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特許7571991土壌厚さ分布と基岩浸透差異性を考慮した流出収集装置および方法
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  • 特許-土壌厚さ分布と基岩浸透差異性を考慮した流出収集装置および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】土壌厚さ分布と基岩浸透差異性を考慮した流出収集装置および方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20241016BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
E02D17/20 106
G09B9/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024027108
(22)【出願日】2024-02-27
【審査請求日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】202310936006.9
(32)【優先日】2023-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】524074644
【氏名又は名称】チャンジャン リバー サイエンティフィック リサーチ インスティテュート オブ チャンジャン ウォーター リソーシーズ コミッション
(73)【特許権者】
【識別番号】524070314
【氏名又は名称】シャンハイ インスティテュート オブ マイクロシステム アンド インフォメーション テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】ウェンジェン タン
(72)【発明者】
【氏名】リンヤオ ドン
(72)【発明者】
【氏名】グアンジュン トン
(72)【発明者】
【氏名】ジーゲン リウ
(72)【発明者】
【氏名】ゾンジェ ファン
(72)【発明者】
【氏名】シャオシャ トン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ユソン シー
(72)【発明者】
【氏名】ウェンタオ シュ
(72)【発明者】
【氏名】ホンヤー ザン
(72)【発明者】
【氏名】ユエポン ワン
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-210778(JP,A)
【文献】特開昭63-055231(JP,A)
【文献】特開2005-016145(JP,A)
【文献】特開平11-319861(JP,A)
【文献】特開2015-014637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
G09B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土槽と、土槽仕切り板と、流出収集槽と、底板と、土槽ベースと、を含み、
前記土槽は、前記土槽仕切り板により容積が等しい左右の2つの透水小土槽と不透水小土槽とに分けられており、
前記流出収集槽は、前記土槽の一端に位置し、地表流と中間流を収集するに用いられ、
前記底板は、透水支持板と不透水支持板に分けられ、該透水支持板と該不透水支持板のそれぞれが前記透水小土槽と前記不透水小土槽内に位置することによって、異なる基岩浸透性の設計を実現し、
前記透水支持板と前記不透水支持板の下方には、支持ブラケットが設けられ、該支持ブラケットが置かれる方向を調整することによって、前記土槽内の異なる土壌厚さ分布の設計を実現することができ、
前記土槽ベースは、前記土槽の下方に位置し、前記土槽を支持して移動させることができ、さらに、異なる勾配に調整するように前記土槽を昇降させるために用いられる
ことを特徴とする土壌厚さ分布と基岩浸透差異性を考慮した流出収集装置。
【請求項2】
前記流出収集槽は、上から下へ前記土槽の一方側に順次設けられた地表流収集槽と、中部中間流収集槽と、下部中間流収集槽とを含み、前記土槽の一方側には、上から下へ地表流排水口と、中部中間流排水口と、下部中間流排水口とが順次設けられ、該地表流収集槽、該中部中間流収集槽および該下部中間流収集槽は、それぞれ地表流排水口、中部中間流排水口および下部中間流排水口と連通している
ことを特徴とする請求項1に記載の土壌厚さ分布と基岩浸透差異性を考慮した流出収集装置。
【請求項3】
前記地表流排水口は、前記土槽の一方側の頂部に位置し、前記地表流排水口の底部は、前記土槽に充填された土壌の表面と面一であり、
土壌層は、前記支持ブラケットの配置方向によって法尻の土が薄くて法肩の土が厚くなるように設計された場合、前記中部中間流排水口の底部は、前記土壌層の底部の逆ろ過層の底部と面一であり、前記土壌層は、前記支持ブラケットの配置方向によって法尻の土が厚くて法肩の土が薄くなるように設計された場合、前記中部中間流排水口は塞がれる必要があり、
前記下部中間流排水口は、前記土槽の底部と面一である
ことを特徴とする請求項2に記載の土壌厚さ分布と基岩浸透差異性を考慮した流出収集装置。
【請求項4】
前記土槽の側壁は可視側板であり、該可視側板は、透明有機ガラス材質であり、前記透水小土槽、前記不透水小土槽内の土壌層のぬれ前線の動き状況をリアルタイムに観測することができる
ことを特徴とする請求項2に記載の土壌厚さ分布と基岩浸透差異性を考慮した流出収集装置。
【請求項5】
前記透水小土槽の底部における前記下部中間流排水口に近接する箇所に水返しが設けられ、
前記水返しの一方側に底部基底流出排水口が設けられ、該水返しの他方側と前記下部中間流排水口との間隔が5cmであり、前記水返しは、基底流出を阻止し、基底流出が引き続き下へ流れて前記下部中間流排水口から流出することを防止するために用いられる
ことを特徴とする請求項2に記載の土壌厚さ分布と基岩浸透差異性を考慮した流出収集装置。
【請求項6】
前記流出収集槽は、前記土槽の底部に設けられた前記底部基底流出排水口に接続された底部基底流出収集槽をさらに含む
ことを特徴とする請求項5に記載の土壌厚さ分布と基岩浸透差異性を考慮した流出収集装置。
【請求項7】
前記透水支持板と前記不透水支持板とに逆ろ過層が平らに敷設され、該逆ろ過層に2層のラス網が重ねて覆われ、該2層のラス網の中間に不織布フィルタが設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の土壌厚さ分布と基岩浸透差異性を考慮した流出収集装置。
【請求項8】
前記支持ブラケットは、両側が直角台形であり、底部が矩形であり、両側の直角台形の内部には、垂直支持ロッドと水平支持ロッドとが設けられており、前記支持ブラケットの底部の矩形の中部には支持ロッドがない
ことを特徴とする請求項7に記載の土壌厚さ分布と基岩浸透差異性を考慮した流出収集装置。
【請求項9】
前記土槽ベースは、ベース支持ブラケットと、ユニバーサルホイールと、油圧昇降機と、を含み、
前記ベース支持ブラケットは、矩形鉄骨構造であり、底部の長さ及び幅が前記土槽の長さ及び幅と等しく、底部の四隅に4つの前記ユニバーサルホイールがあり、
前記土槽の底部には、前記土槽の底部と前記ベース支持ブラケットの一端の頂部とを接続する大型ヒンジが設けられており、前記土槽は、該大型ヒンジの周りに回動可能であり、
前記油圧昇降機は、前記ベース支持ブラケットに固定され、前記油圧昇降機の支柱位置と前記土槽の底部とが大型ヒンジを介して接続され、前記油圧昇降機の支柱の昇降を調整することによって、前記土槽の勾配を0°~30°の範囲内で変化させることができる
ことを特徴とする請求項1に記載の土壌厚さ分布と基岩浸透差異性を考慮した流出収集装置。
【請求項10】
土壌厚さ分布と基岩浸透差異性を考慮した流出収集方法であって、
前記流出収集方法は、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置を用いて行われ、ステップ1~8を含み、
ステップ1において、前記透水小土槽と前記不透水小土槽における前記支持ブラケットの配置方向を調整し、2つの小土槽の土壌厚さ分布を一致させ、前記透水支持板、前記不透水支持板をそれぞれ前記透水小土槽と前記不透水小土槽における前記支持ブラケットに置き、次に逆ろ過層、2層のラス網を順次敷設し、最後に土壌サンプルを2つの小土槽に充填して使用に備え、
ステップ2において、土槽が一定の設計勾配になるように前記土槽ベースの油圧昇降機を調整し、
ステップ3において、特定の研究エリアに応じて4種の降雨強度を設計し、各設計の降雨強度での流出発生時間長を45minに設計し、最初の5minで1minおきに流出サンプルを取り、後の40minで5minおきに流出サンプルを取り、各回の降雨が終了した後、30min休止してから次回の降雨を行い、以上のサンプリング過程を繰り返し、
ステップ4において、設計の降雨強度で降雨を開始し、前記流出収集槽に水が滴下した場合、水受け容器を用いてある特定の時間帯内に地表流、中間流および基底流出をそれぞれ受け取り、ステップ3に従って4種の設計の降雨強度の降雨及び流出のサンプリングを順次完了し、
ステップ5において、水受け容器における泥水サンプルの重量を秤量してMaとし、水受け容器を静置し、泥水サンプルにおける土砂を乾燥させ、乾燥後の土砂の重量を量ってMbとし、式(1)を用いて、地表流、中間流および基底流出の流出率をそれぞれ算出し、
【数1】
ただし、Qは、流出率(L/min)であり、Maは、泥水サンプルの重量(g)であり、Mbは、乾燥後の土砂の重量(g)であり、ρは、水密度(1.0g/cm3)であり、tは、流出サンプリング時間(s)であり、
ステップ6において、式(2)を用いて単位時間内の一定面積内の土砂の輸送質量、すなわち侵食レートDを算出し、
【数2】
ただし、Dは侵食レート(g/(m2・s))であり、Mbは、乾燥後の土砂の重量(g)であり、bは土槽の幅(m)であり、Lは土槽の長さ(m)であり、tは流出サンプリング時間(s)であり、
ステップ7において、第4種の設計の降雨強度条件での最後1回の降雨及び流出のサンプリングの受取が完了した後、実験を終了し、2つの小土槽における土壌サンプルを取り出し、土槽を洗い流し、土槽の勾配を調整し、全ての設計の勾配条件での降雨・流出の観測試験が全部完了するまで、ステップ1からステップ7を繰り返して、別の設計の勾配条件での降雨・流出の観測試験を行い、
ステップ8において、同じ土壌厚さ分布条件で異なる設計の降雨強度と異なる設計の勾配の降雨試験が全部完了した後、前記支持ブラケットの配置方向を調整し、ステップ1からステップ7を繰り返して、別の土壌厚さ分布の設計条件での試験を行い、土壌厚さ分布が法肩が薄くて法尻が厚くなるように設計され下部中間流排水口を利用して中間流を収集する必要がある場合、ステップ1に記載の土壌充填操作を実行する前に、有機ガラス板およびシーラントで2つの小土槽の中部中間流排水口を封止することによって、土壌層における中間流が中部中間流排水口から流出することを防止する、
ことを特徴とする土壌厚さ分布と基岩浸透差異性を考慮した流出収集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工降雨条件での斜面流出観測の技術分野に関し、具体的には、土壌厚さ分布と基岩浸透差異性を考慮した流出収集装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山洪災害は、その突発性が強く、分布が広く、破壊力が大きいという特徴により、国民経済及び国民の生命・財産に深刻な危害を与える。山間部での豪雨および連続降雨は、洪水集中を引き起こし、洪水の移動は、山崩れ、土石流などの複雑な多重災害を誘発し、それにより、人間の活動領域が被災してしまう。豪雨および連続降雨条件下での山間部の小流域の流出発生(runoff generation)メカニズムと過程を研究することは、山間部の山洪災害防御技術の向上に重要な意義がある。
【0003】
豪雨および連続降雨条件下での流出発生(runoff generation)メカニズムの研究について、現在、室内で降雨試験を人工模擬し、土槽を利用して異なる降雨条件下での流出発生(runoff generation)を収集して関連分析研究を行う方法が多く採用されている。しかし、現在、降雨試験に用いられる土槽は、設計上、依然としてある程度制限され、山間部の小流域斜面の典型的な特徴をよく表すことができない。山間部の小流域の地形は、起伏が大きく、土壌厚さ分布が不均一であり、基岩浸透性には大きく差異している。既存の土槽の多くは、同じ土壌厚さ分布及び同じ基岩浸透性の条件下での流出発生(runoff generation)過程しかシミュレートできない。そして、1回の降雨試験は、単一の降雨強度、単一の地表面(underlying surface)条件しか設定できないことが多く、異なる回の降雨の条件での試験は、降雨器の調整、再盛土、場所条件の変化により試験誤差を引き起こすことが多い。なお、土槽は、不透明な材質で製造されているものが多く、降雨中に土壌におけるぬれ前線の動き状況をリアルタイムに観察することができない。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、従来技術の不足に対して、土壌厚さ分布と基岩浸透差異性を考慮した流出収集装置および方法を提供し、該装置は、同一の土槽で異なる土壌厚さ分布、異なる基岩浸透性条件の設定を実現し、かつ、異なる降雨強度の連続降雨により、異なる降雨条件での連続的な流出発生(runoff generation)過程を収集し、降雨強度標定、再盛土、場所変化などの外的条件による試験誤差を低減することができると同時に、土壌におけるぬれ前線の動き状況をリアルタイムに観測することができ、これによって、降雨条件での斜面流出発生(runoff generation)過程の精確な記録および分析を実現することができます。
【0005】
上記目標を達成するために、本発明は、以下の技術方案を採用する。
【0006】
土壌厚さ分布と基岩浸透差異性を考慮した流出収集装置であって、土槽と、土槽仕切り板と、流出収集槽と、底板と、土槽ベースと、を含み、土槽は、前記土槽仕切り板により容積が等しい左右の2つの透水小土槽と不透水小土槽とに分けられており、流出収集槽は、土槽の一端に位置し、地表流と中間流を収集するに用いられ、底板は、透水支持板と不透水支持板に分けられ、透水支持板と不透水支持板のそれぞれが透水r小土槽と不透水小土槽内に位置することによって、異なる基岩浸透性の設計を実現し、透水支持板と不透水支持板の下方には、支持ブラケットが設けられ、支持ブラケットが置かれる方向を調整することによって、土槽内の異なる土壌厚さ分布の設計を実現することができ、土槽ベースは、土槽の下方に位置し、土槽を支持して移動させることができ、さらに、異なる勾配に調整するように土槽を昇降させるために用いられる。
【0007】
さらに、前記流出収集槽は、上から下へ土槽の一方側に順次設けられた地表流収集槽と、中部中間流収集槽と、下部中間流収集槽とを含み、土槽の一方側には、上から下へ地表流排水口と、中部中間流排水口と、下部中間流排水口とが順次設けられ、地表流収集槽、中部中間流収集槽、下部中間流収集槽は、それぞれ地表流排水口、中部中間流排水口および下部中間流排水口と連通している。
【0008】
さらに、前記地表流排水口は、土槽の一方側の頂部に位置し、地表流排水口の底部は、土槽に充填された土壌の表面と面一であり、土壌層は、支持ブラケットの配置方向によって法尻の土が薄くて法肩の土が厚くなるように設計された場合、中部中間流排水口の底部は、土壌層の底部の逆ろ過層の底部と面一であり、土壌層は、支持ブラケットの配置方向によって法尻の土が厚くて法肩の土が薄くなるように設計された場合、中部中間流排水口は塞がれる必要があり、下部中間流排水口は、土槽の底部と面一である。
さらに、前記土槽の側壁は、可視側板であり、前記可視側板は、透明有機ガラス材質であり、透水小土槽、不透水小土槽内の土壌層のぬれ前線の動き状況をリアルタイムに観測することができる。
【0009】
さらに、前記透水小土槽の底部における下部中間流排水口に近接する箇所に水返しが設けられ、水返しの一方側に底部基底流出排水口が設けられ、水返しの他方側と下部中間流排水口との間隔が5cmであり、水返しは、基底流出を阻止し、基底流出が引き続き下へ流れて下部中間流排水口から流出することを防止するために用いられる。
【0010】
さらに、前記流出収集槽は、土槽の底部に設けられた底部基底流出排水口に接続された底部基底流出収集槽をさらに含む。
【0011】
さらに、前記透水支持板と不透水支持板とに逆ろ過層が平らに敷設され、逆ろ過層に2層のラス網が重ねて覆われ、2層のラス網の中間に不織布フィルタが設けられている。
【0012】
さらに、前記支持ブラケットは、両側が直角台形であり、底部が矩形であり、両側の直角台形の内部には、垂直支持ロッドと水平支持ロッドとが設けられており、支持ブラケットの底部の矩形の中部に支持ロッドがない。
【0013】
さらに、前記土槽ベースは、ベース支持ブラケットと、ユニバーサルホイールと、油圧昇降機とを含み、ベース支持ブラケットは、矩形鉄骨構造であり、底部の長さ及び幅が土槽の長さ及び幅と等しく、底部の四隅に4つのユニバーサルホイールがあり、土槽の底部には、土槽の底部とベース支持ブラケットの一端の頂部とを接続する大型ヒンジが設けられており、土槽は、大型ヒンジの周りに回動可能であり、油圧昇降機は、ベース支持ブラケットに固定され、油圧昇降機の支柱位置と土槽の底部とが大型ヒンジを介して接続され、油圧昇降機の支柱の昇降を調整することによって、土槽の勾配を0°~30°の範囲内で変化させることができる。
【0014】
土壌厚さ分布と基岩浸透差異性を考慮した流出収集方法であって、上記装置を用いて行われ、ステップ1~8を含み、
ステップ1において、透水小土槽(101)と不透水小土槽(102)における支持ブラケット(405)の配置方向を調整し、2つの小土槽の土壌厚さ分布を一致させ、透水支持板(401)、不透水支持板(402)をそれぞれ透水小土槽(101)と不透水小土槽(102)における支持ブラケット(405)に置き、次に逆ろ過層(403)、2層のラス網(404)を順次敷設し、最後に土壌サンプルを2つの小土槽に充填して使用に備え、
ステップ2において、土槽が一定の設計勾配になるように土槽ベース(5)の油圧昇降機(503)を調整し、
ステップ3において、特定の研究エリアに応じて4種の降雨強度を設計し、各設計の降雨強度での流出発生(runoff generation)時間長を45minに設計し、最初の5minで1minおきに流出サンプルを取り、後の40minで5minおきに流出サンプルを取り、各回の降雨が終了した後、30min休止してから次回の降雨を行い、以上のサンプリング過程を繰り返し、
ステップ4において、設計の降雨強度で降雨を開始し、流出収集槽(3)に水が滴下した場合、水受け容器を用いてある特定の時間帯内に地表流、中間流および基底流出をそれぞれ受け取り、ステップ3に従って4種の設計の降雨強度の降雨及び流出のサンプリングを順次完了し、
ステップ5において、水受け容器における泥水サンプルの重量を秤量してMaとし、水受け容器を静置し、泥水サンプルにおける土砂を乾燥させ、乾燥後の土砂の重量を量ってMbとし、式(1)を用いて、地表流、中間流および基底流出の流出率をそれぞれ算出し、
【数1】
ただし、Qは、流出率(L/min)であり、Maは、泥水サンプルの重量(g)であり、Mbは、乾燥後の土砂の重量(g)であり、ρは、水密度(1.0g/cm3)であり、tは、流出サンプリング時間(s)であり、
ステップ6において、式(2)を用いて単位時間内の一定面積内の土砂の輸送質量、すなわち侵食レートDを算出し、
【数2】
ただし、Dは侵食レート(g/(m2・s))であり、Mbは、乾燥後の土砂の重量(g)であり、bは土槽の幅(m)であり、Lは土槽の長さ(m)であり、tは流出サンプリング時間(s)であり、
ステップ7において、第4種の設計の降雨強度条件での最後1回の降雨及び流出のサンプリングの受取が完了した後、実験を終了し、2つの小土槽における土壌サンプルを取り出し、土槽を洗い流し、土槽の勾配を調整し、全ての設計の勾配条件での降雨・流出の観測試験が全部完了するまで、ステップ1からステップ7を繰り返して、別の設計の勾配条件での降雨・流出の観測試験を行い、
ステップ8において、同じ土壌厚さ分布条件で異なる設計の降雨強度と異なる設計の勾配の降雨試験が全部完了した後、支持ブラケット405の配置方向を調整し、ステップ1からステップ7を繰り返して、別の土壌厚さ分布の設計条件での試験を行う。土壌厚さ分布が法肩が薄くて法尻が厚くなるように設計され下部中間流排水口を利用して中間流を収集する必要がある場合、ステップ1に記載の土壌充填操作を実行する前に、有機ガラス板およびシーラントで2つの小土槽の中部中間流排水口(105)を封止することによって、土壌層における中間流が中部中間流排水口(105)から流出することを防止する。
【0015】
本発明は、従来の技術に比べて、以下のような際立った有益な効果を有する。
【0016】
1、本発明は、従来の土槽における単一の土壌厚さの設計、単一の基岩浸透性の設計を変更し、調節可能な可動支持ブラケットと透水および不透水の支持板として変えて、異なる土壌厚さ分布、異なる基岩浸透性の変化した設計を実現し、山間部の小流域斜面の土壌厚さ分布と基岩浸透性の差異性の特徴をよりリアルに反映することができ、試験をより実際の状況に合わせる。
【0017】
2、本発明は、従来の降雨流出収集試験における一回の降雨試験に単一の降雨強度、単一の地表面の設計しか設定できないことを変更し、大土槽を2つの小土槽に分けることを採用し、同一の土槽内で異なる地表面条件の設定を実現することができ、同時に4種の設計された降雨強度を採用して同一の土槽に対して連続的に降雨し、降雨強度の調整、再盛土、場所条件の変化による試験誤差を低減させ、試験結果をより精確にする。
【0018】
3、本発明は、一般的な土槽に従がって地表流と中間流収集槽を設けることに加え、本発明は、基底流出収集槽をさらに設け、降雨中、土壌サンプルによって生じた全ての流出成分をより完全に収集することができる。
【0019】
4、本発明は、可視側板によって降雨過程におけるぬれ前線の動き過程をリアルタイムに観測し、土壌における水分の輸送過程をより直感的、精確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施例に係る土壌厚さ分布および基岩浸透差異性を考慮した流出収集装置の構造概略図である。
図2】本発明の実施例に係る土槽の平面構造図である。
図3】本発明の実施例に係る土槽の正面構造概略図である。
図4】本発明の実施例に係る底板の方向を変更した後の構造概略図である。
図5】本発明の実施例に係る支持ブラケットの斜視構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施例における目的、技術方案および利点をより明確にするために、以下、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術方案を明確且つ完全に説明し、説明された実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではないことが明らかである。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をせずに取得した他の全ての実施例は、本発明の権利保護範囲に属する。
【0022】
図1に示すように、本発明の実施例は、土槽1と、土槽仕切り板2と、流出収集槽3と、底板4と、土槽ベースと、を含む土壌厚さ分布と基岩浸透差異性を考慮した流出収集装置を提供する。土槽1は、土槽仕切り板2により2つの小土槽に分けられ(図2参照)、それぞれ透水小土槽101と不透水小土槽102とであり、2つの小土槽のそれぞれの一端に、地表流、中間流および基底流出を収集する流出収集槽3を有する。
【0023】
前記土槽1内には、底板4が設けられており、2つの小土槽内の底板4は、それぞれ透水性および不透水性を有し、すなわち、透水小土槽101内の底板4は透水性を有し、不透水小土槽102内の底板4は不透水性を有する。土槽1の下方には土槽ベース5があり、土槽1の勾配を調整することができ、土槽1を室内で水平移動させることもできる。試験開始時に、土壌を所定の設計基準に従って2つの小土槽にそれぞれ充填するとともに、土槽1が設計の勾配を維持するように土槽ベース5を調整する。設計の降雨強度を調整して降雨を開始した後、流出収集槽3に水が滴下した場合、水受け容器で地表流、中間流および基底流出をそれぞれ受け取る。
【0024】
具体的には、図2図3を参照し、土槽1は、透水小土槽101と、不透水小土槽102と、可視側板103と、地表流排水口104と、中部中間流排水口105と、下部中間流排水口106と、水返し107と、底部基底流出排水口108とを含む。地表流排水口104は、土槽1の一方側の頂部に位置し、地表流排水口104の底部は、土槽1に充填された土壌の表面と面一であり、中部中間流排水口105の底部は、土壌の表面から25cmだけ離れ、下部中間流排水口106は、土槽1の底部と面一である。可視側板103は、透明有機ガラス材質であり、土槽1の側壁として、土槽内の土壌ぬれ前線の動き状況をリアルタイムに観察することができる。水返し107は、不透水性のプラスチック材質であり、幅が50cm、高さが2cm、厚さが2cmであり、下部中間流排水口106と底部基底流出排水口108との間に位置し、水返し107の一方側は、底部基底流出排水口108であり、他方側は、下部中間流排水口106との間隔が5cmであり、透水小土槽101において土壌による基底流出は、土槽1の底部に流れ、土槽1が一定の勾配を有するため、基底流出は、土槽1の底部に沿って上から下に流れ、最終的に底部基底流出排水口108に集まって流出し、水返し107は、基底流出を阻止することができ、透水小土槽101の土壌における基底流出が下部中間流排水口106から流出することを防止することができる。
【0025】
具体的には、図3図4を参照し、前記流出収集槽3は、上から下へ順次設けられた地表流収集槽301と、中部中間流収集槽302と、下部中間流収集槽303と、底部基底流出収集槽304とを含む。ここに、地表流収集槽301、中部中間流収集槽302、下部中間流収集槽303の長さは、それぞれ40cm、25cm、10cmであり、異なる流出を同時に収集することを確保できる。地表流収集槽301は、地表流排水口104に接続されており、中部中間流収集槽302は、中部中間流排水口105に接続されており、下部中間流収集槽303は、下部中間流排水口106に接続されている。基底流出収集槽304は、長さが10cmであり、底部基底流出排水口108に接続されている。
【0026】
具体的には、図4を参照し、底板4は、透水支持板401と、不透水支持板402と、逆ろ過層403と、ラス網404と、支持ブラケット405とを含む。透水支持板401は、透水小土槽101に位置し、不透水支持板402は、不透水小土槽102に位置する。透水支持板401、不透水支持板402は、いずれも厚さが1.5cmの鋼製矩形板であり、長さが200cm、幅が50cmである。透水支持板401には、内径が1cm以下の円形孔が均一に分布され、円形孔の間隔は、2cm以下であり、不透水支持板402には孔がない。逆ろ過層403は、粒径が2cm以上の粗砂であり、透水支持板401、不透水支持板402に平らに敷設され、厚さが3cmである。ラス網404は、合計で2層であり、メッシュ幅が0.5cmであり、逆ろ過層403に重ねて被覆され、2層のラス網404の中間には、孔径が0.3cmの不織布フィルタが1層あり、2層のラス網404の全体の厚さが0.5cmである。
【0027】
具体的には、図5を参照し、支持ブラケット405は、ねじ節鉄筋鉄骨構造であり、鉄筋の直径が1cm以上である。支持ブラケット405の両側は、直角台形であり、底部の矩形によって接続して固定され、底部の矩形は、長さが150cmであり、幅が50cmである。直角台形は、上底が20cmであり、下底が5cmであり、両側の直角台形の内部には、2本の垂直支持ロッドおよび2本の水平支持ロッドが均一に分布されている。透水小土槽101における基底流出が土槽の底部をスムーズに通って底部基底流出排水口108に流入することを確保するために、支持ブラケット405の底部の矩形の中部に支持ロッドがない。
【0028】
具体的には、図4に示すように、土槽ベース5は、ベース支持ブラケット501と、ユニバーサルホイール502と、油圧昇降機503とを含む。ベース支持ブラケット501は、矩形鉄骨構造であり、底部の長さ及び幅は土槽1の長さ及び幅と等しく、底部の四隅に4つのユニバーサルホイール502がある。ベース支持ブラケット501の一端の頂部には、土槽1の底部に接続される大型ヒンジがあり、該大型ヒンジから下部中間流排水口106までの距離は40cmであり、土槽1は、大型ヒンジの周りに回動可能である。油圧昇降機503は、ベース支持ブラケット501に固定され、油圧昇降機503の支柱が大型ヒンジを介して土槽1の底部に接続され、該大型ヒンジから下部中間流排水口106までの距離は160cmであり、油圧昇降機503の支柱の昇降を調整することによって、土槽の勾配を0°~30°の範囲内で変化させることができる。
【0029】
本発明の土槽1は、土槽仕切り板2により2つの小土槽に分けられ、2つの小土槽に透水支持板401と不透水支持板402がそれぞれ置かれ、透水と不透水の2種の異なる基岩浸透性の設計を実現する。また、土槽1における底板支持ブラケット405の方向を調整することによって、透水支持板401と不透水支持板402をそれぞれ一定の角度で傾斜させて2つの小土槽に置くようにして、試験土壌サンプルを一定の設計指標に従って土槽1に充填させることで、同一の土槽において土槽の上部下部の異なる土壌厚さ分布の設計を実現することができる。土槽ベース5の油圧昇降機503を調整することによって、土槽1の勾配を設計値に調整する。異なる降雨強度条件下で、一定時間間隔内の流出発生(runoff generation)量を流出収集槽3により収集し、異なる降雨条件下での流出発生(runoff generation)の法則を算出して分析することによって、異なる土壌厚さ分布、異なる基岩浸透性条件下での流出発生(runoff generation)過程および法則を分析する。
【0030】
本発明の実施例は、土壌厚さ分布および基岩浸透差異性を考慮した流出収集方法をさらに提供し、当該流出収集方法は、上記装置を用いて行われ、具体的なステップは、以下のとおりである。
【0031】
ステップ1:透水小土槽101と不透水小土槽102における支持ブラケット405の配置方向を調整し、2つの小土槽の土壌厚さ分布を一致させ(例えば、いずれも法肩が厚くて法尻が薄い)、透水支持板401、不透水支持板402をそれぞれ透水小土槽101と不透水小土槽102における支持ブラケット405に置き、次に逆ろ過層403、2層のラス網404を順次敷設し、最後に土壌サンプルを2つの小土槽に充填して使用に備える。
ステップ2:土槽が一定の設計勾配、例えば15°になるように土槽ベース5の油圧昇降機503を調整する。
ステップ3:特定の研究エリアに応じて4種の降雨強度を設計し、各設計の降雨強度での流出発生(runoff generation)時間長を45minに設計し、最初の5minで1minおきに流出サンプルを取り、後の40minで5minおきに流出サンプルを取り、各回の降雨が終了した後、30min休止してから次回の降雨を行い、以上のサンプリング過程を繰り返す。
ステップ4:設計の降雨強度で降雨を開始し、流出収集槽3に水が滴下した場合、水受け容器を用いてある特定の時間帯内に地表流、中間流および基底流出をそれぞれ受け取り、ステップ3に従って、4種の設計の降雨強度の降雨及び流出のサンプリングを順次完了する。
ステップ5:水受け容器における泥水サンプルの重量を秤量してMaとし、水受け容器を静置し、泥水サンプルにおける土砂を乾燥させ、乾燥後の土砂の重量を量ってMbとし、式(1)を用いて、地表流、中間流および基底流出の流出率をそれぞれ算出する。
【0032】
【数3】
ただし、Qは、流出率(L/min)であり、Maは、泥水サンプルの重量(g)であり、Mbは、乾燥後の土砂の重量(g)であり、ρは、水密度(1.0g/cm3)であり、tは、流出サンプリング時間(s)である。
ステップ6:式(2)を用いて単位時間内の一定面積内の土砂の輸送質量、すなわち侵食レートDを算出する。
【0033】
【数4】
ただし、Dは侵食レート(g/(m2・s))であり、Mbは、乾燥後の土砂の重量(g)であり、bは土槽の幅(m)であり、Lは土槽の長さ(m)であり、tは流出サンプリング時間(s)である。
【0034】
ステップ7:第4種の設計の降雨強度条件での最後1回の降雨及び流出のサンプリングの受取が完了した後、実験を終了し、2つの小土槽における土壌サンプルを取り出し、土槽を洗い流し、土槽の勾配を調整し、全ての設計の勾配条件での降雨・流出の観測試験が全部完了するまで、ステップ1からステップ7を繰り返して、別の設計の勾配条件での降雨・流出の観測試験を行う。
【0035】
ステップ8:同じ土壌厚さ分布条件で異なる設計の降雨強度と異なる設計の勾配の降雨試験が全部完了した後、支持ブラケット405の配置方向を調整し、ステップ1からステップ7を繰り返して、別の土壌厚さ分布の設計条件での試験を行う。土壌厚さ分布が法肩が薄くて法尻が厚くなるように設計され下部中間流排水口106を利用して中間流を収集する必要がある場合、ステップ1に記載の土壌充填操作を実行する前に、有機ガラス板およびシーラントで2つの小土槽の中部中間流排水口105を封止することによって、土壌層における中間流が中部中間流排水口105から流出することを防止する。設計の降雨強度と土槽の勾配のみを調整して、ステップ1からステップ7を繰り返し、同一の土壌厚さ分布条件での異なる設計の降雨強度と異なる設計の勾配の降雨試験が全部完了した後、支持ブラケット405の配置方向を調整して、他の条件での降雨試験を行ってもよい。
【0036】
以上は、本発明の具体的な実施形態に過ぎず、本発明の権利保護範囲は、これに限定されず、当業者が本発明に開示された技術範囲内で容易に想到できる変更または置換は、本発明の権利保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲を基準にすべきである。

【要約】      (修正有)
【課題】土壌厚さ分布と基岩浸透差異性を考慮した改善された流出収集装置を提供する。
【解決手段】流出収集装置は、土槽と、土槽仕切り板と、流出収集槽と、底板と、土槽ベースと、を含み、土槽は、土槽仕切り板により透水小土槽と不透水小土槽とである2つの小土槽に分け、流出収集槽は、地表流、中間流および基底流出を収集するために用いられ、底板は、透水支持板と不透水支持板とに分けられ、それぞれ2つの小土槽内に位置することによって、異なる基岩浸透性の設計を実現し、支持板の下方には、配置方向を調整可能な支持ブラケットが設けられ、土槽内の異なる土壌厚さ分布の設計を実現することができ、土槽ベースは、土槽の下方に位置し、土槽を支持して移動させるとともに、異なる勾配に調整することができる。典型的な山間部斜面の異なる地表面形態条件での連続的な降雨流出の流出発生過程を良好にシミュレーションおよび分析することができる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5