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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】アスファルト舗装の除去方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/12 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
E01C23/12 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021010445
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022114235
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(73)【特許権者】
【識別番号】508182589
【氏名又は名称】エフティーエス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】512155836
【氏名又は名称】ユナイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】丑久保 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 伸
(72)【発明者】
【氏名】石山 廣司
(72)【発明者】
【氏名】峰村 富夫
(72)【発明者】
【氏名】藤原 貴央
(72)【発明者】
【氏名】出村 博之
(72)【発明者】
【氏名】関谷 寿仁
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-133196(JP,A)
【文献】特開平03-199512(JP,A)
【文献】特開昭60-085105(JP,A)
【文献】特開平02-279805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床版又はコンクリート舗装の上面に舗設されたアスファルト舗装を建設機械で除去するアスファルト舗装の除去方法であって、
前記建設機械は、自走車両と、前記自走車両の左右方向に回転軸が延びる状態で当該自走車両の底部に配置された切削ドラムと、前記自走車両に対して前記切削ドラムを上下方向に移動させるアクチュエータと、前記切削ドラムによって切削される前のアスファルト舗装の厚さを測定する電磁波レーダと、電子制御装置と、を備え、
前記アクチュエータは、前記切削ドラムの回転軸の左右端部に夫々配置され、
前記電磁波レーダは、前記切削ドラムの左右端部を臨む位置に夫々配置され、
前記電子制御装置が、前記自走車両の走行に伴って、前記切削ドラムの左端部を臨む位置に配置された前記電磁波レーダによって測定されたアスファルト舗装の厚さに応じて前記切削ドラムの回転軸の左端部に配置された前記アクチュエータを制御し、前記切削ドラムの右端部を臨む位置に配置された前記電磁波レーダによって測定されたアスファルト舗装の厚さに応じて前記切削ドラムの回転軸の右端部に配置された前記アクチュエータを制御しつつ、前記切削ドラムを回転駆動させてアスファルト舗装を切削して除去する、
アスファルト舗装の除去方法。
【請求項2】
前記建設機械は、前記自走車両の走行距離を計測する計測装置を更に備え、
前記電子制御装置が、前記計測装置により計測された走行距離が所定距離変化するたびに、前記電磁波レーダによってアスファルト舗装の厚さを測定するとともに、前回の制御処理時に測定されたアスファルト舗装の厚さに応じて前記アクチュエータを制御する、
請求項1に記載のアスファルト舗装の除去方法。
【請求項3】
前記所定距離は、前記切削ドラムの配置位置と前記電磁波レーダの設置位置との位置関係に応じて決定された、
請求項2に記載のアスファルト舗装の除去方法。
【請求項4】
前記建設機械は、表示装置を更に備え、
前記電子制御装置が、前記電磁波レーダによって測定されたアスファルト舗装の厚さを前記表示装置に表示する、
請求項1~請求項3のいずれか1つに記載のアスファルト舗装の除去方法。
【請求項5】
前記電磁波レーダは、前記アスファルト舗装と前記床版又はコンクリート舗装との界面を検知することで、前記アスファルト舗装の厚さを測定する、
請求項1~請求項4のいずれか1つに記載のアスファルト舗装の除去方法。
【請求項6】
前記電子制御装置が、前記アスファルト舗装と前記電磁波レーダとの上下方向の距離を考慮して、前記電磁波レーダによって測定されたアスファルト舗装の厚さを補正する、
請求項1~請求項5のいずれか1つに記載のアスファルト舗装の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床版又はコンクリート舗装の上面に舗設されたアスファルト舗装を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の構造として、特開2020-133325号公報(特許文献1)に記載されるように、RC床版(鉄筋コンクリート床版)やPC床版(プレストレスコンクリート床版)などのコンクリート床版の上面に、アスファルト混合物からなるアスファルト舗装が舗設されたものが知られている。また、橋梁の構造として、コンクリート床版に代えて、鋼床版を使用したものも知られている。
【0003】
コンクリート床版や鋼床版などの床版の上面に舗設されたアスファルト舗装は、水分、荷重及び温度変化などによって徐々に劣化し、ひび割れやポットホールなどが発生してしまう。アスファルト舗装にひび割れやポットホールなどが発生すると、アスファルト舗装上を走行する車両などに支障が生じるため、路面切削機を使用して床版を覆うアスファルト舗装を除去した後、床版の上面にアスファルト舗装を再舗設する改修工事が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-133325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、床版を覆うアスファルト舗装は、必ずしも設計厚さで舗設されているとは限らず、設計厚さに対して多少の誤差を含んだものとなっている。このため、アスファルト舗装の改修工事を行う場合、橋梁の床版を路面切削機で切削して損傷させないようにすべく、安全マージンを考慮して設計厚さより薄くアスファルト舗装を除去しており、床版の上面に多くのアスファルト舗装が残ってしまう。従って、床版の上面に残ったアスファルト舗装を人手で除去する作業が不可欠となり、例えば、工期の長期化やコスト上昇などをきたしてしまうおそれがあった。なお、この問題は、床版の上面に舗設されたアスファルト舗装に限らず、コンクリート舗装の上面に舗設されたアスファルト舗装などであっても同様に発生する。
【0006】
そこで、本発明は、床版又はコンクリート舗装の上面に舗設されたアスファルト舗装を建設機械で除去するとき、床版又はコンクリート舗装に損傷を与えないようにしつつ、床版又はコンクリート舗装の上面に残るアスファルト舗装を少なくした、アスファルト舗装の除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
床版又はコンクリート舗装の上面に舗設されたアスファルト舗装を除去する建設機械は、自走車両と、自走車両の左右方向に回転軸が延びる状態で自走車両の底部に配置された切削ドラムと、自走車両に対して切削ドラムを上下方向に移動させるアクチュエータと、切削ドラムによって切削される前のアスファルト舗装の厚さを測定する電磁波レーダと、電子制御装置と、を備えている。ここで、アクチュエータは、切削ドラムの回転軸の左右端部に夫々配置され、電磁波レーダは、切削ドラムの左右端部を臨む位置に夫々配置されている。そして、電子制御装置が、自走車両の走行に伴って、切削ドラムの左端部を臨む位置に配置された電磁波レーダによって測定されたアスファルト舗装の厚さに応じて切削ドラムの回転軸の左端部に配置されたアクチュエータを制御し、切削ドラムの右端部を臨む位置に配置された電磁波レーダによって測定されたアスファルト舗装の厚さに応じて切削ドラムの回転軸の右端部に配置されたアクチュエータを制御しつつ、切削ドラムを回転駆動させてアスファルト舗装を切削して除去する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、床版又はコンクリート舗装の上面に舗設されたアスファルト舗装を建設機械で除去するとき、床版又はコンクリート舗装に損傷を与えないようにしつつ、床版又はコンクリート舗装の上面に残るアスファルト舗装を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】橋梁の一例を示す横断面図である。
図2】路面切削機の一例を示す側面図である。
図3】路面切削機の一例を示す平面図である。
図4】切削ドラムを上下方向に移動させる機構の説明図である。
図5】切削ドラムに対する電磁波レーダの設置位置の説明図である。
図6】路面切削機の制御システムの一例を示す概要図である。
図7】路面切削機の制御処理の一例を示すフローチャートである。
図8】アスファルト舗装の厚さが横断方向で変化する場合の問題点を示す説明図である。
図9】アスファルト舗装の厚さが横断方向で変化する場合の問題点を解消する方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
図1は、本実施形態の適用対象である、橋梁100の一例の横断面を示している。なお、以下の実施形態においては、コンクリート床版を前提として説明するが、床版としては鋼床版などであってもよい。
【0011】
橋梁100は、路盤110の上面に立設された複数の橋桁120と、橋桁120によって支持されるコンクリート床版130と、コンクリート床版130の上面に舗設されたアスファルト舗装140と、コンクリート床版130の左右端部に夫々立設された高欄150と、を含んで構成されている。コンクリート床版130としては、例えば、RC床版、PC床版などを使用することができる。なお、図示の橋梁100は、本実施形態を説明するための一例であって、その構造に限定されないことに留意されたい。
【0012】
橋梁100におけるアスファルト舗装140を切削して除去する路面切削機(ロードカッター)200は、図2及び図3に示すように、自走車両220と、自走車両220の底部に配置された切削ドラム240と、切削ドラム240によって切削されたアスファルト舗装140の廃材を前方に搬送するコンベアユニット260と、を備えている。
【0013】
自走車両220の前方下部には、例えば、ゴムタイヤ及びホイールを含んだ、操舵可能な左右一対の前輪222が取り付けられている。自走車両220の後方下部には、例えば、ゴムタイヤ及びホイールを含んだ、左右一対の後輪224が2組取り付けられている。また、自走車両220の後方の所定箇所には、図示しない原動機としてのディーゼルエンジンが搭載され、その上面及び両側面を覆うエンジンフードが開閉可能に取り付けられている。さらに、自走車両220の中央上面の左右には、路面切削機200のオペレータのための運転台226が夫々設けられている。
【0014】
なお、自走車両220に搭載されたディーゼルエンジンは、各種の油圧機器を作動させるための油圧を発生させるとともに、自走車両220の前輪222及び後輪224を駆動する。ここで、前輪222及び後輪224は、油圧で駆動されるようにしてもよい。
【0015】
切削ドラム240は、自走車両220の中央において、自走車両220の左右方向に回転軸が延びる状態で配置されている。切削ドラム240の外周面には、複数のカッタ―ビット(図示せず)が交換可能に取り付けられている。そして、切削ドラム240は、例えば、ベルトやチェーンを介して自走車両220に搭載されたディーゼルエンジンによって回転駆動され、その外周面に取り付けられたカッタ―ビットがアスファルト舗装140を切削する。なお、切削ドラム240は、ディーゼルエンジンによる機械的な回転駆動に限らず、例えば、油圧モータや電動モータによって回転駆動されてもよい。
【0016】
また、切削ドラム240は、自走車両220の左右方向に伸縮可能に配置された第1の油圧シリンダ、及び自走車両220の上下方向に伸縮可能に配置された第2の油圧シリンダによって、自走車両220に対して左右方向及び上下方向に移動可能に配置されている。従って、第1のシリンダに対する作動油の供給及び排出を適宜制御することで、自走車両220に対して左右方向に切削ドラム240を移動させることができ、例えば、高欄150一杯までアスファルト舗装140を切削することができる。また、第2のシリンダに対する作動油の供給及び排出を適宜制御することで、自走車両220に対して上下方向に切削ドラム240を移動させることができ、アスファルト舗装140の切削深さを任意に変更することができる。なお、第2の油圧シリンダが、自走車両に対して切削ドラムを上下方向に移動させるアクチュエータの一例として挙げられる。
【0017】
ここで、切削ドラム240においては、図4に示すように、自走車両220の左右方向に延びる回転軸242の左右端部が、左右一対の第2の油圧シリンダ244を介して自走車両220に連結されていることが望ましい。このようにすれば、左右一対の第2の油圧シリンダ244を個別に制御することで、自走車両220に対して切削ドラム240を斜めにした状態で上下させることができる。
【0018】
コンベアユニット260は、自走車両220の前方下部を斜めに貫通する状態で取り付けられた第1のコンベア262と、自走車両220の前部に左右方向及び上下方向に回転可能に取り付けられた第2のコンベア264と、を備えている。第1のコンベア262は、例えば、カバーによって周囲が覆われているベルトコンベアからなり、切削ドラム240によって切削されたアスファルト舗装140の廃材を受けて自走車両220の前方上方まで搬送する。第2のコンベア264は、例えば、カバーによって周囲が覆われているベルトコンベアからなり、第1のコンベア262によって搬送されたアスファルト舗装140の廃材を受けて更に前方上部へと搬送し、路面切削機200の前方を走行するダンプトラック(図示せず)の荷台に廃材を積み込む。なお、第1のコンベア262及び第2のコンベア264は、油圧モータや電動モータによって駆動することができる。
【0019】
自走車両220の底部には、切削ドラム240により切削される前のアスファルト舗装140の厚さを測定する、左右一対の電磁波レーダ280が配置されている。左右一対の電磁波レーダ280は、図5に示すように、自走車両220の進行方向を基準として、切削ドラム240の前方、かつ切削ドラム240の左右端部を臨む位置に配置されている。従って、電磁波レーダ280は、切削ドラム240の左右端部におけるアスファルト舗装140の厚さを測定することができる。
【0020】
電磁波レーダ280は、図6に示すように、箱型の筐体280Aと、筐体280Aの底部に配置された送信アンテナ280B及び受信アンテナ280Cと、送信アンテナ280Bに接続された送信器280Dと、受信アンテナ280Cに接続された受信器280Eと、を備えている。送信器280Dは、送信アンテナ280Bを介して、マイクロ波帯の電磁波をアスファルト舗装140の内部に照射する。そして、コンクリート床版130及びアスファルト舗装140の電気的性質(比誘電率、導電率)が異なることを利用し、受信器280Eが、受信アンテナ280Cを介して、コンクリート床版130及びアスファルト舗装140の界面で反射した電磁波を受信する。その後、電磁波を照射してから受信するまでの時間(反射時間)に応じて、以下のように、界面の位置、要するに、アスファルト舗装140の厚さを測定する。なお、アスファルト舗装140の厚さは、電磁波レーダ280に内蔵された演算回路で算出してもよく、また電磁波レーダ280に接続された外部の演算回路などで算出してもよい。
【0021】
電磁波レーダ280によるアスファルト舗装140の厚さD[m]は、アスファルト舗装140の比誘電率をε、電磁波の速度をV[m/s]、及び反射時間をT[s]とすると、次式で求めることができる。なお、電磁波の速度Vは、光の速度と同じ、約3×10[m/s]である。
【数1】
【0022】
また、コンクリート床版130及びアスファルト舗装140の界面における電磁波の反射率γは、コンクリート床版130の比誘電率をεとすると、次式のように表すことができる。
【数2】
【0023】
従って、界面における電磁波の反射強度は、界面を形成しているコンクリート床版130及びアスファルト舗装140の固有の比誘電率の差によって決まり、例えば、この反射強度を考慮して界面を検知することで、アスファルト舗装140の厚さを測定することができる。
【0024】
また、路面切削機200の所定箇所には、図6に示すように、自走車両220の走行距離を計測する計測装置300、及び路面切削機200のオペレータに対してアスファルト舗装140の厚さを可視的に知らせる表示装置320が夫々配置されている。ここで、計測装置300としては、エンコーダ、GNSS(Global Navigation Satellite System)などを利用することができ、表示装置320としては、液晶モニタなどを利用することができる。
【0025】
左右一対の電磁波レーダ280、及び計測装置300の出力信号は、マイクロコンピュータを内蔵したコントローラ340に入力されている。コントローラ340は、左右一対の電磁波レーダ280によって測定されたアスファルト舗装140の厚さを表示装置320に表示する。また、コントローラ340は、アスファルト舗装140の厚さを表示することに加え、左右一対の電磁波レーダ280及び計測装置300の出力信号に応じて切削ドラム240を上下方向に移動させるための制御量を算出し、その制御量に応じた駆動信号を第2の油圧シリンダ244に出力する。なお、コントローラ340は、表示装置320にアスファルト舗装140の厚さを表示するとき、左右一対の電磁波レーダ280によって探査したコンクリート床版130及びアスファルト舗装140の探索状態を併せて表示するようにしてもよい。ここで、コントローラ340が、電子制御装置の一例として挙げられる。
【0026】
図7は、コントローラ340が起動されたことを契機として、自走車両220が所定距離走行するたびに、要するに、計測装置300によって計測された走行距離が所定距離変化するたびに、そのマイクロコンピュータが繰り返し実行する、路面切削機200の制御処理の一例を示している。この所定距離は、切削ドラム240の配置位置と電磁波レーダ280の配置位置との位置関係に応じて適宜決定することができる。
【0027】
ここで、コントローラ340のマイクロコンピュータは、例えば、不揮発性メモリに格納されたアプリケーションプログラム(制御プラグラム)に従って、制御処理を実行する。なお、ここで説明する制御処理は、コントローラ340のマイクロコンピュータがアスファルト舗装140の厚さを算出することを前提とするが、そのマイクロコンピュータが電磁波レーダ280からアスファルト舗装140の厚さを直接読み込むものであってもよい。
【0028】
ステップ10(図7では「S10」と略記する。以下同様。)では、コントローラ340のマイクロコンピュータが、左右一対の電磁波レーダ280の出力信号、即ち、アスファルト舗装140の内部を探索した結果としての反射波の波形を夫々読み込む。
【0029】
ステップ11では、コントローラ340のマイクロコンピュータが、前述したような原理によって、左右一対の電磁波レーダ280の出力信号から、切削ドラム240の左右端部における切削前のアスファルト舗装140の厚さを夫々算出する。なお、コントローラ340のマイクロコンピュータは、アスファルト舗装140と電磁波レーダ280の送信アンテナ280B及び受信アンテナ280Cとの上下方向の距離を考慮し、上記のように算出したアスファルト舗装140の厚さを適宜補正するようにしてもよい。
【0030】
ステップ12では、コントローラ340のマイクロコンピュータが、路面切削機200のオペレータに対して左右のアスファルト舗装140の厚さを知らせるべく、これを表示装置320に表示する。
【0031】
ステップ13では、コントローラ340のマイクロコンピュータが、計測装置300から自走車両220の走行距離を読み込む。
【0032】
ステップ14では、コントローラ340のマイクロコンピュータが、前回の制御処理時の走行距離と今回の制御処理時の走行距離との差分を算出し、その差分が所定距離に達したか否か、要するに、自走車両220が前回の制御処理時から所定距離走行したか否かを判定する。そして、コントローラ340のマイクロコンピュータは、自走車両220が所定距離走行したと判定すれば(Yes)、処理をステップ15へと進める。一方、コントローラ340のマイクロコンピュータは、自走車両220が所定距離走行していないと判定すれば(No)、処理をステップ13へと戻す。
【0033】
ステップ15では、コントローラ340のマイクロコンピュータが、左右のアスファルト舗装140の厚さに応じて、左右一対の第2の油圧シリンダ244の操作量を夫々算出する。要するに、コントローラ340のマイクロコンピュータは、切削ドラム240の左端におけるアスファルト舗装140の厚さに応じて、左側に配置された第2の油圧シリンダ244の操作量を算出し、切削ドラム240の右端におけるアスファルト舗装140の厚さに応じて、右側に配置された第2の油圧シリンダ244の操作量を算出する。このとき、コントローラ340のマイクロコンピュータは、電磁波レーダ280の検出精度を考慮して、第2の油圧シリンダ244の操作量を算出することが望ましい。
【0034】
ステップ16では、コントローラ340のマイクロコンピュータが、左右一対の第2の油圧シリンダ244に対して、ステップ15で算出した操作量に応じた駆動信号を夫々出力する。要するに、コントローラ340のマイクロコンピュータは、左側に配置された第2の油圧シリンダ244に対して、切削ドラム240の左端におけるアスファルト舗装140の厚さから算出された操作量に応じた駆動信号を出力し、右側に配置された第2の油圧シリンダ244に対して、切削ドラム240の右端におけるアスファルト舗装140の厚さから算出された操作量に応じた駆動信号を出力する。
【0035】
かかる路面切削機200によれば、橋梁100におけるアスファルト舗装140を切削して除去する場合、切削開始位置に路面切削機200を搬送して設置した後、切削ドラム240を回転駆動させつつ、第2の油圧シリンダ244を適宜作動させて所望の切削深さまで切削ドラム240を降下させる。そして、自走車両220の走行を開始するとともに、その走行速度に合わせて前方にダンプトラックを走行させる。切削ドラム240を回転駆動させることで、その外周面に取り付けられたカッタ―ビットがアスファルト舗装140を切削して廃材を生み出し、これがコンベアユニット260の第1のコンベア262及び第2のコンベア264によって前方へと搬送され、前方を走行するダンプトラックの荷台に積み込まれる。
【0036】
路面切削機200の切削ドラム240を回転駆動させてアスファルト舗装140を切削して除去するとき、自走車両220の走行に伴って、前回の制御処理時に測定されたアスファルト舗装140の厚さに応じて第2の油圧シリンダ244が制御される。従って、橋梁100におけるアスファルト舗装140を除去するとき、切削ドラム240の直下におけるアスファルト舗装140の厚さに応じて第2の油圧シリンダ244が制御され、アスファルト舗装140の下層に位置するコンクリート床版130に損傷を与えないようにすることができる。また、コンクリート床版130とアスファルト舗装140との界面近くまでアスファルト舗装140を削除可能となるため、コンクリート床版130の上面に残るアスファルト舗装140が少なくなり、例えば、工期の長期化やコスト上昇などを避けることができる。
【0037】
橋梁100におけるアスファルト舗装140は、その横断方向で略一定の厚さを有しているとは限らず、図8に示すように、横断方向で厚さが変化する場合がある。この場合、路面切削機200の自走車両220は、横断方向に傾斜したアスファルト舗装140の上面を走行するため、左右方向に傾斜した状態で走行することとなる。この状態で切削ドラム240を自走車両220の左右方向に平行な状態で上下させると、同図に示すように、アスファルト舗装140の下層に位置するコンクリート床版130の上面に対して切削ドラム240が所定角度をもって配置される。従って、アスファルト舗装140の下部に切削できない部分が生じ、アスファルト舗装140を取り残してしまう。
【0038】
しかしながら、切削ドラム240の左右端部を臨む位置に配置された左右一対の電磁波レーダ280によって測定されたアスファルト舗装140の厚さに応じて、切削ドラム240の回転軸242の左右端部に配置された左右一対の第2の油圧シリンダ244を個別に制御することで、図9に示すように、自走車両220に対して切削ドラム240が斜めになってコンクリート床版130の上面と平行になる。従って、切削ドラム240が斜めになった状態で上下動させることで、切削ドラム240で切削できない部分が生じることを回避し、アスファルト舗装140の取り残しを少なくすることができる。
【0039】
なお、当業者であれば、様々な上記実施形態の技術的思想について、その一部を省略したり、その一部を適宜組み合わせたり、その一部を周知技術に置換したりすることで、新たな実施形態を生み出せることを容易に理解できるであろう。
【0040】
その一例を挙げると、電磁波レーダ280は、切削ドラム240の左右端部に限らず、切削ドラム240を臨む任意の位置に1つだけ設置するようにしてもよい。この場合、コントローラ340のマイクロコンピュータは、1つの電磁波レーダ280の出力信号に応じて、左右一対の第2の油圧シリンダ244を同じだけ動作させるようにすればよい。
【0041】
また、コントローラ340のプロセッサは、電磁波レーダ280によって測定されたアスファルト舗装140の厚さを、自走車両220に配置された表示装置320に代えて又はこれに加えて、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などの無線通信技術を使用して、オペレータが所持するスマートフォン、タブレットなどに表示するようにしてもよい。
【0042】
さらに、本実施形態は、橋梁100に限らず、空港滑走路など、鋼床版の上面にアスファルト舗装が舗設された箇所にも適用可能である。その他、本実施形態は、床版の上面に舗設されたアスファルト舗装に限らず、コンクリート舗装の上面に舗設されたアスファルト舗装を除去する場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
100 橋梁
120 橋桁
130 コンクリート床版
140 アスファルト舗装
200 路面切削機(建設機械)
220 自走車両
240 切削ドラム
242 回転軸
244 第2の油圧シリンダ(アクチュエータ)
280 電磁波レーダ
300 計測装置
320 表示装置
340 コントローラ(電子制御装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9