(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】SnZn半田およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 35/26 20060101AFI20241016BHJP
C22C 1/02 20060101ALI20241016BHJP
C22C 13/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B23K35/26 310A
C22C1/02 503N
C22C13/00
(21)【出願番号】P 2021532789
(86)(22)【出願日】2020-07-04
(86)【国際出願番号】 JP2020026311
(87)【国際公開番号】W WO2021010199
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2021-12-08
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2019129866
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020103656
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514177030
【氏名又は名称】アートビーム有限会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306030563
【氏名又は名称】岡田 守弘
(74)【代理人】
【識別番号】100089141
【氏名又は名称】岡田 守弘
(72)【発明者】
【氏名】岡田 守弘
(72)【発明者】
【氏名】新井 傑也
(72)【発明者】
【氏名】菅原 ミエ子
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢一
(72)【発明者】
【氏名】小宮 秀利
(72)【発明者】
【氏名】松井 正五
(72)【発明者】
【氏名】錦織 潤
(72)【発明者】
【氏名】森 尚久
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】池渕 立
【審判官】佐藤 陽一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101092006(CN,A)
【文献】国際公開第03/061896(WO,A1)
【文献】国際公開第97/12719(WO,A1)
【文献】特開平9-155587(JP,A)
【文献】特開2002-361476(JP,A)
【文献】特開2000-15478(JP,A)
【文献】国際公開第2004/039533(WO,A1)
【文献】特表2009-502512(JP,A)
【文献】特開2003-10996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K35/26
C22C13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SnとZnの合金である母材に、Pと、In、BiおよびSbのうちの2つ以上とからなる主材を、前記母材であるSnとZnの合金の100wt%に対する割合である、合計1.0wt%以下を混入されて溶融・合金化されたSnZn半田であって、酸化膜除去、密着性、流動性、粘性が前記母材に比べて改善され、かつ前記溶融・合金化された後のSnZn半田の
溶融温度を前記母材の
溶融温度と同じあるいは低くして前記母材の溶融温度よりも高温になることを抑止された、ことを特徴とするSnZn半田。
【請求項2】
Al、Si、Cu、Ag、Niのうちの1つ以上からなる副材を、前記母材であるSnZn合金の100wt%に対する割合である、5wt%以下を前記母材に混入して溶融・合金化したことを特徴とする請求項1に記載のSnZn半田。
【請求項3】
太陽電池基板又は液晶基板の電極に対する、リード線の半田付けに用いることを特徴と
する請求項1から請求項
2のいずれかに記載のSnZn半田。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のSnZn半田に、塩化アンモニウム・水和物の粉末あるいは塩化アンモニウム・水和物を含む粉末の場合には含まれる塩化アンモニウム・水和物を、当該SnZn半田の100wt%に対する割合である、3wt%以下から0.05wt%以上混入させたSnZn半田であって、半田付けのために前記Sn
Zn半田を加熱する時に塩化アンモニウム・水和物が分解して、被半田付け対象への半田付け密着度が、塩化アンモニウム・水和物が混入していないSnZn半田に比べて改善することを特徴とするSnZn半田。
【請求項5】
SnとZnの合金である母材に、Pと、In、BiおよびSbのうちの2つ以上とからなる主材を、前記母材であるSnとZnの合金の100wt%に対する割合である、合計1.0wt%以下を混入して溶融・合金化する、SnZn半田の製造方法であって、酸化膜除去、密着性、流動性、粘性が前記母材に比べて改善され、かつ前記溶融・合金化された後のSnZn半田の
溶融温度を前記母材の
溶融温度と同じあるいは低くして前記母材の溶融温度よりも高温になることを抑止されたこと、を特徴とするSnZn半田の製造方法。
【請求項6】
Al、Si、Cu、Ag、Niのうちの1つ以上あるいは1つ以上を含有するガラスからなる副材を、当該副材に含まれるAl、Si、Cu、Ag、Niの各元素の合計含有量であって、前記母材であるSnZn合金の100wt%に対する割合である、5wt%以下を前記母材に混入して溶融・合金化したことを特徴とする請求項
5に記載のSnZn半田の製造方法。
【請求項7】
前記主材および前記副材として、該主材と該副材との合金を、前記母材に混入して溶融・合金化したことを特徴とする請求項
6に記載のSnZn半田の製造方法。
【請求項8】
前記主材と前記副材の合金として、CuとPとの合金としたことを特徴とする請求項
7に記載のSnZn半田の製造方法。
【請求項9】
前記母材、主材、副材をまとめてあるいは複数に分けて混合して溶融・合金化することを特徴とする請求項
6から請求項
8のいずれかに記載のSnZn半田の製造方法。
【請求項10】
請求項
5から請求項
9のいずれかに記載のSnZn半田に、塩化アンモニウム・水和物の粉末あるいは塩化アンモニウム・水和物を含む粉末の場合には含まれる塩化アンモニウム・水和物を、当該SnZn半田の100wt%に対する割合である、3wt%以下から0.05wt%以上混入するSnZn半田の製造方法であって、半田付けのために前記Sn
Zn半田を加熱する時に塩化アンモニウム・水和物が分解して、被半田付け対象への半田付け密着度が、塩化アンモニウム・水和物が混入していないSnZn半田に比べて改善することを特徴とするSnZn半田の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池基板や液晶基板等に用いるSnZn半田およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池基板や液晶基板等の電極へのリード線の半田付けは錫鉛半田が強度の強いこと、価格が安いことなどの理由により多く用いられている。
【0003】
また、アルミなどの電極の場合には、十分な半田付け強度が得られないために銀ペーストを塗布・焼結してこの上にリード線を錫鉛半田で半田付けしていた。
【0004】
また、最近は、公害等の観点から鉛フリー半田の要望が強くなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の鉛フリー半田は、錫鉛半田に比較し、強度が要求強度に少し不足したり、価格が高くて代替えに至っていないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鉛フリー半田の一種であるSnとZnの合金からなるSnZn半田について、P,In,Bi、Sb等の主材を合計1ないし1.5wt%以下の微量を混入して溶融・合金化し、必要に応じてAl、Si、Ag、Cu、Ni等の副材の微量を混入して溶融・合金化したSnZn半田は太陽電池基板等の電極に極めて強固かつ高温・低温繰り返しテストに強い半田であり、かつ混入してもSnZn半田の溶融温度がほぼ同じあるいは低下することを発見した。
【0007】
そのため、本発明らは、SnとZnの合金からなるSnZn半田において、SnとZnの合金である母材に、P、In、Bi、Sbのうちの1つ以上を含む主材を、合計1ないし1.5wt%以下を混入して溶融・合金化するようにしている。
【0008】
この際、溶融・合金化した後のSnZn半田の溶融温度は、母材の溶融温度と同じあるいは低いようにしている。
【0009】
また、主材は、SnとZnの合金の骨格内に合金化するようにしている。
【0010】
また、Al、Si、Cu、Ag、Niのうちの1つ以上あるいは1つ以上を含有するガラスを含む副材を、必要に応じて5wt%以下を母材に混入して溶融・合金化するようにしている。
【0011】
また、主材および副材として、主材と副材との合金を、母材に混入して溶融・合金化するようにしている。
【0012】
また、主材と副材の合金として、CuとPとの合金とするようにしている。
【0013】
また、母材、主材、副材をまとめてあるいは複数に分けて混合して溶融・合金化するようにしている。
【0014】
また、太陽電池基板、液晶基板の電極に、リード線の半田付けに用いるようにしている。
【0015】
また、作成したSnZn半田に、塩化アンモニウム・水和物の粉末あるいは塩化アンモニウム・水和物を含む粉末を3wt%以下から0.05wt%以上混入し、半田付け加熱時に分解して被半田付け対象物への半田付け密着度を改善するようにしている。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上述したように、SnとZnの合金である母材に、P、In、Bi、Sb等のうちの1つ以上を含む主材を合計1ないし1.5wt%以下の微量、必要に応じてAl,Si,Cu,Ag、Ni等のうちの1つ以上あるいは1つ以上を含有するガラスを含む副材を微量を混入して溶融・合金化することにより、太陽電池基板等の電極に極めて強固かつ高温・低温繰り返しテストに強い半田であり、かつ混入してもSnZn半田の溶融温度がほぼ同じあるいは低下させ,更に安価に製造することが可能となった。
【0017】
また、溶融・合金化した後のSnZn半田の溶融温度は、母材の溶融温度と同じあるいは低くなり、混入による溶融温度の上昇を無くすことができた。
【0018】
また、主材は、SnとZnの合金の骨格内に合金化し、析出してしまう弊害を除くことができた。
【0019】
また、Al,Si,Cu,Ag、Ni等の1つ以上、あるいは1つ以上を含有するガラスを混入して溶融・合金化しSnZn半田を製造することにより、半田付け対象に対する接触電位等の電気的特性を改善することができる。
【0020】
また、主材と副材の合金を混入して溶融・合金化してSnZn半田を製造することにより、主材の安定化を図り、高温・低温繰り返しテストに強い半田とすることができた。
【0021】
また、作成したSnZn半田に、塩化アンモニウム・水和物の粉末あるいは塩化アンモニウム・水和物を含む粉末を3wt%以下から0.05wt%以上混入し、半田付け加熱時に分解して被半田付け対象物への半田付け密着度を改善することができる。
【実施例1】
【0022】
【0023】
図1の(a)はフローチャートを示し、
図1の(b)は材料例を示す。
【0024】
図1の(a)において、S1は、母材、主材、副材を準備する。これは、
図1の(b)の材料例に示す下記の材料を準備する。
【0025】
・母材:Sn91 Zn9
・主材:P、In、Bi、Sb
・副材:Al、Si、Cu、Ag、Ni
ここで、母材は、本発明のSnZn半田を形成するSnZn合金の基本となる材料(母材)であって、ここでは、Snが91wt%。Znが9wt%を試作では用いた。Sn,Znの重量比は合金を作成できる範囲で任意、例えばZnが1から15wt%、残りはSnとすればよい(いずれの割合にするかは溶融温度などを目安に実験して適宜選択すればよい)。
【0026】
また、主材は、半田付けの際に、被半田付け対象の表面の酸化膜除去、密着性。濡れ性、流動性、粘性などの半田付けに影響を与える材料であって、本発明では主材の総量が1ないし1.5wt%以下にする材料である。ここでは、P(被半田付け対象の酸化膜除去、密着性),In(濡れ性、流動性)、Bi(密着性)、Sb(密着性)の1つ以上を混合して溶融・合金化する対象の材料である。また、主材は、総量が1ないし1.5wt%以下の微量と相まって母材の溶融温度よりも、母材に主材を混合して溶融・合金化した後のSnZn半田の溶融温度は等しいあるいは若干低い(例えば1ないし5℃程度低い)ものとなった。これは、主材の総量が母材に対して1ないし1.5wt%以下の微量であることで、母材の骨格内に入り、再骨格構成されるものと推測される。
【0027】
また、副材は、母材と主材に、更に添加した材料であって、被半田付け対象(太陽電池基板、液晶基板などの半導体基板、焼成アルミ膜、銅電極など)の電気的特性(接触電位差、接触抵抗、太陽電池の場合にはI-V特性など)、密着性などを良好にするための材料であって、ここでは、Al(焼成アルミ膜に対するもの)、Si(シリコン基板に対するもの)、Cu(銅電極に対するもの)、Ag(全てに対するもの)、Ni(シリコン基板に微量Niメッキしたときに対するもの)などの材料である。副材として、金属だけでなく、金属を含有するガラスを混合・溶融・合金化することで添加してもよい(ガラス中の酸素等のガス成分は溶融・合金化時に外部に放出されるなどする)。
【0028】
S2は、母材に対して、主材、副材を混合する。これは、S1で準備した母材に、主材、副材を混合する。
【0029】
S3は、母材、主材、副材が溶融して合金化する。これは、S2で母材に、主材、副材と混合して加熱して溶融し、良く攪拌して合金化させる。この際、主材、副材が空気中の酸素で酸化されてしまい合金化が困難な場合などには、必要に応じて不活性ガス(例えば窒素ガス)を坩堝内に吹き込んだり、あるいは更に不活性ガスを満たした溶融炉や真空溶融炉を用いる。
【0030】
S4は、半田材料(ABS-S)が完成する。
【0031】
以上によって、母材、主材、副材を準備してこれらを混合し、溶融・合金化することにより、本願発明に係るSnZn半田(ABS-S)を製造することが可能となる。以下順次詳細に説明する。
【0032】
【0033】
図2において、半田材料1は、既述した
図1のS1で準備した母材、主材、副材であって、ここでは、金属、ガラスなどの破片(粗粉砕したもの)である。
【0034】
半田材料投入皿2は、半田材料1を載せて溶融炉3に投入するものである。
【0035】
溶融炉3は、ヒーター4などで加熱し、内部に半田材料1を投入し、母材、主材、副材を溶融し、攪拌して合金化するためのものである。溶融炉3は、通常は大気中で内部に投入した母材、主材、副材を溶融し、攪拌して合金化する。この際、必要に応じて不活性ガス(窒素ガスなど)を吹き込んだりして空気中の酸素による酸化を低減したり、更に必要に応じて密閉して不活性ガスを充満(あるいは真空排気)する。
【0036】
以上のようにして、
図1のS1で準備した母材、主材、副材を混合して溶融炉3で溶融し、攪拌して合金化し、本願発明のSnZn半田を製造することが可能となる。
【0037】
図3は、本発明のリード結線の半田付け説明図を示す。
【0038】
図3の(a)はフローチャートを示し、
図3の(b)は基板/リード結線例を示す。
【0039】
図3の(a)において、S11は、超音波で半田(ABS-S)を基板パターンの予備半田を行う。これは、例えば太陽電池基板の電極に、これから半田付けしようとする部分(パターン)に、本願発明のSnZn半田(
図1のS4で製造したSnZn半田)を超音波半田コテのコテ先に供給して溶融し、かつ超音波を印加して基板上の当該パターン部分に半田付け(超音波予備半田付けという)を予め行う。
【0040】
S12は、リード結線等を超音波半田又は超音波無半田する。これは、S11で例えば太陽電池基板の電極の上に超音波予備半田付けした部分(パターン)に、リード結線を沿わせてその上から超音波を印加しつつあるいは超音波を印加することなく、本願発明のSnZn半田を溶融してリード結線を半田付けする。尚、SnZn半田がリード結線に予め予備半田されているときは半田の供給は不要である。
【0041】
以上によって、半田付け対象の部分(例えば太陽電池基板の電極部分)に通常の半田付けでは困難であるので、超音波を用いて本願発明のSnZn半田の予備半田を行い(S11)、予備半田を行った部分(パターン)の上に本願発明のSnZn半田を用いてリード結線を超音波半田付け、あるいは超音波無半田付けする(S12)ことにより、従来の半田付け不可の太陽電池基板の電極部分等に、超音波有り予備半田付けしてその上にリード結線を超音波有半田あるいは超音波無半田することが可能である。
【0042】
尚、超音波半田付けは、10W以下、通常は2から3Wで超音波半田付けを行っている。強いと太陽電池基板の上に形成された膜(例えば窒化膜)や基板の表面の結晶を損傷したりするので、強くすることはしない。
【0043】
【0044】
図3の(b)において、基板は、Al,Si基板、ガラス基板などであって、通常のハンダ付けでは半田付けが極めて困難な基板の例である。これら基板の電極となる部分(パターン)について、本願発明のSnZn半田を超音波予備半田付けする。そして、この予備半田付けした部分(パターン)に、リード結線を超音波有半田付け、あるいは超音波無半田付けすることにより、リード結線を基板に半田付けすることが可能となる。
【0045】
また、リード結線は、基板の上の電極の部分(パターン)に、本願発明のSnZn半田を用いて半田付けするリード結成であって、ワイヤー(円形の銅線に本願発明のSnZn半田を半田メッキしたワイヤー、少し楕円に潰しておくと半田付けしやすい)、リボン(銅の薄い板を1mm程度幅にカットしたリボンに、本発明のSnZn半田を予め半田メッキしておく)等である。
【0046】
【0047】
図4の(a)は予備半田付け例を示し、
図4の(b)はリボン、又はワイヤーの半田付け例を示す。
【0048】
図4の(a)において、シリコン基板11は、ここでは、太陽電池基板の例であって、該シリコン基板11の例えば裏面の全面にアルミニウム焼結膜12を形成したものである。
【0049】
アルミニウム焼結膜12は、太陽電池基板である図示のシリコン基板11の裏面の全面にアルミペーストを塗布(または、所定のパターンにスクリーン印刷)し、焼結して形成した電極(アルミニウム焼結膜)である。
【0050】
超音波半田コテ先端13は、図示外の超音波発生器から超音波を印加しつつ加熱される半田コテ先端である。
【0051】
半田(ABS-S)14は、本発明のSnZn半田(
図1のS4で製造されたSnZn半田)である。
【0052】
次に、半田付け動作を説明する。
【0053】
(1)シリコン基板11を予備加熱台の上に搬送して真空吸着して固定し、予備加熱する(例えば180℃程度に予備加熱する)。
【0054】
(2)アルミニウム焼結膜12の上に形成する電極のパターン(短冊状のパターン)の開始点から終了点に向けて、図示の超音波半田コテ先端13に半田14を自動供給して溶融しつつ超音波を印加して当該アルミニウム焼結膜12の上を擦らない程度に近接させた状態で一定速度で移動させ、アルミニウム焼結膜12の上に短冊状の予備半田パターンを形成する。
【0055】
以上によって、本願発明のSnZn半田14をアルミニウム焼結膜12の上に所定パターンの予備半田パターンを半田付けすることが可能となる。
【0056】
図4の(b)は、リボン又はワイヤーのハンダ付け例を示す。
【0057】
図4の(b)において、超音波半田コテ先端13ー1は、図示外の超音波発生器から超音波を印加しつつあるいは超音波を印加しないで、加熱される半田コテ先端である。
【0058】
半田付きリボン又はワイヤー15は、リボンまたはワイヤーに本願発明のSnZn半田を予め予備半田付けしたものである。尚、ワイヤー15は楕円形に少し変形させた方が半田付け性が良好である。
【0059】
次に、リボン又はワイヤーの予備半田パターン部分への半田付け動作を説明する。
【0060】
(1)
図4の(a)と同様に、シリコン基板11を予備加熱する。
【0061】
(2)半田付きリボン又はワイヤー14をシリコン基板11の上(裏面)のアルミニウム焼結膜12の部分に形成した予備半田パターン部分に、沿わせて配置した半田付きリボン又はワイヤー15について、上から超音波有又は超音波無半田コテ先端13ー1で軽く押さえつつ図示の右方向に一定速度で移動させ、半田付きリボン又はワイヤー15の半田を溶融して予備半田パターン部分に半田付けする。
【0062】
以上によって、本願発明のSnZn半田14を予め予備半田したリボン又はワイヤー15を、アルミニウム焼結膜12の上の予備半田パターンの部分に半田付けすることが可能となる。
【0063】
尚、本発明の超音波有りの半田付けや超音波無しの半田付けの良否は、リボン又はワイヤーを半田付け対象部分に超音波有りの半田付けあるいは超音波無しの半田付けを行い、リボン又はワイヤーを引っ張って基板等が割れる力よりも僅かに弱い力で引っ張り、基板等から剥がれないときに良、剥がれたときに不良と判定する。
【0064】
図5は、本発明の半田の組成例(ABS-S)を示す。
【0065】
図5において、母材、主材、副材は、
図1で説明した母材、主材、副材の区別である。
【0066】
組成例は、母材、主材、副材の組成例である。
【0067】
wt%例は、母材、主材、副材の組成のwt%の例である。
【0068】
wt%範囲は、母材、主材、副材の組成のwt%の範囲例である。
【0069】
図5に図示の下記のように組成、wt%例、wt%範囲はなる。
【0070】
母材 主材 副材
組成例 SnZn合金 P In Bi Al Si Cu Ag
wt%例 Sn Zn CuP8 In Bi Al Si Cu Ag
91 9 0.3 0.3 0.3 0.3 0.3 0.3 0.3
wt%範囲 99-85 1-15 微量-0.1(P) 0.1-1.0 微量-0.5 各5Wwt以下
ここで、組成例として、試作では母材は図示のSn91wt%、Zn9wt%を用いた。また、組成範囲は、SnZn合金が作成可能な範囲で安定であればよく、例えばZn1から15wt%、残りをSnとしたものでよく、作成したSnZn母材の溶融温度などを実測して実験で決めればよい。
【0071】
主材として、P,In,Bi、Sbなどがあるが、Pは試作ではP(赤リン)と、CuP8合金(Pが8wt%、残余がCuの合金、Pのwt%はCuP8の8%となるリン化銅)とを用いた。尚、P(赤リン)を約0.1wt%添加(P飽和状態)した場合と、CuP8中のPを主材として添加した場合には約0.16wt%(P飽和状態)と多く添加する必要があった。Pの場合には約0.1wt%(またはCuP8の場合には約P=0.16wt%)で飽和、更に添加すると過飽和となり、SnZn半田の粘性が大幅に増大してしまう。そのため、流動性、濡れ性などを確保する通常の使用には、Pの飽和以下の添加を行うことが望ましい。Pの場合には非常に微量(約0.001wt%程度の微量)でもよい。また、Pの飽和、過飽和でも用途によっては適宜、使えばよい。同様に、他の主材にもその傾向があるので必要に応じて実験で最適な添加量を決めればよい。
【0072】
また、主材の総量は1ないし1.5wt%以下が望ましかった。この主材の総量1ないし1.5wt%以下を母材(Sn91wt%,Zn9wt%)に混合・溶融・合金化した本願発明のSnZn半田は、母材の溶融温度(例えば195℃前後)に比し、同じあるいは1ないし5℃低い溶融温度が実測された。これは、主材の総量1ないし1.5wt%以下が母材(SnZn合金)の骨格の内部に取り込まれて骨格が再構成され、その結果、溶融温度が等しいあるいは低下したものと推測される。尚、ルツボ内で混合・溶融・合金化時に網目状の骨格が現れ、これを攪拌して全体を溶解して溶融させると一様な合金となることが観察されたことからも推測される。
【0073】
また、副材は、太陽電池基板、液晶基板などがシリコン、シリコンの上にアルミニウム焼結膜などが存在するので、Si、Al,更にCu(銅線、銅パターンなど)、Ag(焼結電極)、Ni(シリコンの表面へのニッケルメッキ)などを考慮して添加したものであって、電気的特性(接触電位差、接触抵抗、太陽電池の場合にはI-V特性など)や、更に接合強度等を改善するものである。
【0074】
図6は、本発明の半田試作例を示す。図示は、多数を試作したうち、既述した
図4の半田付けに使用可能なものの例を示す。使用不可のものは省略した。
【0075】
図6において、本発明のSnZn半田(
図1のS4で製造したSnZn半田)の母材は、Sn91wt%,Zn9wt%を用いた。
【0076】
副材は、Al、Si(他は省略)を用いた。
【0077】
主材は、In、Bi、P(赤リン)は金属の材料を用いた。CuP8はPが8wt%で残余がCuのリン化銅を用いた。尚、既述したように、CuP8を用いた場合にはこのうちのPの添加量を0.16wt%相当にしないと飽和しなかった(P(赤リン)では0.1wt%で飽和した)。
【0078】
サンプルNoは、試作したサンプルの番号である。
【0079】
以上の試作サンプルNoについて、既述した
図5の超音波有半田付け、超音波無半田付けし、良好なもののみを記載した。半田付け不可のものは省略した。
【0080】
図7は、本発明の半田のTCテスト説明図を示す。ここで、TCテストに使用したのは、既述した
図6のサンプルNo「A-14」である。
【0081】
図7の(a)は、ABS-S半田(A-14)のTCテスト例を模式的に示す。現時点では、TCテストは1000時間を超えた(更に継続中である)。
【0082】
図7の(b)は、サンプル写真の例を示す。図示のように、銅線をアルミ板、シリコン面、アルミ面にA-14を用いて半田付け(超音波半田付け、あるいはひっかきキズをつけ半田付け)した。
【0083】
図7の(c)は、TCテストの温度条件例を示す。ここでは、図示のように、
・最大温度は 87.5℃
・最小温度は-24、4℃
・最大湿度は 98.3%
・最小湿度は 1.6%
の条件でTCテストを実施した。
【0084】
図7の(d)は、テスト環境と結果の例を示す。ここでは、図示のように、
(1) 試験期間は2019年5月1日から6月12日(1000時間)
(2) 銅線をアルミ板、シリコン板、アルミ面に半田A-14で接合
(3) 高温条件は高温炉で80℃に入れる。サンプルを入れてから昇温させる。
【0085】
(4) 低温条件は冷凍庫に-20℃に入れる。
【0086】
(5) 交換はサンプルを常温で放置せずにすぐに入れ替える。
【0087】
テスト結果は、半田が崩れることがなく問題ない。
【0088】
以上のテスト条件で1000時間のTCテストを実施した結果、サンプルNo「A-14」について、テスト合格の結果が得られた。
【0089】
図8は、本発明の半田(A-14)のTCテスト例を示す。
【0090】
図8において、横軸は経過時間(h)を表す。縦軸は温度(℃)/湿度(%)を表し、グラフ中の上部のグラフは湿度を示し、下部のグラフは温度を示す。
【0091】
図8において、グラフ中の下部の温度グラフは、
・高温(最大温度)が
図7の(c)に記載の87.6℃
・低温(最小温度)が
図7の(c)に記載の-24.4℃
であり、1000時間経過までの記録を示す。
【0092】
図8において、グラフ中の上部の湿度グラフは、
・最大湿度が
図7の(c)に記載の98.3%
・最小湿度が
図7の(c)に記載の1.6%
であり、1000時間経過までの記録を示す。
【0093】
図9は、本発明の超音波(擦る)/ペースト例を示す。ここで、
図9中の
・「ペースト/超音波(擦る)」は、本発明のSnZn半田を用いて半田付け対象物に半田付けする場合の「超音波有りで半田付け」、「超音波無しでコテ先で半田付け対象物を擦る」、「ペーストの塩化アンモニウム(NH4Cl)・水和物(3wt%以下、0.05wt%以上)を用いる」、「ペーストの塩化アンモニウム・無水物(3wt%以下、0.05wt%以上)を用いる」、「ペーストのレジン(松脂)(3wt%以下、0.05wt%以上)を用いる」の区別である。
【0094】
・半田付け対象物は、本発明のSnZn半田を用いて半田付けする対象の材料であって、Si(ウェハ、約0.2mm厚)、ウェハ上に焼結したAl焼結膜、Cu(0.1mm厚板)、Al(0.1mm厚板)、ステンレス(0.1mm厚板)の区別である。
【0095】
・◎は、本発明のSnZn半田の半田付け対象への密着優良(0.4mmφの錫メッキ線を半田付けして引っ張ったときにシリコンウェハが割れる力(引張強度)のときに密着優良と判定)を表す。
【0096】
・〇は、本発明のSnZn半田の半田付け対象への密着良(0.4mmφの錫メッキ線を半田付けして引っ張ったときにシリコンウェハが割れる力ないし少し弱い力(引張強度)のときに密着良と判定)を表す。
【0097】
・△は、本発明のSnZn半田の半田付け対象への密着弱(0.4mmφの錫メッキ線を半田付けして引っ張ったときにすぐにはがれる状態)を表す。
【0098】
・×は、本発明のSnZn半田の半田付け対象への密着不良を表す。
【0099】
以上の
図9の実験から、「超音波有り」、「超音波無してコテ先で半田付け対象物を擦る」の場合に、Siウェハ、Al焼結膜、Cu,Al、ステンレスに対して十分な半田付け強度が得られることが判明した。
【0100】
更に、塩化アンモニウム・水和物(3wt%以下、0.05wt%以上)を用いた場合にはCu、Alの場合に十分な半田付け強度が得られることが判明した。
【0101】
更に、レジン(松脂)(3wt%以下、0.05wt%以上)を用いた場合にはCuの場合に十分な半田付け強度が得られることが判明した。
【0102】
尚、実験に用いた粉末混入の本発明のSnZn半田は、太い棒状の半田の中心に穴(約1-3mm程度)をあけ、あるいは切込みを入れるなどし、この穴の内部あるいは切込みの内部などに所定量の粉末(例えば塩化アンモニウム・水和物あるいはレジン等の粉末)を入れ、圧延ローラ(溝付)で複数回繰り返して順次細い棒状に伸ばし、最終的には約1mmφ程度あるいは1mm角程度の糸状半田に加工(圧延)する。この糸状半田の断面の中心付近には、前記入れた(混入した)粉末を観察できる。そして、コテ先を半田付け対象(例えばCu板等、必要に応じて予備加熱台(例えば180℃)に裁置)に当てて加熱しながら当該糸状半田を溶融し、該糸状半田に混入した粉末(例えば塩化アンモニウム・水和物の粉末)を分解して半田付け対象の部分への大幅な密着性の改善を試みた(例えばCu板の場合には大幅に密着性を改善できた。
図9参照)。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【
図3】本発明のリード結線のハンダ付け説明図である。
【
図5】本発明の半田の組成例(ABS-S)である。
【
図8】本発明の半田(A-14)のTCテスト例である。
【
図9】本発明の超音波(擦る)/ペースト例である。
【符号の説明】
【0104】
1:半田材料
2:半田材料投入皿
3:溶融炉
4:ヒーター
11:シリコン基板
12:アルミニウム焼結膜
13:超音波半田コテ先端
13-1:超音波有又は超音波無半田コテ先端
14:半田
15:半田付きリボン又はワイヤー