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特許7571996紙力増強剤の効果を促進する製紙用添加剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】紙力増強剤の効果を促進する製紙用添加剤
(51)【国際特許分類】
   D21H 21/18 20060101AFI20241016BHJP
   D21H 17/37 20060101ALI20241016BHJP
   D21H 17/44 20060101ALI20241016BHJP
   C08F 20/34 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
D21H21/18
D21H17/37
D21H17/44
C08F20/34
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020195619
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084045
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000142148
【氏名又は名称】ハイモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本多 剛
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-115199(JP,A)
【文献】特開2020-176336(JP,A)
【文献】特開2007-029766(JP,A)
【文献】特開2008-296154(JP,A)
【文献】特開2003-324523(JP,A)
【文献】特開2020-147875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 21/18
D21H 17/37
D21H 17/44
C08F 20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性単量体を全単量体に対し、30質量%~100質量%含む単量体成分を重合して得られる高分子からなる製紙用添加剤であり、該製紙用添加剤を抄紙前の製紙原料に、紙力増強剤添加前あるいは同時に紙力増強剤(純分)に対し、1質量%~100質量%(高分子純分)添加することを特徴とする紙力増強剤の効果促進方法
【請求項2】
前記高分子が、疎水性単量体を含む単量体成分を重合して得られる高分子であることを特徴とする請求項1記載の紙力増強剤の効果促進方法
【請求項3】
疎水性単量体を全単量体に対し、0質量%を超えて~50質量%含む単量体成分を重合して得られる高分子であることを特徴とする請求項2記載の紙力増強剤の効果促進方法
【請求項4】
前記高分子の1質量%水溶液をB型粘度計で回転数60rpmにおいて測定したときの粘度(25℃)が、5~200mPa・sであることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の紙力増強剤の効果促進方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製紙工程における紙力増強剤の効果を促進する製紙用添加剤及び紙力増強剤の効果促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙に強度を付与する紙力増強剤として、ポリアクリルアミド系紙力増強剤がある。ポリアクリルアミド系紙力増強剤はイオン性によりアニオンタイプ、カチオンタイプ、及び両性タイプに分類される。現在では性能の面から、両性タイプの紙力増強剤が主流となっている。両性タイプのポリアクリルアミド系紙力増強剤は、アクリルアミドにカチオン性モノマーとアニオン性モノマー等の各種重合成分を共重合して得られる両性アクリルアミド系水溶性ポリマーよりなる(特許文献1)。両性アクリルアミド系水溶性ポリマーは、ポリイオンコンプレックスを形成する。ポリイオンコンプレックスは、カチオン基とアニオン基の間の静電相互作用により形成される。ポリイオンコンプレックスを形成することで、両性アクリルアミド系水溶性ポリマーは紙力増強効果を発揮することが知られている。
近年古紙のリサイクル化やクローズド化が進むことで、抄紙系内には微細繊維や溶存電解質物質が蓄積され、抄紙系の電気伝導度は上昇傾向にある。このため、特に両性タイプの紙力増強剤はイオンコンプレックスの形成が阻害され、十分な効果が発揮できない状況となっている。しかし、紙力増強剤の添加量を多くすることは水質の悪化を招き、環境上好ましくない。そのため、環境面から、紙力増強剤の添加量を増やすことなくその効果を向上させる必要が生じている。
製紙工程で使用される紙力増強剤の効果を向上させる方法として、例えば、紙力増強剤に特定濃度の酸化剤を接触させる方法が開示されている(特許文献2)。しかし、この方法では、酸化剤の使用による設備への悪影響、歩留向上剤等の製紙用薬品の効果低下等の好ましくない影響が生じる。
【0003】
【文献】特開2012-251252号公報
【文献】特許第6664627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、製紙工程において環境面や設備等に悪影響を与えることなく紙力増強剤の効果を向上させることができる製紙用添加剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の組成を有する高分子を紙力増強剤と共に使用することで、紙力増強剤の紙力増強効果が促進され、紙力増強剤の使用量を低減できることを見出した。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、特定の組成を有する高分子を紙力増強剤と共に使用することにより、紙力増強剤の紙力増大効果が促進され、紙力増強剤の使用量を低減できるという効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の高分子は、水溶液重合、乳化重合、分散重合、懸濁重合等のいずれの方法でも得ることができる。以下、水溶液重合の場合について説明する。
本発明の高分子は、カチオン性単量体を必須成分とする単量体成分を重合することにより得られる。重合は、所定の反応容器に単量体混合物、水、ラジカル重合開始剤、必要に応じ界面活性剤を添加し、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、攪拌、加温することにより目的の高分子を得ることができる。
【0008】
カチオン性単量体のうち三級アミノ基含有カチオン性単量体の例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレ-ト、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレ-ト、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びこれらの塩等が挙げられる。
また四級アンモニウム塩基含有カチオン性単量体の例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシ2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。又、ジアリルメチルアミン、ジアリルベンジルアミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルメチルベンジルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
これらを二種以上組み合わせることも可能である。カチオン性単量体は全単量体に対し、50~100質量%であり、好ましくは60~100質量%であり、更に好ましくは60~99質量%である。
【0009】
本発明における高分子は重合成分として更に、ノニオン性単量体、疎水性単量体等を含むことができる。
【0010】
ノニオン性単量体としては、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニルピロリドン、ビニルホルムアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等がある。これらを二種以上組み合わせることも可能である。
ノニオン性単量体は全単量体に対し、0~50質量%、好ましくは0~30質量%である。
【0011】
本発明において、疎水性単量体とは、20℃の水への溶解度が2質量%以下である単量体を意味する。疎水性単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、スチレン、エチルスチレン等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。
疎水性単量体は全単量体に対し、0~50質量%、好ましくは0~40質量%、更に好ましくは1~40質量%である。
【0012】
更に、効果を妨げない程度にアニオン性単量体、架橋性単量体を含んでもよい。
アニオン性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸、及びこれらの塩等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。
架橋性単量体としては、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N-メチロールアクリルアミド、トリアリルイソシアネート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。架橋性単量体の添加率は全単量体に対し1質量%以下が好ましい。
【0013】
重合に際しては、疎水性単量体を使用する場合には界面活性剤を使用することができる。界面活性剤は、分子内に親水性基と疎水性基を有する物質であり、中性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル、ペンタオキシエチレンオレイルアルコールエーテル等のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、アニオン性界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホネート・ホルマリン縮合物等、カチオン性界面活性剤としては、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。界面活性剤存在下、水中で重合することで疎水性単量体を微細分散させる効果が作用し、共重合が促進される。界面活性剤の量が少ないと単量体を微細分散させる効果が小さく、多すぎると溶解時、使用時に発泡の原因となる。界面活性剤の添加率は全単量体に対して0.01質量%~5質量%であり、好ましくは0.05質量%~3質量%、更に好ましくは0.1質量%~1質量%である。
【0014】
本発明においては連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類、チオグリコール酸及びそのエステル類、イソプロピルアルコール、アリルアルコール、アリルアミン、次亜リン酸ナトリウム等が挙げられる。また、メタリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸カリウム、メタリルスルホン酸アンモニウム等のメタリルスルホン酸塩等の単量体が挙げられる。
【0015】
重合開始剤としては、例えば、2、2’-アゾビス[2-(5-メチル-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2、2’-アゾビス-2-アミジノプロパン二塩酸塩等のアゾ系の重合開始剤が挙げられる。又、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、過酸化ベンゾイル等の過酸化物等も挙げられる。これらは単独でも使用できるが、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩等の還元剤と組合せてレドックス系重合開始剤としても使用できる。重合開始剤の添加率は全単量体に対し0.01質量%~2質量%、好ましくは0.1~1質量%である。
【0016】
重合濃度としては、単量体濃度として10質量%~80質量%であるが、好ましくは15質量%~60質量%である。
重合反応は、通常温度30℃~100℃、時間は0.5時間~20時間で行う。
【0017】
得られた高分子は、高分子1質量%水溶液の粘度が5~200mPa・sであることが好ましい。更に好ましくは15~170mPa・sである。粘度はB型粘度計で回転数60rpm、25℃で測定したものである。粘度がこれより小さいと紙力増強効果が不十分となる。また、粘度がこれより大きいと溶解性が低下し取扱いが困難となる。B型粘度計として、東機産業株式会社製B8M型、TVB-10M型等の汎用品が適宜に使用される。粘度が100mPa・s以下の場合は、1号ローターを用いる。
【0018】
本発明における高分子の紙力増強剤の効果促進作用について説明する。
紙力増強剤のカチオン基部分がパルプのカルボキシル基と相互作用することで紙力増強効果が発揮されると考えられる。しかし、パルプのカルボキシル基の分布は一様ではなく、カルボキシル基の密度が高い部分に優先的に紙力増強剤が分布し、紙力増強剤のパルプ上での分布も不均一になり、紙力増強効果が十分に発揮できないものと考えられる。本発明におけるカチオン基密度の高い高分子を添加することで、当該高分子が優先的にカルボキシル基密度の高い部分に吸着し、紙力増強剤のパルプ上での分布を一様にし、紙力増強効果を促進するものと考えられる。
疎水性単量体を共重合したカチオン性高分子は水中でミセルを形成することが知られている。疎水性単量体を共重合したカチオン性高分子は、パルプ上の局所化したカルボキシメチル基を有効に封鎖し、紙力増強剤のパルプ上での分布を均一化し、紙力増強効果を更に促進するものと考えられる。また、ミセル化したカチオン性高分子は、カチオン基密度が増大しているため、パルプ間の接着性の向上にも寄与しているものと考えられる。
【0019】
本発明における高分子の添加場所としては、紙力増強剤が添加されている場所の周辺に添加する。一般的に紙力増強剤は、リファイナー、原料配合チェスト、ミキシングチェスト、マシンチェスト、種箱等、製紙工程上流のパルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%以上の抄紙前の製紙原料に添加されており、この場合は本発明における高分子も同製紙原料に添加する。
又、製紙工程において上流からパルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%以上で移送されてきた高濃度の製紙原料が抄紙機の直前では白水や清水等によりパルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%より低い製紙原料に希釈されている。一般的には0.5~1.5質量%に希釈されており、これらはインレット原料やヘッドボックス原料と呼ばれており、これら原料(以下、インレット原料とする。)に対して、紙力増強剤を添加する場合もあり、この場合は本発明における高分子も同製紙原料に添加する。この場合の工程の添加場所としては、せん断工程であるファンポンプ前後やスクリーン前後が適用される。
紙力増強剤との添加順序は、紙力増強剤の前後に添加しても良く、同時に添加しても良い。本発明における紙力促進の効果発現の機構上、紙力増強剤添加前、あるいは同時に添加することが好ましい。。
【0020】
本発明における高分子からなる製紙用添加剤を適用する紙の種類としては、新聞用紙、上質印刷用紙、中質印刷用紙、グラビア印刷用紙、PPC用紙、塗工原紙、微塗工紙、包装用紙、ライナーや中芯原紙の板紙等が挙げられる。この中でもより紙力増強剤の効果がより要求されるライナーや中芯原紙等の板紙が好ましい。添加率としては、紙力増強剤(純分)に対し、1質量%~100質量%(高分子純分)添加する。パルプ乾燥固形分に対して、高分子純分で0.003~1質量%であり、好ましくは0.005~0.5質量%である。又、その他のサイズ剤、硫酸バンド、ピッチコントロール剤、歩留向上剤、濾水性向上剤等の製紙用薬品と併用することができる。
【0021】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【実施例
【0022】
(製造例1)
500mLの4つ口フラスコに、80質量%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド62.5g、脱塩水187.5g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.1gを仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、16.4mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0023】
(製造例2)
500mLの4つ口フラスコに、スチレン10.0g、80質量%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド50.0g、脱塩水189.1g、ドデシル硫酸ナトリウム0.5g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.01gを仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、20.2mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0024】
(製造例3)
500mLの4つ口フラスコに、50%アクリルアミド50.0g、80質量%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド31.8g、脱塩水167.3g、次亜リン酸ナトリウム0.05g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.05gを仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、42.0mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0025】
(製造例4)
500mLの4つ口フラスコに、50%アクリルアミド30.0g、80質量%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド43.9g、脱塩水175.1g、次亜リン酸ナトリウム0.05g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.05gを仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、24.0mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0026】
(製造例5)
500mLの4つ口フラスコに、ドデシルメタクリレート0.5g、80質量%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド61.9g、脱塩水187.3g、ドデシル硫酸ナトリウム0.5g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.05gを仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、26.5mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0027】
(製造例6)
500mLの4つ口フラスコに、ドデシルメタクリレート0.5g、スチレン1.0g、80質量%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド60.6g、脱塩水187.2g、ドデシル硫酸ナトリウム0.5g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.05gを仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、112.0mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0028】
(製造例7)
500mLの4つ口フラスコに、スチレン20.0g、ジメチルアミノエチルメタクリレート24.7g、35質量%塩酸15.8g、脱塩水187.2g、ドデシル硫酸ナトリウム0.5g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.05gを仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、23.4mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0029】
(製造例8)
500mLの4つ口フラスコに、2-エチルヘキシルアクリレート1.0g、80質量%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド61.3g、脱塩水187.3g、ドデシル硫酸ナトリウム0.5g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.05gを仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、155.5mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0030】
(製造例9)
500mLの4つ口フラスコに、ステアリルメタリレート0.5g、スチレン2.5g、80質量%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド59.0g、脱塩水188.2g、ドデシル硫酸ナトリウム0.5g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.05gを仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、164.0mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0031】
(製造例10)
500mLの4つ口フラスコに、ドデシルメタリレート2.5g、スチレン5.1g、80質量%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド53.1g、脱塩水188.2g、ドデシル硫酸ナトリウム0.5g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.05gを仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、67.5mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0032】
(表1)
カチオン性単量体;DMM:ジメチルアミノエチルメタクリレート、
DMC:メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド
疎水性単量体;St:スチレン、DDM:ドデシルメタクリレート、2EHA:2-エチルへキシルアクリレート、SMA:ステアリルメタクリレート
ノ二オン性単量体;AAM:アクリルアミド
1質量%水溶液粘度;B型粘度計を使用、回転数60rpm、25℃で測定。
【0033】
又、市販の紙力増強剤1~3を用意した。これらの組成、物性を表2に示す。
【0034】
(表2)
【0035】
(実施例1)
紙料原料として、段ボール古紙をナイアガラ式ビーターで叩解し、叩解度300mLに調製した。これをパルプ濃度1質量%のパルプスラリーとして使用した(pH7.3、電気伝導度117.1mS/m)。このパルプスラリー500mLに対し、パルプ固形分に対して表1の本発明における高分子試料製造例1を0.01質量%添加、表2の紙力増強剤1を0.3質量%添加後、800rpmで1分間撹拌後、TAPPIスタンダード抄紙機にて抄紙(80メッシュワイヤー使用)し、続いて圧力410kPaで5分間プレスし、さらに回転型ドラムワイヤーを使用し105℃で3分間乾燥した。温度23℃、湿度50%の条件下で24時間調湿して、坪量80g/cmの紙を得た。得られた紙について、破裂強度、圧縮強度を測定し、それぞれ比破裂強度、比圧縮強度で表した。破裂強度は、ミューレン破裂試験機(熊谷理機工業社製)を用いてJIS P 8131、圧縮強度は、ショートスパン圧縮試験機(L&W社製、Compressive Strength Tester STFI)を用いてJIS P 8126に従い実施した。又、製造例2~4についても同様な試験を実施した。これらの結果を表3に示す。
【0036】
(比較例1)
実施例1と同じパルプスラリーを用いて、実施例1と同様な試験を本発明における高分子試料を使用しないで実施した。その結果を表3に示す。
【0037】
(表3)
【0038】
紙力増強剤単独添加に比べて、本発明における高分子試料を併用すると紙力増強剤の効果を促進する効果が認められた。カチオン性単量体と疎水性単量体を用いて得られた高分子試料製造例2は最も効果的であった。
【0039】
(実施例2)
実施例1と同じパルプスラリーを用いて、実施例1と同様な試験を本発明における高分子試料製造例5~7を用いて実施した。その結果を表4に示す。
【0040】
(比較例2)
実施例1と同じパルプスラリーを用いて、実施例1と同様な試験を本発明における高分子試料を使用しないで実施した。その結果を表4に示す。
【0041】
(表4)
【0042】
紙力増強剤単独添加に比べて、本発明における高分子試料を併用時、紙力増強剤の効果を促進する効果が認められた。疎水性単量体含有量が多く、1質量%水溶液粘度が高いと効果が高い傾向にあることが分かった。
【0043】
(実施例3)
実施例1と同じパルプスラリーを用いて、実施例1と同様な試験を本発明における高分子試料製造例8を用いて実施した。紙力増強剤と本発明における高分子試料の有効な添加量比を調べた。その結果を表5に示す。
【0044】
(比較例3)
実施例1と同じパルプスラリーを用いて、実施例1と同様な試験を紙力増強剤単独、又は本発明における高分子試料単独で実施した。その結果を表5に示す。
【0045】
(表5)
【0046】
同等の総添加率の比較において、紙力増強剤単独添加に比べて、本発明における高分子試料を少量併用することで紙力を促進する効果が認められた。
【0047】
(実施例4)
実施例1と同じパルプスラリーを用いて、実施例1と同様な試験を紙力増強剤2、紙力増強剤3を使用して実施した。その結果を表6に示す。
【0048】
(比較例4)
実施例1と同じパルプスラリーを用いて、実施例1と同様な試験を本発明における高分子試料を使用しないで実施した。その結果を表6に示す。
【0049】
(表6)
【0050】
何れの紙力増強剤に対しても本発明における高分子試料を少量添加することで大きな紙力増強剤促進効果が認められた。