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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】アンテナ装置及び通信装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/29 20060101AFI20241016BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20241016BHJP
   H01Q 23/00 20060101ALI20241016BHJP
   H01Q 13/06 20060101ALI20241016BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20241016BHJP
   H01P 3/12 20060101ALI20241016BHJP
   H01Q 1/40 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H01Q21/29
H01Q21/08
H01Q23/00
H01Q13/06
H01Q13/08
H01P3/12
H01Q1/40
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023550500
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2022033463
(87)【国際公開番号】W WO2023053865
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2021157779
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】根本 崇弥
(72)【発明者】
【氏名】上田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】尾仲 健吾
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0227821(US,A1)
【文献】国際公開第2020/066453(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0358686(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/29
H01Q 21/08
H01Q 23/00
H01Q 13/06
H01Q 13/08
H01P 3/12
H01Q 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1角部を介して接続された第1領域及び第2領域を含む内面を有する筐体と、
前記筐体に収容され、前記第1領域に、間隔を隔てて対向する少なくとも一つの第1アンテナ素子と、
前記筐体に収容され、前記第2領域に、間隔を隔てて対向する少なくとも一つの第2アンテナ素子と、
前記第1アンテナ素子から前記第1領域に向かう少なくとも一つの第1導波路と、
前記第2アンテナ素子から前記第2領域に向かう少なくとも一つの第2導波路と、
前記第1導波路の前記第1アンテナ素子の側の端面を、前記第1領域を含む仮想平面に垂直投影した像よりも、前記第1導波路の前記筐体の内面側の端面が前記第1角部の近くに位置しており、
前記第2導波路の前記第2アンテナ素子の側の端面を、前記第2領域を含む仮想平面に垂直投影した像よりも、前記第2導波路の前記筐体の内面側の端面が前記第1角部の近くに位置しているアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1導波路の前記第1アンテナ素子の側の端面の幾何中心と前記第2導波路の前記第2アンテナ素子の側の端面の幾何中心との間隔よりも、前記第1導波路の前記筐体の内面側の端面の幾何中心と前記第2導波路の前記筐体の内面側の端面の幾何中心との間隔の方が狭い請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1導波路及び前記第2導波路は、金属導波管である請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1導波路及び前記第2導波路は、誘電体導波路である請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1アンテナ素子は複数個配置されており、前記第1導波路は前記第1アンテナ素子ごとに配置されている請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第1アンテナ素子は複数個配置されており、複数の前記第1アンテナ素子に対して一つの前記第1導波路が配置されている請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記筐体は、前記第1領域及び前記第2領域のそれぞれに対して第2角部及び第3角部を介して接続された第3領域を含み、
前記筐体に収容され、前記第3領域に、間隔を隔てて対向する少なくとも一つの第3アンテナ素子と、
前記第3アンテナ素子から前記第3領域に向かう少なくとも一つの第3導波路と
を、さらに備え、
前記第3導波路の前記第3アンテナ素子の側の端面を、前記第3領域を含む仮想平面に垂直投影した像よりも、前記第3導波路の前記筐体の内面側の端面が前記第3角部の近くに位置している請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
さらに、
前記筐体に収容された基板と、
前記基板に配置された第4アンテナ素子と
を備えており、
前記基板は、
前記第1アンテナ素子が配置され、前記第1領域に対向する第1表面を有する第1平坦部と、
前記第2アンテナ素子が配置され、前記第2領域に対向する第2表面を有する第2平坦部と、
前記第1平坦部と前記第2平坦部とを接続する湾曲部と
を有しており、
前記第1表面を含む仮想平面と前記第2表面を含む仮想平面との交線に平行な第1方向に関して、前記第1方向に延びる前記第2平坦部の側面が一部の範囲において前記湾曲部に接続されており、
前記第2平坦部は、前記第1方向に関して前記湾曲部に接続されていない範囲に、前記湾曲部に接続された側面よりも前記交線に向かって突出した突出部を含み、
前記第4アンテナ素子は、前記突出部の先端に配置されており、
前記第1角部は、前記第4アンテナ素子から放射された電波を透過させる請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第1アンテナ素子及び前記第2アンテナ素子が実装された基板を、さらに備えており、
前記基板は、前記第1領域に対向し、前記第1アンテナ素子が配置された部分と、前記第2領域に対向し、前記第2アンテナ素子が配置された部分と、両者を接続する湾曲部とを含み、
前記湾曲部に配置され、前記第1角部の内面に対向する第5アンテナ素子を、さらに備えており、
前記第1角部は、前記第5アンテナ素子から放射された電波を透過させる請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
さらに、前記第1角部の側を向く方の前記湾曲部の面に密着した樹脂部材を備えた請求項9に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
請求項1または2に記載のアンテナ装置と、
前記アンテナ装置の少なくとも前記第1アンテナ素子及び前記第2アンテナ素子に高周波信号を供給する高周波集積回路と
を備えた通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第1アンテナと第2アンテナとを、相互に角度をなして設置したアンテナ装置が知られている(特許文献1)。例えば、第1アンテナ及び第2アンテナとして、ビームフォーミングアンテナが用いられる。このアンテナ装置により、広いカバレッジを実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-141961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1アンテナ及び第2アンテナを筐体内に収容した場合、第1アンテナ及び第2アンテナから放射された電波を筐体の外部に放射するための窓が、第1アンテナ及び第2アンテナの正面に設けられる。2つの窓が二次波源として動作する。第1アンテナと第2アンテナとが相互に角度をなして配置されているため、筐体に設けられる2つの窓の間隔、すなわち二次波源の間隔が、第1アンテナと第2アンテナとの間隔より広くなる。このため、サイドローブやグレーティングローブが発生しやすくなる。
【0005】
本発明の目的は、異なる方向を向く2つのアンテナ素子を筐体に収容した構成を持ち、サイドローブやグレーティングローブが発生しにくいアンテナ装置を提供することである。本発明の他の目的は、このアンテナ装置を搭載した通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によると、
第1角部を介して接続された第1領域及び第2領域を含む内面を有する筐体と、
前記筐体に収容され、前記第1領域に、間隔を隔てて対向する少なくとも一つの第1アンテナ素子と、
前記筐体に収容され、前記第2領域に、間隔を隔てて対向する少なくとも一つの第2アンテナ素子と、
前記第1アンテナ素子から前記第1領域に向かう少なくとも一つの第1導波路と、
前記第2アンテナ素子から前記第2領域に向かう少なくとも一つの第2導波路と、
前記第1導波路の前記第1アンテナ素子の側の端面を、前記第1領域を含む仮想平面に垂直投影した像よりも、前記第1導波路の前記筐体の内面側の端面が前記第1角部の近くに位置しており、
前記第2導波路の前記第2アンテナ素子の側の端面を、前記第2領域を含む仮想平面に垂直投影した像よりも、前記第2導波路の前記筐体の内面側の端面が前記第1角部の近くに位置しているアンテナ装置が提供される。
【0007】
本発明の他の観点によると、
前記アンテナ装置と、
前記アンテナ装置の少なくとも前記第1アンテナ素子及び前記第2アンテナ素子に高周波信号を供給する高周波集積回路と
を備えた通信装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
第1導波路及び第2導波路のそれぞれの、筐体の内面側の端面が二次波源として動作する。上記構成を採用すると、第1アンテナ素子の二次波源と第2アンテナ素子の二次波源とが相互に近づく。これにより、サイドローブやグレーティングローブを抑圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1Aは、第1実施例によるアンテナ装置の一部分の断面図であり、 図1Bは、第1導波路30Aの端面、及び第1角部53Aの位置関係を示す模式図であり、図1Cは、第1アンテナ素子の正面方向から筐体を見た側面図である。
図2図2は、第1導波路、第2導波路、第1アンテナ素子、及び第2アンテナ素子の位置関係を示す模式図である。
図3図3は、第1実施例の一変形例によるアンテナ装置の断面図である。
図4図4は、第1実施例の他の変形例によるアンテナ装置の断面図である。
図5図5Aは、第2実施例によるアンテナ装置の一部分の断面図であり、図5Bは、第1導波路、第2導波路、第1アンテナ素子、及び第2アンテナ素子の位置関係を示す模式図である。
図6図6Aは、第3実施例によるアンテナ装置の一部分の断面図であり、図6Bは、第1導波路、第2導波路、第1アンテナ素子、及び第2アンテナ素子の位置関係を示す模式図である。
図7図7Aは、第4実施例によるアンテナ装置の一部分の断面図であり、図7Bは、第1導波路、第2導波路、第1アンテナ素子、及び第2アンテナ素子の位置関係を示す模式図である。
図8図8は、第5実施例によるアンテナ装置の一部分の断面図である。
図9図9Aは、第6実施例によるアンテナ装置の概略斜視図であり、図9Bは、第3アンテナ素子の正面方向(z軸に平行な方向)から見たときのアンテナ装置の各構成要素の位置関係を示す図である。
図10図10は、第7実施例によるアンテナ装置の断面図である。
図11図11Aは、第8実施例によるアンテナ装置に用いられる基板、及び基板に配置されたアンテナ素子の斜視図であり、図11Bは、第8実施例によるアンテナ装置の断面図である。
図12図12は、第9実施例によるアンテナ装置の断面図である。
図13図13A及び図13Bは、それぞれ第9実施例の第1変形例及び第2変形例によるアンテナ装置の断面図である。
図14図14は、第9実施例の第3変形例によるアンテナ装置の断面図である。
図15図15は、第9実施例の第4変形例によるアンテナ装置の断面図である。
図16図16は、第10実施例によるアンテナ装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施例]
図1A図1B図1C、及び図2を参照して、第1実施例によるアンテナ装置について説明する。
図1Aは、第1実施例によるアンテナ装置の一部分の断面図である。筐体50に複数の第1アンテナ素子20A及び複数の第2アンテナ素子20Bが収容されている。例えば、第1アンテナ素子20A及び第2アンテナ素子20Bは、2個ずつ配置されている。なお、第1アンテナ素子20Aの個数は1個でもよく、3個以上でもよい。同様に、第2アンテナ素子20Bの個数は、1個でもよく、3個以上であってもよい。
【0011】
筐体50は、第1角部53Aを介して接続された第1領域55A及び第2領域55Bを含む内面を有する。第1領域55Aを含む仮想平面と第2領域55Bを含む仮想平面とが、相互に直角に交差する。すなわち、第1角部53Aは、2つの平面が相互に交わってなす直線で構成される。なお、第1角部53Aは、必ずしも2つの平面が交わって形成される尖った角部である必要はない。例えば、第1領域55Aと第2領域55Bとが、ある曲率をもつ曲面を介して接続されていてもよいし、第1領域55Aと第2領域55Bとの両方に対して斜めの平面を介して接続されていてもよい。
【0012】
第1アンテナ素子20Aは、第1基板21Aに設けられたパッチアンテナであり、第2アンテナ素子20Bは、第2基板21Bに設けられたパッチアンテナである。第1アンテナ素子20Aは、第1領域55Aに、間隔を隔てて対向する姿勢で筐体50内に固定されている。第2アンテナ素子20Bは、第2領域55Bに、間隔を隔てて対向する姿勢で筐体50内に固定されている。
【0013】
複数の第1アンテナ素子20Aは、第1領域55Aと第2領域55Bとの交線に対して垂直な平面(図1Aの紙面に相当)に平行で、かつ第1領域55Aに平行な方向に並んで配置されている。複数の第2アンテナ素子20Bは、第1領域55Aと第2領域55Bとの交線に対して垂直な平面に平行で、かつ第2領域55Bに平行な方向に並んで配置されている。
【0014】
第1導波路30Aが、第1アンテナ素子20Aから第1領域55Aに向かって延びる。第1基板21Aを平面視したとき、第1導波路30Aの第1アンテナ素子20A側の端面31A(以下、アンテナ側の端面という。)に、複数の第1アンテナ素子20Aが包含される。同様に、第2導波路30Bが、第2アンテナ素子20Bから第2領域55Bに向かって延びる。第2基板21Bを平面視したとき、第2導波路30Bのアンテナ側の端面31Bに、複数の第2アンテナ素子20Bが包含される。第1導波路30A及び第2導波路30Bには、金属導波管が用いられる。「導波路の端面」とは、金属導波管の端部の開口面を意味する。
【0015】
例えば、第1導波路30Aのアンテナ側の端面31A及び第2導波路30Bのアンテナ側の端面31Bは、それぞれ第1基板21A及び第2基板21Bに接触している。なお、第1アンテナ素子20Aと第1導波路30Aとの間で十分な電磁気的結合が得られればよく、第1導波路30Aのアンテナ側の端面31Aと第1基板21Aとの間、及び第2導波路30Bのアンテナ側の端面31Bと第2基板21Bとの間に隙間が設けられていてもよい。
【0016】
第1領域55Aを平面視したとき、筐体50のうち第1導波路30Aの筐体50の内面側の端面32A(以下、筐体側の端面という。)を包含する領域に、電波を透過させる材料、例えば誘電体材料で形成された窓51が設けられている。同様に、第2領域55Bを平面視したとき、筐体50のうち第2導波路30Bの筐体側の端面32Bを包含する領域に、電波を透過させる材料、例えば誘電体材料で形成された窓51が設けられている。筐体50のうち窓51の周囲は、金属壁52で構成されている。
【0017】
例えば、第1導波路30Aの筐体側の端面32A及び第2導波路30Bの筐体側の端面32Bは、それぞれ第1領域55A及び第2領域55Bに接触している。なお、第1導波路30Aの筐体側の端面32Aと第1領域55Aとの間、及び第2導波路30Bの筐体側の端面32Bと第2領域55Bとの間に隙間が設けられていてもよい。
【0018】
例えば、第1導波路30Aの、第1領域55Aに平行な断面の面積は、アンテナ側の端面31Aと筐体側の端面32Aとの間で一定である。なお、第1導波路30Aの、第1領域55Aに平行な断面の面積を、アンテナ側の端面31Aから筐体側の端面32Aに向かって徐々に広くしてもよい。同様に、第2導波路30Bの、第2領域55Bに平行な断面の面積は、アンテナ側の端面31Bと筐体側の端面32Bとの間で一定である。なお、第1導波路30Aと同様に。第2導波路30Bの、第2領域55Bに平行な断面の面積を、アンテナ側の端面31Bから筐体側の端面32Bに向かって徐々に広くしてもよい。
【0019】
図1Bは、第1導波路30Aの端面、及び第1角部53Aの位置関係を示す模式図である。第1導波路30Aのアンテナ側の端面31Aを、第1領域55A(図1A)を含む仮想平面55AVに垂直投影した像31AIよりも、第1導波路30Aの筐体側の端面32Aが第1角部53Aの近くに位置している。すなわち、第1導波路30Aは、第1アンテナ素子20Aから第1領域55Aを垂直に見た方向を基準として第1角部53Aの側に傾斜している。像31AIと筐体側の端面32Aとのいずれが第1角部53Aに近いか否かの判定基準として、両者の幾何中心を採用すればよい。
【0020】
同様に、第2導波路30Bのアンテナ側の端面31Bを、第2領域55Bを含む仮想平面に垂直投影した像よりも、第2導波路30Bの筐体側の端面32Bが第1角部53Aの近くに位置している。すなわち、第2導波路30Bは、第2アンテナ素子20Bから第2領域55Bを垂直に見た方向を基準として第1角部53Aの側に傾斜している。
【0021】
図1Cは、第1アンテナ素子20Aの正面方向から筐体50を見た側面図である。第1アンテナ素子20Aの正面方向は、第1アンテナ素子20Aが配置された第1基板21Aの表面の法線方向に相当する。筐体50が、窓51及びそれを取り囲む金属壁52を含む。窓51に包含されるように、第1導波路30A(図1A)の筐体側の端面32Aが配置されている。第1導波路30Aのアンテナ側の端面31Aが、平面視において、筐体側の端面32Aを第1角部53Aから遠ざかる方向に平行移動した位置に配置されている。図1Cにおいて、第1導波路30Aのアンテナ側の端面31Aに右上がりの淡いハッチングを付し、筐体側の端面32Aに右下がりの濃いハッチングを付している。
【0022】
例えば、第1導波路30Aのアンテナ側の端面31Aと筐体側の端面32Aとの形状は、共に長方形であり、その大きさは等しい。第1導波路30Aのアンテナ側の端面31Aと筐体側の端面32Aとは、平面視において部分的に重なっている。なお、第1導波路30Aの傾斜を大きくして、両者が重ならないようにしてもよい。複数の第1アンテナ素子20Aが、第1導波路30Aのアンテナ側の端面31Aに包含されている。複数の第1アンテナ素子20Aは、第1領域55Aと第2領域55B(図1A)との交線(第1角部53A)に対して直交する方向に並んで配置されている。
【0023】
第2アンテナ素子20B、第2導波路30B、及び窓51の相対位置関係も、第1アンテナ素子20A、第1導波路30A、及び窓51の相対位置関係と同一である。
【0024】
次に、第1実施例の優れた効果について説明する。
第1実施例では、第1アンテナ素子20A及び第2アンテナ素子20Bから放射された電波が、それぞれ第1導波路30A及び第2導波路30Bによって、第1導波路30A及び第2導波路30Bの筐体側の端面32A、32Bに誘導される。第1アンテナ素子20A及び第2アンテナ素子20Bが一次波源となり、第1導波路30A及び第2導波路30Bのそれぞれの筐体側の端面32A、32Bが二次波源として動作する。すなわち、第1導波路30A及び第2導波路30Bのそれぞれの筐体側の端面32A、32B上の各点が、ホイヘンス=フレネルの原理に基づく二次波の波源となる。2つの二次波源が配置された面が、相互に異なる方向を向いているため、複数の第1アンテナ素子20Aのアレー方向と、複数の第2アンテナ素子20Bのアレー方向との2つのアレー方向でビームフォーミングを行うことが可能になる。複数の第1アンテナ素子20A及び複数の第2アンテナ素子20Bのそれぞれをビームフォーミング用アンテナとして動作させ、広範囲のカバレッジを実現することができる。
【0025】
第1角部53Aが向く外側の方向(図1Aにおいて右斜め上方向)にビームフォーミングを行いたい場合に、複数の第1アンテナ素子20Aと複数の第2アンテナ素子20Bとを、1つのアレーアンテナとして動作させるとよい。二次波源として動作する第1導波路30Aの筐体側の端面32Aと第2導波路30Bの筐体側の端面32Bとの間隔が狭まることにより、サイドローブ及びグレーティングローブを抑圧することができる。
【0026】
第1アンテナ素子20Aから法線方向に第1導波路30Aを延ばすと、アンテナ側の端面31Aの像31AI(図1B)の位置が二次波源として動作する。第2アンテナ素子20Bにおいても同様である。第1実施例では、第1導波路30Aの筐体側の端面32Aが、像31AIより第1角部53Aに近い位置に配置されており、第2導波路30Bについても同様である。このため、像31AIの位置が二次波源として動作する場合と比べて、2つの二次波源の間隔が狭くなる。このため、サイドローブ及びグレーティングローブを抑圧することができる。
【0027】
次に、図2を参照して第1導波路30A、第2導波路30B、第1アンテナ素子20A、及び第2アンテナ素子20Bの位置関係について、より具体的に説明する。
【0028】
図2は、第1導波路30A、第2導波路30B、第1アンテナ素子20A、及び第2アンテナ素子20Bの位置関係を示す模式図である。第1導波路30Aのアンテナ側の端面31Aの幾何中心CA1を第1領域55Aに下した垂線と第1領域55Aとの交点をCA2と標記する。第1導波路30Aの筐体側の端面32Aの幾何中心をCA3と表記する。第2導波路30Bのアンテナ側の端面31Bの幾何中心CB1を第2領域55Bに下した垂線と第2領域55Bとの交点をCB2と標記する。第2導波路30Bの筐体側の端面32Aの幾何中心をCB3と標記する。
【0029】
幾何中心CA1とCB1との間隔をG1と標記し、交点CA2とCB2との間隔をG2と標記し、幾何中心CA3とCB3との間隔をG3と標記する。第1実施例では、G3<G2が成立する。これは、第1導波路30A及び第2導波路30Bを傾斜させない構成と比べて、2つの二次波源の間隔が狭まったことを意味する。なお、間隔G1とG2とは、ほぼ等しい。これは、2つの一次波源の間隔と2つの二次波源の間隔とがほぼ等しいことを意味する。このため、第1アンテナ素子20A及び第2アンテナ素子20Bを筐体50に収容しても、収容前と同程度に、サイドローブ及びグレーティングローブを抑圧することができる。
【0030】
第1導波路30Aのアンテナ側の端面31Aの幾何中心CA1は、通常、第1アンテナ素子20Aを平面視したときの複数の第1アンテナ素子20Aの幾何中心とほぼ一致する。同様に、第2導波路30Bのアンテナ側の端面31Bの幾何中心CB1は、通常、第2アンテナ素子20Bを平面視したときの複数の第2アンテナ素子20Bの幾何中心とほぼ一致する。このため、間隔G1として、複数の第1アンテナ素子20Aの幾何中心と複数の第2アンテナ素子20Bの幾何中心との間隔を採用してもよい。
【0031】
次に、図3を参照して第1実施例の一変形例について説明する。
図3は、第1実施例の一変形例によるアンテナ装置の断面図である。第1実施例(図1A)では、第1導波路30A及び第2導波路30Bに金属導波管が用いられてる。これに対して図3に示した第1実施例の変形例では、第1導波路30A及び第2導波路30Bに誘電体導波路が用いられている。第1導波路30Aのアンテナ側の端面31A及び筐体側の端面32Aは、それぞれ誘電体導波路の第1アンテナ素子20Aに対向する端面、及び筐体50の内面に対向する端面に相当する。第2導波路30Bについても同様である。誘電体導波路の誘電率は、周囲の空間の誘電率より高い。本変形例のように、第1導波路30A及び第2導波路30Bとして、誘電体導波路を用いてもよい。
【0032】
第1導波路30A及び第2導波路30Bの一方に金属導波管を用い、他方に誘電体導波路を用いてもよい。金属導波管の内部空間は大気の状態であってもよいし、金属導波管の内部空間に誘電体材料を充填してもよい。
【0033】
次に、図4を参照して第1実施例の他の変形例について説明する。
図4は、第1実施例の他の変形例によるアンテナ装置の断面図である。第1実施例(図1A)では、第1アンテナ素子20Aが第1基板21Aに配置されており、第2アンテナ素子20Bが、第1基板21Aとは異なる第2基板21Bに配置されている。これに対して図4に示した第1実施例の変形例では、第1アンテナ素子20A及び第2アンテナ素子20Bが、共通のL字状基板21Lに設けられている。
【0034】
L字状基板21Lは、折れ曲がり部でL字状に折れ曲がった形状を有する。折れ曲がり部の両側の表面は、それぞれ筐体50の内面の第1領域55A及び第2領域55Bに対向する。第1領域55Aに対向する表面に第1アンテナ素子20Aが配置されており、第2領域55Bに対向する表面に第2アンテナ素子20Bが配置されている。
【0035】
図4に示した変形例のように、L字状基板21Lを用いることにより、部品点数を削減することができる。さらに、筐体50へのL字状基板21Lの組み込み作業を簡素化することができる。
【0036】
次に、第4実施例のさらに他の変形例について説明する。第1実施例(図1A)では、複数の第1アンテナ素子20Aが、第1領域55Aと第2領域55Bとの交線に対して直交する平面に平行で、かつ第1領域55Aに平行な方向に、一列に並んで配置されている。変形例として、複数の第1アンテナ素子20Aが、第1領域55Aと第2領域55Bとの交線に平行に、一列に並んで配置された構成としてもよい。その他に、複数の第1アンテナ素子20Aを行列状に配置してもよい。第2アンテナ素子20Bについても同様である。
【0037】
[第2実施例]
次に、図5A及び図5Bを参照して、第2実施例によるアンテナ装置について説明する。以下、図1Aから図2までの図面を参照して説明した第1実施例によるアンテナ装置と共通の構成については説明を省略する。
【0038】
図5Aは、第2実施例によるアンテナ装置の一部分の断面図である。第1実施例(図1A)では、筐体50の内面の第1領域55Aと第2領域55Bとが第1角部53Aにおいてほぼ直角に交差している。これに対して第2実施例では、第1領域55Aと第2領域55Bとの成す角度が鈍角である。第1実施例と同様に、第1導波路30Aの筐体側の端面32Aは、アンテナ側の端面31Aを、第1領域55Aを含む仮想平面に垂直投影した像より第1角部53Aに近い位置に配置されている。ただし、第1導波路30Aの筐体側の端面32Aの第1角部53Aへの偏り量は、第1実施例における偏り量より大きい。第2導波路30Bにおいても同様である。
【0039】
なお、図5Aでは、第1アンテナ素子20A及び第2アンテナ素子20Bを3個ずつ配置しているが、第1実施例(図1A)と同様に2個ずつ配置してもよいし、1個または4個以上配置してもよい。
【0040】
図5Bは、第1導波路30A、第2導波路30B、第1アンテナ素子20A、及び第2アンテナ素子20Bの位置関係を示す模式図である。幾何中心CA1、CA3、CB1、CB3、及び交点CA2、CB2の定義は、図2に示した第1実施例における定義と同様である。第1実施例(図2)では、幾何中心CA1とCB1との間隔G1と、幾何中心CA3とCB3との間隔G3とがほぼ等しい。これに対して第2実施例では、G3<G1が成立する。
【0041】
次に、第2実施例の優れた効果について説明する。
第2実施例では、G3<G1が成立する。すなわち、第1実施例と比べて、2つの二次波源の間隔がより狭くなる。このため、サイドローブ及びグレーティングローブを抑圧する効果が大きくなるという優れた効果が得られる。
【0042】
次に、第1導波路30Aの筐体側の端面32Aと第2導波路30Bの筐体側の端面32Bとの好ましい間隔について説明する。第1導波路30Aの筐体側の端面32Aと第2導波路30Bの筐体側の端面32Bとが最も近接する箇所における両者の間隔をG4(図5B)と標記する。アンテナ装置の動作周波数帯域の最低周波数(WiGigの場合は57.24GHz)に対応する自由空間波長をλMAXと標記し、最高周波数(WiGigの場合は65.88GHz)に対応する自由空間波長をλMINと標記する。
【0043】
間隔G4を波長λMAX未満にすることが好ましい。このようにすることで、動作周波数帯域の最低周波数近傍において、グレーティングローブの問題を解決することができる。間隔G4を波長λMIN未満にすることがより好ましい。このようにすることで、動作周波数帯域の全域において、グレーティングローブの問題を解決することができる。
【0044】
[第3実施例]
次に、図6A及び図6Bを参照して、第3実施例によるアンテナ装置について説明する。以下、図1Aから図2までの図面を参照して説明した第1実施例によるアンテナ装置と共通の構成については説明を省略する。
【0045】
図6Aは、第3実施例によるアンテナ装置の一部分の断面図である。第1実施例(図1A)では、複数の第1アンテナ素子20Aに対して1つの第1導波路30Aが配置され、複数の第2アンテナ素子20Bに対して1つの第2導波路30Bが配置されている。これに対して第3実施例では、第1アンテナ素子20Aごとに第1導波路30Aが配置され、第2アンテナ素子20Bごとに第2導波路30Bが配置されている。言い換えると、複数の第1アンテナ素子20Aと複数の第1導波路30Aとが、1対1に対応しており、複数の第2アンテナ素子20Bと複数の第2導波路30Bとが、1対1に対応している。
【0046】
複数の第1導波路30Aのそれぞれにおいて、第1実施例(図1A図1B)と同様に、アンテナ側の端面31Aを、第1領域55Aを含む仮想平面に垂直投影した像よりも、筐体側の端面32Aが第1角部53Aの近くに位置する。同様に、複数の第2導波路30Bのそれぞれにおいて、アンテナ側の端面31Bを、第2領域55Bを含む仮想平面に垂直投影した像よりも、筐体側の端面32Bが第1角部53Aの近くに位置する。
【0047】
図6Bは、第1導波路30A、第2導波路30B、第1アンテナ素子20A、及び第2アンテナ素子20Bの位置関係を示す模式図である。複数の第1導波路30Aのそれぞれについて幾何中心CA1、交点CA2、幾何中心CA3が定義され、複数の第2導波路30Bのそれぞれについて、幾何中心CB1、交点CB2、幾何中心CB3が定義される。図6Bでは、1つの第1導波路30A及び1つの第2導波路30Bについてのみ、幾何中心CA1、交点CA2、幾何中心CA3、及び幾何中心CB1、交点CB2、幾何中心CB3を示している。
【0048】
複数の第1導波路30Aから選択した1つの第1導波路30Aと、複数の第2導波路30Bから選択した1つの第2導波路30Bとの組のそれぞれにおいて、幾何中心CA1とCB1との間隔G1と、幾何中心CA3とCB3との間隔G3とがほぼ等しい。さらに、第1導波路30Aと第2導波路30Bとのそれぞれの組において、交点CA2とCB2との間隔G2よりも、幾何中心CA3とCB3との間隔G3の方が狭い。
【0049】
次に、第3実施例の優れた効果について説明する。
第3実施例においても第1実施例と同様に、G3<G2が成立するため、サイドローブ及びグレーティングローブを抑圧することができる。また、第1実施例では、1つの第1導波路30Aが複数の第1アンテナ素子20Aに結合しているため、第1導波路30A内で複数の第1アンテナ素子20Aの信号が重なることにより、指向性の制御が困難になることがある。これに対して第3実施例では、複数の第1導波路30A及び第2導波路30Bの筐体側の端面32A、32Bにおける位相を個別に制御することができるため、指向性の制御が容易である。
【0050】
また、第1実施例では、第1導波路30A及び第2導波路30Bの断面が大きくなるため、導波路で高次モードが発生することがある。これに対して第3実施例では、第1導波路30A及び第2導波路30Bの断面が小さいため、高次モードの発生が抑制される。
【0051】
次に、第3実施例の変形例について説明する。
第3実施例では、第1アンテナ素子20Aが第1導波路30Aに結合する。この結合箇所に、第1アンテナ素子20Aに代えてマイクロストリップ線路の端部を配置し、マイクロストリップ線路-導波管変換器を構成してもよい。この場合は、マイクロストリップ線路のうち導波管と結合している箇所を、第1アンテナ素子20Aということができる。同様に、第2アンテナ素子20Bと第2導波路30Bとの結合箇所に、マイクロストリップ線路-導波管結合器を用いてもよい。
【0052】
[第4実施例]
次に、図7A及び図7Bを参照して、第4実施例によるアンテナ装置について説明する。以下、図6A及び図6Bを参照して説明した第3実施例によるアンテナ装置と共通の構成については説明を省略する。
【0053】
図7Aは、第4実施例によるアンテナ装置の一部分の断面図である。第3実施例(図5A)では、筐体50の内面の第1領域55Aと第2領域55Bとが第1角部53Aにおいてほぼ直角に交差している。これに対して第4実施例では、第1領域55Aと第2領域55Bとの成す角度が鈍角である。第3実施例と同様に、第1導波路30Aの各々の筐体側の端面32Aは、アンテナ側の端面31Aを、第1領域55Aを含む仮想平面に垂直投影した像より第1角部53Aに近い位置に配置されている。ただし、第1導波路30Aの各々の筐体側の端面32Aの第1角部53Aへの偏り量は、第3実施例における偏り量より大きい。第2導波路30Bにおいても同様である。
【0054】
なお、図7Aでは、第1アンテナ素子20A及び第2アンテナ素子20Bを3個ずつ配置しているが、第3実施例(図6A)と同様に2個ずつ配置してもよいし、1個、または4個以上配置してもよい。
【0055】
図7Bは、第1導波路30A、第2導波路30B、第1アンテナ素子20A、及び第2アンテナ素子20Bの位置関係を示す模式図である。第3実施例(図6B)と同様に、複数の第1導波路30Aのそれぞれについて、幾何中心CA1、CA3が定義され、複数の第2導波路30Bのそれぞれについて、幾何中心CB1、CB3が定義される。図7Bでは、1つの第1導波路30A及び1つの第2導波路30Bについてのみ、幾何中心CA1、CA3、及び幾何中心CB1、CB3を示している。第3実施例(図6B)では、幾何中心CA1とCB1との間隔G1と、幾何中心CA3とCB3との間隔G3とがほぼ等しい。これに対して第4実施例では、G3<G1が成立する。
【0056】
次に、第4実施例の優れた効果について説明する。
第4実施例では、G3<G1が成立する。すなわち、第3実施例と比べて、複数の第1導波路30Aから選択された1つの第1導波路30Aによる二次波源と、複数の第2導波路30Bから選択された1つの第2導波路30Bによる二次波源との間隔がより狭くなる。このため、サイドローブ及びグレーティングローブを抑圧する効果が大きくなるという優れた効果が得られる。
【0057】
[第5実施例]
次に、図8を参照して、第5実施例によるアンテナ装置について説明する。以下、図1Aから図2までの図面を参照して説明した第1実施例によるアンテナ装置と共通の構成については説明を省略する。
【0058】
図8は、第5実施例によるアンテナ装置の一部分の断面図である。第1実施例では、複数の第1アンテナ素子20A及び複数の第2アンテナ素子20Bとして、パッチアンテナが用いられている。これに対して第6実施例では、複数の第1アンテナ素子20Aとしてパッチアンテナが用いられ、1つの第2アンテナ素子20Bとしてダイポールアンテナが用いられる。
【0059】
第1アンテナ素子20Aと第2アンテナ素子20Bとは、共通の基板21に配置されている。第1アンテナ素子20Aは、基板21の一方の表面に配置されており、第2アンテナ素子20Bは、第2領域55Bに対向する基板21の側面の近傍に配置されている。ダイポールアンテナの長さ方向は、基板21の厚さ方向に平行である。
【0060】
第1実施例(図1A)と同様に、1つの第1導波路30Aが複数の第1アンテナ素子20Aに結合しており、1つの第2導波路30Bが1つの第2アンテナ素子20Bに結合している。第1導波路30Aのアンテナ側の端面31Aと筐体側の端面32Aとの位置関係、及び第2導波路30Bのアンテナ側の端面31Bと筐体側の端面32Bとの位置関係は、第1実施例(図1A)または第2実施例(図5A)によるこれらの位置関係と同様である。第2導波路30Bは、第2アンテナ素子20Bから第2領域55Bを垂直に見た方向に対して、ダイポールアンテナの長さ方向に傾いている。
【0061】
次に、第5実施例の優れた効果について説明する。
第5実施例においても、第1実施例または第2実施例と同様に、ビームフォーミングにおける広範囲のカバレッジを実現し、かつサイドローブ及びグレーティングローブを抑圧することができる。さらに、第5実施例では、図4に示した第1実施例の変形例で用いられるL字状基板21Lのような特殊な基板を用いることなく、共通の基板21に、第1アンテナ素子20A及び第2アンテナ素子20Bの両方を配置することができる。
【0062】
次に、第5実施例の変形例について説明する。
第5実施例では、ダイポールアンテナである第2アンテナ素子20Bの長さ方向を基板21の厚さ方向と平行にしているが、側面に平行で、かつ第1アンテナ素子20Aが配置されている面に平行にしてもよい。この場合、第2導波路30Bは、第2アンテナ素子20Bから第2領域55Bを垂直に見た方向に対して、ダイポールアンテナの長さ方向と直交する方向に傾くことになる。
【0063】
[第6実施例]
次に、図9A及び図9Bを参照して第6実施例によるアンテナ装置について説明する。以下、図1Aから図2までの図面を参照して説明した第1実施例によるアンテナ装置と共通の構成については説明を省略する。
【0064】
図9Aは、第6実施例によるアンテナ装置の概略斜視図である。図9Aでは、筐体50を破線で表している。筐体50の内面が、第1領域55A、第2領域55B、及び第3領域55Cを含む。図9Aにおいて第3領域55Cにハッチングを付している。第3領域55Cは、第2角部53Bを介して第1領域55Aに接続され、第3角部53Cを介して第2領域55Bに接続されている。第2領域55B、第1領域55A、及び第3領域55Cのそれぞれに直交する方向をx方向、y方向、及びz方向とするxyz直交座標系を定義する。
【0065】
筐体50に、複数の第1アンテナ素子20A及び複数の第2アンテナ素子20Bの他に、複数の第3アンテナ素子20Cが収容されている。なお、第3アンテナ素子20Cの個数は1つであってもよい。第1アンテナ素子20A及び第2アンテナ素子20Bは、図4に示した第1実施例の変形例によるアンテナ装置と同様に、L字状基板21Lに配置されている。複数の第3アンテナ素子20Cは、第3基板21Cに配置され、第3領域55Cに間隔を隔てて対向している。複数の第3アンテナ素子20Cは、複数の第2アンテナ素子20Bが配列する方向(y方向)と平行な方向に並んで配置されている。第3アンテナ素子20Cとして、例えばパッチアンテナが用いられる。
【0066】
図9Bは、第3アンテナ素子20Cの正面方向(z軸に平行な方向)から見たときのアンテナ装置の各構成要素の位置関係を示す図である。第1アンテナ素子20A、第2アンテナ素子20B、第1導波路30A、第2導波路30B、及び筐体50の位置関係は、図4に示した第1実施例の変形例によるアンテナ装置のこれらの位置関係と同様である。なお、図9Bでは、第2アンテナ素子20Bが3個配置されているが、図4に示したアンテナ装置のように、第2アンテナ素子20Bを2個にしてもよい。
【0067】
第3基板21Cに複数の第3アンテナ素子20Cが配置されている。第3アンテナ素子20Cごとに第3導波路30Cが配置されており、第3アンテナ素子20Cのそれぞれから第3領域55C(図9A)に向かって延びている。第3基板21Cを平面視したとき、第3導波路30Cのそれぞれのアンテナ側の端面31Cに、第3アンテナ素子20Cが包含されている。図9Bにおいて、第3導波路30Cのアンテナ側の端面31Cに右上がりの淡いハッチングを付している。
【0068】
第3導波路30Cのそれぞれの筐体側の端面32Cは、アンテナ側の端面31Cより第3角部53C(図9A)に近い位置に配置されている。第3導波路30Cのそれぞれの筐体側の端面32Cから第1領域55Aまでの距離は、アンテナ側の端面31Cから第1領域55Aまでの距離と等しい。図9Bにおいて、第3導波路30Cの筐体側の端面32Cに右下がりの濃いハッチングを付している。筐体50に、平面視において第3導波路30Cの筐体側の端面32Cを包含する誘電体の窓51が設けられている。
【0069】
次に、第6実施例の優れた効果について説明する。
第6実施例によるアンテナ装置は、向きが異なる第1領域55A、第2領域55B、及び第3領域55Cのそれぞれに対向する第1アンテナ素子20A、第2アンテナ素子20B、及び第3アンテナ素子20Cを含むため、ビームフォーミングの範囲を異なる3方向に拡大することができる。
【0070】
さらに、第3導波路30Cの筐体側の端面32Cをアンテナ側の端面31Cより第3角部53Cに近付けているため、第2アンテナ素子20Bと第3アンテナ素子20Cとを動作させてビームフォーミングを行うときのサイドローブ及びグレーティングローブを抑圧することができる。
【0071】
次に、第6実施例の変形例について説明する。
第6実施例では、第3導波路30Cのそれぞれの筐体側の端面32Cから第1領域55Aまでの距離が、アンテナ側の端面31Cから第1領域55Aまでの距離と等しい。他の構成として、第3導波路30Cのそれぞれの筐体側の端面32Cを、アンテナ側の端面31Cより第1領域55A及び第2領域55Bの両方に近い位置に配置してもよい。この構成にすると、第1アンテナ素子20Aと第3アンテナ素子20Cとを動作させてビームフォーミングを行うときにも、サイドローブ及びグレーティングローブを抑圧することができる。さらに、第1導波路30Aの筐体側の端面32Aをアンテナ側の端面31Aより第3基板21Cに近づけてもよい。同様に、第2導波路30Bの筐体側の端面32Bをアンテナ側の端面31Bより第3基板21Cに近づけてもよい。この構成にすると、第1アンテナ素子20A、第2アンテナ素子20B、及び第3アンテナ素子20Cを1つのアレーアンテナとして動作させてビームフォーミングを行う場合に、サイドローブ及びグレーティングローブを抑圧することができる。
【0072】
第6実施例では、第3アンテナ素子20Cごとに第3導波路30Cを配置しているが、複数の第3アンテナ素子20Cに対して1つの第3導波路30Cを配置してもよい。また、第6実施例では、第1アンテナ素子20A及び第2アンテナ素子20BをL字状基板21Lに配置しているが、第1アンテナ素子20Aと第2アンテナ素子20Bとを、異なる基板に配置してもよい。
【0073】
[第7実施例]
次に、図10を参照して第7実施例によるアンテナ装置について説明する。以下、図1Aから図2までの図面を参照して説明した第1実施例によるアンテナ装置と共通の構成については説明を省略する。
【0074】
図10は、第7実施例によるアンテナ装置の断面図である。第1実施例(図1A)では、筐体50の内面が第1領域55A及び第2領域55Bを含んでおり、その他の領域については言及していない。第7実施例では、第2領域55Bに第3角部53Cを介して第3領域55Cが接続されている。第3領域55Cは、第1領域55Aに対向する。第1領域55Aと第3領域55Cとに挟まれた空間に、複数の第1アンテナ素子20A、複数の第2アンテナ素子20B、及び複数の第3アンテナ素子20Cが配置されている。
【0075】
複数の第3アンテナ素子20Cは、間隔を隔てて第3領域55Cに対向している。第3導波路30Cが、複数の第3アンテナ素子20Cから第3領域55Cに向かって延びている。アンテナ側の端面31Cを、第3領域55Cを含む仮想平面に垂直投影した像よりも、第3導波路30Cの筐体側の端面32Cが第3角部53Cに近い位置に配置されている。
【0076】
複数の第2アンテナ素子20Bが、第3領域55Cから第1領域55Aに向かう方向に並んで配置されている。複数の第2アンテナ素子20Bのそれぞれに対して第2導波路30Bが配置されている。第1領域55Aに近い位置に配置された第2アンテナ素子20Bに結合する第2導波路30Bにおいては、アンテナ側の端面31Bを、第2領域55Bを含む仮想平面に垂直投影した像よりも、筐体側の端面32Bが第1角部53Aに近い位置に配置されている。第3領域55Cに近い位置に配置された第2アンテナ素子20Bに結合する第2導波路30Bにおいては、アンテナ側の端面31Bを、第2領域55Bを含む仮想平面に垂直投影した像よりも、筐体側の端面32Bが第3角部53Cに近い位置に配置されている。
【0077】
次に、第7実施例の優れた効果について説明する。
第7実施例によるアンテナ装置は、向きが異なる第1領域55A、第2領域55B、及び第3領域55Cのそれぞれに対向する第1アンテナ素子20A、第2アンテナ素子20B、及び第3アンテナ素子20Cを含むため、ビームフォーミングの範囲を異なる3方向に拡大することができる。
【0078】
第1角部53Aが向く外側の方向(図10において右斜め上方向)にビームフォーミングを行いたい場合に、第1アンテナ素子20Aと、第1領域55Aに近い位置に配置された第2アンテナ素子20Bとを1つのアレーアンテナとして動作させるとよい。このとき、サイドローブ及びグレーティングローブを抑圧することができる。第3角部53Cが向く外側の方向(図10において右斜め下方向)にビームフォーミングを行いたい場合に、第3アンテナ素子20Cと、第3領域55Cに近い位置に配置された第2アンテナ素子20Bとを1つのアレーアンテナとして動作させるとよい。このときにも、サイドローブ及びグレーティングローブを抑圧することができる。
【0079】
[第8実施例]
次に、図11A及び図11Bを参照して第8実施例によるアンテナ装置について説明する。以下、図1Aから図2までの図面を参照して説明した第1実施例によるアンテナ装置と共通の構成については説明を省略する。
【0080】
図11Aは、第8実施例によるアンテナ装置に用いられる基板21、及び基板21に配置されたアンテナ素子の斜視図である。基板21は、第1平坦部21U、第2平坦部21V、及び両者を接続する湾曲部21Wを含む。湾曲部21Wは、第1平坦部21U及び第2平坦部21Vより薄い。第1平坦部21U及び第2平坦部21Vは、それぞれ平坦な第1表面21US及び第2表面21VSを有している。第1表面21US及び第2表面21VSは、湾曲部21Wの外側の表面が面する空間と同じ側の空間に面している。第1表面21USを含む仮想平面と、第2表面21VSを含む仮想平面とが直角に交わる。
【0081】
第1表面21USを含む仮想平面と第2表面21VSを含む仮想平面との交線23に平行な方向を第1方向D1ということとする。第1平坦部21U及び第2平坦部21Vは、それぞれ第1方向D1に平行な方向に延びる側面21UE、21VEを有する。第2平坦部21Vの側面21VEが、第1方向D1の一部の範囲において湾曲部21Wに接続されている。第2平坦部21Vは、第1方向D1に関して湾曲部21Wに接続されていない範囲に、側面21VEよりも交線23に向かって突出した複数の突出部21VPを有している。このような基板21は、例えば国際公開第2020/170722号の明細書に記載された方法を用いて作製することができる。
【0082】
第1平坦部21Uの第1表面21USに、複数の第1アンテナ素子20Aが配置されており、第2平坦部21Vの第2表面21VSに、複数の第2アンテナ素子20Bが配置されている。図11Aにおいて、第1アンテナ素子20A及び第2アンテナ素子20Bのそれぞれの給電点を丸印で表している。複数の第1アンテナ素子20Aは、第1方向D1に並んで配置されている。複数の第2アンテナ素子20Bは、それぞれ第1方向D1に関して突出部21VPが配置された範囲内に配置されており、第2アンテナ素子20Bのそれぞれの一部の領域は、突出部21VPの第2表面21VSに配置されている。
【0083】
複数の突出部21VPのそれぞれの先端に、第4アンテナ素子20Dが配置されている。第4アンテナ素子20Dとして、第1方向D1に延びるダイポールアンテナが用いられる。第1平坦部21Uの第1表面21USとは反対側の表面に、高周波集積回路(RFIC)60が実装されている。第1平坦部21U、湾曲部21W、及び第2平坦部21Vに設けられた複数の給電線を経由して、高周波集積回路60から第1アンテナ素子20A、第2アンテナ素子20B、及び第4アンテナ素子20Dのそれぞれに高周波信号が供給される。
【0084】
図11Bは、第8実施例によるアンテナ装置の断面図である。第1アンテナ素子20A、第2アンテナ素子20B、及び第3アンテナ素子20Cが配置された基板21が筐体50に収容されている。第1平坦部21Uの第1表面21US及び第2平坦部21Vの第2表面21VSが、それぞれ筐体50の内面の第1領域55A及び第2領域55Bに対向する。第1導波路30Aが、複数の第1アンテナ素子20Aのそれぞれから第1領域55Aまで延びる。第2導波路30Bが、複数の第2アンテナ素子20Bのそれぞれから第2領域55Bまで延びる。第1導波路30Aのアンテナ側の端面31Aと筐体側の端面32Aとの位置関係、第2導波路30Bのアンテナ側の端面31Bと筐体側の端面32Bとの位置関係は、第1実施例によるアンテナ装置(図1A)のこれらの位置関係と同様である。
【0085】
第1角部53Aに、第4アンテナ素子20Dから放射された電波を透過させる材料、例えば誘電体材料からなる窓51が設けられている。第4アンテナ素子20Dから放射された電波が、第1角部53Aの窓51を透過して筐体50の外部まで放射される。
【0086】
次に、第8実施例の優れた効果について説明する。
第1導波路30Aの筐体側の端面32Aが第1角部53Aに近づくように、第1導波路30Aが傾斜しているため、第1アンテナ素子20Aに結合する第1導波路30Aの筐体側の端面32Aと、第4アンテナ素子20Dから放射された電波が通過する第1角部53Aの窓51との間隔が狭まる。このため、第1アンテナ素子20Aと第4アンテナ素子20Dとを動作させてビームフォーミングを行う場合に、サイドローブ及びグレーティングローブを抑圧することができる。
【0087】
同様に、第2アンテナ素子20Bと第4アンテナ素子20Dとを動作させてビームフォーミングを行う場合に、サイドローブ及びグレーティングローブを抑圧することができる。さらに、第1アンテナ素子20A、第2アンテナ素子20B、及び第4アンテナ素子20Dを動作させてビームフォーミングを行う場合にも、サイドローブ及びグレーティングローブを抑圧することができる。
【0088】
次に、第8実施例の変形例について説明する。
基板21の第1平坦部21U及び第2平坦部21Vを、それぞれ接着剤で第1領域55A及び第2領域55Bに接着してもよい。この場合、接着剤からなる層が、導波路として機能する。接着剤からなる層を導波路として利用する場合、導波路は、図11Bに示した第1導波路30A及び第2導波路30Bのように傾斜した構造になるとは限らない。導波路が傾斜していない構成においても、第1アンテナ素子20Aと第2アンテナ素子20Bとの間に第4アンテナ素子20Dが配置されることにより、隣り合うアンテナ素子の間隔が狭まる。このため、サイドローブ及びグレーティングローブを抑圧することができる。なお、接着剤からなる層を用いて、図11Bに示した第1導波路30A及び第2導波路30Bのように傾斜した構造を実現することも可能である。
【0089】
[第9実施例]
次に、図12を参照して第9実施例によるアンテナ装置について説明する。以下、図1Aから図2までの図面を参照して説明した第1実施例によるアンテナ装置と共通の構成については説明を省略する。
【0090】
図12は、第9実施例によるアンテナ装置の断面図である。第9実施例によるアンテナ装置に用いられる基板21は、第1平坦部21U、第2平坦部21V,及び両者を接続する湾曲部21Wを含む。この基板21は、例えば、1枚のリジッド基板の一部分を薄くし、薄くされた部分を湾曲させることにより作製することができる。または、2枚のリジッド基板を、フレキシブル基板を介して接続してもよい。
【0091】
第1平坦部21Uに配置された複数の第1アンテナ素子20Aが筐体50の内面の第1領域55Aに対向する。第2平坦部21Vに配置された第2アンテナ素子20Bが筐体50の内面の第2領域55Bに対向する。湾曲部21Wの外側の表面が、筐体50の第1角部53Aに対向する。湾曲部21Wに、第5アンテナ素子20Eが配置されている。第5アンテナ素子20Eとして、例えばダイポールアンテナが用いられる。第5アンテナ素子20Eは、第1角部53Aの内面に対向する。第1角部53Aに、第5アンテナ素子20Eから放射された電波を透過させる材料、例えば誘電体材料からなる窓51が設けられている。第5アンテナ素子20Eから放射された電波が、第1角部53Aの窓51を透過して筐体50の外部に放射される。
【0092】
第1アンテナ素子20A及び第2アンテナ素子20Bに、それぞれ第1導波路30A及び第2導波路30Bが結合している。第1導波路30A及び第2導波路30Bは、第1実施例(図1A)によるアンテナ装置の第1導波路30A及び第2導波路30Bと同様に傾斜している。
【0093】
次に、第9実施例の優れた効果について説明する。
第9実施例においても第8実施例(図11A図11B)と同様に、第1角部53Aに対向する第5アンテナ素子20Eが配置されている。このため、サイドローブ及びグレーティングローブを抑圧することができる。また、異なる3方向を向くアンテナ素子を同時に使用することができるため、ビームフォーミングの範囲を拡大することができる。
【0094】
基板21の第1平坦部21U及び第2平坦部21Vを、それぞれ接着剤で第1領域55A及び第2領域55Bに接着してもよい。この場合、接着剤からなる層が、導波路として機能する。接着剤からなる層を導波路として利用する場合、導波路は、図12に示した第1導波路30A及び第2導波路30Bのように傾斜した構造になるとは限らない。この構成においても、第1アンテナ素子20Aと第2アンテナ素子20Bとの間に第5アンテナ素子20Eが配置されることにより、隣り合うアンテナ素子の間隔が狭まる。このため、サイドローブ及びグレーティングローブを抑圧することができる。なお、接着剤からなる層を用いて、図12に示した第1導波路30A及び第2導波路30Bのように傾斜した構造を形成することも可能である。
【0095】
次に、図13Aを参照して第9実施例の第1変形例について説明する。
図13Aは、第9実施例の第1変形例によるアンテナ装置の断面図である。第9実施例(図12)では、第1角部53Aにおいて第1領域55Aと第2領域55Bとがほぼ直角に交わっている。これに対して図13Aに示した第1変形例では、第1角部53Aの内面が、第1領域55A及び第2領域55Bの両方に対して傾斜した傾斜領域55Dを含む。筐体50の外側の表面は、第1角部53Aにおいて面取り加工された形状を有する。
【0096】
次に、図13Bを参照して第9実施例の第2変形例について説明する。
図13Bは、第9実施例の第2変形例によるアンテナ装置の断面図である。第2変形例では、第1角部53Aの内面が湾曲した曲面からなる湾曲領域55Eを含む。第1領域55Aと湾曲領域55E、及び第2領域55Bと湾曲領域55Eとは、滑らかに繋がっている。筐体50の外側の表面は、第1角部53AにおいてR面取り加工された形状を有する。
【0097】
筐体50のうち傾斜領域55Dまたは湾曲領域55Eに相当する領域に、第5アンテナ素子20Eから放射された電波を透過させる材料、例えば誘電体材料からなる窓51が設けられている。このように、第1角部53Aに傾斜領域55Dまたは湾曲領域55Eを設けてもよい。
【0098】
次に、図14を参照して、第9実施例の第3変形例について説明する。
図14は、第9実施例の第3変形例によるアンテナ装置の断面図である。第3変形例では、図13Aに示した第1変形例によるアンテナ装置の湾曲部21Wの外側の表面に密着した樹脂部材25が設けられている。樹脂部材25を設けることにより、第5アンテナ素子20Eの広帯域化を図ることができる。さらに、湾曲部21Wの機械的強度を高めることができる。例えば、湾曲部21Wの機械的強度を高めることにより、基板21を筐体50に収容する作業が容易になるという優れた効果が得られる。
【0099】
次に、図15を参照して、第9実施例の第4変形例について説明する。
図15は、第9実施例の第4変形例によるアンテナ装置の断面図である。第9実施例の第3変形例(図14)では、湾曲部21Wの外側の表面に樹脂部材25が密着しており、第1平坦部21Uの第1表面21US及び第2平坦部21Vの第2表面21VSの上には樹脂部材25が配置されていない。これに対して第9実施例の第4変形例では、第1平坦部21Uの第1表面21US及び第2平坦部21Vの第2表面21VSにも樹脂部材25が密着している。
【0100】
湾曲部21Wの上の樹脂部材25と、第1平坦部21U及び第2平坦部21Vの上の樹脂部材25とは、例えば一体的に形成される。なお、図14に示した第9実施例の第3変形例によるアンテナ装置のように、湾曲部21Wに樹脂部材25を密着させ、その後、第1平坦部21U及び第2平坦部21Vを含む基板21の全域に樹脂部材25を密着させてもよい。
【0101】
樹脂部材25が接着剤として機能し、基板21が樹脂部材25により筐体50に接着されている。この構成では、樹脂部材25が、第1アンテナ素子20A、第2アンテナ素子20B、及び第5アンテナ素子20Eから放射された電波の導波路として機能する。第9実施例の第4変形例では、基板21の機械的強度をより高めることができる。さらに、第1アンテナ素子20A、第2アンテナ素子20B、及び第5アンテナ素子20Eの広帯域化を図ることができる。
【0102】
[第10実施例]
次に、図16を参照して第10実施例による通信装置について説明する。第10実施例による通信装置は、第1実施例から第9実施例までのいずれかの実施例またはその変形例によるアンテナ装置を含む。
【0103】
図16は、第10実施例による通信装置のブロック図である。
第10実施例による通信装置は、ベースバンド集積回路(BBIC)80、高周波集積回路(RFIC)60、及びアンテナ装置28を含む。アンテナ装置28として、第1実施例から第9実施例までのいずれかの実施例またはその変形例によるアンテナ装置が用いられる。アンテナ装置28は、複数のアンテナ素子20を含む。複数のアンテナ素子20には、例えば第1実施例(図1A)等の第1アンテナ素子20A、第2アンテナ素子20B、第6実施例(図9A)等の第3アンテナ素子20C、第8実施例(図11A図11B)等の第4アンテナ素子20D、第9実施例(図12)等の第5アンテナ素子20E等が含まれる。
【0104】
ベースバンド集積回路80及び高周波集積回路60は、アンテナ装置28の筐体50(図1A等)と共通の筐体50に収容される。例えば、高周波集積回路60は、図4に示した第1実施例の変形例によるアンテナ装置のL字状基板21Lに実装される。または、図11Aに示した第8実施例によるアンテナ装置の基板21の第1平坦部21Uに実装される。
【0105】
高周波集積回路60は、中間周波増幅器61、アップダウンコンバート用ミキサ62、送受信切替スイッチ63、パワーディバイダ64、複数の移相器65、複数のアッテネータ66、複数の送受信切替スイッチ67、複数のパワーアンプ68、複数のローノイズアンプ69、及び複数の送受信切替スイッチ70を含む。
【0106】
まず、送信機能について説明する。ベースバンド集積回路80から、中間周波増幅器61を介してアップダウンコンバート用ミキサ62に、中間周波信号が入力される。アップダウンコンバート用ミキサ62は、中間周波信号をアップコンバートして高周波信号を生成する。生成された高周波信号は、送受信切替スイッチ63を介してパワーディバイダ64に入力される。パワーディバイダ64で分配された高周波信号の各々が、移相器65、アッテネータ66、送受信切替スイッチ67、パワーアンプ68、送受信切替スイッチ70を経由してアンテナ素子20に入力される。
【0107】
次に、受信機能について説明する。複数のアンテナ素子20の各々で受信された高周波信号が、送受信切替スイッチ70、ローノイズアンプ69、送受信切替スイッチ67、アッテネータ66、移相器65を経由してパワーディバイダ64に入力される。パワーディバイダ64で合成された高周波信号が、送受信切替スイッチ63を経由して、アップダウンコンバート用ミキサ62に入力される。アップダウンコンバート用ミキサ62は、高周波信号をダウンコンバートして中間周波信号を生成する。生成された中間周波信号は、中間周波増幅器61を経由してベースバンド集積回路80に入力される。なお、アップダウンコンバート用ミキサ62が、高周波信号を直接ベースバンド信号にダウンコンバートするダイレクトコンバージョン方式を採用してもよい。
【0108】
次に、第10実施例の優れた効果について説明する。
第10実施例による通信装置に含まれるアンテナ装置28として、第1実施例から第9実施例までのいずれかの実施例またはその変形例よるアンテナ装置が用いられるため、ビームフォーミングの範囲を拡大することができる。さらに、サイドローブ及びグレーティングローブを抑圧することができる。
【0109】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0110】
20 アンテナ素子
20A 第1アンテナ素子
20B 第2アンテナ素子
20C 第3アンテナ素子
20D 第4アンテナ素子
20E 第5アンテナ素子
21 基板
21A 第1基板
21B 第2基板
21C 第3基板
21L L字状基板
21U 基板の第1平坦部
21UE 湾曲部に接続された第1平坦部の側面
21US 第1表面
21V 基板の第2平坦部
21VE 湾曲部に接続された第2平坦部の側面
21VP 突出部
21VS 第2表面
21W 基板の湾曲部
23 交線
25 樹脂部材
28 アンテナ装置
30A 第1導波路
30B 第2導波路
30C 第3導波路
31A、31B、31C 導波路のアンテナ素子側の端面
32A、32B、32C 導波路の筐体側の端面
31AI 第1導波路の第1領域への垂直投影像
50 筐体
51 窓
52 金属壁
53A 第1角部
53B 第2角部
53C 第3角部
55A 筐体の内面の第1領域
55AV 第1領域を含む仮想平面
55B 筐体の内面の第2領域
55C 筐体の内面の第3領域
55D 筐体の内面の傾斜領域
55E 筐体の内面の湾曲領域
60 高周波集積回路(RFIC)
61 中間周波増幅器
62 アップダウンコンバート用ミキサ
63 送受信切替スイッチ
64 パワーディバイダ
65 移相器
66 アッテネータ
67 送受信切替スイッチ
68 パワーアンプ
69 ローノイズアンプ
70 送受信切替スイッチ
80 ベースバンド集積回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16