(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】梳き鋏
(51)【国際特許分類】
B26B 13/08 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
B26B13/08
(21)【出願番号】P 2024122238
(22)【出願日】2024-07-29
【審査請求日】2024-07-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506162736
【氏名又は名称】神山 伸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【氏名又は名称】山田 和明
(74)【代理人】
【識別番号】100091764
【氏名又は名称】窪谷 剛至
(72)【発明者】
【氏名】神山 伸彦
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-112147(JP,A)
【文献】特開2006-191940(JP,A)
【文献】特開2019-155069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B13/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪を取り込むための刃先溝が設けられた第1の鋏半部と棒刃が設けられた第2の鋏半部とをピボットにより連結した梳き鋏において、
前記第1の鋏半部には、先部側に位置する櫛部が設けられ、前記櫛部の前列は、前記刃先溝が設けられた切断領域を有し、前記櫛部の後列は、前記刃先溝が設けられない非切断領域を有し、
前記第2の鋏半部には、前記切断領域及び前記非切断領域に対応して切刃部が設けられ、
前記ピボットと前記非切断領域との間において、前記第1の鋏半部と前記第2の鋏半部とが接触しない毛髪逃げ空間が設けられ、
前記毛髪逃げ空間において、前記第1の鋏半部は、前記第2の鋏半部に到達しない短歯が形成された短歯領域を有し、
前記非切断領域の後端に位置する第1の端歯と前記短歯領域の前端に位置する第2の端歯の間は、前記第1の端歯から前記第2の端歯に向かって順次短くなる中間歯が形成された中間歯領域を有し、
前記非切断領域の後端に位置する第1の端歯と、前記中間歯領域の前端に位置する端歯との間には、歯溝の底部が歯先方向に位置する底上げ部が形成されることを特徴とする梳き鋏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理容又は美容業界において、頭髪のカットに利用される梳き鋏に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特許第5922213号公報がある。
この公報に記載された梳き鋏は、毛髪逃げ空間を設けることで、鋏の軽量化を図ることができ、これによって、毛髪の微細な施術を可能にすることができる。
さらには、絡んだ毛髪をこの毛髪逃げ空間内に逃がすことができるので、毛髪の絡みに影響されるような施術を回避させることができ、これによって、毛髪の微調整の施術を容易にしていている。
絡み合った毛髪の根元は、切断領域に形成された刃先溝内に入り込んで切断される。また、櫛部の非切断領域は、櫛としての機能を有しているので、切断される毛髪の上方で絡みを取り除くことができ、切断領域の刃先溝内に毛髪を確実に入り込ませるように機能している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の梳き鋏では、櫛部の非切断領域は、櫛としての機能を有しているので、切断される毛髪の上方で絡みを取り除くことができ、切断領域の刃先溝内に毛髪を確実に入り込ませるように機能しているが、施術の際、櫛部の非切断領域から絡んだ毛髪を毛髪逃げ空間内に逃がす際、櫛部の非切断領域の後端の櫛部と毛髪逃げ空間内の前端の櫛部との間の櫛部間の溝が深いので、櫛部の非切断領域の後端の櫛部に毛髪が引っ掛かり、絡んだ毛髪を毛髪逃げ空間内に円滑に逃がすことができなかった。
【0005】
本発明は、絡んだ毛髪を毛髪逃げ空間内に円滑に逃がすことができ、毛髪の微調整の施術を容易にした梳き鋏を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、毛髪を取り込むための刃先溝が設けられた第1の鋏半部と棒刃が設けられた第2の鋏半部とをピボットにより連結した梳き鋏において、
前記第1の鋏半部には、先部側に位置する櫛部が設けられ、前記櫛部の前列は、前記刃先溝が設けられた切断領域を有し、前記櫛部の後列は、前記刃先溝が設けられない非切断領域を有し、
前記第2の鋏半部には、前記切断領域及び前記非切断領域に対応して切刃部が設けられ、
前記ピボットと前記非切断領域との間において、前記第1の鋏半部と前記第2の鋏半部とが接触しない毛髪逃げ空間が設けられ、
前記毛髪逃げ空間において、前記第1の鋏半部は、前記第2の鋏半部に到達しない短歯が形成された短歯領域を有し、
前記非切断領域の後端に位置する第1の端歯と前記短歯領域の前端に位置する第2の端歯の間は、前記第1の端歯から前記第2の端歯に向かって順次短くなる中間歯が形成された中間歯領域を有し、
前記非切断領域の後端に位置する第1の端歯と、前記中間歯領域の前端に位置する端歯との間には、歯溝の底部が歯先方向に位置する底上げ部が形成されることを特徴とする。
【0007】
この梳き鋏においては、毛髪逃げ空間を設けることで、鋏の軽量化を図ることができ、これによって、毛髪の微細な施術を可能にすることができ、さらには、非切断領域の後端に位置する第1の端歯と、中間歯領域の前端に位置する端歯との間には、歯溝の底部が歯先方向に位置する底上げ部が形成されているので、絡んだ毛髪が非切断領域の後端に位置する第1の端歯に絡まることなく、この毛髪逃げ空間内に円滑に逃がすことができるので、毛髪の絡みに影響されるような施術を回避させることができ、これによって、毛髪の微調整の施術を容易にしている。
絡み合った毛髪の根元は、切断領域に形成された刃先溝内に入り込んで切断される。また、櫛部の非切断領域は、櫛としての機能を有しているので、切断される毛髪の上方で絡みを取り除くことができ、切断領域の刃先溝内に毛髪を確実に入り込ませるように機能している。
【0008】
この梳き鋏では、最初に、第1の鋏半部2の先部側に位置する櫛部を頭皮に接し、この櫛部で毛髪の根元の毛髪交差を浮かし、非切断領域S2、中間歯領域S3、短歯領域S4と毛髪逃げ空間Rへと毛髪の根元から毛先へと第1の鋏半部2を移動させ、
次に、非切断領域S2、中間歯領域S3、短歯領域S4へと毛髪を逃がして、この櫛刃で毛髪交差を解き、その後、第1の鋏半部2の先部側に位置する切断領域S1である櫛部と第2の鋏半部の切刃部により、毛髪交差の原因の毛髪を1本単位で根元かから切断することができるので、交差した毛髪の切断がスムーズにできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、円滑な交差毛髪の微調整の施術を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る梳き鋏の一実施形態を示す正面図である。
【
図2】梳き鋏が開いた状態を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る梳き鋏の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、梳き鋏の先端側を「前」、梳き鋏の指挿入環側を「後」として説明する。
【0012】
マイクロスキャナで頭皮を観察すると、個人差はあるが、毛量が多い人の場合、4,5本が一つの毛穴から出ており、このことが毛髪の密度に関係している。また、生え方はまちまちであるが、毛穴からクロスするように髪が生えており、髪の毛は不規則なクロスや回転を生じながら束のように伸びているので、生え出した毛髪は自然なツイストやヨジレを生じている。
【0013】
毛髪の生え出す角度と毛流(頭皮からの毛髪の流れ)によって、毛髪の交差ができてしまい、この絡みが、毛髪の生えだしから毛先まで複数の毛束が束間を形成してしまう。自然界に例えると、手入れのなされていない竹林のようなものである。これらの交差が毛流との関連で、互いに絡み合い、束を作り、貼り付いたような状態の原因を作り出してしまうと考えられる。これらが前髪の割れ、施毛の割れの現象を作り出してしまう。この交差を櫛で解くのは難しく、特に、毛髪の根元から解くのは限界があり、非常に難しい。
【0014】
そこで、毛髪交差を梳かして解くのではなく、毛髪と毛髪の交差や重なりを広げることが有効であると見出した。そして、毛髪の交差を低減させる施術を行うことで、毛髪による乱反射が少なくなり、艶髪のような輝きを得ることができ、手触りもサラサラ感をも得ることができる。
【0015】
そこで、以下のような梳き鋏1が発案された。
【0016】
図1に示されるように、梳き鋏1は、櫛部2aが設けられた第1の鋏半部2と、棒刃3aが設けられた第2の鋏半部3とがピボット4により連結されている。第1の鋏半部2の基端には指挿入環2bが設けられ、第2の鋏半部3の端部にも指挿入環3bが設けられている。
【0017】
図2及び
図3に示されるように、第1の鋏半部2には、先部側に位置する櫛部2aが設けられ、櫛部2aの前列は、刃先溝10が設けられた第1の櫛歯11が複数本(例えば等間隔に7本)一列に並べられた切断領域S1を有している。
【0018】
櫛部2aの後列は、刃先溝10が設けられない第2の櫛歯12が複数本(例えば等間隔に4本)一列に並べられた非切断領域S2を有している。そして、第1の櫛歯11は、前側から徐々に長くなっており、第2の櫛歯12は、第1の櫛歯11から連続するように後側に向かって徐々に長くなっている。
【0019】
第2の鋏半部3の棒刃3aには、切断領域S1及び非切断領域S2に対応して延在する切刃部13と、切刃部13から後方に延在する止め刃部14と、を有する。
【0020】
そして、ピボット4と非切断領域S2との間において、第1の鋏半部2と第2の鋏半部3とが接触しない毛髪逃げ空間Rが設けられている。この毛髪逃げ空間Rは、非切断領域S2の後方で、梳き鋏1の長手方向に延在し、長手方向において、切断領域S1と非切断領域S2とを合算した長さの2倍以上の長さを有している。
【0021】
図3に示されるように、この梳き鋏1においては、毛髪逃げ空間Rを設けることで、鋏1の軽量化を図ることができ、これによって、毛髪Aの微細な施術を可能にすることができ、さらには、絡んだ毛髪Aをこの毛髪逃げ空間R内に逃がすことができるので、頭部Hの毛髪Aの絡みに影響されるような施術を回避させることができ、これによって、毛髪Aの微調整の施術を容易にしていている。絡み合った毛髪Aの根元は、切断領域S1に形成された刃先溝10(
図5(b)参照)内に入り込んで切断される。また、櫛部2aの非切断領域S2は、櫛としての機能を有しているので、頭部Hにおいて、切断される毛髪Aの上方で絡みを取り除くことができ、切断領域S1の刃先溝10内に毛髪Aを確実に入り込ませるように機能している。
【0022】
また、第1の櫛歯11の刃先溝10は、一本の毛髪Aが入る湾曲状の凹部として形成されている。第2の櫛歯12は、先細形状をなして、刃先溝10を有していない。このような構成を採用すると、微細な切断を可能にし、これによって、毛髪Aの更なる微調整が容易になる。
【0023】
図2及び
図3に示されるように、毛髪逃げ空間Rにおいて、第1の鋏半部2は、第2の鋏半部3に到達しない短歯16が形成された短歯領域S4を有する。複数本(例えば等間隔に7本)の短歯16は、刃先溝10を有しておらず、1~3mm程度の短い長さになっている。このような構成を採用すると、毛髪逃げ空間R内で絡み合った毛髪Aに対しても、短歯16によって櫛機能を発揮させることがきる。
【0024】
非切断領域S2の後端に位置する第1の端歯12aと短歯領域S4の前端に位置する第2の端歯16aの間は、第1の端歯12aから第2の端歯16aに向かって順次短くなる中間歯17が形成された中間歯領域S3を有する。この場合、中間歯17は、複数本(例えば2本)である。このような構成を採用すると、非切断領域S2と短歯領域S4との間でも良好な櫛機能を発揮させることができる。
【0025】
更に、非切断領域S2の後端に位置する第1の端歯12aと、先端の中間歯17aとの間には、歯溝の底部が歯先方向に位置する底上げ部20が形成され、毛髪が端歯12aに絡まることなく、中間歯領域S3、短歯領域S4へと円滑に逃がすことができる。
この底上げ部20は、第1の鋏半部2から端歯12aの歯方向に形成され、端歯12aと、先端の中間歯17aとの間の歯溝の深さが、第2の櫛歯12間の歯溝より浅く形成されて、毛髪が端歯12aに絡まることなく、毛髪逃げ空間Rへと円滑に逃がすことができる。
【0026】
底上げ部20は、非切断領域S2の後端に位置する第1の端歯12aと、先端の中間歯17aとの間に設けられているが、更に、先端の中間歯17aと後端の中間場17との間に設けても良く、この様に形成すると、徐々に、短歯領域S4の歯溝の深さに近くなるので、毛髪が端歯12aに絡まることなく、中間歯領域S3から、短歯領域S4へと毛髪を毛髪逃げ空間Rへと更に円滑に逃がすことができる。
短歯領域S4の歯溝の深さは、徐々に、短歯領域S4の歯溝の深さに近くなるので、毛髪を毛髪逃げ空間Rへと円滑に逃がすことができる。
【0027】
切刃部13の後部には、一段下げられた段差部18が設けられている。このような構成を採用すると、施術中において、毛髪Aを毛髪逃げ空間R内に導き易くすることができる。
【0028】
この梳き鋏1で、毛髪Aを切断する方法について説明する。
毛髪は、1つの毛穴から違う方向に髪が生えたり、隣り合う毛穴同士で交差が生じたりするので、毛髪交差は、毛先まで影響する。その結果、生えぐせが強まったり、ボリュームが出たり、毛髪交差により、希望の髪形になりにくかった。
図3に示すように、最初に、第1の鋏半部2の先部側に位置する櫛部2aで、毛髪の根元の毛髪交差を浮かし、非切断領域S2、中間歯領域S3、短歯領域S4と毛髪逃げ空間Rへと毛髪の根元から毛先へと第1の鋏半部2を移動させる。
非切断領域S2の後端に位置する第1の端歯12aと、先端の中間歯17aとの間には、歯溝の底部が歯先方向に位置する底上げ部20が形成され、毛髪が端歯12aに絡まることなく、中間歯領域S3、短歯領域S4へと円滑に逃がすことができる。
【0029】
そのため、毛髪交差は、非切断領域S2、中間歯領域S3、短歯領域S4の櫛歯によって、交差が解ける。
その後、第1の鋏半部2の先部側に位置する切断領域S1である櫛部2a
により、毛髪交差の原因を1本単位で根元からカットすることができ、毛髪交差となる原因を除去することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…梳き鋏 2…第1の鋏半部 2a…櫛部 3…第2の鋏半部 3a…棒刃 4…ピボット 10…刃先溝 11…第1の櫛歯 12…第2の櫛歯 12a…第1の端歯 13…切刃部 14…止め刃部 16…短歯 16a…第2の端歯 17…中間歯 17a…先端の中間歯 18…段差部 20…底上げ部 A…毛髪 R…毛髪逃げ空間 S1…切断領域 S2…非切断領域 S3…中間歯領域 S4…短歯領域
【要約】
【課題】本発明は、円滑に毛髪の微調整の施術を容易にした梳き鋏を提供する。
【解決手段】毛髪Aを取り込むための刃先溝10が設けられた第1の鋏半部2と棒刃3aが設けられた第2の鋏半部3とをピボット4により連結した梳き鋏において、
前記第1の鋏半部2には、先部側に位置する櫛部2aが設けられ、前記櫛部2aの前列は、前記刃先溝10が設けられた切断領域S1を有し、前記櫛部2aの後列は、前記刃先溝10が設けられない非切断領域S2を有し、前記第2の鋏半部3には、前記切断領域S1及び前記非切断領域S2に対応して切刃部が設けられ、前記ピボット4と前記非切断領域S2との間において、前記第1の鋏半部2と前記第2の鋏半部3とが接触しない毛髪逃げ空間Rが設けられ、前記非切断領域S2の後端の櫛部と毛髪逃げ空間R側の前端の櫛部との間の歯溝の深さを浅くする底上げ部20が形成される。
【選択図】
図2