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  • 特許-微細素子の製造方法及び微細素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】微細素子の製造方法及び微細素子
(51)【国際特許分類】
   B81C 1/00 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
B81C1/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020132954
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2022029596
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-08-03
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「多層エレクトレット集積型CMOS-MEMS振動発電素子の創製」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願、令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「極性分子配向薄膜を備えた新規振動発電器の創生」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(73)【特許権者】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】山根 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 有弥
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特許第7341463(JP,B2)
【文献】特許第7297280(JP,B2)
【文献】特開2011-036089(JP,A)
【文献】特許第5396761(JP,B2)
【文献】特許第3363359(JP,B2)
【文献】特開2017-099208(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0174281(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102290968(CN,A)
【文献】Yuna Tanaka,Self-Assembled Electret for Vibration-Based Power Generator,SCIENTIFIC REPORTS,(2020) 10:6648,2020年04月20日,1-8,https://www.nature.com/articles/s41598-020-63484-9.pdf
【文献】エネルギーヘーベスティングデバイスの検討(2),第61回応用物理学会春季学術講演会 講演予稿集,2014年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量素子、抵抗素子やメモリセルなどを基板上に形成する半導体集積回路上に、固定電極と前記固定電極と間隔を隔てて揺動可能に支持された、微細孔を有する可動電極とで構成されたMEMS構造体を形成する微細素子の製造方法であって、
帯電処理不要で、真空蒸着可能な自己組織化エレクトレットを、前記微細孔を通過させて前記MEMS構造体内に蒸着させるようにした微細素子の製造方法。
【請求項2】
第1犠牲層が形成された第1層を形成する第1工程と、
前記第1層の上に第2犠牲層が形成された複数の層を積層する第2工程と、
前記第1犠牲層及び第2犠牲層を選択的にエッチングして除去することで、前記第1層では前記固定電極を形成し、前記第1層の上に形成された前記複数の層では微細孔を有する前記可動電極を形成する第3工程と、
前記自己組織化エレクトレットを、前記微細孔を通過させて前記MEMS構造体内に蒸着させる第4工程と、を含んでなる請求項1に記載の微細素子の製造方法。
【請求項3】
前記半導体集積回路上に密着層を形成し、引き続きシード層を形成する第5工程と、
前記シード層上に開口を有するマスクパターンの犠牲層を形成する第6工程と、をさらに含み、
前記第1工程では、前記第6工程の前記開口に露出する前記シード層を成長させて厚みを厚くすることで前記第1層を形成し、
前記第2工程では、前記第2犠牲層のみで形成された第2層を形成し、そして、その第2層の上に前記第5工程及び前記第6工程を実施することで前記第2犠牲層が形成された第3層を積層し、
前記第3工程では、前記第1犠牲層及び第2犠牲層を選択的にエッチングして除去することで、前記第1層では前記固定電極を形成し、前記第1層の上に形成された前記第2層及び前記第3層では微細孔を有する前記可動電極を形成する請求項に記載の微細素子の製造方法。
【請求項4】
前記第2工程では、前記第3層の上に、前記第5工程及び前記第6工程を繰り返し実施することで前記第2犠牲層が形成された複数の層が形成されるようになっている請求項3に記載の微細素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細素子の製造方法及び微細素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて作製されたものとして、半導体集積回路(LSI)とMEMS構造体が一つのチップ上に形成された集積化MEMS素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、このような集積化MEMS素子に、半永久的に電荷を保持する誘電体であるエレクトレットを形成するようにすれば、センサ感度向上や低消費電力化、発電機能付与等、集積化MEMS素子の性能が向上することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-140867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エレクトレットを形成するにあたっては、高温・高電圧印加等の帯電処理が必要であることから、集積化MEMS素子にエレクトレットを形成すると、半導体集積回路(LSI)やMEMS構造体を破壊する可能性があるという問題があった。そのため、集積化MEMS素子にエレクトレットを形成することができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、集積化MEMS素子にエレクトレットを形成することができる微細素子の製造方法及び微細素子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0008】
請求項1に係る微細素子の製造方法は、容量素子、抵抗素子やメモリセルなどを基板(2)上に形成する半導体集積回路(3)上に、固定電極(固定電極部40)と前記固定電極(固定電極部40)と間隔を隔てて揺動可能に支持された、微細孔(4a)を有する可動電極(可動電極部41)とで構成されたMEMS構造体(4)を形成する微細素子の製造方法であって、
帯電処理不要で、真空蒸着可能な自己組織化エレクトレット(11)を、前記微細孔(4a)を通過させて前記MEMS構造体(4)内に蒸着させるようにしたことを特徴としている。
【0009】
求項2に係る微細素子の製造方法は、上記請求項1に記載の微細素子の製造方法において、第1犠牲層(G)が形成された第1層(第1層配線M1)を形成する第1工程と、
前記第1層(第1層配線M1)の上に第2犠牲層(G)が形成された複数の層(第2層配線M2~第7層配線M7)を積層する第2工程と、
前記第1犠牲層及び第2犠牲層を選択的にエッチングして除去することで、前記第1層では前記固定電極(固定電極部40)を形成し、前記第1層の上に形成された前記複数の層では微細孔(4a)を有する前記可動電極(可動電極部41)を形成する第3工程と、
前記自己組織化エレクトレット(11)を、前記微細孔(4a)を通過させて前記MEMS構造体(4)内に蒸着させる第4工程と、を含んでなることを特徴としている。
【0010】
求項3に係る微細素子の製造方法は、上記請求項2に記載の微細素子の製造方法において、前記半導体集積回路(3)上に密着層(Ti層40a)を形成し、引き続きシード層(Au層40b)を形成する第5工程と、
前記シード層(Au層40b)上に開口を有するマスクパターン(P)の犠牲層(G)を形成する第6工程と、をさらに含み、
前記第1工程では、前記第6工程の前記開口に露出する前記シード層(Au層40b)を成長させて厚みを厚くすることで前記第1層(第1層配線M1)を形成し、
前記第2工程では、前記第2犠牲層(G)のみで形成された第2層(第2層配線M2)を形成し、そして、その第2層(第2層配線M2)の上に前記第5工程及び前記第6工程を実施することで前記第2犠牲層(G)が形成された第3層(第3層配線M3)を積層し、
前記第3工程では、前記第1犠牲層及び第2犠牲層を選択的にエッチングして除去することで、前記第1層(第1層配線M1)では前記固定電極(固定電極部40)を形成し、前記第1層(第1層配線M1)の上に形成された前記第2層(第2層配線M2)及び前記第3層(第3層配線M3)では微細孔(4a)を有する前記可動電極(可動電極部41)を形成することを特徴としている。
請求項4に係る微細素子の製造方法は、上記請求項3に記載の微細素子の製造方法において、前記第2工程では、前記第3層(第3層配線M3)の上に、前記第5工程及び前記第6工程を繰り返し実施することで前記第2犠牲層(G)が形成された複数の層(第4層配線M4~第7層配線M7)が形成されるようになっていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
請求項に係る発明によれば、自己組織化エレクトレット(11)を、可動電極(可動電極部41)の微細孔(4a)を通過させて、真空蒸着によって、MEMS構造体(4)内に蒸着させているから、半導体集積回路(3)や、MEMS構造体(4)を破壊してしまう事態を防止することができる。これにより、集積化MEMS素子にエレクトレットを形成することができる。さらに、エレクトレットの機能が低下してしまう事態を防止することができる。
【0013】
本発明に係る微細素子の製造方法において、請求項2~4に示す製造方法が好適である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る微細素子を示す斜視図である。
図2】(a)~(c)は、同実施形態に係る基板上に形成された半導体集積回路上に、MEMS構造体を形成する工程を示す一部縦断面図である。
図3】(a)~(b)は、図2に示す同実施形態に係る基板上に形成された半導体集積回路上に、MEMS構造体を形成する工程の続きを示す一部縦断面図、(c)は、MEMS構造体にエレクトレットを形成する工程を示す一部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る微細素子の製造方法及び微細素子を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る微細素子1は、集積化MEMS素子10に自己組織化エレクトレット11が形成されているものである。より詳しく説明すると、集積化MEMS素子10は、基板2と、半導体集積回路3と、MEMS構造体4と、で主に構成されている。基板2は、図1に示すように矩形状に形成され、例えばシリコン基板などにて形成されている。
【0017】
一方、半導体集積回路3は、図1に示すように、基板2上に形成されており、容量素子、抵抗素子やメモリセルなど、種々の素子を有しているものである。
【0018】
MEMS構造体4は、図1に示すように、半導体集積回路3上に形成されており、半導体製造技術による微細加工を施して形成された微小構造である。このMEMS構造体4は、例えば圧力センサ、加速度センサ、ジャイロスコープ、光スキャナ、デジタルミラーデバイス、光変調器等の機械的要素を構成することができる。より詳しく説明すると、MEMS構造体4は、図1に示すように、半導体集積回路3上に固定されている固定電極部40と、固定電極部40と間隔を隔てて設けられた可動電極部41とで構成されており、可動電極部41は、図示はしないが、従来周知の通り、揺動可能に支持部によって支持されている。
【0019】
かくして、上記のように構成される集積化MEMS素子10が一般的に知られている。
【0020】
ところで、このような集積化MEMS素子10に、半永久的に電荷を保持する誘電体であるエレクトレットを形成しようとすると、高温・高電圧印加等の帯電処理が必要である。そのため、集積化MEMS素子10にエレクトレットを形成しようとすると、半導体集積回路3や、MEMS構造体4を破壊してしまう可能性があるという問題があった。それゆえ、集積化MEMS素子10にエレクトレットを形成することができないという問題があった。
【0021】
そこで、本実施形態においては、上記のような集積化MEMS素子10に、自己組織化エレクトレット11を用いて、エレクトレットを形成するようにしている。すなわち、この自己組織化エレクトレット11は、本発明者の一人である田中有弥が発明したもので、帯電処理不要なものであり、真空蒸着可能なものである。なお、この自己組織化エレクトレット11については、詳しくは、国立研究開発法人科学技術振興機構と、国立大学法人千葉大学とが令和2年4月20日に共同で発表した内容に詳しい記載がある(https://www.jst.go.jp/pr/announce/20200420/index.html)。そのため、ここでの詳細な説明は省略することとする。
【0022】
以下、上記のような集積化MEMS素子10に、自己組織化エレクトレット11を用いて、エレクトレットを形成する方法を詳しく説明する。
【0023】
まず、図2(a)に示すように、基板2上に形成された半導体集積回路3上に、例えば、蒸着法により密着層となる薄厚のTi層40aを形成し、引き続き、シード層となる薄厚のAu層40bを形成する。
【0024】
次いで、図2(b)に示すように、第1層配線M1を形成する。より詳しく説明すると、公知のフォトリソグラフィ技術により、各パターンとなる箇所に開口を有するマスクパターンPの犠牲層Gを形成し、電解めっき法により、開口に露出するシード層よりAu層40bの厚みを厚くする(Au層40bを成長させる)。しかして、このようにして、図2(b)に示すように、第1層配線M1が形成されることとなる。なお、この犠牲層Gは、感光性ポリイミドを塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜をフォトリソグラフィ技術によりパターニングすることで、形成したものである。
【0025】
次いで、第1層配線M1上に、犠牲層Gのみの第2層配線M2を形成した後、上記図2(a),(b)の処理を繰り返し、図2(c)に示すように、第2層配線M2の上に、第3層配線M3,第4層配線M4を形成する。そしてさらに、第4層配線M4上に、上記図2(a),(b)の処理を繰り返し、図3(a)に示すように、第5層配線M5,第6層配線M6,第7層配線M7を形成する。
【0026】
ところで、第2層配線M2~第7層配線M7を形成するにあたっては、図1に示すような微細孔4aであるリリースホールが形成されるように、図3(a)に示すように、形成されている。なお、第7層配線M7を形成するにあたっては、犠牲層Gは形成されない。
【0027】
次いで、図3(b)に示すように、犠牲層Gを除去する。これにより、第1層配線M1が固定電極部40となり、第2層配線M2~第7層配線M7が可動電極部41となるMEMS構造体4が、半導体集積回路3上に形成されることとなる。しかして、このようにして、集積化MEMS素子10が形成されることとなる。なお、犠牲層Gを除去するにあたっては、例えば、酸素ガスを用いたドライエッチングプロセスにより、有機材料を選択的にエッチングすることで除去するようにすれば良い。
【0028】
次いで、図3(c)に示すように、真空蒸着による低温プロセス(室温程度)によって、MEMS構造体4の上面に自己組織化エレクトレット11を配置する。そしてさらに、可動電極部41には、微細孔4aが形成されているから、この微細孔4aに、自己組織化エレクトレット11を通過させるようにすれば、MEMS構造体4内に、自己組織化エレクトレット11が配置されることとなる。
【0029】
かくして、このようにして、集積化MEMS素子10に、自己組織化エレクトレット11を用いて、エレクトレットを形成することができることとなる。
【0030】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、自己組織化エレクトレット11を真空蒸着による低温プロセス(室温程度)のみによって、MEMS構造体4に自己組織化エレクトレット11を配置するようにしているから、半導体集積回路3や、MEMS構造体4を破壊してしまう事態を防止することができ、もって、集積化MEMS素子10にエレクトレットを形成することができる。これにより、エレクトレットの自己バイアス効果により集積化MEMS素子10の性能が向上することとなる。例えば、物理・化学センサの感度向上、静電アクチュエータの低消費電力化が実現可能となる。また、集積化MEMS素子10に新しい機能を付加することもできる。例えば、エナジーハーベスティング機能として、集積化MEMS素子による環境振動発電が実現可能となる。
【0031】
なお、本実施形態において示した形状等はあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態においては、犠牲層Gを除去した後、自己組織化エレクトレット11を真空蒸着による低温プロセス(室温程度)によって、MEMS構造体4に自己組織化エレクトレット11を配置するようにしたが、それに限らず、自己組織化エレクトレット11を真空蒸着による低温プロセス(室温程度)によって、MEMS構造体4に自己組織化エレクトレット11を配置するようにした後、犠牲層Gを除去するようにしても良い。しかしながら、このような方法では、犠牲層Gを除去した際、エレクトレットの機能を低下させてしまう危険性がある。そのため、本実施形態のように、犠牲層Gを除去した後、真空蒸着による低温プロセス(室温程度)によって、MEMS構造体4の上面に自己組織化エレクトレット11を配置するようにすれば、エレクトレットの機能が低下してしまう事態を防止することができる。
【0032】
また、本実施形態においては、エレクトレットを形成するにあたって、自己組織化エレクトレット11を用いて形成するようにしたが、それに限らず、帯電処理不要なもので、真空蒸着可能なものであれば、どのようなエレクトレットを用いても良い。
【符号の説明】
【0033】
1 微細素子
2 基板
3 半導体集積回路
4 MEMS構造体
4a 微細孔
10 集積化MEMS素子
11 自己組織化エレクトレット(エレクトレット)
G 犠牲層
図1
図2
図3