(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】重症喘息を処置するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241016BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20241016BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241016BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241016BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241016BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20241016BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20241016BHJP
A61K 31/46 20060101ALI20241016BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241016BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20241016BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20241016BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P11/06
A61P11/00
A61P29/00
A61P43/00 105
A61K31/137
A61K31/573
A61K31/46
A61K45/00
C07K16/28
C07K16/46
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2020567470
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(86)【国際出願番号】 US2019019872
(87)【国際公開番号】W WO2019169015
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-25
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【微生物の受託番号】ECACC ECACC 96112640
(73)【特許権者】
【識別番号】520326035
【氏名又は名称】エクイリウム,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】EQUILLIUM,INC.
【住所又は居所原語表記】2223 Avenida de la Playa,La Jolla,California 92037,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】コネリー,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】エヌジー,シェリー
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-507939(JP,A)
【文献】特開2017-038592(JP,A)
【文献】特開2014-198710(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0362331(US,A1)
【文献】Current Drug Targets, 2016, Vol.17, p.666-677
【文献】Allergy, 2011, Vol.66, p.989-998
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
喘息を有する対象における気管支洗浄液中のIL-4、IL-5、およびIL-13からなる群から選択される、Th2サイトカインのレベルを減少させ、および/または
OVA特異的IgE産生を阻害する
方法における使用のための医薬組成物であって、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントを含む、前記医薬組成物。
【請求項2】
喘息が、重症喘息である、喘息が、血中低好酸球または血中無好酸球によって特徴付けられる、喘息が、ステロイド処置に無効である、喘息が、好中球性喘息である、喘息が、混合性炎症の喘息である、喘息が、顆粒球の関与が乏しい喘息である、あるいは、喘息が、非アレルギー性喘息である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
喘息が、血中低好酸球または血中無好酸球によって特徴付けられ、および、対象が、血中好酸球カウント≦300細胞/μlを有する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントが、イトリズマブ(EQ001)、またはEQ001の抗原結合性フラグメントである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントが、ヒト化抗体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントが、OX126、T12、UMCD6、MT605、IOR-T1/T1h、J4-81、AZN-L50、MAB656、およびL/F8からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
抗CD6モノクローナル抗体が、ECACCに寄託番号ECACC 96112640として寄託された分泌ハイブリドーマIOR-T1Aによって産生された抗体;該分泌ハイブリドーマによって産生された該抗体と同じ配列を有する抗体;または該分泌ハイブリドーマによって産生された該抗体と同じCDR配列を有する抗体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
抗CD6モノクローナル抗体が、イトリズマブ(EQ001)である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
抗原結合性フラグメントが、Fv、Fab、CDRl、CDR2、CDR3、複数のCDRの組み合わせ、可変領域、重鎖(単数または複数)、および軽鎖(単数または複数)から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号5~10から選択される1以上のCDR配列を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号1および2で表されるとおりのアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖の可変領域を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
配列番号1および2が夫々、配列番号3および4によってコードされている、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号1で表されるとおりのアミノ酸配列と少なくとも80%同一のVH配列、および配列番号2で表されるとおりのアミノ酸配列と少なくとも80%同一のVK配列を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
方法が、1以上の喘息関連症状を処置、予防、または軽減することが可能な1以上の追加の剤を投与することをさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
追加の剤が、免疫抑制薬、長時間作用型ベータ アゴニスト、短時間作用型ベータ アゴニスト、またはそれらの組み合わせである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
追加の剤が、アルブテロールを含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
アルブテロールが、エアロゾル粉末;溶液;カプセル;および粉末懸濁液から選択される剤形で投与される、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
追加の剤が、コルチコステロイドを含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
コルチコステロイドが、吸入用製剤として投与される、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
コルチコステロイドが、錠剤、遅延放出性カプセル;徐放性錠剤;徐放性カプセル;シロップ;溶液;エリキシル剤;懸濁液;遅延放出性錠剤;液体;および崩壊錠から選択される剤形で投与される、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
追加の剤が、イプラトロピウムを含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項22】
イプラトロピウムが、噴霧剤形で投与される、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
方法が、挿管、人工呼吸、および/または酸素治療を施すことをさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項24】
医薬組成物が、1以上の薬学的に許容し得る塩、賦形剤、またはビヒクルを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2018年2月27日に出願された米国仮出願第62/636,092号に対して優先権を主張するものであり、前記出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表に関する陳述
本出願に紐づいた配列表が、紙コピーの代わりにテキスト形式で提供され、参照により本明細書中に組み込まれる。配列表を含有するテキストファイルの名称はEQIL_006_01WO_ST25.txtである。テキストファイルは5KBであり、2019年2月27日に作成されたものであって、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【0003】
背景
技術分野
本発明は、重症喘息を処置するための組成物および方法に関する。喘息は、(i)気管支収縮、(ii)過度の粘液産生、ならびに(iii)気道の炎症および腫脹が生じる疾患であって、広範囲ではあるが可変の気流閉塞を引き起こし、これによって喘息に苦しむ人は呼吸するのが困難になる。喘息は、持続する気道炎症によって主に特徴付けられる慢性障害である。しかしながら、喘息は、気道過敏症の気道平滑筋の収縮を介する追加の気道狭窄の急性エピソードによってさらに特徴付けられる。
【背景技術】
【0004】
喘息において、気道における慢性の炎症過程は、肺内への空気の流れに対する耐性を増大させるのに中心的役割を果たす。
【0005】
喘息の慢性化(chronic nature)はまた、気道壁のリモデリング(すなわち、肥厚または浮腫などの構造上の変化)にも繋がり得、前記リモデリングはさらに、気道壁の機能に影響を及ぼし(affect)得、および気道過敏症に影響を与え(influence)得る。喘息に関連する他の生理学的な変化は、過剰粘液産生を包含し、喘息が重度である場合、粘液栓ならびに進行性の上皮の露出および修復も包含する。上皮の露出は、下層組織を、通常これらとは接触しないであろう物質にさらし、細胞の損傷と炎症反応とのサイクルをさらに強めてしまう。
【0006】
感受性の高い個体において、喘息の症状は、息切れ(呼吸促迫)、喘鳴、胸部圧迫感、および咳の再発エピソードを包含する。目下、喘息は、患者が有する喘息のサブタイプに主に依存して、刺激回避と薬理との組み合わせによって管理される。
【0007】
喘息は、喘息の重症度に基づき米国喘息教育・予防プログラム(NAEPP)によって以下を包含する4つの主要な医療部門へ分類される異質の疾患である:(1)間欠性喘息、(2)軽度の持続型喘息、(3)中度の持続型喘息、および(4)重度の持続型喘息。他方、2016年の喘息管理に関する国際指針(Global Initiative for Asthma)(GINA)は、症状および増悪を制御するのに要される処置のレベルに基づき査定されている重症度とともに、喘息の重症度を軽度、中度、または重度として分類する。
【0008】
例えば、NAEPPは、以下の臨床的特徴を有する:
【0009】
間欠性喘息は、以下によって特徴付けられる:
週に二度未満の、咳、喘鳴、胸部圧迫感、または呼吸困難の症状;短時間の再燃ではあるが強度が変動することもある;月に二度未満の夜間の症状;再燃同士間の無症状;肺機能検査FEV 1が80%以上正常値を上回る;毎午前(am-to-am)または毎午後(am-to-pm)、毎日(day-to-day)、20%未満の変動を有する最大流量(peak flow)(ワールドワイドウェブページ://emedicine.medscape.com/article/296301-guidelines#g2)。
【0010】
軽度の持続型喘息は、以下によって特徴付けられる:
週に3~6回の、咳、喘鳴、胸部圧迫感、または呼吸困難の症状;活動レベルに影響を及ぼし得る再燃;月に3~4回の夜間の症状;肺機能検査FEV 1が80%以上正常値を上回る;20~30%未満の変動を有する最大流量(Id.)。
【0011】
中度の持続型喘息は、以下によって特徴付けられる:
毎日の、咳、喘鳴、胸部圧迫感、または呼吸困難の症状;活動レベルに影響を及ぼし得る再燃;月に5回以上の夜間の症状;肺機能検査FEV 1が正常値を60%上回るが80%下回る;30%超の変動を有する最大流量(Id.)。
【0012】
重度の持続型喘息は、以下によって特徴付けられる:
継続的な、咳、喘鳴、胸部圧迫感、または呼吸困難の症状;頻繁な夜間の症状;肺機能検査FEV 1が正常値の60%以下である;30%超の変動を有する最大流量(Id.)。
【0013】
さらにまた、喘息気道における炎症細胞のタイプまたはこれらの欠如に基づき、気道炎症には別個に4つの表現型がある:好酸球性炎症、好中球性炎症、混合性炎症、および顆粒球の関与が乏しい(Paucigranulocytic)炎症。さらに下で検討されるとおり、好中球性炎症、混合性炎症、および顆粒球の関与が乏しい炎症は、非好酸球性の喘息の形態である。
【0014】
好酸球性炎症は、しばしば好酸球性喘息またはアレルギー性喘息と称され、増加した肺好酸球をもたらすIL-4、IL-5、およびIL-13を産生するTh2媒介炎症反応(しばしば高タイプ2と称される)の産物と見なされている。好酸球は、下層の炎症を増強しかつ喘息の症状を悪化させる追加のサイトカインを分泌する。臨床的に、好酸球性喘息の区別は、非好酸球性の形態とは反対に、血液試料中に見出される循環好酸球のレベルに主に基づき、これは肺中にいる可能性のある好酸球のレベルを理解するための代用(surrogate)として使用される。一般に、患者らは、血中好酸球カウントが≦300細胞/μlである場合、血中「低」好酸球カウント(counts)を有すると見なされる。かかる患者らは非好酸球性喘息を有する。逆に言うと、血中好酸球カウントが>300細胞/μlである患者らは、好酸球性であると見なされる。
【0015】
好中球性炎症は、しばしば好中球性喘息または非アレルギー性喘息と称され、増加した肺好中球をもたらすIFN-γ、IL-6、IL-17およびIL-8を産生するTh1/Th17媒介炎症反応(しばしば低タイプ2と称される)の産物と見なされている。好中球は、下層の炎症を増強しかつ喘息の症状を悪化させる追加のサイトカインを分泌する。一般に、好中球性喘息をもつ患者らは、血中好中球カウント>4600細胞/μlを顕す、例えば(Vedel-Krogh, S. et al., Clin Chem. 2017 Apr;63(4):823-832;Schleich, F. et al., BMC Pulm Med. 2013; 13: 11)。
【0016】
混合性炎症は、患者らが好酸球性炎症および/または好中球性炎症の両方を呈し得る表現型であるが、これらの顆粒球のいずれかのレベルは低いこともある。
【0017】
顆粒球の関与が乏しい炎症は、患者らが正常レベルの好酸球および好中球を有するにもかかわらず肺の炎症を呈する表現型である。また非アレルギー性喘息の形態は、IFN-γ、IL-6およびIL-17を産生するTh1/Th17媒介炎症反応(しばしば低タイプ2と称される)の産物とも考えられる。注目すべきことに、顆粒球の関与が乏しい喘息患者らは、典型的には、検出不可能な血中好酸球カウントを有する。
【0018】
喘息の異質性は
図7に説明されており、前記図は、炎症タイプ(例として、高または低Th2)と、様々な喘息の表現型の現時点での理解との間の関係性を示す。表現型は重複するがTh2媒介応答は前記図の左側に示されており、これらはコルチコステロイド処置に応答するアレルギー性の好酸球性応答と相関する。対照的に、前記図の右側の非アレルギー性の非好酸球性応答は低Th2応答を呈し、高Th1応答および/または高Th1/Th17応答は、好中球性であるかまたは顆粒球の関与が乏しいものであって、コルチコステロイド処置に対する応答性は呈さない。
【0019】
喘息のための現時点での処置/管理の選択肢は、刺激回避から薬理学的介入までまたは外科的介入にさえまで及ぶ。
【0020】
刺激回避は、系統的な同定および各タイプの刺激との最低限の接触を介して達成される。しかしながら、潜在するすべての刺激を回避することは非実際的であって、常に役立つものではないこともある。
【0021】
喘息は、以下によって薬理学的に管理される:(1)抗炎症薬および長時間作用型の気管支拡張薬の使用を通した長期制御、ならびに(2)短時間作用型の気管支拡張薬(例として、ベータ アゴニスト)の使用を通した急性増悪の短期間管理。これらアプローチの両方とも、処方薬の反復かつ定期的な使用を要する。
【0022】
臨床の場において疾患管理に関する最善策を決定するために、喘息をもつ患者らは、彼らの血中好酸球カウントの分析によってアレルギー性喘息または他の喘息の形態について最も頻繁に試験される。本明細書にさらに検討されるとおり、ステロイド処置は、患者らの血液中の好酸球カウントが低いかまたは無い彼らにとっては禁忌である。当該技術分野において、低い vs. 正常なまたは高い血中好酸球カウントを区別するためのカットオフが厳密にはどこにあるかに関しては幅があるが、本明細書に使用されるとき、血中「低」好酸球カウントは、対象が血中好酸球カウント≦300細胞/μlを有することを意味する。血中好酸球の検出可能性が低い(または無い)かかる患者らは、有効な治療薬(treatment agent)を是が非でも必要としている重症喘息患者らのハイリスク集団を代表している。
【0023】
喘息のための現時点での処置は、長時間作用型のベータ アゴニスト(LABAs)、短時間作用型ベータ アゴニスト(SABAs)、たとえばアルブテロール(プロエアーHFA、プロベンティルHFA、ベントリンHFA)など、メタプロテレノール、レブアルブテロール(ゾペネックス(Xopenex)HFA)、およびピルブテロール(マックスエアー(Maxair))を包含するが、これらは即効性のある(救急(rescue))吸入器を介してまたは噴霧器を介して投与され、前記投与によって薬が、患者の肺深くに吸入され得るミストになる。コルチコステロイドはまた、喘息を処置するためにも使用される。これらの薬は、しばしば吸入されるかまたは丸薬の形態で摂取されるが、肺の炎症を低減するのに、および喘息の症状を制御するのに役立つ。コルチコステロイドはまた、静脈内にも、典型的には嘔吐しているかまたは呼吸不全下にある患者へ与えられ得る。イプラトロピウム(アトロベント)はまた、とくにアルブテロールが完全には有効でない場合、重症喘息発作を処置する気管支拡張薬としてもときには使用される。表1は、重症喘息を処置するためにFDAに目下承認されているか、または喘息を処置するために目下開発中であるかもしくはこれまでに開発されていたか、のいずれかである様々な薬剤の一覧を提供する。
表1:重症喘息を処置するために承認されているかまたは開発された剤
【表1】
(2018年1月現在)
【0024】
最終的に、喘息発作が生死を脅かすものである場合、挿管、人工呼吸、および酸素は、他の薬が喘息を制御下におくように試みられている間に、患者が呼吸するのを助けるために必要となることもある。
【0025】
しかしながら、目下入手可能な処置はすべて欠陥を有する。
【0026】
薬理学的管理の患者コンプライアンスに関与する困難性および喘息の引き金を引く刺激を回避する困難性は、成功をもたらす(successful)喘息管理に共通した障壁である。その上、これら処置の多くは、喘息の症状を低減させることに焦点を当てているが、疾患の根本的原因を突き止めるものではない。よって、現時点での管理技法は、完全な成功をもたらすものでも、副作用がないものでもない。
【0027】
高用量のコルチコステロイド抗炎症薬は、慎重な管理を要する重篤な副作用を有し得る。加えて、一部のの患者らは、ステロイド処置に抵抗性があるかまたは無効である。これら患者らは、重症喘息(SA)患者と呼ばれる喘息患者らの追加のカテゴリーを構成するが、前記患者らは、彼らの疾患の重症度および既存の喘息処置に対する彼らの応答の欠如のせいで、計り知れない臨床的問題となっている。実に、5%~10%の喘息患者らしかステロイド抵抗性または難治性の疾患を有さないが、これらの患者らへの医療は、彼らの頻繁な入院および緊急医療の必要性に起因して、合衆国、欧州、および豪州におけるすべての喘息の50%~80%に関する医療費と同程度を占める(Hansbro et al., Immunological Reviews. 2017; 278:41-62)。
【0028】
重症喘息は、最も一般的には、好中球性喘息または顆粒球の関与が乏しい喘息(paucigranulocytic asthma)などの非アレルギー性のTh1/Th17表現型、またはTh1/Th17-好中球性喘息/Th2-好酸球性喘息の混合表現型に関連し、ここでTh17細胞および好中球は、コルチコステロイドにほとんど、ときにはまったく応答しない(
図7)。
【0029】
アレルギー性ではあるが、Th2媒介性の、好酸球性喘息は、典型的には、コルチコステロイド処置に応答する(
図7)。
【0030】
結果的に、疾患の基礎病理の処置において選択的な新しい喘息処置への必要性が存在する。また、ステロイドに抵抗性があるかまたは無効である形態の喘息(すなわち、SA)の処置において有効な新しい喘息処置への必要性も存在する。本発明は、重症喘息を、具体的な態様において、血中低好酸球カウントまたは血中無好酸球カウントによって特徴付けられる重症喘息を、処置、予防、および軽減するための組成物および方法を提供する。
【発明の概要】
【0031】
態様の概要
とりわけ、本開示は、抗CD6抗体を対象へ投与することを含む、喘息の処置、予防、または軽減に関する。具体的な態様において、抗CD6抗体は、EQ001である。いくつかの態様において、喘息は、重症喘息である。いくつかの態様において、喘息は、低好酸球または無好酸球によって特徴付けられる。いくつかの態様において、喘息は、好中球性喘息である。いくつかの態様において、喘息は、顆粒球の関与が乏しい喘息である。いくつかの態様において、喘息は、混合性炎症の喘息である。ある態様において、喘息は、アレルギー性喘息ではない。ある態様において、喘息は、好酸球性喘息ではない。
【0032】
いくつかの態様において、本発明は、喘息を有する対象におけるT細胞媒介性の肺炎症を阻害する方法であって、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントを対象へ投与することを含む前記方法を提供するが、ここで抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1および2で表されるとおりのアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖の可変領域を含む。
【0033】
いくつかの態様において、本発明は、喘息を有する対象におけるT細胞媒介性の肺炎症を阻害する方法であって、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントを対象へ投与することを含む前記方法を提供する。
【0034】
いくつかの態様において、本発明は、喘息誘発抗原に応えてT細胞が肺組織中へおよびこれを通って遊走するのを予防または軽減する方法であって、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントを対象へ投与することを含む前記方法を提供する。
【0035】
いくつかの態様において、本発明は、喘息の症状もしくは重症度を調節または軽減する方法であって、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントを対象へ投与することを含む前記方法を提供する。
【0036】
いくつかの態様において、本発明は、喘息の症状もしくは重症度を調節または軽減する方法であって、T細胞を抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントと接触させることを含む前記方法を提供する。
【0037】
いくつかの態様において、喘息は、重症喘息である。いくつかの態様において、喘息は、血中低好酸球または血中無好酸球によって特徴付けられる。いくつかの態様において、喘息は、ステロイド処置に無効である。いくつかの態様において、喘息は、好中球性喘息である。いくつかの態様において、喘息は、混合性炎症の喘息である。いくつかの態様において、喘息は、顆粒球の関与が乏しい喘息である。
【0038】
いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、T細胞表面上のCD6タンパク質へ結合する。いくつかの態様において、T細胞は、Th1、Th17、またはTh1およびTh17 T細胞である。
【0039】
いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、EQ001、またはEQ001の抗原結合性フラグメントである。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CD6上のドメイン1または3へ結合する。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CD6上のドメイン3へ結合する。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントの、T細胞表面上のCD6タンパク質への結合は、T細胞の活性および/または遊走を調節する。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、ヒト化抗体である。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、UMCD6 mAb、イトリズマブ(EQ001)、表2に記載の抗CD6抗体、および本明細書に開示の抗CD6抗体からなる群から選択される。いくつかの態様において、抗CD6モノクローナル抗体は、ECACCに寄託番号ECACC 96112640として寄託された分泌ハイブリドーマIOR-T1Aによって産生された抗体;該分泌ハイブリドーマによって産生された該抗体と同じ配列を有する抗体;または該分泌ハイブリドーマによって産生された該抗体と同じCDR配列を有する抗体である。
【0040】
いくつかの具体的な態様において、本明細書に開示の方法のいずれか1つは、EQ001を投与することを含む。いくつかの具体的な態様において、本明細書に開示の方法のいずれか1つは、抗原結合性フラグメントEQ001を投与することを含む。いくつかの態様において、抗原結合性フラグメントは、Fv、Fab、CDRl、CDR2、CDR3、複数のCDRの組み合わせ、可変領域、重鎖(単数または複数)、および軽鎖(単数または複数)から選択される。
【0041】
いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号5~10から選択される1以上のCDR配列を含む。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1および2で表されるとおりのアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖の可変領域を含む。いくつかの態様において、配列番号1および2は夫々、配列番号3および4によってコードされている。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1で表されるとおりのアミノ酸配列と少なくとも80%同一のVH配列を含む。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号2で表されるとおりのアミノ酸配列と少なくとも80%同一のVK配列を含む。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1で表されるとおりのアミノ酸配列と少なくとも80%同一のVH配列、および配列番号2で表されるとおりのアミノ酸配列と少なくとも80%同一のVK配列を含む。
【0042】
いくつかの態様において、本開示の方法のいずれか1つは、1以上の喘息関連症状を処置、予防、または軽減することが可能な1以上の追加の剤を投与することをさらに含む。いくつかの態様において、追加の剤は、免疫系を調節することが可能な剤を含む。いくつかの態様において、追加の剤は、免疫抑制薬である剤を含む。いくつかの態様において、追加の剤は、長時間作用型ベータ アゴニスト、短時間作用型ベータ アゴニスト、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様において、追加の剤は、アルブテロールを含む。いくつかの態様において、アルブテロールは、エアロゾル粉末;溶液;カプセル;および粉末懸濁液から選択される剤形で投与される。いくつかの態様において、追加の剤は、コルチコステロイドを含む。いくつかの態様において、コルチコステロイドは、吸入用(inhaled)製剤として投与される。いくつかの態様において、コルチコステロイドは、錠剤、遅延放出性カプセル;徐放性錠剤;徐放性カプセル;シロップ;溶液;エリキシル剤;懸濁液;遅延放出性錠剤;液体;および崩壊錠から選択される剤形で投与される。いくつかの態様において、追加の剤は、イプラトロピウムを含む。いくつかの態様において、イプラトロピウムは、噴霧剤形で投与される。
【0043】
いくつかの態様において、本開示の方法のいずれか1つは、挿管、人工呼吸、および/または酸素治療を施すことをさらに含む。
【0044】
いくつかの態様において、本開示の方法のいずれか1つにおいて、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、1以上の薬学的に許容し得る塩、賦形剤、またはビヒクルを含む医薬組成物として投与される。いくつかの態様において、組成物は、担体、賦形剤、希釈剤、抗酸化剤、防腐剤、着色料、フレーバー剤および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、充填剤、増量剤、緩衝液(buffers)、送達ビヒクル、等張化剤、共溶媒、湿潤剤、錯化剤、緩衝剤(buffering agents)、抗微生物薬、および/または界面活性剤からなる群から選択される1以上の剤を含む。
【0045】
いくつかの態様において、本発明は、喘息を有する対象におけるT細胞媒介性の肺炎症を阻害する方法であって、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントを対象へ投与することを含む前記方法を提供するが、ここで抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1および2で表されるとおりのアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖の可変領域を含み、およびここで 喘息は、血中低好酸球または血中無好酸球によって特徴付けられる。いくつかの態様において、喘息は、ステロイド処置に抵抗性があるかまたは無効である。いくつかの態様において、喘息は、好中球性喘息である。いくつかの態様において、喘息は、混合性炎症の喘息である。いくつかの態様において、喘息は、顆粒球の関与が乏しい喘息である。いくつかの態様において、T細胞は、(i)Th1 T細胞、(ii)Th17 T細胞、または(iii)Th1およびTh17 T細胞から選択される。いくつかの態様において、対象は、血中好酸球カウント≦300細胞/μlを有する。いくつかの態様において、対象は、非アレルギー性喘息を有する。いくつかの態様において、抗CD6抗体は、EQ001である。
【0046】
いくつかの態様において、本発明は、喘息を有する対象におけるT細胞媒介性の肺炎症を阻害する方法であって、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントを対象へ投与することを含む前記方法を提供するが、ここで喘息は、血中低好酸球または血中無好酸球によって特徴付けられる。
【0047】
いくつかの態様において、本発明は、T細胞が喘息誘発抗原に応えて肺組織中へおよびこれを通って遊走するのを予防または軽減する方法を提供するが、ここで喘息は血中低好酸球または血中無好酸球によって特徴付けられ、前記方法は、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントを対象へ投与することを含む。
【0048】
いくつかの態様において、本発明は、喘息の症状もしくは重症度を調節または軽減する方法であって、喘息が血中低好酸球または血中無好酸球によって特徴付けられるとき、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントを対象へ投与することを含む前記方法を提供する。
【0049】
いくつかの態様において、本発明は、喘息の症状もしくは重症度を調節または軽減する方法であって、T細胞を抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントと接触させることを含む前記方法を提供するが、ここで喘息が、血中低好酸球または血中無好酸球によって特徴付けられる。
【0050】
いくつかの態様において、喘息は、ステロイド処置に抵抗性があるかまたは無効である。いくつかの態様において、喘息は、好中球性喘息である。いくつかの態様において、喘息は、混合性炎症の喘息である。いくつかの態様において、喘息は、顆粒球の関与が乏しい喘息である。いくつかの態様において、T細胞は、(i)Th1 T細胞、(ii)Th17 T細胞、または(iii)Th1およびTh17 T細胞から選択される。いくつかの態様において、対象は、血中好酸球カウント≦300細胞/μlを有する。いくつかの態様において、対象は、非アレルギー性喘息を有する。いくつかの態様において、喘息は、重症喘息である。いくつかの態様において、喘息は、重症喘息である。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、EQ001またはその抗原結合性フラグメントである。いくつかの態様において、抗CD6抗体は、EQ001である。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CD6上のドメイン1または3へ結合する。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CD6上のドメイン3へ結合する。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、UMCD6 mAb、イトリズマブ(EQ001)、表2に記載の抗CD6抗体、および本明細書に開示の抗CD6抗体からなる群から選択される。いくつかの態様において、抗CD6モノクローナル抗体は、ECACCに寄託番号ECACC 96112640として寄託された分泌ハイブリドーマIOR-T1Aによって産生された抗体;該分泌ハイブリドーマによって産生された該抗体と同じ配列を有する抗体;または該分泌ハイブリドーマによって産生された該抗体と同じCDR配列を有する抗体である。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号5~10から選択される1以上のCDR配列を含む。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1および2で表されるとおりのアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖の可変領域を含む。いくつかの態様において、配列番号1および2は夫々、配列番号3および4によってコードされている。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1で表されるとおりのアミノ酸配列と少なくとも80%同一のVH配列を含む。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号2で表されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一のVK配列を含む。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1で表されるとおりのアミノ酸配列と少なくとも80%同一のVH配列、および配列番号2で表されるとおりのアミノ酸配列と少なくとも80%同一のVK配列を含む。いくつかの態様において、抗原結合性フラグメントは、Fv、Fab、CDRl、CDR2、CDR3、複数のCDRの組み合わせ、可変領域、重鎖(単数または複数)、および軽鎖(単数または複数)から選択される。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメント、T細胞表面上のCD6タンパク質へ結合する。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントの、T細胞の表面上のCD6タンパク質への結合は、T細胞の活性および/または遊走を調節する。
【0051】
いくつかの態様において、かかる方法は、1以上の喘息関連症状を処置、予防、または軽減することが可能な1以上の追加の剤を投与することをさらに含む。いくつかの態様において、追加の剤は、免疫系を調節することが可能な剤を含む。いくつかの態様において、追加の剤は、免疫抑制薬である剤を含む。いくつかの態様において、追加の剤は、長時間作用型ベータ アゴニスト、短時間作用型ベータ アゴニスト、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様において、追加の剤は、アルブテロールを含む。いくつかの態様において、アルブテロールは、エアロゾル粉末;溶液;カプセル;および粉末懸濁液から選択される剤形で投与される。いくつかの態様において、追加の剤は、コルチコステロイドを含む。いくつかの態様において、コルチコステロイドは、吸入用製剤として投与される。いくつかの態様において、追加の剤は、イプラトロピウムを含む。いくつかの態様において、イプラトロピウムは、噴霧剤形で投与される。いくつかの態様において、方法は、挿管、人工呼吸、および/または酸素治療を施すことをさらに含む。いくつかの態様において、抗CD6抗体またはその抗原結合性フラグメントは、1以上の薬学的に許容し得る塩、賦形剤、またはビヒクルを含む医薬組成物として投与される。いくつかの態様において、組成物は、担体、賦形剤、希釈剤、抗酸化剤、防腐剤、着色料、フレーバー剤および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、充填剤、増量剤、緩衝液、送達ビヒクル、等張化剤、共溶媒、湿潤剤、錯化剤、緩衝剤、抗微生物薬、および/または界面活性剤からなる群から選択される1以上の剤を含む。
【0052】
配列の簡単な記載
配列番号1:EQ001 VH配列のアミノ酸配列。
【0053】
配列番号2:EQ001 VK配列のアミノ酸配列。
【0054】
配列番号3:EQ001 VH配列のヌクレオチド(DNA)配列。
【0055】
配列番号4:EQ001 VK配列のヌクレオチド(DNA)配列。
【0056】
配列番号5:EQ001 VH CDR1のアミノ酸配列。
【0057】
配列番号6:EQ001 VH CDR2のアミノ酸配列。
【0058】
配列番号7:EQ001 VH CDR3のアミノ酸配列。
【0059】
配列番号8:EQ001 VK CDR1のアミノ酸配列。
【0060】
配列番号9:EQ001 VK CDR2のアミノ酸配列。
【0061】
配列番号10:EQ001 VK CDR3のアミノ酸配列。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図面の簡単な記載
【
図1】
図1。EQ001 抗CD6抗体の配列。
図1A:プラスミドおよびゲノムのDNAに由来するEQ001の可変重鎖(VH)および軽鎖(VK)のヌクレオチド配列。
図1B:EQ001のVHおよびVKのアミノ酸配列。
【0063】
【
図2】
図2。CD6
+細胞は、重症喘息患者の肺中に高レベルにて存在する。左列:ALCAMは、致死的な喘息肺の粘膜固有層に発現されるが(左下)、正常な肺の粘膜固有層には発現されない(左上)。中央列:CD6
+細胞は、正常な肺(中央上)と比較して、致死的な喘息肺(中央下)において増加している。右列:CD6
+細胞は、喘息肺においてALCAMを発現する粘膜固有層と共局在する(右下)。
【0064】
【
図3A-B】
図3。気管支洗浄によって収集された細胞から生成された公的に入手可能なRNASeqデータセットを使用して、対照 vs. 中度の喘息患者ら vs. 重症喘息患者らにおけるCD4、CD6、および様々なTh17マーカーの発現を比較する、De novoバイオインフォマティクスベースの分析。
図3A:重症喘息患者らが有意により高いレベルのCD4を発現する、CD4発現レベルの有意差。
図3B:重症喘息患者らが有意により高いレベルのCD6を発現する、CD6発現レベルの有意差。
【
図3C-G】
図3C~3G。重症喘息患者らが有意により高いレベルのCD6を発現する、Th17マーカー発現レベルにおける有意差。
図3C:CCR6発現;
図3D:CCR4発現;
図3E:KLRB1発現;
図3F:IL-17A発現;
図3G:IL-17F発現。
【0065】
【
図4】
図4。CD6は、重症喘息患者らのクラスターにおいて最も高い。
図4A:>1000遺伝子の発現に基づく教師なしクラスター分析(喘息の重症度を問わず)は、主要な4つのクラスターに分かれた喘息患者らの群を示す。
図4B:各クラスターは、平均が異なるCD6の発現を呈し、重症喘息患者らのみから構成されるクラスター3において最も高い発現が生じたが、このことは、高い標的をもつ重症喘息患者らのサブセットが存在することを示唆する。
【0066】
【
図5A】
図5。アレルギー性喘息のマウスモデルにおけるCD6遮断は、気管支洗浄液中のTh2サイトカインレベルが減少する。
図5A:処置群および用法を示す表。
【
図5B-C】
図5B:用法の説明。
図5C。曝露の最中のmCD6D1 抗CD6抗体でのCD6遮断は、気管支洗浄液(BALF)中の減少したレベルのTh2サイトカイン、IL-4、IL-5、およびIL-13、ならびに肺の細胞中のこれらのサイトカインの穏やかな低減(データ示さず)をもたらした。
【0067】
【
図6A】
図6。OVAワクチン接種の古典的なTh2モデルにおけるCD6遮断は、Th2主導のIgE産生を阻害する。
図6A:処置群および用法を示す表。
【
図6B-C】
図6B:用法の説明。
図6C。mCD6D1 抗CD6抗体での予防的なCD6遮断は、OVA特異的IgE産生を阻害したが、これはCD6経路のTh2応答に対する効果を実証する。
【0068】
【
図7】
図7。喘息表現型の例を示す。このとおり喘息表現型は炎症タイプ(高Th2または低Th2)および他の不確定要素(variables)に関連する。CS=コルチコステロイド;GM-CSF=顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子。
【発明を実施するための形態】
【0069】
詳細な記載
本発明の実践は、それとは反対に具体的に示されない限り、当該技術分野の技能の範囲内にある分子生物学および組換えDNA技法の従来の方法を採用するであろう。それらの多くは説明する目的上、下に記載されている。かかる技法は文献に完全に説明されている。例として、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd Edition, 2000);DNA Cloning: A Practical Approach, vol. I & II (D. Glover, ed.);Oligonucleotide Synthesis (N. Gait, ed., 1984);Oligonucleotide Synthesis: Methods and Applications (P. Herdewijn, ed., 2004);Nucleic Acid Hybridization (B. Hames & S. Higgins, eds., 1985);Nucleic Acid Hybridization: Modern Applications (Buzdin and Lukyanov, eds., 2009);Transcription and Translation (B. Hames & S. Higgins, eds., 1984);Animal Cell Culture (R. Freshney, ed., 1986);Freshney, R.I. (2005) Culture of Animal Cells, a Manual of Basic Technique, 5th Ed. Hoboken NJ, John Wiley & Sons;B. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (3rd Edition 2010);Farrell, R., RNA Methodologies: A Laboratory Guide for Isolation and Characterization (3rd Edition 2005);Poly(ethylene glycol), Chemistry and Biological Applications, ACS, Washington, 1997;Veronese, F., and J.M. Harris, Eds., Peptide and protein PEGylation, Advanced Drug Delivery Reviews, 54(4) 453-609 (2002);Zalipsky, S., et al., “Use of functionalized Poly(Ethylene Glycols) for modification of polypeptides” in Polyethylene Glycol Chemistry: Biotechnical and Biomedical Applicationsを参照。上に検討された刊行物はもっぱら、それらの開示を本出願の出願日前に提供されている。本明細書には、先行発明のせいで本発明がかかる開示を先行する権限がないとの了解として解釈されるべきものはない。
【0070】
定義
別様に定義されない限り、本明細書に使用されるすべての専門用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と同様または等価ないずれの方法および材料も本発明の実践または検査に使用され得るものの、好ましい方法および材料は記載される。本発明の目的上、以下の用語は下に定義される。
【0071】
冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法上の目的語の1つ、または1つより多く(すなわち、少なくとも1つ)を指すために本明細書に使用される。一例として、「要素」は、1つの要素または1つより多くの要素を意味する。
【0072】
用語「および/または」は、別様に明記されない限り、「および」または「または」のいずれかを意味するために本開示において使用される。
【0073】
用語「例として」は、「例えば」を意味するために本明細書に使用され、明言されたステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群の包含を暗示するが、いずれの他のステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群の排除は暗示しないことが理解されるであろう。
【0074】
「約」とは、参照の分量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さに対して、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%の差で変動する、分量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さを意図する。
【0075】
用語「投与すること」は、本明細書に使用されるとき、化合物、例として医薬化合物などの物、または抗原などの他の剤を、対象へ移動、送達、導入、または輸送するいずれの様式(mode)をも指す。投与様式は、経口投与、局所の接触、静脈内の、腹腔内の、筋肉内の、鼻腔内の、または皮下の投与を包含する。1以上の治療剤などのさらなる物「と組み合わせて」投与することは、同時(併用)投与およびいずれの順序での連続投与を包含する。
【0076】
用語「結合パートナー」は、本明細書に使用されるとき、剤に、DNA分子またはRNA分子などの核酸分子(mRNA分子を包含する)、ならびにペプチド、タンパク質、糖類、多糖類、または脂質との複合体を形成することを許容するのに十分な相互作用を通して、一般に非共有結合を介して、核酸分子、ペプチド、タンパク質、または糖類、多糖類、または脂質に結合し得る分子、とりわけポリマー分子などの物を指す。いくつかの態様において、結合パートナーは、免疫グロブリン、または下に定義されるとおりの免疫グロブリン様機能をもつタンパク性の結合分子である。いくつかの態様において、結合パートナーは、アプタマーである。いくつかの態様において、結合パートナーは、具体的な標的に特異的である。いくつかの態様において、結合パートナーは複数の結合部位を包含し、各結合部位は具体的な標的に特異的である。説明に役立つ例として、結合パートナーは、2つの結合部位をもつ免疫グロブリン様機能をもつタンパク性の剤であってもよい。それは、実例として、抗体の抗原結合性フラグメントであってもよい。それは、実例として、二重特異性の単鎖の二重特異性抗体(diabody)などの二重特異性の二重特異性抗体であってもよい。
【0077】
用語「担体」は、本開示において使用されるとき、担体、賦形剤、および希釈剤を網羅し、対象の、一方の器官または身体の一部から、もう一方の器官または身体の一部へ医薬品を運搬または輸送することに関与する、液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入材料などの材料、組成物、あるいはビヒクルを意味する。
【0078】
本明細書に使用されるとき、用語「キメラ抗体」は、1より多くの種からの配列を包含する免疫グロブリンポリペプチドまたはドメイン抗体を指す。キメラ抗体における重鎖または軽鎖は、一方の種(ヒトなど)からの可変領域配列と、もう一方の種(マウスなど)からの定常領域配列とを含有していてもよい。一例として、「キメラ抗体」は、ラット抗体またはマウス抗体などの動物抗体に由来する可変領域を有し、かつ別の分子(例えば、ヒト抗体に由来する定常領域)と縮合された免疫グロブリンであってもよい。用語「キメラ抗体」は、以下の抗体を網羅することが意図される:(i)重鎖はキメラであるが、軽鎖は、1種のみからのV領域およびC領域を含む;(ii)軽鎖はキメラであるが、重鎖は、1種のみからのV領域およびC領域を含む;ならびに(iii)重鎖と軽鎖との両方ともキメラである。
【0079】
「有効量」は、化合物に関連付けて使用されるとき、所望の応答を惹起するのに必要とされる、抗CD6抗体(例として、EQ001)などの化合物の量である。いくつかの態様において、所望の応答は、生物学的な応答、例として対象における生物学的な応答である。いくつかの態様において、化合物(例として、抗CD6抗体)は、対象における生物学的な応答を生じさせる有効量で対象へ投与されてもよい。いくつかの態様において、有効量は、「治療的に有効な量」である。
【0080】
用語「治療的に有効な量」および「治療的用量」は、本明細書に記載のとおりの対象への投与を受けて、対象における疾患または障害を処置するのに有効な抗CD6抗体(例として、EQ001)などの化合物の量を指すために本明細書中、互換的に使用される。
【0081】
用語「予防的に有効な量」は、本明細書に記載のとおりの対象への投与を受けて、対象における疾患または障害の発病を予防または遅延させるのに有効な抗CD6抗体(例として、EQ001)などの化合物の量を指すために本明細書に使用される。
【0082】
この点に関し、「ヒト化抗体」は、本明細書に使用されるとき、ヒト抗体の構造要素および非ヒト抗体の抗原結合部位を含有する免疫グロブリンポリペプチドまたはドメイン抗体である。「ヒト化抗体」は、これらが由来する非ヒト抗体からの最小限の残基数を含有する。実例として、これらは、非ヒト抗体のCDR領域のみ、または非ヒト抗体の超可変領域を構成するそれらの残基のみを含有していることもある。これらはまた、非ヒトポリペプチドの可変領域の外側からも、非ヒト抗体の構造を模倣するのに必要な残基または立体障害を最小化するのに必要な残基などのある残基を含有していることもある。典型的には、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一の、すなわち少なくとも約85~90%同一の、たとえば少なくとも95%同一の、いずれの定常領域が存在しつつ、ヒトフレームワーク、非ヒト抗体からの少なくとも1つのCDRを含有する。ゆえに、いくつかの場合において、おそらくCDRを除くヒト化免疫グロブリンのすべての部分は、1以上のネイティブなヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。加えて、ヒト化抗体は、ヒト抗体または非ヒト抗体のいずれにも対応しない残基を含有していることもある。
【0083】
本明細書に使用されるとき、用語「抗体フラグメント」は、抗体の完全長形態以外のいずれの形態をも指す。抗体フラグメントは、本明細書中、完全長抗体内に存在するより小さい構成要素である抗体、および改変されている抗体を包含する。抗体フラグメントは、これらに限定されないが、Fv、Fc、Fab、および(Fab')2、単鎖Fv(scFv)、二重特異性抗体(diabodies)、三重特異性抗体、四重特異性抗体、二機能性ハイブリッド抗体、CDRl、CDR2、CDR3、複数のCDRの組み合わせ、可変領域、フレームワーク領域、定常領域、重鎖、軽鎖、代わりの足場になる(alternative scaffold)非抗体分子、および二重特異性の抗体(bispecific antibodies)を包含する。具体的にとくに断りのない限り、用語「抗体(単数または複数)」を使用する陳述およびクレームは、具体的に言うと、「抗体フラグメント(単数または複数)」を包含していてもよい。
【0084】
用語「喘息」は、その通常の科学的意味を有し、間欠性喘息、軽度の持続型喘息、中度の持続型喘息、および重度の持続型喘息を包含する。
【0085】
用語「重症喘息」は、ステロイドによって疾患症状がほとんど制御されない喘息の別のカテゴリーを記載するために本明細書に使用される。重症喘息は、ステロイドに抵抗性があるかおよび/またはコルチコステロイド(CS)に無効である喘息を包含する。いくつかの態様において、重症喘息(SA)は、主に好中球性Th1/Th17 T細胞媒介性の応答によって主導される。いくつかの態様において、SAは、主に顆粒球の関与が乏しいTh1/Th17 T細胞媒介性の応答によって主導される。いくつかの態様において、SAはまた、1以上の他の喘息療法(asthma therapeutic)にも抵抗性がある。例えば、いくつかの態様において、SAはまた、SABAおよび/またはLABAの1上にも抵抗性がある。いくつかの態様において、重症喘息は、好中球性Th1/Th17 T細胞媒介性の応答、顆粒球の関与が乏しいTh1/Th17 T細胞媒介性の応答、または好中球性Th1/Th17と好酸球性Th2との組み合わせのT細胞媒介性の応答を有することによって特徴付けられることもある。ある態様において、重症喘息は、好中球性T細胞応答を含むこともあるが、好酸球性T細胞応答は含まない。ある態様において、重症喘息は、顆粒球の関与が乏しいT細胞応答を含むこともあるが、好酸球性T細胞応答は含まない。
【0086】
用語「ステロイド抵抗性の喘息」は、ステロイド処置(例として、コルチコステロイド)が限定的な効き目しか有さない喘息を記載するために本明細書に使用される。よって、ステロイド抵抗性の喘息のステロイド(例として、コルチコステロイド)での処置は、ほとんど検出できない治療効果しか生み出さないであろう。いくつかのケースにおいて、かかる処置は、実質的に治療効果を生み出さない。
【0087】
用語「ステロイドが無効の喘息」は、ステロイド処置(例として、コルチコステロイド)が効き目を有さない喘息を記載するために本明細書に使用される。よって、ステロイドが無効の喘息のステロイド(例として、コルチコステロイド)での処置は、検出可能な治療効果を生み出さないであろう。
【0088】
用語「LABA」は、長時間作用型ベータ アゴニストを意味する。LABAは、当該技術分野において知られており、限定せずに、フマル酸ホルモテノール;キシナホ酸サルメテロールを包含する。
【0089】
用語「SABA」は、短時間作用型ベータ アゴニストを意味する。SABAは、当該技術分野において知られており、限定せずに、アルブテロール(例として、硫酸アルブテロール、硫酸アルブテロールHFA、硫酸アルブテロールの吸入用溶液、硫酸アルブテロールの噴霧器用溶液、および塩酸レブアルブテロール)、メタプロテレノール、ピルブテロール(例として、酢酸ピルブテロール);塩酸イソエタリン;塩酸イソプロテレノール;および硫酸テルブタリンを包含する。
【0090】
用語「VH」は、抗体の可変重鎖を表すために本明細書に使用される。
【0091】
用語「VK」は、抗体の可変軽鎖を表すために本明細書に使用される。
【0092】
用語「抗原結合性フラグメント」は、抗体に関し、親の完全長抗体が結合する抗原に対する結合親和性を保持しているいずれの抗体フラグメントを指し、抗原結合性フラグメントは、これらに限定されないが、Fv、Fab、(Fab’)2、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、二機能性ハイブリッド抗体、CDRl、CDR2、CDR3、複数のCDRの組み合わせ、可変領域、重鎖、軽鎖、および二重特異性の抗体を包含する。
【0093】
本明細書を通してずっと、文脈上他に要されない限り、語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含む(comprising)」は、明言されたステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群の包含を暗示するが、いずれの他のステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群の排除は暗示しないことが理解されるであろう。「からなる(consisting of)」とは、句「からなる」に続くものは何でも包含しかつ限定することを意図する。よって、句「からなる」は、挙げられた要素が必要または必須であって、他の要素は存在し得ないことを指示する。「本質的にからなる」とは、前記句の後に挙げられたいずれの要素も包含することが意図され、挙げられた要素について本開示に特定された活性または作用に干渉も寄与もしない他の要素に限定される。よって、句「本質的にからなる」は、挙げられた要素は必要または必須であるが、他の要素は任意であり、かつ挙げられた要素の活性または作用に著しく影響を及ぼすか否かに応じて存在していてもまたは存在していなくてもよいことを指示する。
【0094】
用語「調節する(modulating)」は、「増加する」、「増強する」、または「刺激する」、ならびに「減少する」または「低減する」を包含し、典型的には、対照と比較して統計的に有意な量または生理学的に有意な量にある。「増加した」、「刺激された」、または「増強された」量は、典型的には「統計的に有意な」量であり、無組成物(例として、本発明の抗CD6抗体のいずれも不在)もしくは対照組成物、対照試料、または対照被験対象によって産生される量の1.1、1.2、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30倍以上(例として、500、1000倍)(すべての整数および1の上かつその中間の小数点、例として、1.5、1.6、1.7、1.8等々を包含する)の増分を包含していてもよい。「減少した」または「低減した」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、無組成物(剤もしくは化合物が不在)または対照組成物によって産生される量の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%(その中間のすべての整数も包含する)減分(decrease)を包含していてもよい。
【0095】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーならびに同ポリマーのバリアントおよび合成類似体を指すために本明細書中、互換的に使用される。よって、これらの用語は、1以上のアミノ酸残基が、天然に存在しない合成アミノ酸、たとえば天然に存在する対応するアミノ酸の化学的類似体であるアミノ酸ポリマーに、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用される。
【0096】
「対象」または「患者」は、本明細書に使用されるとき、抗CD6抗体もしくはその抗原結合性フラグメントで処置または診断され得る症状を呈するかまたはその症状を呈するリスクがあるいずれの動物も包含する。好適な対象(患者ら)は、好ましくは、ヒト患者を包含する。好適な対象はまた、実験動物(マウス、ラット、ウサギ、もしくはモルモットなど)、家畜(ブタ、ウマ、ウシなど)、および飼育動物またはペット(ネコもしくはイヌなど)を包含する。非ヒト霊長目の動物(サル、チンパンジー、ヒヒ、または赤毛猿など)もまた包含される。
【0097】
「実質的に」または「本質的に」は、ほとんど大体またはほとんど完全、実例として、ある所定分量の95%以上を意味する。
【0098】
「処置」または「処置する」は、本明細書に使用されるとき、疾患もしくは疾病の症状または病的状態に対する所望されるいずれの効果も包含し、処置されている疾患または条件疾病の1以上の測定可能なマーカーにおける最小限の変化または改善さえも包含していてもよい。「処置」または「処置する」は、疾患もしくは疾病またはそれらの関連症状の完全な根絶あるいは治癒を必ずしも指示するものではない。この処置を受けている対象は、これを必要とするいずれの対象でもある。臨床改善の例示マーカーは、当業者には明らかであろう。
【0099】
別様に定義されない限り、本明細書に使用されるすべての専門用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるのと同様のまたは等価ないずれの方法、組成物、試薬、細胞も本発明の実践または検査において使用され得るものの、好ましい方法および材料は本明細書に記載される。すべての刊行物および参考文献は、これらに限定されないが、本明細書に引用される特許および特許出願を包含するものであって、あたかも個々の刊行物または参考文献の各々が具体的かつ個々に、参照により本明細書に組み込まれるよう指示されているかのように(全部が明記されているように)、それら全体を参照することより本明細書に組み込まれる。また本出願が優先権を主張する特許出願のいずれも、その全体を参照することにより、刊行物および参考文献について上に記載されるやり方で本明細書に組み込まれる。
【0100】
要旨
本開示は、抗CD6抗体を対象へ投与することを含む、重症喘息の処置、予防、または軽減に関する。
【0101】
CD6は主として、ヒトT細胞およびB細胞のサブセットによって、ならびにいくつかのB細胞慢性リンパ性白血病およびニューロンによって発現されている重要な細胞表面タンパク質である[Aruffo et al., J. Exp. Med. 1991, 174:949;Kantoun et al., J. Immunol. 1981, 127:987;Mayer et al., J. Neuroimmunol. 1990. 29:193]。CD6は、I型マクロファージのスカベンジャー受容体システインリッチドメイン(SRCR)と相同の少なくとも1つのドメインを有することによって特徴付けられるタンパク質の大きなファミリーのメンバーである[Matsumoto, et al., J. Exp. Med. 1991, 173:55およびResnick et al., Trends Biochem. Sci. 1994, 19:5]。このファミリーの他のメンバーは、CD5[Jones et al., Nature. 1986, 323:346];シクロフィリンC[Friedman et al. 1993, PNAS 90:6815];活性化された補体タンパク質C3bおよびC4bに結合する補体因子I[Goldberger, et al., J. Biol. Chem. 1987, 262:10065];.タウ./.デルタ. T細胞によって発現されるウシWC-1[Wijingaard et al., J. Immunol. 1992, 149:3273]、およびM130[Law et al., Eur J. Immunol. 1993, 23:2320]、マクロファージ活性化マーカーを包含する。
【0102】
成熟したCD6タンパク質の細胞外ドメインは、3つのSRCRドメイン(以後、本明細書中D1、D2、およびD3と表記される)から構成される。D3は、膜近位SRCRドメインに対応すし、33アミノ酸の短い柄領域(stalk region)がこれに続く。これらの細胞外ドメインは、短い膜貫通ドメインを介して細胞膜へ係留されており、長さ可変の細胞質ドメインがこれに続く[Aruffo et al., J. Exp. Med. 1991, 174:949]。
【0103】
ヒトIgG1定常領域(CD6-Rgs)と縮合された、選択されたCD6の細胞外ドメインを含有するCD6-免疫グロブリン融合タンパク質を使用した研究によって、
CD6リガンドの同定およびクローニングに繋がった。これは「活性化白血球細胞接着分子」(ALCAM)と表記され、またCD166としても知られている[Patel, et al., J . Exp. Med. 1995. 181:1563-1568; Bowen et al., J . Exp. Med 1995, 181:2213-2220]。
【0104】
ALCAMは、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである100~105kD I型膜貫通型糖タンパク質であって、5つの細胞外免疫グロブリンドメイン(2つのNH2末の膜遠位可変(V)型(V1、V2またはD1、D2)、および3つの膜近位定常(C2)型のIgフォールド)[C1、C2、C3]、膜貫通領域、および短い細胞質テールを含む。N末ドメイン(D1)はもっぱら、リガンド結合に関与するが、膜近位ドメイン(C2、C3またはD4、D5)は同種親和性の相互作用に要する。
【0105】
ALCAMは、膜近位SRCRドメインに対応するCD6のドメイン3へ結合する[Whitney, et. al., J. Biol. Chem 1995, 270: 18187-18190]。
【0106】
CD6は、CD4+ T細胞を包含するT細胞の表面上に発現され、T細胞の活性化、分化、生存、および遊走において役割を果たし得る。しかしながら、重度の非アレルギー性喘息の病因におけるCD6+ T細胞が果たす役割は、これまでに報告されていなかった。
【0107】
我々は本明細書に、ステロイドに無効である致死的な重症喘息患者らが、喘息がない患者らより有意に高いレベルのCD6タンパク質およびそのリガンド、ALCAMを肺の組織に発現しているという驚くべき発見を報告する(
図2)。さらに、公的に入手可能なRNASeqデータセットのバイオインフォマティクスベースのde novo分析は、重症喘息患者らが、中度の喘息患者らおよび非喘息患者らとの比較において、有意により高いレベルのCD6 mRNAを気管支洗浄液(BALF)に発現していることを実証することによって、この結果を裏付ける(
図3B)。その上、これらのデータセットのバイオインフォマティクス-ベースのde novo分析はまた、Th17マーカーならびにサイトカインCCR6、CCR4、KLRB1、IL-17A、およびIL-17Fがすべて、中度の喘息患者らおよび非喘息患者らと比較して、重症喘息患者らにおいて、有意により高く気管支洗浄液(BALF)に発現されていることも実証した(
図3C~3G)。これらの重症喘息患者らにおける前記疾患のステロイド無効性(Th2媒介喘息が典型的にはステロイド処置に十分に応答することから、非Th2疾患を示唆する、
図7を参照)、ならびにこれらのTh17-マーカーおよびサイトカインの高発現を考慮すると、我々は、この上昇したCD6発現が主として肺の組織に浸潤するTh17 T細胞に起因するものと結論付ける。
【0108】
興味深いことに、近年の報告は、抗ALCAM抗体で処置されたALCAMノックアウトマウスおよびマウスが、アレルゲン曝露に応えて低減したTh2サイトカインレベルを示すところ、好酸球性Th2主導のアレルギー性喘息が、ALCAMによって一部媒介されることもあることを示唆する。Kim, et al., Am J Respir Crit Care Med. 2018 Apr 15;197(8):994-1008。しかしながら、これらの知見は、アレルギー性喘息モデルにおけるアレルギー性の好酸球性Th2媒介応答に限定的であった(IL-4、IL-5、IL-13、およびIgEを包含するTh2サイトカインに焦点を合わせている);その一方、対照的に、我々の上記結果は、低好酸球または無好酸球を呈する非アレルギー性の重症喘息の症例に焦点を合わせる。さらに、我々の知見は、高レベルのTh1およびTh17 T細胞(有意に上昇したレベルのTh17マーカー(CCR6、CCR4、KLRB1、IL-17A、およびIL-17F)を発現する)が、重度のステロイド無効性の喘息の病的状態を根拠とし得ることを示唆する。興味深いことに、我々のデータはまた、Kimらにおいて報告された知見とも以下の点で異なる。彼らは、ALCAMの切断(shedding)(ADAMファミリーのメタロプロテイナーゼ活性を介する)に起因する、肺における低内在ALCAMタンパク質を確かめた;その一方、対照的に、我々は、非アレルギー性の重症喘息患者らの肺において高レベルのALCAMタンパク質を観察した(
図2)。よって、Kimらの報告を踏まえると、我々のデータはさらに、好酸球性タイプの喘息と非好酸球性タイプの喘息との間の複雑な差を説明し、前記差は、前者の一般にステロイド応答性であることと、後者の一般にステロイド無効性または抵抗性であることとが根拠になり得る。
【0109】
注目すべきことに、我々はまた、Th2媒介アレルギー性喘息のマウスモデル(上でKimらに利用されたものと同じモデル)において、CD6阻害は有効に、気管支洗浄液中のTh2サイトカインを減少させ(
図5C)、かつTh2主導のIgE産生を阻害する(
図6)ことも本明細書に報告するが、このことは、好酸球性Th2喘息がまた、抗CD6抗体で処置可能であり得ることも示す。よって、好酸球性タイプの喘息と非好酸球性タイプの喘息との間に大体顕著な(hallmark)差があるステロイド処置への二股の応答とは違って、我々のデータは、CD6阻害がTh2-およびTh1/Th17-媒介喘息の並行阻害にワンストップ(one-stop)機構を提供し得ることを示唆する。我々の知る限り、これは、低好酸球性または無好酸球性の構成要素を有するものとして特徴付けられる重症喘息(すなわち、Th2媒介性のアレルギー性喘息よりむしろ、Th1/Th17媒介喘息)をCD6抗体で処置することを示唆する最初の報告である。
【0110】
結果的に、本開示のある側面は、喘息を有する対象におけるT細胞媒介性の肺炎症を阻害することに向けられる方法および組成物を提供し、前記方法および組成物は、CD6シグナリング経路を阻害または遮断することを含む。具体的な態様において、方法および組成物は、血中低好酸球または血中無好酸球によって特徴付けられる喘息を有する対象におけるT細胞媒介性の肺炎症を阻害することに向けられる。血中好酸球カウントを決定するための方法は、当該技術分野において周知であり、本開示に従って使用されてもよい(例として、Kostikas, et al., Curr Drug Targets. 2018 Dec; 19(16): 1882-1896を参照。その全体は参照されることによって本明細書に組み込まれる)。
【0111】
当業者には明確なことではあるが、高好酸球または低好酸球の存在は、アレルギー性喘息を他の形態の非アレルギー性喘息から区別するための、十分例外的な(well-excepted)絶対的基準である。好酸球は通常、末梢血中5%未満の白血球に相当するが、タイプ2ヘルパーT細胞(Th2)媒介性の炎症(たとえば、前記炎症はアレルギー性喘息に存在する)に応えてそれらの産生は大きく増加し、多くの臨床研究では肺の好酸球レベルの代用として血中好酸球カウントの測定値を使用している。例として、Kostikas, et al., Curr Drug Targets. 2018 Dec;19(16):1882-1896を参照(その全体が参照されることによって本明細書に組み込まれる)。本明細書に使用されるとき、「低」好酸球をもつ喘息対象への言及は、対象が血中好酸球カウント≦300細胞/μlを有することを意味する。「無」好酸球をもつ喘息対象への言及は、対象が検出可能な血中好酸球細胞/μlを有さないことを意味する。
【0112】
本開示のある側面は、喘息を有する対象におけるT細胞媒介性の肺炎症を阻害することに向けられる方法および組成物であって、抗CD6抗体(例として、EQ001)またはその抗原結合性フラグメントを対象へ投与することを含む前記方法および組成物を提供する。いくつかの態様において、喘息は重症喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は低好酸球または無好酸球によって特徴付けられてもよい。具体的な態様において、喘息は好中球性喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、顆粒球の関与が乏しい喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、混合性炎症の喘息であってもよい。
【0113】
本開示のある側面は、T細胞が喘息誘発抗原に応えて肺組織中へおよびこれを通って遊走するのを予防または軽減することに向けられる方法および組成物であって、抗CD6抗体(例として、EQ001)またはその抗原結合性フラグメントを対象へ投与することを含む前記方法および組成物を提供する。いくつかの態様において、喘息は重症喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は低好酸球または無好酸球によって特徴付けられてもよい。具体的な態様において、喘息は好中球性喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、顆粒球の関与が乏しい喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、混合性炎症の喘息であってもよい。
【0114】
本開示のある側面は、喘息の症状もしくは重症度を調節または軽減することに向けられる方法および組成物であって、抗CD6抗体(例として、EQ001)またはその抗原結合性フラグメントを対象へ投与することを含む前記方法および組成物を提供する。いくつかの態様において、喘息は重症喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は低好酸球または無好酸球によって特徴付けられてもよい。具体的な態様において、喘息は好中球性喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、顆粒球の関与が乏しい喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、混合性炎症の喘息であってもよい。
【0115】
本開示のある側面は、喘息の症状もしくは重症度を調節または軽減することに向けられる方法および組成物であって、T細胞を抗CD6抗体(例として、EQ001)またはその抗原結合性フラグメントと接触させることを含む前記方法および組成物を提供する。いくつかの態様において、喘息は重症喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は低好酸球または無好酸球によって特徴付けられてもよい。具体的な態様において、喘息は好中球性喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、顆粒球の関与が乏しい喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、混合性炎症の喘息であってもよい。
【0116】
本開示のある側面は、喘息を有する対象におけるT細胞媒介性の肺炎症を阻害することに向けられる方法および組成物であって、T細胞上のCD6へ特異的に結合し、かつCD6シグナリングの活性化を予防または阻害する結合パートナーを対象へ投与することを含む前記方法および組成物を提供する。結合パートナーは、抗CD6抗体(例として、EQ001)またはその抗原結合性フラグメントであってもよい。いくつかの態様において、喘息は重症喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は低好酸球または無好酸球によって特徴付けられてもよい。具体的な態様において、喘息は好中球性喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、顆粒球の関与が乏しい喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、混合性炎症の喘息であってもよい。
【0117】
本開示のある側面は、T細胞が喘息誘発抗原に応えて肺組織中へおよびこれを通って遊走するのを処置、予防または軽減することに向けられる方法および組成物であって、T細胞上のCD6へ特異的に結合し、かつCD6シグナリングの活性化を予防または阻害する結合パートナーを対象へ投与することを含む前記方法および組成物を提供する。結合パートナーは、抗CD6抗体(例として、EQ001)またはその抗原結合性フラグメントであってもよい。いくつかの態様において、喘息は重症喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は低好酸球または無好酸球によって特徴付けられてもよい。具体的な態様において、喘息は好中球性喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、顆粒球の関与が乏しい喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、混合性炎症の喘息であってもよい。
【0118】
本開示のある側面は、喘息の症状もしくは重症度を調節または軽減することに向けられる方法および組成物であって、T細胞上のCD6へ特異的に結合し、かつCD6シグナリングの活性化を予防または阻害する結合パートナーを対象へ投与することを含む前記方法および組成物を提供する。結合パートナーは、抗CD6抗体(例として、EQ001)またはその抗原結合性フラグメントであってもよい。いくつかの態様において、喘息は重症喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は低好酸球または無好酸球によって特徴付けられてもよい。具体的な態様において、喘息は好中球性喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、顆粒球の関与が乏しい喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、混合性炎症の喘息であってもよい。
【0119】
本開示のある側面は、重症喘息の症状もしくは重症度を調節または軽減することに向けられる方法および組成物であって、T細胞上のCD6へ特異的に結合し、かつCD6シグナリングの活性化を予防または阻害する結合パートナーとT細胞を接触させること含む前記方法および組成物を提供する。結合パートナーは、抗CD6抗体(例として、EQ001)またはその抗原結合性フラグメントであってもよい。いくつかの態様において、喘息は重症喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は低好酸球または無好酸球によって特徴付けられてもよい。具体的な態様において、喘息は好中球性喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、顆粒球の関与が乏しい喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、混合性炎症の喘息であってもよい。
【0120】
本開示のある側面は、T細胞が喘息誘発抗原に応えて肺組織中へおよびこれを通って遊走するのを処置、予防または軽減することに向けられる方法および組成物であって、CD6経路を阻害または遮断することを含む前記方法および組成物を提供する。いくつかの態様において、喘息は重症喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は低好酸球または無好酸球によって特徴付けられてもよい。具体的な態様において、喘息は好中球性喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、顆粒球の関与が乏しい喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、混合性炎症の喘息であってもよい。
【0121】
本開示のある側面は、喘息の症状もしくは重症度を調節または軽減することに向けられる方法および組成物であって、CD6経路を阻害または遮断することを含む前記方法および組成物を提供する。いくつかの態様において、喘息は重症喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は低好酸球または無好酸球によって特徴付けられてもよい。具体的な態様において、喘息は好中球性喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、顆粒球の関与が乏しい喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、混合性炎症の喘息であってもよい。
【0122】
本開示のある側面は、喘息の症状もしくは重症度を調節または軽減することに向けられる方法および組成物であって、CD6経路を阻害または遮断することを含む前記方法および組成物を提供する。いくつかの態様において、喘息は重症喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は低好酸球または無好酸球によって特徴付けられてもよい。具体的な態様において、喘息は好中球性喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、顆粒球の関与が乏しい喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、混合性炎症の喘息であってもよい。
【0123】
いくつかの態様において、重症喘息を処置する方法は、1以上のCD6発現細胞の活性化、増殖、分化、生存、および/または遊走を、抗CD6抗体(例として、EQ001)と接触させることによって調節することを含む。例えば、抗CD6抗体(例として、EQ001)と接触させられたCD6発現細胞は、CD6を発現するT細胞であってもよい。結果的に、かかるT細胞のかかる特性は、重症喘息を有する対象において、抗CD6抗体の投与を介して調節されてもよい。いくつかの態様において、そのように調節されるT細胞は、CD4+ T細胞である。いくつかの態様において、そのように調節されるT細胞は、T-ヘルパー1(Th1) T細胞である。いくつかの態様において、そのように調節されるT細胞は、T-ヘルパー17(Th17) Tリンパ球(T細胞)である。いくつかの態様において、抗CD6抗体(例として、EQ001)は、Th1 T細胞および/またはTh17 T細胞ならびにCD6を発現する別の細胞の、活性化、分化、生存、および/または遊走を調節する。例えば、抗CD6抗体(例として、EQ001)は、(i)Th17 T細胞およびTh2 T細胞;(ii)Th17 T細胞およびTh1 T細胞;(iii)Th1 T細胞およびTh2 T細胞;ならびに(iv)Th17 T細胞、Th1 T細胞、およびTh2 T細胞から選択される細胞の組み合わせの活性化、分化、生存、および/または遊走を調節してもよい。いくつかの態様において、喘息は重症喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は低好酸球または無好酸球によって特徴付けられてもよい。具体的な態様において、喘息は好中球性喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、顆粒球の関与が乏しい喘息であってもよい。具体的な態様において、喘息は、混合性炎症の喘息であってもよい。
【0124】
いくつかの態様において、喘息は、好中球性、または好酸球性と好中球性との両方である混合表現型を包含する重症喘息である。いくつかの態様において、喘息は、好中球性、顆粒球の関与が乏しいもの、または好酸球性と好中球性との両方である混合表現型を包含する重症喘息である。いくつかの態様において、喘息は、Th17 T細胞であるCD6+ T細胞を伴う気道の炎症によって特徴付けられる好中球性重症喘息である。いくつかの態様において、喘息は、Th1 T細胞であるCD6+ T細胞を伴う気道の炎症によって特徴付けられる好中球性重症喘息である。ある具体的な態様において、喘息は、Th1 CD6+ T細胞およびTh17 CD6+ T細胞を伴う気道の炎症によって特徴付けられる好中球性重症喘息である。いくつかの態様において、喘息は、Th17 T細胞であるCD6+ T細胞を伴う気道の炎症によって特徴付けられる顆粒球の関与が乏しい重症喘息である。いくつかの態様において、喘息は、Th1 T細胞であるCD6+ T細胞を伴う気道の炎症によって特徴付けられる顆粒球の関与が乏しい重症喘息である。ある具体的な態様において、喘息は、Th1 CD6+ T細胞およびTh17 CD6+ T細胞を伴う気道の炎症によって特徴付けられる顆粒球の関与が乏しい重症喘息である。いくつかの態様において、重症喘息は、Th1 T細胞であるCD6+ T細胞、Th17 T細胞であるCD6+ T細胞、およびTh2 T細胞であるCD6+ T細胞を伴う気道の炎症によって特徴付けられる、好中球性と好酸球性との混合性の喘息である。
【0125】
具体的な態様において、本開示は、Th17 T細胞であるCD6+ T細胞を伴う気道の炎症によって特徴付けられる好中球性重症喘息を有する患者へ抗CD6抗体(例として、EQ001)を投与することを含む方法を提供する。
【0126】
具体的な態様において、本開示は、Th1 T細胞であるCD6+ T細胞を伴う気道の炎症によって特徴付けられる好中球性重症喘息を有する患者へ抗CD6抗体(例として、EQ001)を投与することを含む方法を提供する。
【0127】
具体的な態様において、本開示は、Th17 T細胞であるCD6+ T細胞およびTh1 T細胞であるCD6+ T細胞を伴う気道の炎症によって特徴付けられる好中球性重症喘息を有する患者へ抗CD6抗体(例として、EQ001)を投与することを含む方法を提供する。
【0128】
ある態様において、本発明は、低好酸球性T細胞応答を含む重症喘息を本明細書に開示の抗CD6抗体(例として、EQ001)で処置することに関する。ある態様において、本発明は、無好酸球性T細胞応答を含む重症喘息を本明細書に開示の抗CD6抗体(例として、EQ001)で処置することに関する。
【0129】
ある態様において、本発明は、好中球性T細胞応答を含むが無好酸球性T細胞応答は含まない重症喘息を本明細書に開示の抗CD6抗体(例として、EQ001)で処置することに関する。ある態様において、本発明は、好中球性T細胞応答を含むが実質的に無好酸球性T細胞応答は含まない重症喘息を本明細書に開示の抗CD6抗体(例として、EQ001)で処置することに関する。ある態様において、本発明は、好中球性T細胞応答および低好酸球性T細胞応答を含む重症喘息を本明細書に開示の抗CD6抗体(例として、EQ001)で処置することに関する。ある態様において、本発明は、実質的にTh17 CD4+ エフェクター細胞媒介性であるT細胞応答を含む重症喘息を本明細書に開示の抗CD6抗体(例として、EQ001)で処置することに関する。ある態様において、本発明は、Th1およびTh17 CD4+ エフェクター細胞によって実質的に媒介されるT細胞応答を含む重症喘息を本明細書に開示の抗CD6抗体(例として、EQ001)で処置することに関する。ある態様において、本発明は、Th2 CD4+ エフェクター細胞より少なくとも2倍(2×)多いTh1および/またはTh17 CD4+ エフェクター細胞、あるいはTh2 CD4+ エフェクター細胞より3×、4×、5×、10×、15×、20×、30×、40×、50×、100×、1,000×、10,000×多いTh1および/またはTh17 CD4+ エフェクター細胞によって媒介されるT細胞応答を含む喘息(例として、重症喘息)を処置することに関する。
【0130】
T細胞上のCD6へ特異的に結合し、かつCD6シグナリングの活性化を予防または阻害する結合パートナーは、抗CD6抗体またはその抗原結合部であってもよい。
【0131】
抗CD6抗体は、CD6へ結合し、かつT細胞におけるCD6媒介の下流シグナリングを遮断するいずれの抗体であってもよい。例えば、抗CD6モノクローナル抗体(mAbs)を使用する遮断の研究は、CD6が、胸腺上皮(TE)細胞とのT細胞接着性相互作用を加減することによってT細胞発生における重要な役割を果たすことを示唆する(Patel et al., J. Exp. Med. (1995) 181:1563-1568)。追加の研究も、CD6が、T細胞活性化における重要なアクセサリー分子として機能し得ることを示している。例えば、ある抗CD6 mAbは、T細胞にとって直接的に分裂促進的である(Gangemi et al., J. Immunol. (1989) 143:2439;Bott et al., Int. Immunol. (1993) 7:783)、一方その他は、抗CD3、抗CD2、またはPMAと併せてT細胞増殖を同時刺激することができる(Gangemi et al., J. Immunol. (1989) 143:2439;Morimoto et al., J. Immunol. (1988) 140:2165-2170;Osorio et al., Cell. Immunol. (1994) 154:23)。T細胞活性化におけるCD6の役割のさらなる追加の証拠も、CD6が、T細胞活性化を受けてSer残基およびThr残基上に高リン酸化されるようになり(Swack et al., Mol. Immunol. (1989) 26:1037-1049;Swack et al., J. Biol. Chem. (1991) 266:7137;Cardenas et al., J. Immunol., 145:1450-1455 (1990))、およびTyr残基上にリン酸化されるようになる(Wee et al., J. Exp. Med. (1993) 177:219-223)ことを示す研究から来る。これらの研究および他の研究は、CD6を、T細胞の活性化とシグナル伝達との両方に影響を及ぼす(De Wit, J., et al., Blood (2011) 118:6107-6114)、未熟なT細胞と成熟したT細胞との両方の機能のin vivoでの重要な調節因子として暗に示しており、これらの効果を予防することができるいずれの抗体も本発明における使用に好適である。
【0132】
米国特許第6,372,215号は、ヒトCD6(hCD6)またはヒトCD6柄ドメイン(CD6S)のSRCRドメイン3(D3)へ特異的に結合して、CD6へ結合する活性化白血球細胞接着分子(ALCAM)を阻害する抗体および他の結合剤を開示する。
【0133】
先の刊行物および特許は、マウス抗CD6(IOR-T1)モノクローナル抗体の配列、およびIOR-T1をヒト化してT1h(ヒト化IOR-T1)にするために実行されたアミノ酸修飾を開示した。米国特許第5,712,120号およびこれに準じるEP 0699755は、マウスモノクローナル抗体をヒト化する特定の方法ならびにIOR-T1およびT1hの配列を開示する。米国特許第6,572,857号およびこれに準じるEP 0807125は、IOR-T1およびT1h(ヒト化IOR-T1)の配列を開示する。「モノクローナル抗体およびその方法」と題するPCT/IN2008/00562および関連のUS特許第8,524,233号は、配列番号1および2として本明細書に提供される重鎖および軽鎖の配列を有する、NS0細胞中の抗CD6抗体の産生を開示する。この抗体はまた、その特許においてT1hとしても称されるが、その配列は元のT1hとは異なっていた。この抗体のINN名は、イトリズマブである。イトリズマブは、マウス由来NS0細胞株およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において産生され、本明細書中、CHO細胞に産生されたときその商標名EQ001で言及され、NS0細胞に産生されたときその商標名ALZUMAbで言及される。EQ001(すなわち、CHO細胞に産生されたイトリズマブ)はまた、当該技術分野において「Bmab-600」としても知られている。本明細書中、様々な態様において、我々は、抗体それ自体を、その産生方法に関係なく、そのINN名、イトリズマブで言及する。よって、用語イトリズマブは、本明細書に使用されるとき、ALZUMAbおよびEQ001を網羅し、これらの各々はイトリズマブと同じ配列を有する。イトリズマブ(およびEQ001/ALZUMAb)の可変重(VH)鎖および可変軽(VK)鎖のアミノ酸配列は夫々、配列番号1および2として本明細書に提供される。イトリズマブ(およびEQ001/ALZUMAb)のVHおよびVKのヌクレオチド(DNA)配列は夫々、配列番号3および4として本明細書に提供される。イトリズマブ(およびEQ001/ALZUMAb)VH CDR1~3のアミノ酸配列は夫々、配列番号5~7として提供される。イトリズマブ(およびEQ001/ALZUMAb)VK CDR1~3のアミノ酸配列は夫々、配列番号8~10として提供される。
【0134】
結果的に、抗CD6抗体は、配列番号1および配列番号2で表されるとおりのアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖の可変領域を含む抗CD6モノクローナル抗体であってもよい。
【0135】
抗CD6抗体は、配列番号3で表されるヌクレオチド配列またはその相補体;および(b)配列番号4で表されるヌクレオチド配列またはその相補体を含む核酸分子を含む重鎖および軽鎖の可変領域を含む抗CD6モノクローナル抗体であってもよい。
【0136】
抗CD6抗体は、配列番号1および配列番号2で表されるとおりのアミノ酸配列と少なくとも80%相同のアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖の可変領域を含む抗CD6モノクローナル抗体であってもよい。
【0137】
抗CD6抗体は、特異的にCD6に結合し、かつ配列番号1&2によって表されるアミノ酸残基に対応する部分において、少なくとも約65%のアミノ酸配列同一性もしくは相同性、少なくとも約70%のアミノ酸配列同一性もしくは相同性、少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性もしくは相同性、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性もしくは相同性、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性もしくは相同性、少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性もしくは相同性、少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性もしくは相同性、少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性もしくは相同性、少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性もしくは相同性を含む抗CD6モノクローナル抗体であってもよい。
【0138】
抗CD6抗体は、EQ001重鎖CDR1:GFKFSRYAMS(配列番号5);EQ001重鎖CDR2:TISSGGSYIYYPDSVKG(配列番号6);EQ001重鎖CDR3:RDYDLDYFDS(配列番号7);EQ001軽鎖CDR1:KASRDIRSYLT(配列番号8);EQ001軽鎖CDR2:YATSLAD(配列番号9);EQ001軽鎖CDR3:LQHGESP(配列番号10);およびそれらの組み合わせから選択される1以上のCDRを含んでいてもよい。
【0139】
具体的な態様において、抗CD6抗体は、配列番号5~10として提供されるEQ001 CDRの各々を含む。具体的な態様において、抗CD6抗体は、配列番号5~10として提供されるEQ001 CDRの各々を含むヒト化抗体である。具体的な態様において、抗CD6抗体は、配列番号5~10として提供されるEQ001 CDRの各々を含むヒト化IgG抗体である。具体的な態様において、抗CD6抗体は、配列番号5~10として提供されるEQ001 CDRの各々を含むヒト化IgG1抗体である。具体的な態様において、抗CD6抗体は、CHO細胞において産生されるヒト化抗体であるが、ここでヒト化抗体は、配列番号5~10として提供されるEQ001 CDRの各々を含む。
【0140】
抗CD6抗体は、UMCD6 mAb(Li et al., PNAS March 7, 2017, vol. 114、no. 10, 2687-2692、その全体は参照されることによって本明細書に組み込まれる)および表2上に挙げられる抗体ののいずれか1つから選択されてもよい:
表2:抗CD6抗体
【表2】
【0141】
抗CD6抗体は、US特許第8,524,233号(その全体は参照されることによって本明細書に組み込まれる)に開示されるとおりのT1hであってもよい。
【0142】
抗CD6抗体は、イトリズマブであってもよい。抗CD6抗体は、ALZUMAbであってもよい。抗CD6抗体は、EQ001であってもよい。
【0143】
抗CD6抗体は、ECACCに寄託番号ECACC 96112640として寄託された分泌ハイブリドーマIOR-T1Aによって産生された抗体であってもよい。
【0144】
抗CD6抗体は、T細胞表面上のCD6へ結合してもよい。抗CD6抗体は、T細胞表面上のCD6のドメイン1、ドメイン2、またはドメイン3へ結合してもよい。ある側面において、抗CD6抗体は、CD6上のドメイン1またはドメイン3へ結合する。具体的な態様において、抗CD6抗体は、CD6上のドメイン3へ結合する。抗CD6抗体のT細胞表面上CD6への結合は、T細胞の活性を調節してもよい。ある側面において、抗CD6抗体のT細胞表面上CD6への結合は、T細胞の活性および/または遊走を調節する。具体的な側面において、抗CD6抗体のT細胞表面上CD6への結合は、T細胞の、肺の組織中への遊走およびこれを通る遊走を調節する。
【0145】
抗CD6抗体(例として、EQ001)は、抗CD6医薬組成物として対象へ送達されてもよい。
【0146】
抗CD6抗体の送達に好適な医薬組成物およびそれらの調製のための方法は、当業者にとって容易に明らかとなるものであろう。それらの調製のためのかかる組成物および方法は、例として、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 19th Edition (Mack Publishing Company, 1995)から見出され得るが、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。抗CD6抗体を含有する医薬組成物はまた、当該技術分野においても知られている。例えば、抗CD6抗体は、US特許出願第12/525,449号(US20100047242)に開示された医薬組成物であってもよく、その全体はにより本明細書に組み込まれる。
【0147】
本発明の医薬組成物は、活性医薬品(例として、EQ001などの抗CD6抗体)ならびに1以上の薬学的に許容し得る担体、賦形剤、希釈剤、界面活性剤、および/またはビヒクルを含んでいてもよい。
【0148】
医薬組成物は、抗CD6抗体(またはその抗原結合性フラグメント)、ならびに担体、賦形剤、希釈剤、抗酸化剤、防腐剤、着色料、フレーバー剤および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、充填剤、増量剤、緩衝液、送達ビヒクル、等張化剤、共溶媒、湿潤剤、錯化剤、緩衝剤、抗微生物薬、および/または界面活性剤からなる群から選択される1以上の剤を含んでいてもよい。かかる剤は、当該技術分野において知られている(例として、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Mack Publishing Co., Easton, PA (1990)を参照。その全体は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0149】
本発明はまた、1以上の喘息関連症状を処置、予防、もしくは軽減することが可能な第2の活性剤またはデバイスまたは手順と組み合わせて、抗CD6抗体(例として、EQ001)またはその抗原結合部を患者へ投与することを含む併用治療も包含する。これに関連して、「組み合わせて投与される(施される)」は、(1)同じ一体型剤形(unitary dosage form)の一部;(2)個別の投与ではあるが、同じ治療的処置プログラムまたはレジメンの一部としての投与であって、しかし典型的には必ずしも同じ日に投与するものではない、を意味する
【0150】
これまでに注記されたとおり、EQ001(または別の抗CD6抗体)は、いくつかの側面において単剤治療として単独で投与されてもよく、またはいくつかの側面において併用治療として投与されてもよい。いくつかの側面において、本明細書に記載のEQ001(または別の抗CD6抗体)のいずれか1つ(例として、EQ001)は、本明細書に開示の方法に従って患者へ投与するためのものであって、併用治療として1以上の他の治療剤と組み合わせて投与されてもよい。例えば、EQ001(または別の抗CD6抗体)は、炎症性疾患または自己免疫疾患の処置のための別の剤との併用治療として患者へ投与されてもよい。併用治療は、EQ001(または別の抗CD6抗体)と、例として、これらに限定されないが、ステロイドまたは免疫抑制薬から選択される剤との投与を含んでもよい。ステロイドは、コルチコステロイドであってもよい。コルチコステロイドは、プレドニゾンであってもよい。
【0151】
EQ001(または別の抗CD6抗体)は、かかる抗炎症性もしくは自己免疫疾患の剤の1以上の前、これの後、またはこれと並行して投与されてもよい。いくつかの態様において、かかる組み合わせには、治療において相加活性または相乗活性を包含する有意な利点が生じる場合もある。
【0152】
様々な態様において、本明細書に開示の組成物および方法、例として、喘息を処置するための方法は、有効量のEQ001(もしくは別の抗CD6抗体)またはEQ001(もしくは別の抗CD6抗体)を含む組成物(例として、医薬組成物)を対象へ投与することを伴う。
【0153】
EQ001(または別の抗CD6抗体)は、医薬組成物として投与されてもよい。CD6-ALCAM経路インヒビターは、1以上の他の治療薬(therapeutic)の前、これの後、および/またはこれと並行して投与されてもよい。1以上の他の治療剤と並行して投与される場合、かかる投与は、同時(例として、単一の組成物中)であってもよく、または、任意に同じ様式もしくは異なる様式の投与(例として、局部の、全身性の、経口の、静脈内の、等々)を介し、2以上の別々の組成物を介していてもよい。
【0154】
EQ001(もしくは別の抗CD6抗体)および/または他の治療剤の投与は、治療剤のためのいずれの様式の投与を介しても達成され得る。これらの様式は、経口の、経鼻の、非経口の、経皮的な、皮下の、膣内の、口腔内の、直腸の、もしくは局所の投与様式などの、全身性のまたは局部の投与を包含する。
【0155】
本明細書に記載の使用の方法における投与において、EQ001(または別の抗CD6抗体)は、投与に先立ち、非毒性の、薬学的に許容し得る担体物質(例として、通常の生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水)と混合されてもよく、医学的に適切ないずれの手順、例として静脈内または動脈内の注射によるなどの非経口投与(例として、注射)を使用して投与されるであろう。
【0156】
本発明に従って使用されるEQ001(または別の抗CD6抗体)の製剤は、凍結乾燥製剤または水性溶液のいずれかの形態で、所望の純度を有する抗体を、任意の薬学的に許容し得る担体、賦形剤、または安定剤と混合することによって調製されてもよい。許容し得る担体、賦形剤、または安定剤は、採用された投薬量および濃度にてレシピエントに非毒性であって、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを包含する抗酸化剤;オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩化物などの防腐剤;ヘキサメトニウム塩化物;塩化ベンザルコニウム、ベンズエトニウム塩化物;フェノール、ブチル、もしくはベンジルアルコール;メチルパラベンもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノールおよびm-クレゾール;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを包含する単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの、塩を形成する対イオン;金属複合体(例として、Zn-タンパク質複合体);および/またはTWEEN(登録商標)、PLURONIC(登録商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を包含する。
【0157】
EQ001(または別の抗CD6抗体)はまた、例えば、コアセルベーション技法によってまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、夫々、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)中またはマクロエマルション中の、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ-(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに封入されてもよい。かかる技法は、当該技術分野において周知である。
【0158】
持続放出(Sustained- release)調製物が調製されてもよい。持続放出調製物の好適な例は、EQ001(または別の抗CD6抗体)を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを包含するが、そのマトリックスは、成形された物品、例としてフィルムまたはマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル、L-グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、および分解性乳酸-グリコール酸コポリマーを包含する。
【0159】
EQ001(または別の抗CD6抗体)は、ボーラスとしての、またはある期間にわたる連続注入による、筋肉内の、腹腔内の、脳脊髄内の(intracerobrospinal)、皮下の、関節内の、滑液嚢内の、髄腔内の、もしくは経口のルートによる、静脈内投与などの、知られている方法に添って対象へ投与されてもよい。いくつかの場合において、EQ001(もしくは別の抗CD6抗体)の静脈内のまたは皮下の投与が好ましい。
【0160】
意図した投与様式に応じて、開示された化合物または医薬組成物は、例えば、注射剤、錠剤、坐薬、丸薬、持続放出型の(time-release)カプセル、エリキシル剤、チンキ剤、エマルション、シロップ剤、粉末、液体、懸濁液、もしくは同種のものなどの、固体、半固体、または液体の剤形で、ときには単位投薬量であり得、従来の薬務に沿ったものである。同じく、それらはまた、静脈内(ボーラスと注入の両方)、腹腔内、皮下、または筋肉内への形態でも投与され得、使用するすべての形態は薬学分野における当業者に周知である。EQ001(もしくは別の抗CD6抗体)の(単独での、または例として、本開示に従い別の治療剤と組み合わせての)送達に好適な医薬組成物およびそれらの調製のための方法は、当業者にとって容易に明らかになるものであろう。かかる組成物およびそれらの調製のための方法は、例として、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 19th Edition (Mack Publishing Company, 1995)から見出されてもよく、その全体は本明細書に組み込まれる。
【0161】
EQ001(または別の抗CD6抗体)を利用する投薬レジメンは、患者のタイプ、種、年齢(age)、重量、性、および医学的状態;処置されるべき疾病の重症度;投与のルート;患者の腎機能または肝機能;ならびに採用される、具体的に開示された化合物を包含する、様々な因子に従って選択される。当該技術分野における通常の技能をもつ医者または獣医は、容易に決定し得、前記疾病の進行を予防するか、これに対抗するか、またはこれを阻止するのに要する有効量の薬物を処方し得る。
【0162】
本発明に使用される治療的に有効な量のEQ001(または別の抗CD6抗体)のための例示の、非限定的な範囲は、対象の体重1kg当たり、約0.01~50mg/kg、例えば約0.01~25 mg/kgなど、約0.01~100mg/kgである。当該技術分野における通常の技能を有する医療従事者は、要される有効量の医薬組成物を容易に決定し処方することある。例えば、医者は、EQ001(または別の抗CD6抗体)の用量を、所望の治療効果を獲得するのに要されるレベルより低いレベルにて始め、所望の効果が獲得されるまで投薬量を徐々に増加し得る。
【0163】
一態様において、EQ001(または別の抗CD6抗体)は、対象の体重1kgあたり1mg/kgから500mg/kgまで、たとえば20mg/kgから200mg/kgまでの毎週の投薬量における注入によって投与される。かかる投与は、例として、3~5回など、1~8回反復されてもよい。代替手段において、投与は、2時間から12時間までなど、2時間から24時間までの期間にわたる連続注入によって実施されてもよい。
【0164】
一態様において、EQ001(または別の抗CD6抗体)は、0mgから200mgまでの毎週の投薬量で、4回から6回までなど最大7回投与される。投与は、2時間から12時間までなど2時間から24時間までの期間にわたる連続注入によって実施されてもよい。かかるレジメンは、例えば6カ月後または2カ月後に、必要次第1回以上反復されてもよい。
【0165】
これら併用治療のいくつかの側面において、第2の活性剤は、免疫系を調節することが可能な1以上の剤である。これら併用治療のいくつかの側面において、第2の活性剤は、1以上の免疫抑制薬である。これら併用治療のいくつかの側面において、第2の活性剤は、1以上のベータ アゴニストである。
【0166】
これら併用治療のいくつかの側面において、第2の活性剤は、1以上の短時間作用型のベータ アゴニストである。これら併用治療のいくつかの側面において、第2の活性剤は、アルブテロールである。いくつかの側面において、アルブテロールは、エアロゾル粉末;溶液;カプセル;および粉末懸濁液から選択される剤形で投与される。これら併用治療のいくつかの側面において、第2の活性剤は、ステロイド、例として、コルチコステロイドである。いくつかの側面において、コルチコステロイドは、錠剤、遅延放出性カプセル;徐放性錠剤;徐放性カプセル;シロップ剤;溶液;エリキシル剤;懸濁液;遅延放出性錠剤;液体;および崩壊錠から選択される剤形で投与される。
【0167】
これら併用治療のいくつかの側面において、第2の活性剤は、イプラトロピウムである。いくつかの側面において、イプラトロピウムは、噴霧剤形で投与される。
【0168】
これら併用治療のいくつかの側面において、第2の活性剤は、ジプロピオン酸ベクロメタゾン;ブデソニド;フルニソリド;プロピオン酸フルチカゾン;フロ酸モメタゾン;トリアムシノロン アセトニド;デキサメタゾン;ヒドロコルチゾン;メチルプレドニゾン;プレドニゾロン;プレドニゾン;フマル酸ホルモテノール;キシナホ酸サルメテロール;硫酸アルブテロール;塩酸イソエタリン;塩酸イソプロテレノール;塩酸レブアルブテロール;酢酸ピルブテロール;硫酸テルブタリン;臭化イプラトロピウム;モンテルカストナトリウム;ザフィルルカスト;ジロートン;オクストリフィリン;テオフィリン;クロモグリク酸(cromolyn)ナトリウム;ネドクロミルナトリウム;オマリズマブ;フルチカゾンおよびサルメテロールを含む併用薬;キシナホ酸塩を含む併用薬(長時間作用型ベータ-2アゴニストをプラスした吸入用ステロイド);ブデソニドおよびフマル酸ホルモテノールを含む併用薬(長時間作用型ベータ-2アゴニストをプラスした吸入用ステロイド);プロピオン酸フルチカゾンおよびキシナホ酸サルメテロールを含む併用薬(長時間作用型ベータ-2アゴニストをプラスした吸入用ステロイド);ブデソニドおよびフマル酸ホルモテノールを含む併用薬(長時間作用型ベータ-2アゴニストをプラスした吸入用ステロイド);臭化イプラトロピウムおよび硫酸アルブテロールを含む併用薬;またはそれらの組み合わせから選択される1以上の剤を含む。
【0169】
いくつかの側面において、本発明はまた、挿管、人工呼吸、酸素治療、およびそれらの組み合わせから選択される手順と組み合わせて、抗CD6抗体(例として、EQ001)またはその抗原結合部を患者へ投与することを含む併用治療をも包含する。かかる手順はまた、本明細書に記載の併用治療に有用な先述の追加の剤のいずれか1以上と組み合わせて、対象へ投与されてもよい。
【0170】
ある側面において、本明細書に開示の方法は、抗CD6抗体(例として、EQ001)またはその抗原結合部を対象へ投与することを包含してもよいが、1以上の喘息関連症状の処置を提供してもよい。
【0171】
投与されるべき最適な投薬量および投薬レジメンは、当業者によって容易に決定されてもよく、具体的な剤の薬力学的特徴、その投与時間および投与様式、調製物の力価(strength)、ならびに病的状態の進展(疾患の症状の性質および程度を包含する)で変動するであろう。加えて、患者の性、年齢、重量、食餌、身体的活動、および合併症を包含する、処置されている具体的な患者に関連する因子は、投薬量および/またはレジメンを調整する必要性をもたらすであろう。
【0172】
本明細書において言及されているかまたはいずれの出願データシートにおいて挙げられている、米国特許、米国特許出願刊行物、米国特許出願、PCT特許出願、PCT特許出願刊行物、外国特許、外国特許出願、および非特許刊行物のすべてが、それら全体が参照されることにより本明細書に組み込まれる。上記から、本発明の特定の態様が説明目的で本明細書に記載されているが、様々な修飾が本発明の精神および範囲から逸脱せずになされてもよいことは、解されるであろう。
【0173】
例
例1
CD6発現は、致死的ヒト喘息患者らにおいて有意に上昇している
結果の概要:致死的な喘息患者らから採取された肺の組織は、粘膜固有層中へのCD6+ 細胞の高浸潤を呈し、前記粘膜固有層は対照と比較して、この領域においてALCAMを過剰発現する。
【0174】
肺は、致死的な喘息患者らまたは非喘息患者らのいずれかから新たに得た。組織試料を固定し、続いてCD6、ALCAM発現につき、免疫蛍光によって染色した。粘膜固有層におけるALCAM発現は、致死的な喘息患者らにおいて上昇していた;一方、ALCAM発現は、非喘息対照らの粘膜固有層にはなかった。これらの肺におけるALCAM染色の領域には、浸潤CD6
+ 細胞が高レベルで局在した(
図2)。このことは、重症喘息がCD6
+ T細胞による浸潤に関連すること、およびALCAM発現が重症喘息/致死的な喘息の間にCD6
+ 細胞の肺への遊走/浸潤に関与し得ることを示唆する。対照的に、先行する著作には、ALCAMが、増大したメタロプロテアーゼ媒介ALCAM切断に起因して、アレルギー性喘息モデルにおけるアレルゲンへ曝された動物の肺の組織において減少していることが実証されている。
【0175】
例2
CD6発現は、致死的なヒト喘息患者らにおいて有意に上昇している
結果の概要:公的に入手可能なRNASeqデータセットのDe novo分析によって、重症喘息患者らが、中度の喘息患者らおよび非喘息患者らと比較して有意により高いレベルのCD6を発現することが裏付けられる。
【0176】
RNAデータは、2つの縦断的前向き臨床研究:
BOBCAT研究(Arron et al., Eur Respir J. 2014 Feb;43(2):627-9)
MAST研究(Simpson et al., Nat Immunol. 2014 Dec;15(12):1162-70)
の一環として気管支洗浄によって収集された細胞ペレットから得られた。
【0177】
これらの試料のトランスクリプトームをRNASeqによって決定し、各試料につき個々のすべての遺伝子に位置する(map to)転写読み取り(transcriptional reads)のカウントからなるデータセットを、公開データベースにおいて入手可能にさせた(Sun et al., Sci Signal. 2015 Dec 1;8(405))。
【0178】
我々は、対照 vs. 中度の喘息患者ら vs. 重症喘息患者らにおけるCD6発現の比較を生み出すためのバイオインフォマティクスを使用する文献を採掘し、我々の分析によって、有意により高いレベルのCD6を発現する重症喘息患者らとの、CD6発現レベルにおける有意差が実証された(
図3B)。同様に、CD4発現のあまりはっきりしない増加もまた観察されたが、重症喘息患者らは、中度の喘息患者らおよび健常な患者らより有意に高いレベルのCD4を発現した(
図3A)。同時に増加していたことは、重症喘息患者らの肺においてCD6
+ T細胞が増加して存在していたことを示唆し、よって、これらのデータは、増大したT細胞浸潤に起因して、重症喘息患者らが増加したCD6
+ T細胞を肺に有することを示唆する。
【0179】
対照 vs. 中度の喘息患者ら vs. 重症喘息患者らにおけるTh17マーカーおよびサイトカインの発現を比較する分析によって、CCR6(
図3C)、CCR4(
図3D)、KLRB1(
図3E)、IL-17A(
図3F)、およびIL-17F(
図3G)の発現レベルにおいて有意差が実証されたが、このことは、重症喘息患者らにおいてTh17細胞が増加して存在すること、ならびにCD6とTh17細胞との間に関連があることを指し示している。
【0180】
同じデータセットを利用して、喘息タイプを問わず、すべての喘息患者らに実施された公正なクラスター分析によって、重症喘息患者らの下位群が高CD6と同様の遺伝子発現プロファイルとの両方を有することが実証されたが、このことは、別個の患者プロファイルが高CD6発現に関連し得ることを示唆する(
図4Aおよび
図4B)。
【0181】
本著者らは、このデータセットにおいてCD6発現を調べたいずれの先行分析にも、CD6発現が重症喘息において増加するとのいずれの先行報告にも、認識していない。これらのデータは、ステロイドによる処置が困難な重症喘息患者らにおいて、CD6発現が肺において高いことを実証している。よって、これらのデータは、重症喘息(例として、Th1/Th17 T細胞によって引き起こされる)を処置するためのCD6阻害の使用を支持する証拠を初めて提示する。
【0182】
注目すべきことに、Th2媒介応答がステロイド処置に十分に応答するものであったとしても、アレルギー性喘息もまた、T細胞構成要素を包含する。よって、我々は、CD6が、重症喘息とアレルギー性喘息との両方に対して有効な処置のための実行可能な標的であり得るかどうかを決定しようと努めたが、これが、(1)長期ステロイド使用の有害な副作用に起因する患者コンプライアンスに関する問題点を最小化すること;(2)すべての形態の喘息のための便利な単剤治療を提供すること;および(3)患者が、彼らの喘息のエンド型がシフトする(例としてTh2~Th2/Th17またはTh1/Th17)ときでさえも、使用を継続し得る治療を提供することが期待されるからである。
【0183】
例3
CD6阻害は、アレルギー性のおよび重症喘息のための実行可能な処置である
結果の概要:アレルギー性喘息のマウスモデルおいて、CD6遮断は、Th2媒介疾患の有効な免疫調節因子であることが実証された。
【0184】
図5Aおよび5Bは夫々、このアレルギー性喘息実験において利用された実験群およびプロトコルを示す。手短に言えば、抗OVA Th2主導の免疫応答を誘発した第0日および14日にアレルギー性喘息を、OVA/ミョウバンを用いるワクチン接種を介しオボアルブミン(OVA)への感作を介して誘発した。第23日、25日、および27日に、マウスをEQ001のマウス代用物である抗マウスCD6 Sc-ドメイン1抗体(mCD6D1)で処置した。前記抗体は、抗ヒトCD6抗体イトリズマブと同様の特徴をもち、CD6のドメイン1へ結合する。続いて、肺における細胞およびサイトカインを評価するために、感作されたマウスを第25~27日にOVAで鼻腔内曝露させ、第28日にこれを止めた。
【0185】
曝露の最中のCD6遮断によって、気管支洗浄液(BALF)におけるTh2サイトカインのIL-4、IL-5、およびIL-13レベルの減少が(
図5C)、これに付随し肺の細胞における穏やかな低減がもたらされたが、このことはTh2応答に対してCD6遮断に阻害効果があることを示唆する。
【0186】
さらに、CD6遮断にTh2応答に影響を及ぼす能力があるかを支持するために、我々は、OVAワクチン接種の古典的なTh2モデルにおけるその影響を試験した。
図6Aおよび6Bは夫々、この実験に利用された実験群およびプロトコルを示す。手短に言えば、第0日および14日にマウスをOVA/ミョウバンでワクチン接種させて、-第1日~第16日に始めて毎週2度、抗CD6で処置した。第19日にマウスをサクリファイスして抗OVA抗体応答を調べた。予防的CD6遮断はOVA特異的IgE産生を阻害したが、このことはTh2応答に対するCD6経路の効果を実証する(
図6C)。
【0187】
よって、まとめると、これらのデータは、CD6遮断が、Th2媒介アレルギー性喘息のための、急性にかつ予防的に実行可能な処置であることを実証する。そして、本明細書に提示されたデータをまとめると、Th1/Th17タイプのT細胞の活性化および遊走を阻害するというEQ001などの抗CD6抗体の知られている能力と相まって、CD6阻害(例として、EQ001での前記阻害)が重症喘息とアレルギー性喘息との両方を処置することができるであろうことを支持する。
【0188】
例4
重症喘息モデルにおける抗CD6抗体の効き目
第1日、3日、および5日にマウスを25μgのHDMで鼻腔内から感作した。次いでマウスを5日間休息させ、次いで25μg HDMでの3連続曝露を伴う3曝露セットに供し、曝露セットの間に4日間の休息をはさんだ。次の2曝露では25μg HDMのみ。陽性処置対照の4 mg/kgの濃度でのデキサメタゾン(Dex)、または抗CD6抗体の被験物質を腹腔内に与え、これを曝露の第一日に始め、次いでDexにつき3日毎に、抗CD6抗体につき隔日に反復させた。
【0189】
例5
喘息モデルにおける抗CD6抗体の効き目
複数のT細胞サブタイプへのCD6遮断の標的能力に起因して、CD6阻害がまた、HDM誘発、HDM+LPS誘発、ゴキブリ誘発、およびAlternaria alternata誘発の喘息モデル、ならびにTh1/Th17表現型を可能にするSTAT6-/- マウスから生成された喘息モデルを包含する数多の喘息モデルにおいても効き目を示すであろうことが期待される。結果的に、数種のモデルを利用して、600ugから10ug以下まで(down to)の範囲の用量の抗CD6抗体を試験する(表3)。
表3:追加のマウスモデル
【表3-1】
【表3-2】
【0190】
これらの実験の結果は、CD6阻害が、Th1/Th17;Th2、およびT2/Th17形態の喘息を同様に阻害するのに有効であることを実証するであろう。よって、本開示は、重症喘息およびアレルギー性喘息の処置のための抗CD6抗体の開発を支持する。
【0191】
例6
組織試料の分析
組織試料を、例4および5のプロトコル完了を受けて収集し、以下の手順に従って分析する。
【0192】
すべてのマウスの体重および臨床スコアを、承認された施設内動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)(IACUC)プロトコルのとおり、毎日収集する。
【0193】
最終アレルゲン曝露から24時間後マウスに麻酔し、気管支肺胞洗浄(BAL)を実施する。各マウスの左気管支を結紮し、右葉を0.7mlの滅菌PBSで洗浄してBAL液を得る。総BAL細胞数を、トリパンブルー染色および標準的な光学顕微鏡法を使用して決定し、750,00 BAL液細胞を、ギムザ染色を使用する細胞百分率(differential cell counts)のためにクリーンなスライドガラス上でサイトスピンした。
【0194】
BAL液を遠心分離して上清から細胞を分離する。上清を、標準的なサイトカインアッセイを使用して分析し、特定の細胞マーカーおよび/またはサイトカインを同定しつつ、細胞を標準的なフローサイトメトリー方法によって分析する。洗浄された肺を固定液中に48時間置き、次いでT細胞マーカー(CD3、CD4、CD8など)、CD6、ALCAM、およびCD6の他の知られているリガンドまたは潜在リガンドのためのヨウ素酸シッフ(PAS)染色、ヘマトキシリンおよびエオジン染色、および/または免疫組織化学化学もしくは免疫蛍光染色のためにパラフィン包埋されるまで70%エタノールへ移す。
【0195】
上に記載の様々な態様は組み合わされて、さらなる態様を提供し得る。本明細書において言及されているかまたは本出願データシートにおいて挙げられている、米国特許、米国特許出願刊行物、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許刊行物のすべてが、それら全体が参照されることにより本明細書に組み込まれる。本態様の側面は、必要ならば更にさらなる態様を提供するために様々な特許、出願、および刊行物の概念を採用するために修飾され得る。
【0196】
上の詳細な記載を鑑み、これらのおよび他の変更が本態様へなされ得る。一般に、以下のクレームにおいて、使用される用語は、クレームを本明細書およびクレームに開示された特定の態様に限定すると解釈されるべきではないが、かかるクレームの権利が及ぶ等価物の全範囲と併せてあり得るすべての態様を包含すると解釈されるべきである。結果的に、クレームは、本開示によって限定されない。
【配列表】