(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】冷凍装置、冷凍装置の制御方法及び温度制御システム
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
F25B1/00 101E
F25B1/00 399Y
F25B1/00 101H
F25B1/00 101J
(21)【出願番号】P 2021013566
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】594185097
【氏名又は名称】伸和コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】山脇 正勝
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勇
(72)【発明者】
【氏名】酒井 勝敏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭輔
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-280669(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066000(WO,A1)
【文献】特開2020-134052(JP,A)
【文献】特開平04-161758(JP,A)
【文献】特開2017-040396(JP,A)
【文献】特開2009-058200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器が冷媒を循環させるように当該順序で配管により接続された冷凍回路と、
前記冷凍回路における前記凝縮器の下流側で且つ前記膨張弁の上流側の部分から分岐し、前記蒸発器の下流側で且つ前記圧縮機の上流側の部分に接続される液バイパス流路、及び、前記液バイパス流路に設けられ前記液バイパス流路における前記冷媒の通流を制御する液バイパス制御弁を有する液バイパス回路と、
前記液バイパス制御弁及び前記圧縮機の回転数を制御する制御装置と、
前記冷凍回路における前記圧縮機の下流側で且つ前記凝縮器の上流側の部分から分岐し、前記膨張弁の下流側で且つ前記蒸発器の上流側の部分に接続されるガスバイパス流路、及び、前記ガスバイパス流路に設けられ前記ガスバイパス流路における前記冷媒の通流を制御するガスバイパス制御弁を有するガスバイパス回路と、を備え、
前記制御装置は、前記圧縮機から吐出され前記凝縮器に流入する前の前記冷媒の吐出温度が閾値を上回る際に、前記液バイパス制御弁を開き、前記吐出温度が前記閾値以下である際に、前記液バイパス制御弁を閉じ、前記冷凍回路における前記蒸発器の下流側で且つ前記圧縮機の上流側の部分であって、前記液バイパス流路の下流端の接続位置の下流側の部分を流れる前記冷媒の蒸発圧力が予め設定された目標蒸発圧力になるように前記圧縮機の回転数を調節し、前記冷媒の蒸発圧力が前記目標蒸発圧力を上回る際に、前記圧縮機の回転数を上げ、前記冷媒の蒸発圧力が前記目標蒸発圧力を下回る際に、前記圧縮機の回転数を下げ、
前記圧縮機の回転数が下限値まで低下され且つ前記冷媒の蒸発圧力が前記目標蒸発圧力を下回る際に、前記制御装置は、前記冷媒の蒸発圧力が前記目標蒸発圧力以上になるように前記ガスバイパス制御弁を開く、冷凍装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記吐出温度と前記閾値との差分に応じて前記液バイパス制御弁の開度を調節する、請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
アキュムレータを備えていない、請求項1又は2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記冷媒の吐出温度が前記閾値以下になるように、前記吐出温度と前記閾値との差分に応じて前記液バイパス制御弁の開度をPID制御により調節し、前記冷媒の蒸発圧力が前記目標蒸発圧力になるように前記圧縮機の回転数をPI制御により調節する、請求項2に記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記冷媒の蒸発圧力と前記目標蒸発圧力との差分に応じて前記ガスバイパス制御弁の開度を調節する、請求項1乃至3のいずれかに記載の冷凍装置。
【請求項6】
定格冷凍能力がP(Kw)であり、前記冷媒の充填量(Kg)が、0.155×P以上0.222×P以下である、請求項1乃至5のいずれかに記載の冷凍装置。
【請求項7】
定格冷凍能力が4.5Kwであり、前記冷媒の充填量が、0.70Kg以上1.0Kg以下である、請求項1乃至6のいずれかに記載の冷凍装置。
【請求項8】
圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器が冷媒を循環させるように当該順序で配管により接続された冷凍回路と、前記冷凍回路における前記凝縮器の下流側で且つ前記膨張弁の上流側の部分から分岐し、前記蒸発器の下流側で且つ前記圧縮機の上流側の部分に接続される液バイパス流路、及び、前記液バイパス流路に設けられ前記液バイパス流路における前記冷媒の通流を制御する液バイパス制御弁を有する液バイパス回路と、前記冷凍回路における前記圧縮機の下流側で且つ前記凝縮器の上流側の部分から分岐し、前記膨張弁の下流側で且つ前記蒸発器の上流側の部分に接続されるガスバイパス流路、及び、前記ガスバイパス流路に設けられ前記ガスバイパス流路における前記冷媒の通流を制御するガスバイパス制御弁を有するガスバイパス回路と、を備える冷凍装置の制御方法であって、
前記冷凍装置を運転させる工程と、
前記圧縮機から吐出され前記凝縮器に流入する前の前記冷媒の吐出温度が閾値を上回る際に、前記液バイパス制御弁を開き、前記吐出温度が前記閾値以下である際に、前記液バイパス制御弁を閉じ、前記冷凍回路における前記蒸発器の下流側で且つ前記圧縮機の上流側の部分であって、前記液バイパス流路の下流端の接続位置の下流側の部分を流れる前記冷媒の蒸発圧力が予め設定された目標蒸発圧力になるように前記圧縮機の回転数を調節する工程と、
前記冷媒の蒸発圧力が前記目標蒸発圧力を上回る際に、前記圧縮機の回転数を上げ、前記冷媒の蒸発圧力が前記目標蒸発圧力を下回る際に、前記圧縮機の回転数を下げる工程と、
前記圧縮機の回転数が下限値まで低下され且つ前記冷媒の蒸発圧力が前記目標蒸発圧力を下回る際に
、前記冷媒の蒸発圧力が前記目標蒸発圧力以上になるように前記ガスバイパス制御弁を開く工程と、を備える、冷凍装置の制御方法。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載の冷凍装置と、
流体を前記蒸発器で熱交換させた後、温度制御対象に送り、前記温度制御対象を通過した前記流体を前記蒸発器で再度熱交換させ、前記温度制御対象の下流側で且つ前記蒸発器の上流側の位置にヒータを有する流体循環装置と、を備える、温度制御システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記流体循環装置も制御し、前記流体循環装置の状態が前記流体と前記温度制御対象とが熱交換しない無負荷運転又は前記無負荷運転へ移行させるための無負荷運転移行運転になった場合に、前記ヒータを作動させて前記ヒータにより前記流体を加熱する、請求項9に記載の温度制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を有する冷凍装置、冷凍装置の制御方法及び冷凍装置を備える温度制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を有する冷凍装置と、水、ブライン等の流体を循環させる流体循環装置とを備え、流体循環装置が循環させる流体を冷凍装置の蒸発器によって冷却する温度制御システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような温度制御システムは、冷凍装置と流体循環装置とを備えるため、比較的大型になる場合がある。
【0005】
しかしながら、上記のようなシステムは、搬送の容易化、占有スペースの抑制等を考慮すると、コンパクトであることが望ましい。ここで、冷凍装置には例えば液バック抑制のためのアキュムレータが設けられる場合があるが、アキュムレータは比較的サイズが大きいため、システム全体の大型化の一因となっている。例えば、このようなアキュムレータを用いずに液バックを抑制可能であれば、コンパクト化の点で有利となる。
【0006】
また、冷凍装置では、圧縮機が吸入する冷媒の温度が過度に上昇した場合に、圧縮機の焼損が生じ得る。また、圧縮機が吸入する冷媒の温度が過度に上昇することで吐出温度が過度に上昇した場合には、回路全体に望ましくない。そこで、凝縮器の下流側の冷媒を圧縮機の上流側にバイパスする液バイパス回路が用いられる場合がある。しかし、液バイパス回路で冷媒をバイパスした場合には、蒸発器側に流れる冷媒の量が減るため、冷凍能力が低下し得る。この際、圧縮機の回転数を上げて冷媒の吐出量を増やしてもよい。このように蒸発器側に流れる冷媒の量の減少を圧縮機からの冷媒の吐出量で補償する場合、適正なバイパス及び冷凍能力の両立のために、通常、冷凍装置には余剰分を十分に確保した量の冷媒が充填される。
【0007】
しかしながら、上記余剰分の冷媒の使用も、システム全体の大型化の一因となり得る。また、多くの冷媒の使用は、環境負荷を考慮すると回避することが望ましい。また、液バイパス回路は、気液混合状態の冷媒を圧縮機上流側に送るため、液バックのリスクを高め得る。そのため、液バイパス回路は、アキュムレータと併用されることが多い。ただし、この場合は、システム全体が大型化し得る。
【0008】
本発明は上記事情を考慮してなされたものであり、アキュムレータの容量を抑制した場合又はアキュムレータを用いない場合であっても、冷凍装置における冷媒の液バックを好適に抑制できるとともに、使用する冷媒の量を抑制しつつも圧縮機に吸入される冷媒の温度の過度な上昇を好適に抑制でき且つ適正な冷却動作を行うことができる冷凍装置、冷凍装置の制御方法及び温度制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る冷凍装置は、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器が冷媒を循環させるように当該順序で配管により接続された冷凍回路と、前記冷凍回路における前記凝縮器の下流側で且つ前記膨張弁の上流側の部分から分岐し、前記蒸発器の下流側で且つ前記圧縮機の上流側の部分に接続される液バイパス流路、及び、前記液バイパス流路に設けられ前記液バイパス流路における前記冷媒の通流を制御する液バイパス制御弁を有する液バイパス回路と、前記液バイパス制御弁及び前記圧縮機の回転数を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記圧縮機から吐出され前記凝縮器に流入する前の前記冷媒の吐出温度が閾値を上回る際に、前記液バイパス制御弁を開き、前記吐出温度が前記閾値以下である際に、前記液バイパス制御弁を閉じ、前記冷凍回路における前記蒸発器の下流側で且つ前記圧縮機の上流側の部分であって、前記液バイパス流路の下流端の接続位置の下流側の部分を流れる前記冷媒の蒸発圧力が予め設定された目標蒸発圧力になるように前記圧縮機の回転数を調節する。
【0010】
本発明の一実施の形態に係る冷凍装置の制御方法は、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器が冷媒を循環させるように当該順序で配管により接続された冷凍回路と、前記冷凍回路における前記凝縮器の下流側で且つ前記膨張弁の上流側の部分から分岐し、前記蒸発器の下流側で且つ前記圧縮機の上流側の部分に接続される液バイパス流路、及び、前記液バイパス流路に設けられ前記液バイパス流路における前記冷媒の通流を制御する液バイパス制御弁を有する液バイパス回路と、を備える冷凍装置の制御方法であって、
前記冷凍装置を運転させる工程と、
前記圧縮機から吐出され前記凝縮器に流入する前の前記冷媒の吐出温度が閾値を上回る際に、前記液バイパス制御弁を開き、前記吐出温度が前記閾値以下である際に、前記液バイパス制御弁を閉じ、前記冷凍回路における前記蒸発器の下流側で且つ前記圧縮機の上流側の部分であって、前記液バイパス流路の下流端の接続位置の下流側の部分を流れる前記冷媒の蒸発圧力が予め設定された目標蒸発圧力になるように前記圧縮機の回転数を調節する工程と、を備える。
【0011】
本発明の一実施の形態に係る温度制御システムは、前記の冷凍装置と、流体を前記蒸発器で熱交換させた後、温度制御対象に送り、前記温度制御対象を通過した前記流体を前記蒸発器で再度熱交換させ、前記温度制御対象の下流側で且つ前記蒸発器の上流側の位置にヒータを有する流体循環装置と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アキュムレータの容量を抑制した場合又はアキュムレータを用いない場合であっても、冷凍装置における冷媒の液バックを好適に抑制できるとともに、使用する冷媒の量を抑制しつつも圧縮機に吸入される冷媒の温度の過度な上昇を好適に抑制でき且つ適正な冷却動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態にかかる温度制御システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す温度制御システムを構成する制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3A】
図1に示す温度制御システムを構成する制御装置の動作の一例であって、冷凍装置の液バイパス制御弁を制御する際の動作の一例を説明するフローチャートである。
【
図3B】
図1に示す温度制御システムを構成する制御装置の動作の一例であって、冷凍装置の圧縮機の回転数及びガスバイパス制御弁を制御する際の動作の一例を説明するフローチャートである。
【
図4】
図1に示す温度制御システムを構成する制御装置の動作の一例であって、流量循環装置を制御する際の動作の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態にかかる温度制御システム1の概略図である。
図1に示す温度制御システム1は、冷凍装置10と、流体循環装置20と、を備え、制御装置30によって冷凍装置10及び流体循環装置20を制御する。
【0016】
冷凍装置10は、流体循環装置20が通流させる流体を冷媒によって温度制御する。流体循環装置20は、冷凍装置10によって温度制御された流体を温度制御対象Tへ供給する。
【0017】
流体循環装置20は、温度制御対象Tを通過した流体を循環させるようになっている。そして、温度制御対象Tから戻った流体は、冷凍装置10によって再度温度制御される。流体循環装置20で循環させる流体は、例えばブラインであるが、水等の他の流体でもよい。
【0018】
制御装置30は、例えばユーザの操作に応じて温度制御対象Tへ供給する流体の温度を設定したり、流体の温度が設定された温度になるように冷凍装置10及び流体循環装置20の各部を制御したりする。以下、冷凍装置10、流体循環装置20及び制御装置30について詳述する。
【0019】
(冷凍装置)
冷凍装置10は、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13及び蒸発器14が冷媒を循環させるようにこの順序で配管15により接続されることで構成される冷凍回路10Aと、冷凍回路10Aに接続される液バイパス回路16及びガスバイパス回路17と、吐出温度センサ18と、蒸発圧力センサ19と、を備えている。
【0020】
冷凍回路10Aにおいて、圧縮機11は、蒸発器14から流出した低温且つ低圧の気体の状態の冷媒を圧縮し、高温且つ高圧の気体の状態として、凝縮器12に供給するようになっている。凝縮器12は、圧縮機11で圧縮された冷媒を冷却水によって冷却すると共に凝縮し、所定の冷却温度の高圧の液体の状態として、膨張弁13に供給するようになっている。
【0021】
凝縮器12の冷却水には、水が用いられてよいし、その他の冷媒が用いられてもよい。図中の符号5は、凝縮器12に冷却水を供給する冷却水管を示している。なお、凝縮器12は空冷式でもよい。
【0022】
膨張弁13は、凝縮器12から供給された冷媒を膨張させることにより減圧させて、低温且つ低圧の気液混合状態として、蒸発器14に供給するようになっている。蒸発器14は、膨張弁13から供給された冷媒を、流体循環装置20の流体と熱交換させる。ここで、流体と熱交換した冷媒は、低温且つ低圧の気体の状態となって蒸発器14から流出して再び圧縮機11で圧縮されることになる。
【0023】
液バイパス回路16は、冷凍回路10Aにおける凝縮器12の下流側で且つ膨張弁13の上流側の部分から分岐し、蒸発器14の下流側で且つ圧縮機11の上流側の部分に接続される液バイパス流路16A、及び、液バイパス流路16Aに設けられ液バイパス流路16Aにおける冷媒の通流を制御する液バイパス制御弁16Bを有する。
【0024】
液バイパス制御弁16Bが開いた際には、冷媒が、凝縮器12の下流側で且つ膨張弁13の上流側の部分から蒸発器14の下流側で且つ圧縮機11の上流側の部分に通流する。
【0025】
ガスバイパス回路17は、冷凍回路10Aにおける圧縮機11の下流側で且つ凝縮器12の上流側の部分から分岐し、膨張弁13の下流側で且つ蒸発器14の上流側の部分に接続されるガスバイパス流路17A、及び、ガスバイパス流路17Aに設けられガスバイパス流路17Aにおける冷媒の通流を制御するガスバイパス制御弁17Bを有する。
【0026】
ガスバイパス制御弁17Bが開いた際には、冷媒が、圧縮機11の下流側で且つ凝縮器12の上流側の部分から膨張弁13の下流側で且つ蒸発器14の上流側の部分に通流する。
【0027】
吐出温度センサ18は、圧縮機11から吐出され凝縮器12に流入する前の冷媒の温度を検出する。
【0028】
蒸発圧力センサ19は、冷凍回路10Aにおける蒸発器14の下流側で且つ圧縮機11の上流側の部分であって、液バイパス流路16Aの下流端の接続位置の下流側の部分を流れる冷媒の圧力を、蒸発圧力として検出する。
【0029】
吐出温度センサ18が検出した情報及び蒸発圧力センサ19が検出した情報は、制御装置30に入力される。詳細は後述するが、液バイパス回路16の液バイパス制御弁16Bは、吐出温度センサ18が検出した吐出温度に応じて制御装置30により制御され、ガスバイパス回路17のガスバイパス制御弁17Bは、蒸発圧力センサ19が検出した蒸発圧力に応じて制御装置30により制御される。また、圧縮機11の回転数も蒸発圧力センサ19が検出した蒸発圧力に応じて制御装置30により制御される。
【0030】
また、本実施の形態における冷凍装置10では、アキュムレータを設けていない。ただし、冷凍装置10は、アキュムレータを備えてもよい。
【0031】
(流体循環装置)
流体循環装置20は、戻し口部21Uと供給口部21Dとを有するメイン流路管21を備えており、戻し口部21U及び供給口部21Dのそれぞれに接続した流路管を介して温度制御対象Tに接続している。流体循環装置20は、メイン流路管21を蒸発器14に接続しており、メイン流路管21を通流する流体を蒸発器14で熱交換させた後、温度制御対象Tに送る。そして、流体循環装置20は、温度制御対象Tを通過した流体を蒸発器14で再度熱交換させるようになっている。
【0032】
また、流体循環装置20は、メイン流路管21上に設けられたポンプ22、タンク23及びヒータ24と、第1~第3温度センサ25~27と、をさらに備えている。
【0033】
ポンプ22は、メイン流路管21の一部を構成し、流体を通流させるための駆動力を発生させる。ポンプ22は、メイン流路管21の蒸発器14との接続部分よりも上流側に配置されているが、その位置は特に限られるものではない。
【0034】
タンク23及びヒータ24は、メイン流路管21の蒸発器14との接続部分よりも上流側に配置されており、すなわち、タンク23及びヒータ24は、温度制御対象Tと接続した流体循環装置20において、温度制御対象Tの下流側で且つ蒸発器14の上流側の位置に配置されている。
【0035】
タンク23は、一定量の流体を貯留するために設けられ且つメイン流路管21の一部を構成し、ヒータ24は、流体を加熱するために設けられている。本実施の形態では、ヒータ24がタンク23内に配置されるが、ヒータ24は、タンク23の外に設けられてもよい。ヒータ24は、制御装置30と電気的に接続されており、制御装置30によって加熱能力を制御されるようになっている。
【0036】
また、第1温度センサ25は、メイン流路管21の蒸発器14との接続部分の下流側を通流する流体の温度を検出し、第2温度センサ26は、温度制御対象Tを通過した後、ヒータ24の上流側を通流する流体の温度を検出する。第2温度センサ26は、詳しくは、温度制御対象Tを通過した後、ヒータ24の上流側を通流する流体であって、タンク23に流入する前の流体の温度を検出する。
【0037】
また、第3温度センサ27は、流体循環装置20においてヒータ24の下流側を通流する流体であって、蒸発器14を通過する前の流体の温度を検出する。
【0038】
これら第1~第3温度センサ25~27は、制御装置30に電気的に接続されており、各センサ25~27が検出する温度情報は、制御装置30に送信されることになる。
【0039】
(制御装置)
制御装置30は、冷凍装置10及び流体循環装置20の動作を制御するコントローラであって、例えばCPU、ROM等を有するコンピュータで構成されてもよい。この場合、ROMに格納されたプログラムに従い、各種処理を行う。なお、制御装置30は、その他のプロセッサや電気回路(例えばFPGA(Field Programmable Gate Alley)等)で構成されてもよい。
【0040】
図2は、制御装置30の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、制御装置30は、流体循環装置制御モジュール30Aと、冷凍装置制御モジュール35と、を有する。なお、流体循環装置制御モジュール30A及び冷凍装置制御モジュール35は、例えば単一のコンピュータ内に構成されてもよいし、それぞれの別のコンピュータ内に構成されてもよい。
【0041】
「流体循環装置制御モジュール」
まず、流体循環装置制御モジュール30Aについて詳しく説明する。
【0042】
流体循環装置制御モジュール30Aは、温度設定部31と、温度取得部32と、状態判定部33と、ヒータ制御部34と、を有している。これら各機能部は、例えばプログラムが実行されることにより実現される。
【0043】
温度設定部31は、ユーザの操作に応じて、温度制御対象Tへ供給する流体の温度を設定温度として設定して保持するものである。また、温度設定部31は、ユーザの操作に応じて、ヒータ24の下流側を通流する流体であって、蒸発器14を通過する前の流体の戻り温度の目標温度を設定して保持するものである。
【0044】
上記目標温度は、流体循環装置20の流体と熱交換して蒸発器14から流出する冷媒を過熱蒸気に至らしめる温度範囲にて設定される。目標温度は、冷凍装置10の冷凍能力、冷媒の種類、後述する冷媒の目標蒸発温度等に応じて適宜設定されるものである。ヒータ24の下流側を通流する流体であって蒸発器14を通過する前の流体の戻り温度が、このような目標温度以上になる場合には、冷媒が液相を含む状態で圧縮機11に戻るリスク、すなわち液バックを回避できる。
【0045】
温度取得部32は、第1~第3温度センサ25~27が検出する温度情報を取得するものであり、第1~第3温度センサ25~27から取得した温度情報を、状態判定部33、ヒータ制御部34及び冷凍装置制御モジュール35側に送るようになっている。
【0046】
状態判定部33は、第1~第3温度センサ25~27が検出する温度情報に基づいて、流体循環装置20の状態を判定するものである。
【0047】
本実施の形態では、状態判定部33が、第2温度センサ26が検出する温度情報に基づいて、流体循環装置20の状態が無負荷運転又はこの無負荷運転へ移行させるための無負荷運転移行運転になったか否かを判定するようになっている。詳しくは、状態判定部33は、第2温度センサ26が検出する温度情報に基づき、温度制御対象Tを通過した後、ヒータ24の上流側を通流する流体の温度が、所定温度よりも小さくなった否かを判定し、小さくなった場合に、流体循環装置20の状態が無負荷運転又は無負荷運転移行運転になったものと判定する。
【0048】
無負荷運転は、温度制御対象Tが流体と熱交換しない状態を意味し、無負荷運転移行運転は、無負荷運転への移行途中の状態であって、温度制御対象Tが流体と通常の場合よりも熱交換しない状態を意味する。
【0049】
例えば温度制御対象Tが発熱する装置である場合に、流体循環装置20が通常運転のとき、温度制御された流体が、温度制御対象Tと熱交換し、温度制御対象Tを通過した後、熱交換前に比べて高温になる。一方で、装置である温度制御対象Tが停止され発熱が次第に低下していく状態になったときには、通常運転の場合よりも、温度制御対象Tが流体と熱交換しなくなる状態になり、最終的には、温度制御対象Tが流体と熱交換しない状態になる。
【0050】
すなわち、無負荷運転移行運転は、例えば装置である温度制御対象Tが停止された場合において、これに起因して、温度制御対象Tが、通常の場合よりも流体と熱交換しない状態になることを意味する。また、無負荷運転は、例えば装置である温度制御対象Tが停止された場合において、温度制御対象Tが、実質的に流体と熱交換しない状態になることを意味する。
【0051】
無負荷運転又は無負荷運転移行運転になったか否かを判定する基準である上記所定温度は、例えば温度制御対象Tへ供給する流体の設定温度以上の温度であり、温度制御対象Tの温度との関係で適宜選択される。
【0052】
また、本実施の形態における状態判定部33は、第3温度センサ27が検出する温度情報に基づいて、ヒータ24の下流側を通流する流体であって、蒸発器14を通過する前の流体の戻り温度が、上記目標温度よりも小さいか否かを判定し、小さい場合に、液バックリスク信号を生成する。このような液バックリスク信号が生成された際においては、例えば警告が報知されてもよい。また、状態判定部33は、第1温度センサ25が検出する温度情報と設定温度とを比較して冷凍能力不足を検出する。
【0053】
また、ヒータ制御部34は、流体循環装置20の状態が無負荷運転又は無負荷運転移行運転になったものと状態判定部33が判定した場合に、ヒータ24を作動させてヒータ24により流体を加熱するものである。
【0054】
本実施の形態におけるヒータ制御部34は、上述したように、流体循環装置20の状態が無負荷運転又は無負荷運転移行運転になった場合に、ヒータ24を作動させる。その後、ヒータ制御部34は、ヒータ24の加熱能力を制御するようになっている。
【0055】
ヒータ24の加熱能力を制御する際、本実施の形態における制御装置30は、ヒータ制御部34によって、まず、蒸発器14に通過させる流体の温度を目標温度Ttにするための加熱能力Qを、以下の式(1)から算出する。
Q=m×Cp×(Tt-Ts)…(1)
ここで、温度制御対象Tへ供給する流体の設定温度をTs(℃)とし、流体循環装置20においてヒータ24の下流側を通流する流体であって蒸発器14を通過する前の流体の目標温度をTt(℃)とし、流体循環装置20が流体を通流させる重量流量を、m(kg/s)とし、流体の比熱を、Cp(J/kg℃)とする。なお、設定温度Tsと目標温度Ttは、温度設定部31によって設定される。また、重量流量mは、流量センサで検出してもよいし、ポンプ22の状態から特定してもよい。また、流体の比熱Cpは、予め制御装置30に保持されている。
【0056】
そして、制御装置30は、ヒータ制御部34により式(1)で算出した加熱能力Qに基づいてヒータ24の加熱能力を制御する。具体的に、ヒータ制御部34は、ヒータ24の加熱能力を、式(1)で算出した加熱能力Q以上の加熱能力に制御する。このような制御目標値となる当該加熱能力は、式(1)で予め算出した加熱能力Qに基づき予め決定され、予め制御装置30内に記憶されていてもよい。
【0057】
なお、式(1)で算出した加熱能力Qがヒータ24の最大加熱能力を越える場合も生じ得る。この場合、制御装置30は、ヒータ24をその最大加熱能力に制御する。
【0058】
以上のように本実施の形態では、ヒータ24の加熱能力が、式(1)で算出した加熱能力Q以上になるようにヒータ24が制御されるが、ヒータ24は、その加熱能力が、式(1)で算出した加熱能力Qそのものになるように制御されてもよい。また、ヒータ24の加熱能力が式(1)で算出した加熱能力Q以上に制御される場合、加熱能力Qよりも過剰に大きくない値(例えば2Q以下)を設定することが望ましい。
【0059】
流体循環装置20の状態が無負荷運転又は無負荷運転移行運転になった場合にヒータ24を作動させる理由は、流体が低温の状態で蒸発器14を通過して冷凍装置10側の冷媒の蒸発が不十分になり、これにより液バックが生じることを回避することにある。ここで、ヒータ24の加熱能力が大きくなる程、液バックのリスクは低減する。ただし、ヒータ24の加熱能力が過剰に大きくなると、圧縮機11の焼き付き等の不都合が生じ得る。したがって、ヒータ24の加熱能力は過剰に大きくないことが望ましい。
また、制御装置30は、ヒータ24の加熱能力を、式(1)で算出した加熱能力Q以上に制御した後、ヒータ24の下流側を通流する流体であって蒸発器14を通過する前の流体の温度が目標温度Tt以上にならない場合、ヒータ24を調節してもよい。
つまり、ヒータ24の加熱能力の制御後、第3温度センサ27が検出する温度情報に基づいて、ヒータ24の下流側を通流する流体であって、蒸発器14を通過する前の流体の戻り温度が、上記目標温度よりも小さいか否かを判定し、液バックリスク信号が生成された際、ヒータ24が調節されてもよい。この際、ヒータ24の調節と同時に警告が報知されてもよい。
【0060】
「冷凍装置制御モジュール」
つづいて、冷凍装置制御モジュール35について詳しく説明する。
【0061】
冷凍装置制御モジュール35は、流体温度情報取得部351と、目標値設定部352と、吐出温度取得部353と、蒸発圧力取得部354と、膨張弁制御部355と、圧縮機制御部356と、液バイパス制御部357と、ガスバイパス制御部358と、を有する。これら各機能部は、例えばプログラムが実行されることにより実現される。
【0062】
流体温度情報取得部351は、流体循環装置制御モジュール30A側の温度設定部31が設定した上述の設定温度を取得するとともに、流体循環装置20側の第1温度センサ25が検出する流体の検出温度を取得するものである。流体温度情報取得部351は、取得した上記設定温度を目標値設定部352及び膨張弁制御部355に送信するとともに、取得した上記検出温度を膨張弁制御部355に送信するようになっている。
【0063】
目標値設定部352は、流体温度情報取得部351から送信される上記設定温度を基づいて、圧縮機11の基準回転数を設定するとともに、基準回転数に対応する目標蒸発圧力を設定し、さらには圧縮機11から吐出される冷媒の吐出温度の閾値を設定するものである。
【0064】
流体の温度の制御目標値である上記設定温度は、例えば10℃、0℃、-10℃等に設定され得る。目標値設定部352は、例えば、このような設定温度に応じて圧縮機11の基準回転数及びこれに対応する目標蒸発圧力を設定する。これにより、所望される冷凍能力が調節される。基準回転数及び目標蒸発圧力は、設定温度が低いほど、大きい値に設定されるものである。また、吐出温度の閾値は、本実施の形態では、例えば80℃等の一定の値に設定され、予め記録されている。
【0065】
また、吐出温度取得部353は、圧縮機11から吐出され凝縮器12に流入する前の冷媒の温度を吐出温度センサ18から取得し、取得した冷媒の温度に関する情報を液バイパス制御部357に送信するものである。
【0066】
また、蒸発圧力取得部354は、蒸発器14から流出した冷媒の蒸発圧力を蒸発圧力センサ19から取得し、取得した蒸発圧力に関する情報を、圧縮機制御部356及びガスバイパス制御部358に送信するものである。
【0067】
膨張弁制御部355は、上述したように流体温度情報取得部351から、温度設定部31が設定した設定温度を取得するとともに、流体循環装置20側の第1温度センサ25が検出する流体の検出温度を取得するようになっている。そして、膨張弁制御部355は、これら設定温度と検出温度との差分に応じて、検出温度が設定温度になるように膨張弁13の開度を調節するようになっている。
【0068】
膨張弁制御部355は、本実施の形態ではPID制御により膨張弁13の開度を調節する。ただし、膨張弁制御部355による膨張弁13の制御方式は特に限られるものではない。
【0069】
また、圧縮機制御部356は、目標値設定部352が設定した圧縮機11の基準回転数とこれに対応する目標蒸発圧力の情報を取得するとともに、蒸発器14から流出した冷媒の蒸発圧力の情報を上述したように蒸発圧力取得部354から取得する。そして、圧縮機制御部356は、これらの情報に基づいて圧縮機11の回転数を制御するようになっている。
【0070】
詳しくは、冷凍装置10の運転が開始されると、圧縮機制御部356は、まず圧縮機11の回転数を、目標値設定部352が設定した基準回転数に制御する。そして、圧縮機11の回転数が基準回転数に制御された後(起動後)、圧縮機制御部356は、蒸発圧力取得部354から取得した冷媒の蒸発圧力を常時監視し、当該蒸発圧力が目標蒸発圧力から逸れた場合に、圧縮機11の回転数を調節するようになっている。
【0071】
より詳しくは、圧縮機制御部356は、冷媒の蒸発圧力が目標蒸発圧力を上回る際に、圧縮機11の回転数を上げ、冷媒の蒸発圧力が目標蒸発圧力を下回る際に、圧縮機11の回転数を下げて、冷媒の蒸発圧力が目標蒸発圧力になるように圧縮機11の回転数を制御する。すなわち、制御装置30は、冷媒の蒸発圧力が目標蒸発圧力になるように圧縮機11の回転数を、圧縮機制御部356により調節するようになっている。
【0072】
本実施の形態における圧縮機制御部356は、冷媒の蒸発圧力が目標蒸発圧力になるように圧縮機11の回転数をPI制御により調節する。これにより、回転数の過剰な変動により制御安定性が損なわれることを抑制している。ただし、圧縮機制御部356による制御方式は、特に限られるものではない。
【0073】
なお、圧縮機制御部356は、冷媒の蒸発圧力が目標蒸発圧力を下回る際に、圧縮機11の回転数を下げるが、回転数の下限値を有する。すなわち、仮に圧縮機11の回転数が下限値まで下げられた際には、冷媒の蒸発圧力が目標蒸発圧力を下回っている場合でも、圧縮機11の回転数を下限値よりも下げることはない。
【0074】
また、液バイパス制御部357は、目標値設定部352が設定した吐出温度の閾値(例えば80℃等)の情報を取得するとともに、圧縮機11から吐出され凝縮器12に流入する前の冷媒の温度の情報を吐出温度センサ18から取得する。そして、液バイパス制御部357は、吐出温度センサ18からの情報に基づく冷媒の吐出温度が閾値を上回る際に、液バイパス制御弁16Bを開き、冷媒の吐出温度が閾値以下である際には、液バイパス制御弁16Bを閉じるようになっている。
【0075】
すなわち、制御装置30は、圧縮機11から吐出され凝縮器12に流入する前の冷媒の吐出温度が閾値を上回る際に、液バイパス制御弁16Bを開き、吐出温度が閾値以下である際に、液バイパス制御弁16Bを閉じる又は閉状態を維持するようになっている。
【0076】
本実施の形態における液バイパス制御部357は、冷媒の吐出温度が閾値を上回る際、吐出温度と閾値との差分に応じて吐出温度が閾値以下になるように、本実施の形態では閾値になるように液バイパス制御弁16Bの開度を調節し、具体的にはPID制御により開度を調節する。このようにPID制御を用いることで、吐出温度の調整の応答性を高めているが、制御方式は特に限られるものではない。
【0077】
また、ガスバイパス制御部358は、蒸発器14から流出した冷媒の蒸発圧力の情報を上述したように蒸発圧力取得部354から取得し、取得した蒸発圧力の情報に基づいてガスバイパス制御弁17Bを制御するようになっている。
【0078】
詳しくは、本実施の形態におけるガスバイパス制御部358は、圧縮機11の回転数が下限値まで下げられ且つ冷媒の蒸発圧力が目標蒸発圧力を下回る際に、冷媒の蒸発圧力が目標蒸発圧力又はそれ以上になるようにガスバイパス制御弁17Bを開く。ガスバイパス制御弁17Bを開く際には、冷媒の蒸発圧力と目標蒸発圧力との差分に応じてガスバイパス制御弁17Bの開度を調節し、詳しくはPID制御により開度を調節する。ただし、ガスバイパス制御弁17Bの制御方式は特に限られるものではない。
【0079】
(冷凍装置を制御する際の動作)
次に、以上のような構成を有する制御装置30が冷凍装置10を制御する際の動作の例を説明する。
【0080】
図3Aは、液バイパス制御弁16Bを制御する際の動作の一例を説明するフローチャートである。
図3Bは、圧縮機11の回転数及びガスバイパス制御弁17Bを制御する際の動作の一例を説明するフローチャートである。
【0081】
本実施の形態における制御装置30は、液バイパス制御弁16Bの制御と、圧縮機11の回転数及びガスバイパス制御弁17Bの制御と、を並行して行うようになっている、言い換えると、別ループで行うようになっている。
【0082】
本実施の形態では、制御装置30が、まず圧縮機11の回転数を基準回転数に制御することにより冷凍装置10を起動させる。この起動後に、
図3Aに示す液バイパス制御弁16Bの制御及び
図3Bに示す圧縮機11の回転数及びガスバイパス制御弁17Bが開始する。
【0083】
図3Aに示す液バイパス制御弁16Bの制御では、ステップS11に示すように、制御装置30が、まず吐出温度センサ18からの情報に基づく冷媒の吐出温度が閾値を上回るか否かを監視する。
【0084】
ステップS11で吐出温度が閾値を上回ると判定された場合(YES)、ステップS12において、制御装置30は、液バイパス制御部357により液バイパス制御弁16Bを開く。この際、液バイパス制御部357は、吐出温度と閾値との差分に応じて吐出温度が閾値以下になるように、PID制御により液バイパス制御弁16Bの開度を調節する。
【0085】
一方で、ステップS11で吐出温度が上回らない、すなわち閾値以下であると判定された場合には(NO)、ステップS13において、制御装置30は、液バイパス制御弁16Bを閉状態にする。この際、液バイパス制御弁16Bが開いている場合には、液バイパス制御弁16Bが閉じられ、液バイパス制御弁16Bが閉じられている場合には、閉状態が維持される。
【0086】
ステップS11及びステップS12の処理の後、制御装置30は、ステップS14において冷凍装置10の運転停止指令が生じたか否かを監視し、運転停止指令が生じた場合(YES)には冷凍装置10の運転を停止する(エンド)。一方で、運転停止指令が生じていない場合には(NO)、処理がステップS11に戻り、吐出温度の監視が行われる。
【0087】
一方、
図3Bに示す圧縮機11の回転数及びガスバイパス制御弁17Bの制御では、制御装置30が、まずステップS21において、圧縮機制御部356により冷媒の蒸発圧力が目標蒸発圧力になるように圧縮機11の回転数を調節する。この回転数の調節の際、冷媒の蒸発圧力が目標蒸発圧力を上回る際には、圧縮機11の回転数が上げられ、冷媒の蒸発圧力が目標蒸発圧力を下回る際には、圧縮機11の回転数が下げられる。
【0088】
上記ステップS21における回転数の調節後、制御装置30は、ステップS22において圧縮機11の回転数が下限値か否かを判定する。下限値ではない場合には(NO)、ステップS23において、制御装置30はガスバイパス制御弁17Bを閉状態にする。この際、ガスバイパス制御弁17Bが開いている場合には、ガスバイパス制御弁17Bが閉じられ、ガスバイパス制御弁17Bが閉じられている場合には、閉状態が維持される。
【0089】
一方で、ステップS22において圧縮機11の回転数が下限値であると判定された場合(YES)、ステップS24において、制御装置30は冷媒の蒸発圧力が目標蒸発圧力を下回るか否かを判定する。そして、ステップS24で冷媒の蒸発圧力が目標蒸発圧力を下回ると判定された場合、制御装置30はステップS25で、蒸発圧力が目標蒸発圧力と一致するようにガスバイパス制御弁17Bを開状態に制御する。これにより、蒸発圧力が増加する。
【0090】
そして、ステップS23の処理後、ステップS24で冷媒の蒸発圧力が目標蒸発圧力を下回っていない場合、及びステップS25の処理後においては、制御装置30は、ステップS26において冷凍装置10の運転停止指令が生じたか否かを監視し、運転停止指令が生じた場合(YES)には冷凍装置10の運転を停止する(エンド)。一方で、運転停止指令が生じていない場合には(NO)、処理がステップS21に戻る。
【0091】
以上のような
図3A及び
図3Bの処理が行われることで、冷凍装置10では、蒸発器14における適正な冷凍能力の確保しつつ、圧縮機11の吐出温度が過度に高温になる状況を回避し、さらに液バックのリスクを抑制できる。
【0092】
すなわち、流体循環装置20が通流させる流体の温度が変動した場合(負荷が変動した場合)、冷凍能力の過不足が、検出される蒸発圧力と目標蒸発圧力との差分から判定され、適正な冷凍能力が確保されるように圧縮機11の回転数が調節される。詳しくは、検出される蒸発圧力が目標蒸発圧力を上回る場合、冷凍能力が不足していると判定され、回転数が上げられる。検出される蒸発圧力が目標蒸発圧力を下回る場合、冷凍能力が過剰と判定され、回転数が下げられる。そして、蒸発圧力と目標蒸発圧力との差分をなくすことにより、制御装置30は、適正な冷凍能力が確保されたことを判定する。また、過剰に圧力が高い冷媒が圧縮機11に流入して吐出温度が過度に高温になること、及び、圧力が低い冷媒が圧縮機11に流入して圧縮比が増加する結果、吐出温度が過度に高温になることが抑制される。そして、蒸発圧力が目標蒸発圧力を下回る場合、液バックのリスクが高まるが、圧縮機11の回転数の調節により蒸発圧力が目標蒸発圧力に制御されるため、液バックのリスクも抑制できる。
【0093】
一方、例えば急激な負荷変動等により、上記のような回転数制御で蒸発圧力を適正に制御できず吐出温度が高温になった場合には、液バイパス制御弁16Bにより圧縮機11への冷媒の吸入温度を下げることで、圧縮機11の吐出温度が過度に高温になる状況を回避できる。ただし、このような液バイパス制御弁16Bの作動回数は、回転数制御による蒸発圧力の制御が行われることで抑制できる。その結果、液バックのリスクを抑制できる。
【0094】
なお、本実施の形態では、液バイパス制御弁16Bの制御と、圧縮機11の回転数及びガスバイパス制御弁17Bとを別ループで行うが、この場合、各制御の応答性を高めることができる。一方で、これら制御は一連のシーケンスで行われてもよい。
【0095】
(流体循環装置を制御する際の動作)
次に、
図4は制御装置30の動作の一例を説明するフローチャートである。以下、
図4を参照しつつ、制御装置30(ヒータ制御部34)の動作の一例を説明する。
【0096】
図4に示す動作は、流体循環装置20の状態が無負荷運転又は無負荷運転移行運転になったことが状態判定部33によって判定された場合に開始する。動作が開始されると、まず、ステップS101において、ヒータ制御部34は、ヒータ24を作動させる。
【0097】
次いで、ステップS102において、ヒータ制御部34は、上記式(1)に従い、蒸発器14に通過させる流体の温度を目標温度Ttにするための加熱能力Qを算出する。
【0098】
次いで、ステップS103において、ヒータ制御部34は、式(1)で算出した加熱能力Qに基づいてヒータ24の加熱能力を制御する。具体的に、ヒータ24は、その加熱能力が、加熱能力Q以上になるように制御される。
【0099】
次いで、ステップS104においては、状態判定部33が、無負荷運転又は無負荷運転移行運転が継続している否かを監視する。ここで、無負荷運転又は無負荷運転移行運転が継続している場合には、監視を繰り返す。一方で、無負荷運転又は無負荷運転移行運転を脱したと判定された場合には、ステップS105において、ヒータ制御部34がヒータ24を停止し、動作が終了する。
【0100】
なお、無負荷運転又は無負荷運転移行運転を脱した状態は、第2温度センサ26が検出する温度情報に基づき、温度制御対象Tを通過した後、ヒータ24の上流側を通流する流体の温度が、所定温度以上になったことを検出することで判定できる。
【0101】
以上に説明した本実施の形態では、冷凍装置10における制御装置30が、圧縮機11から吐出され凝縮器12に流入する前の冷媒の吐出温度が閾値を上回る際に、液バイパス制御弁16Bを開き、吐出温度が閾値以下である際に、液バイパス制御弁16Bを閉じる。また、制御装置30は、冷凍回路10Aにおける蒸発器14の下流側で且つ圧縮機11の上流側の部分であって、液バイパス流路16Aの下流端の接続位置の下流側の部分を流れる冷媒の蒸発圧力が予め設定された目標蒸発圧力になるように圧縮機11の回転数を調節する。
【0102】
この場合、流体循環装置20が通流させる流体の温度が変動した場合(負荷が変動した場合)、冷凍能力の過不足が、検出される蒸発圧力と目標蒸発圧力との差分から判定され、適正な冷凍能力が確保されるように圧縮機11の回転数が調節される。詳しくは、検出される蒸発圧力が目標蒸発圧力を上回る場合、冷凍能力が不足していると判定され、回転数が上げられる。検出される蒸発圧力が目標蒸発圧力を下回る場合、冷凍能力が過剰と判定され、回転数が下げられる。そして、蒸発圧力と目標蒸発圧力との差分をなくすことにより、制御装置30は、適正な冷凍能力が確保されたことを判定する。また、過剰に圧力が高い冷媒が圧縮機11に流入して吐出温度が過度に高温になること、及び、圧力が低い冷媒が圧縮機11に流入して圧縮比が増加する結果、吐出温度が過度に高温になることが抑制される。そして、蒸発圧力が目標蒸発圧力を下回る場合、液バックのリスクが高まるが、圧縮機11の回転数の調節により蒸発圧力が目標蒸発圧力に制御されるため、液バックのリスクも抑制できる。
なお、蒸発圧力が目標蒸発圧力を上回る状況は、例えば負荷が増加した場合に生じ得る。一方で、蒸発圧力が目標蒸発圧力を下回る状況は、例えば負荷が低下した場合に生じ得る。
【0103】
一方、例えば急激な負荷変動等により、上記のような回転数制御で蒸発圧力を適正に制御できず吐出温度が高温になった場合には、液バイパス制御弁16Bにより圧縮機11への冷媒の吸入温度を下げることで、圧縮機11の吐出温度が過度に高温になる状況を回避できる。ただし、このような液バイパス制御弁16Bの作動回数は、回転数制御による蒸発圧力の制御が行われることで抑制できる。その結果、液バックのリスクを抑制できる。
【0104】
そして、本実施の形態では、蒸発圧力の制御及び液バイパス制御弁16Bの作動回数の抑制により、液バックのリスクが抑制されることでアキュムレータの容量を抑制し得るか又はアキュムレータを省略し得る。そして、これにより、使用する冷媒の量を抑制できる。
【0105】
また、本実施の形態では、圧縮機11からの冷媒の吐出温度を指標として、液バイパス制御弁16Bの作動が制御される。この場合、液バイパス制御弁16Bは、外乱の影響で作動し難くなり、頻繁な作動が効果的に抑制される。これにより、冷媒の使用量の抑制を図ることができる。これまで圧縮機吸入温度を指標として液バイパスを行う回路も存在したが、この構成では、吸入温度は変化し易く外乱も含み得るため、頻繁に液バイパスが行われる傾向があった。そのため、蒸発器において適正な熱交換を行うべく(冷凍能力を確保すべく)、冷媒の余剰量を十分に確保することがあった。このような構成よりも、本実施の形態の構成は冷媒の使用量を抑制し易くなる。
【0106】
したがって、本実施の形態によれば、アキュムレータの容量を抑制した場合又はアキュムレータを用いない場合であっても、冷凍装置10における冷媒の液バックを好適に抑制できるとともに、使用する冷媒の量を抑制しつつも圧縮機11に吸入される冷媒の温度の過度な上昇を好適に抑制でき且つ適正な冷却動作を行うことができる。
【0107】
また、本実施の形態では、流体循環装置20側で無負荷運転又は無負荷運転移行運転が判定された際に、制御装置30が、ヒータ制御部34によりヒータ24を作動させる。この場合、流体循環装置20が循環させる流体が低温の状態で蒸発器14を通過して冷凍装置10側の冷媒の蒸発が不十分になり(つまり、蒸発圧力が下がり)、その結果、液バックが生じることを回避することができる。これにより、アキュムレータの容量を抑制した場合又はアキュムレータを用いない場合であっても、冷凍装置10における冷媒の液バックを好適に抑制できる。その結果、温度制御システム1のコンパクト化を図り易くなる。
【0108】
(冷媒の使用量について)
上述したように、本実施の形態にかかる冷凍装置10によれば、使用する冷媒の量を抑制しつつも圧縮機11に吸入される冷媒の温度の過度な上昇を好適に抑制でき且つ適正な冷却動作を行うことができる。具体的に、本件発明者は、冷凍装置10の定格冷凍能力がP(Kw)であるときに、冷媒の充填量(Kg)を、0.155×P以上0.222×P以下とした場合でも、適正な運転を実施できることを確認している。なお、本件発明者の知見では、アキュムレータ及びレシーバタンクを有する一般的な冷凍装置では、定格冷凍能力がP(Kw)であるときに、(1.2×P)Kg以上の冷媒が使用される。これに比較すると、本実施の形態にかかる冷凍装置10によれば、使用する冷媒の量を大幅に抑制できると言える。より詳しくは、定格冷凍能力が4.5(Kw)とする実施の形態にかかる冷凍装置10では、冷媒の充填量が、0.70Kg以上1.0Kg以下でも適正な運転が実施され得る。具体的に本件発明者は、定格冷凍能力が4.5(Kw)であり、冷媒の充填量を0.75Kgとして上述の実施の形態にかかる冷凍装置10を作製し運転したが、これまでに不具合が生じていないことを確認している。
【0109】
なお、上記定格冷凍能力は、JIS B 8621:2011に準拠して計算されるものである。
【0110】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は以上に説明した実施の形態に限られるものではなく、上述の実施の形態には種々の変更を加えることができる。
【0111】
例えば、上述の実施の形態における流体循環装置20では、無負荷運転又は無負荷運転移行運転が判定された際に、制御装置30が、ヒータ制御部34によりヒータ24を作動させる。この態様に代えて、制御装置30は、ヒータ24の下流側を通流する流体であって、蒸発器14を通過する前の流体の戻り温度が、温度設定部31で設定された目標温度よりも小さい場合に、ヒータ制御部34によりヒータ24を作動させてヒータ24により流体を加熱するようにしてもよい。すなわち、上述の実施の形態で説明した液バックリスク信号が生成された際に、ヒータ24を作動させてもよい。
【0112】
このような変形例において、制御装置30のヒータ制御部34は、戻り温度をTb(℃)とし、目標温度をTt(℃)とし、流体循環装置20が流体を通流させる重量流量を、m(kg/s)とし、流体の比熱を、Cp(J/kg℃)とし、戻り温度Tbを目標温度Ttにするための加熱能力Qを、以下の式(2)から算出してもよい。
Q=m×Cp×(Tt-Tb)…(2)
【0113】
そして、制御装置30は、式(2)で算出した加熱能力Qに基づいてヒータの加熱能力を制御してもよい。この際、ヒータ制御部34は、ヒータ24の加熱能力を、式(2)で算出した加熱能力Q以上の加熱能力に制御する。
【符号の説明】
【0114】
1…温度制御システム、5…冷却水管、10…冷凍装置、10A…冷凍回路、11…圧縮機、12…凝縮器、13…膨張弁、14…蒸発器、15…配管、16…液バイパス回路、16A…液バイパス流路、16B…液バイパス制御弁、17…ガスバイパス回路、17A…ガスバイパス流路、17B…ガスバイパス制御弁、18…吐出温度センサ、19…蒸発圧力センサ、
20…流体循環装置、21…メイン流路管、21U…戻し口部、21D…供給口部、22…ポンプ、23…タンク、24…ヒータ、25…第1温度センサ、26…第2温度センサ、27…第3温度センサ、30…制御装置、30A…流体循環装置制御モジュール、31…温度設定部、32…温度取得部、33…状態判定部、34…ヒータ制御部、35…冷凍装置制御モジュール、351…流体温度情報取得部、352…目標値設定部、353…吐出温度取得部、354…蒸発圧力取得部、355…膨張弁制御部、356…圧縮機制御部、357…液バイパス制御部、358…ガスバイパス制御部、T…温度制御対象