(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】非破壊検査システム,非破壊検査方法及び非破壊検査プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 29/11 20060101AFI20241016BHJP
G01N 29/30 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G01N29/11
G01N29/30
(21)【出願番号】P 2020160523
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】519429989
【氏名又は名称】株式会社テクノコンサルタント
(73)【特許権者】
【識別番号】591107230
【氏名又は名称】株式会社デンケン
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100189865
【氏名又は名称】下田 正寛
(74)【代理人】
【識別番号】100094215
【氏名又は名称】安倍 逸郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179165
【氏名又は名称】宇都宮 将之
(72)【発明者】
【氏名】伊東 修
(72)【発明者】
【氏名】首藤 孝司
(72)【発明者】
【氏名】南 晃央
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 浩和
(72)【発明者】
【氏名】十時 優介
(72)【発明者】
【氏名】柴 健司
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 聖次
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-038462(JP,A)
【文献】特開2017-040585(JP,A)
【文献】Ying Zhang, Zhenhua Xie,Ensemble empirical mode decomposition of impact-echo data for testing concretestructures,NDT&E International,Elsevier B.V.,2012年06月08日,Vol.51,PP.74-84
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-G01N 29/52
G01B 17/00-G01B 17/08
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象の一部に設けるための自動打撃装置と、
前記被測定対象の他の一部に設けるための前記自動打撃装置が発生した弾性波の反射波を検出する検出器と、
前記検出器に接続され、前記検出器が出力する波形の一部を選択する波形選択器と、
前記波形選択器に接続され、前記波形選択器が出力する信号に対して、経験的モード分解の手法により特徴量を選択し、前記被測定対象を検査するための解析を、前記特徴量を用いて行う解析装置と、
を備え、
前記解析装置は、
前記経験的モード分解の手法により、前記波形選択器が出力した校正用試料中を伝搬して戻ってきた健全な反射波の特徴を抽出する反射波特徴抽出論理回路と、
前記経験的モード分解の手法により、前記被測定対象中を伝搬して戻ってきた反射波の特徴量を選択する特徴量選択論理回路と、
前記反射波特徴抽出論理回路が抽出した特徴と、前記特徴量選択論理回路によって選択された前記被測定対象の特徴量を用いて、前記被測定対象中の欠陥を判定する判定論理回路と、
前記被測定対象の特徴量を前記被測定対象の設計情報を用いて変換し、該変換された特徴量から前記被測定対象の反射波強調フィルタ係数を算出する反射波強調フィルタ係数算出回路と、
複数のフィルタを用意し、該複数のフィルタのそれぞれの時間軸を伸張又は圧縮する時間軸伸張圧縮回路と、
前記反射波強調フィルタ係数を用いて、前記複数のフィルタを並列に処理するフィルタバンク処理論理回路と、
を含むことを特徴とする非破壊検査システム。
【請求項2】
前記非破壊検査システムにおいて、
前記解析装置に接続され、校正用試料の設計情報データを記憶しておくための設計情報記憶装置、
を備えることを特徴とする
請求項1に記載の非破壊検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の基礎杭等の被測定対象の長さや断面積の変化の測定、損傷・欠損等有無や健全性を検査する非破壊検査システム、この非破壊検査システムを用いた非破壊検査方法及びこの非破壊検査方法をコンピュータシステムに実行させる非破壊検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震等による損傷、疲労亀裂や人為的な問題に起因する基礎杭等のコンクリート構造物の安全性に対し、被測定対象となるコンクリート構造物の健全性を診断する非破壊調査技術は重要性を増している。従来は、被測定対象の表面をインパクトハンマーで打撃して被測定対象の内部に衝撃弾性波を伝搬させ、被測定対象の内部で反射した衝撃弾性波を加速度計で捉え、反射波の伝播時間と伝播速度から、被測定対象の内部に発生した亀裂や拡径部、杭先端等の位置を求めていた(特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の検査方法では、基礎杭を伝播する衝撃弾性波がインピーダンスの異なる境界で反射する現象を利用して、杭長、杭断面の変化、損傷・欠損等の状態を診断している。特許文献1に記載の検査方法の場合は、被測定対象に対するインパクトハンマーの叩き方でも衝撃弾性波の波形が異なる為、1測点当たり数百回の打撃回数と豊富な経験が必要になる。衝撃弾性波の反射波の波形により、被測定対象の先端、亀裂、形状変化等を検知することを目的とするものであるが、亀裂等の欠陥の識別は、測定被測定対象や周囲の状況、複数の測定結果から判断しており、豊富な経験と知識を要する。
【0004】
又、基礎杭のような長尺のコンクリート構造物の場合、衝撃弾性波の走行時間からコンクリート構造物の先端の位置等を求めるには衝撃弾性波の伝播速度が必要であるが、被測定対象の材質や拘束状態により異なる。被測定対象の材質や拘束状態が不明な場合、衝撃弾性波の伝播速度を正確に求められず、判定誤差となり、精度低下につながる問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、豊富な経験と知識を必要とせず、高精度に被測定対象を検査することが可能な非破壊検査システム、この非破壊検査システムを用いた非破壊検査方法及びこの非破壊検査方法をコンピュータシステムに実行させる非破壊検査プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、被測定対象の一部に設けるための自動打撃装置と、前記被測定対象の他の一部に設けるための前記自動打撃装置が発生した弾性波の反射波を検出する検出器と、前記検出器に接続され、前記検出器が出力する波形の一部を選択する波形選択器と、前記波形選択器に接続され、前記波形選択器が出力する信号に対して、経験的モード分解の手法により特徴量を選択し、前記被測定対象を検査するための解析を、前記特徴量を用いて行う解析装置と、を備え、前記解析装置は、前記経験的モード分解の手法により、前記波形選択器が出力した校正用試料中を伝搬して戻ってきた健全な反射波の特徴を抽出する反射波特徴抽出論理回路と、前記経験的モード分解の手法により、前記被測定対象中を伝搬して戻ってきた反射波の特徴量を選択する特徴量選択論理回路と、前記反射波特徴抽出論理回路が抽出した特徴と、前記特徴量選択論理回路によって選択された前記被測定対象の特徴量を用いて、前記被測定対象中の欠陥を判定する判定論理回路と、前記被測定対象の特徴量を前記被測定対象の設計情報を用いて変換し、該変換された特徴量から前記被測定対象の反射波強調フィルタ係数を算出する反射波強調フィルタ係数算出回路と、複数のフィルタを用意し、該複数のフィルタのそれぞれの時間軸を伸張又は圧縮する時間軸伸張圧縮回路と、前記反射波強調フィルタ係数を用いて、前記複数のフィルタを並列に処理するフィルタバンク処理論理回路と、を含むことを特徴とする非破壊検査システムであることを要旨とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記非破壊検査システムにおいて、前記解析装置に接続され、校正用試料の設計情報データを記憶しておくための設計情報記憶装置、を備えることを特徴とする請求項1に記載の非破壊検査システムであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の例によれば、豊富な経験と知識を必要とせず、高精度に被測定対象を検査することが可能な非破壊検査システム、この非破壊検査システムを用いた非破壊検査方法及びこの非破壊検査方法をコンピュータシステムに実行させる非破壊検査プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る非破壊検査システムの概要を示す図である。
【
図2】
図1の解析装置を構成するハードウェア資源を、論理的な構造として説明する模式図である。
【
図3】第1実施形態に係る非破壊検査方法の処理手順を説明する概略的なフローチャートである。
【
図4】第1実施形態に係る非破壊検査システムに用いる自動打撃装置の構造の一例を説明する模式図である。
【
図5】第1実施形態に係る非破壊検査システムに用いる自動打撃装置の構造の他の例を説明する模式図である。
【
図6】第1実施形態に係る非破壊検査システムに用いる自動打撃装置の構造の更に他の例を説明する模式図である。
【
図7】第1実施形態に係る非破壊検査システムに用いる波形選択器の一例を説明する回路図である。
【
図8】
図8(a)は
図7に示す波形選択器に入力される信号の波形を示す図で、
図8(b)は
図7の波形選択器から出力される信号の波形を示す図である。
【
図9】健全なコンクリート構造物からの反射波を入力信号とする場合において、経験的モード分解(Empirical Mode Decomposition)の手法により入力信号を10個の固有モード関数IMF(Intrinsic Mode Function)に分解する場合の3つの固有モード関数IMFを説明する図である。
【
図10】亀裂、傷やひび等の存在が推定されるコンクリート構造物を被測定対象とする場合において、被測定対象からの反射波を入力信号として、経験的モード分解の手法により入力信号を10個の固有モード関数IMFに分解する場合の3つの固有モード関数IMFを説明する図である。
【
図11】
図10に示した第3の固有モード関数IMF3に含まれる特徴量を説明する図である。
【
図12】第1実施形態に係る非破壊検査方法に用いるフィルタバンクの処理の概略を説明する図である。
【
図13】第1実施形態に係る非破壊検査方法において、連続ウェーブレットの手法を用いて、並列にフィルタ処理するフィルタバンクの処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、図面を参照して、本発明の第1実施形態に係る非破壊検査システムを例示的に説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部材の大きさの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な厚み、寸法、大きさ等は以下の説明から理解できる技術的思想の趣旨を参酌してより多様に判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0013】
又、以下に示す第1実施形態に係る非破壊検査システムは、本発明の技術的思想を具体化するための方法及びその方法に用いる装置等を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等、方法の手順等を下記のものに特定するものではない。特に以下の第1実施形態に係る非破壊検査システムでは被測定対象が細長い棒状の基礎杭である場合を例示するが、第1実施形態に係る非破壊検査システムの被測定対象は基礎杭に限定するものではなく、ビルの内壁若しくは外壁、橋桁等の種々のコンクリート構造物が被測定対象である。被測定対象はこれらの例示に限定されるものではない。本発明の技術的思想は、第1実施形態に係る非破壊検査システムで記載された内容に限定されず、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
(第1実施形態)
≪装置構成について≫
図1に示すように、第1実施形態に係る非破壊検査システムは、被測定対象11の一部に設けられた自動打撃装置21a、被測定対象11の他の一部に設けられた弾性波の検出器31、検出器31に接続され、検出器31が出力する波形の一部を選択する波形選択器32と、波形選択器32に接続され、波形選択器32が出力する波形を表示する波形表示装置34と、波形表示装置34に接続され、波形表示装置34が出力する信号を用いて被測定対象11の健全性を検査するための解析を行う解析装置35と、波形表示装置34に接続され波形データを記憶する波形データ記憶装置36を有している。解析装置35は、波形選択器32が出力する信号に対して、経験的モード分解の手法により特徴量を選択し、被測定対象11の健全性を検査するための解析を、特徴量を用いて行う。自動打撃装置21aには、自動打撃装置21aが行う自動打撃の動作を制御する打撃制御装置22が接続され、打撃制御装置22は解析装置35からのデータにより、自動打撃装置21aの動作の命令を制御することができる。
【0015】
被測定対象11は、第1実施形態に係る非破壊検査システムが実施する非破壊検査の対象物であり、例えば、細長い棒状の基礎杭等の弾性体である。以下の第1実施形態に係る非破壊検査システムの説明では、被測定対象11は既存の基礎杭であると仮定し、被測定対象11の杭頭部側の部位は地上に露出しており、他の部位は地中に埋設されているとして説明する。なお、第1実施形態において、被測定対象11は中空のコンクリート製の杭であってもよい。自動打撃装置21aは、被測定対象11の杭頭部を自動打撃することにより、被測定対象11に弾性波を発生させるものである。
【0016】
検出器31は、被測定対象11の杭頭部に設けられており、自動打撃装置21aで杭頭部を打撃したときの被測定対象11中を伝搬して戻ってくる反射波を検出する音響センサ等である。本実施形態においては、被測定対象11の杭頭部に自動打撃装置21aおよび検出器31を同一面上に設けたが、何らそれに限定されるものではなく、検査現場の状況や被測定対象の構造等に応じて杭の横部等に設けてもよく、自動打撃装置21aと検出器31を異なる面に設けることも可能である。なお、検査の正確性等を考慮すると本実施形態のような配置で測定を行うことが好ましい。波形選択器32は、検出器31の出力に基づいて解析装置35が被測定対象11の杭長の推定や被測定対象11の非破壊検査に必要な解析を行うために、検出器31が出力した波形の一部を選択するハイパスフィルタ(HPF)等が好適ではあるが、HPFに限定されるものでなくバンドパスフィルタ(BPF)等でも構わない。或いは、自動打撃装置21aが正弦波等の周期的弾性波を発生する場合であれば、波形選択器にはロックイン増幅器等を採用することも可能である。
図7では、波形選択器32の一例としてのHPFの構成を示す回路を示している。波形選択器32がオペアンプ等を用いたアクティブなHPFの場合は
図1に示すように、波形選択器32には安定化電源33が接続される。波形データ記憶装置36は、波形データ(アナログデータ)をデジタルデータにA/D変換して記憶するための半導体メモリ(RAM)、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、磁気テープなどの二次メモリである。第1実施形態の波形データ記憶装置36は複数の波形データを記憶することができる。
【0017】
解析装置35には更に、波形データ記憶装置36、設計情報記憶装置41、欠陥データ記憶装置43、特徴量記憶装置44、解析データ記憶装置38、出力装置37及び入力装置42が接続されている。特徴量記憶装置44は、特徴量のデータ(デジタルデータ)を記憶するための二次メモリである。設計情報記憶装置41は、校正用試料の設計情報のデータ(デジタルデータ)を記憶するための二次メモリである。
欠陥データ記憶装置43は、欠陥データ(デジタルデータ)を記憶するための二次メモリである。プログラム記憶装置39は、解析装置35の処理手続を規定したコンピュータ・ソフトウェア・プログラムを記憶するためのROM等の二次メモリである。プログラム記憶装置39には、USBメモリ、SDカード、フレキシブルディスク、SSD、CD-ROM,MOディスク、カセットテープ、オープンリールテープなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記録されたプログラムを格納することが可能である。
【0018】
或いは、インターネット等の情報処理ネットワークを介して、解析装置35の処理手続に必要なコンピュータ・ソフトウェア・プログラムをプログラム記憶装置39に格納することが可能である。波形データ記憶装置36、設計情報記憶装置41、欠陥データ記憶装置43、特徴量記憶装置44の一部又は全部は共通のハードウェア資源である記憶装置の一部のファイルとして存在できるし、それぞれ個別のハードウェア資源として存在することも可能である。解析データ記憶装置38は、解析データ(デジタルデータ)を記憶するためのSRAM等の一次メモリや、レジスタ、キャッシュメモリである。第1実施形態の解析データ記憶装置38は解析データ記憶装置38の処理段階で逐次出力される中間データを必要に応じて一時的に記憶し、読み出すことができる。解析装置35は、波形データ記憶装置36、設計情報記憶装置41、欠陥データ記憶装置43、特徴量記憶装置44及び解析データ記憶装置38に記憶されたデータを用いて被測定対象11の波動理論解析の演算を行う。
【0019】
出力装置37は、解析データ記憶装置38に記憶された波形や解析装置35の演算結果を出力するものであり、第1実施形態では、これらを画面に表示するディスプレイを有している。なお、出力装置37はディスプレイには限られない。例えば、演算結果を測定結果とともに記録するデータレコーダーや、波形や演算結果を印刷するプロッターやプリンターであってもよい。入力装置42はキーボード、マウス、ライトペン又はフレキシブルディスク装置やUSBメモリ等の読取装置などで構成される。入力装置42より解析実行者は、入出力データを指定したり、解析に必要な演算子、多項式の次数、周波数値、許容誤差の値及び誤差の程度等を設定したりできる。更に、入力装置42より出力データの形態等の解析パラメータを設定することも可能で、また、演算の実行や中止等の指示の入力も可能である。
【0020】
図1に示すコンピュータシステムを構成する解析装置35の論理的なハードウェア資源の構成は、
図2のように表現される。第1実施形態に係る非破壊検査システムを構成する解析装置35は、
図2に示すようにシークエンス回路352を有する制御部351、反射波特徴抽出論理回路353、特徴量選択論理回路354、反射波強調フィルタ係数算出回路355、時間軸伸張圧縮回路356、フィルタバンク処理論理回路357及び判定論理回路358を含み、被測定対象11の長さや断面積の変化の測定の他、損傷・欠損等有無や健全性を検査することができる。解析装置35を構成する反射波特徴抽出論理回路353は、経験的モード分解(EMD)の手法により、波形表示装置34が出力した校正用の健全な試料中を伝搬して戻ってきた反射波の特徴を抽出し、特徴量記憶装置44に保存する論理回路である。
【0021】
特徴量選択論理回路354は、経験的モード分解の手法により、被測定対象11中を伝搬して戻ってきた反射波の特徴量を選択する論理回路である。反射波強調フィルタ係数算出回路355は、被測定対象11の特徴量を被測定対象11の設計情報を用いて変換し、この変換された特徴量から被測定対象11の反射波強調フィルタ係数を算出する論理回路である。時間軸伸張圧縮回路356は、弾性波の伝搬速度のばらつきを考慮し、フィルタの時間軸の伸長を複数用意し、時間軸を伸張又は圧縮する論理回路である。フィルタバンク処理論理回路357は、反射波強調フィルタ係数を用いて、複数のフィルタを並列に処理する論理回路である。即ち、フィルタバンク処理論理回路357は、マザー関数が予め決定できるため連続ウェーブレットの手法を用いて、並列にフィルタ処理するフィルタバンク処理を実行する。判定論理回路358は、反射波特徴抽出論理回路353が抽出した特徴と、特徴量選択論理回路354によって選択された被測定対象の特徴量を用いて、被測定対象11中の欠陥を判定する論理回路である。即ち、判定論理回路358は、被測定対象11中の傷や被測定対象11の先端からの反射であるか否か等を判定する。
【0022】
解析装置35には、マイクロチップとして実装されたマイクロプロセッサ(MPU)等を使用してコンピュータシステムを構成することが可能である。又、コンピュータシステムを構成する解析装置35として、算術演算機能を強化し信号処理に特化したデジタルシグナルプロセッサ(DSP)や、メモリや周辺回路を搭載し組込み機器制御を目的としたマイクロコントローラ(マイコン)等を用いてもよい。或いは、現在の汎用コンピュータのメインCPUを解析装置35に用いてもよい。更に、解析装置35の一部の構成又はすべての構成をフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)のようなプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)で構成してもよい。
【0023】
PLDによって、解析装置35の一部又はすべてを構成した場合は、波形データ記憶装置36、設計情報記憶装置41、欠陥データ記憶装置43、特徴量記憶装置44及び解析データ記憶装置38は、PLDを構成する論理ブロックの一部に含まれるメモリブロック等のメモリ要素として構成することができる。更に、解析装置35は、CPUコア風のアレイとPLD風のプログラム可能なコアを同じチップに搭載した構造でもよい。このCPUコア風のアレイは、あらかじめPLD内部に搭載されたハードマクロCPUと、PLDの論理ブロックを用いて構成したソフトマクロCPUを含む。つまりPLDの内部においてソフトウェア処理とハードウェア処理を混在させた構成でもよい。
【0024】
制御部351、反射波特徴抽出論理回路353、特徴量選択論理回路354、反射波強調フィルタ係数算出回路355、時間軸伸張圧縮回路356、フィルタバンク処理論理回路357及び判定論理回路358はAバス359a及びBバス359bを介して互いに接続されている。シークエンス回路352は、制御部351、反射波特徴抽出論理回路353、特徴量選択論理回路354、反射波強調フィルタ係数算出回路355、時間軸伸張圧縮回路356、フィルタバンク処理論理回路357及び判定論理回路358のそれぞれの処理手順をコンピュータ・ソフトウェア・プログラムに従って、制御する。
図2では、Aバス359aに、打撃制御装置22、波形データ記憶装置36、波形表示装置34、設計情報記憶装置41及び欠陥データ記憶装置43が接続されている構成が例示されている。一方、Bバス359bには、特徴量記憶装置44、解析データ記憶装置38、プログラム記憶装置39、出力装置37及び入力装置42が接続されている構成が例示されているが、
図2に示す構成に限定されるものではない。
【0025】
図2に示す解析装置35を構成するハードウェア資源としての反射波特徴抽出論理回路353、特徴量選択論理回路354、反射波強調フィルタ係数算出回路355、時間軸伸張圧縮回路356、フィルタバンク処理論理回路357及び判定論理回路358等は、論理的な機能に着目したハードウェア資源を形式的に表現しているのであって、必ずしも、半導体チップ上に物理的な領域としてそれぞれ独立して存在する機能ブロックを意味するものではないが、PLDの「論理ブロック」のような半導体チップ上に実装されたプログラム可能な論理コンポーネント等の現実に存在する構成を否定するものでもない。解析装置35の一部の構成又はすべての構成をFPGAのようなPLDで構成した場合は、
図2に示したシークエンス回路352のプログラムカウンタやAバス359a及びBバス359b等のデータバスは省略可能である。
【0026】
図4に示すように、第1実施形態に係る非破壊検査システムに用いる自動打撃装置21aは、プランジャー211を電磁ソレノイド212で駆動するソレノイド式の装置である。
図4に示すソレノイド式の自動打撃装置21aは、電磁ソレノイド212で駆動されたプランジャー211が打撃部213を下方に移動させ、打撃部213の先端が被測定対象11の一部を打撃する。
【0027】
電磁ソレノイド212は電磁ソレノイド212を収納するソレノイド容器216の内部に格納されている。打撃部213は
図4に示すように2段の円柱状をなし、上段の円柱の外径がハンマー部となる下段の円柱の外径よりも太い。上段の円柱の上部には穴が掘られ、この穴中にプランジャー211の先端部が挿入される。打撃部213の周囲は、被測定対象11の表面に、下面が接合部215を介して固定されるガイド部217で囲まれている。ガイド部217の中央には段付きの貫通孔が開孔され、上段側の貫通孔の内径が下段側の貫通孔の内径よりも太い。
【0028】
貫通孔の段差部と打撃部213の上段の円柱の下面と間にはスプリング214が、下段の円柱を囲むように収納されている。ガイド部217の上面の外周に近い箇所とソレノイド容器216の側面の一部はL字型の連結板219で連結されている。連結板219のL字に曲がった下端部は、ガイド部217の上面と平行になり、ボルト220cによって、ガイド部217の上面の外周に近い箇所に固定されている。ソレノイド容器216の側面と連結板219の立ち上がり部との間には緩衝材218が挿入されている。この緩衝材218を介して、連結板219の立ち上がり部はボルト220a及びボルト220bによって、ソレノイド容器216の側面の一部に固定されている。スプリング214の弾性力と電磁ソレノイド212の駆動力を調整することにより、所望の任意の打撃力を得ることができる。
【0029】
図4に示す自動打撃装置21aによれば、単発の打撃により、パルス状またはインパルス状の弾性波を被測定対象11に発生させるだけでなく、周期的な打撃により正弦波状の弾性波を被測定対象11に発生させることも可能である。よって、2~4KHz程度の正弦波状の弾性波を発生させれば、低周波の弾性波を用いたインテグリティ試験や、1MHz程度までの様々な周波数の弾性波を利用した高周波衝撃弾性波法等の検査も可能となる。
【0030】
第1実施形態に係る非破壊検査システムに用いる自動打撃装置は、
図4に示すソレノイド式の自動打撃装置21aに限定されるものではない。例えば、
図5に示すような振り子式の自動打撃装置21bでも構わない。
図5に示す振り子式の自動打撃装置21bにおいては、アーム222aの一方の端部に設けた打撃部221が被測定対象11の一部を打撃して、パルス状またはインパルス状の弾性波を被測定対象11に発生させることができる。アーム222aの他方の端部には、アーム222aに直交する方向に結合したスプリング駆動部222bが設けられている。アーム222aとスプリング駆動部222bでL字型の構造をなしている。スプリング駆動部222bに一端が固定されたスプリング223の他端はスプリング固定部224に固定されている。
【0031】
アーム222aとスプリング駆動部222bが連結しているL字の角部には、アーム222aとスプリング駆動部222bがなす面に垂直方向に回転軸が設けられている。この回転軸は、台座227に固定された回転軸支持部225によって、回転自在に固定されている。台座227の端部には台座227の主面に垂直方向に棒状の支柱229が設けられ、支柱229の一部に、打撃部221の高さを規定するフック228が設けられている。又、支柱229の根元付近の台座227の上面には棒状のストッパー226が固定されている。フック228とストッパー226の間の距離を調整することにより、打撃部221の打撃速度を変更できる。
【0032】
第1実施形態に係る非破壊検査システムに用いる自動打撃装置は、
図6に示すようなモータ式の自動打撃装置21cでも構わない。
図6に示すモータ式の自動打撃装置21cにおいては、モータ234で駆動されるベルト236の回転移動に連結した打撃部231が鉛直方向に直線移動し、打撃部231の先端が被測定対象11の一部を打撃して、パルス状またはインパルス状の弾性波を被測定対象11に発生させることができる。ベルト236の回転移動を可能にするためにモータ234に直結した下部プーリ235aと、下部プーリ235aに対向する上部プーリ235bが下部プーリ235aから離間して設けられている。ベルト236の回転移動に打撃部231を連結させるため、ガイドレール233に設けられたリンク部232の下側に棒状の打撃部231が先端を鉛直方向に向けて固定されている。なお、リンク部232とベルト236を固定せずに支えるだけで、落下方向に自由運動できる構造とし、打撃部231よりベルト236が先に下方に移動することで打撃部231を自由落下させて打撃部231の先端が被測定対象11の一部を打撃する構成にすることも可能である。
【0033】
図7は、第1実施形態に係る非破壊検査システムに用いる波形選択器の例としてのオペアンプ帰還型のHPFを示す回路図である。
図7に示すように電圧ソース型(VCVS)型の2次HPFが2段直列接続されている。1段目の2次HPFは、入力端子IN側に位置する第1交流結合コンデンサC4に第2交流結合コンデンサC5が直列接続され、第2交流結合コンデンサC5が第1のオペアンプのプラス端子に接続されている。第1のオペアンプのプラス端子は第1のバイアス抵抗R5を介して接地されている。第1交流結合コンデンサC4と第2交流結合コンデンサC5との接続ノードに、第1入力抵抗R2の一方の端子が接続され、第1入力抵抗R2の他方の端子は、第1のオペアンプのマイナス端子に接続されている。第1のオペアンプの高位電源側は第1のバイパスコンデンサC2を介して接地され、第1のオペアンプの低位電源側は第2のバイパスコンデンサC9を介して接地されている。第1のオペアンプの高位電源は
図1に示した安定化電源33から供給できる。第1のバイパスコンデンサC2と第2のバイパスコンデンサC9は安定化電源33によるノイズの低減と、安定化電源33の電源ラインのインピーダンスの低減を目的としている。
【0034】
2段目の2次HPFも
図7に示すように、第1のオペアンプの出力端子側に位置する第3交流結合コンデンサC6に第4交流結合コンデンサC7が直列接続され、第4交流結合コンデンサC7が第2のオペアンプのプラス端子に接続されている。第2のオペアンプのプラス端子は第2のバイアス抵抗R6を介して接地されている。第3交流結合コンデンサC6と第4交流結合コンデンサC7との接続ノードに、第2入力抵抗R3の一方の端子が接続され、第2入力抵抗R3の他方の端子は、第2のオペアンプのマイナス端子に接続されている。図示を省略しているが、第1のオペアンプと同様に第2のオペアンプの高位電源側は第3のバイパスコンデンサを介して接地され、第2のオペアンプの低位電源側は第4のバイパスコンデンサを介して接地されている。第2のオペアンプの高位電源も、
図1に示した安定化電源33から供給できる。第3のバイパスコンデンサと第4のバイパスコンデンサは安定化電源33によるノイズの低減と、安定化電源33の電源ラインのインピーダンスの低減を目的としている。
【0035】
≪非破壊検査方法について≫
図3に示すフローチャートを用いて、第1実施形態に係る非破壊検査の処理手順を説明する。先ず、ステップS11において、第1実施形態に係る非破壊検査システムの入力装置42を介して校正用試料の設計情報を入力し、非破壊検査システムの設計情報記憶装置41に保存する。第1実施形態に係る非破壊検査方法において、自動打撃装置21aによる印加される弾性波は、短時間のパルス状またはインパルス状であると考えられる。弾性波の反射は、弾性波が印加された時の特性と反射面の特性による。とくに境界面のインピーダンスの比に応じて大きさが変化し、自由端と同様の反射をする。校正用試料に用いる健全なコンクリート構造物においては、基本的に校正用試料の先端からの反射が反射波の信号の主たる要因を示すことになる。
【0036】
校正用試料となる健全なコンクリート構造物の場合、設計により長さ、大きさ、形状に加え、体積弾性率や密度などは決定しているので、校正用試料の設計情報は、設計情報記憶装置41に保存しておく。次にステップS12において、自動打撃装置21aが校正用試料の杭頭部を自動打撃することにより、校正用試料中を伝搬して戻ってくる健全な弾性波を検出器31が検出する。検出器31が検出した
図8(a)に示すような弾性波の波形は、
図7に示す波形選択器32でその一部がフィルタリングされ、選択後に
図8(b)に示すような波形になる。波形選択器32から出力された健全な弾性波の波形は、
図1に示した波形表示装置24で観察することができる。
【0037】
その後、ステップS13において、非破壊検査システムの解析装置35を構成する反射波特徴抽出論理回路353が、以下のような経験的モード分解の手順に従い、健全な弾性波(反射波)の特徴の抽出をする:
(a) ステップS12で
図7に示す波形選択器32によって反射波の波形の一部が選択された入力信号x(t)のデータを波形データ記憶装置36に格納する。健全な弾性波の入力信号x(t)の振動の山と谷は交互に現れる。そこで、ステップS13において、反射波特徴抽出論理回路353は、入力信号x(t)のデータを波形データ記憶装置36から読み出し、健全な弾性波の入力信号x(t)のすべての極値を検出し、すべての極値のデータをそれぞれ解析データ記憶装置38に格納する。
(b) 反射波特徴抽出論理回路353は、極大点と極小点のデータをそれぞれ解析データ記憶装置38から読み出し、極大点と極小点をそれぞれ補間し、山の包絡線(上側包絡線)e
max(t)と谷の包絡線(下側包絡線)e
min(t)を得て、山の包絡線e
max(t)と谷の包絡線e
min(t)のデータをそれぞれ解析データ記憶装置38に格納する。
【0038】
(c) 反射波特徴抽出論理回路353は、山の包絡線と谷の包絡線のデータをそれぞれ解析データ記憶装置38から読み出し、山の包絡線と谷の包絡線の局所平均m(t) = ( emin(t) + emax(t) ) / 2 を算出して、局所平均m(t)のデータをそれぞれ解析データ記憶装置38に格納する。
(d) 入力信号x(t)のデータを波形データ記憶装置36から、局所平均m(t)のデータを解析データ記憶装置38からそれぞれ読み出し、入力信号x(t)と局所平均の差分y(t) = x(t) - m(t)を入力とみなして、反射波特徴抽出論理回路353はステップ(a)~(d)の手順を繰り返す。
(e) 局所平均の標準偏差が閾値以下になった時点で、反射波特徴抽出論理回路353は力と局所平均の差分y(t)を固有モード関数IMFとみなし,ループを終了する。このように、反射波特徴抽出論理回路353は、山の包絡線と谷の包絡線を近似し,その間を通る線を第1の固有モード関数IMF1=y(t)として抽出し、第1の固有モード関数IMF1のデータを解析データ記憶装置38に格納する。
【0039】
(f) 反射波特徴抽出論理回路353は、健全な弾性波の入力信号x(t)と固有モード関数IMFの残差r1(t) = x(t) - y(t)を新たな入力信号x(t)としてステップ(a)~(f)の手順を繰り返す。即ち、反射波特徴抽出論理回路353は、即ち、y1(t)+y2(t)+y3(t)+……+yk(t)を基の入力信号x(t) から引き,収束するまで複数回繰り返す.
(g) 反射波特徴抽出論理回路353が第1の固有モード関数IMF1~第kの固有モード関数IMFk(すべての固有モード関数IMF)を抽出し、x(t)の極値が1つになったら終了する。最終的な残差をrfinal(t)とすると、
x(t) =y1(t)+y2(t)+y3(t)+……+yk(t)+rfinal(t) ……(1)
kは固有モード関数IMFのチャネル数になる。式(1)によって,反射波特徴抽出論理回路353は、振動を分解できる。
【0040】
図9(a)は、経験的モード分解に用いられる健全なコンクリート構造物からの反射波を入力信号して示す図である。
図9(b)は、
図9(a)に示した健全なコンクリート構造物からの入力信号を、経験的モード分解の手法により10個の固有モード関数IMFに分解した場合の第1の固有モード関数IMF1を説明する図である。
図9(c)は
図9(a)に示した入力信号を経験的モード分解の手法により10個の固有モード関数IMFに分解した場合の第2の固有モード関数IMF2を説明する図である。同様に、
図9(d)は、
図9(a)に示した入力信号を経験的モード分解の手法により10個の固有モード関数IMFに分解した場合の第3の固有モード関数IMF3を説明する図である。
図9に示したような経験的モード分解の手法による分解において,反射波特徴抽出論理回路353は、山のみの信号のエネルギーと谷のエネルギーの比が1に近く相対許容誤差が大きいものを固有モードとして,採用する.そのうち設計上の距離とほぼ等しいと思われる前後を反射波特徴抽出論理回路353は、ステップS13において、特徴量として選択する。ステップS14において、反射波特徴抽出論理回路353が抽出した健全な弾性波(反射波)の特徴量を特徴量記憶装置44に保存する。
【0041】
次に、ステップS15において、被測定対象11の設計情報が既知の場合は、入力装置42を介して被測定対象11の設計情報を入力し、第1実施形態に係る非破壊検査システムの設計情報記憶装置41に保存する。ステップS16において、反射波特徴抽出論理回路353は被測定対象11の経験的モード分解の特徴量を選択し、第1実施形態に係る非破壊検査システムの特徴量記憶装置44に保存する。被測定対象11に亀裂、傷やひび等の欠陥が存在する場合、欠陥からの反射波は、反射波の大きさや形状は、健全なコンクリート構造の場合から変化するものの、健全な構造物の先端からの反射と類似な特性をもつと仮定できる。そこで、反射波特徴抽出論理回路353は被測定対象11の欠陥部からの反射波が、健全な構造物からの反射波と同じ特性を示すものとして、固有モードを抽出し、解析データ記憶装置38に保存する。
【0042】
図10(a)は、亀裂、傷やひび等の欠陥を含む被測定対象11からの反射波を入力信号して示す図である。
図10(b)は、
図10(a)に示した欠陥を含む被測定対象11からの入力信号を、経験的モード分解の手法により10個の固有モード関数IMFに分解した場合の第1の固有モード関数IMF1を説明する図である。
図10(c)は
図10(a)に示した入力信号を経験的モード分解の手法により10個の固有モード関数IMFに分解した場合の第2の固有モード関数IMF2を説明する図である。同様に、
図10(d)は、
図10(a)に示した入力信号を経験的モード分解の手法により10個の固有モード関数IMFに分解した場合の第3の固有モード関数IMF3を説明する図である。
【0043】
図11に拡大図を示すように、
図10(d)に示した第3の固有モード関数IMF3には、符号Aを付した円で囲んだような特徴量が発見される。そこで、ステップS17において、解析装置35を構成する反射波強調フィルタ係数算出回路355は、特徴量記憶装置44から健全な構造物の特徴量を読み出し、読み出した特徴量を選択フィルタに採用して、
図12の上段に示すように、被測定対象11の反射波強調フィルタ係数を算出する。ステップS18において、解析装置35を構成する時間軸伸張圧縮回路356が、弾性波の伝搬速度のばらつきを考慮し、フィルタの時間軸の伸長を複数用意し、
図12の下段に示すように、時間軸を伸張又は圧縮する。
【0044】
その後、ステップS19において、第1実施形態に係る非破壊検査システムの自動打撃装置21aが被測定対象11の杭頭部を自動打撃することにより、被測定対象11中を伝搬して戻ってくる反射波を検出器31が検出する。検出器31が検出した、亀裂、傷やひび等の欠陥からの反射を含む反射波の波形は、波形選択器32で波形の一部を選択した後、被測定対象11からの弾性波を波形表示装置34で観察した後、波形の一部が選択されたデータを波形データ記憶装置36に格納する。ステップS20において、波形データ記憶装置36から波形のデータを読み出し、読み出した波形のデータに対し、解析装置35を構成するフィルタバンク処理論理回路357が
図13に示すようなフィルタバンク処理をする。
【0045】
図13から分かるように、フィルタバンク処理においては、単一の入力x(t)に対し、フィルタの並列処理を施すことによって、複数の出力y(t)を得る。フィルタの並列処理は処理時間を要するが、マザー関数が予め決定できるため
図13に示すように、連続ウェーブレットの手法を用いて実現する。ステップS21において、解析装置35を構成する判定論理回路358が、被測定対象11中の傷や被測定対象11の先端からの反射であるか否か等を判定する。被測定対象11中の傷や被測定対象11の先端からの反射であるか否か等の判定に際しては、設計情報記憶装置41及び欠陥データ記憶装置43に格納されたデータを、フィルタバンク処理によって得られた複数の出力y(t)との比較をする深層学習の手法を用いる。判定論理回路358は、被測定対象11の長さや断面積の変化の測定結果や損傷・欠損等有無や健全性の検査結果を、出力装置37によって表示させる。更に判定論理回路358は、判定した損傷・欠損等有無や健全性の検査データを、被測定対象11の長さや断面積の変化の測定結果と共に、欠陥データ記憶装置43に格納して欠陥データを蓄積する。
【0046】
第1実施形態に係る非破壊検査システム及び非破壊検査方法によれば、健全なコンクリート構造物から得られた固有モードを、亀裂、傷やひび等の欠陥を有する被測定対象11からの反射波の抽出フィルタとして用いているので、反射波の基本的な特性を強調することができ、反射波以外の他の成分を抑圧することができる。又、第1実施形態に係る非破壊検査システム及び非破壊検査方法によれば、フィルタの時間軸の伸長を複数用意し、並列にフィルタ処理することができるので、経年劣化などによる伝搬速度のばらつきを吸収することができ、構造物ごとの特性の変動を吸収することができる。
【0047】
(その他の実施形態)
本発明は第1実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当と解釈しうる、特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。例えば、非破壊検査システム、非破壊検査方法、非破壊検査プログラムは文言上非破壊を特定するものであるが、検査時の打撃等により一部の細かい粒子や破片等などが欠落する可能性は否定できないが、定義的に非破壊検査という文言を使用しているにすぎないため、このようなケースを非破壊検査システム、非破壊検査方法、非破壊検査プログラムが許容されることは当然のことと言える。
【符号の説明】
【0048】
11…被測定対象
21a,21b,21c…自動打撃装置
22…打撃制御装置
24…波形表示装置
31…検出器
32…波形選択器
33…安定化電源
34…波形表示装置
35…解析装置
36…波形データ記憶装置
37…出力装置
38…解析データ記憶装置
39…プログラム記憶装置
41…設計情報記憶装置
42…入力装置
43…欠陥データ記憶装置
44…特徴量記憶装置
211…プランジャー
212…電磁ソレノイド
213…打撃部
214…スプリング
215…接合部
216…ソレノイド容器
217…ガイド部
218…緩衝材
219…連結板
220a,220b,220c…ボルト
221…打撃部
222a…アーム
222b…スプリング駆動部
223…スプリング
224…スプリング固定部
225…回転軸支持部
226…ストッパー
227…台座
228…フック
229…支柱
231…打撃部
232…リンク部
233…ガイドレール
234…モータ
235a…下部プーリ
235b…上部プーリ
236…ベルト
351…制御部
352…シークエンス回路
353…反射波特徴抽出論理回路
354…特徴量選択論理回路
355…反射波強調フィルタ係数算出回路
356…時間軸伸張圧縮回路
357…フィルタバンク処理論理回路
358…判定論理回路
359a…Aバス
359b…Bバス,