(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】電池を組み立てるための方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/291 20210101AFI20241016BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20241016BHJP
H01M 50/213 20210101ALI20241016BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20241016BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20241016BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M50/209
H01M50/213
H01M50/103
H01M50/107
(21)【出願番号】P 2020560799
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(86)【国際出願番号】 FR2019051000
(87)【国際公開番号】W WO2019211555
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-06
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511152500
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジ アトミック エ オー エネルジス アルテルナティヴス
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L‘ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】25, rue Leblanc Batiment Le Ponant D, F-75015 Paris,France
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】マソン,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ベル,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ジェヴェット,ディミトリ
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205231143(CN,U)
【文献】特開2016-207494(JP,A)
【文献】特開2019-179856(JP,A)
【文献】特開平09-132219(JP,A)
【文献】特開2017-079184(JP,A)
【文献】特開2002-170533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 50/10-50/198
H01M 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を組み立てるための方法であって、
アキュムレータのための少なくとも1つのスルーセルと、該セルから離れるとともに、供給チャネルを介して該セルの内壁の凹部と窓を通じて流体連通する少なくとも1つの接着剤注入オリフィスと、を含むエンドプレートを提供するステップであって、前記凹部は、前記セルの内壁から延び放射壁により電気接点を含む前記アキュムレータの上面の方向の方に区切られ
ているが、底部の方に区切られておらず、前記凹部は接着剤によって排出される空気を逃がすために前記接着剤を
下方向に流れるようにするように構成されている、ステップと、
前記セル内にアキュムレータを配置するステップと、
前記注入オリフィスを介して接着剤を注入するステップであって、該接着剤は前記チャネルを通って前記凹部に流れ、前記アキュムレータは、前記凹部に含まれる該接着剤により前記エンドプレートにボンディングされる、ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記接着剤は、接着剤注入ポンプに接続されたカニューレを介して前記オリフィス内に注入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポンプは、前記オリフィス内に所定量の接着剤が注入されるように制御される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記カニューレはロボットによって作動される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記カニューレは円錐状の先端を有し、前記接着剤注入オリフィスは、前記オリフィス内に前記カニューレの末端部の挿入を案内することができる面取りされた入力部を有する、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記オリフィス及び前記カニューレの寸法は、前記末端部が前記オリフィス内に挿入された場合に、前記カニューレと前記オリフィスとの間で漏れ止めが確かになるように選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記凹部と前記エンドプレートの各側面の外側との間で流体連通が確実になるようにして注入の間に前記接着剤により排出される空気を逃がすことができるように、前記アキュムレータと前記セルの内壁との間に隙間が設けられている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記エンドプレートの各セルは少なくとも2つの凹部を含み、該凹部のそれぞれに含まれる接着剤を介して各アキュムレータが前記エンドプレートにボンディングされるように、該凹部のそれぞれは、それぞれの供給チャネルを介してそれぞれの接着剤注入オリフィスに接続されている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記エンドプレートの2つの隣接するセルに少なくとも2つのアキュムレータをボンディングするステップを含み、前記接着剤注入オリフィスは、前記接着剤を前記オリフィスに注入する間に、前記接着剤が各供給チャネルを通ってそれぞれの凹部に流れ込むように、それぞれの供給チャネルを介してそれぞれのセルの内壁の凹部と流体連通している、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記オリフィス内に注入される接着剤の量は、前記オリフィスによって供給されるチャネルの数に応じて調整される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記接着剤の注入の間、前記アキュムレータの端部は、整列ツールにより前記エンドプレートの一方の側に整列される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
電池の少なくとも2つのアキュムレータを機械的に接続するためのエンドプレートであって、アキュムレータを受容するのに適した少なくとも1つのスルーセルと、該セルから離れるとともに、供給チャネルを介して該セルの内壁の凹部に窓を通じて流体連通された少なくとも1つの接着剤注入オリフィスとを含み、前記凹部は、前記セルの内壁から延びる放射壁により電気接点を含む前記アキュムレータの上面の方向の方に区切られ
ているが、底部の方に区切られておらず、前記凹部は接着剤によって排出される空気を逃がすために前記接着剤を
下方向に流れるようにするように構成されている、エンドプレート。
【請求項13】
前記接着剤注入オリフィスは盲端を有し、前記供給チャネルは、前記オリフィスの側窓と前記セルの内壁にある前記凹部との間に延びる、請求項12に記載のエンドプレート。
【請求項14】
前記接着剤注入オリフィスは面取りされた入力部を含む、請求項12又は13に記載のエンドプレート。
【請求項15】
互い違いに配置された複数のセルを含む、請求項12乃至14のいずれか一項に記載のエンドプレート。
【請求項16】
行列状に整列された複数のセルを含む、請求項12乃至14のいずれか一項に記載のエンドプレート。
【請求項17】
一群の隣接するセルから等距離に配置された少なくとも1つのオリフィスと、前記オリフィスを各セルの壁内のそれぞれの凹部に流体接続する複数の供給チャネルとを含む、請求項15又は16に記載のエンドプレート。
【請求項18】
請求項12乃至17のいずれか一項に記載のエンドプレートにより互いに機械的に接続された複数のアキュムレータを含む電池であって、各アキュムレータは、各セルの少なくとも1つの凹部に含まれる接着剤により前記エンドプレートのセル内にボンディングされている、電池。
【請求項19】
各アキュムレータは、前記セルの各凹部に含まれる接着剤に接触する電気絶縁シースを備える、請求項18に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池を組み立てるための方法及び該方法により得られる電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池を製造するためには、いくつかのアキュムレータを互いに機械的に接続し、十分な剛性をアセンブリに与えて、電池が製造、輸送及び使用の間に受ける機械的負荷に耐えることができるようにしなければならないことがしばしば必要となる。
【0003】
アキュムレータをフレームに取り付け、このフレームをネジ止め、クリップ止め又ははんだ付けにより閉じることが知られている。この場合、フレームを閉じることにより、アキュムレータの固定及び経時的なアキュムレータの維持が保証される。
【0004】
既知の代替案では、アキュムレータを互いに直接ボンディングするか又はそれぞれがアキュムレータを受容することを意図したセルを有するエンドプレートを介してボンディングすることを含む。第1の解決策は構造部分を追加しないため、軽量であるという利点がある。反対に、第2の解決策では、機械的な支持体として機能するエンドプレートは、電池の環境に耐えるような寸法を有するため、第1の解決策よりもはるかに機械的強度が大きい。
【0005】
そのようなエンドプレートにアキュムレータをボンディングすることにより電池が組み立てられる場合、接着剤の塗布のために2つの可能性が主に存在する。第1の場合では、接着剤をアキュムレータに塗布し、そして、それらがエンドプレートの各セルに挿入される。第2の場合では、接着剤がセルの壁に塗布され、そしてアキュムレータが各セル内に挿入される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
両方の場合において、アキュムレータには、接着剤が全くない状態の領域、とりわけ、コンポーネント間で低い電気抵抗を確かなものにするために汚染されていない状態で維持しなければならない電気接点の領域が汚染される重大なリスクが存在する。
【0007】
さらに、そのような接合方法は産業規模で実施するのにコストがかかるため自動化に適してない。
【0008】
さらに、そのような接合方法では、アキュムレータとエンドプレートとの間の接着剤のレベルに空気が閉じ込まれやすい。さらに、航空宇宙用途のための電池の場合、電池は重大な気圧変動にさらされる。そのような気圧変動にさらされた空気は、アキュムレータとエンドプレートとの間の機械的接続を突然破損させ、アキュムレータの分離及び電池の機能性の喪失につながる。
【0009】
本発明の目的は、上記の欠点を克服し、接着剤による電気接点領域の汚染を回避するとともに、自動化可能な電池を組み立てるための方法をデザインすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、本発明は電池を組み立てるための方法を提案し、当該方法は、
アキュムレータのための少なくとも1つのスルーセルと、該セルから離れるとともに、供給チャネルを介して該セルの内壁の凹部と流体連通する少なくとも1つの接着剤注入オリフィスと、を含むエンドプレートを提供するステップと、
前記セル内にアキュムレータを配置するステップと、
前記注入オリフィスを介して接着剤を注入するステップであって、該接着剤は前記チャネルを通って前記凹部に流れ、前記アキュムレータは、前記凹部に含まれる該接着剤により前記エンドプレートにボンディングされる、ステップと、
を含む。
【0011】
前記接着剤は、接着剤注入ポンプに接続されたカニューレを介して前記オリフィス内に注入され得る。
【0012】
前記ポンプは、前記オリフィス内に所定量の接着剤が注入されるように制御されることが有利である。
【0013】
前記カニューレはロボットによって作動されることが有利である。
【0014】
一実施形態によれば、前記カニューレは円錐状の先端を有し、前記接着剤注入オリフィスは、前記オリフィス内に前記カニューレの末端部の挿入を案内することができる面取りされた入力部を有する。
【0015】
前記オリフィス及び前記カニューレの寸法は、前記末端部が前記オリフィス内に挿入された場合に、前記カニューレと前記オリフィスとの間で漏れ止めが確かになるように選択されることが好ましい。
【0016】
有利な実施形態によれば、前記凹部と前記エンドプレートの各側面の外側との間で流体連通が確実になるようにして注入の間に前記接着剤により排出される空気を逃がすことができるように、前記アキュムレータと前記セルの内壁との間に隙間が設けられている。
【0017】
一実施形態によれば、前記エンドプレートの各セルは少なくとも2つの凹部を含み、該凹部のそれぞれに含まれる接着剤を介して各アキュムレータが前記エンドプレートにボンディングされるように、該凹部のそれぞれは、それぞれの供給チャネルを介してそれぞれの接着剤注入オリフィスに接続されている。
【0018】
一実施形態によれば、前記方法は、前記エンドプレートの2つの隣接するセルに少なくとも2つのアキュムレータをボンディングするステップを含み、前記接着剤注入オリフィスは、前記接着剤を前記オリフィスに注入する間に、前記接着剤が各供給チャネルを通ってそれぞれの凹部に流れ込むように、それぞれの供給チャネルを介してそれぞれのセルの内壁の凹部と流体連通している。
【0019】
前記オリフィス内に注入される接着剤の量は、前記オリフィスによって供給されるチャネルの数に応じて調整されることが有利である。
【0020】
一実施形態によれば、前記接着剤の注入の間、前記アキュムレータの端部は、整列ツールにより前記エンドプレートの一方の側に整列される。
【0021】
本発明の別の目的は、前記方法の実施を可能にするエンドプレートに関する。エンドプレートは電池の少なくとも2つのアキュムレータを機械的に接続することを可能にし、アキュムレータを受容するのに適した少なくとも1つのスルーセルと、該セルから離れるとともに、供給チャネルを介して該セルの内壁の凹部に流体連通された少なくとも1つの接着剤注入オリフィスとを含む。
【0022】
前記接着剤注入オリフィスは盲端を有し、前記供給チャネルは、前記オリフィスの側窓と前記セルの内壁にある前記凹部との間に延びることが有利である。
【0023】
前記接着剤注入オリフィスは面取りされた入力部を含むことが有利である。
【0024】
一実施形態によれば、エンドプレートは互い違いに配置された複数のセルを含む。
【0025】
別の実施形態によれば、エンドプレートは行列状に整列された複数のセルを含む。
【0026】
エンドプレートは、一群の隣接するセルから等距離に配置された少なくとも1つのオリフィスと、前記オリフィスを各セルの壁内のそれぞれの凹部に流体接続する複数の供給チャネルとを含むことが有利である。
【0027】
本発明は、前記方法により組み立てられた電池にも関する。前記電池は、上述したようなエンドプレートにより互いに機械的に接続された複数のアキュムレータを含み、各アキュムレータは、各セルの少なくとも1つの凹部に含まれる接着剤により前記エンドプレートのセル内にボンディングされている。
【0028】
一実施形態によれば、各アキュムレータは、前記セルの各凹部に含まれる接着剤に接触する電気絶縁シースを備える。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照と共に下記の詳細な説明から明らかになる。
【
図1】
図1は、一実施形態に係る、組み立て途中にある電池の斜視図であり、アキュムレータは柱状であり、行列に従って配置されている。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るエンドプレートの部分断面図である。
【
図3】
図3A及び
図3Bは、接着剤の注入前及び後をそれぞれ示す、接着剤注入オリフィスのレベルにおける部分断面図である。
【
図4】
図4は、エンドプレートの主面に平行な平面における断面図であり、注入オリフィスの据え付けに応じた接着剤の供給を概略的に示す。
【
図5】
図5は、いくつかのセルに供給する接着剤注入オリフィスのレベルにおけるエンドプレートの部分断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係る電池の上面図であり、アキュムレータが円筒状で且つ互い違いに配置されている。
【
図8】
図8は、エンドプレートの周縁に位置するセルのレベルにおけるエンドプレートの底面図である。
【
図9】
図9は、エンドプレートの注入オリフィス内の定位置にある接着剤注入カニューラを示す。 同一の参照符号が異なる図面で用いられている場合は、同一の要素又は同じ機能を満たす要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、例えば、リチウムイオン、ニッケルカドミウム(NiCd)、ニッケル金属水素化物(NiMH)等の任意の種類の電気化学アキュムレータに基づく電池の組立体に関する。
【0031】
このような電池は、航空宇宙用途、とりわけ人工衛星に搭載されることが意図されている。そのため、電池は重大な振動条件及び高い気圧変動にされされるため、高い機械的強度が必要になる。
【0032】
電池を形成するために、各アキュムレータはそれぞれのセル内でエンドプレートにボンディングされる。
【0033】
エンドプレートは2つの主面を含み、2つの主面は主面と平行でない軸に沿って延在する複数の貫通セル(alveole traversante)を含む。一実施形態によれば、エンドプレートは平行六面体の形状を有し得る。そして、セルの軸はエンドプレートの主面に対して垂直であることが有利である。
【0034】
エンドプレートの高さ(すなわち、主面の間の距離であり、例えば、20mm程度である)は各アキュムレータの高さよりも小さく、アキュムレータはエンドプレートの1つ又は2つの主面を越えて延在していてもよい。各セルの内壁は、接着剤を受容するのに適した少なくとも1つの凹部を含む。セルの形状はアキュムレータの形状に対応し、以下に示すように、アキュムレータの配置及び接着剤の通過を可能にする隙間を有する。
【0035】
接着剤が注入されるのは、アキュムレータがエンドプレートに配置された後である。接着剤の注入は、各セルから離れるとともに供給チャネルを介して凹部に接続されるエンドプレートのオリフィスで行われ、エンドプレート内での接着剤の循環は制御され、とりわけアキュムレータの電気接点の領域の汚染が生じるリスクがない。
【0036】
セルの配置は、隣接するセルの間の距離を最小限にするために、アキュムレータの形状(とりわけ円筒状又は柱状)に応じて有利に選択され、これは、エンドプレートの嵩を最小限にする効果もある。そのため、例えば、円筒状のアキュムレータの場合は、セルは互い違いに配置されることが有利であり、柱状のアキュムレータの場合は、セルは行列(de lignes et de colonnes)に配置されることが有利である。しかしながら、当業者であれば、アキュムレータの形状及びエンドプレート内の接着剤回路に応じてセルの任意の他の配置を選択できる。
【0037】
組み立て方法は手動で実施することができるが、完全に自動化されたやり方で実施されることが有利である。
【0038】
ボンディングの実施を可能にする機械が知られているため、ここでは詳細には説明しない。係る機械は、接着剤タンクと、タンクと流体連通する計量ポンプと、チューブによりポンプに接続される接着剤注入カニューレと、3つの軸に沿ってカニューレを変位するのに適したロボットとを含むことを単に示す。
【0039】
用いられる接着剤は、エンドプレート及びアキュムレータの材料に応じて、機械的強度の仕様を満たすために前記記材料との十分な親和性を有するように本質的に選択される。一般に、この仕様は、電池の使用の温度範囲における耐振性に関する要件を含む。予想される引張強度は一般的に数百ニュートン程度である。
【0040】
エンドプレートはアキュムレータのための機械的支持機能を実質的に有する。エンドプレートはプラスチック材料(例えば、限定されないが、ポリプロピレン、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS))で形成され得るか又は金属(例えば、限定されないが、アルミニウム、スチール、銅、マグネシウム)で形成され得る。エンドプレートは射出成形によって又は好適な材料のブロックを機械加工することにより又はその代わりに、積層造形技術(3D印刷ともいう)により製造され得る。
【0041】
一実施形態によれば、アキュムレータは裸、すなわち、アキュムレータの外面は、セルの要素を包含する剛性シェルで構成される。このシェルは、ニッケルメッキが施されているか又は施されていないスチール、アルミニウム又はプラスチックで形成され得る。この場合、接着剤はエンドプレートの材料及びアキュムレータのシェルの材料に対して親和性がなければならない。
【0042】
別の実施形態によれば、アキュムレータは、限定されないが、概してポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のプラスチック材料で形成された電気絶縁シースによって取り囲まれる。この場合、接着剤はエンドプレートの材料及びシースの材料と親和性がなければならない。しかしながら、振動強度試験の間、アセンブリの最も弱い要素はシース自体であり、接着剤ではないことが分かった。そのため、例えば、試験は、シースが破断する前に、接着剤が200N程度の引張強度を有することを示した。
【0043】
当業者は、市販されている接着剤及びエンドプレートのための考えられる材料の中から、所望の機械的強度を有するエンドプレート、接着剤及び(任意でシースを備える)アキュムレータの組み合わせを選ぶことができる。
【0044】
非限定的な例として、接着剤はエポキシ接着剤又はビニル接着剤であり得る。
【0045】
接着剤の粘度は、アキュムレータとセルの内壁との間で利用可能な隙間に応じて選択されることが有利である。一般に、この隙間が小さいほど接着剤の粘度は低くなり得る。反対に、この隙間が大きいほど接着剤の粘度は高くなり得る。
【0046】
非限定的な例として、20℃で動的粘度が190Pa.sの接着剤は、アキュムレータとセルの内壁との間の0.05mm~0.7mmの隙間に非常に適していることが分かった。本明細書において、隙間とはアキュムレータの外面とセルの内壁との距離を意味する。
【0047】
ボンディングの実施のために、エンドプレートが水平位置に置かれる。すなわち、エンドプレートの2つの主面が水平面(本明細書において、「水平」という用語は、本方法が実施される建物の地面と平行であることを意味する)に延在する。アキュムレータは垂直位置にある。
【0048】
アキュムレータは、アキュムレータの端面が支持される平板等の好適な整列ツールにより水平面に整列される。この整列により、異なるアキュムレータの電極を電気的に接続することを意図した電流コレクタの半田付けの良好な品質をとりわけ可能にする。
【0049】
アキュムレータは、エンドプレートの上方に配置される平板(図示せず)と、各アキュムレータの下で垂直方向のスラストを上方にかけて、各アキュムレータの上面をプレートに対して接触させるスラスト手段とにより、水平面内に整列され得る。
【0050】
あるいは、アキュムレータは、エンドプレートの下に配置された平板上に重力により静止することによって水平面内に整列され得る(後述のスラスト手段は不要である)。
【0051】
図示の異なる実施形態では、接着剤は、エンドプレートの上から注入され、カニューレは実質的に垂直に方向付けられる。しかしながら、重力の影響は、注入オリフィスから各セルの壁の凹部までの接着剤の循環においてあまり重要ではないため、接着剤はエンドプレートの底部を介して注入されてもよい。
【0052】
アキュムレータを整列することを意図する平板と同じ側で接着剤の注入が行われる場合、平板は、カニューレを通すためにエンドプレートの注入オリフィスに面する開口を有する。しかしながら、接着剤の注入は平板と反対側でも行われ得る。
【0053】
全てのアキュムレータがエンドプレート内で適所に置かれると、ボンディングマシンのロボットは、エンドプレートの各注入オリフィスにカニューレを連続的に対向させる。そして、適切な量の接着剤が対応するオリフィスに注入され、供給チャネルを流れて1つ以上のセルの凹部に充填される。
【0054】
接着剤は、接着剤の性質に応じて数分から数日程度の時間で硬化し、エポキシ接着剤の場合は24時間で硬化することが好ましい。
【0055】
アキュムレータが設けられたエンドプレートは、次に、電池の組み立ての他のステップ、とりわけ、アキュムレータを電気的に接続するための電流コレクタの半田付けで用いられ得る。
【0056】
【0057】
電池100はエンドプレート1と、複数のアキュムレータ2とを含む。図示の実施形態ではアキュムレータ2は柱状である。
【0058】
エンドプレートは上面1A及び下面1Bを有し、上面1A及び下面1Bはそれぞれと平行な平面に延在する。
【0059】
各アキュムレータは、アキュムレータの同じ面(ここでは上面2A)に2つの電極20を有する。アキュムレータは、全てのアキュムレータの上面21がエンドプレートの上面1Aと平行な同一の平面内にあるように、互いに対して垂直方向に整列される。
【0060】
アキュムレータのそれぞれは、行列に従ってエンドプレート1の(
図2においてより良好に見ることができる)スルーセル10内に配置される。このようにしてアキュムレータのコンパクトな構成が得られ、それにより、隣接するアキュムレータ間の距離が最小化される。一般に、隣接するアキュムレータ間の距離は数mm程度である。
【0061】
エンドプレート1は複数の接着剤注入オリフィス11をさらに含む。
【0062】
各オリフィス11は、接着剤の注入に用いられるカニューレの断面に対応する円形の断面を有することが好ましい。
【0063】
とりわけ有利な方法では、各セルは4つのオリフィス11に取り囲まれる。
【0064】
図2は、アキュムレータのない状態の
図1のエンドプレートの斜視図であり、
図3A及び
図3Bは、それぞれ接着剤の注入前及び注入後を示す、
図1の電池の接着剤注入オリフィスのレベルにおける部分断面図である。
【0065】
各セル10はその内壁10Iに、各注入オリフィス11と流体連通する凹部12を含む。
【0066】
注入オリフィス11は、
図9に示すようにカニューレの末端部を受容することを意図する入力部1Aを有する。とりわけ有利な方法では、入力部11Aは面取りされており、カニューレの末端部がロボットによりオリフィス11に正確に面するように配置されない場合に、オリフィス内への挿入を案内できる。さらに、この面取りされた入力部11Aは、円錐形であることが有利であるカニューレの末端部との漏れ止め接続を確実にできる。
【0067】
注入オリフィスの入力部11Aと反対側の端部11Bは、接着剤がエンドプレートを直接流れることがないように閉じている。
【0068】
さらに、注入オリフィス11はその側壁に、セルの凹部12に出現する窓13を含む。図示の実施形態では、各凹部は、オリフィスに対して実質的に接線方向にある円弧又は円形の形状を有する。この場合、オリフィス11に注入される接着剤は、各窓13を通じて各凹部12に直接入る。そのため、供給チャネルは、窓13の高さの上方にあるオリフィス11の円筒部分であるとみなされる。しかしながら、供給チャネルが窓13から凹部に延びる導管をさらに有するように、凹部がオリフィスから所定の距離の位置にあるようにすることも可能である。しかしながら、接着剤の経路上で過度に重大なヘッドロスが起こらないように、供給チャネルの全長を最小限にするように注意を払わなければならない。
【0069】
凹部の断面は、とりわけエンドプレートの製造方法に応じて当業者により選択され得る。そのため、エンドプレートが機械加工によって製造される場合、円形の部分の断面は、エンドプレートの主面に対して垂直な方向に同じ直径のドリルを通過させることに対応するためとりわけ有利である。エンドプレートがプラスチック材料の射出により又は積層造形により製造される場合、当業者は、選択された技術で作られ得る任意の形状を選択し得る。
【0070】
凹部の幅及び凹部の高さは、接着剤とアキュムレータとの間の接触面を実質的に定義する。この接触面は、エンドプレート内でのアキュムレータの良好な機械的強度を保証するのに十分な大きさのものが選択され、例えば、チャンネル当たり5mm×14mm=70mm2の接触面は、シースの機械的強度よりも大きいエポキシ接着剤の機械的強度を得るのに十分である。
【0071】
各凹部12は、セルの内壁10Iから延びる放射壁(radial wall)により上方が区切られている。反対に、接着剤がアキュムレータに沿ってエンドプレートの下面の方に潜在的に流れ得るように、凹部は底部の方に区切られていない。しかしながら、注入される接着剤の量とその粘度を調整することにより、そのような流れを制限できる。凹部が下方で区切られていないことは、エンドプレートの製造上の制約(プラスチック材料の射出によって製造される場合には、型か取り出す可能性又は機械加工によって製造される場合にはドリルの通過)によりとりわけ影響する。区切られていないことの別の利点は、セル内に存在し接着剤によって排出される空気を容易に下方に逃がすことができる点である。
【0072】
また、セルの壁10Iとアキュムレータの外面との間に、数十から数百ミリメートルの隙間が有利に作られる。この隙間はアキュムレータの潜在的な寸法変動を吸収することができるだけでなく、接着剤によって排出される空気を上方に逃がすための通路の確保も可能にする。反対に、この通路の寸法及び接着剤の粘度を考えれば、接着剤は上方に流れにくい。
【0073】
これらの構成のおかげで、接着剤とエンドプレート又はアキュムレータとの間に空気が閉じ込められるのが回避される。その結果、電池が大きな気圧変動にさらされても、例えば、人工衛星に搭載され、人工衛星を宇宙に放つことで突然気圧の低下が生じるような場合、ボンディング領域には空気が突然逃げ出し得るような気泡が何ら含まれていない。そのため、ボンディング強度は特に信頼性が高い。
【0074】
図5に示すように、各セルの凹部12の高さhはエンドプレートの高さHよりも小さい。Hとhとの差は、セルの上部により接着剤がオーバーフローするのを回避できるような十分大きいものが選択されることが有利である。例えば、直径が18mmのアキュムレータの場合、Hとhとの差は4mm以上でなければならないと考えられる。当業者は、アキュムレータの製造寸法公差及び使用される接着剤の粘度に応じて凹部及び隙間の寸法を調整できる。
【0075】
ここで、
図2~
図5におけるセル及び注入オリフィスの表示は、行列に配置される柱状のアキュムレータを受容するセルを含むエンドプレートに関連するが、凹部、注入オリフィス及び供給チャネルの設計に関する教示は、任意の他の種類のアキュムレータ及びエンドプレート内のセルの構成にも適用可能であることを明記する。
【0076】
図1~
図5に示すエンドプレートの構成において、各注入オリフィス11は、その据え付け場所に応じて、1、2又は4つのセルの近傍に位置する。さらに、各セルは、各隣接する注入オリフィスに面する凹部を含み、それぞれの供給チャネルを介してオリフィスに接続される。そのため、注入オリフィスは、供給するセルの凹部と同じ数の側面の窓13を含む。
【0077】
その結果、オリフィスは1つ以上のセルへの接着剤の注入を可能にし、全てのアキュムレータを一緒に接着するための接着剤の注入ステップの数を最小限できる。供給する凹部の数に応じて注入される接着剤の量を適合させることができる。そのため、ポンプは、カニューレが挿入される注入オリフィスに応じて接着剤の量が前記オリフィスにより供給される各凹部を充填するのに十分であるように、エンドプレートの設計に応じてプログラムされ得る。
【0078】
さらに、アキュムレータは、いくつかの区別可能なボンディング領域を介して各セルに固定される。これにより、受ける応力を広げることでアキュムレータの機械的強度を高めることができるだけでなく、注入オリフィスが接着剤を受けない場合でも、他のボンディング領域を介してアキュムレータの強度が仕様を満たすのに十分となるように、特定の冗長性を確保できる。
【0079】
図4に見られるように、各接着剤注入オリフィスの据え付け場所に従って、1、2又は4つのセルの凹部を供給し得る。これらの場合のそれぞれにおける接着剤の循環は矢印により概略的に示されているが、これらは、図の視認性の理由から一意的に供給チャネルよりも長く示されている。
【0080】
しかしながら、1つの凹部からいくつかの凹部に供給するという事実は、供給チャネルに沿って接着剤によりカバーされる距離が十分に短い場合、すなわち、3~最大で5mm程度である場合にのみ技術的に想定され得る。実際に、反対の場合では、接着剤によるヘッドロスによって、各凹部の正確な充填が妨げられるというリスクが存在する。そのため、2つ以上のセルに十分近い距離で注入オリフィスを設けることができない場合には、各セルの凹部に専用の注入オリフィスを設けることが好ましい。
【0081】
図6~
図9は、アキュムレータを配置するための別のモードを示し、アキュムレータは円筒状であるとともに互い違いに配置されている。
【0082】
この場合、それぞれのセルはその内壁に6つの凹部12を含み、各セルの周囲に均等に配置された6つの接着剤注入オリフィス11によって取り囲まれ、各凹部には、それぞれの注入オリフィスを介して接着剤が供給される。そのため、各アキュムレータは6つのボンディング領域によりエンドプレートに固定されている。なお、これらの6つの領域は、ボンディングの機械的強度の仕様に厳密に適合するために必要となる表面よりも大きい全表面を有することができるが、それらは凹部のうちの1つの充填が不十分及び/又はボンディング領域のうちの1つに不具合がある場合に特定の冗長性を保証する。
【0083】
さらに、注入オリフィスが2つ又は3つのセルの間に位置する場合、注入オリフィスは、該セルのそれぞれに設けられる凹部から等距離の位置に配置される。そのため、供給チャネルの長さは各セルについて同一であり、全ての凹部をバランス良く充填することを確かなものにする。
【0084】
注入オリフィス、凹部及び供給チャネルのデザインは前述のものと同様であるため、ここでは繰り返さない。
【0085】
図8に見られるように、各接着剤注入オリフィスの据付け場所に従って、前記オリフィスは1、2又は3つのセルの凹部に供給できる。接着剤の循環は、これらのケースのそれぞれにおける接着剤の循環は矢印により概略的に示されているが、これらは、図の視認性の理由から、一意的に供給チャネルよりも長く示されている。
【0086】
図9は、エンドプレートの注入オリフィスへのカニューレの配置を示す。
【0087】
カニューレ4は、直径が数ミリメートル程度の円形断面が延長された形状を有し、円錐形の先端40は接着剤出口端41に向かって狭くなっている。
【0088】
カニューレ4は一般的にはプラスチック材料で形成されているため、所定の可撓性を有する。
【0089】
そのため、(図示しない)ロボットがカニューレを注入オリフィス11と正確に対向するように配置しない場合でも、末端部40と面取りされた入力部11Aとが協働して、カニューレ自体をオリフィス11の中心に置くことができる。
【0090】
さらに、末端部40と入力部11Aの表面は相互に接触し、カニューレに対するエンドプレートの漏れ止めを確かなものにする。そのため、入力部11Aを介して接着剤が上昇するリスクが排除される。
【0091】
末端部40及び入力部11Aは、注入オリフィス内へのカニューレの貫通の深さが制限されることを確実にする。末端部40及び入力部11Aは、カニューレがオリフィス内の定位置にある場合に、窓13の全高にわたって接着剤が流れることができるようにするために、カニューレの端部41が窓13の上に位置するか又は窓13の上端のレベルに位置するような寸法を有することが有利である。
【0092】
そのため、これまで説明してきた発明は所定数の利点を有する。
【0093】
一方で、電池の全体的な構造は比較的軽量である。アキュムレータを互いに直接組み立てたアセンブリと比べて、エンドプレートが追加の質量を加えるとしても、先行技術から知られるねじ込み式のエンドプレートのアセンブリよりも軽量である。
【0094】
さらに、エンドプレートのデザインは、既知の解決策と比較して追加の利点を有する。
【0095】
実際に、ボンディング法の自動化を容易にするのに役立つ。そのため、人件費が下がるため、低コストで電池を製造することが可能となる。
【0096】
他方で、各アキュムレータはいくつかのボンデインンぐ領域(例えば、柱状のアキュムレータの場合には4つ、円筒状のアキュムレータの場合には6つ(当業者であれば、アキュムレータの幾何学的形状の関数として別の数を選択することができる))によりエンドプレートに固定されるため、アキュムレータの機械的強度の高い信頼性が得られる。したがって、1つのボンディング領域に不具合があっても、他の領域がエンドプレートへのアキュムレータの固定を維持する。
【0097】
最後に、本デザインは、各アキュムレータを保持するボンディング領域内に空気が閉じ込められるのを回避することができる。この利点は、真空下で空気の逃げることにより接合領域が劣化するリスクがないため、真空で(例えば、宇宙用途)用いることを意図する電池にとってとても大きい。