体33よりも柔軟な透明樹脂等で充填されてもよい。また、カバー部41内部は、例えば発光素子31からの光を反射可能に構成される。
【0091】
光学式の力センサ部13Dにおいて、発光素子31は、例えばシングル又はマルチエミッタのVCSEL等の発光光源を含む。例えば、発光素子31は、赤外領域などの所定の波長帯を有する光を発光し、力検知のための検知光として出射する。発光素子31は、VCSELに限らず、例えばLD或いはLEDなど種々の固体光源素子を含んでもよい。発光素子31は、複数の光源素子を含んでもよい。発光素子31には、発光素子からの光をコリメートするレンズ及びミラー等の光学系が設けられてもよい。
【0092】
受光素子32は、PD等の受光器を含み、例えば発光素子31の周囲を取り囲むように複数の受光器を配置して構成される。受光素子32は、受光器において検知光の反射光等の光を受光して、例えば受光された光量を受光結果として示す受光信号を生成する。受光素子32は、PDに限らず、例えばフォトトランジスタ、PSD、CIS或いはCCDなど種々の受光器を含んでもよい。
【0093】
力センサ用のカバー部41は、例えば発光素子31による検知光の周波数帯について遮光特性を有する弾性部材で構成される。
【0094】
以上のように構成される光学式の力センサ部13Dは、接触する対象物5からの力に応じて、発光素子31から発光する検知光が、反射体35において反射された反射光の受光素子32による受光状態が変化することを利用して、対象物5の接触力を検知する。光学式における接触力の測定方法としては適宜、公知技術を適用可能である(例えば特許文献1~3参照)。
【0095】
こうした光学式の力センサ部13Dによると、近接センサ部12と同じ製造プロセスを採用して、一括して作り込みを行えることから、センサ装置1Dの製造を容易化することができる。例えば、近接センサ部12における封止体25C,26Cと、力センサ部13Dにおける発光素子31及び受光素子32の封止体33とが、同じプロセスで形成されてもよい。
【0096】
図12は、実施形態4に係るセンサ装置1Dの電気的な構成を例示する回路図である。実施形態1では、センサ装置1の制御部15において、力センサ制御回路53が、近接センサ部12を制御するための発光制御回路51及び受光制御回路52とは別個に構成された。本実施形態のセンサ装置1Dの制御部15Dは、実施形態1と同様の構成において、別個の力センサ制御回路53(
図5)の代わりに、力センサ部13Dの制御機能を近接センサ部12の発光制御回路51D及び受光制御回路52Dに持たせる。
【0097】
例えば
図12に示すように、本実施形態の発光制御回路51Dは、近接センサ部12の発光素子23と共に、力センサ部13Dの発光素子31を制御するように、例えばスイッチマトリクス等を備えて構成される。又、本実施形態の受光制御回路52Dは、近接センサ部12の受光素子24と共に、力センサ部13Dの受光素子32を制御するように、例えばスイッチマトリクス等を備えて構成される。これにより、近接センサ部12と力センサ部13Dとの双方の制御機能が、同じ回路テクノロジで構成でき、センサ装置1Dの部品点数を削減したり、回路の集積化を容易化したりできる。
【0098】
例えば、本実施形態のセンサ装置1Dの制御部15Dは、近接センサ部12の制御機能と力センサ部13Dの制御機能とで共通化された単一のIC等で構成できる。このように、本実施形態のセンサ装置1Dは、小型化及びコスト低減を図ることができる。
【0099】
以上のように、本実施形態のセンサ装置1Dにおいて、光学式の力センサ部13Dは、その力センサ素子3Dとして、近接センサ部12の発光素子23とは別の発光素子31、及び近接センサ部12の受光素子24とは別の受光素子32を含む。センサ装置1Dの制御部15Dは、近接センサ部12の発光部21及び力センサ部13Dの発光素子31を制御する発光制御回路51Dと、近接センサ部12の受光部22及び力センサ部13Dの受光素子32を制御する受光制御回路52Dとを備える。センサ装置1Dの近接センサ部12と力センサ部13Dとを光学式で構成することで、センサ構造の製造を容易化することに加えて、回路構成も簡単化でき、センサ装置1Dを製造し易くすることができる。
【0100】
(他の実施形態)
上記の実施形態2では、近接センサ用のカバー部42Bが発光部21及び受光部22周囲における+X側を開けるセンサ装置1Aについて説明した。本実施形態において、近接センサ用のカバー部42は、発光部21及び受光部22周囲において他の部分を開けてもよい。こうした変形例について、
図13を用いて説明する。
【0101】
図13は、変形例1に係るセンサ装置1Eの構成を例示する。本実施形態において、センサ装置1Eのカバー部材4Eは、発光部21と受光部22の間の壁部41bと、+X側の壁部42bとを含む一方で±Y側及び-X側を開けた近接センサ用のカバー部42Eを備える。こうしたカバー部材4Eであっても、上記各実施形態と同様に、力センサ部13と近接センサ部12との両立における干渉を抑制することができる。
【0102】
上記の実施形態2では、近接センサ用のカバー部42Bによる開口領域A1,A2における最低の高さが、基板11と同じである例を説明したが、開口領域A1,A2の最低高さは、基板11よりも高くてもよい。こうした変形例について、
図14を用いて説明する。
【0103】
図14は、変形例2に係るセンサ装置1Fの構成を例示する。本変形例のセンサ装置1Fは、例えば実施形態2のセンサ装置1Bと同様の構成において、近接センサ用のカバー部42Fが、+X側の開放端45(
図7)の代わりに、
図14に示すように低背の壁部42c’を含むカバー部材4Fを備える。低背の壁部42c’は、本変形例における開口領域A1F,A2Fの最低高さを規定する。
【0104】
本変形例のカバー部材4Fによっても、開口領域A1F,A2Fの周囲における高さを低背の壁部41c’により+X側で最も低くすることで、実施形態2等と同様に、近接センサ部12の視野角を+X側に向けることができる。こうした壁部42c’の高さは、例えば発光部21及び受光部22よりも高くて、他の壁部42a,42b,42d,42eよりも低い。壁部42c’の高さは、発光部21及び受光部22の高さ以下であってもよい。
【0105】
以上のように、本実施形態のセンサ装置1Fにおいて、カバー部材4における近接センサ用のカバー部42は、発光部21及び受光部22の周囲において、力センサ用のカバー部41とは反対側を含めて延在してもよい。これによっても、近接センサ部12の視野角の制御を行える。
【0106】
上記の各実施形態では、第3部分の一例の基底部40を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、本実施形態の弾性部材において、第3部分による第1部分と第2部分との連結は、部分的であってもよい。こうした変形例について、
図15を用いて説明する。
【0107】
図15は、変形例3に係るセンサ装置1Gの構成を例示する。本変形例のセンサ装置1Gは、例えば実施形態2のセンサ装置1Bと同様の構成において、基底部40Gに穴43が設けられたカバー部材4Gを備える。本実施形態のセンサ装置1Gにおいて、カバー部材4Gは、力センサ用のカバー部41即ち第1部分と、近接センサ用のカバー部42B即ち第2部分とを連結する基底部40Gが、穴43により一部くり抜かれた弾性部材の一例である。これにより、例えば基底部40Gの穴43近傍における基板屈曲時において、力センサ用のカバー部41の変形が抑えられ、力センサ部13の特性変化を抑制することができる。
【0108】
本実施形態の基底部40Gは、第1部分と第2部分とを部分的に連結する第3部分の一例である。本実施形態のセンサ装置1Gによっても、上記各実施形態と同様に、第1部分における力の検知と第2部分における近接の検知との両立における干渉を抑制することができる。
【符号の説明】
【0109】
1,1A~1G センサ装置
11,11A 基板
12 近接センサ部
13,13D 力センサ部
15,15D 制御部
21,21C 発光部
22,22C 受光部
23 発光素子
24 受光素子
25,25C 封止体
26,26C 封止体
3,3D 力センサ素子
4,4B,4E~4G カバー部材(弾性部材)
40,40G 基底部(第3部分)
41 力センサ用のカバー部(第1部分)
42,42B,42E,42F 近接センサ用のカバー部(第2部分)
51,51D 発光制御回路
52,52D 受光制御回路