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特許7571977対向面の作製方法、および前記対向面を使用して複雑な形を有する部品の製造方法
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  • 特許-対向面の作製方法、および前記対向面を使用して複雑な形を有する部品の製造方法 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】対向面の作製方法、および前記対向面を使用して複雑な形を有する部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20241016BHJP
   B22C 7/00 20060101ALI20241016BHJP
   B22F 3/14 20060101ALI20241016BHJP
   B28B 3/00 20060101ALI20241016BHJP
   B29C 64/188 20170101ALI20241016BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241016BHJP
【FI】
B28B1/30
B22C7/00 112D
B22F3/14 101A
B28B3/00 Z
B29C64/188
B33Y10/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021516738
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2019076605
(87)【国際公開番号】W WO2020070133
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】1859120
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】521117366
【氏名又は名称】ノリマット
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ベイネット,ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】エフェレ,ロマン
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/077028(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/179052(WO,A1)
【文献】特表2005-507723(JP,A)
【文献】再公表特許第2008/044693(JP,A1)
【文献】特開2001-191146(JP,A)
【文献】特開平07-299085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/30、3/00
B22F 3/14
B33Y 10/00
B29C 64/188
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧焼結による高密度化によって、複雑な形を有する部品(24d)を製造するための分割された成形型の部品(30a、30b)を作製し、前記分割された成形型の部品(30a、30b)を使用し、焼結により、複雑な形を有する部品(24d)を製造する方法であって、前記分割された成形型の部品(30a、30b)は、下記工程にしたがって、デジタル制御された三次元(3D)アディティブプリントにより作製された連続的に重なる層からなり、
記分割された成形型の部品(30a、30b)を三次元(3D)アディティブプリントにより作製するために、前記分割された成形型の部品(30a、30b)の残りが、前記複雑な形を有する部品(24d)を製造するための高密度化用成形型に適した形状面を有するよう、三次元アディティブプリントシステムの制御部で、製造する前記複雑な形を有する部品(24d)の三次元原板(3)をデジタルモデリングする工程と、
3Dアディティブプリント技術によって、前記分割された成形型の部品(30a、30b)を作製する工程と、
焼結による、前記分割された成形型の部品(30a、30b)のアディティブプリントを完了される工程と、を含み、
記分割された成形型の部品(30a、30b)の大きさを、高密度化用成形型によって高密度化した後の粉末の密度に対する高密度化する前の粉末の密度の比によって決定する密度伸長倍率によって増加させ、
加圧焼結によって製造する前記複雑な形を有する部品の高密度化をはかる際にかかる、一軸圧力(F)の方向に沿ってもたらされる前記複雑な形を有する部品(24d)の収縮を補い、
複雑な形を有する部品(24d)を製造する方法は
一軸圧力下で焼結を行う高密度化用成形型に、前記分割された成形型の部品(30a、30b)をあわせて投入する工程と、
前記分割された成形型の部品の一つ(30a)を通る、少なくとも一つのダクト(4)内に、高密度化前の粉末状材料あるいは粉末状の多孔性材料を投入する工程と、
一軸圧力(F)下で焼結することにより、前記粉末状材料あるいは粉末状の多孔性材料を高密度化する工程と、
前記分割された成形型の部品(30a、30b)を分離させ、前記複雑な形を有する部品(24d)を取り出し、製造を完成させる工程と、を更に含むことを特徴とする、複雑な形を有する部品を製造する方法。
【請求項2】
前記3Dアディティブプリント技術は、ステレオリソグラフィ、バインダジェット、押出方式、FFF(Fused Filament Fabrication)方式、インクジェットプリント、及び、エアロゾルジェットプリントから選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の、複雑な形を有する部品を製造する方法。
【請求項3】
記分割された成形型の部品(30a、30b)は、セラミック、シリカ、金属珪酸塩、及び、一の複合材料から選択される多孔性材料よりなる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の、複雑な形を有する部品を製造する方法。
【請求項4】
前記アディティブプリントは、5mm以下の厚さを有する、前記分割された成形型の部品(30a、30b)に対して行われる、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の、複雑な形を有する部品を製造する方法。
【請求項5】
3Dアディティブプリント実行時、200℃~600℃の温度、かつ、0.1℃/分~1℃/分の温度上昇率で熱処理を行うことによって、前記分割された成形型の部品(30a、30b)からバインダを取り出す工程を実施する、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の、複雑な形を有する部品を製造する方法。
【請求項6】
前記バインダを取り出す工程に続き、600℃~1,500℃の温度で、前記分割された成形型の部品(30a、30b)を熱処理することで、予備焼結工程を実施する、ことを特徴とする請求項5に記載の、複雑な形を有する部品を製造する方法。
【請求項7】
前記分割された成形型の部品(30a、30b)は、少なくとも一つのアンダーカットが排除されるように、少なくとも二つの部品に分割され前記分割された成形型の部品(30a、30b)が少なくとも一つの接合面(P)に沿って接合され、
前記複雑な形を分離する前記分割された成形型の部品(30a、30b)間の前記接合面(P)により、前記複雑な形を成形型から直接取り出すことができる、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の、複雑な形を有する部品を製造する方法。
【請求項8】
記分割された成形型の部品(30a、30b)は、前記成形型(20)又は分割された成形型の部品(30a、30b)の材料および製造する前記複雑な形を有する部品(24d)の材料が、焼結開始・終了時温度および高密度化度合において、焼結に対して同様の挙動を示すように選択された多孔性材料からなる、ことを特徴とする請求項に記載の、複雑な形を有する部品を製造する方法。
【請求項9】
記分割された成形型の部品(30a、30b)の材料にセラミックを選択、前記分割された成形型の部品(30a、30b)をなすセラミックの焼結開始温度は、製造する前記複雑な形を有する部品(24d)の焼結開始温度以上、あるいは前記分割された成形型の部品(30a、30b)をなすセラミックの焼結終了温度は、製造する前記複雑な形を有する部品(24d)の焼結終了温度以上である、ことを特徴とする請求項に記載の、複雑な形を有する部品を製造する方法。
【請求項10】
前記セラミックは、粉末状のイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、粉末状のアルミナ強化ジルコニア(ATZ)、粉末状のジルコニア強化アルミナ(ZTA)、及び、40%~80%の範囲の高密度化度合を発揮するアルミナ粉末から選択される、ことを特徴とする請求項に記載の、複雑な形を有する部品を製造する方法。
【請求項11】
少なくとも一端が解放されているダクト(4)が前記分割された成形型の部品(30a、30b)の外側に設けられ、前記ダクト(4)は、前記複雑な形を有する部品(24d)に成形される粉末状材料あるいは粉末状の多孔性材料を投入するためのものである、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の、複雑な形を有する部品を製造する方法。
【請求項12】
製造する前記複雑な形を有する部品(24d)の前記粉末状材料あるいは粉末状の多孔性材料は、セラミック、金属合金、ポリマー、及び、一の複合材料から選択される、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の、複雑な形を有する部品を製造する方法。
【請求項13】
前記分割された成形型の部品(30a、30b)及び部品の材料にセラミックを選択、前記分割された成形型の部品(30a、30b)の、一つあるいはそれ以上の外側壁が開口しており、セラミック粉末で満たされ、前記セラミック粉末の焼結温度は、前記分割された成形型の部品(30a、30b)の前記セラミックの焼結温度と同じである、ことを特徴とする請求項12に記載の、複雑な形を有する部品を製造する方法。
【請求項14】
多孔性あるいは粉末状材料からなる界面層(22、42)が、前記分割された成形型の部品(30a、30b)と高密度化する前の材料(24)との間に配置される、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の、複雑な形を有する部品を製造する方法。
【請求項15】
前記界面層(22、42)は、グラファイト、酸化イットリウム、及び、窒化ホウ素から選択される材料からなる、少なくとも一層から形成される、ことを特徴とする請求項14に記載の、複雑な形を有する部品を製造する方法。
【請求項16】
前記界面層(22、42)は、吹き付け及び粉末積層から選択される形で付与される、ことを特徴とする請求項15に記載の、複雑な形を有する部品を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複雑な形を有する部品を製造するための対向面を作製する方法、および前記対向面を使用し、加圧焼結により、複雑な形を有する部品を製造する方法に関する。
【0002】
本発明は、部品製造分野、特に、多孔性材料あるいは粉末材料を高密度化することで、産業機械部品を製造する分野に関する。当分野は、一軸あるいは多軸、静水圧負荷下での焼結、例えば、特に、熱間等方圧プレス、SPS(spark plasma sintering)として知られる高圧放電焼結、あるいは選択的レーザー焼結による、高密度化に関するあらゆる技術を含む。
【0003】
より詳しくは、SPS焼結技術において、超微細構造を有する高密度材料を素早く得るため、一定の体積を有するセラミック、ポリマー、あるいは金属粉が、導電性成形型内で固められる。こうした圧密は、負荷(例えば、約100MPaの、成形型にかかる高い一軸圧力)および成形型内の高強度パルス直流(500A~10,000A)から発せられる500度~2,000度の熱を同時に与えることによって実現され、結果、粉末の焼結は、全体で、たった数分で完了する。
【0004】
このSPS焼結技術における主たる利点としては、高い温度上昇率および、高温下での比較的短い滞留時間により、材料の高密度化を、結晶成長を全く伴うことなく、あるいは、非常に少ない結晶成長で、実現されることが挙げられる。
【背景技術】
【0005】
特に、厚さに実質な違いのある、複雑な形を有する部品の場合、限られた空間および時間内で、厚みが異なる領域間の不均一な材料を取り外すため、SPS焼結技術での一軸圧力には、不均質な高密度化を招いてしまうという欠点がある。複雑な形とは、厚さにバリエーションを持たせた、あるいは均等な厚みの、種々の湾曲部を有する形、厚さに大きな変化がある一方、湾曲部にバリエーションを持たせた、あるいは一定の湾曲部を有する形、および/または幾何学的欠けがある形を指す。
【0006】
高密度化の不均質性という欠点を補うため、特許文献1では、粉末状(あるいは多孔性)材料と、その部品を作製するために特注した成形型の対向面との間に、変形境界層を追加することが提案されている。
【0007】
しかしながら、焼結技術には、成形型からの取り出しが容易ではない、成形型あるいは成形型対向面を使用する際の問題もある。これは、部品が複雑な形を有している場合、特に、取り出しづらいアンダーカットや、部品を一部壊さない限り、成形型から取り外すことが困難なテーパード型を形成する場合に顕著である。
【0008】
対向面は、対向面を不活性界面で覆い、バインダにより凝集されたセラミック粉末層をプレスすること、あるいは、セラミック粉末をポリマープリフォーム上に固めることで得た刻印であってもよい。こうした技術もまた、アンダーカットのような複雑な形、および界面による覆いが必要な対向面の表面の状態といった問題ゆえに、取り出しやすさの形状に、実質的な制限がある。
【0009】
成形型から取り外せる先細形状に合った対向面の作製において、成形型からの取外しの際の問題を回避するため、対向面の数を複数にする必要があった。そのため、対向面のそれぞれに特注したツールの作製が必要となり、その結果、設計、機械工程の手間が増える。また、多くの対向面を組み立てることにより、欠陥(完成部品の形状が一致しない、早期段階での亀裂、材料ロス等)の原因となる。
【0010】
特許文献2からも、製造部品の形状に合わせて、アディティブプリントにより作製した薄肉容器を使用することが知られている。容器は、HIP(熱間等方圧プレス)、つまり粉末状金属を高密度化するプレス技術において、一体成型される。特許文献3では、方向性によって特定の物性を部品に与える目的で、アディティブプリントを利用して、複数の材料をHIPプレスにかける。
【0011】
特許文献4もまた、HIP技術に関連するもので、付加層に前もって形成された容器の材料は、製造部品と同じ材料である。その他、特許文献5、特許文献6、あるいは特許文献7では、HIP技術の実施に際して、付加層が使用されている。例えば、ゲル層や、HIP技術においてワックスをベースとした方法により、前もって作製したセラミック成形型を使用する。
【0012】
しかしながら、こうした手法は、HIP技術においても、省スペースとは言い難く、複雑で、時間がかかるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】仏国特許出願3042992号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/291221号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/368780号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2551040号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/361490号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/144432号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/030654号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、こうした問題を解決することを目的とし、特に、対向面作製用の特殊工具の開発をすることなく、対向面の表面状態を管理しながら、対向面部同士の接合を容易にすることを目的とする。そのために、本発明は、特に、高密度化する材料の、圧力がかかる軸方向に沿った収縮を予測するため、デジタル制御アディティブ技術により作製された対向面の使用と、対向面のサイジングとを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
より具体的には、本発明の対象は、加圧焼結による高密度化によって、複雑な形を有する部品を製造するための、対向面を作製する方法である。前記方法において、下記工程にしたがって、対向面は、デジタル制御三次元(3D)アディティブプリントによって積層された連続層からなる。
・作製する対向面のプリントを形成し、残りの対向面が、部品製造のための成形型に適した形状面を有するよう、三次元アディティブプリントシステムの制御部により、作製部品の三次元原板をデジタル形成する。
・3Dアディティブプリント技術によって、対向面を作製する。対向面の大きさは、密度延伸倍率によって増加する。前記密度延伸倍率は、製造部品の焼結・高密度化中にかかる圧力の方向に沿った、製造部品(1;24d)の収縮を補うものである。
・焼結による、対向面(20;30a、30b)のアディティブプリントを完了させる。
【0016】
特に、大きさが増加した対向面の特徴および従来の焼結の特徴を組み合わせることで、対向面の焼結、続いて、製造部品の材料の焼結における適応が可能となる。これにより、前記材料において、目的とする高密度化度合を厳密に達成することができる。さらに、多孔性における高い均質性および製造部品の所定の多孔性率等の物理化学的特性、および形状特徴(寸法および構成)の正確性を得ることが可能となる。
【0017】
本発明の効果としては、以下のものが挙げられる。
・3Dアディティブプリント技術は、ステレオリソグラフィ、バインダジェット、制御押出成形、融合フィラメント加工、インクジェットプリント、そしてエアロゾルジェットプリントから選択され得る。
・対向面の作製に使用される多孔性材料は、セラミック、シリカ、金属珪酸塩、複合材から選択される。
・プリントは、5mm以下の厚さの壁を有する対向面に対して行われる。これにより、続く部品の焼結において、いかなる亀裂の発生も防ぐことができる。
・対向面は、後工程において、少なくとも二つの部位に分割される。前記二つの部位は、少なくとも一つのアンダーカットを排除するように、少なくとも一つの接合面に沿って接合される。複雑な形状を複数の部位に分割し、その部位の間の接合面は、成形型から直接取り出すことができる。
【0018】
3Dアディティブプリント実行時、対向面の材料に合わせて、200度~600度の温度、かつ、0.1度/分~1度/分の温度上昇率で熱処理を行うことによって、対向面からバインダを取り出す工程を効果的に実施し得る。前記工程において、対向面の作製中に、材料に含有された有機化合物を取り出すことが可能となる。
【0019】
さらに、バインダを取り出す工程に続き、予備焼結工程を実施し得る。予備焼結工程では、対向面の材料に合わせて、600度~1,500度の高温で対向面を熱処理する。これにより、対向面の高密度化が開始され、機械的強度を高め、界面付与を促進することができる。
【0020】
本発明のもう一つの対象は、上記方法により作製された対向面を使用して、加圧焼結により複雑な形を有する部品を製造する方法である。前記部品製造方法は、下記工程にしたがって実施される。
・加圧焼結を行う高密度化用成形型内に、対向面部を投入する。
・対向面部を通る、少なくとも一つのダクト内に、粉末状高密度化する材料を投入する。
・一軸圧力下で焼結することにより、高密度化対象の材料を高密度化する。
・部品を取り出すため、対向面部を分割する。これにより、部品が完成する。
【0021】
製造部品の多孔性あるいは粉末状の材料は、セラミック、金属合金、ポリマー、複合材から選択し得る。さらに、対向面部の、少なくとも一つの外側壁は、開口していてよく、セラミック粉末で満たされていてよい。このセラミック粉末の焼結温度は、対向面部のセラミックの焼結温度と同じである。
【0022】
好ましい形態の一部は下記の通りである。
・対向面の材料および製造部品の材料が、焼結時に同様の挙動を発揮するよう、対向面の材料を選択する。この挙動は、対向面の材料に対する従来の焼結と同様のものである。
・対向面のセラミックの、焼結開始時温度あるいは焼結終了時温度は、それぞれ、製造製品のセラミック以上、あるいはそれよりも高い。
・セラミックは、粉末状のYSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ATZ(アルミナ強化ジルコニア)、ZTA(ジルコニア強化アルミナ)、40%~80%の範囲の高密度化度合を発揮するアルミナから選択され得る。
・少なくとも一端が解放されているダクトが、対向面外側に設けられている。これにより、部品形成用の粉末状あるいは多孔性材料で対向面を満たし、余分な粉末を除去することができる。
・対向面のアディティブプリントは、対向面の焼結によってなされる。この焼結は、製造部品の焼結と同時に行われ得る。
【0023】
効果的な実施形態によれば、対向面と高密度化する材料との間の界面層として、多孔性および/または粉末状材料の層を配置することが規定される。界面層により分割されることで、対向面と得られる部品の粉末との間のいかなる反応も防ぐことができる。
【0024】
有利なことに、界面層は、グラファイト、酸化イットリウム、窒化ホウ素から選択される材料からなる少なくとも一つの層によって形成される。界面層は、吹き付け、粉末積層、および適切な形状を有するシートから選択される形で付与されてもよい。
【0025】
本発明の、さらなる情報、特徴、そして効果は、添付の図面を参照して、以下の、制限を意図しない説明を読み進めることによって明らかにされるものである。図面はそれぞれ以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1a図1aは、本発明に係る方法によって作製される複雑な形の部品の例である。
図1b図1bは、図1aに示した製造部品の三次元原板のデジタル成形型を示す。
図2図2は、本発明に係る、複雑な形を有する部品を製造する方法における主な工程2a乃至2eを示す模式断面図であり、前記方法は、本発明に係る方法によって作製された対向面を使用し、焼結によって複雑な形を有する部品を製造するものである。
図3a図3aは、図1aおよび図1bの部品を製造する際に作製された二つの対向面を示す図である。
図3b図3bは、図1aおよび図1bの部品を製造する際に作製された二つの対向面を示す図である。
図3c図3cは、図1aおよび図1bの部品を製造する際に作製された二つの対向面を示す図であり、これら二つの対向面が、合わせて成形型に投入され、SPS加圧焼結により高密度化される場合の図である。
図4図4は、製造部品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面において、同一の要素には、同一の参照符号が付される。参照符号は、それが示す要素が記載される一つ、あるいはそれ以上の箇所で参照される。
【0028】
図1aを参照し、本発明に係る製造方法により製造される、複雑な形を有する部品1の例を示す。平面「P」(基準平面XOZに対して平行)は、事前に作製された二つの対向面の接合面(後述)であるこれにより、特に、部品1が、アンダーカットをなす凹み「C」を有し、成形型からの取り出しが困難である場合、作製後に部品を成形型から取り出すことが容易になる。本発明によると、凹み「C」は、対向面の一方側全体に存在する。
【0029】
図1bは、図1aに示す部品1の三次元原板10の、デジタル成形型3を示す。デジタル成形型3は、三次元アディティブプリントシステム(不図示)の制御部で作製され、それにより作製対向面部の完成形を得る。成形型からの取り出しを容易にするため、この完成形は、図1aに示すように、二つの部分に分割される。続いての工程では、3Dアディティブプリント技術、本例では、ステレオリソグラフィによって、各対向面部を作製する。これにより得られた二つの対向面部30aおよび30bを、図3に示す。
【0030】
図2は、本発明に係る製造方法における、主な工程2a乃至2eを実施する際の断面模式図である。本発明に係る前記方法は、一軸圧力下の焼結によって、複雑な形24dを有する部品を製造する方法であり、3Dアディティブプリント技術、本例では、ステレオリソグラフィによって、凝集されたセラミック粉末から作製された対向面20(工程2a)を利用する。
【0031】
図示の例では、プリズム形部品24dの成形型からの取り出し(工程2e参照)を容易にするにあたり、単一の対向面で充分であることが分かる。前記部品は、簡略化された例において、複雑な形状を有しているものと想定する。続いて、一定の厚さを有するグラファイト界面層22が、吹き付けにより、対向面20上に積層され(工程2b)、そして、高密度化する材料24が、この界面層22(工程2c)上に追加される。界面層22により、対向面20と製造部品の粉末24との間の反応が防がれる。
【0032】
本例の部品製造において使用される、高密度化する材料は、金属合金、TiAl合金(チタンアルミニウム合金)やレネ系に属するニッケル系超合金等である。
【0033】
有利なことに、対向面の材料および製造部品24の材料が、焼結開始・終了時温度および高密度化度合において、焼結時に同様の挙動を示すように、対向面20の材料を選択する。
【0034】
製造部品に合金が使用される場合、対向面に使用されるセラミックとして、TiAlからなる部品に対してはATZ(アルミナ強化ジルコニア)を、レネ系から選択されるニッケル系超合金からなる部品に対してはYSZ(イットリア安定化ジルコニア)が選択される。より一般的には、対向面に使用されるセラミックの焼結開始時温度(あるいは焼結終了時温度)は、製造部品の金属合金の焼結開始時温度以上となっている(あるいは焼結終了時温度よりも高くなっている)。
【0035】
また、高密度化する材料24の、一軸圧力下のSPS焼結により、本例(-10%~-45%の収縮が予想される)の対向面20が高密度化される。材料24および対向面20は、SPS成形型(不図示)に投入されている。
【0036】
この高密度化を予測するにあたり、SPS焼結の一軸圧力「F」がかかる方向に沿った部品24の収縮(工程2d)を加味し、各対向面部20の大きさを増加させる。したがって、部品24の形状は、事前に伸長係数「Fe」の分だけ「伸長」させておき、部品の大きさにおける収縮を補うようにする。係数Feは、高密度化後の粉末の密度に対する、高密度化前の粉末の密度の比によって決定される。有利なことに、係数Feの値を変更した場合、対向面部20の単純化された形状もまた、変更可能である。
【0037】
したがって、本実施形態では、一軸圧力「F」により、対向面20の最大高さは、40%減となる。つまり高さは、値「H」(工程2c)から値「h」(工程2d)にまで減少する。高さが減少することにより、部品24dを所望の高さに製造することが可能となる。もともとの高さ「H」は、係数Feを適用することにより、増加されたものである。凝集された対向面および部品は、参照符号20dおよび24dが付されており、容易に分離可能である(工程2e)。
【0038】
図3aおよび図3bの図示例では、部30aおよび30bとしての、ATZセラミックからなる対向面が示されている。本例において、図1aおよび図1bに示すように、TiAlからなる部品1が製造され、ATZセラミックおよびTiAl合金は、焼結において同様の挙動を示す。これらの対向面部30aおよび30bは、接合面「P」上の接続面40aおよび40bを有する(図1a参照)。
【0039】
有利なことに、200℃~600℃の間、本例では、400℃の温度で、かつ、0.1℃/分~1℃/分、本例では、0.5℃/分の温度上昇率で熱処理を行うことで、対向面部30aおよび30bからバインダを取り出す。本工程により、3Dプリントで対向面部を作製している間、セラミック粉末内に入り込んだ有機化合物を除去することができる。
【0040】
好ましくは、バインダを取り出した後、予備焼結を行う。予備焼結とは、より高い温度、例えば、使用する材料に合わせて、600℃~1,500℃、本例では、1,200℃の温度で、バインダを取り出した後の対向面部30aおよび30bに処理を施すものである。熱処理により、対向面部の高密度化を開始することが出来る。これにより、機械的強度を高め、後述のように、一つあるいはそれ以上の界面層の付与を容易にする。
【0041】
製造部品の、二つの半刻印41aおよび41bは、吹き付けにより、グラファイト42、そして酸化イットリウムをベースとした層が塗布される。これにより、セラミックと、製造部品の材料、本例では、TiAlとの間の反応を防ぐことができる。ステレオリソグラフィによって作製された対向面の場合、対向面が二つの部分に分割されることで、重合されなかったペーストが除去される。さらに、有利なことに、対向面部30aおよび30bは、5mmの最大厚みを有している。これにより、部品を取り出す際のバインダ除去を目的とした焼結・熱処理において、亀裂が発生するリスクを回避することが出来る。
【0042】
図3cを参照すると、二つの半刻印41aおよび41bが、製造部品に対応するように、原板において単一の刻印となるよう、二つの対向面部30aおよび30bがSPS焼結成形型2で接合される。三つの中空ダクト4を介して、この刻印がTiAl粉末で満たされる。これらのダクト4は、対向面部30aの接続面40aとは反対の、面42aを通る(図3a参照)。また、ダクト4により、必要に応じて、余分なTiAl粉末を除去することができる。
【0043】
対向面部30aおよび30bの、一つあるいはそれ以上の外側壁が、有利なことに、開口し得るため、3Dプリントによる対向面部の作製が容易になる。こうした開口空間は、後工程で、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)粉末で満たされる。YSZ粉末の焼結温度は、ATZを使用してなる対向面セラミックの焼結温度と等しい。
【0044】
SPS一軸圧力下の焼結において、セラミックおよび製造部品の金属合金が同時に焼結され、焼結したセラミックは、金属部品を覆う。グラファイトおよび酸化イットリウムの界面層42により(図3aおよび図3b参照)、機械的および/または化学的に部品を解放するため、セラミックは部品から容易に分離する。図4は、セラミック残留物43を取り除く前の、最終的に得られた部品1を示す。
【0045】
本発明は、説明し、例示したものに限定されない。したがって、対向面は、製造部品がアンダーカットを有さないよう、最小限の部位に分割されてもよい。
【0046】
さらに、成形型からの最終的な取り出しを容易にする目的で、場所を制限することなく、局所的に脆い部分に対して、対向面を形成してもよい。
【0047】
さらに、製造部品は、金属合金粉末、セラミック、複合材、あるいは、その他適切な材料から構成され得る。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図3c
図4