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特許7571923帯状物体の形状測定方法、帯状物体の形状制御方法、帯状物体の製造方法、帯状物体の品質管理方法、帯状物体の形状測定装置および帯状物体の製造設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】帯状物体の形状測定方法、帯状物体の形状制御方法、帯状物体の製造方法、帯状物体の品質管理方法、帯状物体の形状測定装置および帯状物体の製造設備
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
G01B11/24 K
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024540555
(86)(22)【出願日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2023046150
【審査請求日】2024-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2023037856
(32)【優先日】2023-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 紘明
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 貴大
(72)【発明者】
【氏名】後藤 寛人
(72)【発明者】
【氏名】浮田 昂史
(72)【発明者】
【氏名】西垣 祐作
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168700(WO,A1)
【文献】特開2019-181562(JP,A)
【文献】特開2000-357228(JP,A)
【文献】特開平10-318719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状物体の形状を測定する形状測定方法であって、
前記帯状物体の表面の基準面を平面αとした場合に、
カメラの光軸の前記平面αへの正射影と前記帯状物体の搬送方向pとがなす角φが、90度とならないように、
前記帯状物体の熱輻射光の画像を撮像する撮像ステップと、
得られた画像における前記帯状物体の放射輝度に基づいて、前記帯状物体の表面形状の指標を算出する画像処理ステップと、
を含む帯状物体の形状測定方法。
【請求項2】
前記画像処理ステップは、前記帯状物体の放射輝度のうち、前記帯状物体の搬送方向に平行な線状の成分を抽出する請求項1に記載の帯状物体の形状測定方法。
【請求項3】
前記撮像ステップは、前記平面αと前記カメラの光軸とのなす角θを20度以下にする請求項1に記載の帯状物体の形状測定方法。
【請求項4】
前記画像処理ステップは、得られた前記帯状物体の明暗パターンから、前記帯状物体の表面の幅方向各位置における急峻度、波高さ、波ピッチ、伸び量、伸び率のいずれか一つ以上を、前記指標として算出する請求項1に記載の帯状物体の形状測定方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の帯状物体の形状測定方法によって前記帯状物体の形状を測定し、その測定結果に基づいて前記帯状物体の形状が所望の形状となるように制御する帯状物体の形状制御方法。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の帯状物体の形状測定方法によって前記帯状物体の形状を測定し、その測定結果に基づいて前記帯状物体を製造する帯状物体の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の帯状物体の形状測定方法によって前記帯状物体の形状を測定し、その測定結果に基づいて前記帯状物体の品質を管理する帯状物体の品質管理方法。
【請求項8】
帯状物体の形状を測定する形状測定装置であって、
前記帯状物体の表面の基準面を平面αとした場合に、
カメラの光軸の前記平面αへの正射影と前記帯状物体の搬送方向pとがなす角φが、90度とならないように、
前記帯状物体の熱輻射光の画像を撮像する撮像手段と、
得られた画像における前記帯状物体の放射輝度に基づいて、前記帯状物体の表面形状の指標を算出する画像処理手段と、
を備える帯状物体の形状測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の帯状物体の形状測定装置を備える帯状物体の製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状物体の形状測定方法、帯状物体の形状制御方法、帯状物体の製造方法、帯状物体の品質管理方法、帯状物体の形状測定装置および帯状物体の製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
素材産業において帯状の素材の形状管理は重要であり、製品形状の定量化が求められてきた。例えば、鉄鋼プロセスにおける鋼材形状測定は、操業安定、製品品質保証等の観点から高いニーズが存在する。特に、製品を目的の形状に作り込むための圧延中の形状測定は、圧延条件の初期設定や、圧延中に圧延制御のためのフィードバックを行うことで、製品品質向上や操業安定化に繋がるため重要である。
【0003】
例えば、熱延鋼板の製造ラインでは、加熱炉から抽出された高温状態のスラブと呼ばれる直方体の半製品に対し、サイジングミル、粗圧延、仕上げ圧延という工程を経て、シート状に加工され、巻き取られることでコイルとして製品化される。このとき、圧延の状態によっては、鋼板の幅方向に圧下量が不均一になって部分的に伸びることがあり、形状不良となる。
【0004】
例えば、鋼板の中央部(幅方向中央部)と比較して、エッジ部(幅方向端部)のみ延ばされた場合は、当該エッジ部が波打つような形状となる。反対に、中央部のみ延ばされた場合は、中央部が波打つような形状となる。このような形状不良は、製品として不良となるだけでなく、酸洗や冷間圧延等の次工程における通板性が悪化し、トラブルの原因となるため、形状不良を発生させないことが強く求められている。
【0005】
形状不良を改善するためには、圧延時の幅方向の荷重を適切に設定する必要があるが、圧延ロールの摩耗、鋼板の温度分布、材質特性分布のばらつき等の様々な外乱があり、計算だけで最適な圧延条件を求めることは非常に困難であった。そのため、最適な圧延条件を設定するためには、鋼板の形状の測定と圧延モデルとを突き合わせて最適な初期設定を導出してプリセット制御したり、リアルタイムに圧延条件にフィードバック制御したりすることが不可欠である。このような制御を行うことにより、初めて形状不良を抑制することが可能となる。
【0006】
しかしながら、ロール状の製品となった後に鋼板の形状を測定することは難しく、特にフィードバック制御では圧延製造中に測定することが必要であるため、最終圧延工程である仕上げ圧延出側直後に形状を測定することが好ましい。例えば、鋼板のエッジ部に対して、中央部の伸びが顕著である場合、圧延ロールの幅方向の荷重バランスを調整することにより、エッジ部の伸びを許容しつつ、中央部への伸びの偏りをなくすベンダー制御を行う。なお、ここで述べる形状とは、主に鋼板の圧延時に、当該鋼板の幅方向に局所的に発生する長手方向の板伸びのことを指し、具体的には「中央部の伸び」と、「エッジ部の伸び」とがある。
【0007】
仕上げ圧延出側直後で鋼板の形状を測定する技術としては、棒状光源や磁気センサを用いる方法等、過去に様々な技術が提案されている。その中で特に有力な手法として、例えば特許文献1~3には、レーザーを用いて対象表面に点状または線状の光線を照射し、その反射光を測定することで形状を測定する手法が開示されている。
【0008】
更に、特許文献4には、レーザー照射方式に対して、ラインの長手方向が鋼板の搬送方向に対して直交するような3本のラインレーザーを用いる技術が開示されている。特許文献4で開示された技術では、鋼板の長手方向に対して、等間隔に3本の線となるようにラインレーザーを平行に照射し、その反射画像を取得して各レーザーのプロファイルを比較することで、鋼板の上下振動の影響を除去している。
【0009】
また、特許文献5~7および非特許文献1には、強力なLED光源を用いて複数のラインからなる縞パターンを対象表面に照射することで、レーザーよりも安価に照射するライン数を増加させ、鏡面性や対象の傾きによらず安定して形状を測定する技術等が開示されている。
【0010】
なお、このような製造中の鋼板の形状測定のニーズは、熱延鋼板だけでなく、赤熱した状態(例えば600℃以上)、温間の状態(例えば300℃~600℃)、冷間状態(例えば常温付近)にかかわらず、他の帯状物体の素材にも存在する。なお、ここで述べる「帯状物体」とは、長尺な素材を指す。帯状物体としては、例えば鉄、紙、布、アルミ等の非鉄金属等のように最終的にロール状に巻き取る製品に加えて、厚鋼板等の長方形の板に成形される製品等も含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開昭56-124006号公報
【文献】特開昭55-40924号公報
【文献】特開昭58-11708号公報
【文献】特開昭61-40503号公報
【文献】特開2008-58036号公報
【文献】特開2011-99821号公報
【文献】特開2016-65863号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】伊勢居,他3名,“LEDドットパターン投影法による熱延鋼板平坦度計の開発”、鉄と鋼、一般社団法人日本鉄鋼協会、2019年、105巻1号、p.20-29
【文献】金重,“放射温度計による熱測定”,成形加工,一般社団法人プラスチック成形加工学会,2020年,32巻4号,p.121-124
【文献】井上,“冷間、熱間圧延における金属の非接触温度計測法の研究”,科研費AF-1997014報告書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1~7で開示された技術は、いずれも熱延鋼板に対して光源を用いて光を照射し、その反射光をカメラで捉えることで対象の形状を計測する手法である。しかしながら、例えば輻射熱による高温の影響や、蒸気、粉じん、オイル等が鋼板に付着すること等を考慮すると、搬送中の鋼板に光源やセンサを近づけた状態で長期かつ安定的に計測するためには、高度な技術が必要となり、メンテナンスコストも高額となる。
【0014】
これを防ぐには、光源を対象から離すことが考えられるが、光が拡散して光量が低下してしまうため、光量を確保するために安定して集光する光学系の設計が難しい。その他、磁気センサ等を利用する可能性もあるが、測定対象にセンサ自体を近づける必要があり、同様に設置や性能維持が困難である。
【0015】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、帯状物体のエッジ部以外の部分を対象として、光源やセンサを測定対象に近づけることなく容易に安定運用でき、メンテナンスコストも抑制することができる帯状物体の形状測定方法、帯状物体の形状制御方法、帯状物体の製造方法、帯状物体の品質管理方法、帯状物体の形状測定装置および帯状物体の製造設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)本発明に係る帯状物体の形状測定方法は、帯状物体の形状を測定する形状測定方法であって、
前記帯状物体の表面の基準面を平面αとした場合に、
カメラの光軸の前記平面αへの正射影と前記帯状物体の搬送方向pとがなす角φが、90度とならないように、
前記帯状物体の熱輻射光の画像を撮像する撮像ステップと、
得られた画像における前記帯状物体の放射輝度に基づいて、前記帯状物体の表面形状の指標を算出する画像処理ステップと、
を含むものである。
【0017】
(2)また、本発明に係る帯状物体の形状測定方法は、上記(1)に記載の帯状物体の形状測定方法において、
前記画像処理ステップは、前記帯状物体の放射輝度のうち、前記帯状物体の搬送方向に平行な線状の成分を抽出するものである。
【0018】
(3)また、本発明に係る帯状物体の形状測定方法は、上記(1)または(2)に記載の帯状物体の形状測定方法において、
前記撮像ステップは、前記平面αと前記カメラの光軸とのなす角θを20度以下にするものである。
【0019】
(4)また、本発明に係る帯状物体の形状測定方法は、上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の帯状物体の形状測定方法において、
前記画像処理ステップは、得られた前記帯状物体の明暗パターンから、前記帯状物体の表面の幅方向各位置における急峻度、波高さ、波ピッチ、伸び量、伸び率のいずれか一つ以上を、前記指標として算出するものである。
【0020】
(5)また、本発明に係る帯状物体の形状制御方法は、上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の帯状物体の形状測定方法によって前記帯状物体の形状を測定し、その測定結果に基づいて前記帯状物体の形状が所望の形状となるように制御するものである。
【0021】
(6)また、本発明に係る帯状物体の製造方法は、上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の帯状物体の形状測定方法によって前記帯状物体の形状を測定し、その測定結果に基づいて前記帯状物体を製造するものである。
【0022】
(7)また、本発明に係る帯状物体の品質管理方法は、上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の帯状物体の形状測定方法によって前記帯状物体の形状を測定し、その測定結果に基づいて前記帯状物体の品質を管理するものである。
【0023】
(8)また、本発明に係る帯状物体の形状測定装置は、帯状物体の形状を測定する形状測定装置であって、
前記帯状物体の表面の基準面を平面αとした場合に、
カメラの光軸の前記平面αへの正射影と前記帯状物体の搬送方向pとがなす角φが、90度とならないように、
前記帯状物体の熱輻射光の画像を撮像する撮像手段と、
得られた画像における前記帯状物体の放射輝度に基づいて、前記帯状物体の表面形状の指標を算出する画像処理手段と、
を備えるものである。
【0024】
(9)また、本発明に係る帯状物体の製造設備は、上記(8)に記載の帯状物体の形状測定装置を備えるものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る帯状物体の形状測定方法、帯状物体の形状制御方法、帯状物体の製造方法、帯状物体の品質管理方法、帯状物体の形状測定装置および帯状物体の製造設備によれば、光源やセンサを測定対象に近づけることなく容易に安定運用でき、メンテナンスコストも抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の実施形態に係る帯状物体の形状測定装置の概略的な構成を示す図である。
図2図2は、熱間仕上げ圧延直後の鋼板において、板伸びによる傾き変化が明暗パターンとなって撮像された様子の一例を示す図である。
図3図3は、鋼板の表面の放射率の角度特性を調査する実験の様子の一例を示す図である。
図4図4は、鋼板の表面の放射輝度と受光角との関係の一例を示すグラフである。
図5図5は、鋼板における明暗パターンの発生メカニズムを説明するための図である。
図6図6は、鋼板の板伸びを明暗パターンとして捉えるためのカメラの配置の一例を示す図であり、(a)は当該位置関係を斜めから見た図であり、(b)は当該位置関係を上から見た図であり、(c)は当該位置関係を(b)の方向δから見た図である。
図7図7は、正常時および形状不良時の鋼板の画像の一例を示す図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る帯状物体の形状測定装置の画像処理装置による画像処理ステップの具体的な処理の流れを示すフローチャートである。
図9図9は、本発明の実施形態に係る帯状物体の形状測定方法の画像処理ステップにおける二値化処理を説明するための図である。
図10図10は、本発明の実施形態に係る帯状物体の形状測定方法の画像処理ステップにおける回転処理を説明するための図である。
図11図11は、本発明の実施形態に係る帯状物体の形状測定方法の画像処理ステップにおける輝度プロファイル抽出処理を説明するための図である。
図12図12は、搬送テーブルの法線nをY軸とし、面δ内でY軸と直交する方向をX軸とした場合に、鋼板の表面を面δで切り取ったもの表現した図である。
図13図13は、鋼板の表面の放射輝度と受光角との関係の一例を示すグラフである。
図14図14は、急峻度と明暗変化率との関係の一例を示すグラフである。
図15図15は、カメラによって撮影した鋼板の画像の一例を示す図である。
図16図16は、鋼板の板面と構造物との判別が難しい場合の一例を示す図である。
図17図17は、本発明の実施形態に係る帯状物体の形状測定方法において、鋼板の板面と構造物との判別が難しい場合に実施されるローパスフィルタによる処理の一例を示す図である。
図18図18は、本発明の実施形態に係る帯状物体の形状測定装置を、形状合否判定に適用した場合の適用例である。
図19図19は、本発明の実施形態に係る帯状物体の形状測定装置を、圧延フィードバック制御に適用した場合の適用例である。
図20図20は、本発明の実施形態に係る帯状物体の形状測定装置を、機械学習を用いた圧延制御に適用した場合の適用例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態に係る帯状物体の形状測定方法、帯状物体の形状制御方法、帯状物体の製造方法、帯状物体の品質管理方法、帯状物体の形状測定装置および帯状物体の製造設備について、図面を参照しながら説明する。なお、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0028】
(形状測定装置)
実施形態に係る帯状物体の形状測定装置について、図1図17を参照しながら説明する。形状測定装置は、帯状物体の形状を測定するための装置である。以下では、形状測定装置を熱間仕上げ圧延に適用した場合について説明する。また、以下では、測定対象である帯状物体が鋼板である場合について説明する。また、以下では、形状測定装置が測定する形状が、鋼板のエッジ部以外の部分の伸びであり、具体的には鋼板の中央部の伸びである場合について説明する。
【0029】
実施形態に係る形状測定装置は、図1に示すように、カメラ2と、画像処理装置3と、を備えている。まず、カメラ2の詳細について説明する。
【0030】
カメラ2は、後記するように、「カメラの光軸の前記平面αへの正射影」と「当該帯状物体(鋼板S)の搬送方向p」とがなす角φが、90度とならないように配置される(図6参照)。ここで、平面αは、当該帯状物体の表面の基準面を指す。そして、このように配置したカメラ2を用いて、圧延ロール1によって圧延された、熱間仕上げ圧延出側の鋼板Sの熱輻射光の画像を撮像する。
【0031】
カメラ2として、一般向けに販売されているデジタルカメラ等を用いると、像にブレが生じたり、画像が粗くなったり等の問題が発生し、鋼板Sの形状を鮮明に撮像することできない。そこで、カメラ2によって鋼板Sの形状を精度よく捉えるための技術的なポイント(1)~(4)について、以下で説明する。
【0032】
(1)撮像時の光量の確保
第一に、鮮明な画像を得るための光量を確保する。熱間仕上げ圧延出側では、例えば20m/s以上の速度で鋼板Sが通板されることもあるため、非常に高速である。高速な対象をブレなく鮮明に捉えるためには、露光時間を短くすることが好ましい。例えば20m/sで2mm程度の分解能、画素ブレ量を1画素、すなわち2mm以内で撮像する場合、許容される露光時間はわずか0.1msとなり、露光時間に比例する受光量も非常に小さくなる。
【0033】
また、熱間仕上げ圧延出側における鋼板温度は約900℃である。上記の非特許文献2の図5に示されている通り、約900℃(1200K)の熱輻射光のピーク波長は2.5μmとなり、可視領域(0.4~0.7μm)では感度が低い。そのため、カメラ2としては、InGaAs、PbS、PbSe等の撮像素子を備えるものを用いることが好ましい。
【0034】
一方、InGaAs、PbS、PbSe等の撮像素子を用いたカメラは高額であり、更に解像度に応じて価格がより高額となるため、高分解能で撮像しようとすると導入コストが高くなる。そこで、カメラ2として、安価なSiの撮像素子を備えたものであって、近赤外感度領域0.8~1.0μmを使用可能なものを用いることが好ましい。このようなカメラ2を用いることにより、十分な熱輻射光の光量を安価で得ることが可能となる。
【0035】
なお、より低温の対象に対して本手法を適用する場合は、より長波長側に感度を持つ撮像素子を備えるカメラ2を用いることが好ましい。例えば測定対象が400℃程度である場合、導入コストを考慮しなければ、1.2~1.7μmに感度を持つInGaAsの撮像素子を備えるカメラ2を用いることができる。また、測定対象が200℃程度である場合、3~5μmに感度を持つPbS、PbSe等の撮像素子を備えるカメラ2を用いることができる。これにより、十分な光量を確保することができる。このように、測定対象の搬送速度、分解能、温度、後記する被写界深度等に応じて、適した波長帯に感度を持つ撮像素子を備えるカメラ2を選定することが好ましい。
【0036】
(2)鋼板とカメラとの位置関係
第二に、鋼板Sの形状を鮮明に撮像するために、測定対象の鋼板Sとカメラ2との位置関係を検討する。ここでは、板伸び(中でも帯状物体のエッジ部以外の部分の伸び、特に中央部の伸び)の発生時に板表面に現れる伸び起因のわずかな長手方向の傾き変化に着目し、加熱による熱放射光で傾き変化を撮像することを考える。
【0037】
発明者らは、様々な光学条件の下で赤熱した鋼板Sを繰り返し撮像して知見を得るとともに、実験室における加熱撮像試験による検討を行った。その結果、鋼板Sの表面の基準面とカメラ2の光軸とのなす角(受光角)を、低角にして鋼板Sを撮像することにより、鋼板Sの表面上のわずかな傾きを画像内の輝度の変化として捉えることができることを発見した。例えば図2は、熱間仕上げ圧延直後の赤熱した鋼板Sにおいて、板伸びによる傾き変化が明暗パターンとして撮像された様子を示している。
【0038】
図3は、鋼板Sの表面の放射率の角度特性を調査した実験の様子を示している。実施形態に係る形状測定装置では、測定対象の鋼板Sの加熱による熱放射光を撮像することから、図3中の装置により加熱による工程を模擬することを試みた。そこで、図3に示すように、ヒータ4上に小さく切断した鋼板サンプルSAを設置し、カメラ2で撮像した。また、測定対象の鋼板サンプルSAの表面を視野としたまま、鋼板サンプルSAの表面の基準面とカメラ2の光軸とのなす角(受光角)を小さくできる傾斜機構5を用いた。これにより、鋼板サンプルSAをヒータ4で加熱しつつ、任意の受光角θ(鉛直を90度と定義)で鋼板サンプルSAの加熱による熱放射光を安定的に撮像した。
【0039】
図3に示した装置を用いて、各受光角θにおいて鋼板サンプルSAの加熱による熱放射光の撮像を繰り返し、放射輝度と受光角θとの関係について調査した。得られた放射輝度と受光角θとの関係を図4に示す。図4において、縦軸は放射輝度であり、横軸は受光角θである。また、放射輝度は100が最大となるように正規化した。また、放射輝度と放射率は比例関係にあるため、以降は放射輝度のことを放射率と表現する場合がある。
【0040】
図4に示すように、鋼板サンプルSAの直上(受光角θ=90度)から60度あたりまでは放射率は一定であるが、その後受光角θが小さくなるにつれて、放射率が急激に低下していることがわかる。図4のデータをもとに考察した明暗パターンの発生メカニズムについて、図5を参照しながら説明する。
【0041】
受光角θを低角にして撮像した場合、鋼板Sの長手方向に伸びが発生すると、伸びの形状に応じて表面にわずかな傾きの変化が発生する。図5の(a)に示すように、山部分の手前側は、カメラ2の光軸が起き上がるため受光角θが大きくなる。一方、図5の(b)に示すように、山部分の奥側は、カメラ2の光軸が寝るため、受光角θが小さくなる。
【0042】
図4に示した加熱による熱放射光の放射率角度依存性のデータによると、低角時(例えば0度~60度未満)では、受光角θが大きくなると放射輝度が増大し、受光角θが小さくなると放射輝度が減少する。そのため、カメラ2によって鋼板Sを撮像すると、画像上で明暗パターンが形成されることになる。
【0043】
加熱による熱放射光の放射率角度依存性は、非特許文献3に記載されている通り、対象の複素屈折率により理論的に説明することが可能であるが、非特許文献3に記載のモデルでは、表面粗さや被膜等が考慮されていない点に課題が存在する。なお、この現象は、鋼板Sに限らず、金属、非金属の様々な材質の帯状物体でも同様に発生するため、鋼板S以外の帯状物体についても、わずかな傾き変動を精度よく捉えることが可能となる。
【0044】
また、加熱による熱放射光の放射率角度依存性は、受光波長にはあまり依存しない。そのため、測定対象の鋼板Sの温度に合わせて、カメラ2を選定することが好ましい。カメラ2を選定する際には、選定したカメラ2が備える撮像素子が、当該温度に対して、光量が確保できる波長や外乱の少ない波長を撮像できるかどうかを考慮することが好ましい。また、明暗パターンの強度と傾きの変化量とは相関があり、後記するように、板伸び(中でも帯状物体のエッジ部以外の部分の伸び、特に中央部の伸び)発生の程度をある指標化することも可能である。
【0045】
続いて、上記メカニズムをもとに、明暗パターンを精度よく観察することができる光学条件を検討する。板伸びを明暗パターンとして捉えるためのカメラ2の配置の一例を図6に示す。図6において、(a)は当該位置関係を斜めから見た図であり、(b)は当該位置関係を上から見た図であり、(c)は当該位置関係を(b)の方向δから見た図である。ここで方向δは、カメラ2の光軸を真横から見ることができる方向である。このような方向δを定義することにより、後述する受光角θの大きさを正確に見ることができる。
【0046】
図6の(a)、(b)、(c)において、鋼板Sの搬送テーブルと平行な平面をαとし、鋼板Sの搬送方向pと搬送テーブルの法線nとを含む平面をβとする。更に、カメラ2の光軸と平面αとがなす角をθ(受光角θ)とし、当該カメラ2の光軸の平面αへの正射影と搬送方向pとがなす角をφとする。なお、平面αは、当該帯状物体(鋼板S)がほぼ平らな形状で安定して搬送された状態での、当該帯状物体(鋼板S)の表面を含む。そのため、平面αは、図3の基準面と同一の面であり、かつ当該帯状物体(鋼板S)の表面の基準面である。
【0047】
また、搬送テーブルの法線nの方向は、搬送される鋼板Sがほぼ平らな形状で安定して搬送された状態の、鋼板Sの表面の法線方向と同一である。そのため、平面αは、当該帯状物体(鋼板S)の搬送方向pを含むとともに、当該帯状物体(鋼板S)の表面の法線方向に対し直角である。また平面βは、当該帯状物体(鋼板S)の搬送方向pと当該帯状物体(鋼板S)の表面の法線方向とを含む平面でもある。また、図6において、平面αと光軸との交点を点0とする。また、鋼板の搬送方向に垂直な平面を平面γとする。すなわち、前述の角φが90度に近づく程、平面γと光軸とが平行に近づく。
【0048】
まず、鋼板Sの表面の基準面の平面αとカメラ2の光軸とのなす角である受光角θを設定する。受光角θは、形状測定を行う目的や場所に応じて適宜設定すればよい。例えば前述のように、実験により得られた加熱による熱放射光と受光角θとの関係から、設定してもよい。図4の実験結果を使用する場合は、鋼板Sの表面の基準面の平面αとカメラ2の光軸とのなす角である受光角θを、20度以下とすることが望ましい。
【0049】
そして、板伸びによる鋼板Sの表面の傾きは、当該鋼板Sの長手方向、すなわち搬送方向pに平行な方向で発生する。そのため、鋼板Sの搬送方向に対して垂直な方向、つまり角φが90度となる方向がカメラ2の光軸となるように撮像しても、傾きの変動を明暗パターンとして撮像することは非常に難しい。そこで、角φが90度とならないように、カメラ2の光軸を配置する。
【0050】
更に、角φは、45度以下とすることが望ましい。また、角φは、0度とすることが最も好ましい。一方、0度に近付けることにより、カメラ設置位置が搬送ラインに近づくため、輻射熱による高温等、設置環境が悪化する。従って、悪環境下でも安定稼働できるようなエンジニアリングが必要になるため、角φは、熱輻射等の影響を受けない程度に搬送ラインから距離を取ったうえで、可能な限り小さくしてもよい。
【0051】
なお、板伸び(中でも帯状物体のエッジ部以外の部分の伸び、特に中央部の伸び)に対する明暗パターンが最も強調される条件は、鋼板Sの搬送方向と同一の方向、あるいは逆の方向から撮像することである。しかしながら、この場合はライン直上、あるいはライン近傍にカメラ2を設置する必要があり、ミストや粉じん、高温等の悪環境下における設置となるため、好ましくない。
【0052】
更に、図6に示すように鋼板Sを受光角θに対し低角で覗き込んで撮像することにより、画像内における鋼板Sの両端の距離が小さくなり、より小さい視野で両エッジ部の画像を取得できるようになる。また、対象となる視野が小さくなれば画像サイズも小さくなるため、測定対象の鋼板Sの搬送速度が大きく、高速撮像や画像処理が必要となったときに優位となる。
【0053】
(3)鋼板とカメラとの距離
第三として、測定対象の鋼板Sとカメラ2との距離を大きくとる。その理由は、カメラ2を製造ラインからなるべく離すことにより、良好な環境に設置できるとともに、鋼板Sの板幅方向、すなわち両エッジ部における受光角θや角φ等の光学条件の差を小さくすることができるためである。鋼板Sの板幅方向で光学条件に差がある場合、見え方の違いとして現れる。そのため、目視で判断する場合は形状不良の程度を見誤るおそれがあり、画像処理により形状不良の程度を定量化する場合はより大きい補正が要求される。距離を大きくとるには、撮像の際に望遠レンズを用いることが好ましい。望遠レンズを用いることにより、光学条件の差を小さくすることができる。
【0054】
(4)適正な絞り値の設定
第四として、被写界深度を確保するために、カメラ2の絞り値を適正に定める。例えば鋼板Sの手前側(下側)および奥側(上側)の両エッジ部にかけて、板全面を撮像しようとした場合を仮定する。この場合、鋼板Sの板幅をd(mm)とすると、カメラ2から手前側のエッジ部までの距離と、カメラ2から奥側のエッジ部までの距離との差ΔL(mm)は、下記式(1)により表すことができる。
【0055】
ΔL=dcosθ/sinφ ・・・(1)
【0056】
鋼板Sの両エッジ部にピントが合った画像を取得するためには、少なくとも被写界深度(ピントの合う範囲)が、ΔLd(mm)以上必要となる。絞り値を大きくする程、被写体深度が大きくなるため、絞りをΔLd(mm)以上に設定することが好ましいが、絞り値を大きくすると光量が不足するため、ブレが発生する懸念がある。そこで、測定対象の鋼板Sの搬送速度や必要な分解能に応じて、ブレと被写界深度とを両立できるような絞り値および焦点距離を決定することが好ましい。続いて、画像処理装置3について説明する。
【0057】
画像処理装置3は、例えばワークステーションやパソコン等の汎用コンピュータ等により実現される。この画像処理装置3は、カメラ2の近くに設置してもよく、高速性が不要であれば、クラウド上に設置してもよい。
【0058】
画像処理装置3は、後記するように、カメラ2によって撮像して得られた画像における、鋼板Sの放射輝度に基づいて、当該鋼板Sの表面形状の指標を算出する。また、画像処理装置3は、後記するように、鋼板Sの明暗パターンから、当該鋼板Sの表面の幅方向各位置における急峻度、波高さ、波ピッチ、伸び量、伸び率のいずれか一つ以上を適宜選択して、上記の指標として算出する。以下では、画像処理装置3を用いてカメラ2から得た画像から鋼板Sの形状の指標を算出する処理について説明する。
【0059】
図7の(a)は、正常時の鋼板Sの画像を示しており、図7の(b)は、形状不良発生時の鋼板Sの画像を示している。図7に示すように、板伸びの状況を目視で判断可能である。画像処理装置3は、取得した鋼板Sの画像から、例えば図8に示す手順により、当該鋼板Sの形状の指標を算出する。なお、以下では、説明の便宜上、画像の縦軸および横軸について、鋼板Sの搬送方向に対して平行に近いほうの軸を横軸とする。
【0060】
まず、図9に示すように、二値化処理によって鋼板Sの板領域のみを抽出する(図8のステップS1)。図9の(a)は、二値化処理前の画像であり、図9の(b)は、二値化処理後の画像である。
【0061】
このとき、板面上の水乗りや冷却水の飛沫等により、板面上の輝度が局所的に低下したり、あるいは板上部の空間に飛び散った飛沫が鋼板Sからの熱輻射光を散乱させて明るく光ったりする、等の外乱が生じる場合がある。これらの外乱は、算出したい形状のピッチに対して高周波帯かつ微小であることが多いため、二値化処理ステップで抽出した板領域に対して、膨張・収縮処理やメディアンフィルタ等による連結・孤立点除去(図8のステップS2)を行うことが望ましい。
【0062】
また、連結・孤立点除去の後に、板領域の候補となるブロブ(二値化した際に周囲の画素を連結して認識させた塊)が複数発生する場合がある。この場合は、ブロブを抽出したり(図8のステップS3)、鋼板Sの大きさや向き等に基づいて板領域であるかどうかを判定したりすることにより、板領域を確定してもよい。
【0063】
続いて、上記のように得た鋼板Sの板領域について、当該鋼板Sの搬送方向に対して垂直に発生する明暗パターンを抽出する。なお、明暗パターンの抽出とは、具体的には輝度プロファイルを算出することを指している。その際、明暗パターンを抽出しやすくするために、例えば図10に示すように、鋼板Sの搬送方向と画像の縦軸または横軸とが一致するように、画像を回転させる(図8のステップS4)。図10の(a)は、回転前の画像であり、図10の(b)は、回転後の画像である。
【0064】
このとき、鋼板Sの搬送方向を決定する必要があるが、カメラ2の視野が変わらなければ、予め固定された方向でもよく、あるいは画像から自動で算出してもよい。例えば、板領域の上下の輪郭を直線でフィッティングし、その傾きの平均を算出して得られた方向を鋼板Sの搬送方向としてもよい。また、板領域が長手方向にある程度長い場合は、板領域のブロブに対して楕円近似を行い、得られた長軸の方向を搬送方向としてもよい。また、上記のブロブに対してフェレ径が最大となる方向を算出することによっても、同様の結果を得ることができる。
【0065】
続いて、得られた画像の上下方向を板幅方向として、上側エッジ部および下側エッジ部の位置を抽出する(図8のステップS5)。
【0066】
続いて、鋼板Sの幅方向所定位置の輝度プロファイルを算出する(図8のステップS6)。本ステップでは、例えば図11に示すように、鋼板Sの放射輝度のうち、当該鋼板Sの搬送方向に平行な線状の成分を抽出することにより、輝度プロファイルを算出する。図11の(a)は、輝度プロファイル算出前の画像であり、図11の(b)は、算出した輝度プロファイルである。なお、本実施形態の場合は、当該鋼板Sの搬送方向pは、当該鋼板Sの圧延方向に一致する。
【0067】
本ステップでは、まず鋼板Sの上側エッジ部および下側エッジ部の座標を算出し、両座標の相対位置から、輝度プロファイルを算出する幅方向の座標を算出する。例えば、鋼板Sの上側エッジ部の座標をy1とし、下側エッジ部の座標y2とすると、幅方向中央(板中央)の座標は「(y1+y2)/2」により算出することができる。これにより、鋼板Sの放射輝度のうち、当該鋼板Sの幅方向中央における、当該鋼板Sの搬送方向に平行な線状の成分を抽出することができる。
【0068】
また、鋼板Sの上側エッジ部からα%の位置の輝度プロファイルを算出したい場合、該当箇所の座標は「(1-α)y1+αy2)」により算出することができる。これにより、鋼板Sの放射輝度のうち、当該鋼板Sの幅方向所定位置における、当該鋼板Sの搬送方向に平行な線状の成分を抽出することができる。
【0069】
なお、鋼板Sの幅方向所定位置の輝度プロファイルを算出する際に、水滴等により局所的なノイズが加わる可能性がある。そのため、鋼板Sの幅方向所定位置の1ラインの輝度プロファイルだけではなく、その上下の数ラインの輝度プロファイルも抽出し、画像縦方向に平均化することでノイズの影響を低減させてもよい。
【0070】
続いて、得られた輝度プロファイルから鋼板Sの形状の指標を算出する(図8のステップS7)。前記した図6に示すように、鋼板Sに対して低角、かつ鋼板Sの搬送方向に対して斜めとなる方向から鋼板Sの表面を撮像した場合、形状に起因する傾き変化に応じて明暗パターンが発生し、傾き変化が大きくなる程、明暗パターンの強度が強くなる。従って、形状に起因する明暗パターンの強度を指標化することにより、鋼板Sの幅方向所定位置の板伸びの程度を指標化することが可能となる。
【0071】
また、鋼板Sの形状で発生する波の波ピッチは、圧延ロール1の直径に依存するため、ある程度の範囲内となる。そこで、周波数解析を行い、板伸びに起因する周波数成分のみ抽出することで、高周期または定周期のノイズを低減することが可能となる。周波数解析は、移動平均フィルタ等のローパスフィルタを用いてもよいし、フーリエ変換、フーリエ逆変換等を用いてもよい。また、ハイパスフィルタとしては、ローパスフィルタと同様の周波数フィルタを用いてもよく、あるいは直線近似後に差分を取る等、多項式近似後に0次、1次成分を差分してもよい。このようにして、板伸びの成分のみを抽出した輝度プロファイルから、鋼板Sの形状の指標を算出する。
【0072】
鋼板Sの形状の指標の算出方法は、明暗パターンの強度を定量できればよく、様々な手法が挙げられるが、例えば以下の(i)~(iii)のような手法を用いることができる。
(i)最大輝度と最小輝度の差や比を抽出して指標とする。最大輝度、最小輝度の算出方法は必ずしも最大値、最小値である必要はなく、該当範囲を大きい順に並び変えて上位10%を抽出するといったパーセンタイル等でもよい。
(ii)輝度プロファイルの平均値が0となるように補正し、その分散や標準偏差を指標とする。
(iii)明暗パターンの強度(最大値、最小値、標準偏差)と形状の指標(急峻度や伸び量)との関係を実験的または理論的に紐づけてテーブルや換算式を作成し、実際の測定時に適用することで、鋼板Sの形状の指標を算出する。
【0073】
更に、上記(i)の形状の指標において、放射率の角度特性と、板伸び(中でも帯状物体のエッジ部以外の部分の伸び、特に中央部の伸び)に起因する鋼板Sの表面(以下、「鋼板表面」という)の傾き変化との関係を考察することにより、物理的な理論に基づいて、明暗パターンから急峻度を算出することも可能である。
【0074】
まず、急峻度と、鋼板表面におけるカメラ2の光軸方向(以下、「カメラ光軸方向」という)の傾き変化との関係を定式化する。前提として、板伸びはsin波となり、その振幅をh/2とし、周期をLとする。また、このときの急峻度λは、h/Lとなる。
【0075】
ここで、カメラ光軸方向への板面の傾き変動を考察するために、搬送テーブルの法線nと、光軸とがなす面δを仮定する。そして、搬送テーブルの法線nをY軸とし、面δ内でY軸と直交する方向(面δと平行な方向)をX軸とすると、鋼板表面は、面δで図12のように切り取られ、下記式(2)として表現される。なお、図12における原点は、鋼板幅方向の中点とした。
【0076】
このとき、カメラ2に対して鋼板S上の手前側エッジをSとし、奥側エッジをSとした場合、面δで切り取られた鋼板Sの表面は、図6の(b)に示すように、線分Sとなる。この線分Sは、周期がL/cosφのsin波となり、その位相をψとおく。なお、手前側エッジSは、より詳細には、面δと鋼板表面とがなす線分の、カメラ2側のエッジ表す点である。また、奥側エッジSは、面δと鋼板表面とがなす線分の、カメラ2と反対側のエッジを表す点である。
【0077】
【数1】
【0078】
但し、上記式(2)において、Yは搬送テーブルの法線n、Xは面δ内でY軸と直交する方向、h/2は振幅、L周期、ψは任意の位相、である。
【0079】
次に、カメラ光軸方向への傾きと明暗の関係について考察する。図4に示すように、低角撮像時は、受光角が大きくなる程、放射輝度が大きくなる。線分Sの中で、カメラ光軸方向に対して受光角θが最も大きいとき、すなわち上記式(2)の傾きが最大のときに、画像内で最も明るくなる。このときの傾きをωとする。このωは、線分Sの最大傾きである。同様に、線分Sの中で、カメラ光軸方向に対して受光角θが最も小さいとき、すなわち上記式(2)の傾きが最小のときに、画像内で最も暗くなる。このときの傾きをωとする。このωは、線分Sの最小傾きである。
【0080】
これらの最大傾きω、最小傾きωを求めるために、上記式(2)をXで微分すると、下記式(3)を得ることができる。
【0081】
【数2】
【0082】
得られた上記式(3)より、最大傾きωを下記式(4)のように求めることができ、最小傾きωを下記式(5)のように求めることができる。また、下記式(4)、(5)に示すように、最大傾きωおよび最小傾きωの絶対値は同一の値となる。
【0083】
【数3】
【数4】
【0084】
このときの最大傾きωの接線とX軸とのなす角、および最小傾きωの接線とX軸とのなす角を、それぞれΔθ(度)とする(図12参照)。そして、h/Lを急峻度λと置き換え、かつh<<Lとして近似を用いると、Δθと急峻度λとの関係は、下記式(6)のように表すことができる。なお、下記式(6)のΔθは、図12に示すように、基準面(平面α)と最大傾きωの接線とのなす角であり、基準面(平面α)と最小傾きωの接線とのなす角である。
【0085】
【数5】
【0086】
次に、図4に示す放射率の角度特性から、最大受光角θ+Δθのときと、最小受光角θ-Δθのときの明るさの変動量を算出する。その際、対象の温度変化等に起因するベースの明るさ変動の影響をキャンセルするために、明部および暗部の輝度比を算出し、明暗変化率rとして、当該明暗変化率rと急峻度λの関係を整理することができれば、画像から急峻度λを算出することが可能となる。なお、明暗変化率rは、画像処理を用いて、画像から明部および暗部の輝度を自動的に算出して求めてもよい。
【0087】
まず、図4のグラフのうち、受光角θの増加により放射輝度I(θ)も増加する範囲である受光角θ:20度以下の範囲について、数式をフィッティングしてモデル化する。フィッティングする数式は何でもよいが、ここでは下記式(7)のように線形近似した。下記式(7)のI(θ)は、放射率の角度特性のうち、0<θ<20の領域を線形近似した式となる。
【0088】
【数6】
【0089】
次に、明暗変化率rを定義する。鋼板表面上で放射輝度が最も大きくなる最大受光角θ+Δθのときの放射輝度と、放射輝度が最も小さくなる最小受光角θ-Δθのときの放射輝度との比は、下記式(8)のように表すことができる。但し、下記式(8)のθは、Δθより大きい場合に限定される。
【0090】
【数7】
【0091】
最後に、上記式(7)、(8)より、急峻度λを明暗変化率rの式で表すと、下記式(9)を得ることができる。
【0092】
【数8】
【0093】
上記式(9)において、基準面(平面α)に対する受光角θ、角φは、鋼板Sに対するカメラ2の設置位置で予め決定する値であり、パラメータa,bは、放射輝度の角度依存性から決定する。そのため、画像処理により明部と暗部の輝度値を算出し、その比を明暗変化率rとして上記式(9)に代入することにより、急峻度λを物理的に推定することが可能となる。
【0094】
実際に鋼板Sの画像上に発生した明暗パターンをもとに急峻度λを推定した例を示す。鋼板Sに対し、基準面(平面α)に対する受光角θが12.5度、角φが45度となるようにカメラ2を設置した。そして、図13に示す放射率の角度特性から、上記式(7)をフィッティングすることにより、a=3.5、b=20と算出した。図13中の直線I(θ)が、フィッティングの結果得られた直線である。得られたパラメータa,bを、上記式(9)に代入して得られたグラフを図14に示す。このグラフに基づいて明暗変化率r(図14中の右の黒丸)を入力することにより、急峻度λ(図14中の左の黒丸)を算出することができる。
【0095】
次に、上記カメラ2により得られた画像を図15に示す。明暗パターンが発生しており、画像処理により明部輝度値を140、暗部輝度値を115と算出した。また、これらの比を取ることにより明暗変化率rを1.22と算出し、上記式(9)に代入することにより、急峻度λを0.014と推定することに成功した。図14のグラフにおいても、明暗変化率rが1.22に対する応する縦軸(急峻度λ)の点は0.014であり、図14のグラフからも算出することが可能となる。
【0096】
なお、厳密には上側エッジ部と下側エッジ部とで、カメラ2からの距離が大きく異なるため、画像上の板領域の上部と下部とでは、実物の倍率や搬送方向が異なり、測定対象の鋼板Sとカメラ2との位置が近い程これらは顕著となる。そこで、より厳密には、予め算出したカメラパラメータと測定対象の位置関係とから、線形変換等を用いて画像を台形補正することが望ましい。また、測定対象の鋼板Sとカメラ2との距離を十分にとることにより、視野内における撮像条件の違いを小さくすることができる。
【0097】
また、上記のステップS4では、明暗パターンを抽出しやすいように画像を回転させていたが、回転処理を用いなくても、鋼板Sの搬送方向に対して斜めに輝度プロファイルを抽出してもよい。
【0098】
なお、上記のステップS1の二値化処理にあたり、測定対象の温度によって熱輻射光の明るさが異なる。そのため、二値化処理を固定値で実施すると、鋼板Sが明るいときには背景の一部を板領域として検出してしまう、反対に、鋼板Sが暗いときには背景を検出できない、といった課題が存在する。
【0099】
このような課題に対しては、輝度補正を実施することが望ましい。輝度補正の方法としては、例えば画像全体の輝度の最大値、平均値、中央値、パーセンタイル等の代表値が目標値となるように、画像全体の輝度に固定値を乗算する方法が挙げられる。また、乗算の前に暗電流補正をしてもよい。
【0100】
また、例えば図16に示すように、鋼板Sから発せられた熱輻射光が搬送ロールやテーブルなどの構造物に照射され、構造物が画像内で明るく撮像されることで、板面との区別が難しい場合が存在する。この場合、画像上において、板面は熱輻射光を直接受光するため明るいが、構造物は板面から発せられた熱輻射光の反射であるため、板面よりも暗い場合が多い。
【0101】
そこで、上記の輝度補正を実施して構造物と板を切り分けることができるような二値化閾値を固定値で決定してもよいが、画像全体のヒストグラムの形状から、谷となる部分を自動で検出することで、より安定して検出することが可能となる。谷となる部分を検出する際は、例えば、輝度ヒストグラムそのものに、ローパスフィルタをかけることにより、微分処理や探索処理等で安定して極小値を算出することが可能となる。図17の(a)は、輝度ヒストグラムの例であり、横軸に輝度、縦軸に画素数Nを取ったグラフである。図17の(b)は、当該輝度ヒストグラムの輝度方向にローパスフィルタをかけた例である。なお、ヒストグラムで谷となる部分は、板面部および構造物の境界と、構造物および背景の境界との二か所があるため、二つの谷の大きい方を選定することが好ましい。図17の(b)内において点線で区切った箇所が、二値化閾値に相当する。
【0102】
また、本実施形態では、カメラ2の画像を画像処理装置3で処理して鋼板Sの形状の指標を算出する場合の例を説明したが、単純に得られたカメラ画像をそのまま作業者に提示して圧延制御にフィードバックしてもよい。
【0103】
また、機械学習による判別機を用いて、画像から鋼板Sの形状の指標を推定してもよい。具体的には、まず得られた鋼板Sの画像に対して、目視または何らかの他の手法で測定した形状の指標を正解として紐づけて学習データを作成する。そして、作成した学習データと機械学習手法を用いて、画像を入力として形状の指標を出力とする判別機を生成し、この判別機を用いて、対象となる鋼板Sの形状の指標を算出する。また、機械学習および判別機への入力データは、画像以外にも、画像から算出した特徴量でもよい。また、機械学習の手法に制限はないが、リアルタイム性を要しないのであれば、畳み込みニューラルネットワーク等を用いてもよい。
【0104】
(形状合否判定への適用例)
実施形態に係る帯状物体の形状測定装置を形状合否判定に適用した例について、図18を参照しながら説明する。図18の合否判定システムは、カメラ2と、画像処理装置3と、合否判定装置6と、を備えている。
【0105】
まず、画像処理装置3は、カメラ2で撮像された画像から鋼板Sの形状の指標(形状データ)を算出し、合否判定装置6に送信する。合否判定装置6では、上位システムから取得した鋼板情報(例えば板厚、板幅、鋼種、温度等)、鋼板Sの形状の指標をもとに、形状の合否を判定する。合否判定結果は、上位システムに送信される。上位システムでは、合否判定結果をもとに、矯正必要性の有無、形状不良部切り落とし、次工程での圧延可否等の判断を実施する。このように、鋼板Sの形状の指標を次工程のアクションに生かすことにより、トラブル抑止や製品品質向上に寄与することができる。
【0106】
(圧延フィードバック制御への適用例)
実施形態に係る帯状物体の形状測定装置を圧延フィードバック制御に適用した例について、図19を参照しながら説明する。図19の圧延制御システムは、カメラ2と、画像処理装置3と、圧延制御装置7と、を備えている。
【0107】
まず、画像処理装置3は、カメラ2で撮像された画像から鋼板Sの形状の指標を算出し、圧延制御装置7に送信する。圧延制御装置7では、上位システムから取得した鋼板情報(例えば板厚、板幅、鋼種、温度等)、通板位置等の他計測データ、鋼板Sの形状の指標をもとに、形状の指標を用いて制御パラメータを算出する。また、圧延制御装置7は、圧延ロール1に制御信号を送信することにより、レベリング等のフィードバック制御を実施する。このようなフィードバック制御を行うことにより、製品の形状を安定化させ、形状不良そのものを削減することができる。
【0108】
(機械学習を用いた圧延制御への適用例)
実施形態に係る帯状物体の形状測定装置を、機械学習を用いた圧延制御に適用した例について、図20を参照しながら説明する。図20の圧延制御システムは、カメラ2と、画像処理装置3と、圧延制御装置7と、データサーバ8と、機械学習装置9と、制御パラメータ推定装置10と、を備えている。
【0109】
まず、画像処理装置3は、カメラ2で撮像された画像から鋼板Sの形状の指標を算出し、データサーバ8に送信する。データサーバ8には、上位システムから取得した鋼板情報(例えば板厚、板幅、鋼種、温度等)や、圧延時の制御パラメータと紐付けられた状態で形状の指標が蓄積される。
【0110】
これらの蓄積されたデータは、機械学習装置9に送信される。機械学習装置9では、形状不良を抑えて圧延する制御パラメータを推定するモデルを、機械学習によって構築する。推定モデルは、制御パラメータ推定装置10に送信され、上位システムから取得した鋼板情報をもとに、制御パラメータを推定する。制御パラメータは、圧延制御装置7に送信される。圧延制御装置7は、圧延ロール1に制御信号を送信することにより、レベリング等のプリセット制御を実施する。このようなプリセット制御を行うことにより、製品の形状を安定化させ、形状不良そのものを削減することができる。
【0111】
なお、本適用例では、プリセット制御における制御パラメータについて述べたが、フィードバック制御の制御パラメータを算出する場合も同様に機械学習を適用してもよい。また、プリセット制御とフィードバック制御とを組み合わせることにより、製品の形状品質をより向上させることも可能である。
【0112】
また、上記適用例の他にも、実施形態に係る帯状物体の形状測定装置を、帯状物体の製造設備の一部として設けることもできる。
【0113】
また、実施形態に係る帯状物体の形状測定方法を、帯状物体の形状制御方法に適用することもできる。この場合、上記の帯状物体の形状測定方法によって帯状物体の形状を測定し、その測定結果に基づいて、当該帯状物体の形状が所望の形状となるように制御する。
【0114】
また、実施形態に係る帯状物体の形状測定方法を、帯状物体の製造方法に適用することもできる。この場合、上記の帯状物体の形状測定方法によって帯状物体の形状を測定し、その測定結果に基づいて、当該帯状物体を製造する。
【0115】
また、実施形態に係る帯状物体の形状測定方法を、帯状物体の品質管理方法に適用することもできる。この場合、上記の帯状物体の形状測定方法によって帯状物体の形状を測定し、その測定結果に基づいて、当該帯状物体の品質を管理する。
【0116】
以上説明した実施形態に係る帯状物体の形状測定方法、帯状物体の形状制御方法、帯状物体の製造方法、帯状物体の品質管理方法、帯状物体の形状測定装置および帯状物体の製造設備では、以下のような効果を奏する。
【0117】
まず、測定対象の鋼板Sの熱輻射光をパッシブに撮像することにより、通板中の鋼板Sの周辺に光源やセンサを設置することなく、離れた良好な設置環境から撮像を行うことができ、鋼板Sの形状を鮮明に捉えることができる。
【0118】
また、カメラ2の撮像素子として、対象の温度に適した撮像素子を選定することにより、熱輻射光を効率よく受光することができる。例えば900℃程度の測定対象に対しては、Siの撮像素子の近赤外成分を用いることにより、感度を高めることができ、高速に搬送される鋼板Sに対しても、露光時間を短くすることにより、ブレのない鮮明な画像を取得することができる。
【0119】
また、カメラ2の光軸の基準面(平面α)への正射影と鋼板Sの搬送方向pとがなす角φが90度とならないように撮像することにより、鋼板Sの表面に発生する幅方向各位置の板伸びを鮮明に捉えることができる。ここで、鋼板Sの表面の基準面(平面α)に対して、受光角θが20度以下とすれば、より高い効果が得られる。
【0120】
また、本発明では、熱間圧延工程の仕上げ圧延出側の鋼板Sを対象に説明を行ったが、厚鋼板、スラブといったその他の高温の板状鋼材に対しても適用可能なことはいうまでもない。また、本発明は、測定対象の熱輻射光を得られるのであれば、鉄鋼プロセスの帯状物体だけではなく、材料の異なる様々な帯状の物体に適用できることはいうまでもない。また、本発明は、帯状物体のエッジ部以外の部分の伸びを形状測定の対象とした場合に、より大きな効果が得られて、好ましい。特に、帯状物体の中央部の伸びを形状測定の対象とした場合には、更に大きな効果が得られて、より好ましい。
【0121】
以上、本発明に係る帯状物体の形状測定方法、帯状物体の形状制御方法、帯状物体の製造方法、帯状物体の品質管理方法、帯状物体の形状測定装置および帯状物体の製造設備について、発明を実施するための形態および実施例により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0122】
1 圧延ロール
2 カメラ
3 画像処理装置
4 ヒータ
5 傾斜機構
6 合否判定装置
7 圧延制御装置
8 データサーバ
9 機械学習装置
10 制御パラメータ推定装置
S 鋼板
SA 鋼板サンプル
【要約】
帯状物体の形状測定方法は、帯状物体の形状を測定する形状測定方法であって、帯状物体の表面の基準面を平面αとした場合に、カメラの光軸の平面αへの正射影と帯状物体の搬送方向pとがなす角φが、90度とならないように、帯状物体の熱輻射光の画像を撮像する撮像ステップと、得られた画像における帯状物体の放射輝度に基づいて、帯状物体の表面形状の指標を算出する画像処理ステップと、を含む。
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