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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】液体定量吐出具
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20241016BHJP
   A45D 34/04 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61M37/00 514
A45D34/04 555
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020139749
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035427
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】514277260
【氏名又は名称】シンクランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154634
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 みさ子
(72)【発明者】
【氏名】日隈 薫
(72)【発明者】
【氏名】橋本 義浩
(72)【発明者】
【氏名】及川 陽一
(72)【発明者】
【氏名】宮地 邦男
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-154173(JP,A)
【文献】特開平09-192581(JP,A)
【文献】特開2005-118367(JP,A)
【文献】特開2014-018431(JP,A)
【文献】特開2019-170648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の軸部と、
前記軸部の外側に形成され、物理的に移動させるスイッチ機構と、
前記軸部の内側に形成され、液体を収納する液体収納部と、
前記軸部における長手方向の先端側の端部又は端部近傍に設けられた脱着取付部と、
前記長手方向に延びる複数の微小突起及び前記微小突起の内部を貫通する貫通孔が形成され、根元側に形成された係止部により、前記脱着取付部に対して脱着可能に取り付けられる吐出キャップ部と、
前記液体収納部の先端側に形成され、前記吐出キャップに対して前記液体を供給可能な開口部を有する内蓋と
前記スイッチ機構に連動して定量の液体を前記吐出キャップ部から吐出させる定量吐出部とを備え、
前記吐出キャップ部における先端裏側面と、
前記先端側を上にした場合に前記軸部において液体を保持可能な液面との間に空間が形成される
ことを特徴とする液体定量吐出具。
【請求項2】
前記係止部として形成された凹部又は凸部を、
前記脱着取付部として形成された凸部又は凹部にはめ合わせることにより、
前記脱着取付部に対して前記吐出キャップ部が取り付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の液体定量吐出具。
【請求項3】
前記係止部として形成された雌ねじ又は雄ねじを、
前記脱着取付部として形成された雄ねじ又は雌ねじに螺合することにより、
前記脱着取付部に対して前記吐出キャップ部が取り付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の液体定量吐出具。
【請求項4】
前記微小突起は、
平面部からの高さが50~1200μmである
ことを特徴とする請求項1に記載の液体定量吐出具。
【請求項5】
前記貫通孔は、
前記根元側へ向かって断面積が広がるテーパ形状を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体定量吐出具。
【請求項6】
前記液体は、
注射用薬剤であり、
前記微小突起は、
平面部からの高さが300μm以上である
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の液体定量吐出具。
【請求項7】
前記液体は、
化粧品であり、
前記微小突起は、
平面部からの高さが200μm未満である
ことを特徴とする請求項2~請求項4のいずれかに記載の液体定量吐出具。
【請求項8】
前記内蓋の先端側は、前記開口部へ向けて凹む逆テーパ状を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の液体定量吐出具。
【請求項9】
前記吐出キャップ部は、
前記長手方向の長さが20mm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体定量吐出具。
【請求項10】
前記吐出キャップ部は、
全体として円筒形状を有し、
前記長手方向に対して垂直な断面の直径が30mm以下である
ことを特徴とする請求項9に記載の液体定量吐出具。
【請求項11】
前記内蓋は、中心部分において2mm以上の厚さを有している
ことを特徴とする請求項8に記載の液体定量吐出具。
【請求項12】
前記定量吐出部は、
前記開口部から混入した空気を滞留させる滞留機構
を有することを特徴とする請求項11に記載の液体定量吐出具。
【請求項13】
前記軸部における先端側の開口部の面積が、
前記軸部全体としての断面積と比して1/3以下である
ことを特徴とする請求項11に記載の液体定量吐出具。
【請求項14】
前記吐出キャップ部は、
液体を保持可能な液体保持部
を有することを特徴とする請求項1に記載の液体定量吐出具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば医療又は美容用途の液体を定量吐出可能な液体定量吐出具に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、注射針を介して薬剤を注射する注射器において、定量の薬剤を吐出可能な液体定量吐出具が知られている(例えば特許文献1参照)。この液体定量吐出具では、注射する薬剤量の調整が容易なため、例えば糖尿病のように、患者自身が注射を行う自己注射用途に広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-228389
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、かかる注射器では、針の存在により注射を行う際に患者に痛みや恐怖感を与えてしまう。しかしながら、単に針サイズを小さくしていくと、針の強度が不足し、繰返し使用に適さなくなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、針サイズが小さくても繰返し使用に適した液体定量吐出具を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため、本発明の液体定量吐出具は、
筒状の軸部と、
前記軸部の外側に形成され、物理的に移動させるスイッチ機構と、
前記軸部の内側に形成され、液体を収納する液体収納部と、
前記軸部における長手方向の先端側の端部又は端部近傍に設けられた脱着取付部と、
前記長手方向に延びる複数の微小突起及び前記微小突起の内部を貫通する貫通孔が形成され、根元側に形成された係止部により、前記脱着取付部に対して脱着可能に取り付けられる吐出キャップ部と、
前記液体収納部の先端側に形成され、前記吐出キャップに対して前記液体を供給可能な開口部を有する内蓋と
前記スイッチ機構に連動して定量の液体を前記吐出キャップ部から吐出させる定量吐出部とを備え、
前記吐出キャップ部における先端裏側面と、
前記先端側を上にした場合に前記軸部において液体を保持可能な液面との間に空間が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、針サイズが小さくても繰返し使用に適した液体定量吐出具を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態における液体定量吐出具の構成(1)を示す概略図である。
図2】本実施の形態における液体定量吐出具の構成(2)を示す概略図である。
図3】吐出キャップ部の変形例(1)の構成を示す概略図である。
図4】吐出キャップ部の変形例(2)の構成を示す概略図である。
図5】吐出キャップ部の変形例(3)の構成を示す概略図である。
図6】本実施の形態における液体の吐出と吐出キャップの交換を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施の形態>
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、全体として本発明の液体定量吐出具1を示している。液体定量吐出具1は、全体として筆記具のような細長い円筒形状を有している。液体定量吐出具1は、軸本体部2の長手方向(軸方向)における根元側にスイッチ機構3を、先端側に吐出キャップ部4を有している。
【0011】
図2(A)に示すように、軸本体部2は、内部に液体収納部5と定量吐出部6とを有している。液体収納部5は、薬剤や化粧品などの液体LQが充填されている。液体収納部5は、カートリッジなどの交換式であっても良く、交換不能な使い切りタイプであっても良い。この液体収納部5は、例えば1~30μl程度の液体LQを収納することが可能である。
【0012】
液体収納部5に充填される液体LQとしては、特に限定されないが、人体若しくは動物に対して注射又は塗布されることが想定されているため、化粧水や美容液などの化粧用途や皮膚に対する医療用途の薬剤、若しくは頭髪保護剤や育毛剤などの頭髪用薬剤、などが主に挙げられる。
【0013】
定量吐出部6は、スイッチ機構3に対するユーザの操作に応じて、液体収納部5の液体LQを吐出キャップ部4の先端から定量吐出させる。すなわち、ユーザがスイッチ機構3を1回操作(押下又はスライド)させると、液体収納部5の液体LQが定量だけ吐出キャップ部4へ供給される。
【0014】
図2(B)に示すように、吐出キャップ部4は、全体として円筒形状をしており、根元側が開口している。吐出キャップ部4の根元側端部4Cから先端表面4Aまでの高さHcに制限は無いが、好ましくは20mm以下に設定されている。
【0015】
吐出キャップ部4の内側における根元側端部4Cの近傍(根元側端部4Cから高さHcの1/2)には、円周上に突出する凸部45が形成されている。また、軸本体部2の先端側には、軸本体部2の外周よりも外径の小さい取付部21が形成されている。取付部21には、円周上に凹む凹部25が形成されている。凸部45と凹部25とがはめ合わされることにより、吐出キャップ部4が軸本体部2に対して脱着可能に取り付けられる。なお、吐出キャップ部4の内側と取付部21の外側に凹部と凸部が少なくとも1つずつ、対になるように形成されればよく、どちらに凹部及び凸部が形成されてもよく、また2対以上形成されてもよい。また、雌ねじと雄ねじとによる螺合方式であってもよい。
【0016】
吐出キャップ部4の先端表面4Aには、複数の微小突起11が形成されている。微小突起11は、例えば縦×横=9×9の81本形成されており、互いに同じ間隔で正方形状に配列されている。図2(C)に示すように、微小突起11には、微小突起11の先端11Aから先端裏面4Bまでを貫通する貫通孔12が形成されており、定量吐出部6から供給される液体LQを貫通孔の孔先端12Aから吐出する。微小突起11の数に制限は無く、用途や必要な吐出量などに応じて適宜(例えば9~500本)選択される。
【0017】
吐出キャップ部4は、液体収納部5から先端裏面4Bに供給される液体LQが先端表面4Aに形成された微小突起11の先端11Aを介してから吐出する。微小突起の高さ(先端表面4Aから先端11Aまでの高さ)は、微小突起11としての役割を果たしつつ、製造の容易性及び安全性を担保する観点から、30~2000μm、さらに好ましくは50~1200μm、100~900μmである。
【0018】
微小突起の高さは、用途に応じて適宜選択される。例えば、液体LQを人体に対して注射する場合には、50~900μm、液体LQを皮膚表面に塗布する場合には30~200μmであることが好ましい。
【0019】
貫通孔12は、微小突起11の中心軸を中心に又は中心軸からオフセットされた位置に形成され、貫通孔12の中心軸が微小突起11の先端11Aまたは先端近傍(中心軸が微小突起11の高さの1/2より先端側)に位置している。貫通孔12の形状に制限は無く、例えば全体的にほぼ同じサイズ(すなわち円柱状や角柱状などの柱形状に)形成されても良く、根元へいくほど大きくなるように(すなわち円錐状や三角錐状などの錐形状に)形成されていても良い。
【0020】
貫通孔12の大きさに制限はないが、微小突起11の強度及び液体LQの通過液量を確保するため、最も細い部分の直径が好ましくは微小突起11の直径の1/20~1/2程度、特に好ましくは1/10~1/3程度である。具体的には、微小突起11の根元部分の直径は100~900μm程度、200~600μm程度であることが好ましい。また貫通孔の根元部分から先端部分までの平均直径は、10~200μm、さらには20~100μmに形成されることが好ましい。
【0021】
また、先端裏面4Bに隣接して、塗布液充填空間13が形成されている。定量吐出部6は、液体収納部5から供給される液体LQを塗布液充填空間13に供給し、貫通孔12を通過させて塗布液を吐出キャップ部4から吐出させる。
【0022】
従って、図2(C)に示すように、ユーザによるスイッチ機構3の操作に応じて、貫通孔12の孔先端12Aから一定量の液体LQが吐出される。このとき、複数の貫通孔12から分散した状態で液体LQが吐出される。
【0023】
なお、液体LQの1回当たりの吐出量は、液体LQの性質に応じて決定されるが、例えば1~100μl、より好ましくは3~30μlである。1回当たりの吐出量が少なすぎると多数回の操作が必要となる一方、多すぎると液だれや注入もれの可能性が高まるからである。
【0024】
液体LQの粘度に制限はないが、低粘度の液体を液体LQとして使用することにより、本発明の液体定量吐出具1の効果を適切に発揮することができる。低粘度の液体とは、60rpmにおける粘度(L型粘度計/25℃)が、150mPa・s以下、さらには80mPa・s以下であることが好ましい。同様に、チキソ性が小さく、6rpm/60rpm=3.0以下、さらには2.0以下であることが好ましい。
【0025】
また、微小突起11Yの高さや配列、先端側の形状などを適宜変更することにより、皮膚に対する応力の接点を増やしたり、皮膚を伸長させたりして微小突起11の刺衝性を変化させることができる。例えば図3に示すように、吐出キャップ部4Xでは中心に向けて微小突起11Xの高さが高くなるように微小突起11Xが形成されている。
【0026】
なお微小突起11の本数に制限は無く任意の数にすることができる。また、微小突起11の配置の仕方に制限は無く、規則正しく配置したり、ランダムに配置したり、自由に配置することができる。例えば円形に配置させたり、楕円形や多角形状に配置することも可能である。
【0027】
図4に示すように、吐出キャップ部4Yでは、吐出キャップ部4Yの先端において、先端側にいくに従って先細るように階段状に複数のシートが積層され、最も先端側のシートに微小突起11Yが形成されている。図5に示すように、吐出キャップ部4Yでは、円形に微小突起11Zが配置されている。なお図5(B)は、吐出キャップ部4Yを先端側からみた図である。
【0028】
かかる構成に加えて、本発明の液体定量吐出具1では、交換のために吐出キャップ部4を取り外した際の液漏れを防止する液漏れ防止機構を有している。以下、押し子61の先にガスケット62を用いた定量吐出部6を適用した場合について、図6を用いて説明する。
【0029】
図6に示すように、定量吐出部6より先端側に液体収納部5が設けられている。定量吐出部6の押し子61は先端にガスケット62を有しており、液体LQを押し出すことが可能である。定量吐出部6は、図示しない位置固定機構により、スイッチ機構3のが押される動作に連動して押し子61を所定の移動量だけ先端側に移動させた状態で固定する。すなわち、スイッチ機構3が押されると、ガスケット62の位置が移動量だけ先端側に移動して固定される、移動量に応じた定量の液体LQを吐出キャップ4Yから吐出させることができる。
【0030】
図6に示すように、軸本体部2の開口部20A(取付部21の内側部分)には、内蓋開口部22Aを有する内蓋22が嵌め込まれており、内蓋開口部22Aと同じ断面積を有する円筒形状の貫通孔22Bが形成されている。内蓋22の厚みに制限は無いが、例えば取付部21と同じ程度の厚み(10~15mm程度)を有している。なお貫通孔22Bは、例えば先端側へ向けて先細るように形成しても良い、
【0031】
図2(B)及び図6(A)に示すように、吐出キャップ部4の先端裏面4Bから根元側端部4Cまでの内側高さHbは、取付部21の高さHaよりも大きく形成されており、取付部21の先端(貫通孔22Bとの接続部分については内蓋開口部22の端部間を結んだ位置)と先端裏面4Bまでの間には空間ARが形成される。このため、吐出キャップ部4には予め空気が留保される。なお図6において紙面上方向に向く白抜き矢印は、空気の移動方向を示している。
【0032】
吐出キャップ部4の空間ARには、液体吸収材41が設置されている。液体吸収材41は、圧力が加わると液体LQを通過させることができるものの、圧力がない状態では液体LQを保持することができる材料でなり、例えば発泡樹脂により形成された空隙の多いスポンジや空隙の多いマイクロファイバー、布、不織布などが好適に使用される。液体吸収材41の高さHsは、吐出キャップ部4の内側高さHbから取付部21の高さHaを引いた空間ARの高さとほぼ同じに形成されており、取付部21の先端と先端裏面4Bまでの間の空間ARを液体吸収材41が埋める状態となる。
【0033】
図6(A)に示すように、内蓋22の先端側は、先端側へ向けて凹む逆テーパ状となっており、定量液体吐出具1の先端側を下方向にしたときに、吐出キャップ4の内部にある空気は液体収納部5の根元側へと誘導される。
【0034】
この内蓋開口部22Aの面積は、軸本体部2の内側の断面積(開口部20Aの面積)と比して、1/3以下、好ましくは1/4以下となっており、軸本体部2の先端側における開口部分が細く狭められた状態を構成している。図6(B)に示すように、内蓋開口部22は中心のみが吐出キャップ4の内部空間と接続するしており、空気が存在する位置において液体収納部5と吐出キャップ部4の空間とが内蓋22によって離隔している(すなわち、図6(B)の状態において液体収納部5の上側となる液体収納部5の内側面よりも内側開口部22が下方向に位置する)ため、使用時において、空気は液体収納部5内部に留保される。
【0035】
なお、液体吸収材41の形状は、空間ARとほぼ同じであっても良く、僅かに小さめ又は大きめに形成されても良い。液体吸収材41に軸方向に延びる貫通孔を設けることもできる。液体吸収材41は、吐出キャップ部4に接着剤などで固着されてもよく、また軸方向と垂直方向に大きめに形成されることにより、液体吸収材41が有する弾性を利用して接着剤なしで嵌め込まれることができる。
【0036】
また、液体吸収材41の高さHsを空間ARの高さより大きく(高さ比で1~50%、好ましくは2~20%程度大きく)設定することにより、吐出キャップ部4を取り外したときに保持する液体LQの量を制限し、液だれを抑制することが可能であり、好ましい。液体吸収材41のサイズに制限は無いが、空間ARに収納された状態において、吸収する液体LQの量と、必要な空気量との関係性から、吐出量の1/3~1/20程度の体積であることが好ましい。
【0037】
図6(C)に示すように、吐出キャップ部4を取り外す際には、液体LQが漏れないよう、先端側を上へ向けて実行される。このとき、液体収納部5の内部に留保された空気の存在と、液体吸収材41が液体LQの一部を保持したまま取り外されるため、液面の高さPlqは、取付部21の先端面の位置である先端位置Ptpよりも低い位置となる。
【0038】
また、内蓋開口部22Aの面積が小さいため、液面の高さPlqを先端位置Ptpから離すことができ、吐出キャップ部4の交換時に生じる液体LQの液漏れを極力防止することができる。
【0039】
<動作及び効果>
以下、上記した実施形態から抽出される発明群の特徴について、必要に応じて課題及び効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、上記各実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。また、各特徴に記載した用語の意味や例示等は、同一の文言にて記載した他の特徴に記載した用語の意味や例示として適用しても良い。
【0040】
以上の構成によれば、本発明の液体定量吐出具(液体定量吐出具1)は、
筒状の軸部(軸本体部2)と、
前記軸部の外側に形成され、物理的に移動させるスイッチ機構(スイッチ機構3)と、
前記軸部の内側に形成され、液体(液体LQ)を収納する液体収納部(液体収納部5)と、
前記軸部における長手方向の先端側の端部又は端部近傍に設けられた脱着取付部(凹部25)と、
前記長手方向に延びる複数の微小突起及び前記微小突起の内部を貫通する貫通孔が形成され、根元側に形成された係止部(凸部45)により、前記脱着取付部に対して脱着可能に取り付けられる吐出キャップ部(吐出キャップ部4)と、
前記スイッチ機構に連動して定量の液体を前記吐出キャップ部から吐出させる定量吐出部(定量吐出部6)とを備えることを特徴とする。
【0041】
これにより、液体定量吐出具では、微小突起の形成された吐出キャップ部を交換可能であるため、針サイズが小さくても繰返し使用に適した構成とすることができる。また、使用する度に針を交換することができるため、衛生面の向上を図ることが出来る。
【0042】
液体定量吐出具において、前記係止部として形成された凹部又は凸部を、
前記脱着取付部として形成された凸部又は凹部にはめ合わせることにより、
前記脱着取付部に対して前記吐出キャップ部が取り付けられることを特徴とする。
【0043】
これにより、液体定量吐出具では、凹凸をはめ合わせるだけの簡易な構成により、吐出キャップ部を交換可能とすることができる。また、凹凸を1周以上つけることにより、密封性を高めることができる。
【0044】
液体定量吐出具において、前記係止部として形成された雌ねじ又は雄ねじを、
前記脱着取付部として形成された雄ねじ又は雌ねじに螺合することにより、
前記脱着取付部に対して前記吐出キャップ部が取り付けられることを特徴とする。
【0045】
これにより、液体定量吐出具では、ねじによる螺合といった簡易な構成により、吐出キャップ部を交換可能とすることができる。また、凹凸を1周以上つけることにより、密封性を高めることができる。
【0046】
液体定量吐出具において、前記微小突起は、
平面部からの高さが50~1200μmである
ことを特徴とする請求項1に記載の液体定量吐出具。
【0047】
これにより、液体定量吐出具では、微小突起の高さを利用して、液体を狙った位置に吐出することができる。
【0048】
液体定量吐出具において、前記貫通孔は、
前記根元側へ向かって断面積が広がるテーパ形状を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体定量吐出具。
【0049】
これにより、液体定量吐出具では、貫通孔の断面積の平均を大きくできるため、針の強度を保ちつつ、液体が詰まるリスクを低減できる。
【0050】
液体定量吐出具において、前記液体は、
注射用薬剤であり、
前記微小突起は、
平面部からの高さが300μm以上であることを特徴とする。
【0051】
これにより、液体定量吐出具では、体内に液体を注入する注射器として利用できる。
【0052】
液体定量吐出具において、前記液体は、
化粧品であり、
前記微小突起は、
平面部からの高さが200μm未満であることを特徴とする。
【0053】
これにより、液体定量吐出具では、肌の表面に化粧品を塗布する塗布具として利用できる。
【0054】
液体定量吐出具において、前記液体は、25℃、60rpmにおける粘度が150mPa・s未満の液体であることを特徴とする。
【0055】
これにより、液体定量吐出具では、径の小さい貫通孔から適切に液体を吐出させることができる。
【0056】
液体定量吐出具において、前記吐出キャップ部は、
前記長手方向の長さが20mm以下であることを特徴とする。
【0057】
これにより、液体定量吐出具では、吐出キャップ部の交換時における取り外し・取付のし易さを担保できる。
【0058】
液体定量吐出具において、前記吐出キャップ部は、
全体として円筒形状を有し、
前記長手方向に対して垂直な断面の直径が30mm以下であることを特徴とする。
【0059】
これにより、液体定量吐出具では、面積を小さく抑えることができ、曲線の大きな部位であっても使用可能にすることができる。
【0060】
液体定量吐出具において、前記軸部における先端側の開口部の面積が、
前記軸部全体としての断面積と比して1/3以下であることを特徴とする。
なお、前記開口部から続く断面積の減少した部分は2mm以上、より好ましくは5mm以上有することが好ましい。液体定量吐出具では、スイッチ機構に対するユーザの物理的な圧力印可(押下操作)に連動し、定量吐出部におけるや圧力印可対象物(ガスケット62)の物理的動作(先端側への移動)によって液体収納部の液体に圧力を印可することにより、吐出キャップ部から液体を吐出する。このため、吐出後は、吐出キャップ部の先端まで液体を行き渡らせた状態となる。
【0061】
これにより、液体定量吐出具では、開口部を小さくすることができるため、液漏れの可能性を小さくすることができる。また、断面積の減少した部分によって、液面を大きく低下させることができる。また、中心へ行くにつれて根元側に行くように開口部の周囲に傾斜を設けることにより、
【0062】
液体定量吐出具において、前記定量吐出部は、
前記開口部から混入した空気を滞留させる滞留機構を有することを特徴とする。
【0063】
これにより、液体定量吐出具では、定量吐出部に空気を保持することができるため、開口部を上にしたときに空気の分だけ液体の水位を下げることが可能となる。
【0064】
前記吐出キャップ部における先端裏側面と、
前記先端側を上にした場合に前記軸部において液体を保持可能な液面との間に空間が形成されることを特徴とする。
【0065】
これにより、液体定量吐出具では、液体定量吐出部に空気を混入させることができ、先端側を上にしたときの液面を低下させることができる。
【0066】
液体定量吐出具において、前記吐出キャップ部は、
液体を保持可能な液体保持部を有することを特徴とする。
【0067】
これにより、液体定量吐出具では、液体の一部を吐出キャップ部に保持して定量吐出部における液量を低減させることができ、開口部を上にしたときに空気の分だけ液体の水位を下げることが可能となる。
【0068】
以上の構成によれば、液体収納空間と定量吐出部とを有する軸部に対して、中空孔を有するマイクロニードルが形成された吐出キャップ部を取り外し可能な構成とすると共に、軸部に対して吐出キャップ部を釣り付けたときに吐出キャップ部に空気を留保するための空間を形成しておく。このを吐出キャップ部の空気を液体収納部へと誘導する誘導機構によって液体収納部に空気を滞留させることにより、次に吐出キャップ部を取り外したときの液体収納部の水位を下げるようにした。
【0069】
<他の実施の形態>
上述実施形態では、定量吐出部の内部に空気を保持する機構として、内蓋開口部22Aを小さくし、貫通孔を有する内蓋22とし、空間ARを形成し、液体吸収材41を有する場合について述べたが、これらの構成は必須ではない。また、一つ又は2つ以上が適宜組み合わされて適用されても良い。
【0070】
上述実施形態では、内蓋22の先端側の面がテーパ形状であったが、本発明はこれに限られない。内蓋22の先端側の面は平坦であっても良い。また、空気を定量吐出部6へ導きやすくする空気誘導部として、内蓋22の外周に沿って又は外周近傍(外周から2mm以内)に、空間ARと定量吐出部6又は液体LQとを繋ぐ複数の空気孔を形成しても良い。この空気孔は、断面積が内蓋開口部22Aよりも小さく、軸方向に平行に、又は根元側へ向けて外周へ向かうように傾斜して形成される。これにより、軸方向が水平になった状態であっても、空気を定量吐出部6へ導きやすくできる。この場合には、一部の空気が吐出キャップ部4側に戻る可能性があるが、吐出キャップ部4の軸方向の空間は液体収納部5の軸方向の空間よりも著しく短い(1/3~1/10)ため、少量の空気のみが吐出キャップ部4に移動せず、本発明の効果を損なうことはない。内蓋22の根元側の面も同様に中心へ向かって先端側に凹む逆テーパ形状を形成することもできる。
【0071】
上述実施形態では、定量吐出部6として、位置固定が可能な押し子61とガスケット62とを用いたが、本発明はこれに限られない。例えば図示しないが、液体収納部として2つの液体収納空間が存在し、)両者を繋ぐ中間開口部を有する(すなわち中間開口部を有する離隔壁が設けられている)構成において、スイッチ機構3に連動して軸方向に動くピストンの動作とバネの動作に応じて、ユーザのスイッチ機構3の操作に応じて液体収納空間Aに収納されたボール弁が移動し、中間開口部を介して根元側の液体収納空間Bから先端側の液体収納空間Aへと1回分の液体LQが移動するようにする。この場合、中間開口部の液体収納部5側の形状を中心が先端側へ向く逆テーパ形状にすることにより、空間ARから取り込んだ空気が定量吐出部6から液体収納部5側へ移動し難くすることが可能である。また、この中間開口部をダイヤフラム弁や機械弁のような公知の弁を用いてもよい。
【0072】
上述実施形態では、吐出キャップ部として中空タイプの微小突起(マイクロニードル)を有するようにしたが、本発明はこれに限られない。例えば、吐出キャップが1本の注射針を有するようにしても良い。この場合、毎回注射針を交換することにより、衛生面が担保された液体定量吐出具を注射システムとして利用することができる。
【0073】
上述実施形態では、軸部としての軸本体部2と、スイッチ機構としてのスイッチ機構3と、液体収納部としての液体収納部5と、吐出部としての吐出キャップ部4と脱着取付部としての凹部25及び凸部45と、定量吐出部としての定量吐出部6とによって液体定量吐出具としての液体定量吐出具1を構成したが、本発明はこれに限らず、その他種々の構成による軸部と、スイッチ機構と、液体収納部と、吐出キャップ部と、定量吐出部とによって本発明の液体定量吐出具を構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、簡易な操作で被塗布対象に液体を塗布したり、液体を注射したりする液体定量吐出具に適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 :液体定量吐出具
2 :軸本体部
3 :スイッチ機構
4 :吐出キャップ部
5 :液体収納部
6 :定量吐出部
11 :微小突起
12 :貫通孔
20A :開口部
21 :取付部
22 :内蓋
22A :内蓋開口部
22B :貫通孔
25 :凹部
41 :液体吸収材
45 :凸部

図1
図2
図3
図4
図5
図6