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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】表示具
(51)【国際特許分類】
   G09F 7/18 20060101AFI20241016BHJP
   G09F 19/22 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G09F7/18 Y
G09F19/22 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021043364
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143039
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 甫
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-200588(JP,A)
【文献】特開2004-257018(JP,A)
【文献】特開2010-018965(JP,A)
【文献】特開2017-134202(JP,A)
【文献】実開平02-019085(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 7/00- 7/22
G09F 19/00-27/00
E01F 9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表示部材と第2表示部材とを有し,前記第1表示部材および前記第2表示部材のそれぞれに,互いに組付けられることで,前記第1表示部材および前記第2表示部材の一辺同士を,前記一辺と平行な軸の周りの角度変更を許容しつつ連結する連結部が設けられている表示具であって,
前記第1表示部材と前記第2表示部材とが前記連結部により連結されている連結状態で一体化して持ち手部を構成する,前記第1表示部材に形成された第1分割持ち手部および前記第2表示部材に形成された第2分割持ち手部を有し,
前記第1分割持ち手部および前記第2分割持ち手部における軸方向の先端を含む一部区間に,前記連結状態での内面側が切り欠かれた形状であるとともに,前記連結状態で互いに嵌り合いつつ,前記第1表示部材の前記一辺の対辺と前記第2表示部材の前記一辺の対辺とが近接または当接する閉状態と,前記対辺同士が離隔する開状態とを許容する嵌合部が形成されており,
前記第1分割持ち手部および前記第2分割持ち手部における前記嵌合部にはそれぞれ,切り欠き角度の小さい第1区間と切り欠き角度の大きい第2区間とが形成されており,前記連結状態では,前記第1分割持ち手部の前記第1区間と前記第2分割持ち手部の前記第2区間とが嵌り合い,前記第1分割持ち手部の前記第2区間と前記第2分割持ち手部の前記第1区間とが嵌り合うように構成されている表示具。
【請求項2】
請求項1に記載の表示具であって,
前記第1分割持ち手部および前記第2分割持ち手部における前記嵌合部はいずれも,前記軸方向の先端側から前記第1区間,前記第2区間の順の配置となっており,
前記第1分割持ち手部および前記第2分割持ち手部における前記嵌合部以外の区間にはそれぞれ第1手掛け面が形成されており,
前記第1分割持ち手部および前記第2分割持ち手部における前記第1区間にはそれぞれ第2手掛け面が形成されており,
前記第1手掛け面および前記第2手掛け面はいずれも,前記軸に対して,前記閉状態と前記開状態とのいずれでも,前記一辺が上方となる姿勢にしたときに下方となる角度位置を包含するように形成されている表示具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の表示具であって,
各前記嵌合部にそれぞれ,前記閉状態で当接し合う閉状態当接面と前記開状態で当接し合う開状態当接面とが形成されており,
前記第1表示部材および前記第2表示部材の角度変更範囲の両端が,前記閉状態当接面同士の当接と前記開状態当接面同士の当接とにより規定されるように構成されている表示具。
【請求項4】
請求項3に記載の表示具であって,
各前記第1区間では,前記閉状態当接面と前記開状態当接面とが前記軸に垂直な断面上で見て凹状の交差角をなすように形成されており,
各前記第2区間では,前記閉状態当接面と前記開状態当接面とが前記軸に垂直な断面上で見て凸状の交差角をなすように形成されており,
前記凹状の交差角が前記凸状の交差角より大きい表示具。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の表示具であって,
前記閉状態当接面および前記開状態当接面はいずれも,前記軸に対して,前記第1分割持ち手部および前記第2分割持ち手部の半径より小さい範囲内にのみ形成されている表示具。
【請求項6】
請求項5に記載の表示具のうち請求項4の技術特定事項を有するものであって,
各前記嵌合部における,前記軸に対して前記閉状態当接面および前記開状態当接面が形成されている最大半径より外側の部位には,前記軸に垂直な断面上で見て前記閉状態当接面または前記開状態当接面より窪んでいる窪み部が形成されている表示具。
【請求項7】
請求項1から請求項6に記載の表示具であって,
各前記嵌合部には,前記第1表示部材および前記第2表示部材の前記軸方向の移動を規制する移動規制面が設けられている表示具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は,通行者等に対して情報を表示するために用いられる表示具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の表示用具として,特許文献1に記載されている標識具を挙げることができる。同文献の標識具では,2枚の表示板の上辺同士を連結してなるものである。この標識具では,各表示板の上辺に分割把手と称する部位設けている。連結状態では分割把手同士が一体化して取っ手状となるようになっている。両部材の連結のため,分割把手同士の突き合わせ面の一方には突起が,他方には穴が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-257018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の技術には,次のような問題点があった。まず製造上の問題がある。一般的な樹脂成形で特許文献1の標識具を作製する場合,上記の突き合わせ面には両方とも突起を形成することとなる。その後に一方の突起を切除して穴を形成するのである。このように成形工程だけで標識具を完成させることができず,切除という後加工を要するのである。
【0005】
また使用上の問題もある。連結作業が必ずしも容易でないのである。連結作業では上記の穴に突起を挿入しなければならない。その際,表示板同士を互いに斜めにして,突き合わせ面同士を斜めに向き合わせる必要がある。表示板の上辺には上記の分割把手以外にも軸筒等の他の形状部が存在しているため,突き合わせ面同士を平行に向き合わせることに支障があるからである。このため連結作業にコツを要し,必ずしも容易ではない。
【0006】
本開示技術は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,製造しやすく連結作業も容易な表示具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示技術の一態様における表示具は,第1表示部材と第2表示部材とを有し,第1表示部材および第2表示部材のそれぞれに,互いに組付けられることで,第1表示部材および第2表示部材の一辺同士を,前記一辺と平行な軸の周りの角度変更を許容しつつ連結する連結部が設けられており,第1表示部材と第2表示部材とが連結部により連結されている連結状態で一体化して持ち手部を構成する,第1表示部材に形成された第1分割持ち手部および第2表示部材に形成された第2分割持ち手部を有し,第1分割持ち手部および第2分割持ち手部における軸方向の先端を含む一部区間に,連結状態での内面側が切り欠かれた形状であるとともに,連結状態で互いに嵌り合いつつ,第1表示部材の前記一辺の対辺と第2表示部材の前記一辺の対辺とが近接または当接する閉状態と,対辺同士が離隔する開状態とを許容する嵌合部が形成されており,第1分割持ち手部および第2分割持ち手部における嵌合部にはそれぞれ,切り欠き角度の小さい第1区間と切り欠き角度の大きい第2区間とが形成されており,連結状態では,第1分割持ち手部の第1区間と第2分割持ち手部の第2区間とが嵌り合い,第1分割持ち手部の第2区間と第2分割持ち手部の第1区間とが嵌り合うように構成されているものである。
【0008】
上記態様における表示具では,第1表示部材と第2表示部材との一辺同士が,連結部により,角度変更可能に連結されている。この連結状態では,第1表示部材の第1分割持ち手部と第2表示部材の第2分割持ち手部とが一体化して持ち手部を構成している。第1分割持ち手部および第2分割持ち手部の先端の嵌合部では,第1分割持ち手部の第1区間と第2分割持ち手部の第2区間とが嵌り合い,第1分割持ち手部の第2区間と第2分割持ち手部の第1区間とが嵌り合っている。この嵌り合い箇所にて,第1表示部材および第2表示部材の対辺同士が近接または当接する閉状態と,対辺同士が離隔する開状態とが可能となっている。この形状は,金型成形のみで切除等の後加工なくして形成できる。また,両表示部材を平行に向き合わせて平行移動させるだけで簡単に連結操作ができる。
【0009】
上記態様における表示具ではさらに,第1分割持ち手部および第2分割持ち手部における嵌合部はいずれも,軸方向の先端側から第1区間,第2区間の順の配置となっており,第1分割持ち手部および第2分割持ち手部における嵌合部以外の区間にはそれぞれ第1手掛け面が形成されており,第1分割持ち手部および第2分割持ち手部における第1区間にはそれぞれ第2手掛け面が形成されており,第1手掛け面および第2手掛け面はいずれも,軸に対して,閉状態と開状態とのいずれでも,前記一辺が上方となる姿勢にしたときに下方となる角度位置を包含するように形成されていることが望ましい。このようになっていると,閉状態と開状態とのいずれでも,持ち手部における下側が第1手掛け面または第2手掛け面で占められることになる。このためユーザーの手に優しい。
【0010】
上記のいずれかの態様における表示具ではさらに,各嵌合部にそれぞれ,閉状態で当接し合う閉状態当接面と開状態で当接し合う開状態当接面とが形成されており,第1表示部材および第2表示部材の角度変更範囲の両端が,閉状態当接面同士の当接と開状態当接面同士の当接とにより規定されるように構成されていることが望ましい。このようになっていると,閉状態と開状態とがいずれも,当接面同士の当接により,安定した姿勢として規定される。
【0011】
当接面が形成されている態様の表示具ではさらに,各第1区間では,閉状態当接面と開状態当接面とが軸に垂直な断面上で見て凹状の交差角をなすように形成されており,各第2区間では,閉状態当接面と開状態当接面とが軸に垂直な断面上で見て凸状の交差角をなすように形成されており,凹状の交差角が凸状の交差角より大きいことが望ましい。このようになっていると,閉状態および開状態が,両表示部材の軸回りの回転可能範囲の両端として規定される。
【0012】
当接面が形成されているいずれかの態様の表示具ではさらに,閉状態当接面および開状態当接面はいずれも,軸に対して,第1分割持ち手部および第2分割持ち手部の半径より小さい範囲内にのみ形成されていることが望ましい。このようになっていると,閉状態および開状態のいずれでも,当接面同士の当接がユーザーの指先が届きにくい箇所のみで起こるため安全性が高い。
【0013】
凹状の交差角が凸状の交差角より大きくかつ各当接面がいずれも小径の範囲内にのみ形成されている態様の表示具ではさらに,各嵌合部における,軸に対して閉状態当接面および開状態当接面が形成されている最大半径より外側の部位には,軸に垂直な断面上で見て閉状態当接面または開状態当接面より窪んでいる窪み部が形成されていることが望ましい。このようになっていると,当接面同士が当接している箇所の外側に,両窪み部によるスペースがあるため安全性が高い。
【0014】
上記のいずれかの態様における表示具ではさらに,各嵌合部には,第1表示部材および第2表示部材の軸方向の移動を規制する移動規制面が設けられていることが望ましい。このようになっていると,連結状態にて,両表示部材の軸方向の相互移動が移動規制面により規制され,姿勢が安定する。
【発明の効果】
【0015】
本構成によれば,製造しやすく連結作業も容易な表示具が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態に係る表示具を示す斜視図である。
図2図1の表示具の分解斜視図である。
図3図1の表示具の閉状態を示す斜視図である。
図4図3の閉状態の表示具の段積み図である。
図5】単独の状態での表示板の表面を示す斜視図である。
図6】単独の状態での表示板の裏面を示す斜視図である。
図7】単独の表示板における分割持ち手部付近を裏面側から見て示す拡大斜視図である。
図8】単独の表示板における分割持ち手部付近を表面側から見て示す拡大斜視図である。
図9】分割持ち手部の嵌合部の第1区間の断面形状を示す断面図である。
図10】分割持ち手部の嵌合部の第2区間の断面形状を示す断面図である。
図11】連結前の状況での両分割持ち手部付近を示す部分斜視図である。
図12図11の状況での部分断面図である。
図13】連結した状態での両分割持ち手部付近を示す部分斜視図である。
図14図13の状況での部分断面図である。
図15図12の状況から図14の状況への移行の途中の状況での断面図である。
図16】開状態での部分断面図である。
図17図14中の嵌合部の部分を拡大して示す断面図である。
図18図16中の嵌合部の部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,本開示技術を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示す本形態に係る表示具1は,2枚の表示板2を連結したものである。表示板2は長方形状の部材であり,表示具1では表示板2の上辺同士が連結されている。表示具1を構成する表示板2は,図2に示すように上辺部に連結部3と分割持ち手部4とを有している。連結部3は,表示板2の上辺同士を挿しピン5により連結するための部位である。分割持ち手部4は,図1に示されるように連結状態で一体化して持ち手部6を構成する部位である。
【0018】
表示板2の表側の周囲には図2に示すように枠状部9が形成されている。この枠状部9と,脱着可能な留め具7とにより,適当な表示パネルを表示板2の表側に固定することができる。これにより表示板2は通行者等に対して表示パネルの記載内容を表示する表示部材として機能するものである。図2には,表示板2の下辺に装着する滑り止め部材8も描かれている。
【0019】
表示具1では,連結部3および持ち手部6を軸として,表示板2同士の交差角をある程度の範囲内で変更することができる。図1に示される状態は,表示板2の下辺同士が離隔した開状態である。表示具1は開状態にて,床面上または地面上に安定的に立てて置くことができる。その状態では,表示板2に固定されている表示パネルの表示内容を通行者等が容易に見ることができる。
【0020】
表示具1は上記の開状態の他に,図3に示す閉状態とすることもできる。閉状態の表示具1では,表示板2の下辺,すなわち滑り止め部材8が装着されている箇所同士が近接または当接している。閉状態では全体として表示板2の2枚分程度の厚みしかなく,非常にコンパクトである。閉状態の表示具1を床面上または地面上に安定的に立てて置くことはできないが,省スペースであるため保管には好都合である。例えば図4に示すように閉状態の表示具1を段積み状に平置きして保管することができる。図4の段積み状態では,各表示具1の上下の向きが隣接するもの同士で逆向きとなっている。この積み方により,段数が多くてもほぼ水平を維持することができる。表示板2に表示パネルを固定したままであっても閉状態およびその段積み状態とすることができる。
【0021】
上記の開状態(図1)と閉状態(図3)とは,連結部3による連結状態を解くことなく,表示板2同士の回転動作だけで相互に変位できる。表示板2に表示パネルを固定したままであってもそのことによる支障はない。その回転の回転軸は,表示板2の上辺と平行であり,連結部3および持ち手部6により規定される。
【0022】
連結状態とする前の単独の状態での表示板2について図5図6により説明する。図5は表面,つまり連結状態の表示具1において外側となる面を示しており,図6は裏面,つまり連結状態の表示具1において内側となる面を示している。図5図6では,挿しピン5も留め具7も滑り止め部材8も装着していない状態を描いている。図1図3に示した本形態の表示具1では,2枚の表示板2は同じものである。以下の説明では,表示具1における2枚の表示板2を識別するために,一方の表示板2を第1表示板21と称しもう一方の表示板2を第2表示板22と称する場合がある。両者を区別する必要がない場合には単に表示板2と称する。
【0023】
表示板2の上辺の両端には,連結部3が設けられている。図6の裏面図から分かるように連結部3は,裏面側が凹んだ半パイプ形状の部位である。図6で見て左側の連結部3の左端付近には,リング31が形成されている。リング31よりも内側にはリング32が形成されている。リング31とリング32との間は,リングのない空白区間33となっている。リング32より内側にも空白区間34がある。図6で見て右側の連結部3には,右端からやや内側に入り込んだ辺りにリング35が形成されている。リング35より外側の範囲は空白区間36となっている。リング35よりも内側にはリング37が形成されている。リング35とリング37との間も,空白区間38となっている。
【0024】
2枚の同じ表示板2の裏面同士を向き合わせて上辺同士が接するように組付けると,第1表示板21の左側の連結部3と,第2表示板22の右側の連結部3とが組み合わせられることになる。その際,第2表示板22のリング35が第1表示板21の空白区間33に入り込み,第2表示板22のリング37が第1表示板21の空白区間34に入り込むことになる。この状況を逆に見ると,第1表示板21のリング31が第2表示板22の空白区間36に入り込み,第1表示板21のリング32が第2表示板22の空白区間38に入り込むことになる。表示板2の上辺の反対側でも同じ状況になる。
【0025】
この状態で,両表示板2の連結部3同士が向き合って略パイプ形状をなしている箇所に外側から挿しピン5を挿し込む。挿し込まれたら挿しピン5は,4つのリング31,32,35,37を貫通することになる。挿しピン5が挿し込まれている状態では,2枚の表示板2は分離できない。これが,2枚の表示板2が連結して表示具1を構成している状態である。この連結状態では,2枚の表示板2が相対的に,挿しピン5を回転軸として回転することができる。この回転動作により前述の開状態(図1)と閉状態(図3)との切り替えがなされる。開状態で連結部3同士が干渉しないように,閉状態では連結部3の頂部39同士の間に隙間が空くようになっている(図3)。
【0026】
上記のように連結部3の連結を行うことにより,分割持ち手部4同士も合体して持ち手部6となる。連結状態では,持ち手部6を手で掴んで持ち上げることで,2枚の表示板2からなる表示具1の全体を持ち上げることができる。分割持ち手部4は,この機能の他にも,両表示板2の前述の回転動作の角度範囲の両端を規定する機能を有している。この角度範囲規定機能により,表示具1の開状態および閉状態がいずれも安定した姿勢となるようにしている。図7図18により分割持ち手部4のこの機能について説明する。
【0027】
図7図8に示すように,分割持ち手部4のうち表示板2の本体部分に繋がっている基部41は,円形断面の柱状の形状の部位である。前述の挿しピン5による回転軸は,幾何学的にはこの基部41の内部を通っている。基部41のうち比較的連結部3に近い部位が本体部分に繋がっている。
【0028】
分割持ち手部4のうち,連結部3から見て基部41より遠い側には,嵌合部42が形成されている。嵌合部42は,基部41の円形断面に対して部分的に切り欠かれた断面形状を有する部分である。嵌合部42は基部41に繋がって形成されている。嵌合部42の外形のうち切り欠かれた形状の部分以外の部分は,基部41の断面の円形表面と連続する円弧面である。嵌合部42はさらに,軸方向の先端側の第1区間43と,基部41側の第2区間44との2つの区間に分かれる。第1区間43よりも第2区間44の方が切り欠きの程度が大きくなっている。第1区間43と第2区間44とのいずれでも,主として表側でなく裏側が切り欠かれた形状となっている。
【0029】
連結部3による前述の連結を行うと,第1表示板21の第1区間43と第2表示板22の第2区間44とが嵌り合い,第1表示板21の第2区間44と第2表示板22の第1区間43とが嵌り合うようになっている。これにより,連結状態では両表示板2の分割持ち手部4同士が嵌合部42を含めて一体化して,前述の持ち手部6を形成するようになっている。
【0030】
第1区間43および第2区間44の形状をさらに詳細に説明する。図9図10に,第1区間43および第2区間44の,軸方向に対して垂直な断面を示す。図9図10ではいずれも,図中左側が表示板2の表側に相当し,図中右側が裏側に相当する。また,第1区間43,第2区間44の箇所から基部41の方へ向かって見ている。
【0031】
図9に示されるように,第1区間43の断面の外形は,弧状部45と,凹み部46とにより構成されている。弧状部45は,基部41の外形の円形表面47と連続する面である。凹み部46は,基部41の外形の円形表面47よりも凹んでいる面である。説明上,凹み部46および後出の凹み部53の形状のことを「切り欠かれた形状」と表現することがある。ただし凹み部46,53は,実際に切り欠き加工を施したものである必要はなく,最初からその形状として成型されたものであってもよい。図9の第1区間43では,弧状部45が,基部41の外形全体の半分近くを占めている。凹み部46は,表示板2の表裏で言えば裏側向き,より詳細に言えば裏側のやや上方向きに位置している。
【0032】
凹み部46にはさらに,第1当接面48と,第2当接面49と,第1窪み部50と,第2窪み部51とが形成されている。第1当接面48および第2当接面49は,基部41の外形の円形表面47の半径より小さい半径の範囲内に形成されている。第1当接面48と第2当接面49とは,合わせて凹状をなしている。第1窪み部50および第2窪み部51は,第1当接面48および第2当接面49が形成されている最大半径より外側の部位に形成されている。第1窪み部50は図9で見て,第1当接面48より窪んでいる。第2窪み部51は,第2当接面49より窪んでいる。
【0033】
図10に示されるように,第2区間44の断面の外形は,弧状部52と,凹み部53とにより構成されている。弧状部52は,基部41の円形表面47および第1区間43の弧状部45と連続する面である。凹み部53は,基部41の外形の円形表面47よりも凹んでいる面である。図10の第2区間44で弧状部52は,基部41の外形全体に対してごく一部分しか占めていない。このため,第1区間43の凹み部46の切り欠き角度(図9中のα)に対して,第2区間44の凹み部53の切り欠き角度(図10中のβ)はかなり大きくなっている。弧状部52は,表示板2の表裏で言えば表側向きに位置している。つまり第2区間44においても凹み部53は表裏のうち裏側を向いている。
【0034】
凹み部53にはさらに,第1当接面54と,第2当接面55と,第1窪み部56と,第2窪み部57とが形成されている。第1当接面54および第2当接面55は,基部41の円形表面47の半径より小さい半径の範囲内に形成されている。第1当接面54と第2当接面55とは,合わせて凸状をなしている。第1窪み部56および第2窪み部57は,第1当接面54および第2当接面55が形成されている最大半径より外側の部位に形成されている。第1窪み部56は図10で見て,第1当接面54より窪んでいる。第2窪み部57は,第2当接面55より窪んでいる。
【0035】
第2当接面55は,第1区間43の第2当接面49と連続する面である。第2窪み部57は,第1区間43の第2窪み部51と連続する窪み面である。これに対して,第1当接面54,第1窪み部56は,第1区間43の第1当接面48,第1窪み部50とは異なる面,窪み面である。第1区間43において凹状をなす第1当接面48と第2当接面49との交差角θよりも,第2区間44において凸状をなす第1当接面54と第2当接面55との交差角φは小さい。より詳細には,交差角θが鈍角であるのに対して交差角φは鋭角である。
【0036】
図7に戻って,嵌合部42の第1区間43の先端には,第1端面58が形成されている。基部41と嵌合部42との境目には,第2端面59が形成されている。第1区間43と第2区間44との境目には,図8に示されるように第3端面60が形成されている。第1端面58~第3端面60はいずれも,軸方向に対して垂直な面である。第2端面59は,図9図10にも現れている。
【0037】
上記のように構成されている嵌合部42を有する分割持ち手部4の,連結部3による連結動作との関係を説明する。連結させようとする2枚の表示板2の裏面同士を対面させつつ近接させた状態の両分割持ち手部4付近の状況を図11に示す。図11の状態では,両分割持ち手部4の特に嵌合部42同士が対面している。より詳細に言えば,第1表示板21の第1区間43と第2表示板22の第2区間44とが対面し,第2表示板22の第1区間43と第1表示板21の第2区間44とが対面している。
【0038】
対面している状況での断面図を図12に示す。図12に示されるのは,第1表示板21の第2区間44と第2表示板22の第1区間43との対面箇所である。図12では,第1表示板21の第2区間44と第2表示板22の第1区間43とが,凹み部53と凹み部46とを相手に対して向けている状況にある。第1表示板21の第1区間43と第2表示板22の第2区間44との対面箇所でも,図12と左右逆であるが同じような状況にある。
【0039】
このため,図11および図12の状態から2枚の表示板2を近接させていくと,嵌合部42同士で弧状部45と弧状部52とが衝突することなく,嵌合部42同士が嵌り合い,図13および図14に示す状態となる。これが「嵌合部」という名称の意味である。これが連結動作であり,その途中で図15の状態を経由する。図13および図14の状態にしてから前述の挿しピン5を挿し込めば連結が完了する。図13および図14に示す状態は,図3に示した閉状態である。この状態から前述のように,表示板2同士の回転動作により開閉操作を行うことができる。開状態での部分断面図を図16に示す。
【0040】
閉状態および開状態における嵌合部42の状況についてさらに説明する。図14の閉状態断面のうち嵌合部42の部分を拡大して図17に示す。図17に示されるように閉状態では,第1表示板21の第1当接面54(第2区間44)と第2表示板22の第1当接面48(第1区間43)とが当接している。これにより,図14および図17中で,第2表示板22がさらに時計回りに,第1表示板21がさらに反時計回りに回転することが阻止されている。第1表示板21の第1区間43と第2表示板22の第2区間44との嵌合箇所でも,左右逆向きとなるが同じ状況になっている。
【0041】
これにより,閉状態が表示具1における安定した姿勢となっており,2枚の表示板2の下端部同士が激しくぶつかり合うようなことが回避されている。つまり第1当接面54と第1当接面48とは,閉状態で当接し合う閉状態当接面である。この当接により,両表示板2の角度変更範囲の閉側の一端が規定されている。
【0042】
表示具1を閉状態から開状態に切り替えることは,図14および図17中で言えば,第2表示板22を反時計回りに,第1表示板21を時計回りに回転させることである。このような動作が可能なのは,図9中の交差角θが図10中の交差角φより大きいからである。この動作後の状態である図16の開状態断面のうち嵌合部42の部分を拡大して図18に示す。図18に示されるように開状態では,第1表示板21の第2当接面55(第2区間44)と第2表示板22の第2当接面49(第1区間43)とが当接している。これにより,図16および図18中で,第2表示板22がさらに反時計回りに,第1表示板21がさらに時計回りに回転することが阻止されている。第1表示板21の第1区間43と第2表示板22の第2区間44との嵌合箇所でも,左右逆向きとなるが同じ状況になっている。
【0043】
これにより,開状態が表示具1における安定した姿勢となっており,2枚の表示板2の連結部3の頂部39同士が激しくぶつかり合うようなことが回避されている。つまり第2当接面55と第2当接面49とは,開状態で当接し合う開状態当接面である。この当接により,両表示板2の角度変更範囲の開側の一端が規定されている。図3で閉状態では頂部39同士の間に隙間が空くと述べたが,図16に示されるように,開状態であっても頂部39同士は衝突せず小さいながらそこには隙間がある。このため,表示具1を開状態にするときに連結部3の辺りにユーザーの指先があっても安全性が高い。
【0044】
開閉操作時の安全性の向上は,嵌合部42でも図られている。図17を見ると,第1当接面54と第1当接面48とは接触しているものの,その外側には第1窪み部50(第1区間43)および第1窪み部56(第2区間44)による隙間が開いている。図18でも,第2当接面55と第2当接面49とは接触しているものの,その外側には第2窪み部51(第1区間43)および第2窪み部57(第2区間44)による隙間が開いている。このため,各当接面同士の当接が,ユーザーの指先から遠い位置でのみ起こり,その当接位置の外側にはユーザーの指先が入りうるスペースが残る。このため安全性が高い。
【0045】
図13に示した連結後の持ち手部6では,矢印Aの箇所で,第1表示板21の第2端面59(図7参照)と第2表示板22の第1端面58(同)とが近接または接触している。矢印Bの箇所では,第2表示板22の第2端面59と第1表示板21の第1端面58とが近接または接触している。矢印Cの箇所では,両表示板2の第3端面60(図8参照)とが近接または接触している。これらの端面同士の近接または接触により,両表示板2が軸方向に相互に移動することが規制されている。つまりこれらの各端面は,移動規制面である。
【0046】
図17図18に示すように,第1区間43の外形の弧状部45は,閉状態と開状態とのいずれの状態でも矢印Dの位置,つまり真下の位置を包含している。第1区間43では図9で述べたように凹み部46の切り欠き角度αがさほど大きくなく,その分弧状部45の占める角度範囲が広いからである。これにより,閉状態と開状態とのいずれの状態でも,ユーザーが持ち手部6を持って表示具1を持ち上げるときに,嵌合部42の区間においては主として弧状部45がユーザーの手に接触することとなる。このためユーザーが感じる感触が自然である。
【0047】
持ち手部6のうち基部41の区間でも,図10に見るように矢印Dで示される真下の位置は円形表面47で占められている。この点でもユーザーが感じる感触は自然である。第2区間44の弧状部52は閉状態でも開状態でも下向きにはならないので弧状部45ほど重要ではないが,持ち手部6を持つユーザーの手に接触することはあるので,感触を自然にしている効果はある。円形表面47は第1手掛け面であり,弧状部45は第2手掛け面である。弧状部52は第3手掛け面である。
【0048】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば,連結して表示具1を構成する2枚の表示板2の各分割持ち手部4の先端の互いに合体する箇所に,第1区間43と第2区間44とを有する嵌合部42を形成している。この嵌合部42に,開状態,閉状態を規定する種々の当接面を設けている。この構成では,一方の表示板の穴にもう一方の表示板の凸部を挿入するようなことがない。このため,金型成形のみで必要な形状を形成でき,切除等の後加工が不要である。連結操作時にも両表示板2を平行に向き合わせて平行移動させるだけでよいので操作が簡単である。このようにして,製造しやすく連結作業も容易な表示具1が実現されている。
【0049】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,連結部3は,挿しピン5なしで連結が完成するように構成されていてもよい。両表示板2は,同じものでなくてもよい。また,図示したような縦長長方形のものには限られない。横長長方形でもよいし,長方形でなくてもよい。基部41の断面形状は,全体が円形である必要はない。少なくとも下面側が円弧状であればよい。各表示板2における分割持ち手部4は,表示板2の本体部分から生えている構成に限らず,連結部3から生えている構成であってもよい。
【0050】
表示板2は,表示パネルを用いない形式のものであってもよい。表示内容が不変のものでもよいし,ホワイトボード状にユーザーが適当な筆記具を用いて自由に文字や絵を書いたり消したりできるものでもよい。発光素子あるいは発色素子を用いており電気的に表示内容を操作できる部材であってもよい。
【0051】
前述の形態では,嵌合部42において,第2区間44の第2当接面55(図10)と第1区間43の第2当接面49(図9)と連続する面とする一方で,第1当接面54(第2区間44)と第1当接面48(第1区間43)との間には段差がある構造としている。しかしこれには限らず,第1当接面が両区間で連続していて第2当接面に両区間間で段差がある構成でもよい。第1当接面,第2当接面のいずれも両区間間で段差がある構成でもよい。第2窪み部57と第2窪み部51との関係および第1窪み部56と第1窪み部50との関係についても同様のことが言える。いずれの場合でも,図9中の交差角θ(窪み角)が図10中の交差角φ(突出角)より大きければよい。
【符号の説明】
【0052】
1 表示具 43 第1区間 52 弧状部
2 表示板 44 第2区間 53 凹み部
3 連結部 45 弧状部 54 第1当接
4 分割持ち手部 46 凹み部 55 第2当接
6 持ち手部 47 円形表面 56 第1窪み
21 第1表示板 48 第1当接面 57 第2窪み
22 第2表示板 49 第2当接面 58 第1端面
41 基部 50 第1窪み部 59 第2端面
42 嵌合部 51 第2窪み部 60 第3端面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18