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特許7572021離間距離調整手段および離間距離調整手段の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】離間距離調整手段および離間距離調整手段の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/00 20060101AFI20241016BHJP
   B66F 3/24 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B23Q1/00 T
B66F3/24 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024106595
(22)【出願日】2024-07-02
【審査請求日】2024-07-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 〔ウェブサイトによる公開〕 (ウェブサイト1) ウェブサイト名:INTERMOLD 2024(第35回金型加工技術展)/金型展2024のウェブサイト 掲載アドレス:https://www.intermold.jp/outline/search_2024_detail/70/ 掲載年月日:2024年4月1日 (ウェブサイト2) ウェブサイト名:七宝金型工業のインスタグラム 掲載アドレス:https://www.instagram.com/shippo_kanagata/p/C57IbGdP22R/?img_index=1 掲載年月日:2024年4月19日 (ウェブサイト3) ウェブサイト名:日刊工業新聞のウェブサイト 掲載アドレス:https://www.nikkan.co.jp/spaces/view/0076097 掲載年月日:2024年5月2日 (ウェブサイト4) ウェブサイト名:金型しんぶんONLINE 掲載アドレス:https://kanagata-shimbun.com/202404_sippoukanagata_jyaki/ 掲載年月日:2024年5月6日 (ウェブサイト5) ウェブサイト名:七宝金型工業のYoutubeチャンネル 掲載アドレス:https://www.youtube.com/watch?v=-haW4Gbcw2s 掲載年月日:2024年5月13日 (ウェブサイト6) ウェブサイト名:INTERMOLD 名古屋/金型展名古屋のウェブサイト 掲載アドレス:https://www.intermold.jp/nagoya/outline/search_2024_detail/41/ 掲載年月日:2024年6月3日 〔刊行物による公開〕 (刊行物1) 発行者名:株式会社金型新聞社 刊行物名:金型しんぶん(2024年4月10日号) 発行年月日:2024年4月10日 (刊行物2) 発行者名:株式会社日刊工業新聞社 刊行物名:日刊工業新聞(2024年5月2日号) 発行年月日:2024年5月2日 〔展示による公開〕 (展示会1) 展示会名:INTERMOLD 2024(第35回金型加工技術展)/金型展2024 展示日:2024年4月17日 (展示会2) 展示会名:INTERMOLD 名古屋/金型展名古屋 展示日:2024年6月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517401381
【氏名又は名称】七宝金型工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143111
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 秀夫
(74)【代理人】
【識別番号】100189876
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 将晴
(72)【発明者】
【氏名】松岡 寛高
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 房臣
(72)【発明者】
【氏名】野場 純一
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-285995(JP,A)
【文献】特開2002-020084(JP,A)
【文献】特開2007-120283(JP,A)
【文献】特開昭51-120548(JP,A)
【文献】特開平09-048595(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109264614(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0183057(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00
B66F 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台とワークとの間の離間距離を調整する離間距離調整手段において、
前記離間距離調整手段は、基部と天板部と油槽部と加圧調整手段とからなり、
前記天板部は、湾曲可能な平坦な板体からなると共に天面を複数に区画させる端部が開放された筋状溝を備え、
前記油槽部は、前記基部と前記天板部とに挟まれ油槽をなすと共に圧力調整油が充填されてなり、
前記加圧調整手段が、前記基部の側面から前記油槽部に至る筒状経路部と、前記筒状経路部に前記基部の側面から挿入される圧力調整蓋とを含み、
前記圧力調整蓋をなす雄ネジの螺合進退により、前記圧力調整蓋とピストンとに接したベアリング球を介して、前記筒状経路部に配された前記ピストンを進退させて、前記筒状経路部と前記油槽部とに封入された前記圧力調整油の圧力を調整させ前記天板部の膨出高さを調整させ、
前記筋状溝が、前記天板部と前記ワークとの固着防止手段として機能され、
前記ベアリング球が、前記油槽部の加圧解除の際に、前記圧力調整蓋への前記ピストンの後退追従を容易とし、
前記圧力調整油の圧力が前記螺合進退により調整され、前記膨出高さが調整されても、前記ピストンが前記雄ネジの後退に追従され、前記天板部と前記ワークとが固着されない、
ことを特徴とする離間距離調整手段。
【請求項2】
前記油槽部が、前記基部の内部に扁平な空洞をなすように切削されてなり、
前記天板部が、金属粉のレーザ焼結により形成されて、前記基部の周囲に連なって一体に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の離間距離調整手段。
【請求項3】
前記天板部と前記油槽部と前記基部が重なって、中央貫通孔を有するドーナツ形状に沿って形成され、
前記離間距離調整手段が、前記ワーク又は基台壁部のいずれかから水平方向に突出された係止部に、前記中央貫通孔を通して係止され、前記ワークと前記基台壁部との間の水平方向の離間距離を調整させる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の離間距離調整手段。
【請求項4】
前記天板部と前記油槽部と前記基部が重なって、開放端部を有する馬蹄形状に沿って形成され、
前記離間距離調整手段が、前記ワーク又は基台壁部のいずれかから水平方向に突出された爪部に、前記開放端部から挿し込まれて、着脱可能に引掛けられ、前記ワークと前記基台壁部との間の水平方向の離間距離を調整させる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の離間距離調整手段。
【請求項5】
基台とワークとの離間距離を調整する離間距離調整手段の製造方法において、
前記離間距離調整手段は、基部と、湾曲可能な平坦な板体からなると共に天面を複数に区画させる端部が開放された筋状溝を備えた天板部と、前記基部と前記天板部とに挟まれ油槽をなすと共に圧力調整油が充填された油槽部と、前記基部の側面から前記油槽部に至る筒状経路部と、前記筒状経路部に前記基部の側面から挿入される圧力調整蓋とを含んだ加圧調整手段とからなり、前記圧力調整蓋をなす雄ネジの螺合進退により、前記圧力調整蓋とピストンとに接したベアリング球を介して、前記筒状経路部に配された前記ピストンを進退させて、前記筒状経路部と前記油槽部とに封入された前記圧力調整油の圧力を調整させ前記天板部の膨出高さを調整させ、前記筋状溝が、前記天板部と前記ワークとの固着防止手段として機能され、前記ベアリング球が、前記油槽部の加圧解除の際に、前記圧力調整蓋への前記ピストンの後退追従を容易とさせる離間距離調整手段であって、
前記基部を切削加工させる第1工程と、前記天板部を形成させる第2工程と、前記油槽部に圧力調整油を充填させる第3工程とを含み、
第1工程において、前記油槽部と、前記油槽部から前記基部の側面に至る筒状経路部と、前記油槽部から前記基部の底面に至る抜気孔とを切削加工させ、
第2工程において、金属粉のレーザ焼結により前記天板部を、前記油槽部の外周壁の天部の外周から内方にかけて、前記基部と一体に形成させ、
第3工程において、前記筒状経路部又は前記抜気孔から前記油槽部に前記圧力調整油を注入させてから、前記筒状経路部に、順に前記ピストンと前記ベアリング球を入れ、前記圧力調整蓋を前記ベアリング球に接しさせて仮締め螺合させると共に、前記抜気孔に抜気孔閉塞蓋を仮締め螺合させ、まず前記圧力調整蓋を本締め螺合させつつ、前記抜気孔と前記抜気孔閉塞蓋との隙間から、前記筒状経路部に封入された前記圧力調整油から全ての空気を抜気させてから、前記抜気孔閉塞蓋を本締め螺合させる、
ことを特徴とする離間距離調整手段の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い設置精度が必要とされる製造機器を基台に設置する際に、製造機器と基台との離間距離を調整する離間距離調整手段および離間距離調整手段の製造方法に関する。詳細には、製造機器を基台に設置する設置支持点における離間距離を、0.01mm単位で容易に調整できる離間距離調整手段および離間距離調整手段の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造機器(以下、ワークという。)により高い精度で製品を製造するためには、ワークに歪が発生しないように、ワークを安定した設置状態で設置することが必要である。近年、金型等の重量物だけでなく、電子部品、例えばシリコンウェハー等の高い製品精度が必要な物の製造機器、又は、内部を流体が流れる製造機器等の設置作業において、ワークを高い設置精度で設置することが必要とされてきている。
【0003】
具体的には、ワークと基台とを複数の設置支持点で接しさせ、各設置支持点においてワークと基台との離間距離が調整されて、ワークが設置されることが必要である。従来は、スクリュージャッキによりワークを持上げて、設置支持点におけるワークと基台との離間距離が調整されていた。しかしスクリュージャッキによりワークを持上げる際には、螺旋形式のネジ部にガタが発生するため、高い精度で離間距離を調整することができないという課題があった。
【0004】
ワークを基台の上に高い水平設置精度で設置するためには、ワークを基台の上に位置させ、ワークがほぼ水平になるようにし、重量が大きなワークの場合にはクレーンで吊り上げて、ワークが基台に接する設置支持点における隙間に、金属製薄板(以下、シム板という)を挟んで水平調整がされてきた。
【0005】
ワークが重量物である場合、例えば金型の場合には、複数の設置支持点の夫々において、シム板を挟んで、金型と基台との離間距離を調整する必要があるため、手間と時間がかかっていた。具体的には、クレーンオペレータとシム板挿し込み作業員とが対になって、各々の設置支持点において、クレーンによりワークを昇降させて、金型と基台との隙間にシム板を挿し込んで金型と基台との離間距離を調整する必要があった。
【0006】
ワークを歪ませないように水平に設置するためには、全ての設置支持点においてシム板の厚さ・枚数の調整が必要になり、既に設置した設置支持点においてシム板の交換が必要になることもあり、ワークを水平に設置するために、手間と時間を要していた。
【0007】
特に、ワークの水平設置精度に高い精度が求められる場合には、ワークと基台との離間距離が0.01mm単位で調整が必要な場合もある。ワークが重量物の場合には、ワークの天面が概ね水平になるように、クレーンにより吊り上げてから、ワークと基台とが接する各々の設置支持点におけるワークと基台との隙間にシム板を挿し込んで、仮の水平設置がされていた。
【0008】
ワークの天面の仮の水平状態は、再度クレーンによりワークを持上げて、いずれかの設置支持点の位置のシム板の厚さ又は枚数を変えて調整する必要があった。またワークを吊り上げて、基台の上に下降させる際にも、水平位置ずれが発生しやすく、各設置支持点の離間距離を高い精度、例えば0.01mm単位で調整することは非常に困難であった。
【0009】
シム板の挿し込みによる調整作業は、クレーンの占有時間も長くなり、手間と時間を要するという課題があった。このような背景のもと、シム板で高さ調整をしないでも、ワークの傾斜状態を高い精度で簡単に調整できる離間距離調整手段の提供が求められていた。
【0010】
特許文献1には、ジャッキの高さを、円筒型油圧ジャッキよりも低くすることができる扁平ジャッキの技術が開示されている。この文献に記載の技術によれば、扁平ジャッキをなす気密性扁平嚢体に油圧ユニットから圧油を供給させることにより、橋梁等を支持する低い設置空間でも、対象物を持ち上げることができるとされている。
【0011】
しかし、特許文献1に記載の技術によれば、前後方向に膨出部を有する気密性扁平嚢体を、夫々所定の形状に屈曲させた上方の薄板と下方の薄板とを側板に溶接して形成させているため、製造に手間がかかると共に、支える重量物の底面の形状によっては、前後方向の膨出部が不均一に膨らみ、高い精度で設置調整することが困難であるという課題があった。
【0012】
特許文献2には、基礎工事、橋梁工事等において重量物を精度よく昇降させることのできるジャッキ装置の技術が開示されている。この文献に記載の技術によれば、重量物の下方に挿し込む爪部を、昇降枠と一体に成形させ、油圧シリンダーにより昇降させるピストンロッドにより昇降枠と爪部を一体に昇降させ、爪部に載せられた重量物を昇降させるとされている。
【0013】
しかし、特許文献2に記載の技術によれば、昇降枠と一体に昇降させる爪部を、油圧シリンダーにより昇降させて重量物を昇降させている。爪部と一体をなす昇降枠が傾斜することにより、ワークが傾斜することになるため、高い精度がだせないだけでなく、ジャッキ装置の高さが高くなり、ワークと基台の隙間が狭小である場合には適用できないという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
特許文献1:特開2003-285995号公報
特許文献2:特開2003-2590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、設置させるワークと基台との離間距離を0.01mm単位で容易に調整できる離間距離調整手段および離間距離調整手段の製造方法を提供することである。より具体的には、シム板を挟んで高さ調整をしなくても、簡単に、高い精度でワークの設置状態を調整できる離間距離調整手段を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の発明の離間距離調整手段は、基台とワークとの間の離間距離を調整する離間距離調整手段において、前記離間距離調整手段は、基部と天板部と油槽部と加圧調整手段とからなり、前記天板部は、湾曲可能な平坦な板体からなると共に天面を複数に区画させる端部が開放された筋状溝を備え、前記油槽部は、前記基部と前記天板部とに挟まれ油槽をなすと共に圧力調整油が充填されてなり、前記加圧調整手段が、前記基部の側面から前記油槽部に至る筒状経路部と、前記筒状経路部に前記基部の側面から挿入される圧力調整蓋とを含み、前記圧力調整蓋をなす雄ネジの螺合進退により、前記圧力調整蓋とピストンとに接したベアリング球を介して、前記筒状経路部に配された前記ピストンを進退させて、前記筒状経路部と前記油槽部とに封入された前記圧力調整油の圧力を調整させ前記天板部の膨出高さを調整させ、前記筋状溝が、前記天板部と前記ワークとの固着防止手段として機能され、前記ベアリング球が、前記油槽部の加圧解除の際に、前記圧力調整蓋への前記ピストンの後退追従を容易とし、前記圧力調整油の圧力が前記螺合進退により調整され、前記膨出高さが調整されても、前記ピストンが前記雄ネジの後退に追従され、前記天板部と前記ワークとが固着されないことを特徴としている。
【0017】
第1の発明によれば、基台とワークとの間に介在させた離間距離調整手段の天板部を油圧により変形させ、上方に凸に膨出させて、ワークと基台との離間距離を調整させている。そのためワークを高い精度で設置する際にも、クレーンを使ってワークを基台から離間させ、ワークと基台との隙間にシム板を挿し込んでワークの離間距離を調整する必要がない。離間距離調整手段は、天板部が湾曲可能な平坦な板体とされ、一部が不均一に膨らまないようにされている。天板部を滑らかに膨出させることができるように円形形状が好適であるが、ドーナツ形状、馬蹄形状であってもよく限定されない。
【0018】
本発明では、クレーンでワークを吊り上げて所定の水平位置に位置させてからは、ワークと基台の離間状況を確認しつつ、加圧調整手段により圧力調整油の圧力を調整して、離間距離調整手段をなす天板部を弾性範囲で膨出させればよく、調整単位が0.01mm単位の高い精度で必要な場合であっても、離間距離の調整が容易である。
【0019】
ワークによっては、離間距離を高い精度で調整するために、ワークの天板部に接する面も平滑に研磨させることがある。しかし、高い精度で平滑に仕上げられた2面を密着させたときに、容易には分離できない程の固着力が発生することがある。そこで、天板部に固着防止手段としての筋状溝を備えさせ、ワークとの固着を防止させている。
【0020】
固着防止手段をなす筋状溝は、離間距離調整手段の天板部が複数に区画されるように配されればよく、筋状溝の数、形状は限定されない。離間距離調整手段は、天板部が高い平坦面精度で加工されていても、筋状溝から天板部とワークとの間に空気が流通され、離間距離調整手段とワークとの固着が防止される。第1の発明によれば、基台とワークとの離間距離を0.01mm単位の高い精度で調整できると共に、ワークが重量物であっても離間距離調整手段がワークに固着しないという、従来にない効果を奏する。
【0021】
また、筒状経路部を塞ぐ圧力調整蓋の進退により、筒状経路部と連なっている油槽部の圧力が調整される。圧力調整蓋が筒状経路部に螺合されているため、圧力調整蓋の螺合角度を調整するだけで、筒状経路部と油槽部とに封入された圧力調整油の圧力が調整され、天板部の膨出の高さが決定できる。これにより、天板部の膨出の高さ、換言すれば、ワークと基台との離間距離を圧力調整蓋の螺合進退だけで決定することができ、離間距離の調整が容易であるという効果を奏する。
【0022】
更に、圧力調整蓋をなす雄ネジの螺合進退により、圧力調整蓋とピストンとに接したベアリング球を介して、筒状経路部に配されたピストンを進退させている。これにより、圧力調整蓋を螺合後退させて油槽部の加圧を解除させるときに、圧力調整蓋へのピストンの後退追従を容易とすることができるという従来技術にはない有利な効果を奏する。
【0023】
本発明の第2の発明は、第1の発明の離間距離調整手段であって、前記油槽部が、前記基部の内部に扁平な空洞をなすように切削されてなり、前記天板部が、金属粉のレーザ焼結により形成されて、前記基部の周囲に連なって一体に形成されていることを特徴としている。
【0024】
第2の発明によれば、切削加工により基部に油槽部を形成させてから、基部を覆う天板部を、金属粉のレーザ焼結により形成させ、離間距離調整手段を製造させている。これにより、油槽部と天板部を多様な形状に形成させることができる。また、レーザ焼結により形成させる部分が天板部だけでよく、離間距離調整手段の全体の加工時間を短縮させ、高い製造効率で製造することができる。
【0025】
本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明の離間距離調整手段であって、前記天板部と前記油槽部と前記基部が重なって、中央貫通孔を有するドーナツ形状に沿って形成され、前記離間距離調整手段が、前記ワーク又は基台壁部のいずれかから水平方向に突出された係止部に、前記中央貫通孔を通して係止され、前記ワークと前記基台壁部との間の水平方向の離間距離を調整させることを特徴としている。
【0026】
本発明の第3の発明によれば、離間距離調整手段が中央貫通孔を有するドーナツ形状に形成されている。基台壁部又はワークのいずれかから水平方向に突出させた係止部を、中央貫通孔に通して離間距離調整手段を係止させることができる。これにより、ワークを水平方向に高い精度で所定位置に設置することができるという効果を奏する。
【0027】
本発明の第4の発明は、第1又は第2の発明の離間距離調整手段であって、前記天板部と前記油槽部と前記基部が重なって、開放端部を有する馬蹄形状に沿って形成され、前記離間距離調整手段が、前記ワーク又は基台壁部のいずれかから水平方向に突出された爪部に、前記開放端部から挿し込まれて、着脱可能に引掛けられ、前記ワークと前記基台壁部との間の水平方向の離間距離を調整させることを特徴としている。
【0028】
本発明の第4の発明によれば、離間距離調整手段が開放端部を有する馬蹄形状に形成されている。離間距離調整手段は、基台壁部又はワークのいずれかから水平方向に突出させた爪部に、開放端部から挿し込まれて、着脱可能に引掛けられる。水平位置調整をしてからは、加圧調整手段による加圧を除去し天板部を平坦に戻して、爪部から開放端部を引き抜くことにより、離間距離調整手段を取り外すことができる。これにより、離間距離調整手段を再利用することができるという効果を奏する。
【0029】
本発明の第5の発明は、基台とワークとの離間距離を調整する離間距離調整手段の製造方法において、前記離間距離調整手段は、基部と、湾曲可能な平坦な板体からなると共に天面を複数に区画させる端部が開放された筋状溝を備えた天板部と、前記基部と前記天板部とに挟まれ油槽をなすと共に圧力調整油が充填された油槽部と、前記基部の側面から前記油槽部に至る筒状経路部と、前記筒状経路部に前記基部の側面から挿入される圧力調整蓋とを含んだ加圧調整手段とからなり、前記圧力調整蓋をなす雄ネジの螺合進退により、前記圧力調整蓋とピストンとに接したベアリング球を介して、前記筒状経路部に配された前記ピストンを進退させて、前記筒状経路部と前記油槽部とに封入された前記圧力調整油の圧力を調整させ前記天板部の膨出高さを調整させ、前記筋状溝が、前記天板部と前記ワークとの固着防止手段として機能され、前記ベアリング球が、前記油槽部の加圧解除の際に、前記圧力調整蓋への前記ピストンの後退追従を容易とさせる離間距離調整手段であって、前記基部を切削加工させる第1工程と、前記天板部を形成させる第2工程と、前記油槽部に圧力調整油を充填させる第3工程とを含み、第1工程において、前記油槽部と、前記油槽部から前記基部の側面に至る筒状経路部と、前記油槽部から前記基部の底面に至る抜気孔とを切削加工させ、第2工程において、金属粉のレーザ焼結により前記天板部を、前記油槽部の外周壁の天部の外周から内方にかけて、前記基部と一体に形成させ、第3工程において、前記筒状経路部又は前記抜気孔から前記油槽部に前記圧力調整油を注入させてから、前記筒状経路部に、順に前記ピストンと前記ベアリング球を入れ、前記圧力調整蓋を前記ベアリング球に接しさせて仮締め螺合させると共に、前記抜気孔に抜気孔閉塞蓋を仮締め螺合させ、まず前記圧力調整蓋を本締め螺合させつつ、前記抜気孔と前記抜気孔閉塞蓋との隙間から、前記筒状経路部に封入された前記圧力調整油から全ての空気を抜気させてから、前記抜気孔閉塞蓋を本締め螺合させることを特徴としている。
【0030】
第5の発明によれば、第1工程で切削加工により油槽部と筒状経路部とを備える基部を形成させ、第2工程で天板部をレーザ焼結により形成させている。これにより、基部を任意の形状として、その基部の上に油圧により膨出可能なように薄い天板部を一体に、高い製造効率で形成させることができる。また、第3工程で、圧力調整油を油槽部に充填させた後に、筒状経路部に、順にピストンとベアリング球を入れ、圧力調整蓋をベアリング球に接しさせてから、圧力調整蓋と抜気孔閉塞蓋とを仮締めしたうえで、圧力調整蓋を増し締めして本締めしつつ、仮締めした抜気孔閉塞蓋から油槽部内に残留した空気を完全に抜気させ、抜気孔閉塞蓋を本締めさせている。
【0031】
そのため、オイルよりも粘度が高く、油漏れを起こしにくいグリスを油槽部に充填させた場合であっても、油槽部の中に気体を残留させない。これにより、圧力調整蓋を螺合進退させることによる離間距離の調整が容易であり、且つ、任意の平面形状とされた離間距離調整手段を高い製造効率で製造することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0032】
・本発明の第1の発明によれば、基台とワークとの離間距離を0.01mm単位の高い精度で調整できると共に、ワークが重量物であっても離間距離調整手段がワークに固着しないという、従来にない効果を奏する。また、ワークと基台との離間距離を圧力調整蓋の螺合進退だけで決定することができ、離間距離の調整が容易であるという効果を奏する。更に、圧力調整蓋を螺合後退させて油槽部の加圧を解除させるときに、圧力調整蓋へのピストンの後退追従を容易とすることができるという従来技術にはない有利な効果を奏する。
・本発明の第2の発明によれば、油槽部と天板部を多様な形状に形成させることができ、離間距離調整手段を高い製造効率で製造することができる。
【0033】
・本発明の第3の発明によれば、ワークを水平方向に高い精度で所定位置に設置することができるという効果を奏する。
・本発明の第4の発明によれば、離間距離調整手段を再利用することができるという効果を奏する。
・本発明の第5の発明によれば、圧力調整蓋を螺合進退させることによる離間距離の調整が容易であり、且つ、任意の平面形状とされた離間距離調整手段を、高い製造効率で製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】離間距離調整手段の斜視図(実施例1)。
図2】天板部の膨出を説明する断面図(実施例1)。
図3】ワークの水平設置精度を調整する説明図(実施例1)。
図4】基部を切削加工させる第1工程の説明図(実施例1)。
図5】天板部をなす金属粉をレーザ焼結させる第2工程の説明図(実施例1)。
図6】天板部を研磨する研磨工程の説明図(実施例1)
図7】グリスを充填させる第3工程の説明図(実施例1)。
図8】ドーナツ形状をなす離間距離調整手段の具体例(実施例2)。
図9】馬蹄形状をなす離間距離調整手段の具体例(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0035】
基台とワークとの間に介在させ、加圧調整手段により加圧し、基台とワークとの離間距離を0.01mm単位で調整できる離間距離調整手段を、天板部と基部と油槽部と加圧調整手段とから構成した。更に、天板部に固着防止手段として機能する筋状溝を備えさせ、天板部を高い精度で平滑に研磨させても、天板部とワークとの間に固着を発生させないようにした。
【実施例1】
【0036】
実施例1では、短円柱形状をなしている離間距離調整手段1を、図1から図7を参照して説明する。なお、理解を容易にするため、図7を除いて、油槽部に充填させる圧力調整油の図示を省略している。図1(A)図は、離間距離調整手段の分解斜視図を示し、図1(B)図は、一体の離間距離調整手段の斜視図を示している。図2は天板部の膨出を説明する断面図を示し、図2(A)図は、膨出させる前の状態を示し、図2(B)図は膨出させた後の状態を示している。
【0037】
図3は、基台とワークとの離間距離を調整し、ワークの水平設置精度を調整する場合の説明図を示している。図3(A)図は、仮の水平状態を示し、図3(B)図は、調整後の状態を示している。図4から図7は離間距離調整手段の製造方法の工程図を示している。図4は、基部を切削加工させる第1工程の工程図を示し、図5は、天板部を金属粉のレーザ焼結により形成させる第2工程の工程図を示し、図6は天板部の研磨工程を示し、図7はグリスを充填させる第3工程の工程図を示している。
【0038】
離間距離調整手段1は、天板部10と基部20と油槽部30と加圧調整手段40とからなる。離間距離調整手段1の外形寸法・形状は限定されないが、実施例1では金型の加工作業等に適する、直径が約70mm、基部の高さが約25mm、天板部の板厚が約5mmとされている具体例を示している。
【0039】
天板部10をなす金属の材質は、例えばJIS規格のG4404合金工具鋼鋼材に規定されている熱間金型用の合金鋼であるSKD61等が好適であるが、これに限定されない。基部20をなす金属の材質は、SKD61のほか、JIS規格のG4051機械構造用炭素鋼鋼材に規定されている炭素鋼材であるS45C等が好適であるが、これに限定されない。
【0040】
天板部10は、基部20と一体をなす平坦な板体からなり、天面には固着防止手段をなす、格子状筋状溝11が約10mmの間隔で配設されている。筋状溝は、端部12が天板部10の側面までに延びている。筋状溝の端部12から、ワークと天板部との間に空気が流通可能であると共に、天板部10の天面が複数の区画をなすように、各々の筋状溝により区画されている。
【0041】
天板部10の天面は、基部20の底面と平行面をなすように研磨されている。研磨の精度は限定されないが、例えば、JIS規格のB0601:2013に規定されている算術平均粗さRaが、0.03μm以上0.15μm以下であると好適である。
【0042】
基部20は、金属製の円柱を短尺に切り出すと共に、内部に油槽部30と、加圧調整手段40をなす筒状経路部41と、抜気孔31とを切削加工させてなる。圧力調整油を充填させる油槽部30は、天板部と接する基部の上端面に形成された扁平な円形窪部からなり、基部20と天板部10とに挟まれた油槽をなしている。油槽部の直径・深さは限定されず、基部の直径・高さ、筒状経路部の直径等に応じて決定すればよい。また、油槽部底面と外周壁32とのなす隅部に湾曲部33を備えさせると、油槽部から抜気をしやすいため好適である。
【0043】
加圧調整手段40は、油槽部30から基部20の側面まで延びる筒状経路部41と、側面開口部から筒状経路部に挿入させる圧力調整蓋42とからなる。圧力調整蓋42は、筒状経路部41内を螺合進退させる雄ネジ43と、筒状経路部内を摺動させるピストン44であればよい。ここでは、雄ネジとピストンとの間にベアリング球45を介装させることにより、油槽部の加圧を解除させるときに、ピストンを雄ネジの螺合後退に追従しやすくさせている。
【0044】
筒状経路部41は、一方の端部が油槽部30に開口され、他方の端部が基部側面に開口されている。筒状経路部41は、側面開口部46から所望の深さまでが、前記雄ネジ43を螺合進退させる太径の雌ネジ部47とされ、雌ネジ部47よりも奥側が前記ピストン44を摺動させる細径部48とされている(図1参照)。雄ネジ43は、雌ネジ部47と細径部48とのなす段差49に引っ掛かって、それ以上螺進することができなくなるため、油槽部30は天板部の弾性範囲内でしか加圧されない。
【0045】
雄ネジ43は、側面開口部46側の端部に六角レンチを挿し込んで回動させる六角穴50を備え、油槽部側の端部にベアリング球45と面接触する凹部51(図2参照)が備えられている。ピストン44は油槽部側にOリング52と補助リング53とを装着させる第1溝部54と、側面開口部側に2つ目のOリング55を装着させる第2溝部56とを備えている。補助リング53は、Oリング52の耐圧性を向上させる補助部品であり、加圧時に第1溝部54からOリング52が脱落することを防止させている。
【0046】
Oリング52,55の材質は、耐油性に優れる周知のフッ素ゴムが好適である。補助リング53の材質は、すべり特性に優れる周知のポリテトラフルオロエチレンが好適である。ベアリング球45は、ピストンの後端部中央に点接触するように、雄ネジ43とピストン44との間に介装されている。また、筒状経路部41の内面の側面開口部46近傍には、圧力調整蓋40の抜止め軸57を挿入固定させる窪穴58が備えられている。
【0047】
抜気孔31は、一方の端部が油槽部30に開口され、他方の端部が基部20の底面に開口されている。抜気孔31は底面開口部から所望の深さまで第2の雌ネジ部34を備えている(図2参照)。抜気孔31は、グリス充填時に油槽部30の空気を抜気させやすいように、油槽部の底面隅部の近傍に開口させている。グリスの充填後には、外周に雄ネジを有する抜気孔閉塞蓋35を、第2の雌ネジ部34に螺合させ、抜気孔31を閉塞させる。
【0048】
圧力調整油をなすグリス36は、油槽部30に気体が混入されないように、筒状経路部41と抜気孔31にも充填させている(図7参照)。グリスの種類は、石鹸系グリスであってもよく、非石鹸系グリスであってもよく限定されない。実施例1では、リチウム石鹸グリスを使用している。
【0049】
ここで、水平設置精度の調整作業の具体例を、図3を参照して説明する。ワークの加工装置101は、ワーク100の水平設置精度を測定させる水平測定機102を備えている。水平測定機は移動装置103により、3軸方向に移動可能とされている。
【0050】
ワーク100を仮の水平状態で固定したら、水平測定機の測定子104をワーク天面に接触させた状態で水平移動させ、ワークの水平設置精度を測定させる(図3(A)図参照)。ワーク天面が水平に設置されていなかったときには、水平測定機102の表示盤に表示された数値を基に、ワーク天面の高さが低い設置支持点の位置で水平測定機を停止させる。例えば、ワークの左側の設置支持点の方が、右側の設置支持点よりも低いときには、水平測定機をワークの左側の設置支持点105の位置で停止させる。
【0051】
次に、左側の設置支持点105にある離間距離調整手段1の圧力調整蓋を六角レンチ等で締め込み、油槽部を加圧させて天板部を膨出させる。このとき、水平測定機102の表示盤の数値を確認しながら圧力調整蓋の螺合角度を調整させることができるため、ワーク100と基台200の離間距離を、高い精度で調整することが容易である(図3(B)図参照)。
【0052】
次に、離間距離調整手段1の製造方法を、図4から図7に示す工程図を参照して説明する。図4は、基部を切削する第1工程を示し、図5は天板部をレーザ焼結させる第2工程を示し、図6は研磨工程を示し、図7はグリスを充填する第3工程を示している。なお、図5では理解を容易にするため、基部に敷き均した金属粉について図5(A)図にのみ示し、図5(B)図以下ではレーザ焼結させた金属粉だけを示している。
【0053】
第1工程では、まず基部20をなす円柱を、高さ約25mmに切り出す。切り出した基部の上端面に、油槽部30をなす円断面形状の扁平な空洞を、基部20の中心軸に揃えて切削させる(図4(A)図参照)。油槽部の底面隅部は、角隅にならないように湾曲部33としている。
【0054】
次に、油槽部30から基部20の底面に向けて、筒状経路部をなす非貫通穴59と、抜気孔をなす貫通孔37とを切削加工させる(図4(B)図参照)。非貫通穴と貫通孔は、基部20の中心線上に並んで配されている。そして、基部側面から非貫通穴59に繋がるように横穴60を基部の中心線に沿って切削加工させる(図4(C)図参照)。
【0055】
筒状経路部41は、更に、横穴より太い雌ネジ部47を、前記横穴60の軸心に揃えて、所望の深さまで、ねじ切り加工させている(図4(D)図参照)。雌ネジ部47の加工後には、圧力調整蓋の抜止め軸57(図1参照)を挿入固定させる窪穴58を切削加工させる。抜気孔31は、更に、第2の雌ネジ部34を、前記貫通孔37の軸心に揃えて、所望の深さまで、ねじ切り加工させている。
【0056】
第2工程では、100層分の焼結金属層70を積層させ、外周部分の板厚が約5mm、内方部分の板厚が約4.5mm、格子状筋状溝11の深さが約0.5mmの天板部10を形成させる具体例を説明する。金属粉の平均粒径は限定されないが、ここでは1層あたり約0.05mmの焼結金属層が形成されるように、平均粒径が約50μmのSKD61の金属粉を使用している。
【0057】
第2工程では、まず基部20をなす油槽部30と外周壁32とに、天板部をなす第1層目の金属粉71を敷き均す(図5(A)図参照)。油槽部30においては、第1層目の金属粉よりも下方に、焼結させない金属粉72を敷き詰めて外周壁31と高さを揃えている。そして、レーザノズル300を水平移動させつつ、最上層に敷き均した金属粉71にレーザ301を照射させて一層ずつ金属粉を焼結させる。
【0058】
また、第1層目から第10層目までの金属粉については、天板部10の板厚が、周囲から油槽部の中心にかけて徐々に薄くなるようにレーザ焼結させている(図5(B)図,図5(C)図参照)。具体的には、各々の焼結金属層70が円環形状をなすように、油槽部30の中心側に敷き均した金属粉にはレーザを照射させないようにしている(図5(B)図参照)。
【0059】
更に、焼結金属層70の積層が進む毎にレーザ301の非照射範囲を狭めている。具体的には、油槽部の直径に応じて、焼結金属層を1層あたり約2mmから約3mmずつ外周から中心に向けて延ばすように、レーザの非照射範囲を狭めている。各層の延出部分73が短いため、片持ち状態となっている各層の延出部分73が薄くても変形が生じにくく、天板部をほぼ平板状に形成させやすい。
【0060】
また、延出部分73が斜め上方に延びる角度は、水平に対して約1.8度であり、ほぼ水平に伸びているため、天板部10の底面側をほぼ平坦に形成させることができ、油槽部30を加圧させたときに、天板部10を滑らかに膨出させることができる。
【0061】
第11層目から第90層目の金属粉については、レーザを円形状に照射させて、円形状に焼結金属層を形成させる。第90層目から第100層目の金属粉については、格子状にレーザを照射させない部分を設けて、格子状筋状溝11を形成させ、第2工程が完了する(図1図5(D)図参照)。
【0062】
また、第2工程の後の研磨工程においては、研磨剤を塗布した布バフを高速回転させながら天板部10に押し当て、天面の算術平均粗さRaが、0.03μm以上0.15μm以下になるように平滑に研磨させた(図6参照)。研磨剤は、例えば周知の精密研磨用微粉の#240番から#3000番を使用し、徐々に粒度の細かい精密研磨用微粉に換えて天面を平滑に磨けばよい。
【0063】
第3工程では、まず筒状経路部41と抜気孔31とを開放させた状態のまま、筒状経路部41又は抜気孔31から油槽部30にグリス36を充填させる。次いで、筒状経路部41に、圧力調整蓋42をなすピストン44、ベアリング球45、雄ネジ43の順に挿入し、雄ネジ43を筒状経路部の雌ネジ部47に螺合させる。更に、抜止め軸57を窪穴58に挿入固着させる(図7(A)図参照)。
【0064】
次に、抜気孔閉塞蓋35を抜気孔31に仮締め螺合させる(図7(B)図参照)。この時点では、離間距離調整手段1の内部に気泡500が残留している可能性がある。そこで、圧力調整蓋42を螺進させ、油槽部30を加圧させ、抜気孔31をなす第2の雌ネジ部34と抜気孔閉塞蓋35との隙間から気泡500を抜気させる(図7(C)図参照)。
【0065】
抜気孔31から気泡500が溢れなくなったことを確認したら、圧力調整蓋42を初期位置まで螺合後退させて、油槽部30の加圧を解除させてから、抜気孔閉塞蓋35を増し締め螺合させる(図7(D)図参照)。なお、抜気が不十分であり、圧力調整蓋42の締め込みに要する力が増大していなかったときには、抜気孔閉塞蓋35を緩めて仮締め状態に戻して(図7(B)図参照)再度、抜気をする。
【実施例2】
【0066】
実施例2では、ワーク100と基台壁部201との水平方向の離間距離を調整させる、中央貫通孔80を有する離間距離調整手段2を、図8を参照して説明する。図8(A)図は、天板部側から看た正面図を示している。図8(B)図と図8(C)図とは、水平方向の離間距離の調整作業を説明する垂直方向断面図を示している。理解を容易にするため、図8(A)図では、油槽部30と、筒状経路部41と、圧力調整蓋42だけを破線で示している。実施例2以下では、実施例1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略している。
【0067】
離間距離調整手段2は、天板部10と基部20と油槽部30の各々が、中央貫通孔80を有するドーナツ形状に沿って形成されている(図8参照)。係止手段をなす中央貫通孔80は、基台壁部201から突出させた係止部202を挿通可能な大きさとされている(図8(B)図参照)。油槽部30をなす外周壁32,32は、基部20の内円と外円の夫々に沿って起立されている。
【0068】
天板部10は、夫々の外周壁32,32の天部と一体をなすようにレーザ焼結されて形成されている。また天板部の底面側は、レーザ焼結容易なように、天板部10の周囲から内方にかけて、その板厚が薄くなるように、天板部の内円と外円の中間位置にかけて、その板厚が薄くされている(図8(B)図参照)。
【0069】
筒状経路部41は、天板部10の中心線から側方にずらした位置に形成させている(図8(A)図参照)。筋状溝は、同心円状に形成された第1筋状溝13と、放射状に形成された第2筋状溝14とからなる。第2筋状溝14の端部は、天板部の側面に開放されている。
【0070】
ワーク100と基台壁部201との離間距離の調整作業では、まず基台壁部201から水平方向に突出させた係止部202に、係止手段をなす中央貫通孔80を通して離間距離調整手段2を係止させる(図8(B)図参照)。ワーク100を、係止させた離間距離調整手段2の天板部10に接しさせて仮設置させる(図8(C)図参照)。周知の3次元測定機等により、設置基準位置(図8(C)図の一点鎖線参照)と、ワーク100を仮設置させた位置とのずれを測定させる。
【0071】
ワーク100が設置基準位置に一致していないときには、ワークの位置ずれ・傾きをなくすように、離間距離調整手段2の天板部10を膨出させてワークを押し出し、基台壁部201とワーク100との水平方向の離間距離を調整させる。なお、ワークに貫通孔を備えさせると共に、基台壁部から伸びる係止部の長さを中央貫通孔から突出させる長さとして、離間距離調整手段2とワークの両方を係止部に係止させてもよい。
【0072】
このほか、係止部をワークから水平方向に突出させてもよい。この場合は、予めワークに備えさせた係止部に離間距離調整手段2の中央貫通孔を挿通させてから、離間距離調整手段2を基台壁部に接しさせるようにワークを仮設置させればよい。
【実施例3】
【0073】
実施例3では、ワークと基台壁部との水平方向の離間距離を調整させる、馬蹄形状の離間距離調整手段3を、図9を参照して説明する。図9(A)図は、天板部側から看た正面図を示している。図9(B)図は、水平方向の離間距離の調整作業を説明する垂直方向断面図を示している。
【0074】
図9(C)図は、離間距離調整手段を脱離させる状態を示している。図9(A)図では、油槽部30と、筒状経路部41と、圧力調整蓋42だけを破線で示している。図9(B)図では、ワークの水平方向の設置基準位置を一点鎖線で示している。
【0075】
実施例3では、基台壁部201に水平方向に突出させた爪部203を備えさせ、爪部に離間距離調整手段3を着脱可能に装着させる具体例を説明する。離間距離調整手段3は、天板部10と基部20と油槽部30の各々が馬蹄形状に形成され、着脱手段として機能する開放端部90を備えている(図9(A)図参照)。筒状経路部41は、油槽部30を左右均等に加圧できるように、基部20の側面から油槽部の左右対称軸の位置(図9(A)図の一点鎖線参照)まで延びている。
【0076】
次に、図9(B)図と図9(C)図とを参照して、離間距離調整手段3の着脱と離間距離の調整について説明する。まず、開放端部90を爪部203に引っ掛けて、離間距離調整手段3を基台壁部201に装着させておく(図9(B)図参照)。実施例2と同様に、ワーク100の側面を離間距離調整手段3の天面に当接させて仮設置させ、ワークの設置基準位置(図9(B)図の一点鎖線参照)とのずれを測定させる。
【0077】
ワークを仮設置させた位置が設置基準位置からずれていたときには、ワークの位置ずれをなくすように、離間距離調整手段3の天板部10を膨出させて、ワーク100と基台壁部201との水平方向の離間距離を調整させる。離間距離調整手段3を再利用するときには、圧力調整蓋42の螺合を緩めて加圧を解除して天板部10を平坦な状態に戻し、爪部203から開放端部90を引き抜けばよい(図9(C)図参照)。爪部203は、ワーク側に備えさせてもよいことは勿論のことである。
【0078】
(その他)
・本実施例では、天板部だけを金属粉のレーザ焼結により形成させる例を説明したが、基部も金属粉のレーザ焼結により形成させてもよいことは勿論のことである。また、天板部を切削により成形させ、JIS規格のZ3001-2に規定されている拡散接合により、基部と天板部とを母材の融点以下の温度条件で加熱させつつ、塑性変形を生じない程度の圧力で加圧させて接合させてもよいことは勿論のことである。拡散接合の場合は、天板部の底面側も平坦にするとよい。
・本実施例では、圧力調整油をグリスとした例を説明したが、圧力調整油はグリスに限定されず、油圧作動油であってもよいことは勿論のことである。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記した説明に限られず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
1,2,3…離間距離調整手段、
10…天板部、20…基部、30…油槽部、40…加圧調整手段、
11…格子状筋状溝、12…端部、13…第1筋状溝、14…第2筋状溝、
31…抜気孔、32…外周壁、33…湾曲部、
34…第2の雌ネジ部、35…抜気孔閉塞蓋、36…グリス、37…貫通孔、
41…筒状経路部、42…圧力調整蓋、43…雄ネジ、
44…ピストン、45…ベアリング球、46…側面開口部、47…雌ネジ部、
48…細径部、49…段差、50…六角穴、51…凹部、52…Oリング、
53…補助リング、54…第1溝部、55…Oリング、56…第2溝部、
57…抜止め軸、58…窪穴、59…非貫通穴、60…横穴、
70…金属焼結層、71…金属粉、72…焼結させない金属粉、73…延出部分、
80…中央貫通孔、90…開放端部、
100…ワーク、101…加工装置、102…水平測定機、103…移動装置、
104…測定子、105…左側の設置支持点、
200…基台、201…基台壁部、202…係止部、203…爪部、
300…レーザノズル、301…レーザ、400…布バフ、500…気泡
【要約】      (修正有)
【課題】製造機器を基台に設置する設置支持点における離間距離を、0.01mm単位で容易に調整できる離間距離調整手段および離間距離調整手段の製造方法を提供する。
【解決手段】天板部10と基部20と油槽部30と加圧調整手段40とからなる離間距離調整手段1を、基台とワークとの間に介在させ、油槽部に充填させた圧力調整油を加圧調整手段により加圧し、天板部を弾性範囲で膨出させて、基台とワークとの離間距離を0.01mm単位で調整できるようにした。更に、天板部に固着防止手段として機能する筋状溝11を備えさせ、天板部が高い精度で平滑に研磨させてあっても、天板部とワークとの間に固着を発生させないようにした。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9