(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】物品の積み込みシステム
(51)【国際特許分類】
B65G 47/90 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
B65G47/90 A
(21)【出願番号】P 2020187716
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】597017812
【氏名又は名称】株式会社ナベル
(72)【発明者】
【氏名】南部 隆彦
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-057168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のラックが搬送されるラック用の通路と、
前記ラック用の通路に沿って設置された物品積み込み用のロボットであって、一のラックに物品を積み込む一のロボット及び前記一のロボットに隣接して設けられ他のラックに物品を積み込む他のロボットと、
前記ラック用の通路の前記一のラックと前記他のラックとの間に設けられ
、前記一のロボットの作業空間と、前記他のロボットの作業空間とを仕切る仕切りと、
前記ラック用の通路を塞ぐ位置とラック用の通路を開放する位置との間で前記仕切りを動作させる制御部とを備える、物品の積み込みシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の積み込みシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の段ボール箱に卵パックを積み込む装置が知られている(例えば、下記特許文献1を参照)。この卵パックの積み込み装置は、複数の段ボール箱が搬送される段ボール用の通路に沿って、複数台のロボットが並べて設置される。この卵パックの積み込み装置で積み込みが完了した段ボール箱は、2箱ずつまとめて排出される。
【0003】
卵パックの流通形態として、段ボール箱の他に、棚が付いたラックに積み込まれるものも知られている(例えば、下記特許文献2を参照)。ラックは、段ボール箱よりも多くの卵パックを積み込むことができ、また、段ボール箱よりも複雑な積み方をする点が、大きな違いとして挙げられる。
【0004】
なお、物品の一例として卵パックを挙げたが、ラックに載せた状態で流通する他の物品についても同じようなことがいえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-177326号公報
【文献】実用新案登録第3209255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、段ボール箱に比べて複雑な構造をしているラックへの積み込み作業について、処理能力の低下を抑制できる積み込みシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の物品の積み込みシステムは、ラック用の通路と、複数のロボットと、仕切りと、制御部とを備える。ラック用の通路は、複数のラックが搬送される。ロボットは、物品積み込み用のもので、ラック用の通路に沿って設置される。仕切りは、ラック用の通路に設けられる。制御部は、ラック用の通路を塞ぐ位置とラック用の通路を開放する位置との間で仕切りを動作させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、段ボール箱に比べて複雑な構造をしているラックへの積み込み作業について、処理能力の低下を抑制できる。
【0009】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる卵パックの積み込みシステムを示す側面図。
【
図2】同実施形態にかかる卵パックの積み込み用のロボットの動作状態を示す側面図。
【
図3】同実施形態にかかる卵パックの積み込みシステムの作動を示す平面図。
【
図4】同実施形態にかかる卵パックの積み込みシステムの作動を示す平面図。
【
図5】同実施形態にかかる卵パックの積み込みシステムの作動を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態にかかる物品の積み込みシステムSについて、
図1~
図5を用いて説明する。
【0012】
本実施形態の積み込みシステムSは、卵パック専用の移動可能なラック11,12へ複数の卵パックPを積み込むためのシステムである。ラック11,12は、卵パックPの生産ラインの下流側に設けられる。卵パックPの生産ラインには、卵をパックに収容する機器や、パックにラベルを設ける機器、卵やラベルを検査するための機器など、様々な機器が並んでいる。生産ラインでは、卵がパックに収容され、ラベルが設けられ、種々の検査を受けた卵パックPが次々と生産される。ラック11,12に積み込まれる段階では、各卵パックPは、蓋が閉められ、ラベルが設けられた状態となっている。
【0013】
ラック11,12は、複数の棚板13を備え、各棚板13に卵パックPが載せられる。この状態で、ラック11,12は動かされ、そのまま売り場に陳列が可能である。ラック11,12は、側面の3方向がフレーム14で囲まれている。ラック11,12は、出し入れ側にもこぼれ止めが付いている。ラック11,12は、棚板13を複数枚備え、棚一段あたり4~6個(4~6段)の卵パックPを積み上げる。そして、卵パックPが横方向にずり落ちないように、卵パックP自体が、上下に積まれた卵パックPの横ずれを抑制できる形状になっている。各棚板13は、折り畳み式のもので、手前側に引き出された使用状態と折り畳まれて奥側に位置する収納状態との間で状態変更可能である。使用状態の各棚板13の上方には、卵パックPが収納される収納空間が形成される。収納空間には、卵パックPが上下に積み重ねられる。ラック11,12は、さらに、フレーム14の内側に設けられる棚板受け(図示しない)と、キャスター16とを備える。
【0014】
卵パックPは、種々の大きさ、形状のものがある。図では、10個入りのもので、「フラットパック」と呼ばれる蓋の天面が平坦な卵パックPを示している。
【0015】
本実施形態の卵パックPの積み込みシステムSは、ラック用の通路70と、卵パックPをラック11,12に積み込む複数のロボット1,2と、仕切り8と、制御部9とを主体に構成される。
【0016】
ラック用の通路70は、複数のラック11,12が搬送される。ラック用の通路70は、例えば、直線状のものであり、空のラック11,12を後述するロボット1,2に供給するラック用の供給部71と、積み込みが完了したラック11,12をロボット1,2側から排出する排出部72とを備える。複数のラック11,12は、ラック用の通路70上で横向きに、すなわち、側フレーム14が前後になるようにして運ばれる。本実施形態では、ラック11,12が2台ずつ供給され、2台ずつ排出されるようになっている。すなわち、ラック用の供給部71は、各ロボット1,2により積み込まれる複数のラック11,12をまとめて供給し、排出部72は、各ロボット1,2により積み込まれる複数のラック11,12をまとめて排出する。
【0017】
ロボット1,2は、ラック用の通路70に沿って設置される。本実施形態では、2台のロボット1,2が隣り合って並ぶ。2台のロボット1,2は、ラック11,12の最下段から最上段まで卵パックPを積み込んで完成させるという点で同じ作業内容を行うものであるが、ロボット1,2は、ラック11,12への卵パックPの積み込み方が互いに異なるものであってもよい。一のラック11には、一のロボット1が卵パックPを積み込む。一のロボット1は、一のラック11の最下段から最上段まで卵パックPを積み込む。一のロボット1は、他のラック12に対しては積み込み動作を行わない。他のラック12には、一のロボット1とは異なる他のロボット2が卵パックPを積み込む。他のロボット2は、他のラック12の最下段から最上段まで卵パックPを積み込む。他のロボット2は、一のラック11に対しては積み込み動作を行わない。他のラック12は、一のラック11よりも上流側に位置する。他のラック12は、一のラック11と同じ排出部72から排出される。
【0018】
各ロボット1,2は、ロボットヘッド3と、ロボットアーム4とを備える。
【0019】
ロボットヘッド3は、保持部5を備える。保持部5は、複数の卵パックPを保持する。保持部5は、複数の吸着部材6によって構成される。各吸着部材6は、蓋が閉じられた卵パックPの天面側を吸着する。各吸着部材6は、真空機構に接続されている。1つの卵パックPにつき、複数個の吸着部材6で保持する。
【0020】
ロボットアーム4は、ロボットヘッド3の位置姿勢を変更可能なものである。ロボットアーム4は、一時待機領域17とラック11,12との間でロボットヘッド3を移動させる。ロボットアーム4は、例えば、6軸垂直多関節ロボット等の、任意に作動する慣用の多関節ロボットが適用される。この他に、ロボットアーム4は、ロボットヘッド3をX軸、Y軸およびZ軸に対して、任意に移動させることができるロボットまたは装置など種々のものを採用できる。
【0021】
一時待機領域17は、物品搬送装置18の下流側に設けられている。物品搬送装置18は、複数の卵パックPを搬送する。本実施形態では、ロボット1,2ごとにそれぞれ物品搬送装置18が設けられている。物品搬送装置18の上流側には、生産ラインから送られてくる複数の卵パックPをロボット1,2に供給する供給部19が設けられる。
【0022】
供給部19は、1本の生産ラインから順次搬送される卵パックPを、一のロボット1と他のロボット2とに卵パックPを供給する。本実施形態では、上述したロボット1,2に準じたロボットを用いて、一のロボット1用の物品搬送装置18と、他のロボット2用の物品搬送装置18とに、卵パックPを分配する。
【0023】
仕切り8は、ラック用の通路70に設けられる。仕切り8は、一のラック11と他のラック12との間に設けられる。仕切り8は、一のラック11の側フレーム14と、他のラック12の側フレーム14との間に配置される。仕切り8は、
図1の二点鎖線で示すように、ラック11,12の側フレーム14よりも大きい寸法であり、この仕切り8によって隣接する空間に作業者がアクセスできないようになっている。言い換えれば、仕切り8は、ラック用の通路70上のうち、一のロボット1の作業空間と、他のロボット2の作業空間との間に物理的に区切り目をつけるものであるが、目線や空気が通り抜けるものであってもよい。仕切り8がラック用の通路70を塞ぐ位置にあると、ラック用の通路70上でのラック11,12の移動が妨げられる。
【0024】
制御部9は、ラック用の通路70を塞ぐ位置とラック用の通路70を開放する位置との間で仕切り8を動作させる。制御部9は、一のラック11または他のラック12の少なくとも一方を移動させる際に、一のラック11の側フレーム14と他のラック12の側フレーム14との間から可動式の仕切り8を待避させる。制御部9は、CPU、内部メモリ、入出力インターフェース、AD変換部などの専用のコンピュータまたは汎用のコンピュータによって構成される。内部メモリに格納されたプログラムにしたがって、CPUおよびその周辺機器が協働することによって、制御部9としての機能が発揮される。
【0025】
次に、積み込みシステムSを用いた卵パックPの積み込み方法の一例について説明する。
【0026】
まず、仕切り8を退避させた状態にして、ラック用の通路70を開放し、空の2台のラック11,12を積み込み用のロボット1,2の前に移動させる。その後、制御部9は、仕切り8を動作させて、ラック用の通路70を塞ぐ位置まで仕切り8を移動させる。各ラック11,12は、一時的に固定される。
【0027】
一のロボット1は、まず、一の物品搬送装置18から複数個の卵パックPを吸着して持ち上げ、一のラック11に置く。この動作を繰り返し、棚板13の一段分が完成したら、上段の棚板13を引き出す。次の段の棚板13に卵パックPを置く際には、一のロボット1と、一の物品搬送装置18の待機位置を上方に移動させる。他のロボット2も、一のロボット1と同様の動きを行う。
【0028】
図3に示すような各ロボット1,2の積み込み動作の途中、例えば、一のロボット1に何らかのトラブルが発生したときに、
図4に示すように、一のラック11上の卵パックPの手直しを行う作業者が一のロボット1の作業空間に入ることがある。このような場合であっても、他のロボット2の他のラック12への積み込みについて、安全を確保した状態で続けられる。すなわち、一のロボット1のトラブル発生時に他のロボット2も同時に積み込みを停止させる必要がないため、卵パックPの積み込み作業の稼働率の低下を抑制することができる。
【0029】
一のロボット1のトラブルからの復旧後、一のロボット1による積み込みも再開し、一のラック11と他のラック12への積み込みが完了すると、制御部9は、仕切り8を動作させて、ラック用の通路70を開放する位置まで仕切り8を開放させる。その後、
図5に示すように、一のラック11と他のラック12とは、排出部72から2台まとめて排出される。
【0030】
以上説明したように、本実施形態にかかる卵パックPの積み込みシステムSは、ラック用の通路70と、複数のロボット1,2と、仕切り8と、制御部9とを備える。ラック用の通路70は、複数のラック11,12が搬送される。複数のロボット1,2は、物品積み込み用のもので、ラック用の通路70に沿って設置される。仕切り8は、ラック用の通路70に設けられる。制御部9は、ラック用の通路70を塞ぐ位置とラック用の通路70を開放する位置との間で仕切り8を動作させる。
【0031】
ロボット1,2は、一のラック11に物品を積み込む一のロボット1と、この一のロボット1に隣接して設けられ他のラック12に物品を積み込む他のロボット2とを含む。仕切り8は、一のラック11と他のラック12との間に設けられる。
【0032】
また、卵パックPの積み込みシステムSは、一のロボット1によって卵パックPが積み込まれる一のラック11の側フレーム14と、一のロボット1に隣接して設けられた他のロボット2によって卵パックPが積み込まれる他のラック12の側フレーム14との間に、可動式の仕切り8を配置する制御部9を備える。そして、制御部9は、一のラック11または他のラック12の少なくとも一方を移動させる際に、一のラック11の側フレーム14と他のラック12の側フレーム14との間から可動式の仕切り8を待避させる。
【0033】
なお、本発明は上述した実施形態に限られない。
【0034】
上述した実施形態では、トラブルが発生するか否かにかかわらず、制御部9は、予めラック用の通路70を塞ぐ位置に仕切り8を配置しておくものであったが、平常時はラック用の通路70を開放する位置に配置しておき、異常発生時に、自動または手動でラック用の通路70を塞ぐ位置に仕切り8を動かすようなものであってもよい。
【0035】
仕切り8は、ラック用の通路70を塞ぐ位置と開放する位置との間で移動可能なものであれば、移動方向や移動方法についても図示したものには限られず、種々変更可能である。
【0036】
物品は、卵パックPには限られない。また、ラックも、卵パック用のラック11,12には限られない。
【0037】
ロボットは、1本のラック用の通路70に対して3台以上配置されていてもよい。また、1本のラック用の通路70は、直線状のものには限らないし、複数のロボット1,2は互いに隣接して配置されていなくてもよい。
【0038】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、卵パックの積み込みシステムに利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
S…積み込みシステム
1…一のロボット
2…他のロボット
8…仕切り
9…制御部
11…一のラック
12…他のラック
70…ラック用の通路